説明

車両用シート収納構造

【課題】シート収納状態での見栄えを向上させて、乗員室内の外観品質を良好なものとすることが出来る車両用シート収納構造を提供する。
【解決手段】車両1の乗員室2内に設けられたリヤシート3には、跳ね上げ機構10が、設けられていて、シートクッション12の側端部12aを、乗員室2の内側壁5aから、乗員室2内側方向に向けて、膨出形成されたリヤホイールハウス6の上面部6dに位置させている。
また、跳ね上げ機構10では、リヤシート3のシートクッション12が、跳ね上げられたシート収納状態で、着座面12bを、乗員室2の内側壁5aに対向させ、跳ね上げ前のシート使用状態で、側端面12cを、内側壁5aに近接させる。
そして、シートクッション12の収納状態では、跳ね上げ前のシート使用状態の位置よりも側端面12cの位置が、リヤホイールハウス6の上面部6dに近接移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシート部に適用される車両用シート収納構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシート部として、折り畳み可能なリヤシートが、乗員室内に設けられているものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなものでは、リヤシートを使用しない場合には、このリヤシートのシートバック部が、シートクッション部に重ね合わせられるように折り畳まれて、乗員室内側壁側へ跳ね上げられ、収納されるように構成されている。
【0004】
このリヤシートが、跳ね上げられる際の回動中心となるヒンジ軸部は、前記乗員室内側壁側から、車室内内側方向へ膨出形成されるリヤホイールハウスの上方部分に設けられている。
【0005】
このヒンジ軸部は、車両前後方向に軸延設方向を沿わせて設けられていて、前記リヤシートを構成するシートクッション部の側壁側端面に固定された回動片部材を、このヒンジ軸を回動中心として回動させるように構成されている。
【0006】
このように構成された従来の車両用シート収納構造では、前記シートバック部が、車両前方に倒されてシートクッション部に重ね合わせられるように折り畳まれ、若しくは車両後方へ倒された状態で、前記ヒンジ軸部を回動中心として、乗員室内側壁側へ跳ね上げられて、このシートクッション部の座面が、内側壁に対向するように収納される。
【0007】
前記ヒンジ軸部を回動中心として、前記リヤシートのシートクッション部に固着された前記回動片部材が、前記乗員室の内側壁側方向へ向けて、跳ね上げられる。
【0008】
前記内側壁側に位置する前記シートクッションの側端部では、前記リヤホイールハウスの上面部から離間されて、しかも、前記内側壁からも離れた位置に、前記ヒンジ軸部の回動中心が設定されている。
【0009】
このため、跳ね上げられて、回動される際には、シートクッション部のシート厚さ寸法や、折り畳まれたシートバック部の厚さ寸法が、ある程度、存在しても干渉が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3806368号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の車両用シート収納構造では、前記リヤシートが跳ね上げられた収納状態では、このシートクッションの厚さ寸法分、回動により、シートクッションの側端面が、前記リヤホイールハウスの上面部の上方に移動してしまう。
【0012】
このため、前記シートクッションの側端面と、前記リヤホイールハウスの上面部との間に隙間が形成されて、外観品質が低下してしまうといった問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、シート収納状態での見栄えを向上させて、乗員室内の外観品質を良好なものとすることが出来る車両用シート収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、車両の乗員室内に設けられたシート部の側端部を、該乗員室の内側壁から、該乗員室内方向に膨出形成されたホイールハウスの上面部に位置させる跳ね上げ機構が、シートクッションに設けられている車両用シート収納構造である。
【0015】
該跳ね上げ機構では、該シート部のシートクッションが、跳ね上げられたシート収納状態では、該シートクッションの座面部を、前記乗員室の内側壁に対向させると共に、跳ね上げ前のシート使用状態では、前記シートクッションの側端面を、前記内側壁に近接させる。
【0016】
