説明

車両用シート

【課題】シートバックを着座状態からウォークイン状態および大倒し状態に切り替えることができる場合、シートクッションのシールドが小型であっても、シートバックを着座状態から大倒し状態に切り替えるときの見栄えを向上させることができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】シートバック2側には、シートバック2に対して回動可能に組み付けられた切替レバー21が設けられている。シートバック2を着座状態から前倒しさせると、シートクッション1側に形成されたストッパ11に切替レバーが当接することによってシートバック2がウォークイン状態に保持される。一方、切替レバー21の当接部21dが連結軸に下方から近づくように切替レバー21を回動させた状態で、シートバック2を着座状態から前倒しさせると、切替レバー21とストッパ11との当接が回避されシートバック2が大倒し状態に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、詳しくは、シートクッションに対してシートバックが連結軸を介して回動可能に組み付けられている車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートとして、例えば、特許文献1に示される技術が既に知られている。この技術では、車両用シートは、シートクッションに対してシートバックが連結軸を介して回動可能に組み付けられており、シートバックをシートクッションに対して起立姿勢させた着座状態に保持させることができる。また、シートバックを着座状態から前倒しさせると、切替レバー(特許文献1において、ストップレバー)がシートクッション側に当接することによってシートバックをウォークイン状態に保持させることができる。このとき、切替レバーの当接部を上方に回避させた状態で、シートバックを着座状態から前倒しさせると、シートバックを大倒し状態に保持させることができる。このようにして、シートバックを着座状態からウォークイン状態および大倒し状態に切り替えることができる。
【特許文献1】特開平6−227299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術では、シートバックを着座状態からウォークイン状態に切り替えるとき、切替レバーの当接部がシートクッションのシールドから露出するため、車両用シートの見栄えが悪くなるという問題が発生していた。もちろん、シールドを大型にすると、この問題は解決されることになるが、シールドの大型化に伴って、新たな問題が発生することとなっていた。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、シートバックを着座状態からウォークイン状態および大倒し状態に切り替えることができる場合、シートクッションのシールドが小型であっても、シートバックを着座状態から大倒し状態に切り替えるときの見栄えを向上させることができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、シートクッションに対してシートバックが連結軸を介して回動可能に組み付けられており、シートバックをシートクッションに対して起立姿勢させた着座状態と、この着座状態からシートバックをシートクッション側に向けて前傾姿勢させたウォークイン状態と、この着座状態からシートバックをシートクッションに対して重ね合わせ姿勢させた大倒し状態とにそれぞれ保持可能な車両用シートであって、シートバック側には、シートバックに対して回動可能に組み付けられた切替レバーが設けられており、シートバックを着座状態から前倒しさせると、シートクッション側に形成されたストッパに切替レバーが当接することによってシートバックがウォークイン状態に保持され、切替レバーの当接部が連結軸に下方から近づくように切替レバーを回動させた状態で、シートバックを着座状態から前倒しさせると、切替レバーとストッパとの当接が回避されシートバックが大倒し状態に保持されることを特徴とする。
