説明

車両用シート

【課題】乗員が着座するシート構成部の側部にテーブルを具備する車両用シートにおいて、このテーブルが具備される着座シートの後側に設けられた後席の着座者にとっても、この着座シートの側部に配設されるテーブルを容易に利用できるものとする。
【解決手段】クッションフレーム27に固定されるレッグ部41とトレイ部31との間には、シートクッション26に対してトレイ部31を相対的にスライド移動させるスライド機構50が配設されている。スライド機構50には、ロアレール51含むレッグ部41に対するトレイ部31の移動範囲のいずれかの位置に保持するロック機構60が設けられている。このスライド機構50によりトレイ部31をシートクッション26に対して前後方向にスライド移動でき、ロック機構60によりトレイ部31を、移動範囲のいずれかの位置に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両内に設置される車両用シートに関し、詳しくは、乗員が着座するシート構成部の側部にテーブルを具備する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両内に設置される車両用シートにあっては、乗員が着座するシート構成部の側部にテーブルが設けられるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このテーブルは、運転席と助手席を隔てる部分に配置されるように設けられ、飲み物や小物を置くことができるようになっている。このため、このテーブルは、運転席の着座シートの助手席側の側部に設けられるものとなっており、運転席のクッションフレームに対して配設されるものとなっている。具体的には、このテーブルは、概略、物を載置可能に形成されるトレイ部と、クッションフレームに支持されるとともにトレイ部を支持するレッグ部とを備える。このレッグ部は、下部がクッションフレームに支持されるように構成されており、上部がトレイ部の下面側を支持するように構成されている。また、このレッグ部は、テーブルを使わない場合には、折畳みできる構造にて構成されており、テーブルを使いたい場合には、レッグ部を延ばした展開状態としてトレイ部を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−214798
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したテーブルにあっては、運転席と助手席を隔てる部分に位置するように運転席のクッションフレームに対して配設されているため、運転席に着座する者にとっては利用し易いものとなっている。
しかしながら、運転席の後側の後席に着座する乗員が、このテーブルに飲み物や小物を置こうとすると、姿勢を大きく前のめりとなるようにしなくてはならず、このテーブルを利用しづらいものとなっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、乗員が着座するシート構成部の側部にテーブルを具備する車両用シートにおいて、このテーブルが具備される着座シートの後側に設けられた後席の着座者にとっても、この着座シートの側部に配設されるテーブルを容易に利用できるものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するにあたって本発明に係る車両用シートは次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車両用シートは、乗員が着座するシート構成部の側部において該シート構成部に一体的に配設されるテーブルを具備する車両用シートであって、前記テーブルは、物を載置可能に形成されるトレイ部と、前記シート構成部に支持されることにより前記トレイ部を支持する支持ベース部とを備え、前記トレイ部と前記支持ベース部との間には、該支持ベース部に対して該トレイ部を相対的にスライド移動可能なスライド機構が配設されていることを特徴とする。
【0007】
この第1の発明に係る車両用シートによれば、スライド機構によりトレイ部を支持ベース部に対して相対的にスライド移動させることによって、例えばシート構成部に対してトレイ部を前後方向にスライド移動できるようになるので、この車両用シートの後側の後席に向けてトレイ部を接近させることができることとなる。これによって、後席の着座者が前席のテーブルのトレイ部に飲み物や小物を載せたい場合であっても、このトレイ部は後席に近い位置となるので、この後席の着座者が大きく前のめりとなるような無理な姿勢をとらずとも、テーブルのトレイ部に飲み物や小物を載せることができる。もって、テーブルが具備される着座シートの後側に設けられた後席の着座者にとっても、この着座シートの側部に配設されるテーブルを容易に利用することができるようになる。
