説明

車両用シート

【課題】ロッドの強度を落とすことなく、大荷重作用時の意図しない回動力伝達に伴うリクライニング装置のロック解除を防止できるようにすることにある。
【解決手段】シートバック2の左右両サイド部に配された各リクライニング装置4,4の操作軸4H,4Hが、ロッド5により互いのロック解除の回転操作が同期して行われるように連結された車両用シート1である。シートバック2には、車両の衝突発生に伴う車両内設置物Luの後方側からの衝突により前方側へ変形移動する支持ワイヤ2F4が、シートバックフレーム2Fに支えられて設けられている。支持ワイヤ2F4は、その変形移動により、その係合部2F4bをロッド5に係合させてロッド5のロック解除方向への回転移動をシートバックフレーム2Fの支持強度によって拘束した状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートバックの左右両サイド部に配された各リクライニング装置の操作軸がロッドにより互いのロック解除の回転操作が同期して行われるように連結された車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートバックに車両衝突の発生に伴う大荷重が入力された際に、その弾みでリクライニング装置のロックが解除されないように解除防止をする機構が採用されているものがある(特許文献1)。具体的には、この特許文献1に記載の車両用シートでは、シートバックの左右両サイド部に配された各リクライニング装置のロック解除の操作を行う操作軸が、ロッドにより互いに一体的に連結されて設けられている。これにより、各リクライニング装置のロック解除の操作が、上記ロッドを通じて同期して行われるようになっている。上記ロッドは、その一部が曲げに対して脆弱な構成となっており、車両衝突の発生時に曲げ力を受けて変形することで、一方側の操作軸から他方側の操作軸へロック解除の回転操作力を伝達しないように逃がす構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/026571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようにロッドを脆弱に構成することは、動力伝達部材としての信頼性が損なわれるため、好ましくない。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ロッドの強度を落とすことなく、大荷重作用時の意図しない回動力伝達に伴うリクライニング装置のロック解除を防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
第1の発明は、シートバックの左右両サイド部に配された各リクライニング装置の操作軸がロッドにより互いのロック解除の回転操作が同期して行われるように連結された車両用シートである。シートバックには、車両の衝突発生に伴う車両内設置物の後方側からの衝突により前方側へ変形移動する変形部材が、シートバックの骨格に支えられて設けられている。変形部材は、その変形移動により、ロッドに係合してロッドのロック解除方向への回転移動をシートバックの骨格強度の支えによって拘束した状態となる。
【0006】
この第1の発明によれば、車両の衝突発生時に車両内設置物の後方側からの衝突を受けて変形移動してロッドに係合する変形部材を設けたことにより、ロッドの強度を落とすことなく、大荷重作用時の意図しない回動力伝達に伴うリクライニング装置のロック解除を防止することができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、変形部材が、ロッドの後方部においてシートバックの両サイド部の骨格間に架け渡された補強部材に片持ち状に支持されて設けられているものである。
【0008】
この第2の発明によれば、変形部材が上記状態で設けられることにより、変形部材が車両の衝突発生時に車両内設置物の後方側からの衝突を受けて前方側へ変形しやすくなる。したがって、変形部材によるリクライニング装置のロック解除の防止機能をより好適に発揮させることができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、各リクライニング装置の操作軸をロック解除方向に回転操作する操作レバーが、シートバックの肩口部において前倒し操作により回転操作を行うように構成されて配されているものである。
【0010】
この第3の発明によれば、車両の衝突発生時にその慣性力で操作レバーが前倒し方向に操作されてしまうことがあっても、変形部材によりロッドの回転移動が拘束されることで、操作レバーの操作が行われないように規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の車両用シートの骨格構造を示した斜視図である。
【図2】車両の衝突発生により車両内設置物がシートバックに後方側から衝突した状態を示した斜視図である。
【図3】図1のIII-III線断面図である。