この構成によれば、切替レバーの当接部がシートバックを回動させる連結軸に下方から近づくように切替レバーを回動させて、切替レバーとストッパとの当接を回避させている。そのため、切替レバーを回動させても、従来技術のように、切替レバー(従来技術において、ストップレバー)がシートクッションのシールドから露出することはない。したがって、シートクッションのシールドが小型であっても、シートバックを着座状態から大倒し状態に切り替えるときの車両用シートの見栄えを向上させることができる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートであって、切替レバーの当接部が連結軸に下方から近づくように切替レバーを回動させたとき、その回動状態を保持させる回動保持機構を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、シートバックを着座状態から大倒し状態に切り替えるとき、回動保持機構によって切替レバーの回動を保持させている。そのため、大倒し状態への切り替えが完了するまで、乗員は大倒し状態への切り替え操作を保持しておく必要はない。したがって、大倒し状態に切り替えるときの乗員の操作を簡素化することができる。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれか1項に記載の車両用シートであって、シートクッションは、スライドロック手段によって車両フロアに対してロック状態となっており、シートバックをウォークイン状態に保持させるとき、スライドロック手段のロック状態を解除するロック解除レバーを切替レバーによって動作させることを特徴とする。
この構成によれば、シートバックを着座状態からウォークイン状態に切り替えるとき、シートクッションがスライドロック手段によって車両フロアに対してロックされている場合であっても、ウォークイン状態への切り替え操作を行うだけでスライドロック手段のロック解除も行うことができる。そのため、ウォークイン状態に切り替えるときの乗員のレバー操作を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。まず、図1〜8を参照して、本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の実施例に係る車両用シートの模式図であり、シートバックが着座状態にあるときを示している。図2は、図1において、乗員がウォークインレバーを操作した状態を示している。図3は、シートバックを着座状態からウォークイン状態に切り替え中の状態を示している。
【0009】
図4は、図3の状態から、さらに、シートバックが前倒れした状態であり、切替レバーの他端側の当接部がロック解除レバーのピンに当接したときの状態を示している。図5は、シートバックがウォークイン状態に切り替わった状態を示している。図6は、図1において、乗員がチルトダウンレバーを操作した状態を示している。図7は、シートバックを着座状態から大倒し状態に切り替え中の状態を示している。図8は、シートバックが大倒し状態に切り替わった状態を示している。
【0010】
なお、上述した各図では、シートクッション1およびシートバック2の内部構造を分かり易く示すために、これらのパッド構造と表皮構造を省略し内部のフレーム構造(クッションフレーム10、バックフレーム20)のみを示している。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、シートクッション1に着座した乗員を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0011】
はじめに、図1を参照して、本発明の実施例に係る車両用シートについて説明する。この車両用シートは、例えば、3列シートを備えた自動車の2列目の左側のシート(助手席の後方に位置するシート)であり、乗員の着座部となるシートクッション1と、乗員の背の凭れ部となりシートクッション1に対して回動可能なシートバック2と、このシートバック2の頂部に組み付けられてシートクッション1に着座した乗員の後頭部を支承するヘッドレスト(図示しない)とから主として構成されている。以下に、シートクッション1とシートバック2の詳細構成を個別に説明する。
【0012】
まず、シートクッション1の詳細構成を説明する。シートクッション1は、クッションフレーム10と、パッドと、表皮(いずれも図示しない)とから構成されている。クッションフレーム10は、スライド機構を介して車両フロア(いずれも図示しない)に組み付けられている。これにより、シートクッション1(車両用シート)は、車両フロアに対して前後にスライド可能となっている。
【0013】
なお、後述する着座状態(図1に示す状態)において、クッションフレーム10は、車両フロアに対してスライド移動することがないように、スライド機構のスライド範囲のうち、後側の位置でスライドロック手段(図示しない)によってロックされている。このとき、クッションフレーム10は、圧縮ばね(図示しない)によって前側に付勢された状態でロックされている。これにより、スライドロック手段のロック解除を行うと、クッションフレーム10は圧縮ばねの付勢力によって後ろから前にスライド移動する格好となっている。
