説明

車両用サスペンションメンバ構造

【課題】車輪に衝突体が直接衝突した場合でも、車輪が車両前後方向後側且つ車両幅方向内側に移動されることを抑制する。
【解決手段】車両用サスペンションメンバ構造10では、サスペンションサイドメンバ16の上壁16Aにおける車両前後方向中間部に、凹状のビード38が車両幅方向に延在するように形成されている。また、この上壁16Aには、車両前後方向における第二連結部36とビード38との間に膨出部40が形成されている。ビード38は、車両幅方向内側の端部38Aがサスペンションサイドメンバ16における車両幅方向内側に開口し、車両幅方向外側の端部38Bが上壁における車両幅方向中間部で終端する構成とされている。一方、膨出部40は、車両前後方向後側に向かうに従って、上壁16Aにおける車両幅方向内側からビード38の終端と車両幅方向外側の端部(稜線16C)との間の領域に向かう稜線40Cを有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンションメンバ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用サスペンションメンバ構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、この特許文献1には、ロアアームを介して前輪を支持するサブフレームを有する構造が開示されている。
【特許文献1】特開2004−114813号公報(図1,図2)
【特許文献2】特開平6−298121号公報
【特許文献3】特開平8−85473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、例えば、前輪に衝突体が車両前後方向前側から直接衝突した場合、ロアアームに回転モーメントが作用することに伴って、サブフレームにおけるロアアームとの連結部に対して車両幅方向内側への荷重が入力され、このサブフレームに横折れ(サブフレームの車両前後方向両端部に対してロアアームとの連結部が車両幅方向内側に位置するようにサブフレームが折れること)が生じる虞がある。
【0004】
そして、このように、サブフレームに横折れが生じた場合、前輪が車両前後方向後側且つ車両幅方向内側に移動され、これに伴って車室が変形する虞がある。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであって、例えば、車輪に衝突体が直接衝突した場合でも、車輪が車両前後方向一方側且つ車両幅方向内側に移動されることを抑制することができる車両用サスペンションメンバ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用サスペンションメンバ構造は、車輪に対する車両幅方向内側に配置されると共に、車両前後方向に延在され、少なくとも車両前後方向一方側が支持部を介して車体に支持されたサスペンションサイドメンバと、前記車輪を支持するサスペンションアームを前記支持部に対する車両前後方向他方側において前記サスペンションサイドメンバに車両上下方向に回動可能に連結する連結部と、前記サスペンションサイドメンバにおける前記連結部と前記支持部との車両前後方向中間部の上壁又は下壁に凹状に形成されると共に、車両幅方向に延在するビードと、前記サスペンションサイドメンバの車両前後方向における前記連結部と前記ビードとの間に位置されると共に、前記ビードが形成された前記上壁又は前記下壁に膨出形成された膨出部と、を備えている。
【0007】
なお、本発明の車両用サスペンションメンバ構造は、車両の前部又は後部のサスペンションメンバへの適用が可能であり、本発明において、車両前後方向一方側とは、車両用サスペンションメンバ構造が車両の前部のサスペンションメンバに適用された場合には、車両前後方向後側に相当し、車両用サスペンションメンバ構造が車両の後部のサスペンションメンバに適用された場合には、車両前後方向前側に相当する。
【0008】
請求項1に記載の車両用サスペンションメンバ構造では、例えば、車輪に衝突体が車両前後方向他方側(例えば、前側)から直接衝突すると、車輪に対し車両前後方向一方側(例えば、後側)に荷重が入力される。この車輪に入力された荷重は、サスペンションアームを介して連結部に伝達され、これにより、サスペンションサイドメンバに対して連結部から車両前後方向一方側に荷重が入力される。
【0009】
ここで、請求項1に記載の車両用サスペンションメンバ構造では、サスペンションサイドメンバにおける車両前後方向中間部の上壁又は下壁に、凹状のビードが車両幅方向に延在するように形成されている。つまり、このビードは、サスペンションサイドメンバの縦折れ(サスペンションサイドメンバにおける連結部と支持部との車両前後方向中間部が連結部及び支持部に対して車両前後方向下側に位置するようにサスペンションサイドメンバが折れること)の起点となるようにサスペンションサイドメンバに設定されている。また、このビードが形成された上壁又は下壁には、膨出部が形成されているので、このサスペンションサイドメンバにおいてはビードと膨出部とで断面に耐力差が生じている。