【0008】
第2の発明に係る車両用シートは、前記第1の発明に係る車両用シートにおいて、前記スライド機構には、前記支持ベース部に対する前記トレイ部の移動範囲のいずれかの位置に保持するロック機構が設けられており、前記トレイ部の前部および後部のそれぞれには、前記ロック機構による前記支持ベース部に対する前記トレイ部の位置の保持を解除操作するレバー操作部が配設されており、前記レバー操作部による解除操作は、前記トレイ部を引っ張る方向に沿って設定されていることを特徴とする。
この第2の発明に係る車両用シートによれば、スライド機構には、支持ベース部に対するトレイ部の移動範囲のいずれかの位置に保持するロック機構が設けられているので、この支持ベース部に対してトレイ部を任意の位置にて保持することができる。これによって、トレイ部の位置を保持することができるので、飲み物や小物を安定的に載せて置くことができる。加えて、この第2の発明に係る車両用シートによれば、トレイ部の前部および後部のそれぞれにはレバー操作部が配設されており、これらのレバー操作部による解除操作はトレイ部を引っ張る方向に沿って設定されているので、レバー操作部の解除操作とトレイを引っ張る動作とを一連の引き動作とすることができる。つまり、後席の着座者がトレイ部に飲み物や小物を載せようとしてトレイ部を後席に向けて接近させるように引っ張り動作を行うにあたっては、トレイ部の後部のレバー操作部にて解除操作を行うに連ねて、トレイ部を後席に向けて接近させる引っ張り動作を行うことができる。また反対に、前席の着座者(例えば運転者)がトレイ部を前席に向けて接近させるように引っ張り動作を行うにあっても、トレイ部の前部のレバー操作部にて解除操作を行うに連ねて、トレイ部を前席に向けて接近させる引っ張り動作を行うことができる。
これによって、支持ベース部に対するトレイ部の相対位置を変更するにあたっての操作性を向上させることができる。
【0009】
第3の発明に係る車両用シートは、前記第1または前記第2の発明に係る車両用シートにおいて、前記スライド機構は、前記支持ベース部側に配設されるロアレールと、前記トレイ部側に配設されるアッパレールとを備え、前記ロアレールのスライド移動方向の長さは、前記アッパレールのスライド移動方向の長さとと比較して短く設定されていることを特徴とする。
この第3の発明に係る車両用シートによれば、スライド機構は、支持ベース部側に配設されるロアレールとトレイ部側に配設されるアッパレールとを備え、ロアレールのスライド移動方向の長さは、アッパレールのスライド移動方向の長さとと比較して短く設定されているので、アッパレールが配設されるトレイ部にてロアレールに形成されるレール構造を目隠しすることができる。
これによって、トレイ部をスライド移動させた場合であってもロアレールのレール構造を見せることがなくなるので、すっきりとした外観として外観意匠を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る車両用シートによれば、テーブルが具備される着座シートの後側に設けられた後席の着座者にとっても、この着座シートの側部に配設されるテーブルを容易に利用することができる。
第2の発明に係る車両用シートによれば、支持ベース部に対するトレイ部の相対位置を変更するにあたって操作性に優れたものとすることができる。
第3の発明に係る車両用シートによれば、トレイ部をスライド移動させた場合であってもロアレールのレール構造を見せることがなくなるので、すっきりとした外観として外観意匠を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両内部の車両前席と車両後席とを示す側面視図である。
【図2】車両内部の車両前席と車両後席とを示す斜視図である。
【図3】組付け状態のテーブルを拡大して示す斜視図である。
【図4】分解状態のテーブルのトレイ部を示す斜視図である。
【図5】分解状態のテーブルのスライド機構の一部を示す斜視図である。
【図6】分解状態のテーブルのスライド機構の一部とレッグ部を示す斜視図である。
【図7】図3におけるVII−VII断面矢視を示すテーブルの断面図である。
【図8】図3におけるVIII−VIII断面矢視を示すテーブルの断面図である。
【図9】ロアレールの収容底部に収容されるロック機構を示す上面図である。
【図10】相対位置保持状態にあるロック機構を上面視した場合の上面図である。
【図11】相対位置解除状態にあるロック機構を上面視した場合の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用シートを実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、車両内部11の車両前席20と車両後席70とを示す側面視図である。図2は、車両内部11の車両前席20と車両後席70とを示す斜視図である。
図1および図2に示すように、自動車10の車両内部11には、車両前席20と車両後席70とが設けられている。なお、図2においては、車両前席20の図示左側が運転席21であり、車両前席20の図示右側が助手席22である。なお、図2に示すように、運転席21と助手席22とは分離した単体同士で構成されているため、これら運転席21と助手席22との間には単体同士(独立シート)にて隔てられる空間が形成されている。これに対し、車両後席70は、運転席21および助手席22のように隔てた構成となっておらず、連なるシート(ベンチシート)にて構成されている。
図1に示すように、この運転席21と助手席22との間の隔てた空間には、次に説明するテーブル30が配置されるものとなっている。また、図2にも示すように、このテーブル30は、車両後席70側に向けてスライド移動できるように構成されている。
このテーブル30は、乗員としての運転者が着座する運転席21を構成する車両用シート25に具備される。車両用シート25は、概略、運転者が着座する座としてのシートクッション26と、このシートクッション26に運転者が着座した場合の背凭れとなるシートバック28とを備える。なお、シートバック28には、運転者が着座した場合の頭凭れとなるヘッドレスト29が設けられている。
これらシートクッション26およびシートバック28は、本発明に係る乗員が着座するシート構成部に相当するものであり、それぞれには骨組みをなすシートクッションフレーム(図1に示す符号27参照)およびシートバックフレーム(不図示)が内蔵されている。ここで、このシート構成部としてのシートクッション26の側部においては、このシートクッション26の骨組みをなすシートクッションフレーム27に対して、一体的にテーブル30が配設されるものとなっている。
【0013】
テーブル30について説明する。
図3は、組付け状態のテーブル30を拡大して示す斜視図である。図4〜図6は、分解状態のテーブル30を上から順に分離して示す斜視図である。具体的には、図4は、分解状態のテーブル30のトレイ部31を示す斜視図である。図5は、分解状態のテーブル30のスライド機構50の一部(アッパレール55およびロック機構60)を示す斜視図である。図6は、分解状態のテーブル30のスライド機構50の一部(ロアレール51)およびレッグ部41を示す斜視図である。図7は、図3におけるVII−VII断面矢視を示すテーブル30の断面図である。図8は、図3におけるVIII−VIII断面矢視を示すテーブル30の断面図である。
図3に示すテーブル30は、図4〜図6に示すように、概略、トレイ部31と、レッグ部41と、ロック機構60を具備するスライド機構50とを備える。
トレイ部31は、物を載置可能に形成される樹脂成形品にて構成される。トレイ部31は、図3および図4に示すように、飲み物や小物を置くことができるように適宜の凹凸形状を有した上面視長方形の盆状にて形成される。具体的には、トレイ部31は、中央部分には載置部33が設けられており、この載置部33に対して前後位置にカップホルダ部35,37が設けられている。載置部33は、腕時計等の小物を載せて置くことができるように平面状に形成されている。この載置部33の周囲は、この載置部33に載せて置いた小物が転がり落ちてしまわないように、鉛直上側向きに突き出した壁状部34が形成されている。このため、載置部33に載せて置いた小物が転がることがあっても、この壁状部34にて転がりを阻止してトレイ部31から小物が落ちてしまうのを防止することができる。
この載置部33の前側位置には、前席用カップホルダ部35が設けられている。この前席用カップホルダ部35は、飲料用ペットボトル等の飲み物を置いておくことができるように、飲み物形状に対応する窪み形状を有して形成されている。なお、この前席用カップホルダ部35は、運転席21および助手席22に着座する乗員にとって飲み物が置き易いようにトレイ部31のうち前端側に設けられているとともに、二本分の飲み物が置けるように二本分の窪み形状を有して設けられている。
これに対して、載置部33の後側位置には、後席用カップホルダ部37が設けられている。この後席用カップホルダ部37も、上記した前席用カップホルダ部35と同様に構成されるものであり、飲料用ペットボトル等の飲み物を置いておくことができるように、飲み物形状に対応する窪み形状を有して形成されている。なお、この後席用カップホルダ部37は、車両後席70に着座する乗員にとって飲み物が置き易いようにトレイ部31のうち後端側に設けられているとともに、二本分の飲み物が置けるように二本分の窪み形状を有して設けられている。
【0014】
レッグ部41は、本発明に係る支持ベース部に相当するものであり、スライド機構50の前後それぞれの位置に1つずつ設けられている。このレッグ部41は、シート構成部としてのシートクッションフレーム27に支持されることによりトレイ部31を支持するものである。なお、このレッグ部41のシートクッションフレーム27に対する取付け構造は、例えば上記した特許文献1にて開示されるような周知の構造が採用されており、詳細な説明については省略する。
図6〜図8に示すように、レッグ部41は、概略、鉛直脚部43と、折畳み脚部45とを備える。鉛直脚部43は、適宜ボルト締結されることにより上記したシートクッションフレーム27に対して固定設置される部分であり、図7等に示すように鉛直方向に延在する柱状にて形成されている。この鉛直脚部43の上端部は、後に説明するロアレール51の底面部に対して、ブラケット部44を介して回動可能に軸支連結されている。また、この鉛直脚部43の下端部は、次に説明する折畳み脚部45の下側支持リンク451の下端部を回動可能に軸支連結している。折畳み脚部45は、中間部分が節として機能するように、下側支持リンク451と上側支持リンク452とを回動軸支連結することにより構成される。具体的には、下側支持リンク451の下端部は鉛直脚部43の下端部に回動可能に軸支連結されるとともに、下側支持リンク451の上端部は上側支持リンク452の下端部を回動可能に軸支連結している。また、上側支持リンク452の上端部は、後に説明するロアレール51の底面部に対して、ブラケット部46を介して回動可能に軸支連結されている。このため、図示するように、テーブル30の使用時においては、折畳み脚部45を構成する下側支持リンク451と上側支持リンク452とは、直線状に連なる延在状態で配置されるものとなっており、上記したトレイ部31を支持することができる。これに対して、テーブル30の不使用時等においては、特に図示していないが、下側支持リンク451と上側支持リンク452との延在位置を交差させるように互いを配置して折畳み状態とすることができ、上記したトレイ部31を折畳み位置(図7における想像線に示す符号31)に位置させることができるようになっている。
【0015】
図7および図8に示すように、上記したトレイ部31とレッグ部41との間には、レッグ部41に対してトレイ部31を相対的にスライド移動させるためのスライド機構50が配設されている。このスライド機構50は、概略、図6に示すレッグ部41側に配設されるロアレール51と、図5に示すトレイ部31側に配設されるアッパレール55と、これらの相対位置を保持する図5に示すロック機構60とを備える。
具体的には、ロアレール51は、図6に示すように、長板を適宜に折曲加工することにより形成される。このロアレール51は、その中間部が適宜に凹状となる収容底部52として形成されており、この収容底部52の両側端が凹状に長さ方向に延びる雌レール部53,53として形成されている。収容底部52は、図7に示すように、ロック機構60を収容するように形成されている。雌レール部53,53は、図5に示すアッパレール55がロアレール51に対して相対的にスライド移動することができるように、アッパレール55の雄レール部57,57を収容することができるように形成されている。なお、このロアレール51の雌レール部53,53は、アッパレール55の雄レール部57,57に対応して、ロアレール51の両側部分に設けられている。このロアレール51は、上記した支持ベース部としてのレッグ部41に対して、ブラケット部44,46を介して不図示の螺子部材にて固定されるものとなっている。このため、このロアレール51は、本発明に係る支持ベース部の一部を構成することとなっている。なお、このように形成されるロアレール51のスライド移動方向の長さは、次に説明するアッパレール55のスライド移動方向の長さと比較して短く設定されている。
【0016】
アッパレール55は、図5に示すように、長板を適宜に折曲加工することにより形成される。このアッパレール55の中間部は、上記したトレイ部31を取り付けたり、後に説明するカム回転軸63を支持したりするための取付け部56として形成されている。この取付け部56には、適宜の螺子部材58により上記したトレイ部31が取り付けられる。また、取付け部56の両側端は、長さ方向に延びる雄レール部57,57として形成されている。この雄レール部57,57は、樹脂製のスライドピース59,59が取り付けられ、上記したロアレール51に設けられる雌レール部53,53に収容されるように形成されている。このスライドピース59,59は、雄レール部57,57の雌レール部53,53に対する滑りを良くするために設けられるものであり、適宜のグリースが塗布されている。なお、図7に示すように、このアッパレール55の雄レール部57,57は、ロアレール51の雌レール部53,53に対してスライドピース59,59を取り付けた状態で収容されるものとなっている。
【0017】
次に、上記したロアレール51に対するアッパレール55の相対位置を保持するロック機構60について説明する。図9は、ロアレール51の収容底部52に収容されるロック機構60を示す上面図である。図10は、相対位置保持状態にあるロック機構60を上面視した場合の上面図である。図11は、相対位置解除状態にあるロック機構60を上面視した場合の上面図である。
ロック機構60は、上記したロアレール51の収容底部52に収容されるものである。このロック機構60は、レッグ部41を含むロアレール51に対する移動範囲のいずれかの位置にて、トレイ部31を含むアッパレール55を保持するものである。このロック機構60は、概略、ロック機構本体61と、前側レバー操作部67および後側レバー操作部68)とを備える。なお、この前側レバー操作部67および後側レバー操作部68は、後に詳述するが、上記したトレイ部31の前部および後部のそれぞれに対応して設けられるものであり、ロック機構本体61によるロアレール51に対するアッパレール55の位置の保持を解除操作するためのものである。この解除操作により、レッグ部41に対するトレイ部31の位置の保持も解除されるものとなっている。
【0018】
ロック機構本体61は、図9〜図11に示すように、概略、一対の留め用カム62,62と、一対のカム回転軸63,63と、1つのカム付勢ばね64と、一対の操作前側リンク65と、一対の操作後側リンク66とを備える。
図10および図11に示すように、一対の留め用カム62,62は、幅方向中間部にて互いに線対称となるような対称形状を有して形成されて配設されている。この留め用カム62には、カム回転軸63を連結する軸連結孔(カム回転軸63の位置)が設けられている。また、この留め用カム62,62には、カム付勢ばね64の両端部641,641を取り付ける取付け部(両端部641,641の位置)が設けられている。このため、常態時の留め用カム62は、カム付勢ばね64の付勢力により留め用カム62の外周面621を収容底部52の内周面521に当てるように付勢されている。なお、このカム付勢ばね64の両端部641,641を取り付ける取付け部の位置は、カム回転軸63を連結する軸連結孔の位置と比較して前側に設けられており、カム付勢ばね64の幅方向に拡がる弾性復元力を利用して、留め用カム62,62同士を回転付勢している。また、この留め用カム62には、ピン部材651,661を介して操作前側リンク65と操作後側リンク66とを連結するリンク連結部(ピン部材651,661の位置)が設けられている。
一対のカム回転軸63,63は、上端側がアッパレール55の取付け部56にて回転可能に支持されるとともに下端側が留め用カム62,62を連結している。このため、この一対のカム回転軸63,63は、留め用カム62,62を回転可能に軸支持するものとなっている。
【0019】
1つのカム付勢ばね64は、弾性を有した金属棒状に形成されるものであり、上記したように両端部641,641が留め用カム62,62に取り付けられている。このカム付勢ばね64は、上記したように幅方向に拡がる弾性復元力により留め用カム62,62同士を回転付勢する。
一対の操作前側リンク65,65は、互いに同一の長細板状に形成され、互いに対称な位置に配設されている。この操作前側リンク65の後端側は、上記したようにピン部材651を介して留め用カム62に連結されている。また、この操作前側リンク65の前端側は、ピン部材652を介して次に詳述する前側レバー操作部67に連結されている。つまり、この操作前側リンク65,65は、回転可能に軸支持される留め用カム62,62に対して、前側レバー操作部67による解除操作を伝達する機能を有するリンクとして構成される。
