説明

車両用シート装置の被ロック部材、車両用シート装置、及び、シート設置体

【課題】ストライカの係合部を短くすることなく、横向きの動加速度を受けたときのシートの横移動量を小さく抑えることが可能な車両用シート装置の被ロック部材、車両用シート装置、及び、シート設置体を得る。
【解決手段】被ロック部材が、ストライカ36と、少なくとも一部の左右方向位置がストライカの左右の湾曲角部38と同じとなるようにストライカの少なくとも一方の側片39に固定した、係合片と係合したロック機構16との間に左右方向の隙間を形成する側部スペーサ49を有する移動規制部材45と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート装置の被ロック部材、車両用シート装置、及び、シート設置体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両床面に形成したシート設置面に載置される使用位置と、該車両床面にシート設置面とは前後位置をずらして形成した格納用凹部に収納される格納位置とに移動可能なシートを備える格納式シート装置は従来から知られている(例えば特許文献1)。
シートの下面とシート設置面の一方には金属製のストライカが突設(固定)してあり、他方にはこのストライカと係脱可能な(ストライカと係脱する回転可能なフックと、フックをロック位置に保持可能なポールと、を具備する)ロック機構が設けてある。格納位置に位置するシートを使用位置まで移動させると、ロック機構がストライカをロックするので、シートが使用位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−260325号公報
【特許文献2】特開2009−166605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
急カーブの走行時や車両側面に別の車両が衝突したとき等には当該車両に横向きの動加速度が生じる。この動加速度に起因してシートが横方向に大きく移動するとシートの剛性を確保するのが難しくなるため、動加速度が生じた場合にはシートの横移動量を所定量以下に抑えたい。
シートの横移動量を小さくするためには、ストライカの左右幅を狭くして、ストライカがロック機構(フック)によってロックされたときのストライカの内側面とロック機構(フック)の間の左右方向のクリアランスを小さくすればよい。このようにすれば、横向きの動加速度によってシートが横方向に移動したときに、ストライカが僅かに横移動したタイミングで(移動速度が遅い時点で)、ストライカの内側面がロック機構(フック)に衝突するので、ストライカとロック機構(フック)によってシートの横移動量を小さく抑えることが可能になる。
【0005】
しかしながらストライカの横幅を狭くするのは難しい。
図8は一般的な構造のストライカと、ストライカに係合しているロック機構(フック)とを表した正面図である。ストライカは、シートの下面から下方に向かって延出する互いに平行な左右一対の側片と、左右方向に直線的に延び、かつロック機構(フック)と係脱する係合部と、を一体的に具備している。ストライカは金属棒を曲げ加工して図示の形状に加工するため、側片の下端部と係合部の側端部の接続部を直角に折り曲げることは難しく、当該接続部には図示形状の湾曲角部が必然的に形成される。
【0006】
このような形状として形成されるストライカは、係合部の左右寸法L1を短くすれば、左右の側片の左右幅(対向面間距離)L2を短くできる。しかし、ストライカとロック機構(フック)を円滑に係合させるためには係合部をロック機構(フック)の厚みより長めに設計する必要があり、さらにストライカとロック機構(フック)のロック強度を確保するためにはフックの厚さはある程度大きくする必要があるため、この左右寸法L1を極端に短くすることはできない。
さらに上記のようにストライカには左右一対の湾曲角部が形成されるため、左右の湾曲角部の分だけ左右幅L2は長くなってしまう。
【0007】
本発明は、ストライカの係合部を短くすることなく、横向きの動加速度を受けたときのシートの横移動量を小さく抑えることが可能な車両用シート装置の被ロック部材、車両用シート装置、及び、シート設置体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用シート装置の被ロック部材は、車両床面に形成したシート設置部に設置及び取り外し可能なシートと、上記シート設置部側とシート側の一方に設けたロック機構と、を備える車両用シート装置の上記シート設置部側とシート側の他方に設けた、上記シートを上記シート設置部に設置したときに該ロック機構によってロックされる被ロック部材において、上記被ロック部材が、上記他方から延出する左右一対の側片、該一対の側片の先端から互いに近づく方向に湾曲する一対の湾曲角部、及び、左右方向に直線的に延びて該一対の湾曲角部どうしを接続し、かつ上記ロック機構と係脱する係合部、を有するストライカと、少なくとも一部の左右方向位置が左右の上記湾曲角部と同じとなるように少なくとも一方の上記側片に固定した、上記係合部と係合した上記ロック機構との間に左右方向の隙間を形成する少なくとも一つの側部スペーサを有する移動規制部材と、を備えることを特徴としている。
