説明

車両用シートの線状部材

【課題】車両用シートの線状部材において、複雑な構成とすることなく、取着対象に対して容易に取着可能な車両用シートの線状部材を提供する。
【解決手段】線状部材は、着座姿勢と収納姿勢とを切り替え可能な車両用シートのシートフレームに形成された線状部材挿通孔に挿通されて係止される。線状部材は、シートフレームに動力を伝達する線材131と、線材131の端部に取着され、線状部材挿通孔と係合する係合部材と、を備え、係合部材は、線材131に固定され、線状部材挿通孔に挿通される係合部材本体部と、線状部材挿通孔と線材131との相対位置を規制する規制部137と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの線状部材に係り、特に車両用シートにおいて動力を伝達するために備えられる車両用シートの線状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、通常の使用状態(乗員が着座可能な状態)からシートバックを前方に傾倒させて収納する収納状態に移行可能な車両用シートが知られている。このような車両用シートには、一般に、シートの各部分を動作させるための動力を伝達するケーブル、ワイヤー等の線状部材が備えられている。
【0003】
これらケーブル、ワイヤー等の線状部材の端部は、乗員によって操作される操作部に接続されており、乗員が操作部を操作することによってその動力が線状部材を介してシートフレームに伝達され、シートの形状(使用状態または収納状態)を任意に調整することが可能である。
【0004】
そして、このような線状部材を車両用シートに取着する際、正確な取着状態で、且つ容易に取り付け可能な技術が望まれていた。
このような車両用シートに備えられる線状部材の取着技術に関し、特許文献1では、シート跳ね上げ機構を備えた車両用シートにおいて、操作部に接続されたケーブルを車体側(ストライカ側)に備えられたケーブルに接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−50815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、線状部材(特許文献1では、「ケーブル」と記載されている)の端部において、爪片が備えられた係合部材が取り付けられており、一方、係合部材が係止される受け部材には、係合部材の爪片を係止するための孔部を備えた構成が開示されている。
このように、線状部材の端部に備えられた係合部材と、孔部が備えられた受け部材とを嵌合させることにより、正確な取着状態で線状部材を受け部材に固定することができる。
【0007】
しかし、特許文献1で開示された技術によれば、線状部材を取着する対象物において、孔部を有する受け部材を備える必要があり、部品点数が増加すると共に部品構成が複雑化し、その製造作業が煩雑になるという問題点があった。したがって、線状部材や取着対象(車両用シートまたは車体に備えられたブラケット等)をより簡単な構成とし、製造工程を簡素化することができる技術が望まれていた。
【0008】
さらに、特許文献1において開示された技術では、係合部材が備えられた線状部材を、受け部材が備えられた取着対象に取り付けるため、線状部材及び取着対象の部品点数が増加する。その結果、各部材の接合箇所が増えるため、取着部分の剛性が低下するという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、車両用シートの線状部材において、複雑な構成とすることなく、取着対象に対して容易に取着可能な車両用シートの線状部材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、車両用シートの線状部材において、係合部材の剛性を向上させ、取着対象に対して確実に取着可能な車両用シートの線状部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明の請求項1に係る車両用シートの線状部材によれば、着座姿勢と収納姿勢とを切り替え可能な車両用シートのシートフレームに形成された線状部材挿通孔に挿通されて係止される線状部材であって、前記シートフレームに動力を伝達する線材と、該線材の端部に取着され、前記線状部材挿通孔と係合する係合部材と、を備え、該係合部材は、前記線材に固定され、前記線状部材挿通孔に挿通される係合部材本体部と、前記線状部材挿通孔と前記線材との相対位置を規制する規制部と、を備えてなること、により解決される。
【0011】
着座姿勢と収納姿勢とを切り替え可能な車両用シートにおいて備えられるシートフレームには、動力を伝達するための線材が備えられる。そして、その線材の端部において係合部材が備えられており、その係合部材は、シートフレームに設けられた線状部材挿通孔に差し込まれることによって線状部材挿通孔と係合する。このとき、係合部材に設けられた規制部によって、線材と線状部材挿通孔との相対位置が規制される。
このように、本発明の線状部材は、簡単な構成の係合部材を備えるだけで良く、作業者は、本発明の線状部材をシートフレームに取着する際、線状部材挿通孔に係合部材を差し込むだけで容易に取着作業を行うことができる。また、シートフレームには線状部材挿通孔を設けるだけで良く、簡単な構成で線状部材を取り付けることが可能となるため、線状部材の取着作業において、製造工程が簡素化され、作業性が向上する。
さらに、規制部材によって線状部材挿通孔と線材の位置が規制されるため、適切な取着状態で線状部材をシートフレームに取り付けることができる。
【0012】
また、請求項2のように、前記規制部は、前記係合部材本体部から突出した突出部であり、該突出部は、前記係合部材本体部と一体に形成されてなると好適である。
このように、線材の端部において備えられた係合部材の規制部を、係合部材本体部から突出した突出部とし、さらに、係合部材本体部と一体に形成することにより、係合部材の構成が簡素化するだけでなく、剛性が向上する。したがって、シートフレームに対して、線状部材を確実に取着することができる。