【0010】
従って、上述のように、サスペンションサイドメンバに対して連結部から車両前後方向一方側(例えば、後側)に荷重が入力された場合には、サスペンションサイドメンバにビードを起点とした縦折れが誘発される。
【0011】
そして、サスペンションサイドメンバにビードを起点とした縦折れが生じると、このサスペンションサイドメンバの縦折れに伴って車輪が車両前後方向一方側(例えば、後側)にそのまま移動され、車輪が車両前後方向一方側且つ車両幅方向内側に移動されることが抑制される。
【0012】
このように、請求項1に記載の車両用サスペンションメンバ構造によれば、例えば、車輪に衝突体が直接衝突した場合でも、車輪が車両前後方向一方側且つ車両幅方向内側に移動されることを抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の車両用サスペンションメンバ構造は、請求項1に記載の車両用サスペンションメンバ構造において、前記連結部が、前記車輪の回転軸線に対する車両前後方向両側で前記サスペンションアームを前記サスペンションサイドメンバに連結する第一連結部及び第二連結部とされ、前記ビードは、車両幅方向内側の端部が前記サスペンションサイドメンバにおける車両幅方向内側に開口し、車両幅方向外側の端部が前記上壁又は前記下壁における車両幅方向中間部で終端する構成とされたものである。
【0014】
請求項2に記載の車両用サスペンションメンバ構造では、例えば、車輪に衝突体が車両前後方向他方側(例えば、前側)から直接衝突した場合、この衝突初期以降、車輪に対しては車両前後方向一方側(例えば、後側)に荷重が入力される。
【0015】
ここで、請求項2に記載の車両用サスペンションメンバ構造において、サスペンションアームは、車輪の回転軸線に対する車両前後方向両側でサスペンションサイドメンバに第一連結部及び第二連結部によって連結されている。
【0016】
従って、上述のように、車輪に対し車両前後方向一方側(例えば、後側)に荷重が入力された場合には、サスペンションアームに回転モーメントが作用することに伴って、サスペンションサイドメンバに対し第二連結部から車両幅方向内側に荷重が入力される。
【0017】
ところが、請求項2に記載の車両用サスペンションメンバ構造において、ビードは、車両幅方向外側の端部が上壁又は下壁における車両幅方向中間部で終端する構成とされている。つまり、換言すれば、上壁又は下壁におけるビードの終端と車両幅方向外側の端部との間の領域は、ビードの無い残余部として残されている。
【0018】
従って、上述のように、サスペンションサイドメンバに対し第二連結部から車両幅方向内側に荷重が入力された場合でも、このビードの無い残余部においては耐力が確保されているので、サスペンションサイドメンバの横折れ(サスペンションサイドメンバがビードを起点として車両幅方向内側に折れること)が抑制される。
【0019】
このように、請求項2に記載の車両用サスペンションメンバ構造によれば、例えば、車輪に衝突体が車両前後方向他方側(例えば、前側)から直接衝突した衝突初期の段階において、サスペンションサイドメンバに横折れが生じること抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載の車両用サスペンションメンバ構造は、請求項2に記載の車両用サスペンションメンバ構造において、前記膨出部が、車両前後方向一方側に向かうに従って、前記上壁又は前記下壁における車両幅方向内側から前記ビードの終端と車両幅方向外側の端部との間の領域に向かう稜線を有して構成されたものである。
【0021】
請求項3に記載の車両用サスペンションメンバ構造では、上述の衝突初期の段階から衝突が進行した衝突中期以降においては、例えば車輪が衝突体を乗り上げることにより、サスペンションアームが車両上下方向上側に回動される。そして、この場合に、サスペンションアームの車両上下方向上側への回動が連結部によって規制されると、サスペンションサイドメンバに対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントが作用する。
【0022】
ここで、請求項3に記載の車両用サスペンションメンバ構造において、膨出部は、車両前後方向一方側に向かうに従って、上壁又は下壁における車両幅方向内側からビードの終端と車両幅方向外側の端部との間の領域に向かう稜線を有して構成されている。
【0023】
従って、上述のように、サスペンションサイドメンバに対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントが作用した場合には、これに伴って、膨出部の稜線に沿って荷重が伝達される。そして、この膨出部の稜線に沿って伝達された荷重により、上述の残余部が崩壊され、ビードを起点としたサスペンションサイドメンバの縦折れがより効果的に誘発される。
【0024】