【0009】
上記側部スペーサを左右一対としてもよい。
この場合は、上記移動規制部材が、上記一対の側部スペーサの上記他方の部材側の端部どうしを接続し、かつ、上記一対の側片に固定された連結部を備えていてもよい。
【0010】
上記側部スペーサが一つと一対のいずれの場合においても、上記移動規制部材を上記他方の部材に接触させてもよい。
【0011】
さらに上記移動規制部材が、上記ストライカの前方又は後方に向かって延び、かつ上記他方の部材に接触する当接部を備えていてもよい。
この場合は、上記当接部が、上記他方の部材に形成した孔又は凹部に嵌合する突起を有するのが好ましい。
【0012】
本発明は、被ロック部材を、上記ロック機構を具備する上記シート設置部に対して設置及び取り外し可能な上記シートに取り付けたことを特徴とする車両用シート装置として実施することも可能である。
また本発明は、上記被ロック部材を備え、かつ、上記ロック機構を設けた上記シートを設置及び取り外し可能なことを特徴とするシート設置体として実施することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロック機構がストライカの係合部と係合したときの、左右の側部スペーサと該ロック機構の間の左右方向の隙間は、該ロック機構と左右の側片の間の距離より短くなる。そのため、横向きの加速度によってシートが横方向に移動しても、ストライカがロック機構に対して横方向に僅かに相対移動したタイミングで(移動速度が遅い時点で)側部スペーサがロック機構に衝突するので、被ロック部材(ストライカ及び移動規制部材)とロック機構によってシートの横移動量を小さく抑えることが可能になる。
しかも側部スペーサを設けることによりストライカ(被ロック部材)の剛性を向上させる補強効果が得られるので、ロック機構との衝突によりストライカ(被ロック部材)が変形するおそれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の車両用シート装置を搭載した車両内の様子を断面視して示す側面図である。
【図2】ブラケットと被ロック部材の前斜め下方から見た斜視図である。
【図3】ブラケットと被ロック部材の背面図である。
【図4】ブラケットと被ロック部材の側面図である。
【図5】変形例のブラケットと被ロック部材を後斜め下方から見た斜視図である。
【図6】変形例の図3と同様の背面図である。
【図7】変形例の図4と同様の側面図である。
【図8】従来例のストライカと、ストライカに係合しているロック機構(フック)とを表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図4を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の方向は図中に記載した矢線方向を基準とする。
図1は自動車(車両)の車内の様子を断面視して示す側面図であり、図1に示したように当該自動車の車両床面10には、前側の低位フロア(格納用凹部)12と、低位フロア12の直後に位置する高位フロア(シート設置部)13とを有する段差フロア11が形成してある。
図1に示すように高位フロア13を構成する床板には左右一対の貫通孔14が形成してあり、左右の貫通孔14の直下に位置する下部空間にはロック機構15が設けてある。ロック機構15は共に左右方向の軸回りに回転可能なフック16とポール17を具備する公知の機構である。フック16は後述するストライカ36(係合部37)と係脱可能な係合溝を有しており、ロック位置と、図1においてロック位置から反時計方向に所定角度回転したアンロック位置との間を回転可能である。ポール17はロック位置に位置するフック16と係合してフック16をロック位置に保持する係合位置と、図1において係合位置から時計方向に所定角度回転したフック16と係合不能な非係合位置との間を回転可能である。さらに、フック16とポール17の間には引張バネ(図示略)が掛けてあるため、この引張バネの付勢力によってフック16はアンロック位置側に回転付勢されており、ポール17は係合位置側に回転付勢されている。