【0013】
さらに、請求項3のように、前記係合部材は、前記線材の端部が埋設された状態で鋳込み成形によって形成され、前記突出部の少なくとも一部は、前記線材と重なる位置に形成されてなると好適である。
このように、係合部材は線材が鋳込まれた状態で成形されるため、係合部材と線材との取付剛性が向上する。そして、突出部の少なくとも一部が線材と重なる位置に形成されていると、突出部によって厚みが大きくなっている部分に線材の端部が配設されるため、さらに係合部材と線材との接合強度が向上する。
【0014】
また、請求項4のように、前記突出部は、前記線材の端面と、前記係合部材本体部の前記線材が延出された側の端面と、の間に形成されてなると好ましい。
このように、係合部材本体部に線材が挿入された係合部材において、線材の端面と、係合部材本体部において線材が挿入された端面と、の間において突出部が備えられた構成とすると、突出部が線材に対して完全に重なる位置に設けられるため、線材の端部周辺に備えられる係合部材の厚み(太さ)が確保され、係合部材に対して線材がより一層強固に固定される。したがって、シートフレームに線状部材を取着する際、取付剛性が向上する。
【0015】
さらに、請求項5のように、前記係合部材本体部は、前記線材の延在方向に沿って形成された基礎部と、該基礎部から折曲された折曲部と、を有し、前記規制部は、前記基礎部の延在方向と前記折曲部の延在方向とに対してそれぞれ直交する方向に沿って、前記基礎部の側面から延出して形成されてなると好適である。
このように、係合部材の係合部材本体部は、線材の本体方向に沿って延在する基礎部と、基礎部から折曲された折曲部を備えており、略鉤状に形成される。そして、その鉤状に形成された係合部材本体部の側面から、折曲部の折曲方向に対して略直交するように規制部が形成されている。これに対し、例えば、折曲部の折曲方向に沿って規制部が延設された構成とすると、係合部材において、設曲部の設曲方向の大きさが規制部の大きさ分だけ大きくなってしまうという不都合があるが、上記構成により、係合部材の大きさを最小限に止めることが可能である。
また、折曲部の延在方向に対して略直交する方向において、基礎部の側面から規制部が延出されるので、規制部の厚みによって係合部材自体の剛性を向上させることができる。
さらに、上記構成の係合部材は、車両用シートのシートフレームに備えられた線状部材挿通孔の周縁に対して、折曲部と規制部とが当接して係合しやすくなるため、線状部材は線状部材挿通孔に対して適切な挿入状態で取り付け可能となる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、線状部材を構成する線材の端部に取り付けられた係合部材において、規制部が備えられているため、シートフレーム側に設けられた線状部材挿通孔を挿入するだけで、線状部材がシートフレームに対して容易に取着可能である。
請求項2の発明によれば、係合部材に形成される規制部を、係合部材本体部から突出して係合部材本体部と一体に形成された突出部とすることにより、係合部材の剛性が向上する。したがって、線状部材に備えられた係合部材の剛性が向上するため、シートフレームに対して線状部材を確実に取り付けることができる。
請求項3の発明によれば、係合部材において線材が鋳込まれて成形されているため、線材と係合部材の接合強度が向上する。また、線材に対して突出部の一部が重なるように配設されているため、さらに線材と係合部材の接合強度が向上する。このように、線材と係合部材との接合強度が向上するため、線状部材をシートフレームに取り付ける際、強固に取り付けることが可能となる。
請求項4の発明によれば、突出部が線材に対して完全に重なる位置に設けられるため、線材端部周辺の剛性を向上させることができ、係合部材が線材に対して強固に取り付けられる。その結果、線状部材をシートフレームの線状部材挿通孔に対して強固に取着することができる。
請求項5の発明によれば、係合部材本体部を鉤状に形成し、適当な位置に規制部を備えることにより、係合部材をコンパクト化することができる。さらに、係合部材の剛性が向上するため、シートフレームに対して線状部材を強固に取着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両用シートS1を搭載した車両後部の側面模式図である。
【図2】車両用シートS1の斜視図である。
【図3】クッションフレーム11の斜視図である。
【図4】シートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第1図)である。
【図5】シートバックフレーム21を前側から見たときの図である。
【図6】ヘッドレスト30の内部フレーム31を示す図である。
【図7】ヘッドレスト回動機構50を前側から見たときの図である。
【図8】ヘッドレスト回動機構50を後側から見たときの図である。
【図9】ヘッドレスト回動機構50の斜視図である。
【図10】シートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第2図)である。
【図11】シートクッション跳ね上げ機構60を上方から見たときの図である。
【図12】シートバック支持ユニット90を側方から見たときの図である。
【図13】線状部材130の斜視図である。
【図14】線状部材130を側方から見たときの図である。
【図15】線状部材130を上方から見たときの図である。
【図16】線状部材130の説明図である。
【図17】線状部材130とシートフレームFとの係合状態の説明図(第1図)である。
【図18】線状部材130とシートフレームFとの係合状態の説明図(第2図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態(以下、本実施形態)について、図1乃至図18を参照して説明する。なお、以降に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。さらに、以下の説明で挙げる材質や形状等は本発明の効果を発揮させるための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0019】