そして、前記シートクッションの側端面を、シートクッションが跳ね上げられたシート収納状態で、跳ね上げ前のシート使用状態の該側端面の位置よりも前記ホイールハウスの上面部に近接するように位置させる車両用シート収納構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前記跳ね上げ機構によって、前記シートクッションが跳ね上げられたシート収納状態で、跳ね上げ前の該側端面の位置よりも、前記側端面が、前記ホイールハウスの上面部に近接する。
【0018】
このため、シート収納状態では、前記シートクッションの側端面と、前記ホイールハウスの上面部との隙間を小さく設定出来る。
【0019】
従って、シート収納状態での見栄えが向上して、乗員室内の外観品質を良好なものとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の車両用シート収納構造で、跳ね上げ機構を一般的なヒンジ部と比較し、図2中B−B線に沿った位置に相当する位置での模式的な断面図及び、要部の構成を説明するA部の拡大図である。
【図2】実施の形態の車両用シート収納構造で、全体の構成を説明するリヤシートの分解斜視図である。
【図3】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート収納状態を示す車室内の一部断面斜視図である。
【図4】実施の形態の車両用シート収納構造で、図3中C−C線に沿った位置での断面図である。
【図5】実施の形態の車両用シート収納構造で、跳ね上げ前状態であるシート使用状態を示す車室内の一部断面斜視図である。
【図6】実施の形態の車両用シート収納構造で、図5中D−D線に沿った位置での断面図である。
【図7】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート収納状態での跳ね上げ機構の構成を説明する斜視図である。
【図8】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート収納状態での跳ね上げ機構の構成を説明する一部透過正面図である。
【図9】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート収納途中状態での跳ね上げ機構の構成を説明する斜視図である。
【図10】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート収納途中状態での跳ね上げ機構の構成を説明する一部透過正面図である。
【図11】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート使用状態での跳ね上げ機構の構成を説明する斜視図である。
【図12】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート使用状態での跳ね上げ機構の構成を説明する一部透過正面図である。
【図13】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート収納状態での各部材の位置を説明する跳ね上げ機構の分解斜視図である。
【図14】実施の形態の車両用シート収納構造で、シート使用状態での各部材の位置を説明する跳ね上げ機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の車両用シート収納構造を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1乃至図14は、この発明の実施の形態の車両用シート収納構造を示すものである。
【0023】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車両用シート収納構造では、図2に示すように、車両1の乗員室2内に、シート部としてのリヤシート3が設けられている。
【0024】
また、この乗員室2内の車幅方向左,右両側に位置するサイドパネル部材5からは、乗員室2の内側方向へホイールハウスとしてのリヤホイールハウス6が、膨出形成されている。
【0025】
更に、この乗員室2の床部4上面には、前,後ストライカ部材4a,4bが設けられている。
【0026】
そして、前記リヤシート3は、前記リヤホイールハウス6に隣接配置されていて、これらの前,後ストライカ部材4a,4b及び前記リヤホイールハウス6の座面部6a,6b,6cに、装着されて支持されるフレーム部材7と、これらのフレーム部材7を跳ね上げ収納する跳ね上げ機構10と、乗員の着座部分を構成するシートクッション12及びシートバッククッション13等とを有して、主に構成されている。
【0027】
このうち、フレーム部材7は、主に、着座面12bを上面側に形成する前記シートクッション12に覆われたシートクッションフレーム部材8と、このシートクッションフレーム部材8の後端部に、軸部8a,8aを介して回動可能に設けられたシートバックフレーム部材9とを有して構成されている。
