説明

車両用シートのダブルフォールディング機構

【課題】シートクッションを車体フロアに対して起倒回動可能に支持する回動機構を有した車両用シートのダブルフォールディング機構に関し、シートクッションの操作性向上を図る。
【解決手段】シートクッション着座姿勢状態位置とシートクッション格納姿勢状態位置とを起倒回動可能とする回動機構に、シートクッション20と保持機構60の保持状態と解除状態を検知することのできる保持機構検知部位80が設定され、シートクッション20のシートバック30との近接位置には、シートクッション20がシートバック30に回動不能に接触する突出位置72aと、回動可能に引っ込められる引っ込み位置72bとに作動する突出部材72が配設され、保持機構検知部位80と突出部材72は、保持機構検知部位80による保持状態の検知で突出位置72a、解除状態の検知で引っ込み位置72bとなる関係でワイヤーケーブル90で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのダブルフォールディング機構に関する。詳細には、着座部となるシートクッションを車体フロアに対して起倒回動可能に支持する回動機構を有した車両用シートのダブルフォールディング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のリヤシートには、不使用時におけるシートを格納移動させ、シートの設置されていたスペースを荷室スペースとして利用できるようにする機構が採用されているものがある。このような格納機構としては、例えば下記特許文献1に開示のダブルフォールディング機構が知られている。
図7に図示されるように、このダブルフォールディング機構120は、シートクッション200と車体フロアFとの連結構造であるシートクッション連結構造140、シートバック300と車体フロアFとの連結構造であるシートバック連結構造160から構成されている。
シートクッション連結構造140は、着座部となるシートクッション200が、その前端部に設けられた回動機構330によって、車体フロアFに対して倒伏したシートクッション着座姿勢状態位置200Xから、車体フロアFに対して起立したシートクッション格納姿勢状態位置200Zに起こし上げられるようになっている。
そして、シートバック連結構造160は、背もたれ部となるシートバック300が、その下端部に設けられたリクライニング機構360を回動中心として、シートクッション着座姿勢状態位置200Xの設置スペースに向けて車両前方側に倒し込めるようになっている。したがって、シートの不使用時には、シートクッション200を起こし上げることにより、その設置されていたスペースを空けて、この空いたスペースにシートバック300を倒し込むことにより、全体としてシートをコンパクトな姿勢状態に格納することができる。
【0003】
この開示技術におけるシートクッション200の車体フロアF上のシートクッション着座姿勢状態位置200Xにおける固定は、大きく分けて二つの固定機構によって固定されている。先ず一つ目は、シートクッション200の車体フロアF側に面した下面部位に保持機構600が設けられており、シートクッション200と回動機構330を固定するものである。この保持機構600は、シートクッション200の車体フロアに対する車両前後方向の姿勢が、回動機構330の回動によって変化するのを規制するためのものである。
二つ目は、シートクッション200の後部下端部に設けたシートクッション側係合部材260と、車体フロアF側のシートバック300の下端部位置の場所に設けられた車体フロア側被係合部材390とを係合させて固定するものである。この両係合部材による係合は、シートクッション200がシートクッション着座姿勢状態位置200Xからの上方移動を規制するものである。以上二つの固定機構によって、回動機構330によるシートクッション200の起倒回動の動きを規制して、シートクッション200をシートクッション着座姿勢状態位置200Xに保持することができるようになっている。
【0004】
またシートクッション200の形状は、シートクッション200の後端部分とシートバック300の下端部分との間に形成される隙間を極力少なくするために、シートクッション200がシートクッション着座姿勢状態位置200Xに位置する時にシートクッション200の後端部分がシートバック300の下部に潜り込む形状となっている。そのため、シートクッション200の後端部分がシートバック300の下端部分と干渉して回動が阻害されないように、シートクッション200は、車体フロアFに対して前端部分を浮き上がらせて、かつ後端部分を沈み込ませたシートクッション跳ね上げ状態位置200Yにすることによって、起立回動及び倒伏回動をする仕組みとなっている。
【特許文献1】特開2002−331861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、車両前方側に起こし上がったシートクッション200を再び車体フロアF上の着座姿勢状態の位置に戻す倒伏回動過程において、シートクッション200は、シートクッション跳ね上げ状態位置200Yにする必要がある。しかし、シートクッション200の回動機構にはシートクッション200の姿勢を変更する回動軸と、車体フロアFに対してシートクッション200を起こし上げるための回動軸との2つの回動軸を有しているため、シートクッション200が移動した状態において、シートクッション200の姿勢位置がシートクッション跳ね上げ状態位置200Yであるか否か把握がしにくいという問題があった。
【0006】
図8に図示されるように、また、シートクッション200の固定機構のうちの一つの保持機構600は、シートクッション200が着座部から起こし上がった状態においてもシートクッション200と回動機構330を固定可能にできる構造であることが問題であった。すなわち、シートクッション200をシートクッション格納姿勢状態位置200Z(図7参照)からシートクッション着座姿勢状態位置200X(図7参照)へ倒伏回動を行う際、シートクッション200が着座部に倒伏する前に、保持機構600によってシートクッション200と回動機構330が固定されてしまいシートクッション側係合部材260を車体フロア側被係合部材390に正規状態で係合させることができないという問題があった。
すなわち、この状態でシートクッション200を車体フロアF上の着座姿勢状態の位置に倒伏回動するとシートクッション200は見た目上はシートクッション着座姿勢状態位置200X(図7参照)に戻った位置となっているが、シートクッション側係合部材260が、車体フロア側被係合部材390の上に乗り上げた状態となり両係合部材が係合しない状態となる。そのためシートクッション200の固定機構のうちの一つが有効に働かず、正規のシートクッション着座姿勢状態位置200X(図7参照)に戻らないという問題があった。また、シートクッション200の後端部がシートバック300と干渉して着座姿勢状態の位置に戻すことができないというおそれもあった。
【0007】