図1乃至図18は、本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS1)を説明するものである。図1は、車両用シートS1を搭載した車両後部の側面模式図である。図2は、車両用シートS1の斜視図である。図3は、クッションフレーム11の斜視図である。図4は、シートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第1図)である。図5は、シートバックフレーム21を前側から見たときの図である。図6は、ヘッドレスト30の内部フレーム31を示す図である。図7乃至図9は、ヘッドレスト回動機構50を示す図であり、図7は、ヘッドレスト回動機構50を前側から見たときの図であり、図8は、後側から見たときの図であり、図9は、斜視図である。図10は、シートクッション跳ね上げ機構60の斜視図(第2図)である。図11は、シートクッション跳ね上げ機構60を上方から見たときの図である。図12は、シートバック支持ユニット90を側方から見たときの図である。図13乃至図18は、ケーブル130を示す図であり、図13は、線状部材130の斜視図であり、図14は、線状部材130を側方から見たときの図であり、図15は、線状部材130を上方から見たときの図であり、図16は、線状部材130の説明図であり、図17は、線状部材130とシートフレームFとの係合状態の説明図(第1図)であり、図18は、線状部材130とシートフレームFとの係合状態の説明図(第2図)である。
【0020】
なお、図中の記号FRは車両前方を、記号RRは車両後方を、記号UPは車両上方をそれぞれ示している。また、以下の説明において、左右方向とは、車両前方を向いた状態での左右方向を意味し、後述するシートバックフレーム21の幅方向と一致する方向である。
【0021】
車両用シートS1は、乗物用シートの一例であり、図1に示すように、自動車の車体後部に荷室スペースを有する車両に後部座席として搭載されるものであって、特に、本実施形態ではワゴン型の自動車に搭載されるものである。
【0022】
車両用シートS1の構成について説明すると、本実施形態では、右側(運転席側)の車両用シートS11と、左側(助手席側)の車両用シートS12とに分かれており、各車両用シートS11,S12は、シートクッション10と、シートバック20と、ヘッドレスト30とを備えている。なお、各車両用シートS11,S12のシートバック20間にはアームレスト40が配置されており、左側の車両用シートS12においては、図2にてアームレスト40の下方に位置した台座部20aとシートバック20とが一体化されており、図2にて台座部20aの下方位置に配置された張出部10aとシートクッション10とが一体化されている。以上の点において右側の車両用シートS11と左側の車両用シートS12とは相違するものの、基本構成に関して言えば、両車両用シートS11,S12は共通する。そのため、以下の説明では、右側の車両用シートS11の構成のみを例に挙げて説明する。
【0023】
車両用シートS1は、その姿勢を、乗員が着座可能な通常の姿勢(図1にて破線で示す姿勢であり、以下、着座姿勢)から、不使用時に荷室部3が形成されるように収納された姿勢(図1にて実線で示す姿勢であり、以下、収納姿勢)へ切り替えることが可能である。つまり、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢に切り替えるにあたって、シートクッション10が車両前方に向けて跳ね上げられる。また、シートクッション10の跳ね上げに連動して、シートバック20が前方に回動し、車体フロア2上の、跳ね上がる前のシートクッション10が配置されていた位置に倒伏するようになっている。さらに、ヘッドレスト30が、シートバック20の上方で略鉛直に配設された状態から約90度前方に回動し、シートバック20が車体フロア2上に倒れ込んだ際には、前方に跳ね上がったシートクッション10と倒伏したシートバック20との間に格納されるようになる。
【0024】
以上の一連の動作により、車両用シートS1は、コンパクトな姿勢で収納することが可能である。そして、上記構成の車両用シートS1をリアシートとして採用する車両1では、当該車両用シートS1の後方に、車体フロア2の一部を構成する荷室部3が形成され、この荷室部3は、車両用シートS1の収納動作によって利用可能なサイズになるまで拡張されるようになる。
【0025】
以上までに説明してきた通り、車両用シートS1は、その姿勢を着座姿勢及び収納姿勢に切り替え可能に構成されており、さらに、着座姿勢からヘッドレスト30のみを前方に倒した姿勢への切り替えや、収納姿勢からシートバック20のみを起こした姿勢への切り替えも可能である。こうした多彩なシートアレンジは、車両用シートS1に具備された種々の駆動機構(具体的には、ヘッドレスト回動機構50、シートクッション跳ね上げ機構60、シートバック倒伏機構70等)によって実現されるものである。以下、車両用シートS1のシートアレンジを実現するための構成について説明する。
【0026】
なお、以下の説明中、シートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30の着座位置とは、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にある際のシートクッション10、シートバック20、及びヘッドレスト30の位置である。また、シートクッション10の跳ね上げ位置とは、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢にある際のシートクッション10の位置であり、シートバック20及びヘッドレスト30の倒れ位置とは、それぞれ、車両用シートS1の姿勢が収納姿勢にある際のシートバック20及びヘッドレスト30の位置である。
