説明

車両用シートの回動機構

【課題】車両用シートをフロア面に倒し込んだ際にかかるシートとフロア側の面との接触時の負荷を軽減する。
【解決手段】シート1をフロアFに対して起倒回動可能に支持する回動機構80である。固定部材82と可動部材81と巻きばね84とを有する。シート1には体重検知センサ7が配設されていると共にストライカSに係脱可能なロック装置5が配設されている。ロック装置5はストライカSに押込まれることで係合状態となる押込み式のロック構造となっている。可動部材81と固定部材82との連結は粘性流体を用いたロータリーダンパ90を介して行われている。ロータリーダンパ90はシート1が起倒回動する双方向の動きに対して制動作用力を及ぼし、シート1を倒し込む回動方向に対して働く制動作用力が起こし上げる回動方向に対して働く制動作用力よりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの回動機構に関する。詳しくは、車両のフロアに対してシートを起倒回動可能に支持する車両用シートの回動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の座席用シートには、これを車両のフロア面から起こし上げて格納した姿勢状態とすることのできるタンブル機構が採用されているものがある。このタンブル機構は、シートをその前端側の部位でフロアに対して起倒回動可能にヒンジ連結している。そして、このタンブル機構には、シートをフロア面から起こし上げる回動方向に附勢するバネ部材が組み付けられている。ここで、下記特許文献1には、シートを起こし上げの回動方向に附勢するつる巻きバネが組み込まれたシート装置が開示されている。この開示技術では、2個のつる巻きバネが互いに逆の回動方向に附勢力を及ぼすかたちで組み付けられており、一方のつる巻きバネがシートの起こし上げ回動附勢力に対してブレーキ力を作用させるようになっている。
一方、シートには、その後端側の部位に、フロア側に設置されたストライカに対して係脱可能なロック装置が配設されている。このロック装置は、シートをフロア面上に落とし込むように押込み操作をすることによってストライカと係合する。したがって、このストライカとの係合により、シートをフロア面上に倒伏させた姿勢状態として保持することができる。このロック装置は、シート格納用の操作レバーなどを操作することによって、前述したストライカとの係合状態から解除されるようになっている。したがって、この解除により、シートは、タンブル機構に組み付けられたバネ部材の附勢に従って、フロア面から自動的に起こし上げられていく。
なお、フロア面から起こし上げられたシートを元の着座姿勢に戻すには、シートを上述したバネ部材の附勢に抗して倒し込んでいき、ロック装置をストライカと係合させればよい。これにより、シートを再びフロア面上に倒伏させた姿勢状態として保持することができる。
【特許文献1】特開2003−327028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した従来の技術では、シートの倒し込み操作によってロック装置をストライカと係合させる際に、その係合時にかける押圧力の弾みでシートがフロア側の面に強く叩きつけられてしまうことがある。すなわち、シートは、これをフロア面に向けて倒し込んでいき、最後にロック装置をストライカに強く押込む操作をすることでフロアと係合する。このロック装置は、上記の強い押込み操作力を受けることによって、その内部の組付け部品が押し動かされてストライカと係合するようになっている。したがって、ロック装置がストライカと係合するのに合わせて、シートがその押圧力の弾みでフロア側の面に強く叩きつけられることとなる。
そのため、例えばシートにエアバッグの展開を制御する体重検知センサ等のセンサ部品が備え付けられているものでは、シートが叩きつけられた際の負荷によってセンサ部品に異常を与えてしまうおそれがある。
【0004】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートをフロア面に倒し込んだ際にかかるシートとフロア側の面との接触時の負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートの回動機構は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、車両のフロアに対してシートを起倒回動可能に支持する車両用シートの回動機構であり、固定部材と可動部材とバネ部材とを有する。固定部材は、フロアと一体的に配設されている。可動部材は、固定部材に相対回動可能に連結されて、シートと一体的に配設されている。バネ部材は、可動部材を固定部材に対してシートをフロア面から起こし上げる回動方向に附勢力を及ぼすことのできる配設状態とされている。シートには、フロア上に設置された係合部材に対して係脱させることのできるロック部材が配設されている。ロック部材と係合部材との係合構造は、ロック部材を係合部材に押込む押圧力をかけることで互いが押込まれて係合状態となる押込み式のロック構造となっている。シートをフロアに対して起倒回動可能に支持する可動部材と固定部材との連結は、粘性流体を用いたロータリーダンパを介して行われている。ロータリーダンパは、シートが起倒回動する双方向の動きの角速度に比例して、双方向にトルクを発生させて制動作用力を及ぼすことのできる構成となっている。そして、ロータリーダンパは、シートをフロア面に倒し込む一の回動方向に対して働く制動作用力が、シートをフロア面から起こし上げる他の回動方向に対して働く制動作用力よりも大きくなっている。
