説明

車両用シート

【課題】シートクッションに配設されたバネ部材によって支持される支持弾性を調整可能とする。
【解決手段】乗員が着座するシートクッション10には、シートクッション10に着座した乗員から受ける負荷荷重を弾性的に支持するSバネ12が着座面方向に張設されてなる車両用シートである。Sバネ12の張設支持される後端は、シートクッション10の骨格を成すクッションフレーム11に対して軸回動可能に配設された板バネ13により支持されており、板バネ13断面形状は、着座面と平行な軸に関する断面係数が軸回動位置によって変化する形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、乗員が着座するシートクッション及びシートバックの少なくとも一方には、着座した乗員から受ける負荷荷重を弾性的に支持するバネ部材が着座面方向に張設されてなる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用シートのシートクッションとしては、その骨格を成す枠状のクッションフレームに対して複数のバネ部材が張り巡らされており、この張り巡らされたバネ部材の上部にクッション材たるクッションパッドが配置された構成のものが知られている。例えば、特許文献1では、ワイヤを波状に湾曲させた形状のバネ部材(Sバネ)が枠状のクッションフレームに対して架け渡されて張設された技術が開示されている。この開示技術によれば、バネ部材の上部に配置されたクッションパッドを弾性的に支持して、シートクッションのクッション性能を向上させることができる。また、同開示技術では、シートクッションの乗員が着座する着座面の下部位置に圧縮コイルバネが配置されており、上記バネ部材では支えきれない乗員から受ける負荷荷重を弾性支持してサポートするようにしている。
【0003】
【特許文献1】特許第3148336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術、すなわちシートクッションのクッション性能を向上させるべくバネ部材が配設された構成では、バネ部材がクッションフレームに対して固定設置されており、例えばバネ部材の張設状態を変化させるなどしてその支持弾性を調整することができなかった。したがって、例えばシートに乗員が着座する際に、その着座する乗員の体格(体重)に合わせてシートクッションのクッション性能を好適に発揮させることができなかった。
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートに配設されたバネ部材によって支持される支持弾性を調整可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、乗員が着座するシートクッション及びシートバックの少なくとも一方には、着座した乗員から受ける負荷荷重を弾性的に支持するバネ部材が着座面方向に張設されてなる車両用シートであって、バネ部材の少なくとも一端は、シートクッションもしくはシートバックの骨格を成すフレーム体に対して軸回動可能に配設された支持フレームにより支持されており、支持フレームの断面形状は、着座面と平行な軸に関する断面係数が軸回動位置によって変化する形状であるものである。
この第1の発明によれば、バネ部材は、その少なくとも一端が支持フレームに連結されて弾性支持されている。この支持フレームは、フレーム体に対する軸回動位置によって、その断面形状の断面係数を変化させる。これにより、支持フレームのバネ部材を支持する支持弾性が変化する。
【0007】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、支持フレームは、その断面形状が横縦寸法比の異なる矩形形状として形成されているものである。
この第2の発明によれば、支持フレームをフレーム体に対して軸回動させる回動角度変化の割合に対して、断面形状の断面係数の変化の割合が比較的大きくなる。
【0008】
次に、第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、支持フレームには、バネ部材を支持する支持部位箇所に、支持フレームと嵌合して軸回動方向に一体的となる円筒形状の連結ブラケットが組み付けられており、バネ部材は、支持フレームに組み付けられた連結ブラケットに掛合されているものである。
この第3の発明によれば、支持フレームをフレーム体に対して軸回動させると、この支持フレームと嵌合された円筒形状の連結ブラケットは、支持フレームと一体的となって軸回動する。このとき、バネ部材は、連結ブラケットの円筒面に掛合されており、上記の軸回動には追従回動しない。したがって、バネ部材の連結ブラケットに対する連結位置状態は、支持フレームの軸回動による影響を受けることなく、一定に維持される。また、バネ部材が負荷荷重を受けて撓み変形しても、支持フレームがこの撓み変形の作用を受けて意図しない方向に軸回動してしまうこともない。