【0027】
<<車両用シートS1の基本構成>>
車両用シートS1のシートアレンジを実現するための構成を説明するにあたり、車両用シートS1の基本構成について説明する。車両用シートS1は、前述したように、シートクッション10と、シートバック20と、ヘッドレスト30とを備えている。
【0028】
シートクッション10は、図3に示すシートフレームFを構成するクッションフレーム11に表皮材を取り付けることにより構成される。表皮材の取り付けは、表皮材の端末に縫製された不図示のトリムコードをクッションフレーム11の外縁に掛止することによって行われる。
【0029】
また、シートクッション10の下部には、図4に示すシートクッション跳ね上げ機構60が配設されている。シートクッション跳ね上げ機構60は、車体フロア2上に固定されており、シートクッション10を支持すると共に、車両用シートS1を収納するにあたり、シートクッション10を着座位置から跳ね上げ位置に向けて跳ね上げるものである。
つまり、シートクッション10は、シートクッション跳ね上げ機構60を介して車体フロア2上の着座位置に固定され、シートクッション跳ね上げ機構60が作動すると、着座位置から跳ね上げ位置に向かって跳ね上がるように構成されている。換言すると、シートクッション10は、着座位置と跳ね上げ位置との間を往復移動することが可能である。
【0030】
なお、シートクッション跳ね上げ機構60は、ストライカロック機構100を備えている。ストライカロック機構100は、車両用シートS1の姿勢が着座姿勢にあるときにシートクッション10を着座位置に固定させるものである。シートクッション跳ね上げ機構60については後に詳述する。
【0031】
シートバック20は、シートバック倒伏機構70によって前方に倒れるように回動するものであり、シートバック20の上端部に設けられている操作部77を乗員が操作することにより、シートバック20のみを単独で前方に倒すことができる。そして、シートバック20は、図5に示すシートフレームFを構成するシートバックフレーム21にクッション材としてのウレタンを重ねて表皮材で覆うことにより構成される。シートバック20のシートバックフレーム21は、シートバックフレーム21の基部をなすパンフレーム22と、シートバックフレーム21の外枠をなすパイプフレーム23とを有する。パンフレーム22は、略矩形状の板金に対して剛性確保のためのビード加工等の加工処理を施すことにより成形される。そして、パンフレーム22の前面には、ヘッドレスト回動機構50やアレンジユニット80が取り付けられている。
【0032】
なお、ヘッドレスト回動機構50は、ピラー33を前方に回動させることにより、ヘッドレスト30を前方に倒す機構であり、乗員が上下方向に沿って収納操作用帯状部材ST1を引っ張る操作により動作させることにより、ヘッドレスト30のみを倒伏させることができる。具体的に説明すると、図7及び図8に示すように、ヘッドレスト回動機構50において、乗員によるスライド部材54をスライドさせるため操作を受け付ける収納操作用帯状部材ST1が設けられ、スライド部材54の長手方向一端部54aには収納操作用帯状部材ST1が締結される。そして、乗員が収納操作用帯状部材ST1を引っ張ることにより、スライド部材54がスライドし、これに従動する形でロック部材52が解除位置へ揺動するように形成されている。そして、スライド部材54をスライド移動させることにより、図9のように、最終的にヘッドレスト30(ピラー33)を前方に倒すことが可能となる。
【0033】
また、アレンジユニット80は、車両用シートS1を収納する際に、シートクッション10の跳ね上げ動作に、シートバック20の前方への倒伏動作及びヘッドレスト30の前方への倒れ動作を連動させるための装置である。
【0034】
パイプフレーム23は、パンフレーム22を囲うようにパンフレーム22の外縁に沿って配設されており、パンフレーム22と溶接にて接合されている。なお、パイプフレーム23のうち、上下方向において下部に位置する部分と、左右方向において車両外に面する部分とは、シートバック20の厚み方向においてパンフレーム22との間に隙間を設けた状態で配設されている。かかる隙間が形成されている理由は、例えば、シートバックフレーム21に重ねられたクッション材としてのウレタンの端部をパンフレーム22とパイプフレーム23との間に挟み込んで保持するため等である。
【0035】
さらに、シートバックフレーム21の上端部のうち、後述するピラー33の後側に位置する部分には、下向きコの字状のブラケットからなるピラー倒れ規制部25が設けられている。ピラー倒れ規制部25は、ヘッドレスト30が着座位置に位置する時にピラー33の後方への回動(倒れ)を規制する規制部に相当する。なお、ピラー倒れ規制部25は、ピラー33毎に設けられ(すなわち、2個設けられ)、パイプフレーム23の上端部に溶接止めされている。
【0036】
以上のような構成のシートバック20は、その回動軸20bを、車体フロア2に固定されたシートバック支持ユニット90(例えば、図12参照)の孔部に嵌合させ、シートバック支持ユニット90に回動可能に支持されている。これにより、シートバック20は、車体フロア2に対して前後方向へ回動可能となり、着座位置と倒れ位置との間を移動することが可能となる。なお、本実施形態では、シートクッション10の跳ね上げ動作に連動してシートバック20が前方に倒伏するようになっている。さらに、本実施形態では、シートバック20のみを単独で前方に倒すことも可能である。
【0037】
ヘッドレスト30は、シートバック20(換言すると、シートバックフレーム21)の上方に設けられており、図6に示す逆U字状の内部フレーム31と表皮材との間に発泡剤を充填することにより構成される。逆U字状の内部フレーム31の両側にある脚部31aは中空状であり、各脚部31aの内部には中空棒状のガイド32を収容する空間が形成されている。ガイド32は、脚部31a内に収容され、内部フレーム31の脚部31aの下端フランジ部31bに設けられた挿入孔(不図示)を通じて進退自在に構成されている。なお、ヘッドレスト30の表皮材には、ガイド32の末端部が表皮材の外側に位置するように通し孔(不図示)が設けられている。