【0028】
このシートバックフレーム部材9は、前記シートバッククッション13で覆われていて、前記着座面12bと対向するように折り畳まれる背もたれ面13aを有している。
【0029】
また、この乗員室2のサイドパネル部材5の内側壁5aから、乗員室2内方向に膨出形成されたリヤホイールハウス6の上面部6dに位置するように、このシートクッション12の側端部12aには、跳ね上げ機構10が設けられている。
【0030】
この実施の形態の跳ね上げ機構10は、図1中実線及び二点鎖線で示す様に、このシートクッションフレーム部材8に設けられた前記シートクッション12の側端部12aが、跳ね上げ後のシート収納状態及び、跳ね上げ前のシート使用状態共に、前記サイドパネル部材5のリヤホイールハウス6の上面部6d側に位置するように構成されている。
【0031】
この跳ね上げ機構10では、このシートクッション12の前記側端部12aの側端面12cが、跳ね上げ前のシート使用状態で、図1中二点鎖線で示す様に、前記内側壁5aに近接するように構成されている。
【0032】
また、この跳ね上げ機構10では、図1中実線で示す様に、前記シートクッション12の側端面12cを、シートクッション12が跳ね上げられたシート収納状態では、跳ね上げ前のシート使用状態よりも、前記リヤホイールハウス6の上面部6dに近接するように位置させる構成としている。
【0033】
すなわち、この跳ね上げ機構10は、長さの異なる2本づつで、車両前,後に2組、合計4本の不均等なリンク部材21,22及び23,24と、前記リヤホイールハウス6の座面部6a,6b,及び6cに固着されて、前記各リンク部材21,22及び23,24の一端側21a,22a及び23a,24aを回動自在に枢着する前,後側ブラケット部材25,26とを有している。
【0034】
また、この跳ね上げ機構10には、図13及び図14に示すように、前記各リンク部材21,22及び23,24の他端側21b,22b及び23b,24bを、回動自在に枢着する前,後シート側ブラケット部材27,28が設けられている。
【0035】
これらの前,後シート側ブラケット部材27,28は、車両前,後方向に長尺形状を呈する平行連結構造部材50に、一定の間隔を置いて平行となるように固着されている。
【0036】
この平行連結構造部材50は、車幅方向に沿った垂直断面形状を略弓状として、前,後側端部50a,50b近傍を幅広状とするコ字状平面50eを有している。
【0037】
そして、このコ字状平面50eの長尺方向で、前,後側端部50a,50bの下面側から、略直交する鉛直方向へ一体となるように、固着されている。
【0038】
また、前記車両前,後方向で対となる一組のリンク部材21,23は、図13及び図14に示すように、正面視略くの字状を呈している。
【0039】
更に、この一組のリンク部材21,23は、凹状部分を車両外側方に向けた状態で、軸部材29,29が介装されて、一端側21a,23aが、軸支されている。
【0040】
この軸部材29,29は、一定の長さ方向寸法L11,L11を軸方向に有するスペーサ部29b,29bが、一端側21a,23aと、前記前,後シート側ブラケット部材27,28の軸受部との間に介在して、組み立てられた状態では、図9に示されるように、略一定寸法L11,L11の間隙が各々形成されるように構成されている。
【0041】
更に、前記車両前,後方向で対となる各リンク部材22,24では、軸部材31,31が介挿されて前記前,後シート側ブラケット部材27,28の軸受部に、一端側22a,24aが、軸支されている。
【0042】
この軸部材31,31には、前記軸部材29の寸法L11よりも小さな寸法L12,L12を軸方向に有するスペーサ部31b,31bが、前記一端側22a,24aと、前記前,後シート側ブラケット部材27,28の軸受部との間に介在して、組み立てられた状態では、図9に示されるように、略一定寸法L12,L12の間隙が各々形成されるように構成されている。
【0043】
また、前記前,後シート側ブラケット部材27,28には、各々回動自在に取り付けられたこれらの各リンク部材21,23及び22,24の他端側21b,23b及び22b,24bが、スペーサ軸部材30,30及び軸部材32,32を介装させて、連結されている。
【0044】
更に、図7に示すように、前記前,後側ブラケット部材25,26の取付部分の間の寸法L1よりも、一端側21a,23a間の寸法L3が狭くなるように構成されている。
【0045】
そして、前記各リンク部材21,23が、リンク部材22,24よりも、前,後側ブラケット部材25,26の車幅方向外側位置となるように、取り付けられることにより、相互に干渉することなく、前記平行連結構造部材50が、車幅方向に沿って、略振子状に揺動可能となるように連結されている。
【0046】
