説明

車両用シートの電動操作装置

【課題】車両用シートに配備される電動機能の数を増やしても、電動操作装置の設置スペースを広げることなくこれらの作動操作を行えるようにする。
【解決手段】車両用シート1に配備された複数の電動機能を作動操作するための電動操作装置6である。車両用シート1への着座者が着座した姿勢状態で操作ができる車両用シート1の外部位置に複数の電動機能を操作するための操作部10が配設されている。操作部10は軸回動操作及び径方向へのスライド移動操作が可能な構成とされ、電動操作装置6は操作部10の回動位置の切替えによって操作対象となる電動機能が選択される電動機能モード切替構造でかつ操作部10の径方向へのスライド位置の切替えによって上記選択された電動機能が作動操作される作動制御構造となっている。操作部10はその回動位置を切替える操作力を解除したときに附勢によって元の回動位置に戻される構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの電動操作装置に関する。詳しくは、車両用シートに配備された複数の電動機能を個別に作動操作することのできる車両用シートの電動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートには、シートバックの傾き角度やシートクッションの前後スライド位置を電動で調整可能な電動機能が配備されているものがある。これらの電動機能は、例えばシートクッションのアウター側部に配設されたスイッチによって作動操作されるようになっている。
ここで、下記特許文献1には、上述したスイッチの配置構造の一例が開示されている。この開示では、シートバックやシートクッションの姿勢位置を個々に調整できるようにするために、調整対象を切替える切替スイッチと、調整対象を前後や上下に移動調整する調整スイッチと、が別個に配設されている。
【特許文献1】特開2004−288393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記開示の従来技術では、切替用のスイッチと調整用のスイッチというように、複数のスイッチが必要となる。したがって、このようなスイッチ構造では、調整対象の数を増やすことにより、かかる設置スペースも増大してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートに配備される電動機能の数を増やしても、電動操作装置の設置スペースを広げることなくこれらの作動操作を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートの電動操作装置は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、車両用シートに配備された複数の電動機能を作動操作するための車両用シートの電動操作装置である。車両用シートへの着座者が着座した姿勢状態で操作ができる車両用シートの外部位置に、複数の電動機能を操作するための操作部が配設されている。操作部は、軸回動操作が可能で、かつ、径方向へのスライド移動操作も可能な機構として構成されている。車両用シートの電動操作装置は、操作部の軸回動操作による回動位置の切替えが複数の電動機能の中から操作対象となる電動機能が選択される電動機能モード切替構造となっており、操作部の径方向へのスライド移動操作によるスライド位置の切替えが操作対象として選択された電動機能が作動操作される作動制御構造となっている。複数の電動機能の中から操作対象となる電動機能を選択するための操作部の軸回動操作構造には、操作部を第2の回動位置から第1の回動位置まで附勢によって回動移動させることのできるリターン手段が設けられている。リターン手段は、第1の回動位置から第2の回動位置に軸回動操作されて切替えられた操作部を、その軸回動操作力の解除に伴って第1の回動位置に附勢によって戻す構成となっている。
ここで、「車両用シートに配備された複数の電動機能」としては、以下のものが挙げられる。例えば、シートバックの背凭れ角度やシートクッションの前後スライド位置を電動で調整できるようにする位置調整機能や、ランバーサポートやマッサージ用のバイブレーター等の着座時の快適性を向上させる快適性向上機能のような電動機能が挙げられる。また、電動機能について、「作動操作」とは、電動機能のON/OFFの切替えや出力の強弱の調整、作動方向の切替えなどの操作のことである。
この第1の発明によれば、操作部の軸回動操作によって回動位置の切替えを行うことにより、車両用シートに配備された複数の電動機能の中から操作対象となる電動機能が選択される。そして、操作部の径方向へのスライド移動操作によってスライド位置の切替えを行うことにより、操作対象として選択された電動機能が作動操作される。すなわち、1つの操作部の操作によって、電動機能の選択とその作動操作の双方を行うことが可能となる。この操作部は、その軸回動操作による回動位置が第1の回動位置から第2の回動位置に切替えられてその軸回動操作力が解除されることにより、リターン手段による附勢によって第1の回動位置に戻される。すなわち、操作部は、第2の回動位置まで軸回動操作されても、自由状態ではその回動位置に保持されることなく第1の回動位置に戻される。
【0006】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、操作部の第2の回動位置は、操作部を一方側の回動方向に目一杯回動させた軸回動操作の最端側の回動位置として設定されている。第1の回動位置は、第2の回動位置から他方側の回動方向に戻された回動位置として設定されている。
この第2の発明によれば、操作部は、その一方側の回動方向に目一杯回動操作されることにより、第2の回動位置に切替えられた状態となる。そして、操作部は、この状態で軸回動操作力が解除されることにより、リターン手段による他方側の回動方向への附勢によって第1の回動位置に戻される。すなわち、操作部を一方側の回動方向に目一杯回動操作した後に軸回動操作力を解除することにより、第1の回動位置に戻された状態となる。
【0007】
次に、第3の発明は、上述した第2の発明において、操作部には、その軸回動操作によって操作対象となる電動機能を選択する回動位置が3箇所以上に段階的に設定されている。操作部の第2の回動位置は、操作部を一方側及び他方側の回動方向に目一杯回動させた軸回動操作の最端側の回動位置としてそれぞれ設定されている。第1の回動位置は、第2の回動位置となる各回動方向の最端側の回動位置から逆方向に一段階戻された回動位置として設定されている。