【0009】
次に、第4の発明は、上述した第1から第3の発明において、支持フレームは、フレーム体間に架け渡されて両端支持されているものである。
この第4の発明によれば、支持フレームの支持状態が安定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、第1の発明によれば、支持フレームの軸回動位置を変化させることにより、シートに配設されたバネ部材によって支持される支持弾性を調整することができる。また、上記支持弾性の調整は、バネ部材自体を引張ったり圧縮したりして行われるのではなく、その支持端部の姿勢状態を変化させることによって行われるため、バネ部材の姿勢状態を一定に保持して行うことができ、好適である。
更に、第2の発明によれば、バネ部材によって支持される支持弾性を容易かつ広範囲に調整することができる。
更に、第3の発明によれば、バネ部材と支持フレームとの連結状態を常に一定の状態に維持することができる。したがって、支持フレームを軸回動させて支持弾性の調整を行っても、常にバネ部材を安定して支持することができる。
更に、第4の発明によれば、支持フレームの支持状態が安定するため、支持弾性の調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図7は、実施例1の車両用シートの構成を表したものである。図1は車両用シートの内部構造を表した斜視図、図2は板バネ13の軸回動位置が縦向きに調整された状態を表した側面図、図3は板バネ13の軸回動位置が横向きに調整された状態を表した側面図、図4はSバネ12と板バネ13との連結状態を拡大して表した斜視図、図5はSバネ12と板バネ13との連結状態を平面視して表した断面図、図6は連結ブラケット14の正面図、図7は連結ブラケット14の側面図である。なお、図2及び図3では紙面内左方向が、図5では紙面内下方向が、それぞれ車両前方向として表されている。
【0013】
本実施例の車両用シートは、車両のフロントシートとして適用されている。この車両用シートは、図1に良く示されるように、乗員の着座するシートクッション10のクッション性能を調整操作することのできる構成を備えている。
詳しくは、シートクッション10は、その骨格を成すクッションフレーム11に対して車両の前後方向に複数(例えば4本)のSバネ12が張設されている。そして、この張設されたSバネ12の上部には、図示しないクッションパッドが配置されている。このような構成により、シートクッション10は、上記クッションフレーム11に対して支持されたクッションパッドやSバネ12により発揮される支持弾性によって、シートクッション10に着座した乗員から受ける負荷荷重を弾性的に支持する。
また、Sバネ12は、その後端12bが、可撓性を有した長尺形状の板バネ13に連結されて支持されている。この板バネ13は、板厚方向に撓み易い可撓性を有しており、クッションフレーム11に対して軸回動可能に配設されている。これにより、例えば図2及び図3に良く示されるように、板バネ13のクッションフレーム11に対する軸回動位置を移動させることができる。そして、このように板バネ13の軸回動位置を変化させることにより、板バネ13のSバネ12を支持する姿勢状態が変化するため、Sバネ12を支持する支持弾性を変化させることができる。
すなわち、板バネ13の軸回動位置を変化させることによって、前述したクッションパッドやSバネ12等の構成と合わせて総合的に発揮される支持弾性を変化させることができ、この位置調整によってシートクッション10のクッション性能を調整することができるものである。ここで、クッションフレーム11が本発明のフレーム体に相当し、Sバネ12が本発明のバネ部材に相当し、板バネ13が本発明の支持フレームに相当する。
以下、上記各部材の構成について詳細に説明する。
【0014】
先ず、クッションフレーム11の構成について説明する。すなわち、クッションフレーム11は、図1に良く示されるように、シートクッション10の車幅方向の両側位置に配置された一対のサイドフレーム11a,11bと、これらサイドフレーム11a,11bの前端部に架け渡されるかたちで一体的に形成されたフロントパネル11cと、を有する。これらサイドフレーム11a,11b及びフロントパネル11cは、金属板によって形成されており、各部位の周縁が車幅方向の内側に向けて折曲された補強形状とされて形成されている。このクッションフレーム11は、例えば車両フロア(図示省略)に対して固定設置されている。