そのため、車両前方側に起こし上がったシートクッション200を再び車体フロアF上の着座姿勢状態の位置に戻す倒伏回動過程において、シートクッション200が移動した状態においてもシートクッション200の姿勢位置がシートクッション跳ね上げ状態位置200Yか否かを容易に判断することができればシートバック300との干渉を未然に防ぎ、正規の着座姿勢状態位置に倒伏することができる。
そこで本発明者は、かかる問題について鋭意検討の結果、シートクッション200と回動機構330を保持する保持機構の保持状態を検知することによって、シートクッション200の姿勢位置がシートクッション跳ね上げ状態位置200Yか否か容易に判断することに着目したものである。
【0008】
而して、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、着座部となるシートクッションを車体フロアに対して起倒回動可能に支持する回動機構を有した車両用シートのダブルフォールディング機構に関して、車両前方側に起こし上がったシートクッションを再び車体フロア上の着座姿勢状態の位置に戻す倒伏回動過程において、シートクッションと回動機構を保持する保持機構の保持状態を検知することによって、シートクッションの姿勢位置が正規のシートクッション跳ね上げ状態位置の姿勢位置か否か容易に判断することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を達成するために、本発明に係る車両用シートの配設構造は、次の手段をとる。
本発明の第1の発明は、シートクッションとシートバックから構成されて着座使用可能な姿勢状態に保持されているシートが、該保持状態を解除する解除手段の操作によって、シートクッションが車体フロアに対して倒伏したシートクッション着座姿勢状態位置から、車体フロアに対して起立したシートクッション格納姿勢状態位置に起こし上げられると共に、該起こし上げられる前のシートクッションの設置スペースにシートバックが倒し込まれたシートバック格納姿勢状態位置に作動する車両用シートのダブルフォールディング機構であって、前記シートクッションを前記シートクッション着座姿勢状態位置と前記シートクッション格納姿勢状態位置との間を起倒回動可能とする回動機構が前記シートクッションと前記車体フロアとの間に配設されており、前記回動機構は前記シートクッションと前記車体フロアとの間を連結する連結リンク部材を備え、該連結リンク部材の一端と他端とにおける前記シートクッションと前記車体フロアとの連結は起倒回動可能に枢支された連結とされており、該回動機構により支持されたシートクッションを車体フロアに対してシートクッションの前端部が車両上方側へ浮き上がるシートクッション跳ね上げ状態位置に起こし上げる回動方向に付勢する付勢手段を有しており、該付勢手段により回動付勢されたシートクッションを該付勢手段の付勢力に抗してシートクッション着座姿勢状態位置に保持する保持機構を有しており、前記シートバックの下端部の車体フロア位置には、シートクッションの後端部に設けられたシートクッション側係合部材と係合する車体フロア側被係合部材が設置されており、前記シートクッション跳ね上げ状態位置から前記シートクッション着座姿勢状態位置への倒伏回動過程におけるシートクッション後端部がシートバックの下端部に潜り込み移動するときに、シートクッションの後端部に設けられたシートクッション側係合部材が車体フロア位置に設置された車体フロア側被係合部材に係合して前記シートクッションの起倒回動を規制する構成となっており、前記回動機構には、シートクッションが前記保持機構により保持された保持状態と、シートクッションの保持機構による保持が解除された解除状態を検知することのできる保持機構検知部位が設定されており、前記シートクッションのシートバックとの近接位置には、前記シートクッションが前記シートクッション着座姿勢状態位置と前記シートクッション格納姿勢状態位置との間を起倒回動する際にシートバックに回動不能に接触する突出位置と、回動可能に引っ込められる引っ込み位置との間を作動する突出部材が配設されており、前記保持機構検知部位と前記突出部材とは、前記保持機構検知部位による保持状態の検知で前記突出部材が突出位置となり、前記保持機構検知部位による解除状態の検知で前記突出部材が引っ込み位置となる関係でワイヤーケーブル等の機械的伝達手段で接続されていることを特徴とする。
【0010】
この第1の発明によれば、回動機構に設定された保持機構検知部位は、シートクッションが保持機構により保持された保持状態とシートクッションの保持機構による保持が解除された解除状態を検知することができる。また、突出部材は、シートクッションの起倒回動する際、シートバックに回動不能に接触する突出位置と、回動可能に引っ込められる引っ込み位置との間を作動する構成となっている。また、保持機構検知部位と突出部材は、保持機構検知部位による保持状態の検知で突出位置、解除状態の検知で引っ込み位置となる関係でワイヤーケーブル等の機械的伝達手段で接続されている。
仮に、シートクッション格納姿勢状態位置からシートクッション着座姿勢状態位置への倒伏回動過程において、シートクッションと回動機構との不要な固定により保持機構が保持状態となると突出部材が突出位置となり、この突出位置ではシートクッションの突出部材がシートバックと干渉するためシートクッション着座姿勢状態位置への倒伏回動ができない状態となる。これにより、事前に車体フロアに対するシートクッションの姿勢が、シートクッション後端部がシートバックの下端部に潜り込む正規のシートクッション跳ね上げ状態位置の姿勢では無いことを把握することができる。またシートクッションと回動機構との不要な固定を防ぐことができる。
そして、シートクッションの姿勢をシートクッション後端部がシートバックの下端部に潜り込ませることのできる正規のシートクッション跳ね上げ状態位置の姿勢位置にした上で、シートクッション着座姿勢状態位置に倒伏することができる。そして、シートバックの下端部の車体フロア位置において、シートクッション側係合部材と車体フロア側被係合部材が確実に係合でき、シートクッションと車体フロアを固定して、シートクッションの起倒回動を規制することができる。
そのため、従来に比べ、より一層ダブルフォールディング機構のシートクッションの倒伏回動過程による操作性が向上する。また、シートクッションとシートバックとの干渉を未然に防ぐことができる。
【0011】
本発明の第2の発明は、前記保持機構検知部位による保持状態と解除状態の検知は、車体フロアに対するシートクッションの姿勢変化によって検知することを特徴とする。
【0012】
この第2の発明によれば、回動機構に設定された保持機構検知部位は、車体フロアに対するシートクッションの姿勢変化による検知をする構成とされている。これにより、シートクッション格納姿勢状態位置からシートクッション着座姿勢状態位置への倒伏回動過程におけるシートクッションの姿勢変化に伴い保持機構の保持状態と解除状態の検知を把握できるため、シートクッションをより一層、正規のシートクッション跳ね上げ状態位置の姿勢にすることができる。
【0013】