この第3の発明によれば、操作部は、その一方側及び他方側の回動方向に目一杯回動操作されることにより、第2の回動位置に切替えられた状態となる。そして、操作部は、これらの状態で軸回動操作力が解除されることにより、リターン手段による附勢によってそれらの逆側の回動方向に一段階戻された第1の回動位置に戻される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、第1の発明によれば、操作部の軸回動操作によって車両用シートに配備された複数の電動機能の中から操作対象を選択し、そして、そのまま操作部を径方向にスライド移動させることにより、その選択された電動機能の作動操作を行うことができる。したがって、車両用シートに配備される電動機能の数を増やしても、操作部の軸回動操作により選択される操作対象の設定数を増やすことでこれに対応することができるため、電動操作装置の設置スペースを広げることなくこれらの作動操作を行えるようにすることができる。そして、第2の回動位置に切替えられた操作部を附勢によって第1の回動位置に移動させることのできるリターン手段を設けたことにより、操作部が切替えられた回動位置にて保持される切替え操作の段数に対して、操作部の軸回動操作による電動機能のモード選択が可能な切替え操作の段数を増やすことができる。
更に、第2の発明によれば、第2の回動位置を一方側の回動方向の最端側の回動位置に設定したことにより、操作部を一方側の回動方向に目一杯回動させて操作力を解除することによって操作部を第1の回動位置に合わせることができるため、その回動位置の確認を容易に行うことができる。
更に、第3の発明によれば、第2の回動位置を両側の回動方向の最端側の回動位置にそれぞれ設定したことにより、操作部を各回動方向に目一杯回動させて操作力を解除することによって操作部を第1の回動位置に合わせることができるため、その回動位置の確認を容易に行うことができる。そして、上記第2の発明に比して、操作部が切替えられた回動位置にて保持される切替え操作の段数に対する操作部の軸回動操作による電動機能のモード選択が可能な切替え操作の段数を更に増やすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
始めに、実施例1の車両用シートの電動操作装置について、図1〜図12を用いて説明する。
ここで、図1には、車両用シート1を車両窓側の後方側から見た斜視図が表されている。同図に示されるように、車両用シート1は、背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト4と、を有する。そして、車両用シート1の横幅方向の両側面部には、シートバック2とシートクッション3との連結構造部分を被覆するシールド5が取付けられている。そして、このシールド5の取り付けられた車両窓側(紙面内右側)の側面位置には、外観視円筒形状の操作部10を備えた電動操作装置6が配設されている。この操作部10を備えた電動操作装置6は、シートクッション3の前後方向の中央部の辺りに配設されており、操作部10の円筒形状をシールド5の外側(窓側)に突出させた状態で配設されている。この操作部10の配設位置は、車両用シート1への着座者が着座した姿勢状態で操作を行える位置となっている。
【0011】
この車両用シート1には、上述した電動操作装置6の操作部10によって作動操作を行うことのできる電動機能が複数配備されている。具体的には、図2に示されるように、シートバック2の背凭れ角度やシートクッション3の前後スライド位置などの調整を電動で行えるようにする位置調整機能が電動機能として配備されている。
ここで、車両用シート1に配備されている電動機能を、図2を参照しながら順に説明していく。
先ず、シートバック2に関連して配備された電動機能について説明する。すなわち、シートバック2には、その上部に取付けられたヘッドレスト4を昇降移動させることのできるヘッドレスト昇降装置Aが内部に配設されている。そして、シートバック2には、乗員の背中の上体部分を支持する上側部分2Aを下側部分2Bに対して前折れ移動させることにより、上体の背凭れ姿勢を起こし上げることのできるシートバック中折れ装置Bが内部に配設されている。更に、シートバック2には、その横幅方向の両側脇部分2C,2Cを前方に向けて内側に寄せるかたちで変形移動させることにより、乗員の体を両脇側から支持できるようにするサイドサポート装置Cが内部に配設されている。更に、シートバック2には、乗員の腰部の支持強度を高めるべく内部に配設された受板部Daの高さ位置や前後位置を移動させることにより、乗員の体格に合わせた腰部のサポートを可能とするランバーサポート装置Dが配設されている。更に、シートバック2には、シートクッション3に対する起立角度を変動させることにより、背凭れ角度の調整を行うリクライニング装置Eが配設されている。
次に、シートクッション3に関連して配備された電動機能について説明する。すなわち、シートクッション3には、その前側部分3Aを後側部分3Bに対して前後方向や上下方向に移動させることにより、乗員の体格に合わせてシートクッション3の前後長さを調整したり前側部分3Aの座面の高低を調整したりすることのできるクッション前部可動装置Fが内部に配設されている。更に、シートクッション3の下部には、車両フロア面に対するシートクッション3(車両用シート1全体)の高さ位置を変動させることのできるリフター装置Gが配設されている。このリフター装置Gは、車両フロア上に設置された移動台Gcとシートクッション3とを連結するリンク機構部GaがアクチュエータGbの作動によって起倒回動操作されるようになっている。更に、シートクッション3の下部には、シートクッション3(車両用シート1全体)を車両フロア面に対して車両前後方向にスライド移動させることのできるスライド装置Hが配備されている。このスライド装置Hは、上述した移動台Gcの下面側に設置されたアッパレールHaが車両フロア面上に設置されたロアレールHbに対して車両前後方向にスライド移動可能に嵌め込まれた構成となっており、アクチュエータHcの作動によってアッパレールHaが前後にスライド移動操作されるようになっている。
【0012】
これらの電動機能は、上述した円筒形状の操作部10を軸回動させる操作によって、その操作対象となる電動機能が選択されるようになっている。そして、各電動機能は、操作対象となる電動機能が選択された状態で、操作部10を径方向にスライド移動させる操作を行うことにより、それらの作動操作が行われるようになっている。
以下、電動操作装置6の構成について具体的に説明する。
ここで、図3には電動操作装置6の内部構造が表されており、図4には電動操作装置6の分解斜視図が表されている。この電動操作装置6は、図4に示されるように、操作部10と、回転部材20と、スライド部材30と、外周リング40と、内周リング50と、基盤60と、トーションバネ70と、操作部材80とを有して構成されている。ここで、トーションバネ70及び操作部材80が本発明のリターン手段に相当する。
なお、電動操作装置6の基本構造や基本原理は、特開2005−317377号公報等の文献に開示された公知のものであるため、以下では、本発明の特徴部分となる構成について詳しく説明する。
