車両用シート
【課題】シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させる。
【解決手段】シートバック４を倒すために操作レバー１２を操作することにより、矩形ブロック１１を折りたたんでヘッドレスト５の高さを低くし、ヘッドレスト５を取り外すことなく、フロントシート２のフロントシートバック６にヘッドレスト５が干渉しない状態でリヤシート３のシートバック４を前側に倒すことを可能にする。
【解決手段】シートバック４を倒すために操作レバー１２を操作することにより、矩形ブロック１１を折りたたんでヘッドレスト５の高さを低くし、ヘッドレスト５を取り外すことなく、フロントシート２のフロントシートバック６にヘッドレスト５が干渉しない状態でリヤシート３のシートバック４を前側に倒すことを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、前側に傾動自在なシートバックを有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【０００２】
例えば、リヤシートの後側に荷室が続く車両においては、リヤシートのシートバックを前側に倒すことで、シートバックの背面を荷室の床面に連続させ、荷室の容積を拡大させることができる。一方、シートバックの上部にはヘッドレストが設けられ、ヘッドレストは、特別な操作をすることなく乗員が着座した際に頭部の位置にあることが望まれている。このため、ヘッドレストは大型化しているのが現状である。
【０００３】
小型の車両においては、フロントシートとリヤシートとの間隔が狭く、ヘッドレストを有するシートバックを前側に倒した場合、例えば、フロントシートの背面にヘッドレストが干渉してシートバックを前側に倒すことができないことになってしまう。このため、ヘッドレストを取り外し自在に構成し、ヘッドレストを取り外し、シートバックを前側に倒す場合には、ヘッドレストを取り外してからシートバックを傾動させる必要があった。しかも、取り外したヘッドレストを別の場所に収容する作業が必要になっていた。
【０００４】
このような状況から、シートクッションの裏側、もしくは、前側シートのシートバックの背面に凹部を形成し、リヤシートのシートバックを前側に傾動させた際に、ヘッドレストを凹部に収容する技術が提案されている（例えば、下記特許文献１参照）。また、シートクッションの前縁に窪みのスペースを確保し、シートバックを前側に傾動させた際に、ヘッドレストを窪みに収容する技術が提案されている（例えば、特許文献２参照）。特許文献１及び特許文献２で提案された技術を用いることで、ヘッドレストを取り外すことなくシートバックを前側に倒すことが可能になる。
【０００５】
しかし、特許文献１で提案された技術は、シートクッションを前側にスライドさせて裏返して使用したり、前側シートのシートバックも倒して使用する構造のシートであるため、適用できるシート配列が制約される。また、特許文献２で提案された技術は、シートクッションの前縁に窪みのスペースを確保してヘッドレストを収容する構造であるため、ヘッドレストを取り外す必要はないものの、構造が複雑になると共に適用できるシートの大きさが制約され、フロントシートとリヤシートとの間隔が狭い車両には適用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００２−１６０５６５号公報
【特許文献２】特開２００５−２１２６４２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させることができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するための請求項１に係る本発明の車両用シートは、シートクッションに対して傾動自在に備えられるシートバックと、前記シートバックの上側に設けられるヘッドレストと、を備え、前記ヘッドレストは、屈曲されることで前記ヘッドレストの高さを減少させる折りたたみ機構を有することを特徴とする。
【０００９】
請求項１に係る本発明では、シートバックを倒す際に、折りたたみ機構によりヘッドレストを屈曲させることで、ヘッドレストの高さ方向の長さを減少させ、ヘッドレストが他の部材に干渉することなくシートバックを傾動させることができる。このため、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させることが可能になる。
【００１０】
実登２５９５３３７号公報には、ヘッドレストを分割して展開する技術が開示されている。この技術では、ヘッドレストを倒すことで、高さ方向のヘッドレストのスペースを減少させることができるが、展開した状態のブロックをシートバックの表面に沿わせる必要があるため、シートバックを傾動させる車両用シートに適用した場合、シートバックを倒す角度が規制されてしまう。
【００１１】
そして、請求項２に係る本発明の車両用シートは、請求項１に記載の車両用シートにおいて、前記ヘッドレストは、前記車両の前方向に突出するように屈曲されることを特徴とする。
【００１２】
請求項２に係る本発明では、ヘッドレストを前側に突出させるように屈曲させることで、ヘッドレストの前側の面を任意の位置に突出させることができ、着座した乗員の頭の位置に対して前後方向の位置を調整することができる。
【００１３】
また、請求項３に係る本発明の車両用シートは、請求項１もしくは請求項２に記載の車両用シートにおいて、前記折りたたみ機構は、前記シートバックに対して高さ方向に伸縮移動自在に備えられるヘッドレストステーと、前記ヘッドレストステーを所定位置に位置決め移動させる移動機構とを備え、前記ヘッドレストは、前記ヘッドレストステーに支持され、前記移動機構により前記ヘッドレストステーが前記シートバックに対して縮み側に移動させられることで、前記ヘッドレストが屈曲されることを特徴とする。
【００１４】
請求項３に係る本発明では、移動機構によりヘッドレストステーを前記シートバックに対して縮み側に移動させることで、ヘッドレストが折りたたまれてヘッドレストの高さ方向の長さが減少する。
【００１５】
また、請求項４に係る本発明の車両用シートは、請求項３に記載の車両用シートにおいて、前記移動機構は、前記ヘッドレストステーを縮み側に付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記ヘッドレストステーを伸び側の所望位置に停止規制する停止規制手段とを備えたことを特徴とする。