このように、請求項3に記載の車両用サスペンションメンバ構造によれば、上述の衝突初期の段階から衝突が進行した衝突中期以降において、ビードを起点としたサスペンションサイドメンバの縦折れをより効果的に誘発させることができる。
【0025】
請求項4に記載の車両用サスペンションメンバ構造は、車輪に対する車両幅方向内側に配置されると共に、車両前後方向に延在され、少なくとも車両前後方向一方側が支持部を介して車体に支持されたサスペンションサイドメンバと、前記車輪を支持するサスペンションアームを前記支持部に対する車両前後方向他方側において前記サスペンションサイドメンバに車両上下方向に回動可能に連結する連結部と、前記サスペンションサイドメンバに設けられ、前記サスペンションサイドメンバに対して前記連結部から車両前後方向一方側に荷重が入力されると共に、前記サスペンションサイドメンバの上壁が車両幅方向内側に向かうように前記サスペンションサイドメンバに対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントが作用した場合に、前記サスペンションサイドメンバにおける前記連結部と前記支持部との車両前後方向中間部が前記連結部及び前記支持部に対して車両前後方向下側に位置するように前記サスペンションサイドメンバに縦折れを誘発させるための縦折れ誘発部と、を備えている。
【0026】
この請求項4に記載の車両用サスペンションメンバ構造では、例えば、車輪に衝突体が車両前後方向他方側(例えば、前側)から直接衝突した場合、この衝突初期以降、車輪に対しては車両前後方向一方側(例えば、後側)に荷重が入力される。この荷重は、サスペンションアームを介して連結部に伝達され、これにより、サスペンションサイドメンバに対して連結部から車両前後方向一方側に荷重が入力される。
【0027】
また、上述の衝突初期の段階から衝突が進行した衝突中期以降においては、例えば車輪が衝突体を乗り上げることにより、サスペンションアームが車両上下方向上側に回動される。そして、この場合に、サスペンションアームの車両上下方向上側への回動が連結部によって規制されると、サスペンションサイドメンバの上壁が車両幅方向内側に向かうようにサスペンションサイドメンバに対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントが作用する。
【0028】
ここで、請求項4に記載の車両用サスペンションメンバ構造では、サスペンションサイドメンバに縦折れ(サスペンションサイドメンバにおける連結部と支持部との車両前後方向中間部が連結部及び支持部に対して車両前後方向下側に位置するようにサスペンションサイドメンバが折れること)を誘発させるための縦折れ誘発部が設けられている。
【0029】
この縦折れ誘発部は、サスペンションサイドメンバに対して連結部から車両前後方向一方側に荷重が入力されると共に、サスペンションサイドメンバの上壁が車両幅方向内側に向かうようにサスペンションサイドメンバに対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントが作用した場合に、サスペンションサイドメンバに縦折れを誘発させる構成とされている。
【0030】
従って、上述のように、サスペンションサイドメンバに対して連結部から車両前後方向一方側に荷重が入力されると共に、サイドメンバに対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントが作用した場合には、縦折れ誘発部によってサスペンションサイドメンバに縦折れが誘発される。
【0031】
そして、サスペンションサイドメンバに縦折れが生じると、このサスペンションサイドメンバの縦折れに伴って車輪が車両前後方向一方側(例えば、後側)にそのまま移動され、車輪が車両前後方向一方側且つ車両幅方向内側に移動されることが抑制される。
【0032】
このように、請求項4に記載の車両用サスペンションメンバ構造によれば、例えば、車輪に衝突体が直接衝突した場合でも、車輪が車両前後方向一方側且つ車両幅方向内側に移動されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上詳述したように、本発明によれば、例えば、車輪に衝突体が直接衝突した場合でも、車輪が車両前後方向一方側且つ車両幅方向内側に移動されることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の車両用サスペンションメンバ構造の一実施形態について説明する。
【0035】
図1には、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10が適用された車両12の前部が示されている。
【0036】
なお、車両12は、例えば、オーバーハングが極端に短い小型車とされている。また、この車両12に備えられたフロントサスペンションメンバ14は、左右対称な構成とされており、図1においては、フロントサスペンションメンバ14の左側半分のみが図示されている。