【0013】
先ず、操作部10について説明する。
すなわち、操作部10は、外観視円筒形状に形成されている。この操作部10は、回転部材20に嵌め込まれることによって車両用シート1に組み付けられており、軸回動操作が可能で、かつ、径方向へのスライド移動操作も可能な状態として構成されている。
詳しくは、図3に示されるように、操作部10は、その円筒の内底面側に形成された断面半月形状の嵌合溝10Aの内部に回転部材20の先端に形成された断面半月形状の嵌合部21(図4参照)が嵌め込まれることにより、回転部材20と一体的に連結されている。この操作軸10は、その円筒形状を成す周縁部位11がシールド5の外側面5aから浮いた状態で取り付けられている。これにより、操作軸10は、その軸回動操作時や径方向へのスライド移動操作時に、シールド5との間に摺動摩擦が起こらないようになっている。
【0014】
次に、回転部材20について説明する。
すなわち、回転部材20は、図4に示されるように、円柱形状の嵌合部21と、この嵌合部21の根元側に一体的に形成された円板形状の座板部22と、を有する。
詳しくは、嵌合部21は、その円柱形状の先端側の部位が部分的に半月形状に肉抜きされた形状となっており、この半月形状の部位が操作部10の嵌合溝10A(図3参照)に一体的に嵌め込まれるようになっている。また、嵌合部21は、その円柱形状の根元側の部位が、外周面に細かいギザギザ状の凹凸を有したスプライン軸21Aとして形成されている。このスプライン軸21Aには、後述する操作部材80に形成されたスプライン孔80Aが一体的に嵌め込まれるようになっている。詳しくは、このスプライン孔80Aの形状は、スプライン軸21Aの外周面の形状に合致する細かいギザギザ状の凹凸を有した形状となっている。したがって、回転部材20は、操作部10や操作部材80が嵌合部21に嵌め込まれた状態では、これら操作部10や操作部材80と一体的となって軸回動操作されたり径方向にスライド移動操作されたりするようになっている。
また、座板部22の図示上面側として表されている座面22Aには、電導体よりなる薄い曲板状の摺動子22Bが一体的に配設されている。この摺動子22Bは、その一部が座面22Aに固着されており、紙面上方に反り上がった形状状態に保持されている。この曲板状の摺動子22Bは、その上方に反り上がった先端側の部位が二股状に分かれた形状となっており、これらが座面22Aに向けて弾性的に撓み変形可能な構成となっている。この摺動子22Bは、図6に示されるように、嵌合部21の円周方向の1箇所にのみ配設されている。
また、座板部22の周縁側部位には、座面22Aから突出した環状の突縁22Cが形成されている。この突縁22Cは、図3に示されるように、回転部材20が後述するスライド部材30に組み付けられた状態では、段差部32の内側面32Aと当接する部位として構成されている。
また、図3に示されるように、座板部22の下面側部位には、複数の脚部22D・・が突出して形成されている。これら脚部22D・・は、座板部22の円周方向の4箇所の位置に均等に配置形成されている。これら脚部22D・・は、電動操作装置6の組付け状態では、後述する内周リング50の底板部51の内側面51Aと当接する部位として構成されている。
【0015】
次に、図4に戻って、スライド部材30について説明する。
すなわち、スライド部材30は、段付きの円筒形状に形成されており、胴体部31と段差部32と径の絞られた首部33とを有した構成となっている。このスライド部材30は、図示された円筒形状の胴体部31に前述した回転部材20が下側の開口部分31Cから挿し込まれることによって、その円筒内部に回転部材20が組み込まれている。詳しくは、図3に示されるように、スライド部材30は、回転部材20の円柱形状の嵌合部21を首部33の上側の開口部分33Cから突出させた状態として、段差部32の内側面32Aに回転部材20の座板部22に形成された突縁22Cを当接させた状態に組み付けられている。
ここで、スライド部材30は、回転部材20に対して緩やかに嵌合される内径寸法に形成されている。これにより、スライド部材30は、回転部材20がその円筒内部に組み付けられた状態では、回転部材20の相対的な軸回動運動は許容するが、回転部材20の径方向へのスライド移動運動に対してはこれと一体的となって径方向にスライド移動するようになっている。詳しくは、スライド部材30は、回転部材20の座板部22に形成された突縁22Cを段差部32の内側面32Aに対して摺動させるかたちで回転部材20を軸回動させられるようになっている。
ここで、図7には、図4に示されている円筒形状のスライド部材30を上側から見た内部形状が表されている。同図に示されるように、段差部32の内側面32Aには、電導体より成る面状の固定接点34A〜34Eと、同じく電導体より成る面状の共通接点35と、が面一状に一体的に配設されている。これら固定接点34A〜34Eは、内側面32Aの円周方向に沿った5箇所の位置に配置されている。また、共通接点35は、上記5箇所の位置に配置された固定接点34A〜34Eの径方向の内側を通って円周方向に輪を描く形状に形成されている。これら固定接点34A〜34Eや共通接点35は、互いが離間して配置されており、それぞれ、スライド部材30の胴体部31の内周面31Aを通って胴体部31の下縁側部位まで延びる構成となっている。
上記構成のスライド部材30は、図8に示されるように、回転部材20がその内部に組み付けられることにより、回転部材20の座面22A上に配設された摺動子22Bを段差部32の内側面32Aによって押圧してこれを弾性的に撓み変形させる。これにより、座面22A上に配設された摺動子22Bが、段差部32の内側面32Aに配設された共通接点35に対して弾性的に圧接された状態となる。そして、この状態で、回転部材20の軸回動操作を行うことにより、摺動子22Bは、上記共通接点35の形状に沿って円周方向に摺動し、共通接点35と常に圧接状態を維持したまま各固定接点34A〜34Eのいずれかに対して円周方向に位置合わせされる。ここで、図8には、摺動子22Bが固定接点34Bに位置合わせされてこれに圧接した状態が一例として表されている。これにより、固定接点34B及び共通接点と摺動子22Bとが互いに通電可能な圧接状態となる。なお、回転部材20は、摺動子22Bと固定接点34B〜34Dのいずれかとが位置合わせされる各回動位置で、その回動操作力に対して一定の節度感が付与されるようになっている。これにより、回転部材20を上記した各回動位置に位置合わせする回動操作が簡単に行えるようになっている。
【0016】
次に、図4に戻って、外周リング40について説明する。