【００１６】
請求項４に係る本発明では、停止規制手段によりヘッドレストステーの移動規制を解除することで、付勢手段によりヘッドレストステーが縮み側に移動してヘッドレストの高さ方向の長さが減少する。
【００１７】
また、請求項５に係る本発明の車両用シートは、請求項４に記載の車両用シートにおいて、前記停止規制手段は、前記ヘッドレストステーを伸び側の複数の所望位置に停止規制することを特徴とする。
【００１８】
請求項５に係る本発明では、ヘッドレストステーを伸び側の複数の所望位置に停止規制することで、ヘッドレストの前側の面を任意の位置に突出させることができる。
【００１９】
また、請求項６に係る本発明の車両用シートは、請求項４もしくは請求項５に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動の規制を解除する傾動規制解除操作手段が備えられ、前記傾動規制解除操作手段の操作に連動して前記停止規制手段による前記ヘッドレストステーの停止規制が解除されることを特徴とする。
【００２０】
請求項６に係る本発明では、傾動規制解除操作手段の操作によりシートバックを倒す操作を行うことに連動してヘッドレストステーの停止規制が解除され、シートバックを倒す操作によりヘッドレストの高さ方向の長さを減少させることができる。
【００２１】
また、請求項７に係る本発明の車両用シートは、請求項６に記載の車両用シートにおいて、前記停止規制手段は、前記ヘッドレストステーに設けられる切欠き溝と、前記シートバック側に備えられ前記切欠き溝に付勢係止される係止部材とからなり、前記傾動規制解除操作手段の操作により前記係止部材を前記切欠き溝から抜き外す方向に移動させる索体を備えたことを特徴とする。
【００２２】
請求項７に係る本発明では、傾動規制解除操作手段の操作により索体を介して固定ピン部材をヘッドレストステーの切欠き溝から抜き外すことで、ヘッドレストステーを縮ませることができる。
【００２３】
また、請求項８に係る本発明の車両用シートは、請求項１から請求項７のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、前記ヘッドレストは、複数のブロックで構成され、前記複数のブロックとの境界部で屈曲されることを特徴とする。
【００２４】
請求項８に係る本発明では、複数のブロックが互いに連結されてヘッドレストが構成されているので、使用時の剛性が確保された状態で高さ方向の長さを容易に縮めることができる。
【発明の効果】
【００２５】
本発明の車両用シートは、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明の一実施例に係る車両用シートを備えた車両の全体を表す外観図である。
【図２】リヤシートの外観図である。
【図３】ヘッドレストの詳細図である。
【図４】シートバックの側面図である。
【図５】シートの側面図である。
【図６】リヤシートのシートバックのフレームを表す正面図である。
【図７】ヘッドレスト固定部の詳細断面図である。
【図８】操作レバーの部位を説明する斜視図である。
【図９】ヘッドレストの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２７】
本実施例の車両用シートは、リヤシートのシートバックのヘッドレストが複数のウレタン製のブロックで構成され、シートバックを前側に倒す際に、折りたたみ機構によりブロックを折りたたんでヘッドレストの高さ方向の長さを減少させるものである。
【００２８】
ヘッドレストの高さが減少することにより、フロントシートのシートバックにヘッドレストが干渉しない状態で、リヤシートのシートバックを前側に倒すことができる。このため、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させることが可能になる。
【００２９】
以下に示した実施例は、フロントシートとリヤシートを備えた２列のシート構造の車両のリヤシートの構造を例に挙げて説明してあるが、フロントシートや３列以上のシート構造のシート等、他のシートであっても適用することが可能である。
【００３０】
以下図面に基づいて本発明の一実施例を説明する。
【００３１】
図１には本発明の一実施例に係る車両用シートであるリヤシートを備えた車両の全体を表す外観、図２にはリヤシートの外観、図３にはヘッドレストの拡大状態、図４にはヘッドレストの折りたたみ動作を説明するシートバックの側面視、図５にはリヤシートを倒した際の状況を説明するシートの側面視を示してある。
【００３２】
図１に示すように、車両１にはフロントシート２及び車両用シートとしてのリヤシート３が備えられている。リヤシート３のシートバック４は前側に傾動自在に備えられ、シートバック４を前側に倒すことで、シートバック４の背面が荷室の床面に連続し、荷室の容積を拡大させることができる。
【００３３】
リヤシート３のシートバック４の上部にはヘッドレスト５が設けられ、ヘッドレスト５は、乗員が着座した際に乗員の頭部の位置に対応する大きさに設定されている。つまり、特別な操作をすることなく乗員が着座した際に頭部の位置にヘッドレスト５が配されている状態となる。ヘッドレスト５は、折りたたみ機構（詳細は後述する）により折りたたまれることで高さ方向の長さが低くされる（減少される）。
【００３４】
リヤシート３のシートバック４のヘッドレスト５の高さが低くなることで、フロントシート２のフロントシートバック６にヘッドレスト５が干渉しない状態でリヤシート３のシートバック４を前側に倒すことができる。このため、フロントシート２とリヤシート３の間隔が狭い車両１であってもヘッドレスト５を取り外すことなくシートバック４を傾動させることが可能になる。
【００３５】
図２、図３に示すように、ヘッドレスト５は、ウレタン製の矩形ブロック１１が上下方向に４分割されて構成され、折りたたみ機構（詳細は後述する）により、ヘッドレストステー１０（図４参照）が縮み方向に移動することで、上側の矩形ブロック１１ａと下側の矩形ブロック１１ｂの間隔が狭められて中央の２つの矩形ブロック１１ｃが前方に折りたたまれる。これにより、ヘッドレスト５の高さ方向の長さが低くされる。
【００３６】
