説明

車両用シート

【課題】よりシンプルな構成によって、乗員の体温を効率良く調整することにある。
【解決手段】乗員Hの体温を調整可能な温調部材30を備える車両用シート2において、温調部材30を、シートクッション表面より隆起する隆起位置と、シートクッション4の格納部10に格納される格納位置との間で変位可能とし、乗員Hの両大腿部間に配置し、大腿部内側(複数の太い血管が集中する部位)を暖房又は冷房することにより、乗員の体温を効率良く調整する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の体温を調整可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートとして特許文献1及び特許文献2の車両用シートが公知である。例えば特許文献1の車両用シートは、送風ユニットを内蔵するとともに、配風通路と送風孔を有する。
配風通路は、シート内の枝分かれ通路であり、その根元側で送風ユニットに接続される。また送風孔は、シート表面の略全面に設けた複数の孔部であり、配風通路の枝分かれ側に連通する。そして送風ユニットの温風や冷風を、配風通路を介して送風孔に導いたのち、シート略全面から乗員に向かって吹き出すことができる。
ところで特許文献1の技術では、乗員の大きさとは無関係にシート略全面から温風等を送風する。このため乗員に対して送風面積が必要以上に広くなることがあり、シートの省電力化を考慮すると、すんなり採用できる構成ではなかった。
【0003】
そこで特許文献2には、複数のヒータ部材とセンサを有する車両用シートの開示がある。この技術では、シートクッションとシートバックの双方に、第一のヒータ部材を配設した内側採暖部(着座部の中央)と、第二のヒータ部材を配設した外側採暖部(着座部の両側)とを設ける。
そして乗員の大小(例えば大人と子供の別)をセンサにて検知したのち、乗員が大人の場合には内側採暖部と外側採暖部を暖房し、子供の場合には内側採暖部のみを暖房する。このように特許文献2の技術によれば、乗員の大小によって暖房面積を変更することで、シートの省電力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-285629号公報
【特許文献2】特開平5-22026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献2の技術では、複数のヒータ部材を異なる位置に配設する必要があり、シート構成の複雑化を招いていた。また乗員によっては使用しないヒータ部材があり、無駄の多い構成であった。このため従来、よりシンプルな構成によって、効率良く乗員の体温を温調可能なシート構成が望まれていた。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、乗員の大腿部内側に複数の太い血管(例えば大腿動静脈)が集中することに着目した。そして乗員の大腿部内側を集中的に暖房等することで、乗員の体温を効率良く調整可能であることを見出した。
而して本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、よりシンプルな構成によって、乗員の体温を効率良く調整することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シートは、乗員の体温を調整可能な温調部材を備える。そして本発明の車両用シートでは、温調部材によって乗員を暖房又は冷房する(体温を調整する)のであるが、このとき極力シンプルな構成によって、効率良く乗員の体温を調整できることが好ましい。
そこで本発明では、上述の温調部材を、シートクッション表面より隆起させて、乗員の両大腿部間に配置する。そして温調部材によって、大腿部内側(複数の太い血管が集中する部位)を暖房又は冷房することにより、乗員の体温を効率良く調整する構成とした。
【0007】
第2発明の車両用シートは、第1発明に記載の車両用シートであって、上述の温調部材を、シートクッション表面より隆起する隆起位置と、シートクッションの格納部に格納される格納位置との間で変位可能とする。そして本発明では、格納位置の温調部材によって、シートクッション表面一部を構成することにより、不使用時の温調部材が極力着座等の邪魔にならない(使い勝手のよい)シート構成とした。
【0008】