本発明の第3の発明は、前記シートクッション後端部のシートバックとの近接位置には、前記突出部材を回動させるための回動軸を有し、該回動軸には、弾性部材を有しており、前記突出部材が、常時は、該弾性部材の付勢力によって突出位置方向に付勢されていることを特徴とする。
【0014】
この第3の発明によれば、突出部材は、回動軸、弾性部材からの比較的簡単な構成によって達成することができる。そのため、複雑な構成にすることなく、突出部材の突出位置と引っ込み位置の切替をすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記各発明の手段をとることにより次の効果を得ることができる。
先ず、上記第1の発明の車両のシートのダブルフォールディング機構によれば、より一層ダブルフォールディング機構のシートクッションの倒伏回動過程による操作性が向上する。また、シートクッションとシートバックとの干渉を未然に防ぐことができる。
次に、上記第2の発明の車両のシートのダブルフォールディング機構によれば、シートクッション格納姿勢状態位置からシートクッション着座姿勢状態位置への倒伏回動過程におけるシートクッションの姿勢変化に伴い保持機構の保持状態と解除状態の検知を把握できるため、シートクッションをより一層、正規のシートクッション跳ね上げ状態位置の姿勢にすることができる。
次に、上記第3の発明の車両のシートのダブルフォールディング機構によれば、複雑な構成にすることなく、突出部材の突出位置と引っ込み位置の切替をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本実施例に係る車両用シートの着座姿勢状態と格納姿勢状態を表した側面図である。図2は、本実施例に係る車両用シートのシートクッションがシートクッション着座姿勢状態位置からシートクッション跳ね上げ状態位置となる状態を表した側面図である。図3は、本実施例に係る車両用シートのシートクッションがシートクッション跳ね上げ状態位置からシートクッション格納姿勢状態位置となる状態を表した側面図である。
【0017】
本実施例の車両用シート10は、車両の2列目や3列目に配設される後部座席として採用されるものである。図1に図示されるように、車両用シート10は、主に背もたれ部となるシートバック30と着座部となるシートクッション20から構成されている。そして、この車両用シート10が不使用時のときに、シートクッション20が車体フロアFに対して倒伏したシートクッション着座姿勢状態位置20X(仮想線)から、車両前側Frに向けて起こし上げられて、車体フロアFに対して起立したシートクッション格納姿勢状態位置20Zに起倒回動される。そして、これと同時にシートバック30は、シートバック30が車体フロアFに対して起き上がったシートバック起立姿勢状態位置30X(仮想線)からシートクッション20を起こし上げる前の設置スペースP内に倒し込まれたシートバック格納姿勢状態位置30Zに倒伏するように構成されている。これにより、車両用シート10をコンパクトな姿勢状態として格納することができ、車両用シート10の設置されていたスペースを空けて荷室スペースLとして利用できるようになる。この車両用シート10を格納させる動作は、シートクッション20やシートバック30を車体フロアFに対して連結しているダブルフォールディング機構12の動作にしたがって行われる。
このダブルフォールディング機構12は、図1に図示されるように、シートクッション20と車体フロアFとの連結構造であるシートクッション連結構造14、シートバック30と車体フロアFとの連結構造であるシートバック連結構造16から構成されている。以下にダブルフォールディング機構12の構成について詳細に説明する。
【0018】
ダブルフォールディング機構12のシートクッション連結構造14について説明する。
図4は、本実施例に係る車両用シート10のシートクッションフレーム22を表した斜視図である。図5は、本実施例に係る車両用シート10の車体フロア側部材37及びシートバックフレーム32を表した斜視図である。なお、図5において、シートバック30のクッションパッドは、図示を省略している。また、中央付近に備えられた保持機構60を図示するためにフレームの中央部の一部を省略している。
このシートクッション連結構造14は、概略、シートクッションフレーム22と車体フロア側部材37とが、この間に配設された回動機構40の連結リンク部材46(図1参照)によって連結されている。
【0019】
図4に図示されるように、シートクッション20を支えるためのシートクッションフレーム22が図示されている。同図は、シートクッションフレーム22を斜め上方から図示したものであり、同図紙面の上方側がシートクッション20の後端部であり、下方側が前端部を図示している。このシートクッションフレーム22は、管状のワイヤー構造で形成されておりシートクッション20のクッションパッド23(仮想線)を支えるようにシートクッション20の下面部に沿う形で形成されている。そして、後端部にはシートクッション側係合部材26が形成されている。また、略中央にはパネル部材24(仮想線)が備えられており、側面視においてシートクッション20の下面側が凹部状に形成されている。このパネル部材24には、後述の回動機構40、トーションスプリング52(付勢手段)、保持機構60の各機構が取り付く構成となっている。
【0020】
図4に図示されるように、シートクッションフレーム22のパネル部材24(仮想線)には、回動機構40の各構成品が取り付いている。回動機構40は、概略、回動支軸42、第1連結リンク部材46a、第2連結リンク部材46b(図1参照)、連結軸44から構成されている。回動支軸42は、長手方向に延びた円筒状に形成されており、シートクッションフレーム22の略中央に横方向に横断してシートクッションフレーム22と連結固定されている。そして、回動支軸42の円筒内方側に連結軸44が挿通されて構成されている。そして、この連結軸44の両端をレバー状の第1連結リンク部材46aが平行して左右一対に連結されている。これにより、回動支軸42は連結軸44と同軸位置において回転自在とされている。そのため、この回動支軸42と一体に連結固定されたシートクッションフレーム22は、回動支軸42の軸を中心として車体フロアF(図1参照)に対する車両前後方向の姿勢変化を可能としている。すなわち、第1連結リンク部材46aが連結されている回動支軸42は、シートクッション20の車体フロアF(図1参照)に対する車両前後方向の姿勢状態を回動可能に枢支するシートクッション姿勢変更回動軸50として構成されている。
【0021】
図5には、車体フロアF(図1参照)と一体に固定される車体フロア側部材37が図示されている。この車体フロア側部材37は、概略、サイドフレーム38と、補強部材38a、38bから構成されており、サイドフレーム38はシートクッション20(図1参照)を幅方向の両端で支持するために左右一対で設けられている。そしてこのサイドフレーム38間に架け渡された複数の補強部材38a、38bによって剛接合されている。サイドフレーム38の前側に配設された補強部材38aには、車体フロアF(図1参照)に対して車両前後方向に回動可能に枢支されたレバー状の第2連結リンク部材46bが、第1連結リンク部材46a(図4参照)と連結可能な対応位置に平行して左右一対で設けられている。この第2連結リンク部材46bの回動軸は、シートクッション20(図1参照)をシートクッション着座姿勢状態位置20X(図1参照)とシートクッション格納姿勢状態位置20Z(図1参照)の間を起倒回動可能に枢支するシートクッション起倒回動軸48として構成されている。