【0014】
また、クッションフレーム10には、上述したスライドロック手段のロック状態を解除させるロック解除レバー12が係止ピン12aによって回動可能に組み付けられている。このとき、ロック解除レバー12は、前倒れ方向(図1において、矢印A方向)に付勢状態で組み付けられている。そのため、着座状態において、ロック解除レバー12は、第1のストッパ11のピン11aに当接状態となっている。なお、後述する切替レバー21によってロック解除レバー12を後倒れ方向(図1において、時計周り方向)に回動させると、上述したスライドロック手段のロック解除が行われる構造となっている。
【0015】
次に、シートバック2の詳細構成を説明する。シートバック2は、シートクッション1と同様に、バックフレーム20と、パッドと、表皮(いずれも図示しない)とから構成されている。バックフレーム20の下端は、クッションフレーム10の後端に対して連結軸30とリクライニング機構(図示しない)を介して回動可能に組み付けられている。このとき、バックフレーム20は、リクライニング部材を介して前倒れ方向(図1において、矢印B方向)に付勢状態で組み付けられている。
【0016】
このリクライニング部材は、シートバック2をシートクッション1に対して起立姿勢させた着座状態(図1に示す状態)と、この着座状態からシートバック2をシートクッション1側に向けて前傾姿勢させたウォークイン状態(図5に示す状態)と、同じく、この着座状態からシートバック2をシートクッション1に対して重ね合わせ姿勢させた大倒し状態(図8に示す状態)とにそれぞれ保持させる部材である。
【0017】
この着座状態とは、シートクッション1に着座した乗員がシートバック2に背凭れ可能な状態のことである。また、ウォークイン状態とは、乗員が3列目のシート(図示しない)に乗降するとき、その乗降を容易にするために、2列目のシートである本車両用シートのシートバック2を前傾させた状態のことである。また、大倒し状態とは、例えば、多くの荷物を載せるために、本車両用シートのシートバック2を完全に前倒れ(フラット状態)させた状態のことである。
【0018】
図1に戻って、リクライニング部材について詳述すると、リクライニング部材は、切替レバー21と、レリーズアーム22と、連結アーム23およびリクライニング機構(図示しない)とから構成されている。これら各構成部材を個別に説明すると、切替レバー21は、既に説明したように、ロック解除レバー12を作動させる部材であり、係止ピン21aによってバックフレーム20に回動可能に組み付けられている。
【0019】
このとき、切替レバー21は、その一端(図1において、上端)21bが後倒れ方向(図1において、矢印C方向)に付勢状態となるように組み付けられている。そのため、着座状態において、切替レバー21の他端21cは、バックフレーム20に形成された第3のストッパ24に当接状態となっている。また、切替レバー21の一端21bには、後述する連結アーム23の引っ掛け部23cを係合可能な係合突起21b1が形成されている。一方、切替レバー21の他端21cには、チルトダウンケーブル32が接続されている。
【0020】
このチルトダウンケーブル32は、筒状のアウタケーブル32aと、このアウタケーブル32aの内部に挿入されたワイヤー状のインナケーブル32bとから成る2重構造のケーブルである。アウタケーブル32aの両端は、バックフレーム20に形成されたフックにそれぞれ掛け止めされている。また、インナケーブル32bの一端は、切替レバー21の他端21c側に掛け止めされ、インナケーブル32bの他端は、シートバック2の肩口に形成されたチルトダウンレバー(図示しない)に掛け止めされている。そのため、チルトダウンレバーを操作すると、インナケーブル32bが引っ張られる格好となり、切替レバー21の一端21bを前倒れさせる方向(図1において、反時計周り方向)へ切替レバー21を回動させることができる。
【0021】
次に、レリーズアーム22を説明する。レリーズアーム22は、後述するリクライニング機構のロック状態を解除させる略扇状に形成された部材であり、連結軸30によってバックフレーム20に回動可能に組み付けられている。このとき、レリーズアーム22は、後倒れ方向(図1において、矢印D方向)に付勢状態となるように組み付けられている。
【0022】