第3発明の車両用シートは、第2発明に記載の車両用シートであって、上述の温調部材を、昇降機構によって、隆起位置と格納位置の間でコンパクトに昇降変位可能とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、よりシンプルな構成によって、乗員の体温を効率良く調整することができる。また第2発明によれば、より使い勝手のよいシート構成となる。そして第3発明によれば、よりコンパクトなシート構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、格納位置の温調部材を示す車両用シートの斜視図であり、(b)は、隆起位置の温調部材を示す車両用シートの斜視図である。
【図2】シートクッション一部の分解斜視図である。
【図3】(a)は、格納位置の温調部材を示すシートクッション一部の縦断面図であり、(b)は、隆起位置の温調部材を示すシートクッション一部の縦断面図である。
【図4】シートクッション一部の別の縦断面図である。
【図5】(a)は、実施例2に係る格納位置の温調部材を示す車両用シートの斜視図であり、(b)は、隆起位置の温調部材を示す車両用シートの斜視図である。
【図6】実施例2に係るシートクッション一部の縦断面図である。
【図7】(a)は、実施例2に係る格納位置の温調部材を示すシートクッション一部の別の縦断面図であり、(b)は、隆起位置の温調部材を示すシートクッション一部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図7を参照して説明する。なお各図においては、便宜上、シートクッションの表皮材を省略することがある。また各図には、適宜、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート側方に符号L、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを付す。
【0012】
図1の車両用シート2は、シートクッション4とシートバック6を有する。これら部材は、シート外形をなすクッション材(4Pa,6Pa)と、クッション材を被覆する表皮材(4S,6S)を備える。なお表皮材(4S,6S)裏面には、クッション材よりも柔軟なパッド材を配設することができる。
そしてシートクッション4は、中央の凹部(着座部SP)と、両側の凸部(サイドサポート部LP)を有する。そして本実施例では、シートクッション4によって乗員Hの体温を調整するのであるが、この種の構成は極力シンプルであることが好ましい。
そこで以下の各実施例では、後述するシート構成によって、乗員Hの体温を効率良く調整することとした。
【0013】
[実施例1]
本実施例のシートクッション4は、格納部10と、温調部材30と、昇降機構M(ブラケット20、ガイド部50)を有する(図1及び図2を参照)。
そして本実施例では、温調部材30が、温調手段40を備えるとともに、昇降機構Mによって隆起位置と格納位置の間を昇降変位可能である。隆起位置の温調部材30は、シートクッション4表面より隆起して、乗員Hの両大腿部間に配置する。また格納位置の温調部材30は、格納部10に格納されてシートクッション4表面(着座部SP)一部を構成する。以下、各構成について説明する。
【0014】
[格納部]
格納部10は、シートクッション4に設けた凹部であり、後述のブラケット20(昇降機構Mの一部)を有する(図2及び図3を参照)。
本実施例では、略立方体状の格納部10を、着座部SPの前端中央(大腿部間に対応する位置)に設ける。そして格納部10の底面側に、シート内部と連通する孔部12を形成する(図3を参照)。この孔部12は、ブラケット20を挿設可能な開口寸法を有しており、シート内部又は車室底面の車載電源(図示省略)などに通じる。なお格納部10の内面は、シートの見栄えを考慮して表皮材4Sで被覆することができる(図1を参照)。
【0015】
(ブラケット(昇降機構))
ブラケット20は、略T字状(断面視)の部材であり、被覆部22と、保持部24と、一対の被係止部26f,26sを有する(図2及び図3を参照)。
被覆部22は、ブラケット20上側の平板部位であり、格納部10の底面を被覆可能な寸法を有する。そして被覆部22の前端と後端(いずれも下方に屈曲)は、後述の表皮片(34f,34s)を取付け可能な第一取付け部22fである。
また保持部24は、ブラケット20下側の筒状部位(中空状)であり、後述の温調部材30(挿入部54)を挿設可能な筒寸法を有する。この保持部24の上下端(いずれも開放状)には、上部開口24uと下部開口24dが形成される。
【0016】
そして一対の被係止部(第一被係止部26f、第二被係止部26s)は、後述の係止部56を係止可能な部位であり、保持部24の周壁に形成される(図3を参照)。第一被係止部26fは、保持部24の上部側で対面状に形成された一対の貫通孔である。また第二被係止部26sは、保持部24の下部側で対面状に形成された一対の貫通孔である。