そして、左右一対に構成された第1連結リンク部材46a(図4参照)及び第2連結リンク部材46bが連結されることによって、連結リンク部材46(図1参照)として構成されている。よって、シートクッションフレーム22(図4参照)を車体フロアF(図1参照)に対して起倒回動可能にかつ、枢支する連結構成とされている。
サイドフレーム38の後側に配設された補強部材38bの略中央位置には、シートクッション着座姿勢状態位置20X(図1参照)において、シートクッション側係合部材26と係合可能な車体フロア側被係合部材39が配設されている。
【0022】
次に、付勢手段として構成されたトーションスプリング52について説明する。図4に図示されるように、このトーションスプリング52は回動機構40により支持されたシートクッション20(図1参照)を車体フロアF(図1参照)に対してシートクッション20(図1参照)の前端部が車両上方側へ浮き上がるシートクッション跳ね上げ状態位置20Y(図2参照)に起こし上げる回動方向に付勢する為のものである。そしてトーションスプリング52は、シートクッションフレーム22のパネル部材24(仮想線)の回動支軸42と略同位置に配設されている。このトーションスプリング52は金属の棒部材を折り曲げられて、棒の軸を中心に周方向にねじり荷重を受けて弾性力を発生させるように形成されたものである。そして、このトーションスプリング52の略中央部位がシートクッションフレーム22のパネル部材24(図1参照)と連結されており、両端部位が第1連結リンク部材46aの回動軌道上に配設されている。
【0023】
これにより、トーションスプリング52の付勢力によってシートクッション20(図2参照)の前端部が車両上方側へ浮き上がるシートクッション跳ね上げ状態位置20Y(図2参照)に起こし上げる回動付勢力を付勢することができる。また、第1連結リンク部材46aの軸部がトーションスプリング52の両端部位を、トーションスプリング52の付勢力に抗する方向に押圧することによって、シートクッション20(図1参照)をシートクッション着座姿勢状態位置20X(図2参照)に回動させ、保持機構60(図1参照)によってシートクッション20(図1参照)と回動機構40が保持される構成となっている。
【0024】
次に保持機構60について説明する。図2に図示されるように、この保持機構60はトーションスプリング52(図4参照)により回動付勢されたシートクッション20をトーションスプリング52(図4参照)の付勢力に抗してシートクッション着座姿勢状態位置20Xに保持するためのものである。この保持機構60は、概略、ロック爪62、捩りばね部材63、ストライカ64、ウェビングストラップ66から構成されている。
このロック爪62は、ストライカ64と係合してシートクッション20と回動機構40(図4参照)を保持するためのものである。このロック爪62は、板部材から形成されており、ストライカ64と係合する係合凹部62aを有しており先端が先細ったテーパー形状に形成されている。このロック爪62の先端部にウェビングストラップ66が接続されている。そして、このロック爪62は、シートクッション20の下面部側のパネル部材24の凹部の略中央位置において、回動軸62cにおいて回動自在に枢支され、垂下状に配設されている。また、回動軸62c位置には捩りばね部材63が備えられており、ロック爪62はこの捩りばね部材63の付勢によって常時は、図示上、時計回転方向に付勢されて、図示しないストッパーによって垂下状の位置に回動規制されている。
【0025】
図4に図示されるように、ストライカ64は、ロック爪62に係合される部材でありロック爪62と一対で構成されるものである。このストライカ64は、略U字形状をしており、ロック爪62の係合位置に対応した位置において、両端部が回動機構40の回動支軸42に巻き付いた状態で接合されている。そのため、シートクッション20の姿勢変化に伴う回動支軸42の回動と連動してストライカ64も回動する構成となっている。すなわちシートクッション20(図1参照)の車体フロアF(図1参照)に対する車両前後方向の姿勢変化と連動してロック爪62と係合する構成となっている。
ウェビングストラップ66は、保持機構60であるロック爪62とストライカ64の係合状態を解除する解除レバーとして構成されている。このウェビングストラップ66は、繊維体を帯状に形成されたものである。このウェビングストラップ66の一端はロック爪62の先端部に固定されており、他端部は操作部として、車両後方Re側にシートクッション20の下面部に面して延びて、シートバック30の下端部とシートクッション20の後端部の隙間部から車両前側Frに突出して配置されている(図1参照)。そして、図2に図示されるように、このウェビングストラップ66の操作部を車両前側Fr方向に引くとロック爪62が捩りばね部材63の付勢力に抗して車両後方Re側に回動軸62cを中心として回動し、ストライカ64との係合が解除される構成となっている。
ここで、ロック爪62の係合凹部62aにストライカ64が係合して、シートクッション20(図1参照)が回動機構40に保持された状態が保持状態であり、ウェビングストラップ66の解除操作によって、ロック爪62とストライカ64との係合状態が解除されて、シートクッション20(図1参照)が回動機構40との保持状態から解除された状態を解除状態としている。
【0026】
図2に図示されるように、更にこの車両用シート10のダブルフォールディング機構12には、シートクッション20の後端部のシートバック30との近接位置において、シートクッション20がシートクッション着座姿勢状態位置20Xとシートクッション格納姿勢状態位置20Zとの間を起倒回動する際にシートバック30に回動不能に接触する突出位置72aと、回動可能に引っ込められる引っ込み位置72bとの間を作動する突出部材72が配設されている。また、図4に良く示されるように、回動機構40には、保持機構60の保持状態と解除状態を検知することのできる保持機構検知部位80が設定されている。そして、この保持機構検知部位80と連動するように機械的伝達手段として設けられたワイヤーケーブル90によって突出部材72に作動伝達する構成となっている。そして、突出部材72は、保持機構検知部位80による保持状態の検知で突出部材72が突出位置72aとされ、保持機構検知部位80による解除状態の検知で突出部材72が引っ込み位置72bとされる関係でワイヤーケーブル90に接続されている。なお、このワイヤーケーブル90は、従来から用いられているプル式(引張りタイプ)のケーブルを用いている。このケーブルは、インナーケーブルとアウターケーシングで構成され引きを伝達するケーブルである。
【0027】
突出部材72について説明する。