この第1の発明によれば、ロータリーダンパは、シートが起倒回動する双方向の動きに対して、それぞれの回動速度を抑制する制動作用力を作用させる。このロータリーダンパによる制動作用力は、シートをフロア面に倒し込む一の回動方向に対して比較的大きく働く。この一の回動方向に対して働く制動作用力は、ロック部材を係合部材に係合させる際のシートの押込み操作を伴う倒し込み方向への回動速度を抑制することのできる程度に設定されることが好ましい。これにより、ロック部材が係合部材と係合した後にシートがその押込み操作時の弾みでフロア側の当接面に勢い余って衝突するといった事態が防止される。そして、これによって、シートとフロア側の当接面との接触に伴うセンサ部品にかかる負荷が軽減される。また、他の回動方向に対して働く制動作用力は、シートの起こし上げ方向への回動速度を抑制することのできる程度に設定されることが好ましい。これにより、バネ部材の附勢に伴うシートの起こし上げ回動速度に弾みが付き過ぎないように抑制される。
【0006】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、シートには、乗員の体重を検知することのできる体重検知センサ等のセンサ部品が配設されている。
この第2の発明によれば、シートには体重検知センサ等のセンサ部品が配設されているため、シートは、勢い余ってフロア側の当接面と当接すると、センサ部品に異常を与えてしまうおそれのある構成となる。
【0007】
次に、第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、ロータリーダンパは、筒状のダンパーケースの中心軸線上にロータが軸回動可能に収納されていて、ダンパーケースと筒内部のロータとの間隙に形成された流体室に粘性流体が密閉状態で充填された構成となっている。流体室を仕切る隔壁部又はベーンには、ロータのダンパーケースに対する相対回動時に粘性流体を流通させることのできる流体通路が形成されていると共に、流体通路を通過する粘性流体の流量をその回動方向によって変化させることのできる弁部材が設けられている。弁部材は、シートがフロア面に倒し込まれる一の方向への回動時には、他の方向への回動時よりも、流体通路を通過する粘性流体の流量を絞り込むように作用する。
この第3の発明によれば、シートがフロア面に倒し込まれる一の方向への回動時には、ロータリーダンパに設けられた弁部材により、流体通路を通過する粘性流体の流量が絞り込まれる。これにより、ロータのダンパーケースに対する相対回動に比較的大きな制動作用力が働く。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、第1の発明によれば、双方向にトルクを発揮することができ、特にシートをフロア面に倒し込む回動方向に特化して比較的大きな制動作用力を及ぼすことのできるロータリーダンパを設けたことにより、ロック部材を係合部材と係合させる押込み操作時の弾みでシートがフロア側の当接面に勢い余って衝突するといった事態を防止することができる。これにより、車両用シートをフロア面に倒し込んだ際にかかるシートとフロア側の面との接触時の負荷を軽減することができる。そして、このロータリーダンパによって、シートをフロア面から起こし上げる際の回動速度の抑制も行うことができる。
更に、第2の発明によれば、シートに体重検知センサ等のセンサ部品が配設されていても、ロータリーダンパによってシートの回動速度が抑制されるようになっているため、シートの起倒回動時にセンサ部品に異常を与えるような負荷を与えないようにすることができる。
更に、第3の発明によれば、一の回動方向に比較的大きな制動作用力を及ぼす双方向にロータリーダンパを、筒状のダンパーケースの中心軸線上にロータが軸回動可能に収納された構成として具現化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
始めに、本実施例の回動機構80,80の構成について、図2を用いて説明する。ここで、図2には、シート1全体の概略構成が側面図によって表されている。なお、回動機構80,80は、後述するようにシート1とフロアFとの間に幅長方向に一対で配設されているが、各図ではそのうちの一方のみが表されている。
図2に示されるように、シート1は、その背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3とを有する。このシートバック2は、その幅長方向の両側の下端部に一対で配設されたリクライニング装置4,4を介してシートクッション3と連結されている。これらリクライニング装置4,4は、常時は、シートクッション3に対するシートバック2の傾き角度を固定することのできるロック状態に保持されている。そして、各リクライニング装置4,4は、それらに設けられた操作腕4a,4aを操作する操作ケーブル4k,4kの牽引操作を行うことにより、一斉にアンロック状態に切換えられるようになっている。これら操作ケーブル4k,4kは、後述するロック装置5,5のロック状態を解除するための解除レバー(図示省略)と接続されており、解除レバーの解除操作を行うことで牽引操作されるようになっている。ここで、シートバック2とシートクッション3との間には、シートバック2をシートクッション3側に引き寄せる前倒しの回動方向に附勢するばね部材(図示省略)が設けられている。これにより、シートバック2は、上述した図示しない解除レバーの解除操作を行うことで、リクライニング装置4,4の中心軸4rを中心にシートクッション3側に自動的に前倒しされる。これにより、図1に示されるように、シート1を折畳みの姿勢状態に切換えることができる。