また、レリーズアーム22には、ウォークインケーブル34が接続されている。このウォークインケーブル34は、既に説明したチルトダウンケーブル32と同様に、筒状のアウタケーブル34aと、このアウタケーブル34aの内部に挿入されたワイヤー状のインナケーブル34bとから成る2重構造となっている。
【0023】
アウタケーブル34aの両端は、バックフレーム20に形成されたフックにそれぞれ掛け止めされている。また、インナケーブル34bの一端は、レリーズアーム22の扇状の外周の一端に形成された孔22bに掛け止めされ、インナケーブル34bの他端は、シートバック2の肩口に形成されたウォークインレバー(図示しない)に掛け止めされている。そのため、ウォークインレバーを操作すると、インナケーブル34bが引っ張られる格好となり、レリーズアーム22を前倒れさせる方向(図1において、反時計周り方向)へ回動させることができる。また、レリーズアーム22には、連結軸30の軸を中心とする半径方向と円周方向に略L字状の長孔22aが形成されている。なお、着座状態において、ウォークインケーブル34のインナケーブル34bは、上述したレリーズアーム22の付勢によって、引っ張り力が作用している状態(テンションのかかった状態)で保持される格好となっている。
【0024】
次に、連結アーム23を説明する。連結アーム23は、切替レバー21の回動力をレリーズアーム22に伝達する部材である。連結アーム23の一端は、係止ピン23aによって切替レバー21の一端21b側に回動可能に組み付けられている。また、連結アーム23の一端には、既に説明した切替レバー21の係合突起21b1と係合可能な引っ掛け部23cが形成されている。
【0025】
一方、連結アーム23の他端には、レリーズアーム22の長孔22aに挿入されたピン23bが突設されている。また、連結アーム23は、その引っ掛け部23cが切替レバー21の係合突起21b1に係合する方向(図1において、矢印E方向)に付勢状態となるように組み付けられている。そのため、着座状態において、連結アーム23の引っ掛け部23cは、切替レバー21の係合突起21b1に当接状態となっている。
【0026】
最後に、リクライニング機構を説明する。リクライニング機構は、シートクッション1に対して前倒れ方向に付勢されているシートバック2を着座状態にロックさせる部材である。このロック解除は、レリーズアーム22を前倒れ方向へ回動させることによって行われる構造となっている。そして、このロック解除を行うと、着座状態にあるシートバック2の前倒れが開始される構造となっている。
【0027】
続いて、上述した車両用シートの作用を説明する。まず、シートバック2を着座状態からウォークイン状態に切り替える動作を説明する。図1に示す着座状態から乗員がウォークインレバーを操作すると、レリーズアーム22は前倒れ方向へ回動していく。(図2参照)。すると、既に説明したように、リクライニング機構のロック解除が行われるため、シートバック2の前倒れが始まっていく。すると、リクライニング機構の構成部材であるポールの外周面に形成された外歯が、バックフレーム側に締結されている同構成部材であるラチェットの内周面に形成された内歯が形成されていない領域(所謂、フリーゾーン領域)に到達する。これにより、以降におけるシートバック2の前倒れにおいて、これら外歯と内歯が噛み合うことがない。そのため、乗員はウォークインレバーの操作を保持することなく、その操作を解除しても、シートバック2の前倒れを継続させることができる。このとき、レリーズアーム22が前倒れ方向へ回動しても、連結アーム23のピン23bは、レリーズアーム22の長孔22aを円周方向に移動する格好となるため、連結アーム23が動作することはない。なお、ウォークインレバーの操作を解除すると、レリーズアーム22は、自身を付勢している付勢手段の付勢力によって回動前と回動操作時との間のフリーゾーン領域のレバー位置に戻される(図3参照)。
【0028】
このようにシートバック2が前倒れしていくと、切替レバー21の他端21c側(切替レバー21の当接部21d)はロック解除レバー12のピン12bに当接し、この当接によってロック解除レバー12は後倒れ方向へ回動していく(図4参照)。すると、既に説明したように、スライドロック手段のロック解除が行われるため、クッションフレーム10は前方向へスライド移動していく。この記載が、特許請求の範囲に記載の「シートバックをウォークイン状態に保持させるとき、切替レバーによってスライドロック手段のロック状態を解除するロック解除レバーを動作させる」に相当する。
【0029】