図４(ａ）に示すように、通常時にはヘッドレストステー１０が伸ばされることで中央の２つの矩形ブロック１１ｃが面一状態にされ、ヘッドレスト５として使用される。図４(ｂ)に示すように、シートバック４を倒すための操作レバー１２（傾動規制解除操作手段）を操作することにより、折りたたみ機構（詳細は後述する）によりヘッドレストステー１０が縮み方向に移動して矩形ブロック１１が折りたたまれる。図４(ｃ)に示すように、矩形ブロック１１が折りたたまれた後、更に、操作レバー１２を操作することにより、シートバック４が前側に倒される。
【００３７】
ヘッドレスト５の高さを低くすることで、図５に示すように、折りたたまれたヘッドレスト５がフロントシート２のフロントシートバック６に干渉しない状態で、リヤシート３のシートバック４を前側に倒すことができる。このため、フロントシート２とリヤシート３の間隔が狭い車両１であってもヘッドレスト５を取り外すことなくシートバック４を傾動させることが可能になる。
【００３８】
図６から図８に基づいて折りたたみ機構を具体的に説明する。
【００３９】
図６にはリヤシート３のシートバック４のフレームを表す正面視状態、図７にはヘッドレスト固定部の詳細断面、図８には操作レバー１２の部位を説明する斜視状態を示してある。
【００４０】
図６、図７に示すように、シートバック４のシートバックフレーム２１の上部辺部２１ａにはヘッドレストステー１０のヘッドレストガイド２２が２箇所に設けられ、ヘッドレストガイド２２にはＵ字状のヘッドレストフレーム２３が支持されている。つまり、２箇所のヘッドレストガイド２２にヘッドレストフレーム２３のステー２４が摺動自在に挿入され、ヘッドレストフレーム２３が上下方向にスライド自在とされている。ヘッドレストフレーム２３がスライドすることにより、ヘッドレストステー１０（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して伸縮移動自在にされる。
【００４１】
ヘッドレストフレーム２３のステー２４とシートバックフレーム２１とにわたり引っ張りばね２５が設けられ、引っ張りばね２５によりヘッドレストフレーム２３が下方に引っ張り付勢され、ヘッドレストステー（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して縮み方向に付勢されている。
【００４２】
図７に示すように、ヘッドレストフレーム２３（図６参照）の一方側のステー２４の３箇所には切欠き溝としての係止溝２７ａ、２７ｂ、２７ｃが設けられ、ヘッドレストガイド２２には、ばね２８のばね力により係止溝２７に係止される係止部材としての係止駒板２９が設けられている。係止駒板２９の端部には操作部３０が設けられ、操作部３０を指で押して係止駒板２９を図中左側に移動させることにより、ばね２８のばね力に抗して係止駒板２９を係止溝２７から抜き外すことができる。
【００４３】
ヘッドレストフレーム２３を引き上げて最下部の係止溝２７ｃに係止駒板２９を係止させることにより、ヘッドレストステー（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して所定の伸長位置に位置規制され、ヘッドレスト５が通常に使用される状態にされる（停止規制手段）。また、係止駒板２９が係止溝２７ｃから抜き外されることで、引っ張りばね２５の付勢力によりヘッドレストステー１０（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して縮み方向に移動し、ヘッドレスト５が折りたたまれる。
【００４４】
ヘッドレストステー１０（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して縮み方向に移動する途中で、係止駒板２９を中央の係止溝２７ｂに係止させることにより、縮み方向の途中位置でヘッドレストステー１０の位置が規制され、ヘッドレスト５が折りたたまれる途中で規制されてヘッドレスト５の位置が前側に突出した状態にされ、乗員の頭を支える位置を調整することができる。
【００４５】
一方、図７、図８に示すように、シートバック４を倒すための操作レバー１２と係止駒板２９との間は索体としてのワイヤ３１で連結されている。操作レバー１２が操作されることにより、ワイヤ３１を介して係止駒板２９が係止溝２７から抜き外される。
【００４６】
図８に示すように、操作レバー１２の基端部にはシートバック４の傾動を固定するリクライニングロック手段３２が設けられ、操作レバー１２の裏側にはブラケット３３が設けられている。ブラケット３３にはワイヤ３１の一端が固定され、図７、図８に示すように、ワイヤ３１の他端は係止駒板２９に固定されている。
【００４７】
操作レバー１２を操作することで、所定の角度までの操作でブラケット３３だけが回動しワイヤ３１を介して係止駒板２９が係止溝２７から抜き外される。更に操作レバー１２を操作することで、リクライニングロック手段３２が解除されてシートバック４が前側に倒される。これにより、シートバック４を前側に倒すための操作レバー１２の操作に連動してヘッドレストステー１０の位置規制が解除され、シートバック４を前側に倒す際に、ヘッドレスト５を折りたたむことができる。
【００４８】
図９に基づいてヘッドレスト５の折りたたみ状況を説明する。
【００４９】
図９（ａ）（ｂ）（ｃ）にはヘッドレストステー１０の伸縮状態とヘッドレスト５の折りたたみ状態との関係を示してある。
【００５０】
図９（ａ）に示すように、ヘッドレストステー１０が上側に引き上げられ、最下部の係止溝２７ｃに係止駒板２９（図７参照）が係止する。これにより、ヘッドレストステー１０がシートバックフレーム２１に対して所定の伸長位置に位置規制され、中央の２つの矩形ブロック１１ｃが面一状態にされてヘッドレスト５が通常に使用される状態になる。
【００５１】
操作レバー１２（図２等参照）を操作することにより、もしくは、係止駒板２９の操作部３０を指で押すことにより、係止溝２７ｃに対する係止駒板２９の係止が解除される。そして、ヘッドレストステー１０が下側に付勢移動し、図９（ｂ）に示すように、中間部の係止溝２７ｂに係止駒板２９が係止する。これにより、ヘッドレストステー１０がシートバックフレーム２１に対して途中の伸長位置に位置規制され、中央の２つの矩形ブロック１１ｃが途中まで前方に折りたたまれてヘッドレスト５の位置が前側に突出して使用される状態になる。このため、乗員の頭を支える位置を任意に調整することができる。