更に、前記車幅方向内側で、車両前,後方向で一対のリンク部材22,24には、図13及び図14に示すように、正面視略クランク状を呈して、略中央部下面側に下方に向けて突設された係止凸部22c,24cが設けられている。
【0047】
これらの係止凸部22c,24cは、図1中二点鎖線で示すように、シート使用状態では、支持軸部29b,29bに当接して、図11又は、図12に示すように、車両車幅方向外側への回動を停止させるように構成されている。
【0048】
これらの支持軸部30c,30cは、図13及び図14に示すように、円柱形状を呈して、前記リンク部材21,23の他端側21b,23bに挿通されるスペーサ軸部材30,30から、一体延設に形成されて、前記リンク部材21,23の他端側21b,23bに挿通されることにより、前記平行連結構造部材50の内側面50c,50d側に突設されて、車両前後方向位置を、前記係止凸部22c,24cに対向する位置となるように構成されている。
【0049】
また、柱状のスペーサ軸部材30,30及び軸部材29,29、31,31及び、32,32によって、図7に示すように、前記前,後側ブラケット部材25,26の軸受部の間の寸法L1及び前,後シート側ブラケット部材27,28間の寸法L4よりも、リンク部材22,24間の寸法L2が小さく、しかも、この寸法L2よりも、前記リンク部材21,23間の寸法L3が、更に小さくなるように、構成されている。
【0050】
しかも、図8に示すように、これらのリンク部材22,24の各両端22b,22a及び24b,24aの軸間寸法L5は、前記リンク部材21,23の各両端21b,23a及び23b,23a間の軸間寸法L6よりも長くなるように構成されている。
【0051】
このため、図1中実線位置で示すように、跳ね上げられたシート収納状態では、各スペーサ軸部材30,30のスペーサ部30b,30bの外周面が、前記各係止凸部22c,24cに当接するように構成されている。
【0052】
更に、この実施の形態では、前記前,後側ブラケット部材25,26で、前記各リンク部材21,23の一端側21a,23aを軸支する回動軸と、前記各リンク部材22,24の一端側22a,24aを軸支する回動軸との間の寸法L7は、前記各リンク部材21,23の他端側21b,23bを軸支する回動軸と、前記各リンク部材22,24の他端側22b,24bを軸支する回動軸との間の寸法L8よりも大きくなるように、設定されている。
【0053】
また、この跳ね上げ機構10では、他端側22b,24b及び21b,23bが、各々回動自在に連結された前記前,後シート側ブラケット部材27,28には、車両前後方向へ長手方向を延設する平行連結構造部材50が、一体に連結されている。
【0054】
そして、この平行連結構造部材50によって、図1中二点鎖線で示すように、使用状態である跳ね上げ前状態では、前記シートクッション12の着座面12bのうち、車幅方向外側に位置する側端面12c近傍の下面側が、下方から支持されるように構成されている。
【0055】
更に、この実施の形態では、前記平行連結構造部材50に設けられたコ字状平面50eによって、前記各リンク部材22,24及び21,23の他端側22b,24b及び21b,23bを各々回動自在に連結する前記前,後シート側ブラケット部材27,28が、一体となるように接続されている。
【0056】
また、この跳ね上げ機構10では、実線で示すように、跳ね上げられた収納状態では、前記他端側22b,24b及び21b,23bが、各々乗員室2内方向へ移動する。
【0057】
この実施の形態では、前記跳ね上げ機構10のリンク部材21,23の軸間寸法L6が、リンク部材22,24の軸間寸法L5に比して、小さく設定されている為、平行連結構造部材50によって支持される前記シートクッション12の側端部12aが、上方を凹状とする湾曲する軌跡を描きながら、車幅方向へ側面視略振子状に揺動可能となるように連結されている。
【0058】
このようにして、前記シートクッション12の着座面12bの車幅方向外側に位置する側端面12cを、前記使用状態の場合よりも、前記リヤホイールハウス6の上面部6dに近接するように移動させる構成とされている。
【0059】
更に、この実施の形態では、前記シートクッション12の側端面12cが、下面側に位置して、前記平行連結構造部材50のコ字状平面50eと共に、平行となるように、車両前後方向へ長手方向を沿わせる長尺平板状の支持板部材52に、下方から係合装着される平行連結補助部材51によって、支持されている。
【0060】
この平行連結補助部材51は、図13に示すように、鉛直方向断面形状を、下向きに凹状を呈する断面略半円状として、図7に示すように、前,後端部の内側面51a,51aが、前記リンク部材21,23の他端側21b,23bから突設された前記スペーサ軸部材30,30の支持軸部30c,30cに、各々嵌着されて、前記リンク部材21,23の他端側21b,23b間と、前記平行連結構造部材50の前,後シート側ブラケット部材27,28間とが、車両前後方向で連結されている。