【0037】
また、各図において示される矢印FR、矢印LH、矢印UPは、車両前後方向前側、車両幅方向外側(左側)、車両上下方向上側をそれぞれ示している
【0038】
この図に示されるように、車両用サスペンションメンバ構造10は、フロントサスペンションメンバ14に適用されている。このフロントサスペンションメンバ14は、サスペンションサイドメンバ16と、前後一対のサスペンションクロスメンバ18,20とを有する枠型(井型)に構成されている。
【0039】
サスペンションサイドメンバ16は、前側の車輪22に対する車両幅方向内側に配置されると共に、車両前後方向に延在されている。このサスペンションサイドメンバ16における車両前後方向前側は、第一支持部24を介して図示しないフロントサイドメンバに支持されており、サスペンションサイドメンバ16における車両前後方向後側は、第二支持部26を介して上述のフロントサイドメンバに支持されている。
【0040】
車輪22は、サスペンションアーム28(ロアアーム)によって支持されており、このサスペンションアーム28の車両幅方向内側は、第一アーム30及び第二アーム32に分岐されている。この第一アーム30及び第二アーム32は、車両前後方向に並んで配置されている。
【0041】
そして、第一アーム30は、第一連結部34によってサスペンションサイドメンバ16に車両上下方向に回動可能に連結されており、第二アーム32は、第二連結部36によってサスペンションサイドメンバ16に車両上下方向に回動可能に連結されている。
【0042】
第一連結部34及び第二連結部36は、車輪22の直進時の回転軸線Lに対する車両前後方向両側に位置されると共に、車両前後方向における第一支持部24及び第二支持部26間に位置されている。
【0043】
また、上述のサスペンションサイドメンバ16の上壁16Aには、第二連結部36と第二支持部26との車両前後方向中間部に、ビード38が形成されている。さらに、このサスペンションサイドメンバ16の上壁16Aには、車両前後方向における第二連結部36とビード38との間に、膨出部40が形成されている。
【0044】
ここで、図2には、サスペンションサイドメンバ16における車両前後方向中間部が要部拡大斜視図にて示されており、図3には、このサスペンションサイドメンバ16における車両前後方向中間部が要部拡大平面図にて示されている。
【0045】
これらの図に示されるように、ビード38は、サスペンションサイドメンバ16の上壁16Aに凹状に形成されると共に、車両幅方向に延在するように形成されている。また、このビード38は、車両幅方向内側の端部38Aがサスペンションサイドメンバ16における車両幅方向内側に開口し、車両幅方向外側の端部38Bが上壁16Aにおける車両幅方向中間部で終端する構成とされている。つまり、この上壁16Aにおけるビード38の終端(端部38B)と車両幅方向外側の端部(稜線16C)との間の領域は、ビード38の無い残余部42として残されている。
【0046】
一方、膨出部40は、サスペンションサイドメンバ16の上壁16Aに車両上下方向上側に膨出するように形成されると共に、平面視にて概略三角形状に形成されている。また、この膨出部40は、膨出端面40Aと側面40Bとの境界となる稜線40C,40D(三角形の斜辺に相当する稜線)のうち車両幅方向外側の稜線40Cが、車両前後方向後側に向かうに従って、上壁16Aにおける車両幅方向内側(車両幅方向中央部)から上述の残余部42に向かうように構成されている。
【0047】
また、図4には、上述の第二連結部36が断面図にて示されている。この図に示されるように、第二連結部36は、サスペンションサイドメンバ16に結合された支持壁部44と、この支持壁部44に支持された上壁部46とを有して構成されている。
【0048】
そして、この第二連結部36では、サスペンションアーム28が車両上下方向上側へ所定角度以上回動された場合には、上壁部46がサスペンションアーム28と干渉し、サスペンションアーム28の車両上下方向上側への回動を規制する構成とされている。また、上述の第一連結部34も、この第二連結部36と同様な構成とされている。
【0049】
なお、本発明の一実施形態では、上述のビード38、膨出部40(稜線40Cを含む)、残余部42によって、本発明における縦折れ誘発部が構成されている。
【0050】
次に、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10の作用及び効果について説明する。
【0051】
先ず、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10の作用及び効果をより明確にするために、比較例に係る車両用サスペンションメンバ構造110について説明する。図9には、比較例に係る車両用サスペンションメンバ構造110が示されている。
【0052】