【0011】
このシート1は、図2に戻って、シートクッション3の下部の幅長方向の両側に一対で配設されたスライド機構6,6によって、車両のフロアFに対して前後方向にスライド移動可能とされている。ここで、各スライド機構6,6は、シートクッション3側に設けられたアッパレール6u,6uと、フロアF側に設けられたロアレール6l,6lと、を有する。このアッパレール6u,6uは、ロアレール6l,6lに対してレールの長手方向である前後方向にスライド移動可能な状態に組み付けられている。このアッパレール6u,6uは、これと一体的に設けられた図示しないロック機構によって、常時は、ロアレール6l,6lに対するスライド移動が規制されたロック状態として保持されている。これにより、アッパレール6u,6uは、常時はロアレール6l,6lと一体的な状態となっている。このロック機構は、図示しない操作レバーによる解除操作を行うことによってアッパレール6u,6uのスライド移動を許容したアンロック状態に切換えられるようになっている。
また、上記したアッパレール6u,6uとシートクッション3の下端側の骨格部分に設けられたロアアーム3fとの間には、体重検知センサ7が設けられている。この体重検知センサ7は、シート1に着座した乗員の体重を検知してエアバッグの展開を制御する目的で設置されている。すなわち、体重検知センサ7は、シート1に子供等の小柄な者が着座した場合には、その体重を検知してエアバッグを展開させないように制御することにより、エアバッグの展開によって及ぼされる危害を防止するようになっている。
【0012】
このシート1は、その着座使用時には、前述した各ロアレール6l,6lの前端側の下部位置に設けられた一対の回動機構80,80と、後端側の下部位置に設けられた一対のロック装置5,5とによって、車両のフロアFに係合した状態として保持されている。
前者の回動機構80,80は、各ロアレール6l,6lと一体的となっているシートクッション3をフロアFに対して起倒回動可能にヒンジ連結している。これら回動機構80,80には、シートクッション3をフロアF面から起こし上げる回動方向に附勢する巻きばね84,84がそれぞれ組み付けられている。ここで、巻きばね84,84が本発明のバネ部材に相当する。これら巻きばね84,84によって発揮される附勢力は、図1に示されるように、シート1全体をその自重に抗してフロアF面から自動的に起こし上げることのできる大きさに設定されている。
後者のロック装置5,5は、フロアF上に幅長方向に並べて配設された2本の棒状のストライカS,Sに対してそれぞれ係脱することのできる構成を備えている。ここで、ロック装置5,5が本発明のロック部材に相当し、ストライカS,Sが本発明の係合部材に相当する。これらストライカS,Sは、金属製の棒状部材として形成されており、フロアF上に形成された各窪みC,Cの内部に配設されていて、フロアFと一体的な固定状態とされている。一方、ロック装置5,5は、シートクッション3の下側に突出して設置されており、シートクッション3をフロアF上に落とし込む方向に押圧操作することで、各窪みC,C内に入り込む。ここで、ロック装置5,5は、各窪みC,C内に押し込まれる押圧力を受けることにより、各窪みC,Cの内部に配設されている各ストライカS,Sを受け入れて、これらと自動的に係合する押込み式のロック構造となっている。そして、各ロック装置5,5は、各ストライカS,Sと係合することにより、常時は、その係合状態を維持するようになっている。また、各ロック装置5,5は、図1に示されるように、図示しない解除レバーと接続された操作ケーブル5k,5kの牽引操作を行うことにより、各ストライカS,Sに対する係合状態が一斉に解除されるようになっている。
すなわち、シート1は、上述した各ロック装置5,5がストライカS,Sと係合している状態では、その前後側の端部がフロアFと係合した状態として保持される。そして、シート1は、図示しない解除レバーの解除操作をすることにより、図1に示されるように、前述した折畳みの姿勢状態に切換えられると共に、各ロック装置5,5とストライカS,Sとの係合状態が解除される。これにより、シート1は、回動機構80,80に組み込まれた各巻きばね84,84の附勢を受けてフロアF面から自動的に起こし上げられていく。
【0013】
ここで、本実施例の回動機構80,80には、シート1が起倒回動する双方向の動きに対して制動作用力を及ぼすことのできるロータリーダンパ90,90が組み付けられている。詳しくは、ロータリーダンパ90,90は、シート1が起倒回動する双方向の動きの角速度に比例して、双方向にトルクを発生させて制動作動力を及ぼすようになっている。そして、ロータリーダンパ90,90は、シート1をフロアF面に倒し込む一の回動方向に対して働く制動作用力が、シート1をフロアF面から起こし上げる他の回動方向に対して働く制動作用力よりも大きく働く構成となっている。