【0061】
そして、この平行連結補助部材51には、支持板部材52が、上方から覆うように装着されている。
【0062】
この支持板部材52は、前記平行連結構造部材50のコ字状平面50eと共に、前記シートクッション12の側端部12aに下方から、前記長尺平板状部分Oの上面側を面状に当接させて、側端面12c近傍が、比較的広い面積で支持されるように構成されている。
【0063】
更に、このシートクッションフレーム部材8の下面側には、車両下方に向けて、突設される脚部材14が、脚回動部14aを回動中心として、出没可能に装着されている。
【0064】
また、前記平行連結構造部材50の下面側と、前記リヤホイールハウス6の座面部6aに固着される前側ブラケット部材25との間には、図13及び図14に示すように、各ステーブラケット部材61,62及び、ボールリンク部材63,64を介して、ガスダンパー部材60が介挿されている。
【0065】
このガスダンパー部材60は、図7及び図8に示すように、伸張により各前,後側ブラケット部材25,26及び前,後シート側ブラケット部材27,28間のうち、車室内側端部同士を、上下方向へ離間させる方向へ一定の保持力を与えて、シートが跳ね上げられた前記シート収納状態を維持するように構成されている。
【0066】
また、図9及び図10に示すように、跳ね上げ途中では、伸張方向へ付勢力を与えて、跳ね上げ動作をアシストする助力装置として機能すると共に、リヤシート3の取り出し途中の状態では、このガスダンパー部材60の内部に設けられた図示省略の緩衝機構の作用により、自重によるリヤシート3自体の移動に伴う急激な落下を防止し、衝撃を吸収するダンパーとして機能する。
【0067】
更に、図11及び図12に示すように、収縮により各前,後側ブラケット部材25,26及び前,後シート側ブラケット部材27,28間のうち、車室内側端部同士を、上下方向へ近接させた状態では、前記リヤシート3が、安定して使用状態に保持されるように構成されている。
【0068】
この使用状態では、図1に示すように、前記脚部材14に内蔵された図示省略のロック機構が、前,後ストライカ部材4a,4bのうち、少なくとも何れか一方と係合されて、このガスダンパー部材60が、収縮された状態が保持されている。
【0069】
また、この使用状態では、図1中二点鎖線若しくは、図5,図6及び図11,図12に示すように、平行連結構造部材50の面延設方向を略水平とすると共に、前記乗員室2の外側に位置するリンク部材21,23が、乗員室2内側に位置するリンク部材22,24と、車両前後方向で重複して、略水平に近い状態まで、車幅方向外側に向けて、傾倒されるように構成されている。
【0070】
前記脚部材14に内蔵された図示省略のロック機構には、専用ストラップ部材が設けられていて、この専用ストラップ部材を引くことで、前記前,後ストライカ部材4a,4bとの間の係合が解除されるように構成されている。
【0071】
また、前記シートバックフレーム部材9は、図示省略の専用レバー部材が用いられて、前記軸部8a,8aを回動中心として、車両前方方向へ倒されて、前記シートバッククッション13の背もたれ面13aが、前記シートクッション12の着座面12bに、対向する状態で重なり合うように構成されている。
【0072】
更に、この実施の形態では、前記シートバッククッション13の背もたれ面13aが、前記シートクッション12の着座面12bに対向する状態で重なり合わせられた状態で、跳ね上げられた図1に示す様なシート収納状態では、図示省略の収納状態固定用の固定ストラップ部材が用いられて、前記サイドパネル部材5の内側壁5aに、このリヤシート3が固定されるように構成されている。
【0073】
次に、この実施の形態の車両用シート収納構造の作用効果について説明する。
【0074】
このように構成された実施の形態の車両用シート収納構造では、図1中実線で示すように、前記跳ね上げ機構10によって、前記シートクッション12が跳ね上げられたシート収納状態では、二点鎖線で示す跳ね上げ前状態である使用状態よりも、前記側端面12cが、前記リヤホイールハウス6の上面部6dに近接する。
【0075】
この比較の為、図1中左側の実線で示す一般的な単軸で支持されて、一本の回動アーム部材111を有するヒンジ部材110を用いた車両用シート103の収納構造では、二点鎖線で示す使用状態から、車室内側壁方向へ跳ね上げられて、シート収納状態となることで、リヤホイールハウス106の上面部106dから、シートクッション112の側端面112cが離間してしまう。
【0076】