次いで、Sバネ12は、図1〜図3に良く示されるように、その前端12aがフロントパネル11cの内側に折曲された部位に結合されており、後端12bが板バネ13に組み付けられた連結ブラケット14に掛合されている。ここで、Sバネ12の後端12bは、図4に良く示されるように、円筒形状の連結ブラケット14に対して掛合可能なフック形状に形成されている。これにより、Sバネ12は、図1に良く示されるように、クッションフレーム11間で車両の前後方向に張設された状態として両端支持されている。ここで、Sバネ12は、長尺形状のワイヤを波状に湾曲させた形状に形成されたものであるが、一般的なものであるため、詳細な説明は省略する。
【0015】
次いで、板バネ13は、図1及び図5に良く示されるように、クッションフレーム11の後端側寄りの位置に配置されており、その長尺方向が車幅方向に向けられた状態で、両サイドフレーム11a,11b間に架け渡されて両端支持されている。この板バネ13は、図2及び図3に良く示されるように、上記Sバネ12を支持する断面形状が矩形形状に形成されており、その板厚方向に撓み易い可撓性を有した構成となっている。すなわち、板バネ13は、図2の状態位置においては紙面内左右方向に、図3の状態位置においては紙面内上下方向にそれぞれ撓み易くなっている。
また、板バネ13は、図5に良く示されるように、その長尺方向(車幅方向)の両端部位に円筒形状の連結具16,17がそれぞれ装着されており、この円筒形状の連結具16,17によって各サイドフレーム11a,11bに連結支持されている。詳しくは、これら連結具16,17は、ブッシュ15を介して各サイドフレーム11a,11bに軸回動可能に連結されている。そして、連結具16,17の円筒内部には、板バネ13の端部を嵌め入れることのできる断面長孔状の嵌合孔16a,17aが形成されている。更に、一方側の連結具16には操作レバー18が一体的に形成されており、操作レバー18の回動操作を行うことによって連結具16の回動操作が行えるようになっている。したがって、操作レバー18の回動操作を行うことにより、連結具16,17と板バネ13とを一体的に軸回動させることができる。これにより、板バネ13を、操作レバー18の軸回動位置によって、例えば図2に示される縦向きの姿勢状態としたり、図3に示される横向きの姿勢状態としたりすることができる。このとき、板バネ13は、図2及び図3に良く示されるように、その断面形状の中心点回りに回動して、クッションフレーム11に対する軸回動位置を変化させる。
【0016】
また、図1に良く示されるように、板バネ13の長尺方向の2箇所には、円筒形状の連結ブラケット14が装着されている。そして、これら連結ブラケット14に対しては、それぞれ2本のSバネ12の後端12bが掛合されている。詳しくは、図4に良く示されるように、連結ブラケット14の外周面(円筒面)は、Sバネ12の後端12bを掛合するための掛合面14aとされている。更に、連結ブラケット14の軸方向両端側の部位には、掛合面14aよりも径方向外方に張り出した形状の係止端部14bが形成されている。これら係止端部14bは、掛合面14aに掛合させたSバネ12の後端12bが掛合面14aから軸方向に外れ落ちないように規制するべく作用する。また、図6及び図7に良く示されるように、連結ブラケット14の円筒内部には、板バネ13(図5参照)を長尺方向に嵌め入れて貫通させることのできる断面長孔状の貫通孔14cが形成されている。したがって、連結ブラケット14が板バネ13に組み付けられた状態では、板バネ13と連結ブラケット14とが一体的となって軸回動する。ここで、貫通孔14cは、連結ブラケット14の円筒形状の軸心位置を通る軸対称形状に形成されている。したがって、連結ブラケット14は、板バネ13の軸回動に伴って、その円筒形状の軸心回りに回動する。
このとき、図4に良く示されるように、Sバネ12の後端12bは、円筒形状の掛合面14aに掛合されているだけの連結状態とされているため、連結ブラケット14が軸回動してもこの軸回動には追従回動しない。すなわち、連結ブラケット14は、掛合状態にあるSバネ12の後端12bに対して空回り(相対回転)する。したがって、連結ブラケット14が軸心回りに回動しても、Sバネ12の後端12bの連結位置は、常に、連結ブラケット14の軸心から一定の位置にある掛合面14a(円筒面)上に維持される。また、Sバネ12の掛合する掛合面14aの形状は円筒形状であるため、Sバネ12と連結ブラケット14との掛合状態も変化しない。このため、Sバネ12にかかる負荷荷重(乗員から受ける負荷荷重)は、常に、連結ブラケット14を下方に押し下げる方向に作用する。
【0017】