すなわち、外周リング40は、天板部41を有した円筒形状に形成されている。この外周リング40は、図示された円筒部42に前述した回転部材20やスライド部材30が下側の開口部分42Cから挿し込まれることによって、その円筒内部に回転部材20やスライド部材30が組み込まれている。詳しくは、図3に示されるように、外周リング40は、その天板部41の内側面41Aにスライド部材30の段差部32の外側面32Bを面当接させた状態として、スライド部材30の首部33を天板部41に形成された貫通孔41Cの孔内に位置させた状態に組み付けられている。また、図4に戻って、天板部41には、その外側面41Bの一部を内側面41A側に向けて凹ませた形状のバネ収納溝41D,41Eが形成されている。これらバネ収納溝41D,41Eは、貫通孔41Cから径方向の外側に向けてひと繋がりに延びる形状に形成されている。これにより、バネ収納溝41D,41Eは、後述するトーションバネ70の一端部71及び他端部72を各溝形状の内部に収納し、これらを溝形状の内部でのみ円周方向に撓み変形させられる構成となっている。
この外周リング40は、天板部41に形成された貫通孔41Cをシールド5に形成された貫通孔5cと合致させた状態に組み付けられている。また、外周リング40は、図4に示されるように、図示された円筒部42の下縁側部位に突出形成された2個の係合爪42D,42Dを後述する基盤60に貫通形成された係合孔61,61にそれぞれ嵌め込むことにより、各係合爪42D,42Dの係着によって基盤60に取り付けられるようになっている。この外周リング40は、図3に示されるように、前述した回転部材20やスライド部材30、後述する内周リング50をその円筒内部に組み込んだ状態で基盤60に対して取り付けられている。
ここで、外周リング40の円筒部42は、スライド部材30の胴体部31の円筒形状よりも大きな内径寸法を有して形成されている。また、天板部41に形成された貫通孔41Cも、その孔内に配置されたスライド部材30の首部33よりも大きな孔径を有して形成されている。これにより、外周リング40の円筒内部に組み込まれたスライド部材30が、円筒部42の内部で径方向にスライド移動させられるようになっている。詳しくは、スライド部材30は、その段差部32の外側面32Bを外周リング40の天板部41の内側面41Aに対して摺動させるかたちで径方向にスライド移動する。
【0017】
次に、図4に戻って、内周リング50について説明する。
すなわち、内周リング50は、底板部51を有した円筒形状に形成されている。この内周リング50は、その円筒部52の外径が外周リング40の円筒部42の内径よりも若干小さく形成されている。この内周リング50は、図示された外周リング40の円筒部42に下側の開口部分42Cから挿し込まれることによって、その円筒内部に組み込まれている。これにより、図3に示されるように、内周リング50は、底板部51と外周リング40の天板部41との間に前述したスライド部材30や回転部材20を挟み込んだ状態として組み付けられている。この内周リング50が組み付けられた状態では、回転部材20の脚部22D・・や、スライド部材30の胴体部31の下縁側部位面が、底板部51の内側面51Aに面当接した状態となる。これにより、回転部材20は、突縁22Cをスライド部材30の段差部32の内側面32Aに当接させた状態として、摺動子22Bをこの内側面32Aに圧接させた状態として保持される。また、スライド部材30は、図示された上下側の面を天板部41と底板部51とにそれぞれ面当接させた状態となっており、その径方向へのスライド移動時には、両当接面を摺動させるかたちでスライド移動するようになっている。ここで、内周リング50の円筒部52は、スライド部材30の胴体部31の円筒形状よりも大きな内径寸法を有して形成されている。したがって、内周リング50が外周リング40に組み付けられた状態においても、その円筒部52の内部でスライド部材30を径方向にスライド移動させられるようになっている。
ここで、内周リング50の円筒部52とスライド部材30の胴体部31との間には、4個の圧縮ばねR・・が設けられている。これら圧縮ばねR・・は、胴体部31を円筒部52の中心位置に向けて附勢するべく円周方向の4箇所の位置に均等配置されている。これにより、スライド部材30は、各圧縮ばねR・・の附勢に抗していずれかの径方向にスライドさせても、そのスライド移動操作をやめることによって、各圧縮ばねR・・の附勢によって円筒部52の中心位置に戻されるようになっている。
また、図3に示されるように、上記円筒部52と胴体部31との間には、4個のスライド検知スイッチT・・が設けられている。これらスライド検知スイッチT・・は、円筒部52に埋め込まれるかたちで設けられており、それらの先端部分を内周面52Aの径方向の内方に突出させるかたちで、円周方向の4箇所の位置に均等配置されている。ここで、4個のスライド検知スイッチT・・は、車両用シート1(図1参照)の前後方向を向く2箇所の位置と、上下方向を向く2箇所の位置とに配置されている。したがって、操作部10を車両用シート1(図1参照)の前方、後方、上方或いは下方のいずれかの径方向にスライド移動させることにより、図9に示されるように、スライド部材30の胴体部31の外周面31Bを各スライド検知スイッチT・・のいずれか1つに押し当てることができる。
また、図8に示されるように、底板部51の内側面51Aには、電導体より成る定置接点53A〜53Eが面一状に一体的に配設されている。これら定置接点53A〜53Eは、底板部51に埋設されており、前述した固定接点34A〜34Eが配設された円周方向の5箇所の位置に配置されている。これら定置接点53A〜53Eは、底板部51の内側面51A上を摺動するスライド部材30の胴体部31の下縁側部位まで延びている各固定接点34A〜34Eと常に通電可能に当接するようになっている。詳しくは、各定置接点53A〜53Eは、スライド部材30が底板部51の内側面51A上を前後上下の各径方向にスライド移動しても常に各固定接点34A〜34Eと当接できるよう、当接面が面方向に広がって形成されている。なお、固定接点34A〜34Eと同じようにスライド部材30の胴体部31の下縁側部位まで延びている共通接点35の端部と当接する位置にも、各定置接点53A〜53Eと同じように定置接点(図示省略)が配設されている。
【0018】
次に、図4に戻って、基盤60について説明する。
すなわち、基盤60は、板状に形成されており、その板厚方向に貫通形成された係合孔61,61に前述した外周リング40の係合爪42D,42Dが嵌め込まれることにより、外周リング40に組み付けられている。ここで、図3に示されるように、基盤60には、図示しない回線によって内周リング50の円筒部52に埋設された各スライド検知スイッチT・・や、段差部32に埋設された各固定接点34A〜34E(図8参照)や共通接点35に対してそれぞれ電気的に接続される端子63が組み込まれている。この端子63は、各スライド検知スイッチT・・(図9参照)のいずれかが押下される操作部10の径方向へのスライド移動操作情報や、回転部材20に配設された摺動子22Bが共通接点35と各固定接点34A〜34Eのいずれかとに通電可能に面接触する操作部10の軸回動操作位置情報を、図示しない制御部に情報伝達するようになっている。