具体的には、上記一の回動方向(倒し込み方向)に対して働く制動作用力は、前述したロック装置5,5をストライカS,Sに係合させる際のシート1の押込み操作を伴う倒し込み方向への回動速度を抑制して、シート1を緩やかにフロアF側の当接面に接触させることのできる大きさ(例えば10N・m)に設定されている。これにより、シート1とフロアF側の当接面との接触時に前述した体重検知センサ7に衝撃的な負荷がかからないように緩衝されるようになっている。
また、上記他の回動方向(起こし上げ方向)に対して働く制動作用力は、シート1の起こし上げ方向への回動速度を抑制して、シート1を緩やかに起立位置に起こし上げることのできる大きさになっている。詳しくは、この制動作用力は、ロータリーダンパ90,90の構造上、前述した一の回動方向に対して働く制動作用力の2〜3割程度の力(例えば2〜3N・m)が発揮されるようになっている。この制動作用力により、シート1の起こし上げ方向の全回動領域において、巻きばね84,84の附勢に伴うシート1の起こし上げ回動速度に弾みが付き過ぎないように抑制する制動力が及ぼされるようになっている。
【0014】
ここで、図1においてシート1がフロアF上に倒伏した倒伏姿勢状態X1時における回動機構80,80の姿勢状態は、図3において詳しく表されている。そして、図1においてシート1が回動途中状態X2まで起こし上げられた時の回動機構80,80の姿勢状態は、図4において詳しく表されている。そして、図1においてシート1が起立姿勢状態X3まで起こし上げられた時の回動機構80,80の姿勢状態は、図5において詳しく表されている。
なお、図1における角度D1は、シート1の倒伏姿勢状態X1から回動途中状態X2までの成す角であり、本実施例では55度に設定されている。そして、角度D2は、シート1の回動途中状態X2から起立姿勢状態X3までの成す角であり、本実施例では25度に設定されている。これらの角度D1,D2は、それぞれ、シート1の各重心G1〜G3の位置と、シート1の回動中心である軸部材83とを結ぶ線分間の成す角となっている。
【0015】
以下、回動機構80,80の構成について詳しく説明する。なお、一対の回動機構80,80は、互いに同じ構成となっているため、以下では一方側の構成についてのみ説明する。
すなわち、回動機構80は、可動部材81と、固定部材82と、軸部材83と、巻きばね84と、ロータリーダンパ90とを有する。
詳しくは、図1に示されるように、可動部材81はロアレール6lの前端部に一体的に形成されており、固定部材82はフロアFと一体的に固定されている。そして、可動部材81は、軸部材83を介して固定部材82と連結されており、固定部材82に対して相対回動可能な状態とされている。これにより、可動部材81は、図3に示された倒伏姿勢状態X1と図5に示された起立姿勢状態X3との間で起倒回動可能とされている。この可動部材81は、上記起立姿勢状態X3まで起こし上げられることにより、これに形成された長孔81hの端部が固定部材82に設けられたストッパピン82pと当接するようになっており、それ以上の起こし上げ方向への回動が規制されるようになっている。
そして、図3に良く示されるように、可動部材81の回動軸心である軸部材83の回りには、渦巻き状に多重巻きされて成る巻きばね84が巻装されている。この巻きばね84は、その半径方向の中心側の端部が、固定部材82と一体的に設けられた掛部82aに掛着されてこれと一体的に固定されている。そして、巻きばね84は、図3における紙面内時計回り方向に渦巻き形状が広がる向きに配置されており、渦巻き形状が巻き込まれた状態でその半径方向の外側の端部が可動部材81に掛着されている。詳しくは、巻きばね84の半径方向の外側の端部は、可動部材81と一体的に設けられた掛ピン81aに反時計回り方向に当接する位置に配置されている。これにより、可動部材81は、巻きばね84がその渦巻き形状を広げながらその外側の端部を反時計回りに回動させる巻き戻りの復元変形の動きに伴って、紙面内反時計回り方向に附勢力を受けるようになっている。そして、図1に戻って、これにより、シート1は、説明を省略した他方側の回動機構80に設けられた巻きばね84を含む2個の巻きばね84,84の附勢力を受けて、フロアF面から自動的に起こし上げられるようになっている。
【0016】
ここで、図1に戻って、シート1が回動途中状態X2まで起こし上げられた状態では、その重心G2の位置が、起こし上げ回動の中心となる軸部材83の上方近傍の位置まで到達した状態となる。この状態では、巻きばね84にかかるシート1の自重による負荷抵抗は低減された状態となっており、巻きばね84による附勢作用によってシート1の起こし上げの回動速度に弾みが付き易い状態となっている。しかし、このシート1の起こし上げ方向への回動に対しては、前述したロータリーダンパ90,90による制動作用力が発揮されるため、シート1は緩やかな速度に減速されながら起立姿勢状態X3まで起こし上げられていく。
【0017】
次に、ロータリーダンパ90の構成について説明する。すなわち、図8に示されるように、ロータリーダンパ90は、筒状のダンパーケース92の中心軸線上にロータ91が軸回動可能に組み付けられた構成となっている。ここで、図3を参照して、ロータ91は固定部材82と一体的に固定された軸部材83に対して回動方向に一体的となる連結状態とされている。そして、ダンパーケース92は、可動部材81と一体的に連結されている。これにより、ロータリーダンパ90は、軸部材83を中心とした可動部材81の起倒回動に伴って、ロータ91がダンパーケース92に対して相対的に軸回動するようになっている。