図4に図示されるように、この突出部材72の取付け構成は、概略、突出部材72、捩りばね部材74、ブラケット75から構成されている。そして、この突出部材72は、シートクッション20の後端部のシートバック30との近接位置に配設されている。突出部材72は、管状のワイヤー構造で略U字形状に形成され両端は平行して同一方向に形成され、両端に設けられた回動軸73が回動支軸42と略平行方向の向きでブラケット75によって取り付けられ、突出部材72全体を回動軸73を中心にシートクッション後端部から車両後側Re方向に回動可能とされている。
そして、ブラケット75と回動軸73の間には、捩りばね部材74が設けられており、この突出部材72は常時は捩りばね部材74の付勢力によって、車両後側Re方向に突き出した位置である突出位置72a(図1参照)に回動付勢される構成となっている。図6に図示されるように、突出部材72がこの突出位置72a(図1参照)に位置している状態は、シートクッション20がシートクッション着座姿勢状態位置20Xとシートクッション格納姿勢状態位置20Zとの間を起倒回動する際にシートバック30に接触して起倒回動を不能とする構成となっている。
【0028】
更に、この突出部材72には、ワイヤーケーブル90の一端であるワイヤーケーブル接続端部90bが接続されている。そして、このワイヤーケーブル接続端部90bが突出部材72に接続されていることによって、後述する保持機構検知部位80の引き方向の作動伝達がされると、図2の図示上(実線での図示状態)、突出部材72は捩りばね部材74の付勢力に抗してシートクッション20の下方方向に回動付勢され、シートクッション20の後端部に引っ込められる引っ込み位置72bに回動付勢される構成となっている。図3に図示されるように、突出部材72がこの引っ込み位置72bに位置している状態は、シートクッション20がシートクッション着座姿勢状態位置20Xとシートクッション格納姿勢状態位置20Zとの間を起倒回動する際にシートバック30に接触しないで起倒回動を可能とする構成となっている。
【0029】
次に、保持機構検知部位80について説明する。
図4に図示されるように、この保持機構検知部位80は、回動機構40に設定されており、保持機構60の保持状態と解除状態を検知することができるものである。この保持機構検知部位80による検知は、車体フロアFに対するシートクッション20の姿勢変化の検知によってなされる。
この検知をするために次の構成からなっている。図4に図示されるように、この保持機構検知部位80は、概略、ブラケット47、ブラケット82、ワイヤーケーブル接続端部90aからなる。この保持機構検知部位80は、回動機構40の第1連結リンク部材46aにおけるシートクッション姿勢変更回動軸50の位置にブラケット47が形成されている。このブラケット47は、第1連結リンク部材46aと一体に板状に形成されたものでシートクッション姿勢変更回動軸50の半径方向、かつ、車両上方側に立設されている。そしてこのブラケット47の車両後方側には、パネル部材24位置にブラケット82が設けられてワイヤーケーブル90のアウターケーシングが固定されている。そしてインナーケーブルが車両前側Frに伸びて、ブラケット47の略中央位置にワイヤーケーブル接続端部90aとして接続されている。
そして、図2に図示されるように、シートクッション20が起倒回動されると、車体フロアFに対する姿勢が変化するため、回動機構40の連結リンク部材46がシートクッション姿勢変更回動軸50を中心として回動する。これに伴って、このブラケット47も同時に、図2の図示上反時計回転方向に回動するため、このブラケット47に接続されたワイヤーケーブル90aとブラケット82の距離が長くなる。これにより、この長くなった分が、突出部材72に接続されたワイヤーケーブル90bによって引き方向の作動伝達がされて、突出部材72は、捩りばね部材74の付勢力に抗して突出位置72aから引っ込み位置72bに回動付勢をする構成となっている。
【0030】
次に、ダブルフォールディング機構12のシートバック連結構造16について説明する。
図5に図示されるように、シートバック連結構造16は、シートバック用回動機構33、捩りばね部材35、リクライニング機構36を有する。
詳しくは、シートバック用回動機構33は、車体フロアFと一体に固定された車体フロア側部材37と、この車体フロア側部材37に対しシートバック30の骨格を成すシートバックフレーム32を回動可能に連結する回動軸33bと、を有する。ここで、シートバックフレーム32は、パイプ状の部材と板状の部材とが剛接合されて形成されており、全体が門形状に形成されている。そして、車体フロア側部材37及び回動軸33bは、シートバックフレーム32の両脚部分の下端を回動可能に支持するために、シートバック30の幅方向に一対で設けられている。また、門形状のシートバックフレーム32は、その両脚部分に架け渡された補強部材32aと一体に剛接合されており、補強されている。
【0031】
次いで、捩りばね部材35は、図5の紙面向かって右側に示される側の回動軸33bと同軸上の位置に配置されている。詳しくは、捩りばね部材35は、車体フロア側部材37の外側に配置されている。この捩りばね部材35は、スパイラルスプリングによって構成されており、その中心側の端部が、車体フロア側部材37と一体に取り付けられる支持部35aとして形成されている。そして、捩りばね部材35の外側の端部は、シートバックフレーム32と一体に取り付けられる附勢部35bとして形成されている。ここで、シートバックフレーム32には、上記附勢部35bを掛合させるための掛合部材32bが突出して設けられている。この捩りばね部材35は、シートバックフレーム32を車体フロア側部材37に対して車両前側Frに倒し込む方向に回動附勢するべく、予め捩り込まれた状態で組み付けられている。このスパイラルスプリングから成る捩りばね部材35は、回動軸33bの取付位置に配設され、この取付位置において捩れ変形するコンパクトな構成とされている。
【0032】
次いで、リクライニング機構36は、シートバックフレーム32の両脚部分と各車体フロア側部材37との間に設けられており、これらの連結構造を構成している。このリクライニング機構36は、2つの円盤状部材が互いに重ね合わされて組み付けられており、その中心部に設けられた回動軸36a(回動軸33bとなる。)によって互いに軸回動可能な状態とされている。そして、上記一方の円盤状部材はシートバックフレーム32と一体に剛接合されており、他方の円盤状部材は車体フロア側部材37と一体に剛接合されている。これにより、シートバックフレーム32が、回動軸36aを中心として、車体フロア側部材37に対して相対回動可能とされている。また、リクライニング機構36の内部には、図示しないロック機構が組み込まれている。このロック機構は、その作動状態を切換えることにより、上記の相対回動を許容する解除状態と規制するロック状態とに切換えられるようになっている。このリクライニング機構36のロック作動状態の切換えは、図示しないリクライニングレバーの操作にしたがって行われる。すなわち、リクライニング機構36は、リクライニングレバーの操作を行う前の常時は、上記相対回動を規制したロック状態として保持されている。そして、リクライニング機構36は、リクライニングレバーの操作を行うことにより、上記の相対回動を許容する解除状態に切換えられる。