【0019】
次に、図4に戻って、トーションバネ70について説明する。
すなわち、トーションバネ70は、その巻回された両端側の部位が、一端部71及び他端部72として、それぞれ径方向の外側に向けて延びる端部形状とされている。
このトーションバネ70は、その自由状態時において、一端部71及び他端部72の成す角70Aが外周リング40に形成された各バネ収納溝41D,41Eの円周方向の配置の成す角よりも狭くなる形状に形成されている。このトーションバネ70は、一端部71及び他端部72の成す角70Aを広げながらこれらを各バネ収納溝41D,41Eの内部に組み込んで、中心側の巻回部分を貫通孔41Cの内部に組み込むことにより、外周リング40に組み付けられる。これにより、トーションバネ70は、その復元力の作用によって一端部71及び他端部72を各バネ収納溝41D,41Eの円周方向に向かい合っている内側の面に弾性的に当接させた状態として、それらの成す角70Aを狭める方向に附勢力を及ぼす組み付け状態とされている。
ここで、一端部71及び他端部72の先端側部位は、トーションバネ70の巻回方向に対して垂直な軸方向に折れ曲がった形状に形成されている。これら一端部71及び他端部72の先端側部位は、図5に示されるように、トーションバネ70が外周リング40に組み付けられた状態では、各バネ収納溝41D,41Eから軸方向に突出した状態に配置される。
【0020】
次に、図4に戻って、操作部材80について説明する。
すなわち、操作部材80は、その一方側(根元側)の端部にスプライン孔80Aを有した回転板部材として形成されている。この操作部材80は、図5を参照して分かるように、スプライン孔80Aを回転部材20の嵌合部21に形成されたスプライン軸21Aに嵌め込むことによって、回転部材20と回動方向に一体的に組み付けられる。
ここで、操作部材80の先端側の両側面部位には、凹状に切欠された掛部80B,80Cが形成されている。これら掛部80B,80Cは、操作部10の軸回動操作によって回転部材20及び操作部材80を一体的に回動させることにより、外周リング40の各バネ収納溝41D,41Eから突出しているトーションバネ70の一端部71或いは他端部72の先端側部位をその内部に掛け入れるかたちでこれらと当接する。そして、この当接状態から、操作部10を更に上記の方向に回動させると、トーションバネ70は、その一端部71或いは他端部72が操作部材80に押動されて撓み変形する。これにより、撓み変形したトーションバネ70の復元に伴う附勢力が操作部材80に作用するようになり、操作部10に対して逆方向に戻される方向の附勢力が作用した状態となる。したがって、この状態で操作部10にかけている軸回動操作力を解除することにより、操作部10は、トーションバネ70の附勢によって、操作部材80がトーションバネ70と当接し始めたときの回動位置まで戻される。
【0021】
この操作部材80がトーションバネ70によって逆戻り方向の附勢力を受けたり受けなかったりする回動領域は、操作部10が軸回動操作される回動位置によって次のように設定されている。すなわち、図11に示されるように、操作部10がポジションP1とポジションP3との間で軸回動操作されるときには、操作部材80はトーションバネ70の一端部71や他端部72との間の角度領域を回動するようになっており、この間では操作部10には前述したトーションバネ70による逆戻り方向への附勢力は作用しない。詳しくは、操作部材80は、操作部10がポジションP1やポジションP3に合わされることにより、トーションバネ70の一端部71や他端部72とそれぞれ当接した状態となる。したがって、操作部10は、その軸回動操作によってポジションP1〜P3に合わされるときには、それらの合わされた回動位置にて静止した状態となる。
しかし、図11や図12に示されるように、操作部10は、これをポジションP1からポジションP4に向けて反時計回りに回動させたり、ポジションP3からポジションP5に向けて時計回りに回動させたりすることにより、操作部材80がトーションバネ70の一端部71や他端部72を押動する動きに伴ってその逆戻り方向に附勢力を受けた状態となる。したがって、操作部10は、その軸回動操作によってポジションP4やポジションP5に合わされても、その操作力を解除することによって、一段階戻されたポジションP1やポジションP3の位置まで附勢によってそれぞれ戻されることとなる。
ここで、ポジションP1,P3が本発明の第1の回動位置に相当し、ポジションP4,P5が本発明の第2の回動位置に相当する。
【0022】
上記構成の電動操作装置6は、操作部10を軸回動させる操作や径方向にスライド移動させる操作によって、各電動機能を次のように切替えたり作動操作したりする。
ここで、図10には、操作部10の軸回動操作による電動機能のモード切替構造や、操作部10の径方向へのスライド移動操作による各電動機能の作動制御構造が模式的に表されている。同図に示されている5つのポジションP1〜P5は、操作部10をその回動位置に合わせることにより、図8において前述した摺動子22Bと各固定接点34A〜34Eとが通電可能に面接触する回動位置となっている。
ここで、各ポジションP1〜P5の配置設定について説明すると、ポジションP1は、操作部10の指標部位12がシートバック2のある方向、すなわち車両用シート1(図1参照)の上方かつ若干後方を向く回動位置に設定されている。また、ポジションP2は、後述するポジションP3との間のほぼ中間の回動位置に設定されている。また、ポジションP3は、操作部10の指標部位12がシートクッション3のある方向、すなわち車両用シート1(図1参照)の前方を向く回動位置に設定されている。また、ポジションP4は、操作部10の指標部位12が前述したシートバック2の方を向くポジションP1よりも更に車両用シート1(図1参照)の後方側に向けられた回動位置に設定されている。また、ポジションP5は、操作部10の指標部位12が前述したシートクッション3の方を向くポジションP3よりも更に車両用シート1(図1参照)の下方側に向けられた回動位置に設定されている。
【0023】
先ず、操作部10の指標部位12がシートバック2の方を向くポジションP1の回動位置に合わされた状態では、その軸回動操作位置情報に基づいて、電動機能であるリクライニング装置Eとヘッドレスト昇降装置Aとが操作対象として選択された状態となる。