このロータリーダンパ90は、図8に戻って、ダンパーケース92の筒内部のロータ91との間に、シリコンオイル等の粘性流体が密閉状態で充填された流体室r,rが形成されている。ここで、粘性流体には、1000cst以上の粘度を有したものが用いられている。すなわち、ロータリーダンパ90によって発揮される制動作用力は、主に粘性流体の密閉度合いによって決定されるが、この密閉度合いは加工精度の良し悪しによって定められる。したがって、本実施例では、現状の加工精度によるロータリーダンパ90の密閉度を考慮して、1000cst以上の粘度を有した粘性流体を用いることにより、一の回動方向(倒し込み方向)に対して10N・mの制動作用力を発揮させ、他の回動方向(起こし上げ方向)に対して2〜3N・mの制動作用力を発揮させられるようにしている。このダンパーケース92には、流体室r,rを仕切る隔壁部92a,92aが軸対称の二箇所の位置に形成されている。一方、ロータ91には、上記した各隔壁部92a,92aの間の位置に羽形状のベーン91a,91aが一体的に設けられている。これらベーン91a,91aには、流体室r,rに充填された粘性流体を双方向に流通させることのできる流体通路o,oが形成されている。この流体通路o,oは、ロータ91をダンパーケース92に対して相対回動させることにより、各ベーン91a,91aが各隔壁部92a,92aの間を移動する動きに伴って各流体室r,r内の粘性流体が流通するようになっている。また、各ベーン91a,91aには、流体通路o,oを通過する粘性流体の流量を調整することのできる板バネ状の弁部材93,93が設けられている。
この弁部材93,93は、図9に示されるように、ロータ91の相対回動によって粘性流体が流体通路o,oに対して紙面内左方向に流れ込もうとする場合には、この粘性流体の流動圧を受けて撓み変形し、流体通路o,oの右側の入口を塞いだ姿勢状態となる。これにより、粘性流体が流体通路o,oに流れ込む流量が絞られて、かかる流動抵抗が増大し、ロータ91の同方向に対する相対回動に対して比較的大きな制動作用力が及ぼされる。また、これとは逆に、図10に示されるように、ロータ91の上記とは逆方向への相対回動によって粘性流体が流体通路o,oに対して紙面内右方向に流れ込もうとする場合には、弁部材93,93は、この粘性流体の流動圧を受けて撓み変形し、流体通路o,oの右側の出口を開けた姿勢状態となる。したがって、この場合には、粘性流体が弁部材93,93の弾性に抗してこれを撓み変形させながら流体通路o,oを通過するため、かかる流動抵抗によって、ロータ91の同方向に対する相対回動に対して制動作用力が及ぼされる。なお、この場合には、粘性流体は出入り口が開いた状態の流体通路o,oを通過するため、制動作用力は前述した図9の場合と比べて小さくなる。
なお、このロータリーダンパ90は従前公知のものであり、特開2004−3584号公報に開示されている構成と実質的に同じものである。
【0018】
上記の構成をまとめると、図1に示されるように、回動機構80,80は、ロック装置5,5が解除されることにより、巻きばね84,84の附勢力によってシート1をフロアF上の倒伏姿勢状態X1から自動的に起こし上げていく。このとき、シート1は、ロータリーダンパ90により発揮される制動作用力によって、その回動速度が抑制されながら起こし上げられていく。したがって、シート1は、その附勢による回動速度に弾みが付き易い領域でその回動速度が抑制されるため、シート1のような重量物が勢い余って起立姿勢状態X3まで起こし上げられる事態を防止することができる。
なお、起立姿勢状態X3に起こし上げられたシート1を倒伏姿勢状態X1に戻す操作を行えば、シート1を起こし上げの回動方向に附勢した元の姿勢状態に戻すことができる。そして、このシート1を倒し込む動きに伴って、各ロック装置5,5をフロアF上のストライカS,Sに押し込むことにより、これらを係合ロックさせてシート1をフロアF上にロックすることができる。このとき、シート1は、ロータリーダンパ90により発揮される制動作用力によって、その回動速度が抑制されながら倒し込まれていく。したがって、ロック装置5,5がストライカS,Sと係合した後にシート1がその押し込まれる動作時の弾みでフロアF側の当接面に勢い余って衝突するといった事態が防止される。これにより、シート1とフロアF側の当接面との接触による体重検知センサ7にかかる負荷が軽減される。
【0019】
次に、各ロック装置5,5の構成について、図6及び図7を用いて説明する。なお、各ロック装置5,5は、互いに同じ構成となっているため、このうちの一方について説明する。ここで、図6にはロック装置5とストライカSとが係合ロックした状態が表されており、図7にはロック装置5にストライカSが入り込んでいく様子が表されている。
すなわち、ロック装置5は、図6に示されるように、2枚のベース部材10,10と、フック20と、ポール30と、引張バネ40と、操作部材60と、図1に示された操作ケーブル5k,5kと、を有する。
【0020】
先ず、2枚のベース部材10,10について説明する。すなわち、各ベース部材10,10は、金属製の板状部材によって形成されており、互いの板面を向かい合わせた状態で、シートクッション3(図1参照)に一体的に固定されている。なお、各ベース部材10,10は、互いに同じ構成を備えているため、以下ではそのうちの一方について説明していく。
すなわち、図7に示されるように、ベース部材10には、下側に開口した凹部11が形成されている。この凹部11は、棒状のストライカSをその内部に受け入れることのできる大きさに形成されている。