また、図5に良く示されるように、両リクライニング機構36は、これらの間に架け渡されるようにして設けられた連結軸36bによって互いに連結されている。この連結軸36bは、両リクライニング機構36の間で前述したロック機構の作動状態を同期させるべく、これらの間で回動力の伝達を行う。したがって、両リクライニング機構36は、リクライニングレバーの操作状態に応じて、常に、ロック作動状態の切換えが同期して行われる。
なお、このリクライニング機構36の構成は、公知のものであり、より詳しい内容は特開2003−9979号公報等の文献に開示されている。
【0033】
上記構成からなる本実施例における車両用シートのダブルフォールディング機構の作動は次の通りである。
先ず、車両用シート10を着座姿勢状態から格納姿勢状態にする作動構成について説明する。
図1に図示されるように、シートクッション20が車体フロアFに対して倒伏したシートクッション着座姿勢状態位置20X(仮想線)に位置し、シートバック30は車体フロアFに対して起き上がったシートバック起立姿勢状態位置30Xに位置している。
このとき、シートクッション20がシートクッション着座姿勢状態位置20X(仮想線)に位置する状態では、保持機構検知部位80におけるブラケット82とワイヤーケーブル接続端部90aの距離は小さくなる。そのため、シートクッション20の後端部に設けられた突出部材72は、捩りばね部材74の付勢力によって、車両後側Re方向に突き出した位置である突出位置72a(図1参照)に回動付勢された状態を保っている。シートクッション20は、シートクッション着座姿勢状態位置20X(仮想線)に位置している状態では、シートバック30の下端部に潜り込んだ状態のため突出部材72が突出位置72aに位置した状態においてもシートバック30の下端部では干渉しない状態となる。
この状態において、ウェビングストラップ66の操作部を車両前側Frに引っ張ると、ウェビングストラップ66の他端側と接続されたロック爪62が、捩りばね部材63の付勢力に抗して図2の図示上、回動軸62cを中心にして反時計回転方向に回動される。
図2に図示されるように、ロック爪62が回動軸62cを中心にして反時計回転方向に回動されると、ロック爪62の係合凹部62aとストライカ64の係合が解除されて、シートクッション20に備えられたトーションスプリング52(図4参照)の付勢力が働きシートクッション20は、前端部が車両上方側へ浮き上がったシートクッション跳ね上げ状態位置20Yに起こし上げられて回動付勢される。
これと同時に、シートクッション側係合部材26と車体フロア側被係合部材39の両係合部材は、シートクッション着座姿勢状態位置20Xの位置においての係合状態から、シートクッション跳ね上げ状態位置20Yの位置では、シートクッション側係合部材26が車両前側Frに移動し両係合部材の係合状態が解除される。そのため、シートクッション20がシートクッション跳ね上げ状態位置20Yからシートクッション格納姿勢状態位置20Zへ起倒回動可能な状態となる。
このとき、図2に図示されるように、シートクッション20がシートクッション跳ね上げ状態位置20Yに起こし上げられると、回動機構40の連結リンク部材46がシートクッション姿勢変更回動軸50を中心として回動する。これに伴って、このブラケット47も同時に、図2の図示上反時計回転方向に回動するため、このブラケット47に接続されたワイヤーケーブル90aとブラケット82の距離が大きくなる。これにより、この大きくなった分が、突出部材72に接続されたワイヤーケーブル90bによる引き方向の作動伝達となり、突出部材72は、突出位置72aから引っ込み位置72bに回動移動をする構成となっている。
これにより、シートクッション20がシートバック30に接触しないで起倒回動を可能とする構成となっている。
次に図3に図示されるように、更にウェビングストラップ66の操作部を車両前側Frに引っ張ると、シートクッション20がシートクッション起倒回動軸48を中心に起倒回動されて、シートクッション格納姿勢状態位置20Zに回動移動する。
そして、図1に図示されるように、シートバック30のリクライニング機構36を解除して、シートクッション20を起こし上げる前の設置スペースP内に倒し込み、シートバック格納姿勢状態位置30Zに倒伏させる。これにより、車両用シート10をコンパクトな姿勢状態として格納することができ、車両用シート10の設置されていたスペースを空けて荷室スペースLとして利用できるようになる。
【0034】
次に、車両用シート10を格納姿勢状態から着座姿勢状態にする作動構成について説明する。
図1に図示されるように、先ず、シートバック格納姿勢状態位置30Zに位置しているシートバック30をシートバック起立姿勢状態位置30X(仮想線)に起こし上げて、リクライニング機構36によって固定する。
次に、図3に図示されるように、シートクッション格納姿勢状態位置20Zに位置するシートクッション20をシートクッション起倒回動軸48を中心に車両後側Re方向に倒伏回動させて、シートクッション跳ね上げ状態位置20Yまで回動移動させる。このとき、シートクッション20がシートクッション格納姿勢状態位置20Zからシートクッション跳ね上げ状態位置20Yに回動移動完了するまでの間は、ロック爪62とストライカ64との係合状態が解除されて、シートクッション20と回動機構40の保持が解除された解除状態を保って回動させる。そうすると、保持機構検知部位80におけるブラケット82とワイヤーケーブル接続端部90aの距離は大きい状態を保つため、シートクッション20の後端部に設けられた突出部材72は捩りばね部材74の付勢力に抗して、シートクッション20の下方方向に回動されてシートクッション20の後端部に引っ込められる引っ込み位置72bに回動付勢された状態を維持する。この突出部材72がこの引っ込み位置72bに位置している状態においては、シートクッション20がシートバック30に接触しないでシートクッションの倒伏回動が可能となるため、シートクッション20をシートクッション側係合部材26と車体フロア側被係合部材39の両係合部材が係合可能な正規のシートクッション跳ね上げ状態位置20Yの姿勢位置に回動移動させることができるため、両係合部材が係合可能な状態に位置させることができる。
図6に図示されるように、仮に、シートクッション20がシートクッション格納姿勢状態位置20Zからシートクッション跳ね上げ状態位置20Yに回動移動完了するまでの間に、ロック爪62の係合凹部62aにストライカ64が係合されて、シートクッション20と回動機構40(図4参照)が保持された保持状態となると、保持機構検知部位80におけるブラケット82とワイヤーケーブル接続端部90aの距離は小さい状態となる。そのため、シートクッション20の後端部に設けられた突出部材72は、捩りばね部材74の付勢力によって、車両後側Re方向に突き出した位置である突出位置72aに回動付勢された状態となる。そうすると、突出部材72がシートバック30に回動不能に接触することとなり、シートクッション20を正規のシートクッション跳ね上げ状態位置20Yまで回動移動することができなくなる。