さらに低位フロア12の後端と高位フロア13の前端を接続する傾斜接続面18には図示を省略したロック解除手段が設けてあり、このロック解除手段はポール17と連係している。ロック解除手段を操作しないときポール17は上記引張バネの付勢力によって上記係合位置に位置するが、ロック解除手段を操作するとポール17は上記引張バネの付勢力に抗して上記非係合位置に移動する。
【0016】
車両床面10には前後二列に渡ってシート20、25を設置してあり、前列シート20は低位フロア12に取り付けてある。
格納式シートである後列シート(シート)25は、低位フロア12と高位フロア13の間を前後方向(かつ上下方向)に回転移動可能な以下の構造である。
シートバック26Bはシートクッション26Aの後端部に左右方向の回転軸回りに回転可能として接続しており、シートクッション26Aの下面には前後方向に延びる左右一対の金属製のアッパレール27が固定してあり、左右のアッパレール27の下部には左右一対の金属製のロアレール28がそれぞれ前後方向にスライド自在に係合している。アッパレール27とロアレール28の間には図示を省略した操作ハンドルによって操作可能なスライドロック機構(図示略)が設けてある。操作ハンドルを操作しないときはスライドロック機構がロック状態となるのでアッパレール27とロアレール28の相対スライドは規制され、操作ハンドルを操作するとスライドロック機構がアンロック状態になるのでアッパレール27とロアレール28の相対スライドが可能になる。
左右のロアレール28の前端部から垂下するブラケットには左右一対のリンク29の上端部が、それぞれ左右方向の回転軸回りに回転可能として接続している。左右のリンク29の下端部は低位フロア12に突設した左右一対のブラケットに対して、それぞれ左右方向の回転軸回りに回転可能として接続している。そのためシートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28は、左右のリンク29を前後方向に回転させることにより、低位フロア12と高位フロア13の間を前後方向(かつ上下方向)に回転移動する。シートバック26Bをシートクッション26Aに対して折り畳んだ上で左右のリンク29を前方に回転させると、シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28は図1に仮想線で示すように低位フロア12に載置された格納位置まで移動する。一方、左右のリンク29を後方に回転させると、シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28は高位フロア13の直上に位置する使用位置(図1に実線で示す位置)まで移動する。
【0017】
左右のロアレール28の下面の後端近傍部には金属製のブラケット30が溶接により固定してある。図2及び図3に示すように、ブラケット30は略W字断面形状の前後方向に延びる部材であり、その上面には左右一対のストライカ取付溝31を有している。さらにブラケット30の左右両側部には、直上に位置するストライカ取付溝31と下方空間とを連通する挿入孔32が形成してある。またブラケット30の下面の左右方向の中央部には凹部33が形成してある(図3、図4参照)。
【0018】
ブラケット30は、共に金属製であるストライカ36と移動規制部材45とを具備する被ロック部材35と一体化している。
ストライカ36は断面円形をなす直線状の金属棒を曲げ加工した左右対称な部材であり、その下端部を構成する左右方向に直線的に延びる係合部37と、係合部37の左右両端から上方に湾曲する円弧形状をなす左右一対の湾曲角部38と、左右の湾曲角部38の上端から上方に延びる左右一対の側片39と、左右の側片39の上端から後方に向かって延びる左右一対の取付片41と、を有しており、左右の側片39の下半部は上下方向に直線的に延びて互いに平行をなす平行部40となっている。
ストライカ36は、左右の取付片41をブラケット30の左右の挿入孔32を通して左右のストライカ取付溝31内にそれぞれ挿入し、左右の取付片41を左右のストライカ取付溝31の内面に溶接することにより、ブラケット30に固定してある。
【0019】
金属板をプレス加工して得られた部材である移動規制部材45は、ストライカ36(の係合部37、湾曲角部38、及び、平行部40)が位置する平面と平行な本体部46と、本体部46の上縁部から前方に向かって延びる当接部51と、を有しており、当接部51の上面には突起52が突設してある。
本体部46の上部を除く部分の左右寸法は左右の側片39の対向面間距離よりやや広く、本体部46の上部の左右寸法は左右の側片39の対向面間距離より短い。また突起52を除いた移動規制部材45の上下寸法は係合部37の上面とブラケット30の下面との間隔と略同一である。さらに本体部46の左右方向の中央部の下端部には正面形状が縦長矩形をなすフック受容凹部47が形成してあり、フック受容凹部47の周縁部には前方に向かって突出する周縁フランジ48が突設してある。移動規制部材45の下部には、フック受容凹部47の左右両側に位置する左右一対の側部スペーサ49が形成してあり、移動規制部材45の上部は左右の側部スペーサ49を接続する連結部50を構成している。