【0038】
以上のような構成のヘッドレスト30において、ガイド32が内部フレーム31の脚部31a内で最も後退した位置に位置している状態(下端フランジ32aを除き、脚部31a内に収納された状態)では、ヘッドレスト30の表皮材のうち、上記の通し孔周りの部分が、内部フレーム31の脚部31aの下端フランジ部31bとガイド32の下端フランジ32aとに挟まれるようになっている。
【0039】
また、本実施形態において、ヘッドレスト30は、金属棒からなる一対のピラー33(図5参照)がガイド32内に挿入された状態で当該ピラー33に支持され、さらに、各ピラー33はヘッドレスト回動機構50のケーシング51に回動自在に支持されている。
【0040】
そして、ヘッドレスト30は、ヘッドレスト回動機構50により、シートバック20の上方で起立した状態から前方に約90度倒れた状態になるまで回動することが可能である。なお、本実施形態では、シートクッション10の跳ね上げ動作に連動してヘッドレスト30が前方に倒れるように回動することとなっており、さらには、ヘッドレスト30のみを単独で前方に倒すことも可能である。
【0041】
<<シートクッション跳ね上げ機構>>
シートクッション跳ね上げ機構60は、乗員が車両用シートS1を収納するために行う収納操作が受け付けられると、車両用シートS1を収納するための開始動作としてシートクッション10を跳ね上げ位置に向けて跳ね上げるものである。このシートクッション跳ね上げ機構60は、不図示の樹脂カバーで覆われており、シートクッション10が着座位置に位置する際にはシートクッション10の下方位置に位置するように車体フロア2上に設置されている。
【0042】
シートクッション跳ね上げ機構60は、図4、図10、図11に示すように、2つのサブユニットから構成されており、一方のサブユニットは、車体フロア2に取り付けられる取付ユニット110であり、他方のサブユニットは、取付ユニット110上に配置され取付ユニット110(換言すると、車体フロア2)に対してスイング動作(回動動作)を実行可能な可動ユニット120である。
【0043】
取付ユニット110は、上面視でL字状の外観をなした取付板111を主たる構成要素として有する。取付板111のうち、車両1の前後方向に沿って延びた第1板部112は、車体フロア2に締結されたボルトBo及びワッシャWsによって車体フロア2に固定されている(図11参照)。ここで、第1板部112の後端部には長穴状の取付穴114が形成されており、予め車体フロア2に締結されたボルトBo及びワッシャWsが取付穴114に嵌め込まれることにより、取付ユニット110が車体フロア2上に配置される。
【0044】
なお、取付穴114の長手方向の中間部114bは、前端部114aや後端部114cに比して幾分幅広となっている。かかる構成を利用し、ボルトBo及びワッシャWsを取付穴114に嵌め込む際には、先ず取付穴114の長手方向の中間部114bにボルトBo及びワッシャWsを通し、その後に、ボルトBoが取付穴114の長手方向の前端部114aに嵌合するように取付ユニット110の位置をずらして取付ユニット110の位置決めを行う。
【0045】
また、第1板部112の長手方向の略中央部には、ストライカロック機構100のロック部101が取り付けられている。このロック部101は、鉤状のロック片102と、ロック片102を揺動可能な状態で収容するハウジング103とを有している。ロック片102が後述のストライカ105と係合している状態では、シートクッション10が着座位置にて車体フロア2上に固定されていることになる。一方で、ロック片102が揺動すると、ストライカ105は、ロック片102との係合状態を脱するようになり、シートクッション10は、車体フロア2上に固定された状態から解放されて可動状態となる。
【0046】
さらに、第1板部112は、その一側部に立ち壁部112aを有し、立ち壁部112aのうち、ロック部101が取付位置よりも幾分前方位置に、前述した収納操作用帯状部材ST2を通すためのスリット112bが形成されている。このスリット112bに通された収納操作用帯状部材ST2は、第1板部112と交差するように第1板部112上に配置される。また、収納操作用帯状部材ST2の端部(第1板部112から見て車両1の内側の端部)にはケーブル130の一端部が接続されており、当該ケーブル130を配策する際に配索経路を規定するための経路規定部112cが第1板部112の側部(立ち壁部112aが位置する側とは反対側の側部)に適宜な間隔で設けられている。
【0047】
そして、上記のケーブル130の他端部は、前述のロック片102と連結している連結片104に接続されている。これにより、収納操作用帯状部材ST2が引っ張られると、ケーブル130が連結片104を介してロック片102を引っ張るようになる結果、ロック片102が揺動し、ロック片102とストライカ105との係合が解除されることになる。
【0048】
一方、取付板111のうち、車両1の左右方向(車両用シートS1の幅方向)に沿って延びた第2板部113は、可動ユニット120の土台をなす部分であり、その長手方向中央部には、シートクッション10に着座した乗員が車両1の衝突事故時に腰ベルトの下に潜り込むサブマリン現象を防止するためのサブマリンブラケット115が設けられている。
【0049】
可動ユニット120は、略門型の構造を有し、取付板111の第2板部113にボルト止めされる。可動ユニット120は、一対のリンク121と、一対のパイプロッド122と、リンク121間を連結する連結バー123と、シートクッション10を取り付けるための取付ブラケット124と、リンク121及びパイプロッド122を回動自在に支持する一対の支持機構125とを有する。これらの構成要素はユニットとして一体化するように組み合わされており、取付板111の第2板部113に取り付ける際にはユニットとして一体的に取り付けることになる。
