説明

車両用シート

【課題】後部座席の着座者のために薄板状の被収容物を差し込んで保持する構造であっても、強固な保持力を作用させることができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート1は、ヘッドレストを有するシートバックを備えた構成である。シートバック3のパッド部材12および/またはヘッドレスト3bのパッド部材32には、薄板状の被収容物Tを差し込み可能なスリット12a、32aが形成されている。このスリット12a、32aは、自身に薄板状の被収容物Tを差し込むと、差し込んだ被収容物Tの表面が後部座席の着座者と略向かい合う位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、詳しくは、薄板状の被収容物を差し込み可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後部座席の着座者のために薄板状の被収容物(例えば、モニタ等)を差し込み可能な車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、シートバックの背面側にポケットを取り付け、この取り付けたポケットにモニタを差し込み可能な車両用シートが開示されている。これにより、簡便な構造で、モニタを保持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002―36967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、袋状に形成されたポケットにモニタを差し込んで保持する構造であるため、差し込んだモニタの保持力が弱いという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、後部座席の着座者のために薄板状の被収容物を差し込んで保持可能な構造であっても、強固な保持力を作用させることができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、ヘッドレストを有するシートバックを備えた車両用シートであって、シートバックのパッド部材および/またはヘッドレストのパッド部材には、薄板状の被収容物を差し込み可能なスリットが形成されており、前記スリットは、自身に薄板状の被収容物を差し込むと、差し込んだ被収容物の表面が後部座席の着座者と略向かい合う位置に形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、後部座席の着座者のために、スリットに薄板状の被収容物を差し込んで保持させることができる。すなわち、後部座席の着座者のために、シートバック本体および/またはヘッドレストに薄板状の被収容物を差し込んで保持させることができる。このとき、差し込まれた薄板状の被収容物によってスリットの内面が押し潰され、この押し潰された内面から薄板状の被収容物に反力が作用する。したがって、強固な保持力を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る車両用シートを背面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1の縦断面図である。
【図3】図3は、図1のヘッドレストのスリットに携帯電話を差し込んだ状態を示す図である。
【図4】図4は、図3の縦断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2に係る車両用シートを背面側から見た斜視図である。
【図6】図6は、図5の縦断面図である。
【図7】図7は、図5のシートバックのスリットに携帯電話を差し込んだ状態を示す図である。
【図8】図8は、図7の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜4を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「車両用シート」の例として、「助手席」を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、助手席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。これらのことは、後述する実施例2においても同様である。
【0009】
はじめに、図1〜2を参照して、本発明の実施例1に係る助手席1の概略構成を説明する。この助手席1は、シートクッション(図示しない)とシートバック3とから構成されている(図1参照)。これらシートクッションとシートバック3のうち、シートバック3について説明していく。なお、シートクッションについては、公知の構成でよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0010】
シートバック3は、シートバック本体3aと、このシートバック本体3aの上部にステー30を介して組み付けられるヘッドレスト3bとから構成されている。このヘッドレスト3bは、その骨格を成すリテーナ(図示しない)と、このリテーナに組み付けられるステー30と、このリテーナに包着状に組み付けられるパッド32と、このパッド32の表面をカバーリングするシートカバー34とから構成されている(図2参照)。なお、この実施例1では、シートバック本体3aも、公知の構成でよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0011】
ここで、パッド32とシートカバー34とを個別に詳述していく。なお、リテーナとステー30とは、公知の構成でよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0012】