【図4】図2のIV-IV線断面図である。
【図5】解除レバーの構成を表した拡大図である。
【図6】(a)他の実施形態として変形部材がロッドに係合する構造を示した斜視図、(b)その断面図。
【図7】(a)他の実施形態として変形部材がロッドに係合する構造を示した斜視図、(b)その断面図。
【図8】(a)他の実施形態として変形部材がロッドに係合する構造を示した斜視図、(b)その断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1〜図5を用いて説明する。本実施例の車両用シート1は、図1に示すように、3列シートを備えた車両の2列目に配される座席用シートとして構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備える。この車両用シート1の背部には、3列目シートが配されているが、この3列目シートのシートバック(図示省略)を大倒しして格納状態とすることで、車両後方まで繋がる荷室空間が形成されるようになっている。上記シートバック2は、その骨格を成すシートバックフレーム2Fの左右両側のサイドフレーム2F1,2F1の下端部が、それぞれ、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライニング装置4,4を間に介して、シートクッション3の骨格を成すシートクッションフレーム3Fの左右両側のサイドフレーム3F1,3F1の後端部と連結されている。これにより、シートバック2は、上記各リクライニング装置4,4が通常時、回転止めされた状態(ロック状態)とされているときには、その背凭れ角度が固定された状態に保持され、各リクライニング装置4,4のロックが解除されることによって、その背凭れ角度が調整可能な状態に切り換えられるようになっている。
【0014】
上記各リクライニング装置4,4のロックを解除する操作は、シートバック2の車両乗降ドア側(外側)の肩口部に設けられた操作レバー6を前に倒し込む操作によって行われる。ここで、上記各リクライニング装置4,4の中心部には、回転により各リクライニング装置4,4のロックを解除操作する操作軸4H,4Hが挿通されて設けられている。これら操作軸4H,4Hは、ロッド5により互いのロック解除の回転操作が同期して行われるように一体的に連結されている。そして、上記ロッド5に対し、前述した操作レバー6が、ケーブル6Dによって操作力を伝達することができる状態に繋がれている。ここで、操作レバー6は、回転軸6Aにより、シートバックフレーム2Fの外側のサイドフレーム2F1の上部箇所に回転可能に軸連結されて設けられており、常時は、シートバックフレーム2Fとの間に掛着されたバネ6Cの附勢力によって、上方側に起こし上げられた姿勢状態に保持されている。
【0015】
詳しくは、上記操作レバー6は、回転軸6Aと一体的に連結されており、回転軸6Aがシートバックフレーム2Fの外側のサイドフレーム2F1に対して回転可能な状態に軸支されている。上記回転軸6Aには、図5に示すように、上述したバネ6Cの一端部6C1やケーブル6Dの上端部6D1を掛着させるための取付ブラケット6Bが一体的に結合されている。上記バネ6Cは、その一端部6C1が上記取付ブラケット6Bに掛着され、他端部6C2がサイドフレーム2F1に一体的に結合された係止ブラケット2Bに掛着されている。また、ケーブル6Dは、その上端部6D1が上記取付ブラケット6Bに掛着され、下端部6D2が図1に示すように上記ロッド5に一体的に接合された操作アーム5Aに掛着されている。ここで、操作アーム5Aは、ロッド5の外側の端部の近傍箇所から後方側に延出する形となって形成されている。上記掛着により、操作レバー6は、常時は、上記バネ6Cの附勢力によって、後方側に向かって起こし上げられる方向に附勢されて、図5に示すように上記取付ブラケット6Bがその回転により係止ブラケット2Bに対して後方側から当たることで係止された状態となって保持されている。ここで、図1に示すように、上記シートバックフレーム2Fの外側のサイドフレーム2F1には、上記操作レバー6の後方側に張り出して、操作レバー6を後方側からの荷重から保護する保護ブラケット2Aが一体的に結合されて設けられている。
【0016】
上記通常時の状態から、使用者が、上記操作レバー6を上記バネ6Cの附勢力に抗して前方側へ倒し込むように操作することにより、ケーブル6Dが牽引操作されて、このケーブル6Dの下端部6D2に繋がれた操作アーム5Aが上方側に引き上げられて、ロッド5が回転操作される。これにより、ロッド5の両端部に連結された各操作軸4H,4Hが一体的となって回されて、各リクライニング装置4,4のロック状態が解除される。これにより、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解除されて、シートバック2の背凭れ角度を前後方向に調整することができる状態となる。
【0017】