そして、この状態で、操作部10を車両用シート1(図1参照)の前方側、すなわち図10における紙面右方側に向けて径方向にスライド移動させると、リクライニング装置Eが電動操作されて、シートバック2の背凭れ角度が操作部10の操作方向と同じ前倒し方向に変動する。すなわち、上記のスライド移動操作を行うと、その移動先にあるスライド検知スイッチT(図9参照)が押下され、係るスライド移動操作情報に基づいてリクライニング装置Eが電動操作される。そして、操作部10のスライド移動操作をやめると、操作部10が操作前の中心位置に戻されて、リクライニング装置Eの作動が停止する。また、操作部10を車両用シート1(図1参照)の後方側、すなわち図10における紙面左方側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいて、シートバック2の背凭れ角度が操作部10の操作方向と同じ後倒し方向に変動する。
また、操作部10を車両用シート1(図1参照)の上方側、すなわち図10における紙面上方側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいてヘッドレスト昇降装置Aが電動操作され、ヘッドレスト4の高さ位置が操作部10の操作方向と同じ上方向に押し上げられる。そして、操作部10のスライド移動操作をやめると、操作部10が操作前の中心位置に戻されて、ヘッドレスト昇降装置Aの作動が停止する。また、操作部10を車両用シート1(図1参照)の下方側、すなわち図10における紙面下方側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいて、ヘッドレスト4の高さ位置が操作部10の操作方向と同じ下方向に引き下げられる。
【0024】
また、操作部10の軸回動操作によって指標部位12がポジションP2の回動位置に合わされると、その軸回動操作位置情報に基づいて、ランバーサポート装置Dが操作対象として選択された状態となる。
そして、この状態で、操作部10を車両用シート1(図1参照)の前後側や上下側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいてランバーサポート装置Dが電動操作される。これにより、乗員の腰部を支持する受板部Daの位置が操作部10の操作方向と同じ前後或いは上下方向に移動操作される。
なお、操作部10のスライド移動操作をやめることによってランバーサポート装置Dの作動が停止することは、前述した操作構造と同じである。
【0025】
また、操作部10の軸回動操作によって指標部位12がシートクッション3の方を向くポジションP3の回動位置に合わされると、その軸回動操作位置情報に基づいて、スライド装置Hとリフター装置Gとが操作対象として選択された状態となる。
そして、この状態で、操作部10を車両用シート1(図1参照)の前方側或いは後方側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいてスライド装置Hが電動操作される。これにより、車両フロア面に対するシートクッション3(車両用シート1全体)の位置が操作部10の操作方向と同じ前方或いは後方へのスライド移動によって変動する。
また、操作部10を車両用シート1(図1参照)の上方側或いは下方側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいてリフター装置Gが電動操作される。これにより、車両フロア面に対するシートクッション3(車両用シート1全体)の高さ位置が操作部10の操作方向と同じ上方或いは下方に昇降移動操作される。
なお、操作部10のスライド移動操作をやめることによってスライド装置Hやリフター装置Gの作動が停止することは、前述した操作構造と同じである。
【0026】
また、操作部10の軸回動操作によって指標部位12がシートバック2よりも後方側を向いた位置にあるポジションP4の回動位置に合わされると、その軸回動操作位置情報に基づいて、シートバック中折れ装置Bとサイドサポート装置Cとが操作対象として選択された状態となる。
そして、この操作部10の回動位置状態を維持した状態で、操作部10を車両用シート1(図1参照)の前方側或いは後方側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいてシートバック中折れ装置Bが電動操作される。これにより、シートバック2の乗員の背中の上体部分を支持する上側部分2Aが下側部分2Bに対して操作部10の操作方向と同じ前方向に移動して前折れ変動したり、前折れ移動した位置から後方向に戻される移動が行われたりする。
また、操作部10を車両用シート1(図1参照)の上方側或いは下方側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいてサイドサポート装置Cが電動操作される。これにより、シートバック2の横幅方向の両側脇部分2C,2Cが前方に向けて内側に寄せるかたちで変形移動したり、前方に変形移動した位置から後方向に戻される移動が行われたりする。
なお、操作部10のスライド移動操作をやめることによってシートバック中折れ装置Bやサイドサポート装置Cの作動が停止することは、前述した操作構造と同じである。そして、操作部10をポジション4の回動位置に保持する操作力を解除することによって、操作部10はトーションバネ70の附勢力によってポジション1まで戻される。
【0027】
また、操作部10の軸回動操作によって指標部位12がポジションP5の回動位置に合わされると、その軸回動操作位置情報に基づいて、クッション前部可動装置Fが操作対象として選択された状態となる。
そして、この操作部10の回動位置状態を維持した状態で、操作部10を車両用シート1(図1参照)の前後側や上下側に向けて径方向にスライド移動させると、係るスライド移動操作情報に基づいてクッション前部可動装置Fが電動操作される。これにより、シートクッション3の前側部分3Aが後側部分3Bに対して操作部10の操作方向と同じ前後方向や上下方向に移動操作される。
なお、操作部10のスライド移動操作をやめることによってクッション前部可動装置Fの作動が停止することは、前述した操作構造と同じである。そして、操作部10をポジション5の回動位置に保持する操作力を解除することによって、操作部10はトーションバネ70の附勢力によってポジション3まで戻される。
【0028】
続いて、本実施例の使用方法を説明する。
すなわち、図1に示されるように、電動操作装置6の操作部10は、車両用シート1への着座者が着座した姿勢状態で操作を行える位置に配設されている。
そこで、先ず、車両用シート1に配備された何らかの電動機能を作動させる場合には、操作部10の軸回動操作を行うことによって、作動させたい電動機能を選択する。例えば、図10に示されるように、操作部10の軸回動操作によって指標部位12がポジションP1の回動位置に合わされることによって、リクライニング装置Eとヘッドレスト昇降装置Aとが操作対象として選択された状態となる。