移動規制部材45は、突起52をブラケット30の凹部33に嵌合しながら当接部51をブラケット30の下面に接触させると共に、本体部46の左右両側縁部を左右の側片39の後面に接触させ、かつ、当接部51をブラケット30の下面に対して溶接し、本体部46(側部スペーサ49と連結部50)の左右両側縁部を左右の側片39の後面に対して溶接することにより、ブラケット30及びストライカ36に対して固定してある。
以上説明した構成のうち、シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27、ロアレール28、リンク29、及び、ブラケット30が後列シート25の構成要素である。
【0020】
続いて後列シート25をリンク29を利用して回転移動させたとき、及び、使用位置に位置するときに当該自動車の側面に別の自動車が衝突したときのロック機構15と被ロック部材35の作用について説明する。
シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28が格納位置に位置するとき被ロック部材35は他の部材と連係(接触)せず、シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28を使用位置まで回転移動させると、左右の被ロック部材35は高位フロア13に形成した左右の貫通孔14を通して高位フロア13の下部空間内に進入する。このとき(ロック解除手段を操作していないので)フック16とポール17はそれぞれ上記アンロック位置と上記係合位置に位置しており、当該下部空間に進入したストライカ36の係合部37がフック16の上記係合溝に係合する。するとストライカ36の進入力(押圧力)によってアンロック位置に位置していたフック16がロック位置まで回転し、かつ、ポール17がフック16をロック位置に保持するので、シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28が使用位置に保持される。図3に示すように、フック受容凹部47(周縁フランジ48)の左右の内側面間距離はフック16の厚み(左右寸法)より大きいので、フック16は移動規制部材45(フック受容凹部47、周縁フランジ48)と接触することなくストライカ36と円滑に係合する。
【0021】
この状態で当該自動車の側面に別の自動車が衝突すると、その衝撃力によって後列シート25が車両床面10に対して左右方向に相対移動する。しかし、後列シート25の左右移動に伴って被ロック部材35がロック機構15(フック16)に対して左右方向に相対移動すると、移動規制部材45のフック受容凹部47(周縁フランジ48)の内面(左右の側部スペーサ49の内面)がフック16の側面に衝突(当接)することにより後列シート25の左右移動に対してブレーキを掛ける。そして図3に示すように、衝突前におけるフック受容凹部47(周縁フランジ48)の内面とフック16の側面との隙間S1は、左右の平行部40の内面とフック16の側面との隙間S2より短くなっているので、衝突によりフック受容凹部47(周縁フランジ48)の内面がフック16の側面に衝突(当接)するまでの時間は、ストライカ36に移動規制部材45を取り付けない場合に左右の平行部40の内面がフック16の側面に衝突(当接)するまでの時間に比べて短い。別言すると、フック16の側面がフック受容凹部47(周縁フランジ48)の内面に衝突した時の後列シート25の横方向の移動速度は、ストライカ36に移動規制部材45を取り付けない場合にフック16の側面が左右の平行部40の内面に衝突(当接)した時の後列シート25の横方向の移動速度に比べて遅くなる。そのため、被ロック部材35からフック16に及ぶ衝撃力が小さくなるので、被ロック部材35とロック機構15(フック16)によって後列シート25の横方向の移動量を小さく抑えることが可能である。
【0022】
乗客が傾斜接続面18に設けたロック解除手段を操作すると、ポール17が上記引張バネの付勢力に抗して上記非係合位置に移動してフック16を解放する。そのため、乗客がシートバック26Bを折り畳んだ上でシートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28を前方に押圧すれば、ストライカ36の係合部37がフック16の上記係合溝から上方に脱出し、被ロック部材35が貫通孔14を通って高位フロア13の上方に脱出するので、シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28をさらに前方に押圧すれば、シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28は格納位置まで移動する。