ここで、上述した各リクライニング装置4,4の基本構造について説明する。なお、各リクライニング装置4,4は、互いに左右対称の向きに配置されているが、双方の基本的構成は同じものとなっているため、以下では、これらを代表して一方側のリクライニング装置4の構成についてのみ説明することとする。図3に示すように、リクライニング装置4は、シートクッションフレーム3Fのサイドフレーム3F1の内側部に一体的に結合される円盤形状のラチェット4Aと、シートバックフレーム2Fのサイドフレーム2F1の外側部に一体的に結合される円盤形状のガイド4Bと、を有し、これらラチェット4Aとガイド4Bとが、互いに同軸まわりに相対回転可能な状態に組み付けられて、外周リング4Cにより互いに軸方向に外れ止めされた状態とされた構成となっている。上記ラチェット4Aとガイド4Bとは、これらの間に組み込まれた外歯を有する2個のポール4D,4Dが、ガイド4Bの中心部に支持されて設けられたヒンジカム4Fの軸回転に伴って、同ヒンジカム4Fによりスライド操作されるスライドカム4Eにより押圧されてラチェット4Aと噛合したり、ラチェット4Aとの噛合状態から引き戻されて外されたりする動きに伴って、互いの相対回転がロックされたり解除されたりする構成となっている。
【0018】
上記ヒンジカム4Fは、常時は、ガイド4Bとの間に掛着されたバネ4Gの附勢力により回転附勢されて、各ポール4D,4Dをラチェット4Aと噛合させた状態に保持した状態となっている。これにより、リクライニング装置4は、常時は、ラチェット4Aとガイド4Bとの相対回転がロックされた状態として、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態となっている。しかし、上記ヒンジカム4Fは、その中心部に挿通されて回転方向に一体的とされた操作軸4Hが、上述した操作レバー6(図1参照)の前倒し操作によって回転操作されることにより、上記バネ4Gの附勢力に抗して回転操作されて、各ポール4D,4Dをラチェット4Aとの噛合状態から外すように引き戻す。これにより、ラチェット4Aとガイド4Bとの回転ロック状態が解除されて、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれる。以上が、各リクライニング装置4,4の基本構造となっている。
【0019】
ところで、上述した各リクライニング装置4,4は、図2に示すように、例えば、車両の前突が発生した際に、その弾みで、操作レバー6が予期せず前方側に倒し込まれてしまい、それらのロック状態が解除されてしまうな不測の事態が考えられる構成となっている。また、同図に示すように、上記車両の前突発生時に、シートバック2の背裏側の荷室空間に置かれた車両内設置物Lu(例えばワインケースなどの重量物)が、シートバック2に後方側から衝突することで、この衝突がシートバック2の一方側のサイドフレーム2F1に近い箇所で起こった場合に、同側のサイドフレーム2F1が、同側のリクライニング装置4及び操作軸4Hと一体的となって前方側に回転することで、ロッド5を通じて反対側の操作軸4Hが回転操作されて、その側のリクライニング装置4のロック状態が解除されてしまうような不測の事態も考えられる構成となっている。そこで、本実施例の車両用シート1は、上記のような不測の事態が起こらないように、車両の前突発生時に、シートバックフレーム2Fに設けた係止構造(支持ワイヤ2F4:本発明の「変形部材」に相当する。)により、ロッド5の回転移動を拘束した状態にして、各リクライニング装置4,4のロック解除の操作を行えなくする構造が備えられている。以下、このロッド5の回転移動を拘束する構造について詳しく説明をする。
【0020】
ここで、図1に示すように、シートバックフレーム2Fは、その左右の両サイドフレーム2F1,2F1の間に、複数の支持ワイヤ2F2,2F2,2F3,2F4が架け渡されて設けられている。これら支持ワイヤ2F2,2F2,2F3,2F4は、シートバックフレーム2Fの前面部にセットされる図示しないクッションパッドを後方側から支える機能をするものとなっている。また、上記シートバックフレーム2Fの両サイドフレーム2F1,2F1間の着座乗員の腰部近傍が凭れ掛かる下方部領域には、鋼管(丸パイプ)製の補強部材2F5が架け渡されて設けられている。この補強部材2F5は、その両端部が、各サイドフレーム2F1,2F1に貫通して差し込まれた状態で一体的に溶着されて接合されている。これにより、シートバックフレーム2Fが枠状に組まれて、その捩り剛性が高められている。
【0021】