ところで、前述した操作レバー18(図1参照)の回動操作によって板バネ13のクッションフレーム11に対する軸回動位置を変化させると、上記負荷荷重の作用方向に対する板バネ13の断面形状の断面係数が変化する。ここで、断面係数は、シートクッション10の着座面と平行な軸(例えば板バネ13の回動軸)に関して算出されるものである。例えば、板バネ13が図2に示される縦向きの姿勢状態にあるときには、支持断面の断面係数が最大の状態となり、板バネ13は撓み難くなる。また、板バネ13が図3に示される横向きの姿勢状態にあるときには、支持断面の断面係数が最小の状態となり、板バネ13は撓み易くなる。
すなわち、操作レバー18(図1参照)の回動操作によって、板バネ13の軸回動位置を変化させることにより、板バネ13の支持断面の断面係数(上記負荷荷重に対する撓み易さ)を調整することができる。
【0018】
続いて、本実施例の使用方法を説明する。
すなわち、先ず、図1に良く示されるように、操作レバー18の操作位置によって板バネ13の姿勢状態が縦向き(図2参照)とされている状態では、Sバネ12の後端12bを支持する板バネ13の断面係数が比較的高い状態となっている。すなわち、Sバネ12の後端12bが、比較的撓み難い状態の板バネ13によって支持されている。したがって、この状態では、Sバネ12から負荷が入力されても板バネ13は撓み難く、板バネ13によって比較的高い支持剛性(低い支持弾性)が発揮される。
次に、操作レバー18を回動操作して、板バネ13の姿勢状態を横向き(図3参照)の状態にする。このとき、板バネ13の軸回動に伴って連結ブラケット14が軸回動しても、Sバネ12の後端12bの掛合位置は変化せず、クッションフレーム11に対するSバネ12の姿勢状態は一定のまま維持される。この状態では、Sバネ12の後端12bを支持する板バネ13の断面係数が比較的低い状態となっている。すなわち、Sバネ12の後端12bが、比較的撓み易い状態の板バネ13によって支持されている。したがって、この状態では、Sバネ12から入力された負荷によって板バネ13は撓み、板バネ13によって比較的高い支持弾性が発揮される。
なお、板バネ13の姿勢状態を図2に示される縦向きの姿勢状態と図3に示される横向きの姿勢状態との間で適宜軸回動位置の調整を行うことにより、その軸回動位置に対応した支持弾性を発揮させることができる。このとき、板バネ13は、Sバネ12が掛合された連結構造とされているため、Sバネ12から負荷を受けても、この負荷の作用によって意図しない方向に軸回動することなく、操作レバー18によって調整された軸回動位置にて保持される。
【0019】
このように、本実施例の車両用シートによれば、操作レバー18の回動操作によって板バネ13の軸回動位置を変化させることにより、シートクッション10に配設されたSバネ12やクッションパッドによって支持される支持弾性を調整することができる。また、この支持弾性の調整は、Sバネ12自体を引張ったり圧縮したりして行うのではなく、その支持端部たる板バネ13の姿勢状態を変化させることによって行われるため、Sバネ12の姿勢状態を一定に保持して行うことができ、好適である。
更に、板バネ13は、その軸回動位置の変化の割合に対して、支持断面の断面係数の変化の割合が比較的大きくなる形状に形成されているため、Sバネ12やクッションパッドによって支持される支持弾性を容易かつ広範囲に調整することができる。
更に、Sバネ12は、連結ブラケット14の円筒面(掛合面14a)に掛合された連結状態とされているため、板バネ13の軸回動位置によらず、クッションフレーム11に対するSバネ12の姿勢状態を一定のまま維持することができる。
更に、板バネ13は、クッションフレーム11の両サイドフレーム11a,11bによって両端支持されているため、板バネ13の支持状態が安定し、支持弾性の調整を容易に行うことができる。
【実施例2】
【0020】
続いて、実施例2の車両用シートの構成について、図8及び図9を用いて説明する。図8は板バネ13の軸回動位置が縦向きに調整された状態を表した斜視図、図9は板バネ13の軸回動位置が横向きに調整された状態を表した側面図である。なお、本実施例では、実施例1の車両用シートと同様の構成及び作用を奏する箇所については同一の符号を付して説明を省略し、相異する構成については異なる符号を付して詳しく説明することとする。
【0021】
本実施例の車両用シートでは、図8に良く示されるように、板バネ13の長尺方向の中央箇所に、円筒形状の連結ブラケット14が装着されている。そして、この連結ブラケット14に対しては、4本のSバネ22(本発明のバネ部材に相当する。)がひとまとめにされて延出された2本のSバネ22の後端22bが掛合されている。
【0022】