次に、操作対象として選択された電動機能を作動操作させるために、操作部10を車両用シート1(図1参照)の前後方向や上下方向となる径方向にスライド移動させる。これにより、選択された各電動機能は、操作部10がスライド移動操作されたスライド移動操作情報に基づいて作動操作される。例えば、図10に示されるように、リクライニング装置Eとヘッドレスト昇降装置Aとが操作対象として選択された状態で操作部10のスライド移動操作を行うことにより、ヘッドレスト4の高さ位置或いはシートバック2の背凭れ角度位置が操作部10が操作された方向と同じ方向に移動操作されて位置調整を行うことができる。
【0029】
このように、本実施例の車両用シートの電動操作装置によれば、操作部10の軸回動操作によって車両用シート1に配備された複数の電動機能の中から操作対象を選択し、そして、そのまま操作部10を径方向にスライド移動させることにより、その選択された電動機能の作動操作を行うことができる。したがって、車両用シート1に配備される電動機能の数を増やしても、操作部10の軸回動操作により選択される操作対象の設定数を増やすことでこれに対応することができるため、電動操作装置6の設置スペースを広げることなくこれらの作動操作を行えるようにすることができる。また、操作部10を把持した手を持ち替えることなく、電動機能の操作対象を選択してそれを作動操作させるという一連の操作を行うことができる。したがって、一旦操作部10を把持すれば、他の操作スイッチを手探りで探し当てることなく全ての一連の操作を行うことができるため、係る操作を非常に簡便に行うことができる。
更に、操作部10をスライド移動させた方向にシートバック2やヘッドレスト4等のシート構成部材を移動操作することができるため、シート構成部材をイメージに即した方向に簡単に移動操作することができる。
また、操作部10は、各ポジションP1〜P3に合わされる回動位置でその回動操作力に対して一定の節度感が付与されるようになっている。したがって、例えば、操作部10を目一杯どちらか一方側の回動方向に軸回動させて、そこから段階的に戻し方向に軸回動操作することにより、各ポジションP1〜P3で付与される節度感によって操作部10を狙いとする回動位置に簡単に合わせることができる。
更に、第2の回動位置であるポジションP4,P5に切替えられた操作部10を附勢によって第1の回動位置であるポジションP1,P3にそれぞれ移動させることのできるリターン手段(トーションバネ70及び操作部材80)を設けたことにより、操作部10が切替えられた回動位置にて保持される切替え操作の段数(ポジションP1〜P3の3段)に対して、操作部10の軸回動操作による電動機能のモード選択が可能な切替え操作の段数(ポジションP1〜P5の5段)を増やすことができる。
更に、上記第2の回動位置(ポジションP4,P5)を操作部10の各回動方向の最端側の回動位置に設定したことにより、操作部10をどちらか一方側の回動方向に目一杯回動させて操作力を解除することによって、操作部10を第1の回動位置(ポジションP1,P3)に合わせることができるため、その回動位置の確認を容易に行うことができる。そして、第2の回動位置(ポジションP4,P5)が操作部10の各回動方向の最端側の回動位置に設定されていることにより、これらの回動位置では操作部10が目一杯回動操作された状態となっているため、径方向へのスライド移動操作に対する力がかけ易くなる。したがって、操作部10は、第2の回動位置に保持することはできないものの、比較的径方向へのスライド移動操作を容易に行うことができる。
【実施例2】
【0030】
続いて、実施例2の車両用シートの電動操作装置について、図13を用いて説明する。なお、以下の説明では、実施例1で説明した電動操作装置6と実質的に同じ構成及び作用を奏する箇所については説明を省略し、相違する箇所について異なる符合を付して詳しく説明をする。
本実施例では、操作部90が実施例1で示した外観視円筒形状のものではなく、握り手によって把持操作される把持部位形状全体が一の径方向に長細く延びる形状に形成されている。この操作部90は、その長細い形状を把持する触感によって、長細形状が向いている方向を捉えることができる。
この操作部90は、その長細形状の姿勢向きをシートバック2の姿勢向きに倣って起立させた姿勢向きとすることにより、シートバック2に関連した電動機能が選択されるポジションP1(実施例1の図10参照)に合わせられる。また、その長細形状の姿勢向きをシートクッション3の姿勢向きに倣って倒伏させた姿勢向きとすることにより、シートクッション3に関連した電動機能が選択されるポジションP3(図10参照)に合わせられる。また、操作部90の長細形状の姿勢向きをシートバック2とシートクッション3との間の角度位置に合わせるイメージで軸回動操作することにより、シートバック2に関連した別の電動機能が選択されるポジションP2(図10参照)に合わせられる。また、操作部90の長細形状の姿勢向きをシートバック2よりも更に後傾させるイメージで軸回動操作することにより、シートバック2に関連した更に別の電動機能が選択されるポジションP4(図10参照)に合わせられる。また、操作部90の長細形状の姿勢向きをシートクッション3よりも更に下方に落とし込むイメージで軸回動操作することにより、シートクッション3に関連した別の電動機能が選択されるポジションP5(図10参照)に合わせられる。
このように、本実施例の車両用シートの電動操作装置によれば、操作部90を長細形状に形成してその回動位置状態を触感で捉えることのできる方向性を有した形状としたことにより、操作部90の軸回動操作に触感による方向感覚を持たせることができる。これにより、この操作部90の姿勢状態によってシートバック2に関連した電動機能なのかシートクッション3に関連した電動機能なのかが判別し易くなるため、電動機能のモード選択を容易に行うことができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態を2つの実施例によって説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。
例えば、上記各実施例では、ランバーサポート装置やサイドサポート装置について、操作部が径方向にスライド移動操作されたその操作の分だけ移動させる構成を示した。しかし、このような着座時の快適性を向上させる快適性向上機能のような付加的に配備された機能に対しては、例えば操作部が径方向にスライド移動操作されることによってON/OFFの切替えが行われるようなスイッチ構造を採用してもよい。すなわち、操作部が径方向の一方に操作されることによって所定のサポート姿勢状態に切替えられ、操作部がもう一度径方向の一方に操作されたり或いは他方に操作されたりすることによって、上記のサポート姿勢状態を解除するというものである。
また、例えば車両用シートにマッサージ用のバイブレータやヒーターのような電動機能が配備されている場合には、操作部の径方向の一方或いは他方へのスライド移動操作によってそれらの出力の強弱を段階的に調整するように設定してもよい。