【００５２】
操作レバー１２（図２等参照）を操作することにより、もしくは、係止駒板２９の操作部３０を指で押すことにより、係止溝２７ｂに対する係止駒板２９の係止が解除される。そして、ヘッドレストステー１０が下側に付勢移動し、図９（ｃ）に示すように、最下段の係止溝２７ａに係止駒板２９が係止する。これにより、ヘッドレストステー１０がシートバックフレーム２１に対して縮んだ状態の位置に位置規制され、２つの矩形ブロック１１ｃが前方に折りたたまれてヘッドレスト５が折りたたまれる。
【００５３】
ヘッドレスト５が折りたたまれた後、操作レバー１２（図２等参照）を操作することにより、シートバック４が前側に倒される。
【００５４】
上述したヘッドレスト５を備えたリヤシート３は、シートバック４を倒すために操作レバー１２を操作することにより、ヘッドレスト５を折りたたんで高さを低くすることができる。これにより、図５に示すように、ヘッドレスト５を取り外すことなく、フロントシート２のフロントシートバック６にヘッドレスト５が干渉しない状態でリヤシート３のシートバック４を前側に倒すことができる。従って、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレスト５を取り外すことなくシートバック４を前側に傾動させることが可能になる。
【００５５】
また、中央の２つの矩形ブロック１１ｃを途中まで折りたたんだ状態に位置を規制することができるので、ヘッドレスト５の位置を前側に突出させて使用することができる。このため、乗員の頭を支える位置を任意に調整することができ、乗員の好みに合わせたヘッドレスト５の状態を選択することが可能になる。
【００５６】
また、矩形ブロック１１を４分割したウレタン製部材を互いに連結してヘッドレスト５を構成したので、使用時の剛性を確保した状態で容易に折りたたんで高さを低くすることができる。尚、矩形ブロック１１の分割数は４分割に限定されず、高さを低くできる分割数であればよい。また、ウレタン製以外の材料で矩形ブロックを構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【００５７】
本発明は、前側に傾動自在なシートバックを有する車両用シートの産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【００５８】
１ 車両
２ フロントシート
３ リヤシート
４ シートバック
５ ヘッドレスト
６ フロントシートバック
１０ ヘッドレストステー
１１ 矩形ブロック
１２ 操作レバー
２１ シートバックフレーム
２２ ヘッドレストガイド
２３ ヘッドレストフレーム
２４ ステー
２５ 引っ張りばね
２７ 係止溝
２８ ばね
２９ 係止駒板
３０ 操作部
３１ ワイヤ
３２ リクライニングロック手段
【技術分野】
【０００１】
本発明は、前側に傾動自在なシートバックを有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【０００２】
例えば、リヤシートの後側に荷室が続く車両においては、リヤシートのシートバックを前側に倒すことで、シートバックの背面を荷室の床面に連続させ、荷室の容積を拡大させることができる。一方、シートバックの上部にはヘッドレストが設けられ、ヘッドレストは、特別な操作をすることなく乗員が着座した際に頭部の位置にあることが望まれている。このため、ヘッドレストは大型化しているのが現状である。
【０００３】
小型の車両においては、フロントシートとリヤシートとの間隔が狭く、ヘッドレストを有するシートバックを前側に倒した場合、例えば、フロントシートの背面にヘッドレストが干渉してシートバックを前側に倒すことができないことになってしまう。このため、ヘッドレストを取り外し自在に構成し、ヘッドレストを取り外し、シートバックを前側に倒す場合には、ヘッドレストを取り外してからシートバックを傾動させる必要があった。しかも、取り外したヘッドレストを別の場所に収容する作業が必要になっていた。
【０００４】
このような状況から、シートクッションの裏側、もしくは、前側シートのシートバックの背面に凹部を形成し、リヤシートのシートバックを前側に傾動させた際に、ヘッドレストを凹部に収容する技術が提案されている（例えば、下記特許文献１参照）。また、シートクッションの前縁に窪みのスペースを確保し、シートバックを前側に傾動させた際に、ヘッドレストを窪みに収容する技術が提案されている（例えば、特許文献２参照）。特許文献１及び特許文献２で提案された技術を用いることで、ヘッドレストを取り外すことなくシートバックを前側に倒すことが可能になる。
【０００５】
しかし、特許文献１で提案された技術は、シートクッションを前側にスライドさせて裏返して使用したり、前側シートのシートバックも倒して使用する構造のシートであるため、適用できるシート配列が制約される。また、特許文献２で提案された技術は、シートクッションの前縁に窪みのスペースを確保してヘッドレストを収容する構造であるため、ヘッドレストを取り外す必要はないものの、構造が複雑になると共に適用できるシートの大きさが制約され、フロントシートとリヤシートとの間隔が狭い車両には適用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００２−１６０５６５号公報
【特許文献２】特開２００５−２１２６４２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させることができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するための請求項１に係る本発明の車両用シートは、シートクッションに対して傾動自在に備えられるシートバックと、前記シートバックの上側に設けられるヘッドレストと、を備え、前記ヘッドレストは、屈曲されることで前記ヘッドレストの高さを減少させる折りたたみ機構を有することを特徴とする。
【０００９】
請求項１に係る本発明では、シートバックを倒す際に、折りたたみ機構によりヘッドレストを屈曲させることで、ヘッドレストの高さ方向の長さを減少させ、ヘッドレストが他の部材に干渉することなくシートバックを傾動させることができる。このため、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させることが可能になる。