一対の操作後側リンク66,66は、互いに同一の長細板状に形成され、互いに対称な位置に配設されている。この操作後側リンク66の前端側は、上記したようにピン部材661を介して留め用カム62に連結されている。また、この操作後側リンク66の後端側は、ピン部材662を介して次に詳述する後側レバー操作部68に連結されている。つまり、この操作後側リンク66,66は、回転可能に軸支持される留め用カム62,62に対して、後側レバー操作部68による解除操作を伝達する機能を有するリンクとして構成される。
【0020】
このように形成された留め用カム62の外周面621は、図10および図11に示すように、前側レバー操作部67あるいは後側レバー操作部68による解除操作を受けていない常態時と、前側レバー操作部67あるいは後側レバー操作部68による解除操作を受けた解除操作時とにおいて、収容底部52の内周面521に当接する相対位置保持状態となったり、あるいは収容底部52の内周面521に離間する相対位置解除状態となったりする。すなわち、留め用カム62は、図10に示す解除操作を受けていない常態時では外周面621が収容底部52の内周面521に当接するように、図11に示す解除操作を受けた場合では外周面621が収容底部52の内周面521から逃げて離間するように、回転中心となるカム回転軸63から外周面621までの径の長さは漸次変化するように形成されている。具体的には、図10に示す双方の留め用カム62,62のうち、カム回転軸63より前側に位置する外周面621,621部分については、カム回転軸63より後側に位置する外周面621,621部分と比較して外側に向けて膨出させるように、カム回転軸63から外周面621までの径の長さを長くして形成している。
この際、図10に示すように、留め用カム62の外周面621が収容底部52の内周面521に当たる場合には、これら外周面621と内周面521との間に生ずる摩擦力により、ロアレール51に対するアッパレール55の相対位置を保持する相対位置保持状態となる。これに対して、図11に示すように、留め用カム62の外周面621が収容底部52の内周面521から逃げて離間する場合には、これら外周面621と内周面521との間には摩擦力は生じないので、ロアレール51に対してアッパレール55を相対移動可能な相対位置解除状態となる。この相対位置解除状態となると、トレイ部31をロアレール51を含むレッグ部41(支持ベース部)に対して相対的にスライド移動させることができ、シートクッション(シート構成部)に対してトレイ部31を前後方向にスライド移動できることとなる。
【0021】
次に、上記したロック機構本体61によるロアレール51に対するアッパレール55の位置の保持を解除操作する前側レバー操作部67および後側レバー操作部68について説明する。
図10および図11に示すように、前側レバー操作部67の後端側は、ピン部材652,652を介して上記した操作前側リンク65,65の前端側と連結している。また、前側レバー操作部67の前端側は、上記したトレイ部31の前端部に沿って位置するように構成されている。つまり、前側レバー操作部67の前端は、適宜折曲されて手で把持可能な把持部671として形成されている。この前側レバー操作部67の前端となる把持部671は、図1に示すように、運転席21(20)に着座する運転者や助手席22(20)に着座する乗員にとって掴んで前側に引っ張ることができるように形成されている。つまり、前側レバー操作部67の解除操作は、トレイ部31を引っ張りたい前方向と一致する前側に向かって設定されている。この把持部671を把持して前側に引っ張ると、図10に示す前方向に前側レバー操作部67を移動させ、操作前側リンク65,65を前側に引っ張ることとなる。そうすると、カム付勢ばね64の付勢力に抗して、上記した留め用カム62を図10から図11に向けて回転させることとなる。ここで、留め用カム62が図11に示すような回転位置となった場合には、留め用カム62の外周面621は収容底部52の内周面521から逃げて離間することとなって、ロアレール51に対してアッパレール55を相対移動可能な相対位置解除状態となる。
【0022】