なお、この後に乗客がロック解除手段から手を離せば、上記引張バネの付勢力によってフック16とポール17はそれぞれ上記アンロック位置と上記係合位置に移動復帰する。
【0023】
以上説明したように本実施形態によれば、シートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27及びロアレール28が使用位置に保持された状態で当該自動車の側面に別の自動車が衝突した場合に、移動規制部材45の左右の側部スペーサ49を利用することにより後列シート25の横方向の移動量を小さく抑えることが可能である。
しかも左右の側部スペーサ49の上部を連結部50で接続し、本体部46の左右両側部を左右の側片39に溶接(固定)しているので、衝突の衝撃によってフック16が左右の側部スペーサ49(フック受容凹部47及び周縁フランジ48)に激しく衝突しても、移動規制部材45が激しく損傷したり、移動規制部材45がストライカ36から脱落するリスクは小さい。さらに移動規制部材45を設けることによりストライカ36(被ロック部材35)の剛性を向上させる補強効果が得られるので、フック16との衝突によりストライカ36(被ロック部材35)が変形するおそれを低減できる。そのため、自動車どうしの衝突力が大きい場合であっても上記効果を発揮し易い。
また、当接部51をブラケット30の下面に対して溶接し、かつ突起52が凹部33に嵌合しているので、これらの点からも被ロック部材35は上記効果を発揮し易くなっている。
【0024】
続いて本発明の第2の実施形態について図5〜図7を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めてその詳細な説明は省略する。
本実施形態は後列シート25の左右の少なくとも一方のブラケット30及び被ロック部材35を図5〜図7に示すブラケット55及び被ロック部材60に代えたものである。
(左右の少なくとも一方の)ロアレール28の下面の後端近傍部には金属製のブラケット55が溶接により固定してある。図5及び図6に示すように、ブラケット55の一方の側部の下面には前後方向に延びる前後溝56が凹設してあり、他方の側部の上面には左右方向に延びる左右溝57が凹設してある。
【0025】
被ロック部材60は、共に金属製であるストライカ61と移動規制部材75とを具備している。
ストライカ61は断面円形をなす直線状の金属棒を曲げ加工した左右非対称な部材であり、その下端部を構成する左右方向に直線的に延びる係合部62と、係合部62の左右両端から上方に湾曲する円弧形状をなす左右の湾曲角部63、64と、湾曲角部63と湾曲角部64の上端からそれぞれ上方に延びる左右の側片65、67と、側片65の上端から前方に向かって延びる前方延出取付片69と、側片67の上端から側片65側に向かって延びる側方延出取付片70と、を有しており、側片65の下半部は上下方向に直線的に延びる上下延出部66となっており、側片67の下半部は上下方向に対して傾斜する傾斜逃げ部68となっている。
ストライカ61は、側方延出取付片70を左右溝57内に挿入すると共に前方延出取付片69を前後溝56に嵌合し、側方延出取付片70と左右溝57の内面及び前方延出取付片69と前後溝56の内面を互いに溶接することにより、ブラケット55に固定してある。
【0026】
金属板のプレス加工品である移動規制部材75は、ストライカ61が位置する平面と平行な本体部76と、本体部76の上縁部から後斜め上方に向かって延びる上方傾斜部82と、上方傾斜部82の上縁部の一方の側端部から上方に突出する突起83と、上方傾斜部82の上縁部の該側端部を除く部分から後方に向かって延びる当接部84と、を具備している。
本体部76の左右寸法は側片65と側片67の下半部の対向面間距離よりやや広い。また突起83を除いた移動規制部材75の上下寸法は係合部62の上面とブラケット55の下面との間隔と略同一である。さらに本体部76の左右方向の中央部の下端部には正面形状が縦長矩形をなすフック受容凹部77が形成してあり、フック受容凹部77の周縁部には前方に向かって突出する周縁フランジ78が突設してある。本体部76の下部には、フック受容凹部77の左右両側に位置する左右一対の側部スペーサ79、80が形成してあり、本体部76の上部は左右の側部スペーサ79、80を接続する連結部81を構成している。
移動規制部材75は、突起83をブラケット55の前後溝56に嵌合しながら当接部84をブラケット55の下面に接触させ、かつ本体部76の左右両側縁部を左右の側片65、67の後面に接触させ、かつ、当接部84をブラケット55の下面に対して溶接し、側部スペーサ79、80の外側縁部と側片65、67の後面の間、及び、連結部81の一方の側縁部と側片65の後面の間を溶接することにより、ブラケット55及びストライカ61に対して固定してある。