図2に図示されるように、シートクッション20を正規のシートクッション跳ね上げ状態位置20Yに回動移動完了後、シートクッション20に備えられたトーションスプリング52(図4参照)の付勢力に抗して、シートクッション20の上部を下方に押圧してシートクッション着座姿勢状態位置20Xまで沈み込ませるように回動移動させる。そうすると、連結リンク部材46がシートクッション起倒回動軸48を中心に時計回転方向に回動すると共に、シートクッション20がシートクッション姿勢変更回動軸50を中心に回動してシートクッション20の前端部が車両下方に移動し、後端部がシートバックの下端部に潜り込み移動する。そして、ロック爪62の係合凹部62aと、ストライカ64が自動的に係合されて、シートクッション20と回動機構40(図4参照)の固定がされる。すなわち、シートクッション20がシートクッション着座姿勢状態位置20Xにまで回動移動されると、ストライカ64は、ロック爪62の先端テーパー部に接触し、捩りばね部材63の付勢力に抗してロック爪62を反時計回転方向に回動させて係合凹部62aとの係合をする。このとき、このロック爪62とストライカ64の係合と共に、シートクッション側係合部材26が、車両後側Re方向に移動をして車体フロア側被係合部材39との係合位置で係合を完了する。このとき、保持機構検知部位80におけるブラケット82とワイヤーケーブル接続端部90aの距離は小さい状態となる。そのため、シートクッション20の後端部に設けられた突出部材72は、捩りばね部材74の付勢力によって、車両後側Re方向に突き出した位置である突出位置72aに回動付勢された状態となる。図1に図示されるように、シートクッション20は、シートクッション着座姿勢状態位置20X(仮想線)に位置している状態では、シートバック30の下端部に潜り込んだ状態のため突出部材72が突出位置72aに位置した状態においてもシートバック30の下端部では干渉しない状態となる。そうして、シートクッション20と回動機構40(図4参照)が固定が完了し、シートクッション20は、正規のシートクッション着座姿勢状態位置20Xに倒伏回動をすることができる。
【0035】
この構成によれば、回動機構40に設定された保持機構検知部位80は、シートクッション20が保持機構60により保持された保持状態とシートクッション20の保持機構60による保持が解除された解除状態を検知することができる。また、突出部材72は、シートクッション20の起倒回動する際、シートバック30に回動不能に接触する突出位置72aと、回動可能に引っ込められる引っ込み位置72bとの間を作動する構成となっている。また、保持機構60検知部位80と突出部材72は、保持機構検知部位80による保持状態の検知で突出位置72a、解除状態の検知で引っ込み位置72bとなる関係でワイヤーケーブル90等の機械的伝達手段で接続されている。
仮に、シートクッション格納姿勢状態位置20Zからシートクッション着座姿勢状態位置20Xへの倒伏回動過程において、シートクッション20と回動機構40との不要な固定により保持機構60が保持状態となると突出部材72が突出位置72aとなり、この突出位置72aではシートクッション20の突出部材72がシートバック30と干渉するためシートクッション着座姿勢状態位置20Xへの倒伏回動ができない状態となる。これにより、事前に車体フロアFに対するシートクッション20の姿勢が、シートクッション20の後端部がシートバック30の下端部に潜り込む正規のシートクッション跳ね上げ状態位置20Yの姿勢では無いことを把握することができる。またシートクッション20と回動機構40との不要な固定を防ぐことができる。
そして、シートクッション20の姿勢をシートクッション20の後端部がシートバック30の下端部に潜り込ませた正規のシートクッション跳ね上げ状態位置20Yの姿勢位置にした上で、シートクッション着座姿勢状態位置20Xに倒伏することができる。そして、シートバック30の下端部の車体フロアF位置において、シートクッション側係合部材26と車体フロア側被係合部材39が確実に係合でき、シートクッション20と車体フロアFを固定して、シートクッション20の起倒回動を規制することができる。
そのため、従来に比べ、より一層ダブルフォールディング機構12のシートクッション20の倒伏回動過程による操作性が向上する。また、シートクッション20とシートバック30との干渉を未然に防ぐことができる。
【0036】
また、回動機構40に設定された保持機構検知部位80は、車体フロアFに対するシートクッション20の姿勢変化による検知をする構成とされている。これにより、シートクッション格納姿勢状態位置20Zからシートクッション着座姿勢状態位置20Xへの倒伏回動過程におけるシートクッション20の姿勢変化に伴い保持機構60の保持状態と解除状態の検知を把握できるため、シートクッション20をより一層、正規のシートクッション跳ね上げ状態位置20Yの姿勢にすることができる。
また、突出部材72は、回動軸73、捩りばね部材74からの比較的簡単な構成によって達成することができる。そのため、複雑な構成にすることなく、突出部材72の突出位置と引っ込み位置72bの切替をすることができる。
【0037】
本発明の車両用シートのダブルフォールディング機構は、本実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
例えば、本実施例においては、シートクッションフレーム22について、管状のワイヤー構造のフレーム構成を示したが他の構成も適用できる。例えば、合成樹脂製等の材料を用いてパネル形状に形成されたものでもよい。
【0038】
また、突出部材72について、管状のワイヤー構造のフレーム構成を示したが他の構成も適用できる。例えば、合成樹脂製等の材料を用いてブラケット状に形成されたものでもよい。また、図4の図示において突出部材72は、シートクッション20の後端部の一部に構成される例を示したが、シートクッション20の後端部全部を使用した形状でも良い。この場合、シートクッション側係合部材26と車体フロア側被係合部材39の係合の干渉しない形状にする必要がある。
【0039】
また、付勢手段としてトーションスプリング52について、シートクッションフレーム22のパネル部材24に配置する構成を示したが、他の弾性部材の適用もできる。例えば回動支軸42と第1連結リンク部材46aの連結部につるまき形状の捩りばね部材を配設する構成であってもよい。
また、ワイヤーケーブル90について、プル式(引張りタイプ)のワイヤーケーブル90について示したが、押し引き両用のプッシュプル形式のワイヤーケーブル90であってもよい。また、機械的伝達手段の代表例としてワイヤーケーブル90の構成について説明したが、リンク伝達により伝達する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施例に係る車両用シートの着座姿勢状態と格納姿勢状態を表した側面図である。