【００１０】
実登２５９５３３７号公報には、ヘッドレストを分割して展開する技術が開示されている。この技術では、ヘッドレストを倒すことで、高さ方向のヘッドレストのスペースを減少させることができるが、展開した状態のブロックをシートバックの表面に沿わせる必要があるため、シートバックを傾動させる車両用シートに適用した場合、シートバックを倒す角度が規制されてしまう。
【００１１】
そして、請求項２に係る本発明の車両用シートは、請求項１に記載の車両用シートにおいて、前記ヘッドレストは、前記車両の前方向に突出するように屈曲されることを特徴とする。
【００１２】
請求項２に係る本発明では、ヘッドレストを前側に突出させるように屈曲させることで、ヘッドレストの前側の面を任意の位置に突出させることができ、着座した乗員の頭の位置に対して前後方向の位置を調整することができる。
【００１３】
また、請求項３に係る本発明の車両用シートは、請求項１もしくは請求項２に記載の車両用シートにおいて、前記折りたたみ機構は、前記シートバックに対して高さ方向に伸縮移動自在に備えられるヘッドレストステーと、前記ヘッドレストステーを所定位置に位置決め移動させる移動機構とを備え、前記ヘッドレストは、前記ヘッドレストステーに支持され、前記移動機構により前記ヘッドレストステーが前記シートバックに対して縮み側に移動させられることで、前記ヘッドレストが屈曲されることを特徴とする。
【００１４】
請求項３に係る本発明では、移動機構によりヘッドレストステーを前記シートバックに対して縮み側に移動させることで、ヘッドレストが折りたたまれてヘッドレストの高さ方向の長さが減少する。
【００１５】
また、請求項４に係る本発明の車両用シートは、請求項３に記載の車両用シートにおいて、前記移動機構は、前記ヘッドレストステーを縮み側に付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記ヘッドレストステーを伸び側の所望位置に停止規制する停止規制手段とを備えたことを特徴とする。
【００１６】
請求項４に係る本発明では、停止規制手段によりヘッドレストステーの移動規制を解除することで、付勢手段によりヘッドレストステーが縮み側に移動してヘッドレストの高さ方向の長さが減少する。
【００１７】
また、請求項５に係る本発明の車両用シートは、請求項４に記載の車両用シートにおいて、前記停止規制手段は、前記ヘッドレストステーを伸び側の複数の所望位置に停止規制することを特徴とする。
【００１８】
請求項５に係る本発明では、ヘッドレストステーを伸び側の複数の所望位置に停止規制することで、ヘッドレストの前側の面を任意の位置に突出させることができる。
【００１９】
また、請求項６に係る本発明の車両用シートは、請求項４もしくは請求項５に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動の規制を解除する傾動規制解除操作手段が備えられ、前記傾動規制解除操作手段の操作に連動して前記停止規制手段による前記ヘッドレストステーの停止規制が解除されることを特徴とする。
【００２０】
請求項６に係る本発明では、傾動規制解除操作手段の操作によりシートバックを倒す操作を行うことに連動してヘッドレストステーの停止規制が解除され、シートバックを倒す操作によりヘッドレストの高さ方向の長さを減少させることができる。
【００２１】
また、請求項７に係る本発明の車両用シートは、請求項６に記載の車両用シートにおいて、前記停止規制手段は、前記ヘッドレストステーに設けられる切欠き溝と、前記シートバック側に備えられ前記切欠き溝に付勢係止される係止部材とからなり、前記傾動規制解除操作手段の操作により前記係止部材を前記切欠き溝から抜き外す方向に移動させる索体を備えたことを特徴とする。
【００２２】
請求項７に係る本発明では、傾動規制解除操作手段の操作により索体を介して固定ピン部材をヘッドレストステーの切欠き溝から抜き外すことで、ヘッドレストステーを縮ませることができる。
【００２３】
また、請求項８に係る本発明の車両用シートは、請求項１から請求項７のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、前記ヘッドレストは、複数のブロックで構成され、前記複数のブロックとの境界部で屈曲されることを特徴とする。
【００２４】
請求項８に係る本発明では、複数のブロックが互いに連結されてヘッドレストが構成されているので、使用時の剛性が確保された状態で高さ方向の長さを容易に縮めることができる。
【発明の効果】
【００２５】
本発明の車両用シートは、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明の一実施例に係る車両用シートを備えた車両の全体を表す外観図である。
【図２】リヤシートの外観図である。
【図３】ヘッドレストの詳細図である。
【図４】シートバックの側面図である。
【図５】シートの側面図である。
【図６】リヤシートのシートバックのフレームを表す正面図である。
【図７】ヘッドレスト固定部の詳細断面図である。
【図８】操作レバーの部位を説明する斜視図である。
【図９】ヘッドレストの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２７】
本実施例の車両用シートは、リヤシートのシートバックのヘッドレストが複数のウレタン製のブロックで構成され、シートバックを前側に倒す際に、折りたたみ機構によりブロックを折りたたんでヘッドレストの高さ方向の長さを減少させるものである。
【００２８】
ヘッドレストの高さが減少することにより、フロントシートのシートバックにヘッドレストが干渉しない状態で、リヤシートのシートバックを前側に倒すことができる。このため、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレストを取り外すことなくシートバックを傾動させることが可能になる。
【００２９】
以下に示した実施例は、フロントシートとリヤシートを備えた２列のシート構造の車両のリヤシートの構造を例に挙げて説明してあるが、フロントシートや３列以上のシート構造のシート等、他のシートであっても適用することが可能である。
【００３０】
以下図面に基づいて本発明の一実施例を説明する。
【００３１】
図１には本発明の一実施例に係る車両用シートであるリヤシートを備えた車両の全体を表す外観、図２にはリヤシートの外観、図３にはヘッドレストの拡大状態、図４にはヘッドレストの折りたたみ動作を説明するシートバックの側面視、図５にはリヤシートを倒した際の状況を説明するシートの側面視を示してある。
【００３２】
図１に示すように、車両１にはフロントシート２及び車両用シートとしてのリヤシート３が備えられている。リヤシート３のシートバック４は前側に傾動自在に備えられ、シートバック４を前側に倒すことで、シートバック４の背面が荷室の床面に連続し、荷室の容積を拡大させることができる。
【００３３】
リヤシート３のシートバック４の上部にはヘッドレスト５が設けられ、ヘッドレスト５は、乗員が着座した際に乗員の頭部の位置に対応する大きさに設定されている。つまり、特別な操作をすることなく乗員が着座した際に頭部の位置にヘッドレスト５が配されている状態となる。ヘッドレスト５は、折りたたみ機構（詳細は後述する）により折りたたまれることで高さ方向の長さが低くされる（減少される）。
【００３４】
リヤシート３のシートバック４のヘッドレスト５の高さが低くなることで、フロントシート２のフロントシートバック６にヘッドレスト５が干渉しない状態でリヤシート３のシートバック４を前側に倒すことができる。このため、フロントシート２とリヤシート３の間隔が狭い車両１であってもヘッドレスト５を取り外すことなくシートバック４を傾動させることが可能になる。
【００３５】
図２、図３に示すように、ヘッドレスト５は、ウレタン製の矩形ブロック１１が上下方向に４分割されて構成され、折りたたみ機構（詳細は後述する）により、ヘッドレストステー１０（図４参照）が縮み方向に移動することで、上側の矩形ブロック１１ａと下側の矩形ブロック１１ｂの間隔が狭められて中央の２つの矩形ブロック１１ｃが前方に折りたたまれる。これにより、ヘッドレスト５の高さ方向の長さが低くされる。
【００３６】
図４(ａ）に示すように、通常時にはヘッドレストステー１０が伸ばされることで中央の２つの矩形ブロック１１ｃが面一状態にされ、ヘッドレスト５として使用される。図４(ｂ)に示すように、シートバック４を倒すための操作レバー１２（傾動規制解除操作手段）を操作することにより、折りたたみ機構（詳細は後述する）によりヘッドレストステー１０が縮み方向に移動して矩形ブロック１１が折りたたまれる。図４(ｃ)に示すように、矩形ブロック１１が折りたたまれた後、更に、操作レバー１２を操作することにより、シートバック４が前側に倒される。
【００３７】
ヘッドレスト５の高さを低くすることで、図５に示すように、折りたたまれたヘッドレスト５がフロントシート２のフロントシートバック６に干渉しない状態で、リヤシート３のシートバック４を前側に倒すことができる。このため、フロントシート２とリヤシート３の間隔が狭い車両１であってもヘッドレスト５を取り外すことなくシートバック４を傾動させることが可能になる。
【００３８】
図６から図８に基づいて折りたたみ機構を具体的に説明する。
【００３９】
図６にはリヤシート３のシートバック４のフレームを表す正面視状態、図７にはヘッドレスト固定部の詳細断面、図８には操作レバー１２の部位を説明する斜視状態を示してある。
【００４０】
図６、図７に示すように、シートバック４のシートバックフレーム２１の上部辺部２１ａにはヘッドレストステー１０のヘッドレストガイド２２が２箇所に設けられ、ヘッドレストガイド２２にはＵ字状のヘッドレストフレーム２３が支持されている。つまり、２箇所のヘッドレストガイド２２にヘッドレストフレーム２３のステー２４が摺動自在に挿入され、ヘッドレストフレーム２３が上下方向にスライド自在とされている。ヘッドレストフレーム２３がスライドすることにより、ヘッドレストステー１０（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して伸縮移動自在にされる。
【００４１】
ヘッドレストフレーム２３のステー２４とシートバックフレーム２１とにわたり引っ張りばね２５が設けられ、引っ張りばね２５によりヘッドレストフレーム２３が下方に引っ張り付勢され、ヘッドレストステー（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して縮み方向に付勢されている。
【００４２】
図７に示すように、ヘッドレストフレーム２３（図６参照）の一方側のステー２４の３箇所には切欠き溝としての係止溝２７ａ、２７ｂ、２７ｃが設けられ、ヘッドレストガイド２２には、ばね２８のばね力により係止溝２７に係止される係止部材としての係止駒板２９が設けられている。係止駒板２９の端部には操作部３０が設けられ、操作部３０を指で押して係止駒板２９を図中左側に移動させることにより、ばね２８のばね力に抗して係止駒板２９を係止溝２７から抜き外すことができる。
【００４３】
ヘッドレストフレーム２３を引き上げて最下部の係止溝２７ｃに係止駒板２９を係止させることにより、ヘッドレストステー（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して所定の伸長位置に位置規制され、ヘッドレスト５が通常に使用される状態にされる（停止規制手段）。また、係止駒板２９が係止溝２７ｃから抜き外されることで、引っ張りばね２５の付勢力によりヘッドレストステー１０（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して縮み方向に移動し、ヘッドレスト５が折りたたまれる。
【００４４】
ヘッドレストステー１０（ヘッドレストフレーム２３及びステー２４）がシートバックフレーム２１に対して縮み方向に移動する途中で、係止駒板２９を中央の係止溝２７ｂに係止させることにより、縮み方向の途中位置でヘッドレストステー１０の位置が規制され、ヘッドレスト５が折りたたまれる途中で規制されてヘッドレスト５の位置が前側に突出した状態にされ、乗員の頭を支える位置を調整することができる。
【００４５】
一方、図７、図８に示すように、シートバック４を倒すための操作レバー１２と係止駒板２９との間は索体としてのワイヤ３１で連結されている。操作レバー１２が操作されることにより、ワイヤ３１を介して係止駒板２９が係止溝２７から抜き外される。
【００４６】