さらに、シートバック2が前倒れしていくと、ロック解除レバー12は第1のストッパ11に当接し、この当接によってシートバック2の前倒れが規制される格好となり、シートバック2はウォークイン状態に保持される(図5参照)。このようにして、シートバック2を着座状態からウォークイン状態に切り替えることができる。この切り替えによって、2列目のシートである本車両用シートと、その後方の3列目のシートとの間に大きな空間が形成されるため、乗員は3列目のシートへの乗降が容易となる。なお、シートバック2をウォークイン状態から着座状態に戻すとき、乗員はシートバック2を後倒れ方向へ回動させ、自身の所望する回動位置でシートバック2をリクライニング機構によってロックすればよい。
【0030】
次に、シートバック2を着座状態から大倒し状態に切り替える動作を説明する。図1に示す着座状態から乗員がチルトダウンレバーを操作すると、切替レバー21は、その一端21bが前倒れするように回動していく。すなわち、切替レバー21は、その当接部21dが連結軸30に下方から近づく格好となるように回動していく。これにより、連結アーム23は、そのピン23bがレリーズアーム22の長孔22aの半径方向の外方に向けて移動するように切替レバー21によって引っ張られる。
【0031】
そのため、連結アーム23のピン23bはレリーズアーム22の長孔22aの一方側の内壁22a1(図1において、長孔22aの半径方向を境に向かい合う内壁のうち、左側の内壁)に当接し、この当接によってレリーズアーム22を前倒れ方向へ回動させていく(図6参照)。すると、既に説明したように、リクライニング機構の解除が行われるため、シートバック2の前倒れが始まっていく(図7参照)。
【0032】
すると、上述したシートバック2を着座状態からウォークイン状態に切り替える動作を説明したときと同様に、乗員はチルトダウンレバーの操作を保持することなく、その操作を解除しても、シートバック2の前倒れを継続させることができる。また、シートバック2の前倒れが始まって乗員はチルトダウンレバーの操作を解除すると、切替レバー21に作用する付勢力によって、連結アーム23のピン23はレリーズアーム22の長孔22aの他方側の内壁22a2(図7において、長孔22aの半径方向を境に向かい合う内壁のうち、右側の内壁)に当接し、この当接によって切替レバー21の前倒れ状態が保持される構造となっている。すなわち、チルトダウンレバーの操作が保持された状態と同じ状態になる構造となっている。この記載が、特許請求の範囲に記載の「切替レバーの当接部が連結軸に下方から近づくように切替レバーを回動させたとき、その回動状態を保持させる回動保持機構を備えている」に相当する。そのため、シートバック2の前倒れが始まると、乗員はチルトダウンレバーの操作を保持することなく、その操作を解除してもよい。
【0033】
このように保持された状態でシートバック2が前倒れしていくと、切替レバー21の他端21c側の当接部21dはロック解除レバー12のピン12bに当接することはない。すなわち、切替レバー21とロック解除レバー12のピン12bとの当接が回避される格好となる。そのため、シートバック2は、そのバックフレーム20がクッションフレーム10に形成された第2のストッパ13に当接するまで前倒れしていく。そして、この当接によってシートバック2の前倒れが規制される格好となり、シートバック2は大倒し状態に保持される(図8参照)。
【0034】
このようにして、シートバック2を着座状態から大倒し状態に切り替えることができる。この切り替えによって、シートバック2を完全に前倒れさせた状態にすることができるため、車両に大きな荷物等を載せることができる。なお、シートバック2を大倒し状態から着座状態に戻すとき、乗員はシートバック2をウォークイン状態から着座状態に戻すときと同様の操作をすればよい。
【0035】
本発明の実施例に係る車両用シートは、上述したように構成されている。この構成によれば、シートバック2を着座状態から前倒しさせると、切替レバー21の当接部21dがロック解除レバー12に当接し、この当接によってシートバック2の前倒しが規制されるため、シートバック2をウォークイン状態に保持させることができる。一方、この当接を回避させた状態で、シートバック2を着座状態から前倒しさせると、シートバック2を大倒し状態に保持させることができる。このとき、切替レバー21の当接部21dがシートバック2を回動させる連結軸30に下方から近づくように切替レバー21を回動させて、切替レバー21とロック解除レバー12との当接を回避させている。
【0036】