【0050】
一対のリンク121の各々は、板金部材にビード加工等の処理を施して構成される長尺体であり、可動ユニット120の両側部に位置する。各リンク121は、その下端部に形成された通し穴(不図示)に回動軸126Aが嵌合することにより回動自在に支持されている。また、各リンク121の上端部には、リンク121間を連結する連結バー123が取り付けられている。さらに、各リンク121の上端部には、その外側表面に取付ブラケット124が取り付けられている。なお、連結バー123及び取付ブラケット124は、リンク121の上端部に共締形式でボルト止めされることによって取り付けられている。
【0051】
一対のパイプロッド122の各々は、前後方向においてリンク121と並べて配置され、その下端部に形成された通し穴(不図示)に回動軸126Bが嵌合することにより、リンク121の回動方向と同じ方向に回動可能に支持されている。また、各パイプロッド122の上端部には取付ブラケット124がピン止めされている。つまり、本実施形態では、シートクッション10が取付ブラケット124を介して一対のリンク121及び一対のパイプロッド122に支持されることになる。そして、各パイプロッド122は、リンク121の回動に従動して、リンク121の回動方向と同一方向に回動することになる。
【0052】
さらに、一対のリンク121及びパイプロッド122のうち、車両1の外に面する側のリンク121及びパイプロッド122に取り付けられた取付ブラケット124の下面には、ストライカロック機構100のストライカ105が取り付けられている。そして、リンク121及びパイプロッド122が回動軸126A,126Bから見て後方に倒れるように回動すると、上記のストライカ105が、取付板111(より具体的には第1板部112)に設けられたロック部101のロック片102に係合可能な位置に到達することになる。
【0053】
一対の支持機構125の各々は、リンク121及びパイプロッド122を回動可能に支持するものであり、図4、図10、図11に示すように、前述の回動軸126A,126Bの他、ベースブラケット127と、渦巻きバネ128と、ダンパーゴム129とを有する。
【0054】
ベースブラケット127は、上面視で略Z字状の板金部材であり、可動ユニット120の土台をなし、取付板111の第2板部113にボルト止めされている。また、ベースブラケット127のうち、車両1の前後方向に沿って延びている部分は立ち壁部127aになっており、この立ち壁部127aに回動軸126A,126Bが固定されている。
【0055】
ダンパーゴム129は、リンク121が渦巻きバネ128の付勢力により前方に回動して前方限界位置に至った際にリンク121の前端と当接して、リンク121に生じる衝撃を吸収するものである。ダンパーゴム129は、リンク121の、回動支点となる部位よりも幾分前方に位置するように、前述のベースブラケット127に固定されている。
【0056】
なお、本実施形態では、ダンパーゴム129へのリンク121の当接(衝突)によるダンパーゴム129の切損を防止するため、リンク121の長手方向において、ダンパーゴム129に当接する位置にある部分(以下、当接部位121a)を折り曲げて、当接部位121aの前端に丸みを帯びさせている。
【0057】
一対の支持機構125のうち、車両1の外側に位置する支持機構125には、渦巻きバネ128が備えてられている。渦巻きバネ128は、リンク121を前方に倒すように付勢する付勢部材である。渦巻きバネ128の一端部は、回動軸126Aに係止されており、他端部は、リンク121が後側に倒れている状態(換言すると、シートクッション10が跳ね上がる前の状態)では、リンク121の側表面から突出した突出部(不図示)に係止される。
【0058】
上記の構成により、シートクッション10は、ストライカ105とロック片102とが係合した状態にある際には、リンク121を介して渦巻きバネ128の付勢力を受けながらも(換言すると、渦巻きバネ128の付勢力に抗して)着座位置に保持されるようになる。一方で、ストライカ105とロック片102との係合が解除されると、渦巻きバネ128の付勢力により、リンク121が前方に回動する結果、シートクッション10が跳ね上げ位置に向けて跳ね上がるようになる。
【0059】
なお、図4、図10、図11に示すケースでは、一対のリンク121のうち、一方のみに対して渦巻きバネ128を設けることとしたが、これに限定されるものではなく、両方のリンク121に対して、それぞれ、渦巻きバネ128を設ける構成であってもよい。
【0060】
さらに、本実施形態では、一方のリンク121(車両1の外側に位置する方のリンク121)の長手方向中途位置には、差込孔121bが形成されており、当該差込孔121bにケーブル130の一端部が差し込まれている。このケーブル130の他端部は、アレンジユニット80に接続されている。したがって、シートクッション10を跳ね上げるにあたって、上記のリンク121が回動をすることにより、リンク121に連結されたケーブル130が牽引され、最終的には、当該ケーブル130が接続されたアレンジユニット80では、ケーブル130の牽引力を利用してユニット各部が作動するようになる。
【0061】
<<ケーブル130の構成>>
上記のように、各ユニットに連結され、互いに動力を伝達する線状部材としてのケーブル130の取着構成に関して、図13乃至図18を参照して、以下、説明する。なお、「線状部材」とは、ケーブル130に限定されるものではなく、より直径の小さいワイヤーやロッドを含むものである。また、ケーブル130は、シートフレームFに形成された線状部材挿通孔としてのケーブル挿通孔Faに挿通させることによってシートフレームFに取着されるものである。このとき、ケーブル挿通孔FaはシートフレームFの何れの箇所に備えられていてもよい。また、シートフレームFとは、クッションフレーム11及びシートバックフレーム21に限定されるものではなく、上記のシートクッション跳ね上げ機構60等の剛性の高い板状部材を示すものである。