続いて、本実施例の使用方法を説明する。
すなわち、先ず、図8に良く示されるように、板バネ13の姿勢状態が縦向きとされている状態では、Sバネ22の後端22bを支持する板バネ13の断面係数が比較的高い状態となっている。したがって、この状態では、Sバネ22から負荷が入力されても板バネ13は撓み難く、板バネ13によって比較的高い支持剛性(低い支持弾性)が発揮される。
次に、図9に良く示されるように、板バネ13の姿勢状態が横向きとされている状態では、Sバネ22の後端22bを支持する板バネ13の断面係数が比較的低い状態となっている。更に、Sバネ22の後端22bは、板バネ13の中央位置、すなわち板バネ13の変形形態において最も撓み変形量の大きい位置に連結支持されている。したがって、この状態では、Sバネ22から入力された負荷によって板バネ13は撓み、板バネ13によって比較的高い支持弾性が発揮される。
【0023】
このように、本実施例の車両用シートによれば、板バネ13の変形形態により最も撓み変形量の大きいとされる位置にSバネ22の後端22bを連結支持することにより、Sバネ22やクッションパッドによって支持される支持弾性を広範囲に調整することができる。
【実施例3】
【0024】
続いて、実施例3の車両用シートの構成について、図10を用いて説明する。図10は車両用シートの内部構造を表した斜視図である。なお、本実施例では、実施例1の車両用シートと同様の構成及び作用を奏する箇所については同一の符号を付して説明を省略し、相異する構成については異なる符号を付して詳しく説明することとする。
【0025】
本実施例の車両用シートでは、図10に良く示されるように、シートバック30のクッション性能を調整操作することのできる構成を備えている。
詳しくは、シートバック30は、その骨格を成すバックフレーム31に対して車両の上下方向に複数(例えば4本)のSバネ32が張設されている。そして、この張設されたSバネ32の前部には、図示しないクッションパッドが配置されている。このような構成により、シートバック30は、上記バックフレーム31に対して支持されたクッションパッドやSバネ32により発揮される支持弾性によって、シートに着座した乗員から受ける負荷荷重を弾性的に支持する。
また、Sバネ32は、その下端が、可撓性を有した長尺形状の板バネ33に連結されて支持されている。この板バネ33は、板厚方向に撓み易い可撓性を有しており、バックフレーム31に対して軸回動可能に配設されている。これにより、板バネ33のバックフレーム31に対する軸回動位置を移動させることができる。そして、このように板バネ33の軸回動位置を変化させることにより、板バネ33のSバネ32を支持する姿勢状態が変化するため、Sバネ32を支持する支持弾性を変化させることができる。なお、本実施例における板バネ33の断面係数は、シートバック30の着座面、すなわち乗員の背中を支持する背もたれ面と平行な軸(例えば板バネ33の回動軸)に関して算出されるものである。
ここで、バックフレーム31が本発明のフレーム体に相当し、Sバネ32が本発明のバネ部材に相当し、板バネ33が本発明の支持フレームに相当する。
以下、上記各部材の構成について詳細に説明する。
【0026】
先ず、バックフレーム31の構成について説明する。すなわち、バックフレーム31は、シートバック30の車幅方向の両側位置に配置された一対のサイドフレーム31a,31bと、これらサイドフレーム31a,31bの上端部に架け渡されるかたちで一体的に形成されたアッパフレーム31cと、を有する。これらサイドフレーム31a,31bは、金属板によって形成されており、各部位の周縁が車幅方向の内側に向けて折曲された補強形状とされて形成されている。また、アッパフレーム31は、円管形状に形成されて補強された形状とされている。このバックフレーム31は、リクライニング軸39によって、図示しないシートクッションのクッションフレームに対して軸回動可能に支持されている。
次いで、Sバネ32は、その上端32aがアッパパネル31cに架け渡されたワイヤに掛合されており、下端32bが板バネ33に組み付けられた連結ブラケット34に掛合されている。
なお、図10に示されている板バネ33、連結ブラケット34、操作レバー38等の構成は、実施例1で示した板バネ13、連結ブラケット14、操作レバー18等の構成と実質的に同一であるため、詳細な説明は省略する。また、本実施例の使用方法についても、実施例1で示した各構成の使用方法を参酌して使用することができるため、省略する。
【0027】