そのため、切替レバー21を回動させても、従来技術のように、切替レバー21(従来技術において、ストップレバー)がシートクッション1のシールドから露出することはない。したがって、シートクッション1のシールドが小型であっても、シートバック2を着座状態から大倒し状態に切り替えるときの車両用シートの見栄えを向上させることができる。
【0037】
また、この構成によれば、シートバック2を着座状態から大倒し状態に切り替えるとき、連結アーム23のピン23bがレリーズアーム22の長孔22aの他方側の内壁22a2に当接し、この当接によって切替レバー21の前倒れ状態が保持されている。そのため、大倒し状態への切り替えが完了するまで、乗員はチルトダウンレバーの操作を保持しておく必要はない。したがって、大倒し状態に切り替えるときの乗員のレバー操作を簡素化することができる。
【0038】
また、この構成によれば、シートバック2を着座状態からウォークイン状態に切り替えるとき、シートクッション1がスライドロック手段によって車両フロアに対してロックされている場合であっても、ウォークイン状態への切り替え操作を行うだけでスライドロック手段のロック解除も行うことができる。そのため、ウォークイン状態に切り替えるときの乗員のレバー操作を簡素化することができる。
【0039】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、車両用シートの例として、3列シートを備えた自動車の2列目のシートを説明した。しかし、これに限定されるものでなく、3列シートを備えた自動車の1列目のシートであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る車両用シートの模式図であり、シートバックが着座状態にあるときを示している。
【図2】図2は、図1において、乗員がウォークインレバーを操作した状態を示している。
【図3】図3は、シートバックを着座状態からウォークイン状態に切り替え中の状態を示している。
【図4】図4は、図3の状態から、さらに、シートバックが前倒れした状態であり、切替レバーの他端側の当接部がロック解除レバーのピンに当接したときの状態を示している。
【図5】図5は、シートバックがウォークイン状態に切り替わった状態を示している。
【図6】図6は、図1において、乗員がチルトダウンレバーを操作した状態を示している。
【図7】図7は、シートバックを着座状態から大倒し状態に切り替え中の状態を示している。
【図8】図8は、シートバックが大倒し状態に切り替わった状態を示している。
【符号の説明】
【0041】
1 シートクッション
11 ストッパ(第1のストッパ)
12 ロック解除レバー
2 シートバック
21 切替レバー
30 連結軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに対してシートバックが連結軸を介して回動可能に組み付けられており、
シートバックをシートクッションに対して起立姿勢させた着座状態と、この着座状態からシートバックをシートクッション側に向けて前傾姿勢させたウォークイン状態と、この着座状態からシートバックをシートクッションに対して重ね合わせ姿勢させた大倒し状態とにそれぞれ保持可能な車両用シートであって、
シートバック側には、シートバックに対して回動可能に組み付けられた切替レバーが設けられており、
シートバックを着座状態から前倒しさせると、シートクッション側に形成されたストッパに切替レバーが当接することによってシートバックがウォークイン状態に保持され、
切替レバーの当接部が連結軸に下方から近づくように切替レバーを回動させた状態で、シートバックを着座状態から前倒しさせると、切替レバーとストッパとの当接が回避されシートバックが大倒し状態に保持されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
切替レバーの当接部が連結軸に下方から近づくように切替レバーを回動させたとき、その回動状態を保持させる回動保持機構を備えていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の車両用シートであって、
シートクッションは、スライドロック手段によって車両フロアに対してロック状態となっており、
シートバックをウォークイン状態に保持させるとき、スライドロック手段のロック状態を解除するロック解除レバーを切替レバーによって動作させることを特徴とする車両用シート。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate