説明

車両用シート

【課題】着座者の背部を押圧する機能部位を着座者の体格に合わせて変えられるようにする。
【解決手段】シートバック4に着座者の背部を押圧することのできる複数のマッサージ部材12が設けられた車両用シート1である。シートバック4の上部に設けられたヘッドレスト6は、着座者の頭部を支持する支持高さ位置を着座者の背丈に合わせて上下変動させられるようになっている。ヘッドレスト6の支持高さ位置が下限位置から上げられる移動によって、この支持高さ位置によって想定される着座者の背丈に応じた位置に配されたマッサージ部材12i,12jが、押圧機能する状態に切り換えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートバックに着座者の背部を押圧することのできる複数の押圧部材が設けられた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、背凭れとなるシートバックの内部に、着座者の背部を押圧してマッサージを行うマッサージ器が内蔵された構成が知られている。ここで、下記特許文献1には、シートバック内にマッサージ部材となる複数の膨張・収縮式のエアー袋が配設された構成が開示されている。この開示では、シートバック内に複数のエアー袋が高さ方向に並んだ配設されており、これらエアー袋を膨張させて着座者の背部に押し当てることによってマッサージを行う構成となっている。
【0003】
ここで、上記したシートバックの上部に取り付けられたヘッドレストは、その取付け高さ位置が調整できるようになっており、更に、シートバックに対して下限位置まで下げられた状態時には、その前面側に形状が垂下して形成された延出部分が、シートバックの背凭れ面側にかかるように形成されている。これにより、背丈の低い者が着座した時にも、背丈の高い者が着座した時にも、それぞれの体格に合わせて、ヘッドレストやシートバックを着座者の後頭部や背部に当てがえるようになっている。
【特許文献1】特開2006−198070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記開示の従来技術では、シートバックの上方側の領域部分には、ヘッドレストが下限位置まで下げられた際に、その前面側の垂下した延出部分がかかってしまうために、エアー袋が配設されていない構成となっている。このため、背丈の高い者が着座してヘッドレストの高さ位置が上げられた際に、シートバックの上方側の領域部分ではマッサージが行われず、着座者の背丈に合ったマッサージ(押圧)が行えていなかった。
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、着座者の背部を押圧する機能部位を着座者の体格に合わせて変えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、シートバックに着座者の背部を押圧することのできる複数の押圧部材が設けられた車両用シートである。シートバックの上部には、着座者の頭部を後方側から支持するヘッドレストが配設されている。ヘッドレストは、着座者の頭部を支持する支持高さ位置を着座者の背丈に合わせて上下変動させられるようになっている。ヘッドレストの支持高さ位置が変えられる移動によって、この支持高さ位置によって想定される着座者の背丈に応じて要否が特定される少なくとも一つの押圧部材が、押圧機能する状態或いは押圧機能しない状態に切り換えられる構成となっている。
【0007】
ここで、「着座者の背丈に応じて要否が特定される少なくとも一つの押圧部材」とは、例えば、背丈の低い着座者に対しては高さ位置が合わずに背部に当てられない(不要となる)が、背丈の高い着座者に対しては高さ位置が合って背部に当てられるようになる(必要となる)位置に配置された押圧部材を指す。
【0008】
この第1の発明によれば、ヘッドレストの支持高さ位置が変えられる移動により、この支持高さ位置に対応する背丈の着座者の背部に押圧機能可能となる位置に配置された少なくとも一つの特定の押圧部材が押圧機能する状態に切り換えられる。或いは、着座者の背部に押圧機能不能となる位置に配置された少なくとも一つの特定の押圧部材が押圧機能しない状態に切り換えられる。これにより、着座者の背部を押圧する機能部位を、着座者の体格に合わせて変えることができる。
【0009】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、着座者の背丈に応じて要否が特定される少なくとも一つの押圧部材は、ヘッドレストを第1の支持高さ位置以下の高さ領域で使用する背丈の着座者に対して押圧機能する想定の高さ位置から上方側に外れた高さ領域に配設されている。そして、この少なくとも一つの押圧部材は、ヘッドレストが第1の支持高さ位置以下の高さ領域まで下げられた状態時には、押圧機能しない状態とされるが、ヘッドレストが第1の支持高さ位置より高い位置へと上げられる移動によって押圧機能する状態に切り換えられる構成となっている。
【0010】
この第2の発明によれば、背丈の高い着座者の背部を押圧する場合には、背丈の低い着座者の背部を押圧する場合と比べると、より高い位置での押圧が有効的となる。したがって、背丈の低い着座者には押圧機能しないが、背丈の高い着座者には押圧機能する高い位置に少なくとも一つの特定の押圧部材が配設されていることにより、着座者の体格に合わせた背部の押圧を、より適切に行うことができる。
【0011】
次に、第3の発明は、上述した第2の発明において、ヘッドレストの着座者の頭部を支持する前面側の支持面部は、下方側に延び出して形成されている。この支持面部は、ヘッドレストが第1の支持高さ位置まで下げられた状態時には、シートバックの背凭れ面の前面側に覆い被されるようになっている。そして、支持面部が前面側に覆い被されるシートバックの高さ領域部分に、少なくとも一つの特定の押圧部材が配設されている。
【0012】
この第3の発明によれば、ヘッドレストの前面側の支持面部が下方側に延び出して形成されていることにより、背丈の低い者から高い者まで、より広範囲にわたって、様々な背丈の着座者の背部と頭部とを後方側から支えられるようになる。そして、ヘッドレストが第1の支持高さ位置まで下げられた状態時に、その支持面部によって覆い被されるシートバックの高さ領域部分に少なくとも一つの特定の押圧部材が配設されていることにより、ヘッドレストの支持面部が特定の押圧部材によって誤って押圧されてしまうことがなく、特定の押圧部材を合理的に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1〜図9を用いて説明する。この車両用シート1は、図1に示されるように、着座部となるシートクッション2と、背凭れとなるシートバック4と、頭受けとなるヘッドレスト6とを有し、更に、着座者の背部を押圧するマッサージ手段10を備えている。シートクッション2及びヘッドレスト6は、公知の構成である。シートバック4は、その背凭れ面に、マッサージ手段10を構成するマッサージ部材12を備えている。
【0015】
このマッサージ部材12は、図2に示されるように、十個のマッサージ部材12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i,12jによって構成されている。ここで、マッサージ部材12が本発明の押圧部材に相当する。そして、このマッサージ部材12のうち、最上位箇所に配設された二個のマッサージ部材12i,12jが本発明の特定の押圧部材に相当する。
【0016】
図1に戻って、マッサージ手段10は、マッサージ部材12の他、マッサージ部材12を駆動するための駆動手段14を備えている。駆動手段14は、本実施形態では、シートバック4やシートクッション2とは別体で形成されており、チューブ16によってマッサージ部材12に接続されている。図2を参照して、シートバック4について説明する。本実施形態のシートバック4は、その上半部分が下半部分に対して前方側に折れ曲がることのできる中折れ変形可能な構成となっている。
【0017】
シートバック4は、その骨格をなすフレーム20と、クッション体を構成するパッド26と、これらを外側から覆い被せる面状のカバー28とを備える。フレーム20は、シートバック4の下半部分の骨格を成す下部フレーム20bと、シートバック4の上半部分の骨格をなす上部フレーム20aとを備える。上部フレーム20aは、その両サイドの下端部が、それぞれヒンジ25によって下部フレーム20bの両サイドの上端部に前後方向に回動可能に連結されている。
【0018】
上部フレーム20aは、金属パイプによってその両サイドの骨格枠が形成されており、この両サイドの骨格枠の上端部同士及び下端部同士がそれぞれ金属板によって連結されて剛固定されることにより、全体が四角枠形状に一体的に組まれて形成されている。そして、上部フレーム20aの上側の骨格枠部分には、ヘッドレスト6のステー7を固定可能なステー受け22が連結されて固定されている。
【0019】
一方、下部フレーム20bは、金属パイプによってその両サイドの骨格枠が形成されており、この両サイドの骨格枠の上端部同士が金属板によって連結されて剛固定されることにより、全体が逆U字形状に一体的に組まれて形成されている。この下部フレーム20bの両脚の下端部分は、それぞれ、図示しないリクライニング装置を介してシートクッション2の両サイドの骨格枠に連結されている。
【0020】
これにより、下部フレーム20bは、各リクライニング装置の作動によって、シートクッション2に対する背凭れ角度を固定した状態と、シートクッション2に対する背凭れ角度を調整可能な状態とに切り換えられるようになっている。
【0021】
ところで、前述した上部フレーム20aを下部フレーム20bに対して前後方向に回動可能に連結するヒンジ25は、シートバック4の背凭れ面側寄りの箇所に回動中心を備えて構成されている。そして、図示しないが、シートバック4の背面側寄りの箇所には、上部フレーム20aを中折れ回転させるための駆動装置が設けられている。これは、例えば、下部フレーム20bの背面部に上方側に向かってのびるように配されたボルトと、このボルトに螺合した状態で上部フレーム20aの背面部に連結された送りナットとから構成されており、ボルトを図示しない駆動手段によって軸回転させて送りナットを上下移動させる動きによって、上部フレーム20aを下部フレーム20bに対して中折れ駆動させたり元の姿勢に復帰させたりする構成のものである。
【0022】
フレーム20は、マッサージ部材12を弾性支持するための支持ばね24a,24b,24cを備える。支持ばね24a,24bは、上部フレーム20aに設けられており、上部フレーム20aの左右両サイドの骨格枠に跨って架け渡されている。また、支持ばね24cは、下部フレーム20bに設けられており、下部フレーム20bの左右両サイドの骨格枠に跨って架け渡されている。
【0023】
支持ばね24a,24b,24cは、それぞれ、その幅方向の中央部分が、シートバック4の背面側に折り曲げられて同背面側に張り出した形状に形成されており、シートバック4の背凭れ面側に向けて近づく方向と離れる方向とにそれぞれ弾性的に移動可能となっている。支持ばね24a,24b,24cの構造は特に限定されない。図2では、支持ばね24a,24b,24cは、複数のワイヤが組み合わされて形成されており、ワイヤの弾性変形に伴って弾性的に移動する。
【0024】
パッド26は、着座者をクッション感及びフィット感をもって受容する部材であり、背凭れ面となる側の部分に所定の厚みを有して、シートバック4の外形を形成可能な形状に形成されている。パッド26は、車両用のシートに使用される公知のパッド材料、例えば、軟質ウレタンの発泡体等よりなる。図2に示すように、本実施形態のパッド26は、背凭れ面側に複数の切れ込みが形成されており、この切れ込みによって、中央の本体部30と上部31と両サイドの側部32,33とに区画されている。
【0025】
本体部30は、シートバック4の下半部分のクッション体を構成し、上部31は、シートバック4の上半部分のクッション体を構成し、側部32,33は、シートバック4の高さ方向の全体にわたる両サイド部分のクッション体を構成する。上部31の上面には、ヘッドレスト6のステー7を挿入可能な一対の孔35が貫通して形成されている。そして、上部31及び本体部30の背凭れ面には、マッサージ部材12が内部に配される複数の穴37が左右一対となって高さ方向に複数並んで貫通して形成されている。
【0026】
穴37は、マッサージ部材12が配される位置に設けられる。本実施形態では、穴37は、パッド26の縦中心ラインからそれぞれ左右に25〜30mm離れた位置に左右対称に設けられており、上部31に高さ方向に二組(計四個)、本体部30に高さ方向に三組(計六個)がそれぞれ設けられている。各穴37は、内径60mmの略円形の断面を有しており、これらの中心は、パッド26の縦中心ラインからそれぞれ左右に50〜60mm離れた位置にある。
【0027】
カバー28は、パッド26の表面を被覆する布状部材で、図2に示すように、概ねパッド26の外面に沿う形状に形成されている。カバー28は、公知の構成でよく、例えば、種々の織布、編布、フィルム等より成る複数のパーツを縫合、溶着等によって結合一体化することで形成される。図2に示すように、フレーム20の支持ばね24a,24b,24cには、マッサージ部材12が取り付けられる。
【0028】
具体的には、上部フレーム20aに設けられた上側の支持ばね24aには、二個のマッサージ部材12i,12jが取り付けられた上部ベースプレート43aが取り付けられて弾性支持されている。これらマッサージ部材12i,12jには、それぞれ、ガスを導入可能なホース41が連結されている。また、その下の支持ばね24bには、二個のマッサージ部材12a,12bが取り付けられた上部ベースプレート43bが取り付けられて弾性支持されている。これらマッサージ部材12a,12bにも、それぞれ、ガスを導入可能なホース41が連結されている。
【0029】
また、下部フレーム20bに設けられた支持ばね24cには、六個のマッサージ部材12c,12d,12e,12f,12g,12hが取り付けられた下部ベースプレート43cが取り付けられている。これらマッサージ部材12c,12d,12e,12f,12g,12hにも、それぞれ、ガスを導入可能なホース41が連結されている。なお、マッサージ部材12は、一個ずつが個々に一個ずつのベースプレートに取り付けられるようになっていてもよい。
【0030】
各ベースプレート43a,43b,43cは、樹脂やファイバーボード、金属など公知の材料で形成される。各ベースプレート43a,43b,43cは、金具によるクランプやワイヤの巻き付けなど、公知の方法で支持ばね24a,24b,24cに固定される。図2に示す本実施形態では、マッサージ手段10の一部として振動手段47を備える。振動手段47は、公知の振動発生装置、いわゆるバイブレータとすることができ、典型的には、電動式を用いる。
【0031】
振動手段47は、支持ばね24cに対して下部ベースプレート43cと同様の方法で固定可能な振動手段用ベースプレート48を介して固定されて弾性支持される。これにより、振動手段47によって発生する振動を、下部ベースプレート43cに固定される三組のマッサージ部材12c,12d,12e,12f,12g,12hに伝達可能となっている。シートバック4は、マッサージ部材12が取り付けられた各ベースプレート43a,43b,43cや振動手段47が取り付けられた振動手段用ベースプレート48をフレーム20に固定し、パッド26及びカバー28をフレーム20に組み付けることで組み立てられる。
【0032】
次に、図3,4を参照して、マッサージ部材12の一実施例について説明する。マッサージ部材12は、ガスを収容する収容体50と、ホース41と収容体50とを連結する連結具60とを備える。収容体50は、少なくともガスの吸引及び排出によって所定方向において伸縮し、且つこの伸縮方向に、それ自体が弾性変形可能に形成されている部材である。本実施形態では、底部50a及び蓋部50bを有する円筒形の容器に形成されており、周面が蛇腹状に形成されている。
【0033】
この周面の蛇腹構造により、収容体50は、円筒の軸線方向に弾性変形可能である。また、この蛇腹構造により、収容体50は、ガスが収容体50の内部に供給されることで円筒の軸線方向に伸長可能、且つ収容体50内のガスが排出されることで円筒の軸線方向に収縮可能に形成されている。図4に示すように、収容体50の底部50aから下方に突出して、開口部52と係止部54とが設けられている。
【0034】
開口部52は、収容体50の内部と連通する開口を備える部位である。本実施形態では、収容体50の底部50aから下方へ向かって径が小さくなる円錐台状部分と、円錐台状部分の下部から収容体50の半径方向外側に向かって延びる円管状部分とを有する形状に形成されている。開口部52は全体が中空に形成されている。開口部52の円錐台状部分は、外面に収容体50の底部50aに向かって放射状に延びる肉厚の補強部分を備える。
【0035】
係止部54は、収容体50の底部50aから図示下方側に突出する中実の柱状部分と、柱状部分の下端に、柱状部分より大径の半球状に形成されたかさ部分とを備える。係止部54は、特に図示しないが、図2に示す各ベースプレート43a,43b,43cに形成された穴に圧入されることで各ベースプレート43a,43b,43cに係止する。この係止により、マッサージ部材12が各ベースプレート43a,43b,43cに固定される。
【0036】
連結具60は、一端が収容体50の開口部52の開口に気密状態で連結され、他端が図2に示すホース41の開口に気密状態で連結される部材である。連結具60の形状は、特に限定されず、種々の構成とすることができる。本実施形態では、連結具60は、収容体側直管部61と、収容体側直管部61の端部からほぼ垂直に延びる起立管部63と、起立管部63の端部から起立管部63に対して垂直に延びるホース側直管部65とを備える。
【0037】
収容体側直管部61は、図4に示すように収容体50の開口部52に連結されて収容体50より水平方向外側まで延びる長さに形成されている。また、図示しないが、収容体側直管部61の内部には、収容体50の開口部52に気密状態で取り付けできるように凹凸形状が付与されている。ホース側直管部65は、図3〜図4に示すようにホース41の開口に気密状態で取り付けられる凹凸形状をその外周面に備えている。
【0038】
また、ホース側直管部65は、起立管部63に対して起立管部63の軸線を中心に回転自在に設けられている。この連結具60は、収容体側直管部61が収容体50の開口部52に取り付けられた状態で起立管部63が収容体50の蓋部50b側に向かって延びるように取り付けられることが好ましい。このとき、図2に示すようにホース41を各ベースプレート43a,43b,43cの背凭れ面側に配して連結具60のホース側直管部65に連結することができる。
【0039】
また、ホース側直管部65が回転自在に設けられることで、ホース41の取り回しの自由度が向上されている。マッサージ部材12は、開口部52に連結具60が取り付けられ、連結具60にホース41が取り付けられ、さらに、図2に示すコネクタ45を介して、ホース41が図1に示すチューブ16に連結されて、駆動手段14に接続される。駆動手段14は、マッサージ部材12にガス、典型的にはエアを供給可能なポンプを有する。
【0040】
また、駆動手段14には、ポンプからマッサージ部材12へガスを導入可能、且つマッサージ部材12のガスを排出可能な弁、例えば三方弁と、ポンプ及び三方弁を制御する制御手段とを備える。マッサージ部材12におけるガスの吸入、排出状態は、任意の方法で制御されれば良い。例えば、マッサージ部材12ごとに独立して制御されても良いし、左右一組ずつを一括して制御し、上下方向については個別に制御可能とされても良い。
【0041】
ここで、マッサージ部材12の背凭れ面側の端部、すなわち、本実施形態では収容体50の蓋部50bは、パッド26の各穴37の背凭れ面における内径に沿う形状に形成されていることが好ましい。この場合、マッサージ部材12とパッド26との間の隙間を小さくでき、着座者が感じる隙間による違和感を抑制することができる。また、マッサージ部材12の背凭れ面側の端部をより大きく形成することができ、マッサージ部材12の尖った感触を着座者に与えることを良好に抑制することができる。
【0042】
なお、マッサージ部材12及びパッド26の穴37の形状は特に限定されず、穴37の断面形状とマッサージ部材12の背凭れ面側の端部の形状は、必ずしも一致しない。例えば、各穴37の形状を円形にした場合、マッサージ部材12は、五角形、六角形などの多角形に形成したり、星型や、波線部分を備える形状に形成したりすることができる。また、上記とは逆に、多角形や波線部分を含む形状に形成された各穴37の内部に、これら穴37の形状に内接する断面形状に形成されたマッサージ部材12を設ける構成としても良い。
【0043】
本実施形態のマッサージ部材12の背凭れ面側の端部、すなわち蓋部50bは、図3〜5に示すように各穴37の背凭れ面側の形状にほぼ等しい外径を有する。すなわち、マッサージ部材12の背凭れ面側の端部は、パッド26の各穴37の背凭れ面における断面積にほぼ等しい表面積を有することが好ましい。一例として、例えば、各穴37の断面積に対して90%以上100%以下の表面積を有する。
【0044】
すなわち、マッサージ部材12の背凭れ面側の端部は、伸縮方向の投影図においてほぼ各穴37の内径に沿う形状を有し、伸縮方向における凹凸が比較的小さい形状であることが好ましい。また、マッサージ部材12の背凭れ面側の端部の大きさは、特に限定されないが、いわゆる手のひらマッサージにおける接触面に相当する大きさが好ましい。この大きさであると、背凭れ時の違和感、特に先鋭感を解消できるとともに、有効なマッサージが可能となる。
【0045】
具体的には、マッサージ部材12の背凭れ面側の端部は、直径30mm以上の大きさであることが好ましく、直径40mm以上70mm以下の大きさがより好ましい。シートバック4の自然状態における様子を図5に示す。シートバック4の背凭れ面は、カバー28が張設されることで、滑らかな曲面を備える形状に形成されている。このとき、パッド26は、カバー28の張設によって収縮した他は、自然状態を維持している。
【0046】
また、マッサージ手段10のマッサージ部材12は、概ね自然状態でカバー28に接触するか、カバー28より後退して位置する。また、車両用シート1に着座者が座り込んだ状態におけるシートバック4の様子を図6に示す。このとき、パッド26及びマッサージ部材12は、着座者の背中によって受ける圧力に合わせて変形する。パッド26の背凭れ面とマッサージ部材12の最突出面は、それぞれ、着座者の背面に沿う同一面上に位置している。
【0047】
パッド26と同様にマッサージ部材12が弾性変形することにより、マッサージ部材12の着座者の背部への当たりを和らげることができ、違和感が生じにくい。特に、マッサージ部材12の弾性変形態様がパッド26に近似していると、違和感を少なく、あるいは解消することができる。なお、図6では、上部フレーム20aに取り付けられた二組のマッサージ部材12i,12j,12a,12b及びその周辺に、着座者の身体が接していないため、この二組のマッサージ部材12i,12j,12a,12bは、自然状態を維持している。
【0048】
この状態で、マッサージ手段10を作動させることにより、着座者の背部をマッサージすることができる。ここで、ヘッドレスト6は、その着座者の頭部を支持する前面側の支持面部6aが、下方側に延び出した鞍型形状に形成されている。そして、ヘッドレスト6は、図6〜図7に示されるように、ステー7のシートバック4に対する差込量を変化させることにより、シートバック4に対する取り付け高さ位置を、着座者の背丈に合わせて上下変動させられるようになっている。
【0049】
ここで、上記した支持面部6aは、図6に示されるように、ヘッドレスト6が下限位置(本発明の第1の支持高さ位置に相当する。)まで下げられた状態時には、シートバック4の背凭れ面の前面側に覆い被された状態となって、シートバック4内の最上位箇所に配設されたマッサージ部材12i,12jの前面側位置に配されるようになっている。これら最上位箇所に配されたマッサージ部材12i,12jは、ヘッドレスト6が下限位置まで下げられて使用される背丈の着座者に対して、その想定される背丈の高さ位置から上方側に外れた高さ位置に配設されており、このような背丈の着座者に対してはマッサージ機能(押圧機能)しない配置構成となっている。
【0050】
しかし、上記した支持面部6aは、図7に示されるように、ヘッドレスト6が下限位置から持ち上げられて、前述した最上位箇所に配設されたマッサージ部材12i,12jよりも上方側の高さ位置まで位置上げされることにより、マッサージ部材12i,12jが膨張展開しても干渉することのない退避移動した位置状態となる。ここで、上記した最上位箇所に配設されたマッサージ部材12i,12jは、このようにヘッドレスト6が持ち上げられた位置で使用される背丈の着座者の背部にマッサージを行うことを想定した位置に配置されている。
【0051】
そして、これに伴って、本実施形態では、図6に示されるように、これら最上位箇所に配設されたマッサージ部材12i,12jは、ヘッドレスト6が下限位置まで下げられた状態で使用される時には、駆動手段14及び制御手段によってガスが供給されず伸長しないように制御されるようになっている。そして、図7に示されるように、ヘッドレスト6が下限位置から上げられた状態で使用される時には、駆動手段14及び制御手段によってマッサージ部材12i,12jにガスが供給されて伸長運動できるように制御されるようになっている。
【0052】
この、ヘッドレスト6の高さ位置に応じてマッサージ部材12i,12jへのガスの供給を行えるようにしたり遮断したりする切り換えは、ヘッドレスト6と一体的となって上下移動するステー7の高さ位置を検出可能なホールICを設けて、このホールICによって検出された信号が制御手段に送られることによって行わされるようになっている。
【0053】
駆動手段14及び制御手段によってマッサージ部材12にガスを供給することで、例えば、図6〜図7に想像線で示すようにマッサージ部材12を伸長させることができる。この伸長圧力によって、着座者の背部を押圧してマッサージすることができる。また、制御手段によってマッサージ部材12中のガスを排出させることにより、マッサージ部材12を収縮させて、伸長時より低い押圧にしたり、着座者の背部から離間させたりすることができる。
【0054】
また、ガスの吸排出をくり返すことで、押圧状態と非押圧状態とをくり返すことができ、マッサージすることができる。また、振動手段47を作動させることにより、下部ベースプレート43cを介して三組のマッサージ部材12c〜12hを振動させることができる。振動手段47が作動しているときは、マッサージ部材12c〜12hを着座者の背部に押し当てることで、押圧に加えて振動をも付与したマッサージができる。
【0055】
この車両用シート1では、マッサージ手段10の着座者を押圧する部分が着座者の体重による加圧によって弾性変形し、マッサージ時には、パッド26を介さず着座者の背部に作用する。したがって、着座状態における違和感が軽減されるにもかかわらず、マッサージ時の効果はより高く保たれている。また、マッサージ部材12の背凭れ面側の端部、すなわち蓋部50bがパッド26の穴37の背凭れ面側の内径にほぼ等しい形状を有し、蓋部50bが直径30mm以上の大きさに形成されることにより、マッサージ部材12の尖った感触が軽減されており、違和感がより良好に軽減されている。
【0056】
一方、蓋部50bの大きさが人間が手のひらでマッサージするときの押圧面に近い大きさ、形状を有するため、マッサージ時には、マッサージとして機能的な押圧を提供することができる。特に、本実施形態のマッサージ部材12は、図4に示すように、背凭れ面側の端部、すなわち蓋部50bは、ほぼ円板に形成されており、自然状態(図4の中央の状態)ではその周縁がテーパになって少し後退している。
【0057】
そして、弾性変形、あるいはガスの排出によって収縮した状態(図4の右側の状態)では、テーパ部分の頂面に対する傾斜がより小さくなってほぼ平面になる。したがって、マッサージ部材12が加圧、すなわち着座者に押し当てられた状態では、マッサージ部材12の端部の面積はより大きくなり、違和感が軽減されている。一方、ガスの吸入によって伸長した状態(図4の左側の状態)では、テーパ部分の頂面に対する傾斜角が大きくなり、マッサージ部材12はより滑らかな弧を描いて背凭れ面より突出する。
【0058】
したがって、マッサージ機能を利用した際にマッサージ部材12の端縁が尖り出ることが抑制されており、マッサージ部材12が着座者に食い込むことが回避されるようになっている。なお、本実施形態の車両用シート1は、適宜、図8に示すようにシートバック4を後方にリクライニングさせたり、図9に示すようにリクライニングの上、中折れさせたりした状態にすることができる。
【0059】
これらの状態においても、マッサージ部材12によって着座者のマッサージをすることが可能である。シートバック4のリクライニングや中折れにより、図6や図7に示す状態のときとは異なる部分にマッサージ部材12を押し当てることができ、所望のマッサージを得ることができる。特に、図9に示す中折れ状態では、着座者が上半部分を前に浮かした姿勢となっていても、上方部のマッサージ部材12a,12b(ヘッドレスト6を上げた状態では、マッサージ部材12a,12b及びマッサージ部材12i,12j)を着座者の肩部に真っ直ぐに当てがえて、マッサージを効率よく行うことができる。
【0060】
このように、本実施例の車両用シート1では、ヘッドレスト6の支持高さ位置が上げられる移動によって、この支持高さ位置に対応する背丈の着座者の背部に押圧機能可能な状態となる位置に配置された特定のマッサージ部材12i,12j(特定の押圧部材)が押圧機能する状態に切り換えられる。これにより、着座者の背部を押圧する機能部位を、着座者の体格に合わせて変えることができる。
【0061】
また、背丈の高い着座者の背部を押圧する場合には、背丈の低い着座者の背部を押圧する場合と比べると、より高い位置での押圧が有効的となる。このように、背丈の低い着座者には押圧機能しないが、背丈の高い着座者には押圧機能する高い位置にマッサージ部材12i,12jが配設されていることにより、着座者の体格に合わせた背部の押圧を、より適切に行うことができる。
【0062】
また、ヘッドレスト6の前面側の支持面部6aが下方側に延び出して形成されていることにより、背丈の低い者から高い者まで、より広範囲にわたって、様々な背丈の着座者の背部と頭部とを後方側から支えられるようになる。そして、ヘッドレスト6が下限位置まで下げられた状態時に、その支持面部6aによって覆い被されるシートバック4の高さ領域部分にマッサージ部材12i,12jが配設されていることにより、ヘッドレスト6の支持面部6aがこれらマッサージ部材12i,12jによって誤って押圧されてしまうことがなく、マッサージ部材12i,12jを合理的に配置することができる。
【0063】
本発明に係る車両用シートは、上記実施形態に限定されない。車両用シートは、助手席用シートや、中間席用シートの他、後部座席用のシート、あるいは、運転席用シートであっても良い。また、中折れしないタイプのシートであっても良いことはもちろんである。
【0064】
マッサージ手段におけるマッサージ部材は、背凭れ面の所望の位置に所望の数だけ設けることができる。好ましくは、本実施形態のように、シートバック4の縦中心線に対して左右対称となるように設ける。また、マッサージ部材は、上記実施形態では、各押圧部分につき一つずつ設けられていたが、マッサージ部材を二箇所以上の部分で背凭れ面とその反対方向に向かって伸縮可能な部分を設けることにより、一つのマッサージ部材で複数の押圧部分を形成してもよい。この場合、各押圧部分の背凭れ面側の端部が、上述の条件を満たすことが好ましい。
【0065】
マッサージ部材の構成は、上記実施形態に限定されず、種々の構成とすることができる。例えば、マッサージ部材をシリンダとシリンダ内を移動するピストンと、シリンダとピストンとの間に設けられる弾性部材、例えば、コイルばねやゴムボールとで構成することができる。この構成では、弾性部材によってシリンダに対してピストンが弾性移動可能に設けられる。
【0066】
また、シリンダとピストンとの間、あるいは、ゴムボールの内部にガスを吸入、排出可能に形成して、ガス圧でピストンを移動させることで伸縮可能な構成とすることができる。あるいは、マッサージ部材を背凭れ面側に位置するガス袋とガス袋を背凭れ面と反対側から指示するコイルばね、板ばね、ゴムなどの弾性部材とで構成することもできる。この場合、弾性部材によって弾性変形可能に形成されるとともに、ガス袋がガスを吸引、排出することで、背凭れ面に向かって伸縮可能とされる。
【0067】
いずれの構成においても、本発明における好ましいマッサージ部材の構成は、弾性変形部分と、ガスの吸引排出によって伸縮する部分とが同じである構成である。この構成では、ガスの排出、すなわちマッサージ部材中に負圧を作ることによって、マッサージ部材を弾性変形における圧縮状態よりもさらに収縮させることが可能である。したがって、マッサージ時に、着座者の背部を押圧する状態と押圧しない状態とを形成することができ、より効果的なマッサージが可能となる。
【0068】