このため、前記シートクッション112の側端面112cと、前記リヤホイールハウス106の上面部106dとの間に形成される隙間の高さ方向寸法h1が、図1中右側に示す本願発明のシートクッション収納構造と比較すると、大きくなる(寸法h1>h2)が図1中右側に示す実施の形態の車両用シート収納構造では、図中寸法h2まで、減少させることが出来る。
【0077】
従って、図3及び図4に示すように、シート収納状態では、隙間が一般的な単軸で支持される一本の回動アーム部材111で構成されたものより小さくなり、見栄えを向上させて、乗員室2内の外観品質を良好なものとすることが出来る。
【0078】
また、前記跳ね上げ機構10は、長さの異なる不均等な2組4本のリンク部材21,23及び22,24を有している。
【0079】
このうち、車幅方向車両外側に位置するリンク部材21,23は、内側に位置するリンク部材22,24に比して短く(図8中L5>L6参照)、しかも介装される各軸部材29,29及び31,31の軸方向寸法が異なる為、車両前後方向で干渉することなく、例えば、図12に示すように、重複する位置まで移動可能である。
【0080】
このため、図1中二点鎖線で示すシート使用状態では、図5及び図6のように、シートクッション12の着座面12bが、水平状態となると共に、前記平行連結構造部材50及び支持板部材52が、略水平位置となり、図11及び図12に示されるように、前記リンク部材21,23の間の内側位置に、前記リンク部材22,24が、重複して入り込みコンパクトに畳まれるので、スペース効率が良好である。
【0081】
従って、前記リンク部材22,24の他端側22b,24bは、リンク部材21,23の他端側21b,23bよりも、車両高さ方向で、低い位置まで移動可能で、前記シートクッション12の側端面12cを、前記サイドパネル部材5の内側壁5aの近傍に位置させることが出来る。
【0082】
このシート使用状態では、図12に示すように、前記軸部材29,29のスペーサ部29b,29bの各外周面に、リンク部材22,24の係止凸部22c,24cが、同時に当接して、軸部材29,29が、ストッパとしての機能を発揮する。
【0083】
このように、二組4本のリンク部材21〜24で構成されるこの実施の形態の跳ね上げ機構10では、前記係止凸部22c,24cが、前記軸部材29,29のスペーサ部29b,29bの各外周面に当設して、前記シートクッション12から加わる上方からの荷重を、前記前,後側ブラケット部材25,26を介して、前記リヤホイールハウス6に伝達させることが出来る。
【0084】
また、図1中左側の実線で示す一般的な片持ちのヒンジ構造に比して、荷重伝達に用いられる軸部材29,29を、前記平行連結構造部材50の略真下に位置させることが出来、乗員が、このリヤシート3の何れの箇所、例えば、内側壁5a近傍に着座しても、着座面12bを水平に保持できる。
【0085】
更に、図5及び図6に示す様な跳ね上げ前状態であるシート使用状態から、図3及び図4に示す様なシート収納状態となると、前記リンク部材22,24の他端側22b,24bが、リンク部材21,23の他端側21b,23bよりも、車両高さ方向で、高い位置まで移動されて、前記シートクッション12の側端面12cが、前記リヤホイールハウス6の上面部6dの近傍位置まで移動される。
【0086】
この際、一般的な単軸で支持されて、一本の回動アーム部材111を有するもののように、一方的に、リヤホイールハウス106の上面部106dから離間するのではなく、前記シートクッション12の側端部12aが、上方を凹状とする湾曲する軌跡を描きながら、車幅方向へ側面視略振子状に揺動して、前記リヤホイールハウス6の上面部6dの近傍位置まで移動する。
【0087】
しかも、図7及び図8に示すように、リンク部材22,24の係止凸部22c,24cに、スペーサ軸部材30,30のスペーサ部30b,30bの外周面が当設して、これらのリンク部材21〜24の移動を停止させることにより、軸部材29,29が、ストッパとしての機能を発揮するように構成されている。
【0088】
更に、前記脚部材14に内蔵された図示省略のロック機構には、専用ストラップ部材が設けられていて、この専用ストラップ部材を引くことで、前記前,後ストライカ部材4a,4bとの間の係合が解除されるように構成されている。
【0089】
次に、リヤシート3を、シート使用状態から、跳ね上げて収納する動作を中心に、この収納動作に伴う作用効果について説明する。
【0090】
前記シートバックフレーム部材9が、図示省略の専用レバー部材が用いられて、前記軸部8a,8aを回動中心として、車両前方方向へ倒されて、前記シートバッククッション13の背もたれ面13aが、前記シートクッション12の着座面12bに、対向する状態で重なり合うように、前記リヤシート3が跳ね上げられる。
【0091】