これに対して、後側レバー操作部68の前端側は、ピン部材662,662を介して上記した操作後側リンク66,66の後端側と連結している。また、後側レバー操作部68の後端側は、上記したトレイ部31の後端部に沿って位置するように構成されている。つまり、後側レバー操作部68の後端は、適宜折曲されて手で把持可能な把持部681として形成されている。この後側レバー操作部68の後端となる把持部681は、図1に示すように、車両後席70に着座する乗員にとって掴んで後側に引っ張ることができるように形成されている。つまり、後側レバー操作部68の解除操作は、トレイ部31を引っ張りたい後方向と一致する後側に向かって設定されている。この把持部681を把持して後側に引っ張ると、図10に示す後方向に後側レバー操作部68を移動させ、操作後側リンク66,66を後側に引っ張ることとなる。そうすると、カム付勢ばね64の付勢力に抗して、上記した留め用カム62を図10から図11に向けて回転させることとなる。ここで、留め用カム62が図11に示すような回転位置となった場合には、留め用カム62の外周面621は収容底部52の内周面521から逃げて離間することとなって、ロアレール51に対してアッパレール55を相対移動可能な相対位置解除状態となる。
【0023】
上記したように構成される車両用シート25によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、上記した車両用シート25によれば、スライド機構50によりトレイ部31をシートクッション26(シート構成部)に対して前後方向にスライド移動できるようになっているので、この車両用シート25の後側の車両後席70に向けてトレイ部31を接近させることができる。これによって、車両後席70の着座者が車両前席20のテーブル30のトレイ部31に飲み物や小物を載せたい場合であっても、このトレイ部31は車両後席70に近い位置となるので、この車両後席70の着座者が大きく前のめりとなるような無理な姿勢をとらずとも、テーブル30のトレイ部31に飲み物や小物を載せることができる。もって、テーブル30が具備される着座シートの後側に設けられた車両後席70の着座者にとっても、このシートクッション26(シート構成部)の側部に配設されるテーブル30を容易に利用することができるようになる。
さらにまた、上記した車両用シート25によれば、スライド機構50には、ロアレール51含むレッグ部41(支持ベース部)に対するトレイ部31の移動範囲のいずれかの位置に保持するロック機構60が設けられているので、このレッグ部41(支持ベース部)に対してトレイ部31を任意の位置にて保持することができる。これによって、トレイ部31の位置を保持することができるので、飲み物や小物を安定的に載せて置くことができる。加えて、上記した車両用シート25によれば、トレイ部31の前部および後部のそれぞれには前側レバー操作部67および後側レバー操作部68が配設されており、これらの前側レバー操作部67および後側レバー操作部68による解除操作はトレイ部31を引っ張る方向に沿って設定されているので、前側レバー操作部67および後側レバー操作部68の解除操作とトレイを引っ張る動作とを一連の引き動作とすることができる。つまり、車両後席70の着座者がトレイ部31に飲み物や小物を載せようとしてトレイ部31を車両後席70に向けて接近させるように引っ張り動作を行うにあたっては、トレイ部31の後部の後側レバー操作部68にて解除操作を行うに連ねて、トレイ部31を車両後席70に向けて接近させる引っ張り動作を行うことができる。また反対に、車両前席20の着座者(例えば運転者)がトレイ部31を車両前席20に向けて接近させるように引っ張り動作を行うにあっても、トレイ部31の前部の前側レバー操作部67にて解除操作を行うに連ねて、トレイ部31を車両前席20に向けて接近させる引っ張り動作を行うことができる。これによって、レッグ部41(支持ベース部)に対するトレイ部31の相対位置を変更するにあたっての操作性を向上させることができる。
また、上記した車両用シート25によれば、スライド機構50は、レッグ部41(支持ベース部)介してシートクッションフレーム27に配設されるロアレール51とトレイ部31側に配設されるアッパレール55とを備え、ロアレール51のスライド移動方向の長さは、アッパレール55のスライド移動方向の長さとと比較して短く設定されているので、アッパレール55が配設されるトレイ部31にてロアレール51に形成されるレール構造を目隠しすることができる。これによって、トレイ部31をスライド移動させた場合であってもロアレール51のレール構造を見せることがなくなるので、すっきりとした外観として外観意匠を向上させることができる。
【0024】
なお、本発明に係る車両用シートにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更して構成するようにしてもよい。