また、ベース部材10の外周縁部位(紙面内右下側の部位)には、後述するフック20との当接によってその反時計回りの回動を規制することのできるストッパ部12が形成されている。このストッパ部12は、ベース部材10の外周縁部位から、その向かい合う他方側のベース部材10に向けて板厚方向に突出した形状として形成されている。
【0021】
次に、フック20について説明する。すなわち、フック20は、金属製の板状部材によって形成されており、上述した2枚のベース部材10,10の間に配置されている。そして、フック20は、これと一体的に連結された軸部材A1によって、2枚のベース部材10,10に対して相対回動可能に軸支されている。ここで、フック20は、ベース部材10に形成された凹部11よりも紙面内右側の位置に配置されている。
このフック20には、半径方向外方に開口した受入口21が形成されている。この受入口21は、棒状のストライカSをその内部に受け入れることのできる大きさに形成されている。そして、フック20は、その外周縁部位(紙面内上側の部位)に形成された掛部24に、引張バネ40の一端が掛着されている。この引張バネ40は、その他端側が後述するポール30に掛着されている。これにより、フック20は、常時は、引張バネ40の附勢によって、紙面内反時計回りの回動方向に附勢されている。そして、フック20は、常時は、この附勢によって、前述したベース部材10のストッパ部12に押し当てられた姿勢状態として保持されている。
ここで、フック20は、上記ストッパ部12に押し当てられた姿勢状態では、受入口21をベース部材10の凹部11の口内に露出させた姿勢状態となっている。そして、このとき、フック20は、受入口21の上側部位を成す上顎部位22も、凹部11の口内に露出させている。そして、受入口21の下側部位を成す下顎部位23は、ストライカSの凹部11への進入を阻害しない位置状態となっている。
また、フック20の外周縁部位、詳しくは、上顎部位22の紙面内上側の部位には、部分的に半径方向外方に突出した形状の角部25が形成されている。そして、これにより、角部25の下側の部位には、外周縁部位が半径方向に段差状に落ち込む形状の落込部26が形成されている。
【0022】
次に、ポール30について説明する。すなわち、ポール30は、金属製の板状の棒部材によって形成されており、上述した2枚のベース部材10,10の間に配置されている。そして、ポール30は、その下端部位が、これと一体的に連結された軸部材A2によって、2枚のベース部材10,10に対して相対回動可能に軸支されている。ここで、軸部材A2は、前述した軸部材A1と平行に配置されている。また、ポール30は、ベース部材10に形成された凹部11よりも紙面内左側の位置に配置されている。
このポール30は、その上端部位に形成された掛部31に、前述した引張バネ40の他端が掛着されている。これにより、ポール30は、引張バネ40の附勢によって、紙面内時計回りの回動方向に附勢されている。すなわち、ポール30と前述したフック20は、これらの間に掛け渡された引張バネ40の附勢によって、各々に形成された掛部31,24同士が互いに引き寄せられる方向に附勢されている。これにより、ポール30は、フック20がストッパ部12によって回動規制された姿勢状態では、このフック20に突出形成された角部25によって、その対抗面部となるガイド面部32が突き当てられた状態として保持されている。
また、ガイド面部32の紙面内上側の部位には、部分的にポール30の時計回り方向に突出した形状の爪部33が形成されている。ここで、ガイド面部32は、ポール30の半径方向外方に向けて滑らかに時計回り方向に突出していく曲面状に形成されている。そして、爪部33は、この曲面状に突出していくガイド面部32の上端部位を成しており、ガイド面部32と連続状に形成されている。
【0023】
したがって、上記構成のフック20やポール30は、ストライカSがベース部材10の凹部11に入り込んでくる動きによって、次のように作動する。すなわち、図7の仮想線で示されているように、ストライカSが凹部11の口内に入り込んでくると、ストライカSは、その口内に露出しているフック20の上顎部位22と当接する。
そして、この当接した状態からストライカSが更に入り込んでくることにより、フック20は、ストライカSの動きに押圧されて回動する。詳しくは、フック20は、前述した引張バネ40の附勢に抗して、時計回り方向に押し動かされる。そして、このとき、フック20は、角部25をポール30のガイド面部32に沿ってスライドさせながら回動していく。
そして、ストライカSが更に入り込んできて、フック20の角部25がガイド面部32の上側に乗り越えると、フック20やポール30は図6に示されている姿勢状態に切り換えられる。すなわち、先ず、角部25がガイド面部32の上側に乗り越えることにより、引張バネ40の附勢によって、爪部33が落込部26に落ち込む。そして、この状態でストライカSを入れ込む移動をやめると、フック20は、引張バネ40の附勢によって、反時計回りに回動しようとする。しかし、このとき、落込部26に落ち込んだ爪部33が、角部25の反時計回りの回動を当接によって規制する。これにより、フック20は、その反時計回りの回動が規制された状態となる。
ここで、フック20は、上記の規制がなされるまでの回動により、下顎部位23を、ストライカSの背後側(紙面内下側)に回し込んで凹部11を閉鎖した姿勢状態となる。これにより、ストライカSは、その入り込んだ凹部11と背後側に回し込まれた下顎部位23とによって、その周縁が囲い込まれた状態としてロックされる。