この場合、まず、前記シートバックフレーム部材9が、リヤシート3に設けられた図示省略の専用レバー部材が用いられて、前記軸部8a,8aを回動中心として、車両前方方向へ倒されることにより、前記シートバッククッション13の背もたれ面13aが、前記シートクッション12の着座面12bに、対向する状態で重なり合わせられる。
【0092】
次に、前記脚部材14に内蔵された図示省略のロック機構の専用ストラップ部材が引かれて、前記前,後ストライカ部材4a,4bとの間の係合が解除される。
【0093】
この際、前記ガスダンパー部材60が、収縮された状態から開放されて、前記二組4本のリンク部材21〜24によって、シートクッションフレーム部材8に設けられた平行連結構造部材50及び平行連結補助部材51が、図9及び図10に示す中間状態から、図7及び図8に示す収納状態となるまで、このガスダンパー部材60によって、シート跳ね上げ方向へ押し上げられて、衝撃を発生させることが無い。
【0094】
また、前記シートクッション12及びシートバッククッション13に、操作者の力が加えられても、前記シート側前,後ブラケット部材25,26が、平行連結構造部材50のコ字状平面50e及び平行連結補助部材51によって、一体に連結されているので、撓み変形により、回動摩擦が増大すること無く上方へ向けて移動される際に、円滑に移動させることが出来る。
【0095】
更に、車幅方向車両外側に位置する前記リンク部材21,23は、内側に位置するリンク部材22,24に比して短く、しかも介装される各軸部材29,29及び31,31の軸方向寸法が異なる為、車両前後方向で干渉することなく、重複する位置まで移動可能である。
【0096】
しかも、リヤホイールハウス6の上面部6dの近傍位置まで移動する軌跡が、側端部12aの軌跡を、上方を凹状とする湾曲するように描かせながら、車幅方向内側へ側面視略振子状に揺動するので、移動距離が短く、無駄がない。
【0097】
図7及び図8に示す収納状態となると、前記ガスダンパー部材60によるシート跳ね上げ力が、前記リンク部材22,24の係止凸部22c,24cが、前記スペーサ軸部材30,30のスペーサ部30b,30bの外周面に当設する際に押圧力として作用する。
【0098】
このように、リンク部材22,24の他端側22b,24bよりも、車両上下方向で下方に潜り込むこれらのスペーサ部30b,30bの外周面の移動を、停止させる力として作用した前記ガスダンパー部材60によるシート跳ね上げ力は、図3及び図4に示すように、前記リヤシート3のシートクッション12及びシートバッククッション13を、起立状態で保持させる力となる。
【0099】
この実施の形態では、更に、図示省略の収納状態固定用の前記固定ストラップ部材が用いられて、前記サイドパネル部材5の内側壁5aに、このリヤシート3が固定されると共に、前記ガスダンパー部材60によって、前記リヤシート3が、補助器具を用いなくても自立可能である。
【0100】
このため、更に、確実に図1中実線で示す収納状態を保持させることが出来る。
【0101】
このように、長さ寸法を異ならせて、不均等となるように構成された2本、二組4本の前記リンク部材21,22及び23,24によって、シートクッションフレーム部材8に設けられた平行連結構造部材50及び平行連結補助部材51が、図11及び図12に示すシート使用状態,図9及び図10に示す中間状態から、図7及び図8に示すシート収納状態となるまで、円滑に効率よく移動させることが出来る。
【0102】
従って、これらの各リンク部材21,22及び23,24の端部21a,21a〜24b,24bを枢着する軸の位置の設定によって、複雑に支持するリヤシート3を可動させて、所望の移動軌跡を実現出来る。
【0103】
また、移動軌跡を短く効率的に設定出来るので、跳ね上げ機構10を小型化出来、レイアウトの自由度を向上させることが可能となり、更に、外観品質を良好なものとすることが出来る。
【0104】
そして、前記平行連結構造部材50及び平行連結補助部材51が、前記リンク部材21〜24の他端部21b〜24bを各々回動自在に連結する前後シート側前,後ブラケット部材25,26を車両前後方向で、一体となるように連結している。
【0105】
このため、リヤシート3のシートクッション12に設けられる着座面12bの側端面12cが、乗員が着座する際にガタ付くことが無いと共に、リヤシート3の跳ね上げ操作、着座状態であるシート使用状態での前記床部4へのロック操作等が容易に行える。
【0106】
また、リヤシート3のシートクッション12の側端面12cでは、前記跳ね上げ機構10を構成する何れかのリンク部材21〜24が、一部若しくは全部隠れるので、更に、外観品質が良好である。
【0107】