例えば、上記したスライド機構50およびロック機構60に関しては、本発明に係る一つの実施の形態に過ぎないものである。すなわち、本発明に係るスライド機構にあっては、支持ベース部に対してトレイ部を相対的にスライド移動させるものであれば、適宜の構成が採用されるものであってよい。また、本発明に係るロック機構にあっては、支持ベース部に対するトレイ部の移動範囲のいずれかの位置にトレイ部の相対位置を保持する機能を有して構成されるものであれば、適宜の構成が採用されるものであってよい。すなわち、上記した実施の形態のロック機構60にあっては、留め用カム62の外周面621が収容底部52の内周面521に当たることにより、これら外周面621と内周面521との間に生ずる摩擦力により、ロアレール51に対するアッパレール55の相対位置を保持する相対位置保持状態とするものであった。このため、ロアレール51に対するアッパレール55の相対位置は、無断階となるいずれの位置であっても保持することができるものとなっていた。しかしながら、本発明に係るロック機構は、例えば車両用シート自体を車両フロアに対してスライド移動させるスライド機構のように、ロアレール51に対するアッパレール55の相対位置を有段階でロック可能に構成されるものであってもよい。
また、本発明に係る支持ベース部は、シートクッション等のシート構成部に対して、相対的に移動不可に固定設置されるものであればよく、上記した実施の形態におけるレッグ部41に限定されることなく、ブラケット等の適宜の取付け構成部材であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 自動車
11 車両内部
20 車両前席
21 運転席
22 助手席
25 車両用シート
26 シートクッション(シート構成部)
27 シートクッションフレーム
28 シートバック(シート構成部)
29 ヘッドレスト
30 テーブル
31 トレイ部
33 載置部
34 壁状部
35 前席用カップホルダ部
37 後席用カップホルダ部
41 レッグ部(支持ベース部)
43 鉛直脚部
44 ブラケット部
45 折畳み脚部
451 下側支持リンク
452 上側支持リンク
46 ブラケット部
50 スライド機構
51 ロアレール
52 収容底部
521 内周面
53 雌レール部
55 アッパレール
56 取付け部
57 雄レール部
58 螺子部材
59 スライドピース
60 ロック機構
61 ロック機構本体
62 留め用カム
621 外周面
63 カム回転軸
64 カム付勢ばね
641 カム付勢ばねの端部
65 操作前側リンク
651,652 ピン部材
66 操作後側リンク
661,662 ピン部材
67 前側レバー操作部
671 把持部
68 後側レバー操作部
681 把持部
70 車両後席

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート構成部の側部において該シート構成部に一体的に配設されるテーブルを具備する車両用シートであって、
前記テーブルは、物を載置可能に形成されるトレイ部と、前記シート構成部に支持されることにより前記トレイ部を支持する支持ベース部とを備え、
前記トレイ部と前記支持ベース部との間には、該支持ベース部に対して該トレイ部を相対的にスライド移動可能なスライド機構が配設されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記スライド機構には、前記支持ベース部に対する前記トレイ部の移動範囲のいずれかの位置に保持するロック機構が設けられており、
前記トレイ部の前部および後部のそれぞれには、前記ロック機構による前記支持ベース部に対する前記トレイ部の位置の保持を解除操作するレバー操作部が配設されており、
前記レバー操作部による解除操作は、前記トレイ部を引っ張る方向に沿って設定されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記スライド機構は、前記支持ベース部側に配設されるロアレールと、前記トレイ部側に配設されるアッパレールとを備え、
前記ロアレールのスライド移動方向の長さは、前記アッパレールのスライド移動方向の長さと比較して短く設定されていることを特徴とする車両用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−251602(P2011−251602A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125677(P2010−125677)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】