このように、本実施例の車両用シートによれば、操作レバー38の回動操作によって板バネ33の軸回動位置を変化させることにより、シートバック30に配設されたSバネ32やクッションパッドによって支持される支持弾性を調整することができる。すなわち、実施例1で示したシートクッション10に対して適用された支持弾性の調整機能をシートバック30に対しても好適に適用することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を3つの実施例で説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施ができるものである。
例えば、Sバネ(本発明のバネ部材に相当する。)の端部を板バネ(本発明の支持フレームに相当する。)によって弾性支持する構成を、Sバネの前端(実施例1及び実施例2)や上端(実施例3)の連結構造に適用してもよい。
また、板バネの断面形状は、上記実施例で示した矩形形状に限定されず、板バネの軸回動位置によってその断面係数が変化する形状、例えば断面円弧形状等のカム形状や断面H形状やI形状等の横縦比の大きい形状とすることもできる。
また、板バネをクッションフレームやバックフレームに対して片持ち支持させた構成であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1の車両用シートの内部構造を表した斜視図である。
【図2】板バネの軸回動位置が縦向きに調整された状態を表した側面図である。
【図3】板バネの軸回動位置が横向きに調整された状態を表した側面図である。
【図4】Sバネと板バネとの連結状態を拡大して表した斜視図である。
【図5】Sバネと板バネとの連結状態を平面視して表した断面図である。
【図6】連結ブラケットの正面図である。
【図7】連結ブラケットの側面図である。
【図8】実施例2の車両用シートにおいて板バネの軸回動位置が縦向きに調整された状態を表した斜視図である。
【図9】板バネの軸回動位置が横向きに調整された状態を表した側面図である。
【図10】実施例3の車両用シートの内部構造を表した斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 シートクッション
11 クッションフレーム(フレーム体)
11a サイドフレーム
11b サイドフレーム
11c フロントパネル
12 Sバネ(バネ部材)
12a 前端
12b 後端
13 板バネ(支持フレーム)
14 連結ブラケット
14a 掛合面
14b 係止端部
14c 貫通孔
15 ブッシュ
16 連結具
16a 嵌合孔
17 連結具
17a 嵌合孔
18 操作レバー
22 Sバネ(バネ部材)
22b 後端
30 シートバック
31 バックフレーム(フレーム体)
31a サイドフレーム
31b サイドフレーム
31c アッパフレーム
31d ワイヤ
32 Sバネ(バネ部材)
32a 上端
32b 下端
33 板バネ(支持フレーム)
34 連結ブラケット
38 操作レバー
39 リクライニング軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッション及びシートバックの少なくとも一方には、着座した乗員から受ける負荷荷重を弾性的に支持するバネ部材が着座面方向に張設されてなる車両用シートであって、
前記バネ部材の少なくとも一端は、前記シートクッションもしくはシートバックの骨格を成すフレーム体に対して軸回動可能に配設された支持フレームにより支持されており、
該支持フレームの断面形状は、着座面と平行な軸に関する断面係数が軸回動位置によって変化する形状であることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記支持フレームは、その断面形状が横縦寸法比の異なる矩形形状として形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記支持フレームには、前記バネ部材を支持する支持部位箇所に、該支持フレームと嵌合して軸回動方向に一体的となる円筒形状の連結ブラケットが組み付けられており、
前記バネ部材は、前記支持フレームに組み付けられた連結ブラケットに掛合されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シートであって、
前記支持フレームは、前記フレーム体間に架け渡されて両端支持されていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−21063(P2007−21063A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211015(P2005−211015)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】