本実施形態では、以上説明した構成のうちシートクッション26A、シートバック26B、アッパレール27、ロアレール28、リンク29、及び、ブラケット55が後列シート25の構成要素である。
【0027】
以上構成の本実施形態の被ロック部材60も第1の実施形態の被ロック部材35と同様の作用効果を発揮する。
即ち、後列シート25が使用位置に位置する状態で当該自動車の側面に別の自動車が衝突して被ロック部材60がロック機構15(フック16)に対して左右方向に相対移動すると、移動規制部材75のフック受容凹部77(周縁フランジ78)の内面(左右の側部スペーサ79、80の内面)がフック16の側面に衝突(当接)することにより後列シート25の左右移動に対してブレーキを掛ける。そして図6に示すように、衝突前におけるフック受容凹部77(周縁フランジ78)の内面とフック16の側面との隙間S3は、上下延出部66及び傾斜逃げ部68の内面とフック16の側面との隙間S4、S5より短くなっているので、衝突によりフック受容凹部77(周縁フランジ78)の内面がフック16の側面に衝突(当接)するまでの時間は、ストライカ61に移動規制部材75を取り付けない場合に左右の上下延出部66及び傾斜逃げ部68の内面がフック16の側面に衝突(当接)するまでの時間に比べて短い。そのため、第1の実施形態の被ロック部材35と同様に、後列シート25の横方向の移動量を小さく抑えることが可能である。
【0028】
さらに本実施形態では後列シート25が格納位置から使用位置まで回転移動したときに、図6に示すように低位フロア12の表面に形成された出張り部12aを傾斜逃げ部68が回避するので、低位フロア12が出張り部12aを具備する場合であっても後列シート25を円滑に回転移動させることが可能である。
【0029】
以上、上記実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明は様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、移動規制部材45から周縁フランジ48、連結部50、当接部51、及び突起52(及びブラケット30から凹部33)のうちの少なくとも一つを省略したり、一方の側部スペーサ49を省略してもよい。また移動規制部材75から周縁フランジ78、連結部81、上方傾斜部82、突起83、及び当接部84のうちの少なくとも一つを省略したり、一方の側部スペーサ79、80を省略してもよい。このような省略を行うと、自動車(車両)に横方向の動加速度が生じたときに移動規制部材45、75が激しく損傷したり、移動規制部材45、75がストライカ36、61から脱落するリスクが多少高まるが、移動規制部材45、75をストライカ36、61に固定しない従来技術に比べると顕著な作用効果を得られることに変わりはない。なお、当接部51、84を省略する場合は、本体部46の上面や上方傾斜部82の上面をブラケット30、55の下面に当接させるのが好ましい。また移動規制部材45から連結部50と当接部51を省略した場合に側部スペーサ49を上方に延ばして、当該側部スペーサ49の上端部をブラケット30の下面に当接させたり、移動規制部材75から連結部81、上方傾斜部82、突起83、及び当接部84を省略した場合に側部スペーサ79、80を上方に延ばして、当該側部スペーサ79、80の上端部をブラケット55の下面に当接させてもよい。
【0030】
さらに第1及び第2の実施形態では、正面視において移動規制部材45の側部スペーサ49全体と移動規制部材75の側部スペーサ79、80全体がそれぞれ直下に位置する湾曲角部38と湾曲角部63、64の左右幅内に位置している。しかし、側部スペーサ49の内側部が係合部37の直上領域に多少はみ出したり、側部スペーサ79、80の内側部が係合部62の直上領域に多少はみだすように、移動規制部材45と移動規制部材75の形状を設定してもよい。
また、移動規制部材45の当接部51を後方に延ばしたり、移動規制部材75の当接部84を前方に延ばしても良い。
さらにブラケット30、55に貫通孔を形成し、該貫通孔に突起52、83を嵌合させてもよい。
さらにシートをロック機構15と被ロック部材を利用することにより車両床面10に対して着脱可能とした着脱式シートに変更してもよい。
また、車両床面10側に被ロック部材35、60を設けて、後列シート25側にロック機構15を設けても良い。
さらに車両床面10に固定したシート(図示略。シート設置体)に上記被ロック部材とロック機構の一方を設けたシート設置部を形成し、図示を省略したチャイルドシートに上記被ロック部材とロック機構の他方を設けて、該チャイルドシートを後部座席用のシートに対して着脱してもよい。