まず、パッド32から説明していく。このパッド32は、その側面視が略L字状となるように形成されている。これにより、ヘッドレスト3bの背面は、縦壁面と、この縦壁面から下側から緩やかに下り傾斜する傾斜面とを備えた格好となっている。また、このパッド32には、上述した縦壁面と傾斜面との境に略上下方向に沿ってスリット32aが形成されている。このスリット32aは、薄板状の被収容物である携帯電話Tを差し込み可能となるように、その厚み長、幅長および深さ長が、1cm、7cmおよび7cm程度に形成されている。
【0013】
また、このスリット32aは、その厚み方向(前後方向)において、先端が基端(入り口側の端)に対して先細り状に形成されている。これにより、差し込んだ携帯電話Tに作用する保持力を、より強固にできる。このことは、後述する実施例2におけるシートバック本体3aのスリット12aにおいても同様である。
【0014】
このようにスリット32aを形成すると、スリット32a自身に携帯電話Tを差し込んだとき、差し込んだ携帯電話Tの画面を助手席1の後部座席の着座者(図示しない)と略向かい合わせることができる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「スリットは、自身に薄板状の被収容物を差し込むと、差し込んだ被収容物の表面が後部座席の着座者と略向かい合う位置に形成されている」に相当する。パッド32は、このように構成されている。
【0015】
一方、シートカバー34は、上述したパッド32の表面形状に沿う格好となるように3枚の表皮(正面ピース40、背面ピース42、底面ピース44)の縁を縫い合わせて構成されている。この背面ピース42には、上述したスリット32aに対応する切り込み42aが形成されている。
【0016】
この切り込み42aの両縁(前側の縁と後側の縁)には、スリット32aに対応する2枚の表皮(第1の内面ピース46、第2の内面ピース48)が袋状に縫い付けられている。これにより、上述したように、スリット32aに携帯電話Tを差し込んでも、この差し込みによってパッド32が削れることでスリット32aの内面がボロボロになることを防止できる。シートカバー34は、このように構成されている。
【0017】
これらリテーナと、ステー30と、上述したパッド32と、上述したシートカバー34とからヘッドレスト3bは構成されている。そして、シートクッションと、シートバック本体3aとこのヘッドレスト3bとから構成されるシートバック3とから助手席1は構成されている。
【0018】
本発明の実施例1に係る助手席1は、上述したように構成されている。この構成によれば、ヘッドレスト3bのパッド32の背面における縦壁面と傾斜面との境には、略上下方向に沿ってスリット32aが形成されている。そのため、後部座席の着座者のために、このスリット32aに携帯電話Tを差し込んで保持させることができる(図3〜4参照)。すなわち、後部座席の着座者のために、ヘッドレスト3bに携帯電話Tを差し込んで保持させることができる。このとき、差し込まれた携帯電話Tによってスリット32aの内面が押し潰され、この押し潰された内面から携帯電話Tに反力が作用する。したがって、携帯電話Tに強固な保持力を作用させることができる。
【0019】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図5〜8を用いて説明する。この実施例2は、既に説明した実施例1と比較すると、シートバック本体3aに携帯電話Tを差し込んで保持させる形態である。そのため、以下の説明にあたって、実施例1と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において同一符号を付すことで、重複する説明は省略することとする。
【0020】
はじめに、図5〜6を参照して、本発明の実施例2に係る助手席101の概略構成を説明する。この助手席101も、実施例1の助手席1と同様に、シートクッション(図示しない)とシートバック3とから構成されている(図5参照)。これらシートクッションとシートバック3のうち、シートバック3について説明していく。なお、シートクッションについては、この実施例2においても、公知の構成でよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0021】
シートバック3は、シートバック本体3aと、このシートバック本体3aの上部にステー30を介して組み付けられるヘッドレスト3bとから構成されている。このシートバック本体3aは、その骨格を成すバックフレーム10と、このバックフレーム10に包着状に組み付けられるパッド12と、このパッド12の表面をカバーリングするシートカバー14とから構成されている(図6参照)。なお、この実施例2では、ヘッドレスト3bも、公知の構成でよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0022】
ここで、パッド12とシートカバー14とを個別に詳述していく。なお、バックフレーム10は、公知の構成でよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0023】
まず、パッド12から説明していく。このパッド12には、ヘッドレスト3bの底面と向かい合う上面の背面側に略上下方向に沿ってスリット12aが形成されている。このスリット12aは、薄板状の被収容物である携帯電話Tを差し込み可能となるように、その厚み長、幅長および深さ長が、1cm、7cmおよび7cm程度に形成されている。
【0024】