この比較例に係る車両用サスペンションメンバ構造110は、上述の本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10に対し、上述のビード38及び膨出部40が省かれた構成とされている。
【0053】
しかしながら、この比較例に係る車両用サスペンションメンバ構造110では、例えば、車両112に前方衝突が発生し、前側の車輪122に衝突体50が車両前後方向前側から直接衝突した場合、サスペンションアーム128に回転モーメントM3が作用することに伴って、サスペンションサイドメンバ116に対して第二連結部136から車両幅方向内側へ荷重F5が入力される。
【0054】
そして、このサスペンションサイドメンバ116に横折れ(第一支持部124及び第二支持部126に対して第二連結部136が車両幅方向内側に位置するようにサスペンションサイドメンバ116が折れること)が生じる虞がある。
【0055】
また、このように、サスペンションサイドメンバ116に横折れが生じた場合、車輪122が車両前後方向後側且つ車両幅方向内側に移動され、これに伴って車室148が変形する虞がある。
【0056】
これに対し、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10は、上述の比較例に係る車両用サスペンションメンバ構造110に対し、以下の如く有利な効果を奏する。
【0057】
すなわち、図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10では、例えば、車両12に前方衝突が発生し、車輪22に衝突体50が車両前後方向前側から直接衝突した場合、この衝突初期以降、車輪22に対しては車両前後方向後側に荷重F1が入力される。
【0058】
ここで、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10において、サスペンションアーム28は、車輪22の回転軸線Lに対する車両前後方向両側でサスペンションサイドメンバ16に第一連結部34及び第二連結部36によって連結されている。
【0059】
従って、上述のように、車輪22に対し車両前後方向後側に荷重F1が入力された場合には、サスペンションアーム28に回転モーメントM1が作用することに伴って、サスペンションサイドメンバ16に対し第二連結部36から車両幅方向内側に荷重F2が入力される。
【0060】
ところが、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10において、ビード38は、図2,図3に示されるように、車両幅方向外側の端部38Bが上壁16Aにおける車両幅方向中間部で終端する構成とされている。そして、上壁16Aにおけるビード38の終端(端部38B)と車両幅方向外側の端部(稜線16C)との間の領域は、ビード38の無い残余部42として残されている。
【0061】
従って、上述のように、サスペンションサイドメンバ16に対し第二連結部36から車両幅方向内側に荷重F2が入力された場合でも、このビード38の無い残余部42(稜線16Cを含む)においては耐力が確保されているので、サスペンションサイドメンバ16の横折れ(サスペンションサイドメンバ16がビード38を起点として車両幅方向内側に折れること)が抑制される。
【0062】
また、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10では、上述のように、車輪22に対し車両前後方向後側に荷重F1が入力されると、この車輪22に入力された荷重F1は、サスペンションアーム28を介して第一連結部34及び第二連結部36に伝達され、これにより、サスペンションサイドメンバ16に対して第一連結部34及び第二連結部36から車両前後方向後側に荷重F3が入力される。
【0063】
ここで、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10では、サスペンションサイドメンバ16における車両前後方向中間部の上壁16Aに、凹状のビード38が車両幅方向に延在するように形成されている。
【0064】
つまり、このビード38は、サスペンションサイドメンバ16の縦折れ(サスペンションサイドメンバ16における第二連結部36と第二支持部26との車両前後方向中間部が第二連結部36及び第二支持部26に対して車両前後方向下側に位置するようにサスペンションサイドメンバ16が折れること;図5参照)の起点となるようにサスペンションサイドメンバ16に設定されている。
【0065】
また、このビード38が形成された上壁16Aには、膨出部40が形成されているので、このサスペンションサイドメンバ16においてはビード38と膨出部40とで断面に耐力差が生じている。
【0066】
従って、上述のように、サスペンションサイドメンバ16に対して第一連結部34及び第二連結部36から車両前後方向後側に荷重F3が入力された場合には、サスペンションサイドメンバ16にビード38を起点とした縦折れが誘発される。
【0067】