さらに後列シート25からアッパレール27及びロアレール28を省略して、シートクッション26Aの下面に被ロック部材35、60又はロック機構15を設けても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 車両床面(シート設置体)
11 段差フロア
12 低位フロア(格納用凹部)
12a 出張り部
13 高位フロア(シート設置部)
14 貫通孔
15 ロック機構
16 フック
17 ポール
18 傾斜接続面
20 前列シート
25 後列シート(シート)
26A シートクッション
26B シートバック
27 アッパレール
28 ロアレール
29 リンク
30 ブラケット
31 ストライカ取付溝
32 挿入孔
33 凹部
35 被ロック部材
36 ストライカ
37 係合部
38 湾曲角部
39 側片
40 平行部
41 取付片
45 移動規制部材
46 本体部
47 フック受容凹部
48 周縁フランジ
49 側部スペーサ
50 連結部
51 当接部
52 突起
55 ブラケット
56 前後溝
57 左右溝
60 被ロック部材
61 ストライカ
62 係合部
63 64 湾曲角部
65 67 側片
66 上下延出部
68 傾斜逃げ部
69 前方延出取付片
70 側方延出取付片
75 移動規制部材
76 本体部
77 フック受容凹部
78 周縁フランジ
79 80 側部スペーサ
81 連結部
82 上方傾斜部
83 突起
84 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート設置体に形成したシート設置部に設置及び取り外し可能なシートと、上記シート設置部側とシート側の一方に設けたロック機構と、を備える車両用シート装置の上記シート設置部側とシート側の他方に設けた、上記シートを上記シート設置部に設置したときに該ロック機構によってロックされる被ロック部材において、
上記被ロック部材が、
上記他方から延出する左右一対の側片、該一対の側片の先端から互いに近づく方向に湾曲する一対の湾曲角部、及び、左右方向に直線的に延びて該一対の湾曲角部どうしを接続し、かつ上記ロック機構と係脱する係合部、を有するストライカと、
少なくとも一部の左右方向位置が左右の上記湾曲角部と同じとなるように少なくとも一方の上記側片に固定した、上記係合部と係合した上記ロック機構との間に左右方向の隙間を形成する少なくとも一つの側部スペーサを有する移動規制部材と、
を備えることを特徴とする車両用シート装置の被ロック部材。
【請求項2】
請求項1記載の車両用シート装置の被ロック部材において、
上記側部スペーサが左右一対である車両用シート装置の被ロック部材。
【請求項3】
請求項2記載の車両用シート装置の被ロック部材において、
上記移動規制部材が、
上記一対の側部スペーサの上記他方の部材側の端部どうしを接続し、かつ、上記一対の側片に固定された連結部を備える車両用シート装置の被ロック部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の車両用シート装置の被ロック部材において、
上記移動規制部材が、上記他方の部材に接触する車両用シート装置の被ロック部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の車両用シート装置の被ロック部材において、
上記移動規制部材が、
上記ストライカの前方又は後方に向かって延び、かつ上記他方の部材に接触する当接部を備える車両用シート装置の被ロック部材。
【請求項6】
請求項5記載の車両用シート装置の被ロック部材において、
上記当接部が、上記他方の部材に形成した孔又は凹部に嵌合する突起を有する車両用シート装置の被ロック部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の被ロック部材を、上記ロック機構を具備する上記シート設置部に対して設置及び取り外し可能な上記シートに取り付けたことを特徴とする車両用シート装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項記載の被ロック部材を備え、かつ、上記ロック機構を設けた上記シートを設置及び取り外し可能なことを特徴とするシート設置体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−61895(P2012−61895A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206027(P2010−206027)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】