【0024】
次に、操作部材60について説明する。すなわち、図7に示されるように、操作部材60は、金属製の板状の棒部材によって形成されており、実線で図示されている一方側のベース部材10の板面の外側に配置されている。そして、操作部材60は、その下端が、前述した軸部材A2と一体的に連結されて、ベース部材10に対して相対回動可能に軸支されている。この軸部材A2は、ベース部材10を板厚方向に突き抜けて操作部材60と一体に連結されている。これにより、操作部材60は、ポール30と一体的に連結された状態となっている。
この操作部材60には、その上端部位に形成された掛部61に、図1に示された操作ケーブル5kの一端が掛け止められている。ここで、操作ケーブル5kの他端側は、前述したシートバック2をシートクッション3側に前倒しする際に使用される解除レバー(図示省略)に繋がれている。これにより、操作部材60は、解除レバーの操作に伴って牽引操作され、紙面内反時計回りに回動する。
したがって、操作部材60は、上記解除レバーの操作に伴う反時計回りの回動により、フック20の落込部26に落ち込んでいる爪部33を引き上げ、フック20の回動規制状態を解除する。これにより、フック20は、図7に示されるように、引張バネ40の附勢に従って時計回り方向に回動し、上顎部位22によってストライカSを凹部11の外側に押し出す。そして、これにより、ロック装置5に対するストライカSの係合状態が解除される。
なお、操作部材60は、解除レバーの操作をやめることにより、その牽引状態が解除される。これにより、ロック装置5は、再び、凹部11の内部にストライカSを入れ込むことによってこれと係合することのできる状態となる。
【0025】
続いて、本実施例の使用方法について説明する。
すなわち、先ず、初期状態として、図1に示されるように、シート1はフロアF上に倒伏した倒伏姿勢状態X1となっており、各ロック装置5,5はストライカS,Sとそれぞれ係合ロックした姿勢状態となっている。
そこで、シート1を折畳み姿勢状態としてその前方に起こし上げるために、図示しない解除レバーを操作する。これにより、シートバック2がシートクッション3側に前倒しされると共に、各ロック装置5,5のストライカS,Sとの係合ロック状態が解除される。そして、これにより、シート1は、回動機構80,80に組み付けられた巻きばね84,84の附勢力に従って、自動的に前方に起こし上げられていく。このとき、シート1は、ロータリーダンパ90,90により発揮される制動作用力によって、その回動速度が抑制されながら起こし上げられていく。したがって、シート1は、緩やかな速度に減速されながら、起立姿勢状態X3まで起こし上げられていく。
そして、起立姿勢状態X3に起こし上げられたシート1は、巻きばね84,84の附勢に抗してこれをフロアF面上の倒伏姿勢状態X1に戻す操作を行い、各ロック装置5,5をストライカS,Sと係合させることによって、シート1を起こし上げの回動方向に附勢した元の姿勢状態に戻すことができる。このとき、シート1は、ロータリーダンパ90,90により発揮される制動作用力によって、その回動速度が抑制されながら倒し込まれていく。したがって、ロック装置5,5がストライカS,Sと係合した後にシート1がその押込み操作時の弾みでフロアF側の当接面に勢い余って衝突するといった事態が防止される。これにより、シート1とフロアF側の当接面との接触による体重検知センサ7にかかる負荷を軽減し、体重検知センサ7に異常な負荷を与えないようにすることができる。
【0026】
このように、本実施例の回動機構80,80によれば、双方向にトルクを発揮することができ、特にシート1をフロアF面に倒し込む回動方向に特化して比較的大きな制動作用力を及ぼすことのできるロータリーダンパ90,90を設けたことにより、ロック装置5,5をストライカS,Sと係合させる押込み操作時の弾みでシート1がフロアF側の当接面に勢い余って衝突するといった事態を防止することができる。これにより、シート1をフロアF面に倒し込んだ際にかかるシート1とフロアF側の面との接触時の負荷を軽減することができる。したがって、シート1に配設された体重検知センサ7にかかる負荷も軽減することができる。そして、このロータリーダンパ90,90によって、シート1をフロアF面から起こし上げる際の回動速度の抑制も行うことができる。
すなわち、このロータリーダンパ90,90は、従前公知のものであるが、双方向の回動に対して同じ大きさの制動作用力を及ぼすことのできるタイプのダンパと比べると、一の回動方向に特化した大きな制動作用力を発揮させることができる。したがって、このように大きな制動作用力を発揮させることのできるロータリーダンパ90,90を用いることにより、シート1のような重量物が押込み操作時の弾みでフロアF側の当接面に勢い余って衝突するのを好適に防止することができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例について説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。
例えば、シートに配設されるセンサ部品は、体重検知センサに限定されず、着座センサ等の種々のセンサ部品を適用することができる。