上記補強部材2F5には、上述した2本の略U字状に曲げられた形の支持ワイヤ2F3,2F4が、それぞれ両端部が固定されて吊り下げられた状態となって設けられている。これら支持ワイヤ2F3,2F4は、それぞれ、その下端側の横幅方向に延びる曲返し部分2F3a,2F4aが、上述したロッド5よりも更に下方側へ延び出して設けられている。これら曲返し部分2F3a,2F4aは、その前面側に配される図示しないクッションパッドの下縁部を位置保持するものとなっており、クッションパッドの下縁部が上方側に撓むことでシートクッション3との間に隙間が形成されるのを防止するようになっている。詳しくは、上記図示しないクッションパッドは、その表面側に張設される表皮(図示省略)の張設力によって、シートバックフレーム2Fの前面部に押し付けられた状態となって保持される構成となっている。この表皮は、その下側の縁部が、シートバック2の下端側を通って後方側へ引張り込まれると共に、上側の縁部が、シートバック2の上端側を通って後方側へ引張り込まれた状態とされて、各縁部に取り付けられた樹脂製のフック(図示省略)同士が互いに掛着されることによって、クッションパッドの表面全体を覆った状態に張設された状態とされている。したがって、この表皮の張設力により、上記クッションパッド(図示省略)の下端部が、上方側へ強く引張り込まれて撓み、シートクッション3との間に隙間が形成されてしまうおそれがある。しかしながら、この撓みが、上記曲返し部分2F3a,2F4aによる保持により防止されることで、シートクッション3との間に隙間が形成されないようになっている。
【0022】
そして、上述した2本のうちの1本の支持ワイヤ2F4は、上記曲返し部分2F4aから段差状に連続して横幅方向に延びる係合部2F4bが形成されている。そして、この係合部2F4bの前方に位置するロッド5の外周部箇所には、この係合部2F4bが位置する後方側に向かって形状を延ばす係止ブラケット5Bが一体的に結合されて設けられている。この係止ブラケット5Bは、図4に示すように、車両の前突発生により、係合部2F4bが後述するように車両内設置物Lu(図2参照)の衝突を受けて前方側へ変形移動した際に、この係合部2F4bを上面に乗り上げさせた状態にして、ロッド5の図示反時計回り方向への回転移動(各リクライニング装置4,4のロックを解除する方向への回転移動)を係合部2F4bにより係止させた状態とするための受け部品となっている。
【0023】
ここで、上記支持ワイヤ2F4の係合部2F4bは、図4に示すように、常時はロッド5及び係止ブラケット5Bの後方部に位置している。上記係合部2F4bは、図2に示すように、車両の前突発生により、前述した補強部材2F5に車両内設置物Luが衝突して、補強部材2F5がその中心部を屈曲させる態様で前方側へ変形移動する動きによって前方側へ変形移動し、図4に示すように係止ブラケット5Bの上面に乗り上がってロッド5の図示反時計回り方向の回転移動を拘束するようになっている。この回転移動を拘束する拘束力は、係合部2F4b(支持ワイヤ2F4)がシートバックフレーム2Fの両サイドフレーム2F1,2F1に両端支持された補強部材2F5により支えられた支持強度によって担保されており、前述した前突による弾みによって操作レバー6が前倒し方向に操作される力がかけられても、ロッド5を回転させない拘束力を発揮させられるようになっている。
【0024】
上記係止ブラケット5Bは、図4に示すように、その上記係合部2F4bが後方側から乗り上がる後方面が、前上がりに傾斜して延びて係合部2F4bの乗り上がりを案内する形状とされており、その傾斜面の傾斜角度が途中で緩くなる係止面5B1上に係合部2F4bを乗り上げさせて係止させるようになっている。ここで、図2に示すように、上記係合部2F4bを有する支持ワイヤ2F4は、その補強部材2F5と結合される両側の端部のうち、係合部2F4bが形成された図示左方側の縁部から上方側に折り返されて延びて補強部材2F5と結合される側の端部が、補強部材2F5の横幅方向の中央部に近い箇所に結合されている。これにより、支持ワイヤ2F4は、上記車両の前突発生時に、補強部材2F5が車両内設置物Luの衝突を受けてその中央部が最も大きく前方側へ変形移動する動きを受けて、係合部2F4bが効率的に前方側へ変形移動する構成とされている。
【0025】
なお、上記係合部2F4bを有する支持ワイヤ2F4は、必ずしも、車両の前突発生時に補強部材2F5の変形を受けて変形するものでなくてもよい。すなわち、上記補強部材2F5は、車両の前突発生時に、車両内設置物Luが大型のものでなくても比較的当たりやすい下方側領域の位置に設定されているが、車両内設置物Luが支持ワイヤ2F4に直接衝突して支持ワイヤ2F4が前方側へ変形移動するものであっても当然構わない。上記支持ワイヤ2F4は、補強部材2F5に対してその上端部のみが結合されて、下端部は固定のない片持ち状の支持状態とされているため、上記車両内設置物Luの衝突を受けることでその補強部材2F5と結合された上端部を支点に下端側の係合部2F4bが振り子状に前方側へ変形移動しやすい構成となっている。
【0026】