【0062】
なお、本発明のケーブル130は、車両用シートS1の各部分に動力を伝達するために備えられるものであり、様々な箇所に設置可能である。ケーブル130の設置箇所の一例としては、シートクッション跳ね上げ機構60とアレンジユニット80とをリンクさせる部分において用いられる。
【0063】
ケーブル130は、図13に示すように、シートフレームFに動力を伝達する線材131と、線材131の長手方向端部に取着され、線状部材挿通孔としてのケーブル挿通孔Faと係合する係合部材132と、を備えている。線材131及び係合部材132は、それぞれ金属製の部材であり、互いに強固に接合されている。
係合部材132は、線材131に固定される係合部材本体部133と、ケーブル挿通孔Faと線材131との相対位置を規制する規制部としての突出部137と、を備えている。
【0064】
係合部材132を構成する係合部材本体部133は、線材131の延在方向に沿って形成された基礎部134と、基礎部134から折曲された折曲部としての第1の折曲部135と、第1の折曲部135から折曲されて形成された第2の折曲部136とを備えている。なお、基礎部134と第1の折曲部135とは略垂直に折曲され、第1の折曲部135と第2の折曲部136とは略垂直に折曲されている。そして、基礎部134と第2の折曲部136とはその延在方向が略平行となるように形成されている。
【0065】
このように、係合部材本体部133は、側面視略S字状(階段状)に形成された棒状の部材であり、その太さは、線状部材挿通孔Faの直径よりも小さく形成されている。したがって、係合部材本体部133は、ケーブル挿通孔Faに挿通可能であるが、側面視略S字状(階段状)に形成されているため、一度係合部材本体部133をケーブル挿通孔Faに挿通させると、容易に引き抜かれることがない(図18参照)。
【0066】
係合部材133をケーブル挿通孔Faに挿通させるときは、第2の折曲部136の端部からケーブル挿通孔Faに差込み、第1の折曲部135がケーブル挿通孔Faに挿通された状態で固定される。このとき、第1の折曲部135と第2の折曲部136とは互いに略垂直になるように折り曲げられているため、ケーブル挿通孔Faから抜けにくい構成となっている。
【0067】
そして、係合部材本体部133には、その両側面からそれぞれ一つずつ、計二つの突出部137が係合部材本体部133の両側面から突出している。この突出部137,137は、それぞれ略円柱状に形成されており、その底面が係合部材本体部133の側面に取り付けられたような構成である。
【0068】
係合部材本体部133を介して対向する突出部137,137のそれぞれの上面137b,137b間の距離は、ケーブル挿通孔Faの直径よりも大きくなるように突出部137,137が形成されており、図17のように、突出部137,137がケーブル挿通孔Faの周縁に当接し、抜け止めとしての機能を有している。
【0069】
突出部137,137は、基礎部134の延在方向(すなわち、線材131の延在方向)と第1の折曲部135の延在方向とに対してそれぞれ略直交する方向、すなわち、図16において奥行き方向に沿って、基礎部134の側面から延出して形成されている。このとき、突出部137,137は、基礎部134を介して互いに対向する位置に備えられている。
【0070】
突出部137,137は、係合部材本体部133と一体に形成されており、具体的には、鋳込み成形によって製造される。線材131は適当な長さに切り分けられた後、その端部が係合部材132の形状を備えた成形型内に挿入され、溶融金属が成形型内に流し入れられる。その後、成形型ごと冷却されることにより、係合部材132の内部に線材131が挿入された状態で、係合部材132と線材131とが一体となって成形される。
このように、係合部材132に対して線材131の端部が埋設された構成であるため、線材131と係合部材132とは強固に接合される。
【0071】
また、線材131を係合部材132に埋設するとき、係合部材132を側面からみた状態(図14または図16の状態)で、突出部137が、線材131の長さ方向において少なくともその一部または全部が重なるようにして形成されている(図16では突出部137の全部が線材131に重なった状態を示している)。すなわち、線材131の端面131aと、係合部材本体部133において線材131が延出された端面133aとの間において、突出部137が備えられる。
【0072】
このように、線材131の端部が突出部137と重なる位置に配設され、さらに二つの突出部137,137に挟まれる構成であるため、突出部137,137によって線材131が接合される部分の厚みが増大し、線材131と係合部材132とが強固に接合される。
【0073】
円柱状に形成された突出部137において、その側面137aは、第1の折曲部135の折曲面135aの延長線上に重なるようにして形成されている。第1の折曲部135の折曲面135aとは、第1の折曲部135の側面において、基礎部134が延折された側面を指すものである。すなわち、突出部137は、図16において、線X上に突出部137の側面137aが重なるようにして形成されている。
【0074】
上記構成を備えることにより、突出部137は、基礎部134と、第1の折曲部135との折り曲げられた境界部分近傍に備えられる。その結果、基礎部134と、第1の折曲部135との境界部分の剛性が向上する。
係合部材132をケーブル挿通孔Faに挿通させてシートフレームFに取着する際、基礎部134と、第1の折曲部135との折り曲げられた境界部分には、特に大きな荷重が加わるが、上記構成により、境界部分の剛性を向上させた構成とすると好適である。
【0075】
さらに、円柱状に形成された突出部137の上面137bの直径は、基礎部134の直径(図16においてα)よりも小さく形成されている。換言すると、図16のように、側面から係合部材132を見たとき、突出部137の側面137aが、基礎部134の側面(厚み)よりも内側に形成されている。