このようにスリット12aを形成すると、スリット12a自身に携帯電話Tを差し込んだとき、差し込んだ携帯電話Tの画面を助手席1の後部座席の着座者(図示しない)と略向かい合わせることができる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「スリットは、自身に薄板状の被収容物を差し込むと、差し込んだ被収容物の表面が後部座席の着座者と略向かい合う位置に形成されている」に相当する。パッド12は、このように構成されている。
【0025】
一方、シートカバー14は、上述したパッド12の表面形状に沿う格好となるように複数枚の表皮の縁を縫い合わせて構成されている。このシートカバー14には、上述したスリット12aに対応する切り込み14aが形成されている。
【0026】
この切り込み14aの両縁(前側の縁と後側の縁)には、スリット12aに対応する2枚の表皮(第1の内面ピース22、第2の内面ピース24)が袋状に縫い付けられている。これにより、上述したように、スリット12aに携帯電話Tを差し込んでも、この差し込みによってパッド12が削れることでスリット12aの内面がボロボロになることを防止できる。シートカバー14は、このように構成されている。
【0027】
これらバックフレーム10と、上述したパッド12と、上述したシートカバー14とからシートバック本体3aは構成されている。そして、シートクッションと、このシートバック本体3aとヘッドレスト3bとから構成されるシートバック3とから助手席101は構成されている。
【0028】
本発明の実施例2に係る助手席101は、上述したように構成されている。この構成によれば、シートバック本体3aのパッド12の上面における背面側には、略上下方向に沿ってスリット12aが形成されている。そのため、後部座席の着座者のために、このスリット12aに携帯電話Tを差し込んで保持させることができる(図7〜8参照)。すなわち、後部座席の着座者のために、シートバック本体3aに携帯電話Tを差し込んで保持させることができる。このとき、差し込まれた携帯電話Tによってスリット12aの内面が押し潰され、この押し潰された内面から携帯電話Tに反力が作用する。したがって、携帯電話Tに強固な保持力を作用させることができる。
【0029】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例1では、シートバック3のうち、ヘッドレスト3bにスリット32aを形成した例を説明し、実施例2では、シートバック3のうち、シートバック本体3aにスリット12aを形成した例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、シートバック本体3aとヘッドレスト3bのいずれにも、スリット12a、32aが形成されていても構わない。
【0030】
また、各実施例では、薄板状の被収容物が携帯電話Tである例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、各種カード、各種音楽再生装置、各種映像再生装置等、薄板状のものであれば、どのようなものであっても構わない。
【0031】
また、各実施例では、各スリット12a、32aの幅長および深さ長がそれぞれ7cm程度である例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、各スリット12a、32aの幅長および深さ長は、差し込む被収容物のサイズによって決められる設計的事項である。
【0032】
また、各実施例では、各スリット12a、32aに携帯電話Tを差し込んで保持させる構成を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、この差し込みと同時に携帯電話Tを充電できる構成でも構わない。その場合、予め、各スリット12a、32aの内部に携帯電話Tを充電可能な充電機を設けておく必要がある。
【0033】
また、各実施例では、各スリット12a、32aは、その厚み方向(前後方向)において、先端が基端(入り口側の端)に対して先細り状に形成されている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、先端が基端(入り口側の端)に対して同一厚み長に形成されていても構わない。すなわち、各スリット12a、32aの先端の厚み長と基端の厚み長とが同じであっても構わない。
【0034】
また、各実施例では、各スリット12a、32aは、その厚み長が1cm程度に形成されている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、各スリット12a、32aは、その厚み長が1mm程度(切り込み程度)に形成されていても構わない。
【符号の説明】
【0035】
1 助手席(車両用シート)
3 シートバック
3b ヘッドレスト
12 パッド
12a スリット
32 パッド
32a スリット
T 携帯電話(被収容物)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストを有するシートバックを備えた車両用シートであって、
シートバックのパッド部材および/またはヘッドレストのパッド部材には、薄板状の被収容物を差し込み可能なスリットが形成されており、
前記スリットは、自身に薄板状の被収容物を差し込むと、差し込んだ被収容物の表面が後部座席の着座者と略向かい合う位置に形成されていることを特徴とする車両用シート。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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