さらに、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10では、上述の衝突初期の段階から衝突が進行した衝突中期以降においては、例えば車輪22が衝突体50を乗り上げることにより、サスペンションアーム28が車両上下方向上側に回動される。
【0068】
そして、この場合に、図2に示される第二連結部36の上壁部46がサスペンションアーム28と干渉し、サスペンションアーム28の車両上下方向上側への回動が規制される(第一連結部34においても同様に規制される)と、サスペンションサイドメンバ16に対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントM2が作用する。
【0069】
ここで、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10において、膨出部40は、車両前後方向後側に向かうに従って、上壁16Aにおける車両幅方向内側(車両幅方向中央部)から残余部42に向かう稜線40Cを有して構成されている。
【0070】
従って、上述のように、サスペンションサイドメンバ16に対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントM2が作用した場合には、これに伴って、膨出部40の稜線40Cに沿って荷重F4が伝達される。そして、この膨出部40の稜線40Cに沿って伝達された荷重F4により、上述の残余部42(稜線16Cを含む)が崩壊され、ビード38を起点としたサスペンションサイドメンバ16の縦折れがより効果的に誘発される。
【0071】
そして、サスペンションサイドメンバ16にビード38を起点とした縦折れ(図5参照)が生じると、図6に示されるように、このサスペンションサイドメンバ16の縦折れに伴って車輪22が車両前後方向後側にそのまま移動され、車輪22が車両前後方向後側且つ車両幅方向内側に移動されることが抑制される。
【0072】
このように、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10によれば、例えば、車輪22に衝突体50が車両前後方向前側から直接衝突した衝突初期の段階においては、サスペンションサイドメンバ16に横折れが生じること抑制しつつ、この衝突初期の段階から衝突が進行した衝突中期以降においては、ビード38を起点としたサスペンションサイドメンバ16の縦折れをより効果的に誘発させることができる。
【0073】
そして、サスペンションサイドメンバ16にビード38を起点とした縦折れを生じさせることにより、例えば、車輪22に衝突体50が直接衝突した場合でも、車輪22が車両前後方向後側且つ車両幅方向内側に移動されることを抑制することができる。これにより、オーバーハングが極端に短い車両12であっても、車室48が変形することを抑制することができる。
【0074】
ここで、図7には、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10が適用された車両12と従来の車両との衝撃吸収性能の比較が示されている。
【0075】
この図において、グラフG1は、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10が適用された車両12について示しており、グラフG2は、従来の車両について示している。また、縦軸は車両の衝突時に衝突体に入力される荷重Fを示しており、横軸は車両の衝突に伴う変形量Sを示している。
【0076】
なお、従来の車両は、本発明の一実施形態に係る車両のようなオーバーハングが極端に短いタイプではなく、オーバーハングが十分に確保されたタイプのものである。このタイプの車両は、通常、前方衝突時にフロントサイドメンバで衝撃吸収する構成とされている。
【0077】
図7に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造10によれば、車両に前方衝突が発生した場合でも、上述のように、サスペンションサイドメンバ16、サスペンションアーム28、車輪22によって衝撃を吸収するので、従来の車両と同様若しくはそれ以上に、衝突初期における荷重を確保することができる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0079】
例えば、上記実施形態において、車両用サスペンションメンバ構造10は、車両12の前部に設けられたフロントサスペンションメンバ14に適用されていたが、車両12の後部に設けられたリアサスペンションメンバに適用されても良い。
【0080】
また、上記実施形態において、ビード38及び膨出部40は、サスペンションサイドメンバ16の上壁16Aに形成されていたが、図8に示されるように、サスペンションサイドメンバ16の下壁16Bに形成されていても良い。また、この場合に、第二連結部36も、サスペンションサイドメンバ16の下壁16Bに設けられていても良く、また、サスペンションサイドメンバ16の側壁に設けられていても良い。このように構成されていても、上記と同様な作用効果を奏することができる。