そして本実施例では、平板状の被覆部22で格納部10底面を被覆しつつ、筒状の保持部24を孔部12に挿設する。上部開口24uは被覆部22上面に開口し、下部開口24dは孔部12途中(シート内)に開口する。
【0017】
[温調部材]
温調部材30は略立方体状の部材であり、上述の格納部10に収納可能な外形寸法を有する(図2及び図3を参照)。そして温調部材30は、クッション材30P及び表皮材30Sと、外部構成(一対の表皮片34f,34s、持ち手部36)と、後述の内部構成(温調手段40、ガイド部50)を有する。表皮材30S裏面にはパッド材30Pbが配設される。
そして温調部材30の下部外形は、クッション材30P(略立方体状)にて構成される。このクッション材30Pは中央が凸状であり、その周囲(シート側方)が凹状である(図4を参照)。またクッション材30Pの中央(後述の挿入部54に対応する位置)には、シート上下に延びる連通孔32が形成される。そして温調部材30上部に温調手段40(詳細後述)を配設したのち、温調部材30の外面を表皮材30Sにて被覆することとなる。
【0018】
(外部構成)
持ち手部36は、温調部材30上部の布片であり、この持ち手部36を上方に引っ張るなどして温調部材30を上昇させることができる(図3を参照)。
また一対の表皮片(第一表皮片34f、第二表皮片34s)は略矩形の布材である。そして後述のとおり温調部材30を上昇させたとき、第一表皮片34fにて、温調部材30とブラケット20の間に形成される前部隙間C1を被覆する。また第二表皮片34sにて、温調部材30とブラケット20の間に形成される後部隙間C2を被覆する。これら一対の表皮片34f,34sは、いずれもシート幅方向に延びる折線部35を有しており、この折線部35から互いに近づく方向に内折り可能である。
【0019】
(ガイド部(昇降機構))
ガイド部50は、略T字状(断面視)の部材であり、支持部52と、挿入部54と、係止部56を有する(図2及び図3を参照)。
支持部52は、温調部材30の下部(クッション材30P)を支持可能な平板部位であり、前端と後端は、各表皮片34f,34sを取付け可能な第二取付け部52sである。
また挿入部54は、両端開放状の筒状部位(中空状)であり、保持部24に挿入可能な筒寸法を有する。本実施例の挿入部54は、シート幅方向に幅長な直方体状である。
【0020】
そして係止部56は、挿入部54内方に撓み変形可能な一対の板材であり、挿入部54の下部側で対向状に形成される。この係止部56は、例えば挿入部54の周壁を略逆U字状に切欠くことで形成できる。そして係止部56の上部側には、挿入部54外方に突出する爪部58が設けてある。この爪部58は略台形状の凸部であり、上端と下端が傾斜面Iとされている(図3を参照)。
そして本実施例では、ブラケット20に対するガイド部50の挿入動作により、爪部58下端(傾斜面I)を、上部開口24uの周縁が押圧して、挿入部54内方に撓み変形させる。これによりガイド部50を保持部24に挿入することができる。
またブラケット20に対するガイド部50の抜出し・挿入動作により、爪部58上下端(傾斜面I)を、各被係止部26f,26sの周縁が押圧して、挿入部54内方に撓み変形させる。これにより各被係止部26f,26sと係止部56の係止が解除されて、温調部材30を昇降させることができる。
【0021】
(温調手段)
温調手段40は、蓄熱材42と、ヒータ部材44を有する(図2〜図4を参照)。ヒータ部材44は、通電により発熱可能な面状部材であり、車載電源に接続可能なワイヤ部材46を有する。このヒータ部材44は、連続的に使用することができるが、後述の蓄熱材42が所定温度に達したのちに電源をオフとすることが好ましい。
本実施例では、クッション材30Pの上部にヒータ部材44を敷設する。そしてワイヤ部材46を連通孔32内に導き入れて、ガイド部50及びブラケット20を介して車載電源(図示省略)に接続する。
【0022】
(蓄熱材)
蓄熱材42は、例えば36℃以上で液状となり36℃未満で固体となる(相変化する)成分であることが好ましく、典型的に柔軟な袋体に封入することができる。この蓄熱材42は、液状から固体に変化するときの凝固作用で36℃〜40℃程度の温かさを一定期間維持することができる。
そして蓄熱材42にてヒータ部材44の熱を蓄熱することにより、ヒータ部材44を連続使用した場合と比較して、シートの消費電力を抑えることができる。
本実施例では、ヒータ部材44上に蓄熱材42を配設したのち、温調部材30の外面を表皮材30Sで被覆する。そして温調手段40を、クッション材30P(側方が凹状)の上面に沿って配設することにより、温調部材30の上部と両側に配置することができる(図4を参照)。
【0023】