図８に示すように、操作レバー１２の基端部にはシートバック４の傾動を固定するリクライニングロック手段３２が設けられ、操作レバー１２の裏側にはブラケット３３が設けられている。ブラケット３３にはワイヤ３１の一端が固定され、図７、図８に示すように、ワイヤ３１の他端は係止駒板２９に固定されている。
【００４７】
操作レバー１２を操作することで、所定の角度までの操作でブラケット３３だけが回動しワイヤ３１を介して係止駒板２９が係止溝２７から抜き外される。更に操作レバー１２を操作することで、リクライニングロック手段３２が解除されてシートバック４が前側に倒される。これにより、シートバック４を前側に倒すための操作レバー１２の操作に連動してヘッドレストステー１０の位置規制が解除され、シートバック４を前側に倒す際に、ヘッドレスト５を折りたたむことができる。
【００４８】
図９に基づいてヘッドレスト５の折りたたみ状況を説明する。
【００４９】
図９（ａ）（ｂ）（ｃ）にはヘッドレストステー１０の伸縮状態とヘッドレスト５の折りたたみ状態との関係を示してある。
【００５０】
図９（ａ）に示すように、ヘッドレストステー１０が上側に引き上げられ、最下部の係止溝２７ｃに係止駒板２９（図７参照）が係止する。これにより、ヘッドレストステー１０がシートバックフレーム２１に対して所定の伸長位置に位置規制され、中央の２つの矩形ブロック１１ｃが面一状態にされてヘッドレスト５が通常に使用される状態になる。
【００５１】
操作レバー１２（図２等参照）を操作することにより、もしくは、係止駒板２９の操作部３０を指で押すことにより、係止溝２７ｃに対する係止駒板２９の係止が解除される。そして、ヘッドレストステー１０が下側に付勢移動し、図９（ｂ）に示すように、中間部の係止溝２７ｂに係止駒板２９が係止する。これにより、ヘッドレストステー１０がシートバックフレーム２１に対して途中の伸長位置に位置規制され、中央の２つの矩形ブロック１１ｃが途中まで前方に折りたたまれてヘッドレスト５の位置が前側に突出して使用される状態になる。このため、乗員の頭を支える位置を任意に調整することができる。
【００５２】
操作レバー１２（図２等参照）を操作することにより、もしくは、係止駒板２９の操作部３０を指で押すことにより、係止溝２７ｂに対する係止駒板２９の係止が解除される。そして、ヘッドレストステー１０が下側に付勢移動し、図９（ｃ）に示すように、最下段の係止溝２７ａに係止駒板２９が係止する。これにより、ヘッドレストステー１０がシートバックフレーム２１に対して縮んだ状態の位置に位置規制され、２つの矩形ブロック１１ｃが前方に折りたたまれてヘッドレスト５が折りたたまれる。
【００５３】
ヘッドレスト５が折りたたまれた後、操作レバー１２（図２等参照）を操作することにより、シートバック４が前側に倒される。
【００５４】
上述したヘッドレスト５を備えたリヤシート３は、シートバック４を倒すために操作レバー１２を操作することにより、ヘッドレスト５を折りたたんで高さを低くすることができる。これにより、図５に示すように、ヘッドレスト５を取り外すことなく、フロントシート２のフロントシートバック６にヘッドレスト５が干渉しない状態でリヤシート３のシートバック４を前側に倒すことができる。従って、シートの構造や配列に制約がなく、狭いスペースであってもヘッドレスト５を取り外すことなくシートバック４を前側に傾動させることが可能になる。
【００５５】
また、中央の２つの矩形ブロック１１ｃを途中まで折りたたんだ状態に位置を規制することができるので、ヘッドレスト５の位置を前側に突出させて使用することができる。このため、乗員の頭を支える位置を任意に調整することができ、乗員の好みに合わせたヘッドレスト５の状態を選択することが可能になる。
【００５６】
また、矩形ブロック１１を４分割したウレタン製部材を互いに連結してヘッドレスト５を構成したので、使用時の剛性を確保した状態で容易に折りたたんで高さを低くすることができる。尚、矩形ブロック１１の分割数は４分割に限定されず、高さを低くできる分割数であればよい。また、ウレタン製以外の材料で矩形ブロックを構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【００５７】
本発明は、前側に傾動自在なシートバックを有する車両用シートの産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【００５８】
１ 車両
２ フロントシート
３ リヤシート
４ シートバック
５ ヘッドレスト
６ フロントシートバック
１０ ヘッドレストステー
１１ 矩形ブロック
１２ 操作レバー
２１ シートバックフレーム
２２ ヘッドレストガイド
２３ ヘッドレストフレーム
２４ ステー
２５ 引っ張りばね
２７ 係止溝
２８ ばね
２９ 係止駒板
３０ 操作部
３１ ワイヤ
３２ リクライニングロック手段
【特許請求の範囲】
【請求項１】
シートクッションに対して傾動自在に備えられるシートバックと、
前記シートバックの上側に設けられるヘッドレストと、を備え、
前記ヘッドレストは、屈曲されることで前記ヘッドレストの高さを減少させる折りたたみ機構を有する
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項２】
請求項１に記載の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストは、前記車両の前方向に突出するように屈曲される
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項３】
請求項１もしくは請求項２に記載の車両用シートにおいて、
前記折りたたみ機構は、
前記シートバックに対して高さ方向に伸縮移動自在に備えられるヘッドレストステーと、
前記ヘッドレストステーを所定位置に位置決め移動させる移動機構とを備え、
前記ヘッドレストは、前記ヘッドレストステーに支持され、
前記移動機構により前記ヘッドレストステーが前記シートバックに対して縮み側に移動させられることで、前記ヘッドレストが屈曲される
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項４】
請求項３に記載の車両用シートにおいて、
前記移動機構は、
前記ヘッドレストステーを縮み側に付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記ヘッドレストステーを伸び側の所望位置に停止規制する停止規制手段とを備えた