また、実施例2では、操作部を長細形状に形成したものを示したが、例えば実施例1で示した外観視円筒形状の操作部の板面上に長細形状の摘み部位を部分的に突出させるかたちで形成してもよい。この場合には、操作部を把持した際に、摘み部位を摘むなどして触ることにより、その向いている方向を確かめることができる。
また、シートバックの背凭れ角度やシートクッションの前後スライド位置を調整する位置調整機能について、操作部がスライド移動操作された方向と同じ方向に移動させる構成を示したが、この操作方向は必ずしも一致していなくてもよい。但し、操作方向と作動方向とが異なると、移動操作する方向がイメージし難くなることは言うまでもない。
また、操作部の軸回動操作による電動機能のモード選択が可能な切替え操作の段数が5段階に設定されたものを示したが、これは車両用シートに配備される電動機能の数に応じて段数を設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の車両用シートの電動操作装置の概観斜視図である
【図2】車両用シートに配備された各電動機能の作動概要を表した斜視図である。
【図3】電動操作装置の内部構造を表した図1のIII−III線断面図である。
【図4】電動操作装置の分解斜視図である。
【図5】電動操作装置の組付け構造を表した構成図である。
【図6】図4で表した回転部材を上側から見た構成図である。
【図7】図4で表したスライド部材を上側から見た構成図である。
【図8】摺動子と固定接点とが合致した状態を表した電動操作装置の断面図である。
【図9】図7の状態から操作部を紙面内右方向にスライド移動させた状態を表した構成図である。
【図10】電動機能モード切替構造及び作動制御構造を模式的に表した構成図である。
【図11】操作部がポジションP1からポジションP4に軸回動操作された状態を表した構成図である。
【図12】操作部がポジションP3からポジションP5に軸回動操作された状態を表した構成図である。
【図13】実施例2の電動操作装置の電動機能モード切替構造を模式的に表した構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 車両用シート
2 シートバック
2A 上側部分
2B 下側部分
2C 側脇部分
3 シートクッション
3A 前側部分
3B 後側部分
4 ヘッドレスト
5 シールド
5a 外側面
5b 内側面
5c 貫通孔
6 電動操作装置
A ヘッドレスト昇降装置
B シートバック中折れ装置
C サイドサポート装置
D ランバーサポート装置
Da 受板部
E リクライニング装置
F クッション前部可動装置
G リフター装置
Ga リンク機構部
Gb アクチュエータ
Gc 移動台
H スライド装置
Ha アッパレール
Hb ロアレール
Hc アクチュエータ
10 操作部
10A 嵌合溝
11 周縁部位
12 指標部位
20 回転部材
21 嵌合部
21A スプライン軸
22 座板部
22A 座面
22B 摺動子
22C 突縁
22D 脚部
30 スライド部材
31 胴体部
31A 内周面
31B 外周面
31C 開口部分
32 段差部
32A 内側面
32B 外側面
33 首部
33C 開口部分
34A〜34E 固定接点
35 共通接点
40 外周リング
41 天板部
41A 内側面
41B 外側面
41C 貫通孔
41D バネ収納溝
41E バネ収納溝
42 円筒部
42C 開口部分
42D 係合爪
50 内周リング
51 底板部
51A 内側面
52 円筒部
52A 内周面
53A〜53E 定置接点
60 基盤
61 係合孔
63 端子
70 トーションバネ(リターン手段)
70A 成す角
71 一端部
72 他端部
80 操作部材(リターン手段)
80A スプライン孔
80B 掛部
80C 掛部
90 操作部
P1,P3 ポジション(第1の回動位置)
P2 ポジション
P4,P5 ポジション(第2の回動位置)
T スライド検知スイッチ
R 圧縮ばね


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに配備された複数の電動機能を作動操作するための車両用シートの電動操作装置であって、
前記車両用シートへの着座者が着座した姿勢状態で操作ができる車両用シートの外部位置に前記複数の電動機能を操作するための操作部が配設されており、
該操作部は軸回動操作が可能で、かつ、径方向へのスライド移動操作も可能な機構として構成されており、該操作部の軸回動操作による回動位置の切替えが前記複数の電動機能の中から操作対象となる電動機能が選択される電動機能モード切替構造となっており、該操作部の径方向へのスライド移動操作によるスライド位置の切替えが前記操作対象として選択された電動機能が作動操作される作動制御構造となっており、
前記複数の電動機能の中から操作対象となる電動機能を選択するための操作部の軸回動操作構造には、該操作部を第2の回動位置から第1の回動位置まで附勢によって回動移動させることのできるリターン手段が設けられており、該リターン手段は前記第1の回動位置から第2の回動位置に軸回動操作されて切替えられた操作部をその軸回動操作力の解除に伴って第1の回動位置に附勢によって戻す構成となっていることを特徴とする車両用シートの電動操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートの電動操作装置であって、
前記操作部の第2の回動位置は、該操作部を一方側の回動方向に目一杯回動させた軸回動操作の最端側の回動位置として設定されており、
前記第1の回動位置は、前記第2の回動位置から他方側の回動方向に戻された回動位置として設定されていることを特徴とする車両用シートの電動操作装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートの電動操作装置であって、
前記操作部にはその軸回動操作によって前記操作対象となる電動機能を選択する回動位置が3箇所以上に段階的に設定されており、
前記操作部の第2の回動位置は、該操作部を一方側及び他方側の回動方向に目一杯回動させた軸回動操作の最端側の回動位置としてそれぞれ設定されており、
前記第1の回動位置は、前記第2の回動位置となる各回動方向の最端側の回動位置から逆方向に一段階戻された回動位置として設定されていることを特徴とする車両用シートの電動操作装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−135324(P2008−135324A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321585(P2006−321585)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】