また、ヘッドレストの高さ位置が下限位置から上げられる移動によって、ヘッドレストが下限位置にあった場合にはマッサージ機能できるようになっていたマッサージ部材(特定の押圧部材)が、マッサージ機能しない状態に切り換えられる構成となっていてもよい。これにより、例えば、マッサージ部材を高さ方向や幅方向に多数分布させて、比較的背丈の低い着座者にマッサージを行う場合と、比較的背丈の高い着座者にマッサージを行う場合とで、それぞれの体格における腰部位置や肩部位置を想定した位置に配置されたマッサージ部材を適宜機能させるように切り換えられる構成として応用して実施することもできる。
【0069】
また、上記実施例では、本発明のヘッドレストの第1の支持高さ位置として、ヘッドレストがその高さ調整領域における下限位置まで下げられた状態の位置としたものを示したが、これよりも高い位置に設定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る車両用シートの一実施の形態の概略図である。
【図2】シートバックの分解斜視図である。
【図3】マッサージ部材の斜視図である。
【図4】マッサージ部材の通常の状態、伸長状態及び収縮状態を示す平面図である。
【図5】シートバックの側断面図である。
【図6】車両用シートに背丈の低い着座者が着座した時の状態を表した側面図である。
【図7】車両用シートに背丈の高い着座者が着座した時の状態を表した側面図である。
【図8】シートバックをリクライニングさせたときのシートバックの縦断面図である。
【図9】シートバックをリクライニングさせ、さらに中折れさせたときのシートバックの縦断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 車両用シート
2 シートクッション
4 シートバック
6 ヘッドレスト
6a 支持面部
7 ステー
10 マッサージ手段
12,12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h マッサージ部材(押圧部材)
12i,12j マッサージ部材(特定の押圧部材)
14 駆動手段
16 チューブ
20 フレーム
20a 上部フレーム
22 ステー受け
20b 下部フレーム
24a,24b,24c 支持ばね
25 ヒンジ
26 パッド
28 カバー
30 本体部
31 上部
32,33 側部
35 孔
37 穴
41 ホース
43a,43b 上部ベースプレート
43c 下部ベースプレート
45 コネクタ
47 振動手段
48 振動手段用ベースプレート
50 収容体
50a 底部
50b 蓋部
52 開口部
54 係止部
60 連結具
61 収容体側直管部
63 起立管部
65 ホース側直管部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックに着座者の背部を押圧することのできる複数の押圧部材が設けられた車両用シートであって、
前記シートバックの上部には着座者の頭部を後方側から支持するヘッドレストが配設されており、該ヘッドレストは着座者の頭部を支持する支持高さ位置を着座者の背丈に合わせて上下変動させられるようになっており、該ヘッドレストの支持高さ位置が変えられる移動によって、この支持高さ位置によって想定される着座者の背丈に応じて要否が特定される少なくとも一つの押圧部材が押圧機能する状態或いは押圧機能しない状態に切り換えられる構成となっていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記着座者の背丈に応じて要否が特定される少なくとも一つの押圧部材は前記ヘッドレストを第1の支持高さ位置以下の高さ領域で使用する背丈の着座者に対して押圧機能する想定の高さ位置から上方側に外れた高さ領域に配設されており、該少なくとも一つの押圧部材は前記ヘッドレストが第1の支持高さ位置以下の高さ領域まで下げられた状態時には押圧機能しない状態とされるが、該ヘッドレストが第1の支持高さ位置より高い位置へと上げられる移動によって押圧機能する状態に切り換えられる構成となっていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートであって、
前記ヘッドレストの着座者の頭部を支持する前面側の支持面部は下方側に延び出して形成されており、該支持面部は前記ヘッドレストが第1の支持高さ位置まで下げられた状態時には前記シートバックの背凭れ面の前面側に覆い被されるようになっており、該支持面部が前面側に覆い被されるシートバックの高さ領域部分に前記少なくとも一つの特定の押圧部材が配設されていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−76611(P2010−76611A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247533(P2008−247533)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】