また、押込み式のロック構造としてシート側にロック装置を設けフロア側にストライカを設けたものを示したが、シート側にストライカを設けてフロア側にロック装置を設けたものであってもよい。また、センサ部品の配設されていないシートに対して、ロータリーダンパを用いてそのフロア側の面との接触時の負荷を軽減するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1の回動機構の概略構成を側面視によって表した構成図である。
【図2】シート全体の概略構成を表した側面図である。
【図3】図1におけるシートの倒伏姿勢状態を拡大して表した構成図である。
【図4】図1におけるシートの起こし上げ回動途中状態を拡大して表した構成図である。
【図5】図1におけるシートの起こし上げ起立姿勢状態を拡大して表した構成図である。
【図6】ロック装置とストライカとが係合ロックした状態を表した構成図である。
【図7】ロック装置にストライカが入り込んだ状態を表した構成図である。
【図8】ロータリーダンパの概略を表した構成図である。
【図9】図8のIX−IX線切断面から見た断面図において粘性流体が紙面内左方向に流通した時の状態を表した構成図である。
【図10】粘性流体が紙面内右方向に流通した時の状態を表した構成図である。
【符号の説明】
【0029】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
3f ロアアーム
4 リクライニング装置
4r 中心軸
4a 操作腕
4k 操作ケーブル
5 ロック装置(ロック部材)
5k 操作ケーブル
6 スライド機構
6u アッパレール
6l ロアレール
7 体重検知センサ
S ストライカ(係合部材)
C 窪み
F フロア
10 ベース部材
11 凹部
11i 内周面
12 ストッパ部
20 フック
21 受入口
22 上顎部位
23 下顎部位
24 掛部
25 角部
26 落込部
30 ポール
31 掛部
32 ガイド面部
33 爪部
40 引張バネ
60 操作部材
61 掛部
A1,A2 軸部材
80 回動機構
81 可動部材
81a 掛ピン
81h 長孔
82 固定部材
82a 掛部
82p ストッパピン
83 軸部材
84 巻きばね(バネ部材)
90 ロータリーダンパ
91 ロータ
91a ベーン
92 ダンパーケース
92a 隔壁部
93 弁部材
o 流体通路
r 流体室
X1 倒伏姿勢状態
X2 回動途中状態
X3 起立姿勢状態
G1 重心
G2 重心
G3 重心
D1 角度
D2 角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアに対してシートを起倒回動可能に支持する車両用シートの回動機構であって、
前記フロアと一体的に配設された固定部材と、
該固定部材に相対回動可能に連結され前記シートと一体的に配設された可動部材と、
該可動部材を前記固定部材に対して前記シートをフロア面から起こし上げる回動方向に附勢力を及ぼすことのできる配設状態とされたバネ部材と、を有し、
前記シートには、前記フロア上に設置された係合部材に対して係脱させることのできるロック部材が配設されており、
該ロック部材と係合部材との係合構造は、前記ロック部材を係合部材に押込む押圧力をかけることで互いが押込まれて係合状態となる押込み式のロック構造となっており、
前記シートをフロアに対して起倒回動可能に支持する可動部材と固定部材との連結は、粘性流体を用いたロータリーダンパを介して行われており、
該ロータリーダンパは、前記シートが起倒回動する双方向の動きの角速度に比例して、双方向にトルクを発生させて制動作用力を及ぼすことのできる構成となっていて、前記シートをフロア面に倒し込む一の回動方向に対して働く制動作用力が前記シートをフロア面から起こし上げる他の回動方向に対して働く制動作用力よりも大きくなっていることを特徴とする車両用シートの回動機構。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートの回動機構であって、
前記シートには、乗員の体重を検知することのできる体重検知センサ等のセンサ部品が配設されていることを特徴とする車両用シートの回動機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートの回動機構であって、
前記ロータリーダンパは、筒状のダンパーケースの中心軸線上にロータが軸回動可能に収納されていて、該ダンパーケースと筒内部のロータとの間隙に形成された流体室に粘性流体が密閉状態で充填された構成となっており、
前記流体室を仕切る隔壁部又はベーンには、前記ロータのダンパーケースに対する相対回動時に粘性流体を流通させることのできる流体通路が形成されていると共に、該流体通路を通過する粘性流体の流量をその回動方向によって変化させることのできる弁部材が設けられており、
該弁部材は、前記シートがフロア面に倒し込まれる一の方向への回動時には、他の方向への回動時よりも、流体通路を通過する粘性流体の流量を絞り込むように作用することを特徴とする車両用シートの回動機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−94148(P2008−94148A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275120(P2006−275120)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】