【0081】
また、上記実施形態において、膨出部40は、平面視にて概略三角形状に形成されていたが、稜線40Cを有する形状であれば、その他の形状に形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造が適用された車両の前部を示す平面図である。
【図2】図1に示されるサスペンションサイドメンバにおける車両前後方向中間部の要部拡大斜視図である。
【図3】図1に示されるサスペンションサイドメンバにおける車両前後方向中間部の要部拡大平面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図1に示されるサスペンションサイドメンバが縦折れする様子を説明する図である。
【図6】図1に示されるサスペンションサイドメンバが縦折れする様子を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造が適用された車両と従来の車両との衝撃吸収性能の比較を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る車両用サスペンションメンバ構造の変形例を示す図である。
【図9】比較例に係る車両用サスペンションメンバ構造においてサスペンションサイドメンバが横折れする様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0083】
10 車両用サスペンションメンバ構造
16 サスペンションサイドメンバ
22 車輪
24 第一支持部
26 第二支持部(支持部)
28 サスペンションアーム
34 第一連結部(連結部)
36 第二連結部(連結部)
38 ビード(縦折れ誘発部)
40 膨出部(縦折れ誘発部)
40C 稜線
42 残余部(縦折れ誘発部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に対する車両幅方向内側に配置されると共に、車両前後方向に延在され、少なくとも車両前後方向一方側が支持部を介して車体に支持されたサスペンションサイドメンバと、
前記車輪を支持するサスペンションアームを前記支持部に対する車両前後方向他方側において前記サスペンションサイドメンバに車両上下方向に回動可能に連結する連結部と、
前記サスペンションサイドメンバにおける前記連結部と前記支持部との車両前後方向中間部の上壁又は下壁に凹状に形成されると共に、車両幅方向に延在するビードと、
前記サスペンションサイドメンバの車両前後方向における前記連結部と前記ビードとの間に位置されると共に、前記ビードが形成された前記上壁又は前記下壁に膨出形成された膨出部と、
を備えた車両用サスペンションメンバ構造。
【請求項2】
前記連結部は、前記車輪の回転軸線に対する車両前後方向両側で前記サスペンションアームを前記サスペンションサイドメンバに連結する第一連結部及び第二連結部とされ、
前記ビードは、車両幅方向内側の端部が前記サスペンションサイドメンバにおける車両幅方向内側に開口し、車両幅方向外側の端部が前記上壁又は前記下壁における車両幅方向中間部で終端する構成とされている、
請求項1に記載の車両用サスペンションメンバ構造。
【請求項3】
前記膨出部は、車両前後方向一方側に向かうに従って、前記上壁又は前記下壁における車両幅方向内側から前記ビードの終端と車両幅方向外側の端部との間の領域に向かう稜線を有して構成されている、
請求項2に記載の車両用サスペンションメンバ構造。
【請求項4】
車輪に対する車両幅方向内側に配置されると共に、車両前後方向に延在され、少なくとも車両前後方向一方側が支持部を介して車体に支持されたサスペンションサイドメンバと、
前記車輪を支持するサスペンションアームを前記支持部に対する車両前後方向他方側において前記サスペンションサイドメンバに車両上下方向に回動可能に連結する連結部と、
前記サスペンションサイドメンバに設けられ、前記サスペンションサイドメンバに対して前記連結部から車両前後方向一方側に荷重が入力されると共に、前記サスペンションサイドメンバの上壁が車両幅方向内側に向かうように前記サスペンションサイドメンバに対して車両前後方向の軸線周りに捩りモーメントが作用した場合に、前記サスペンションサイドメンバにおける前記連結部と前記支持部との車両前後方向中間部が前記連結部及び前記支持部に対して車両前後方向下側に位置するように前記サスペンションサイドメンバに縦折れを誘発させるための縦折れ誘発部と、
を備えた車両用サスペンションメンバ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−89731(P2010−89731A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264029(P2008−264029)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】