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項５】
請求項４に記載の車両用シートにおいて、
前記停止規制手段は、前記ヘッドレストステーを伸び側の複数の所望位置に停止規制する
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項６】
請求項４もしくは請求項５に記載の車両用シートにおいて、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動の規制を解除する傾動規制解除操作手段が備えられ、
前記傾動規制解除操作手段の操作に連動して前記停止規制手段による前記ヘッドレストステーの停止規制が解除される
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項７】
請求項６に記載の車両用シートにおいて、
前記停止規制手段は、
前記ヘッドレストステーに設けられる切欠き溝と、
前記シートバック側に備えられ前記切欠き溝に付勢係止される係止部材とからなり、
前記傾動規制解除操作手段の操作により前記係止部材を前記切欠き溝から抜き外す方向に移動させる索体を備えた
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項８】
請求項１から請求項７のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストは、複数のブロックで構成され、前記複数のブロックとの境界部で屈曲される
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項１】
シートクッションに対して傾動自在に備えられるシートバックと、
前記シートバックの上側に設けられるヘッドレストと、を備え、
前記ヘッドレストは、屈曲されることで前記ヘッドレストの高さを減少させる折りたたみ機構を有する
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項２】
請求項１に記載の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストは、前記車両の前方向に突出するように屈曲される
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項３】
請求項１もしくは請求項２に記載の車両用シートにおいて、
前記折りたたみ機構は、
前記シートバックに対して高さ方向に伸縮移動自在に備えられるヘッドレストステーと、
前記ヘッドレストステーを所定位置に位置決め移動させる移動機構とを備え、
前記ヘッドレストは、前記ヘッドレストステーに支持され、
前記移動機構により前記ヘッドレストステーが前記シートバックに対して縮み側に移動させられることで、前記ヘッドレストが屈曲される
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項４】
請求項３に記載の車両用シートにおいて、
前記移動機構は、
前記ヘッドレストステーを縮み側に付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記ヘッドレストステーを伸び側の所望位置に停止規制する停止規制手段とを備えた
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項５】
請求項４に記載の車両用シートにおいて、
前記停止規制手段は、前記ヘッドレストステーを伸び側の複数の所望位置に停止規制する
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項６】
請求項４もしくは請求項５に記載の車両用シートにおいて、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動の規制を解除する傾動規制解除操作手段が備えられ、
前記傾動規制解除操作手段の操作に連動して前記停止規制手段による前記ヘッドレストステーの停止規制が解除される
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項７】
請求項６に記載の車両用シートにおいて、
前記停止規制手段は、
前記ヘッドレストステーに設けられる切欠き溝と、
前記シートバック側に備えられ前記切欠き溝に付勢係止される係止部材とからなり、
前記傾動規制解除操作手段の操作により前記係止部材を前記切欠き溝から抜き外す方向に移動させる索体を備えた
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項８】
請求項１から請求項７のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストは、複数のブロックで構成され、前記複数のブロックとの境界部で屈曲される
ことを特徴とする車両用シート。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【公開番号】特開２０１２−２０６６２３（Ｐ２０１２−２０６６２３Ａ）
【公開日】平成２４年１０月２５日（２０１２．１０．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−７４１４３（Ｐ２０１１−７４１４３）
【出願日】平成２３年３月３０日（２０１１．３．３０）
【出願人】（０００００６２８６）三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】（０００１７６８１１）三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１０月２５日（２０１２．１０．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年３月３０日（２０１１．３．３０）
【出願人】（０００００６２８６）三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】（０００１７６８１１）三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Ｆターム（参考）】
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