なお蓄熱材42として、固体−液体−気体の間で相変化可能な相変化物質(有機化合物又は無機化合物)を使用することができる。この種の相変化物質として、アルコール類、水、炭化水素、芳香族炭化水素、カルボン酸類、フェノール類、有機化合物、無機塩及びこれらの混合成分を例示できる。
なかでもアルコール類は、取扱性に優れるとともに廉価であるため、本実施例の蓄熱材42として好適に使用することができる。アルコール類として、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール及びこれらの混合物を例示できる。そしてこれらアルコール類を単体又は適宜混合するなどして、凝固点を体温前後に調節した成分を蓄熱材42として使用する。
【0024】
(温調部材の配設)
図1及び図3を参照して、上部開口24uからガイド部50を挿入して、第一被係止部26fに係止部56を係止する。こうすることで格納部10から温調部材30が突出して、シートクッション4表面より隆起する(隆起位置)。そして第一取付け部22fと第二取付け部52sに第一表皮片34fを取付けて前部隙間C1を被覆する。また同様に第二表皮片34sによって後部隙間C2を被覆する。こうすることでシートの見栄えの悪化を防止することができる。
そして隆起位置の温調部材30が乗員Hの大腿部間に配置する。さらに蓄熱材42が、温調部材30の上部と、温調部材30の両側(乗員Hの大腿部を臨む側)に配置する(図4を参照)。このため温調部材30によって、大腿部内側を暖房することにより、乗員Hの体温を効率良く調整することができる。また乗員Hが温調部材30の上部に触れるなどして、大腿部以外の部分を適宜暖房することもできる。
【0025】
つぎに格納部10に温調部材30を押し込むなどして、第二被係止部26sと係止部56を係止することにより、温調部材30を格納部10に格納する。このとき一対の表皮片34f,34sは、折線部35から互いに近づく方向に内折りされて、ガイド部50とブラケット20の間にコンパクトに収納される(図3を参照)。
そして格納位置の温調部材30が、シートクッション4の表面(着座部SP)一部を構成して着座部SPが略面一となる。このように格納位置の温調部材30によって着座部SPを構成することにより、不使用時の温調部材30が極力着座等の邪魔にならない(使い勝手のよい)シート構成となる。
【0026】
以上説明したとおり、本実施例では、温調部材30(比較的シンプルな構成)によって、乗員Hの大腿部内側(複数の太い血管が集中する部位)を暖房する。これにより乗員Hの体温を効率良く調整することができる。
また本実施例では、持ち手部36を上方に引っ張るなどして、格納位置から隆起位置に温調部材30をコンパクトに昇降変位させることができる。
そして隆起位置の温調部材30は、シートクッション4表面一部を構成するため、シートの着座性を好適に維持することができる(使い勝手の良いシート構成となる)。さらに車両用シート2は、着座部SPに他部材(例えばチャイルドシート)を配設する場合にも、温調部材30が極力邪魔とならない構成である。
【0027】
[実施例2]
本実施例の車両用シート2aは、実施例1の車両用シート2とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施例の格納部10は、着座部SPの前端に設けた凹部であり、複数のヒータ部材(44a〜44c)を有する(図5〜図7を参照)。
本実施例では、格納部10の両側に一対の第一のヒータ部材44aを内蔵する。また格納部10の底面部に第二のヒータ部材44bを内蔵する。そして格納部10の後面部に第三のヒータ部材44cを内蔵する。
【0028】
また温調部材30aは、蓄熱材42(温調手段40)と、ヒンジ部60を有する(図5〜図7を参照)。この蓄熱材42は、温調部材30aの上部及び両側に配置する。またヒンジ部60は柔軟な布部材であり、屈曲可能な柔軟性を有する。
そして温調部材30aは、ヒンジ部60(比較的シンプルな構成)を介して、隆起位置と格納位置との間で回転変位可能である(図6及び図7を参照)。本実施例では、温調部材30aを格納部10に格納したのち、温調部材30aの上部後側と、格納部10の後端上部をヒンジ部60にて接続する。そしてヒンジ部60を横U字状に屈曲させつつ、持ち手部36を引っ張ることで温調部材30aを車両前後に回転させることができる。
【0029】
そして図6及び図7を参照して、ヒンジ部60を回転中心として温調部材30aをシート後方に回転する。これによりシートクッション4表面上に温調部材30aを配置させることができる(隆起位置)。隆起位置の温調部材30a(蓄熱材42)は、乗員Hの大腿部内側を臨む部位に配置して、乗員Hを効率良く暖房することができる。