このように、本実施例の車両用シート1によれば、車両の前突発生時に、車両内設置物Luの後方側からの衝突を受けて変形移動してロッド5に係合する支持ワイヤ2F4(係合部2F4b)を設けたことにより、ロッド5の強度を落とすことなく、大荷重作用時の意図しない回動力伝達に伴うリクライニング装置4,4のロック解除を防止することができる。また、支持ワイヤ2F4がロッド5の後方部においてシートバック2の両サイドフレーム2F1,2F1間に架け渡された補強部材2F5に片持ち状に支持されて設けられることにより、支持ワイヤ2F4が車両の前突発生時に車両内設置物Luの後方側からの衝突を受けて前方側へ変形しやすくなる。したがって、支持ワイヤ2F4の係合部2F4bによるリクライニング装置4,4のロック解除の防止機能をより好適に発揮させることができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、車両の前突発生時にロッド5の回転移動を拘束する係止構造を、次のように構成してもよい。すなわち、図6(a),(b)に示すように、ロッド5に外周部を角管状に形成する係止ブラケット5Bを結合し、その後方部に、車両の前突発生時に車両内設置物(図示省略)の衝突による前方側への変形移動によって上記係止ブラケット5Bの上下面に面当接した状態に嵌合してロッド5の回転移動を拘束する変形部材2F6を、シートバックフレーム2Fに結合した状態で設けた構成としてもよい。
【0028】
また、図7(a),(b)に示すように、ロッド5に結合した係止ブラケット5Bに係止孔5B2を設け、その後方部に、車両の前突発生時に車両内設置物(図示省略)の衝突による前方側への変形移動によって上記係止孔5B2に嵌合する係止ピン2F7aを、シートバックフレーム2Fに結合して設けた変形部材2F7に設けた構成としたものであってもよい。また、図8(a),(b)に示すように、ロッド5の一部に後方側へ張り出すように折り曲げたクランク部5Cを形成し、このクランク部5C上に、シートバックフレーム2Fに結合して設けた変形部材2F8が、車両の前突発生時に車両内設置物(図示省略)の衝突による前方側への変形移動によって乗り上がって係止する構成としたものであってもよい。すなわち、本発明が対象とする車両の前突発生時にロッドの回転移動を拘束する係止構造は、シートバックに設けた変形部材が、車両の前突発生時に車両内設置物の衝突を受けてロッドに係合してロッドの回転移動をシートバックの骨格強度の支えによって拘束した状態となる構成となっているものであれば良く、その具体的な構成は種々の構成を採用することができるものである。また、上記実施例では、本発明の車両用シートが3列シートを備えた車両の2列目のシートとして構成されたものを示したが、最後列目(3列目)のシートとして構成されたものであってもよく、また、2列シートを備えた車両の2列目(最後列目)のシートとして構成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用シート
2 シートバック
2F シートバックフレーム(骨格)
2F1 サイドフレーム
2F2 支持ワイヤ
2F3 支持ワイヤ
2F3a 曲返し部分
2F4 支持ワイヤ(変形部材)
2F4a 曲返し部分
2F4b 係合部
2F5 補強部材
2F6 変形部材
2F7 変形部材
2F7a 係止ピン
2F8 変形部材
2A 保護ブラケット
2B 係止ブラケット
3 シートクッション
3F シートクッションフレーム
3F1 サイドフレーム
4 リクライニング装置
4A ラチェット
4B ガイド
4C 外周リング
4D ポール
4E スライドカム
4F ヒンジカム
4G バネ
4H 操作軸
5 ロッド
5A 操作アーム
5B 係止ブラケット
5B1 係止面
5B2 係止孔
5C クランク部
6 操作レバー
6A 回転軸
6B 取付ブラケット
6C バネ
6C1 一端部
6C2 他端部
6D ケーブル
6D1 上端部
6D2 下端部
Lu 車両内設置物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの左右両サイド部に配された各リクライニング装置の操作軸がロッドにより互いのロック解除の回転操作が同期して行われるように連結された車両用シートであって、
前記シートバックには、車両の衝突発生に伴う車両内設置物の後方側からの衝突により前方側へ変形移動する変形部材が前記シートバックの骨格に支えられて設けられており、該変形部材は、その前記変形移動により前記ロッドに係合して該ロッドのロック解除方向への回転移動を前記シートバックの骨格強度の支えによって拘束した状態となることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記変形部材が、前記ロッドの後方部において前記シートバックの両サイド部の骨格間に架け渡された補強部材に片持ち状に支持されて設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記各リクライニング装置の操作軸をロック解除方向に回転操作する操作レバーが、前記シートバックの肩口部において前倒し操作により前記回転操作を行うように構成されて配されていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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