【0076】
上記構成とすることにより、係合部材132が大型化せず、係合部材132が挿通されるケーブル挿通孔Faの大きさを必要以上に大きくする必要がないため、ケーブル挿通孔Faが形成されるシートフレームFの剛性を損なうことが無く、好適である。
【0077】
また、突出部137は略円柱状に形成されているため、その側面137aは円弧状である。このように、突出部137を角柱状とすることなく、円柱状とすることにより、側面137aが曲面形状となるため、突出部137がケーブル挿通孔Faの周縁部に当接する際、互いの接触面積が小さくなる。したがって、突出部137及びケーブル挿通孔Faの周縁部が損傷するのを防ぐことができる。
【0078】
さらに、上記構成により、突出部137及びケーブル挿通孔Faの周縁部が損傷するのを防ぐことができるため、突出部137(係合部材132)及びケーブル挿通孔Faが備えられるシートフレームFの構成材料を選択する際の自由度が向上する。
【0079】
また、突出部137はその側面137aが円弧状に形成されていることに加え、突出部137が略円柱状に形成されているため、例えば、突出部137を半円柱状に形成される場合と比較して、基礎部134(係合部材本体部133)との境界部分の面積が大きく確保され、その結果、突出部137が基礎部134に対して強固に取り付けられる。
【0080】
このように、本発明のケーブル130は、線材131の端部において上記構成の係合部材132を備えることにより、ケーブル挿通孔Faに対して容易に取着できるだけでなく、強固に取着することが可能である。また、上記構成の突出部137を備えることにより、係合部材132の剛性が向上するだけでなく、ケーブル挿通孔Faに対して線材131を挿入しすぎることが無く、適切な取着状態でシートフレームFに取着することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 車両、2 車体フロア、3 荷室部
10 シートクッション、10a 張出部
11 クッションフレーム
20 シートバック、20a 台座部、20b 回動軸
21 シートバックフレーム
22 パンフレーム、
23 パイプフレーム
25 ピラー倒れ規制部
30 ヘッドレスト
31 内部フレーム、31a 脚部、31b 下端フランジ部
32 ガイド、32a 下端フランジ
33 ピラー
40 アームレスト
50 ヘッドレスト回動機構
51 ケーシング
52 ロック部材
54 スライド部材,54a 長手方向一端部
60 シートクッション跳ね上げ機構
70 シートバック倒伏機構
77 操作部
80 アレンジユニット
90 シートバック支持ユニット
100 ストライカロック機構
101 ロック部
102 ロック片
103 ハウジング
104 連結片
105 ストライカ
110 取付ユニット
111 取付板
112 第1板部、112a 立ち壁部、112b スリット、112c 経路規定部
113 第2板部
114 取付穴、114a 前端部、114b 中間部、114c 後端部
115 サブマリンブラケット
120 可動ユニット
121 リンク、121a 当接部位、121b 差込孔
122 パイプロッド
123 連結バー
124 取付ブラケット
125 支持機構
126A,126B 回動軸
127 ベースブラケット、127a 立ち壁部
128 渦巻きバネ
129 ダンパーゴム
130 ケーブル(線状部材)
131 線材
131a 端面
132 係合部材
133 係合部材本体部
133a 端面
134 基礎部
135 第1の折曲部(折曲部)
135a 折曲面
136 第2の折曲部
137 突出部(規制部)
137a 側面
137b 上面
Bo ボルト、Ws ワッシャ
F シートフレーム
Fa ケーブル挿通孔(線状部材挿通孔)
S1,S11,S12 車両用シート
ST1,ST2 収納操作用帯状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座姿勢と収納姿勢とを切り替え可能な車両用シートのシートフレームに形成された線状部材挿通孔に挿通されて係止される線状部材であって、
前記シートフレームに動力を伝達する線材と、
該線材の端部に取着され、前記線状部材挿通孔と係合する係合部材と、を備え、
該係合部材は、前記線材に固定され、前記線状部材挿通孔に挿通される係合部材本体部と、前記線状部材挿通孔と前記線材との相対位置を規制する規制部と、を備えてなることを特徴とする車両用シートの線状部材。
【請求項2】
前記規制部は、前記係合部材本体部から突出した突出部であり、該突出部は、前記係合部材本体部と一体に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートの線状部材。
【請求項3】
前記係合部材は、前記線材の端部が埋設された状態で鋳込み成形によって形成され、
前記突出部の少なくとも一部は、前記線材と重なる位置に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の車両用シートの線状部材。
【請求項4】
前記突出部は、前記線材の端面と、前記係合部材本体部の前記線材が延出された側の端面と、の間に形成されてなることを特徴とする請求項2または3に記載の車両用シートの線状部材。
【請求項5】
前記係合部材本体部は、前記線材の延在方向に沿って形成された基礎部と、該基礎部から折曲された折曲部と、を有し、
前記規制部は、前記基礎部の延在方向と前記折曲部の延在方向とに対してそれぞれ直交する方向に沿って、前記基礎部の側面から延出して形成されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両用シートの線状部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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