またヒンジ部60を回転中心として、温調部材30aをシート前側に逆回転させて格納部10内に配置させることができる(格納位置)。格納位置の温調部材30aでは、温調手段40が各ヒータ部材44a〜44cを臨む位置に配置する。このため各ヒータ部材44a〜44cによって、比較的速やかに温調部材30aを昇温することができる。また格納位置の温調部材30aでは、内蔵のクッション材30Pが着座側に配置するため、シートの着座性を好適に維持することができる。
このように本実施例によれば、さらにシンプルな温調部材30によって、乗員Hの大腿部内側を暖房することにより、乗員Hの体温を効率良く調整することができる。
【0030】
本実施形態の車両用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施例では、専ら蓄熱材42を備える温調手段40を例示したが、温調部材の内部構成を限定する趣旨ではない。例えば温調手段を、ヒータ部材や送風ユニットのみで構成することができる。また温調部材は、内部構成を適宜変更するなどして、乗員を暖房することもでき、また乗員を冷房することもできる。例えば温調部材に内蔵の送風ユニットから冷風を送風することで、乗員を冷房することができる。また温調部材に内蔵の蓄熱材の凝固点を体温よりも低く設定することで、乗員を冷房することができる。
(2)また本実施例では、温調手段40を、温調部材30の上部と両側に配置する例を説明した。温調手段40は、少なくとも温調部材3の片側に配置されておればよい。
【0031】
(3)また本実施例では、ブラケット20とガイド部50を昇降機構Mの一例として説明したが、昇降機構の構成を限定する趣旨ではない。昇降機構は、温調部材を手動で昇降させる構成でもよく、電動で昇降させる構成でもよい。
(4)また本実施例では、一対の被係止部26f,26sをブラケット20に設ける例を説明したが、被係止部の配設数を限定する趣旨ではない。例えば被係止部の配設数を3以上に設定して、乗員の大小に応じて、温調部材の昇降量を段階的に調節することができる。そして乗員が大人の場合には温調部材を高く隆起させるとともに、乗員が子供の場合には温調部材を低く隆起させる。
【0032】
(5)また本実施例では、格納部10と温調部材30と昇降機構M(ブラケット20、ガイド部50)の形状等を例示したが、これら部材等の形状等を限定する趣旨ではない。また凹部の形状(空間形状)も、温調部材の形状に合わせて適宜変更可能である。
(6)また本実施例では、シートクッション4の中央に温調部材30(単数)を配設する例を説明したが、温調部材の配設位置や配設数を限定する趣旨ではない。すなわち複数人掛けの車両用シートでは、乗員の着座位置に応じて複数の温調部材を配設することができる。例えば二人掛け用の車両用シートでは、乗員の大腿部の配置位置に対応して、シート左右に一対の温調部材を配設することができる。
【符号の説明】
【0033】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
10 格納部
20 ブラケット(昇降機構)
22 被覆部
24 保持部
26f 第一被係止部
26s 第二被係止部
30 温調部材
34f 第一表皮片
34s 第二表皮片
35 折線部
36 持ち手部
40 温調手段
42 蓄熱材
44 ヒータ部材
46 ワイヤ部材
50 ガイド部(昇降機構)
52 支持部
54 挿入部
56 係止部
58 爪部
60 ヒンジ部
C1 前部隙間
C2 後部隙間
LP サイドサポート部
SP 着座部
M 昇降機構
H 乗員


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の体温を調整可能な温調部材を備える車両用シートにおいて、
前記温調部材を、前記シートクッション表面より隆起させて、前記乗員の両大腿部間に配置した車両用シート。
【請求項2】
前記温調部材を、前記シートクッション表面より隆起する隆起位置と、前記シートクッションの格納部に格納される格納位置との間で変位可能とするとともに、前記格納位置の温調部材によって、前記シートクッション表面一部を構成する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記温調部材を、昇降機構によって、前記隆起位置と前記格納位置の間で昇降変位可能とした請求項2に記載の車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−273801(P2010−273801A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128014(P2009−128014)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】