しかも、前記平行連結補助部材51を覆う支持板部材52及び平行連結構造部材50が、前記リンク部材21〜24の他端部21b〜24bを各々回動自在に連結する前後シート側前,後ブラケット部材25,26を車両前後方向で、一体となるように連結して、略面一としている。
【0108】
このため、更に、シートクッション12に設けられる着座面12bの側端面12c近傍で、段差感が発生すること無く、座り心地を良好なものとすることが出来る。
【0109】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0110】
即ち、前記実施の形態では、跳ね上げ機構10が、長さの異なる2本づつで、前後2組、合計4本の不均等なリンク部材21,22及び23,24を有して構成されているが、特にこれに限らず、例えば、単数組、若しくは3組以上の複数組であっても良い。
【0111】
また、各両端22b,22a及び24b,24aの軸間寸法L5と、前記リンク部材21,23の各両端21b,23a及び23b,23a間の軸間寸法L6との寸法設定及び寸法比率の設定は、前記シートクッション12の側端面12cを、シートクッション12が跳ね上げられたシート収納状態で、跳ね上げ前のシート使用状態のこの側端面12cの位置よりも、前記リヤホイールハウス6の上面部6dに近接するように位置させるものであれば良く、形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【0112】
更に、前記実施の形態の跳ね上げ機構では、連結構造部材として、前記シートクッションの側端部12aの下面側に位置して、コ字状平面50eを有する平行連結構造部材50と、この平行連結構造部材50の前,後側端部50a,50bに一体に固着された前,後シート側ブラケット部材27,28間に渡り、車両前後方向で一体となるように、連結する平行連結補助部材51とを有して、ガタ付きを防止するように構成されているが、特にこれに限らず、例えば、ガタ付きを防止するように前,後に位置するリンク部材21,23間若しくは、リンク部材22,24間又は、他端側21b,22bの対となる各軸間若しくは他端側23b,24bの対となる各軸間を連結する連結構造部材であるならば、どのような形状、数量及び材質の組み合わせで構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
前記実施の形態では、シート部として、リヤシート3を用いて説明してきたが、特にこれに限らず、三列シートを有する車両の車両前後方向略中央に位置するセンタシート等、どの位置のシート部の収納構造に用いても良く、車幅方向左,右のうち、少なくとも何れか一方に用いられる車両用シート収納構造としても適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 車両
2 乗員室
3 リヤシート(シート部)
5a 内側壁
6 リヤホイールハウス(ホイールハウス)
6d 上面部
10 跳ね上げ機構
12 シートクッション
12c 側端面
21〜24 リンク部材
50 平行連結構造部材(連結構造部材の一つ)
51 平行連結補助部材(連結構造部材の一つ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員室内に設けられたシート部の側端部を、該乗員室の内側壁から、該乗員室内方向に膨出形成されたホイールハウスの上面部に位置させて、該シート部のシートクッションが、跳ね上げられたシート収納状態では、該シートクッションの座面部を、前記乗員室の内側壁に対向させると共に、跳ね上げ前のシート使用状態では、前記シートクッションの側端面を、前記内側壁に近接させる跳ね上げ機構を設けた車両用シート収納構造であって、
前記跳ね上げ機構は、前記シートクッションの側端面を、シートクッションが跳ね上げられたシート収納状態で、跳ね上げ前のシート使用状態の該側端面の位置よりも前記ホイールハウスの上面部に近接するように位置させることを特徴とする車両用シート収納構造。
【請求項2】
前記跳ね上げ機構は、2本のリンク部材を有していることを特徴する請求項1記載の車両用シート収納構造。
【請求項3】
前記跳ね上げ機構は、前記シートクッションの側端部の下面側に位置して、車両前後方向で対となる部材間に渡り連結して、ガタ付きを防止する連結構造部材を有することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用シート収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−121380(P2011−121380A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278249(P2009−278249)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】