【図2】本実施例に係る車両用シートのシートクッションがシートクッション着座姿勢状態位置からシートクッション跳ね上げ状態位置となる状態を表した側面図である。
【図3】本実施例に係る車両用シートのシートクッションがシートクッション跳ね上げ状態位置からシートクッション格納姿勢状態位置となる状態を表した側面図である。
【図4】本実施例に係る車両用シートのシートクッションフレームを表した斜視図である。
【図5】本実施例に係る車両用シートの車体フロア側部材及びシートバックフレームを表した斜視図である。
【図6】本実施例に係る車両用シートのシートクッションがシートクッション格納姿勢状態位置からシートクッション着座姿勢状態位置への倒伏回動過程において、シートクッションと回動機構との不要な固定により保持機構が保持状態となる状態を表した側面図である。
【図7】従来における車両用シートのシートクッションがシートクッション着座姿勢状態位置からシートクッション跳ね上げ状態位置となる状態を表した側面図である。
【図8】従来における車両用シートのシートクッションがシートクッション着座姿勢状態位置に倒伏する前にシートクッションと回動機構が保持機構によって固定された状態を表した側面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 車両用シート
12 ダブルフォールディング機構
14 シートクッション連結構造
16 シートバック連結構造
20 シートクッション
20X シートクッション着座姿勢状態位置
20Y シートクッション跳ね上げ状態位置
20Z シートクッション格納姿勢状態位置
22 シートクッションフレーム
23 クッションパッド
24 パネル部材
26 シートクッション側係合部材
30 シートバック
30X シートバック起立姿勢状態位置
30Z シートバック格納姿勢状態位置
32 シートバックフレーム
32a 補強部材
32b 掛合部材
33 シートバック用回動機構
33b 回動軸
35 捩りばね部材
35a 支持部
35b 附勢部
36 リクライニング機構
36a 回動軸
36b 連結軸
37 車体フロア側部材
38 サイドフレーム
38a 補強部材
38b 補強部材
39 車体フロア側被係合部材
40 回動機構
42 回動支軸
44 連結軸
46 連結リンク部材
46a 第1連結リンク部材
46b 第2連結リンク部材
47 ブラケット
48 シートクッション起倒回動軸
50 シートクッション姿勢変更回動軸
52 トーションスプリング
60 保持機構
62 ロック爪
62a 係合凹部
62c 回動軸
63 捩りばね部材
64 ストライカ
66 ウェビングストラップ
72 突出部材
72a 突出位置
72b 引っ込み位置
73 回動軸
74 捩りばね部材
75 ブラケット
80 保持機構検知部位
82 ブラケット
90 ワイヤーケーブル
90a ワイヤーケーブル接続端部
90b ワイヤーケーブル接続端部
Fr 車両前側
Re 車両後側
F 車体フロア
L 荷室スペース
P 設置スペース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックから構成されて着座使用可能な姿勢状態に保持されているシートが、該保持状態を解除する解除手段の操作によって、シートクッションが車体フロアに対して倒伏したシートクッション着座姿勢状態位置から、車体フロアに対して起立したシートクッション格納姿勢状態位置に起こし上げられると共に、
該起こし上げられる前のシートクッションの設置スペースにシートバックが倒し込まれたシートバック格納姿勢状態位置に作動する車両用シートのダブルフォールディング機構であって、
前記シートクッションを前記シートクッション着座姿勢状態位置と前記シートクッション格納姿勢状態位置との間を起倒回動可能とする回動機構が前記シートクッションと前記車体フロアとの間に配設されており、
前記回動機構は前記シートクッションと前記車体フロアとの間を連結する連結リンク部材を備え、該連結リンク部材の一端と他端とにおける前記シートクッションと前記車体フロアとの連結は起倒回動可能に枢支された連結とされており、
該回動機構により支持されたシートクッションを車体フロアに対してシートクッションの前端部が車両上方側へ浮き上がるシートクッション跳ね上げ状態位置に起こし上げる回動方向に付勢する付勢手段を有しており、
該付勢手段により回動付勢されたシートクッションを該付勢手段の付勢力に抗してシートクッション着座姿勢状態位置に保持する保持機構を有しており、
前記シートバックの下端部の車体フロア位置には、シートクッションの後端部に設けられたシートクッション側係合部材と係合する車体フロア側被係合部材が設置されており、
前記シートクッション跳ね上げ状態位置から前記シートクッション着座姿勢状態位置への倒伏回動過程におけるシートクッション後端部がシートバックの下端部に潜り込み移動するときに、シートクッションの後端部に設けられたシートクッション側係合部材が車体フロア位置に設置された車体フロア側被係合部材に係合して前記シートクッションの起倒回動を規制する構成となっており、
前記回動機構には、シートクッションが前記保持機構により保持された保持状態と、シートクッションの保持機構による保持が解除された解除状態を検知することのできる保持機構検知部位が設定されており、
前記シートクッションのシートバックとの近接位置には、前記シートクッションが前記シートクッション着座姿勢状態位置と前記シートクッション格納姿勢状態位置との間を起倒回動する際にシートバックに回動不能に接触する突出位置と、回動可能に引っ込められる引っ込み位置との間を作動する突出部材が配設されており、
前記保持機構検知部位と前記突出部材とは、前記保持機構検知部位による保持状態の検知で前記突出部材が突出位置となり、前記保持機構検知部位による解除状態の検知で前記突出部材が引っ込み位置となる関係でワイヤーケーブル等の機械的伝達手段で接続されていることを特徴とする車両用シートのダブルフォールディング機構。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのダブルフォールディング機構であって、
前記保持機構検知部位による保持状態と解除状態の検知は、車体フロアに対するシートクッションの姿勢変化によって検知することを特徴とする車両用シートのダブルフォールディング機構。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートのダブルフォールディング機構であって、
前記シートクッション後端部のシートバックとの近接位置には、前記突出部材を回動させるための回動軸を有し、
該回動軸には、弾性部材を有しており、
前記突出部材が、常時は、該弾性部材の付勢力によって突出位置方向に付勢されていることを特徴とする車両用シートのダブルフォールディング機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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