説明

車両用シート

【課題】アンダートレイ、タオルバーを簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置できない。
【解決手段】把持溝20dがアンダートレイの前面下部に形成され、把持溝にタオルバーのフロントバー16bを把持させることにより、フロントバーを軸受としてアンダートレイ20が揺動して引き出される。把持溝へのフロントバーの把持により、アンダートレイ20、タオルバー16が一体化され、アンダートレイの取手片20bを持ち上げると、フロントバーも持ち上げられてロックオフされる。アンダートレイ上面の受け皿部20aの内部に入り込むストッパ22がシートクッション18Cから下方に延び、ストッパは受け皿部の前縁、後縁に当接してアンダートレイの揺動範囲を限定する。アンダートレイの初期位置においてサイドバー16aに下方から係合する係合突起20dがアンダートレイの側面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションの下方にアンダートレイを配設するとともに、シートスライド装置を介在して車床上を前後方向にスライド可能でそのスライド位置をロック機構でロックし、操作レバーの操作のもとでロックオフされる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいては、車床に固定されたロアレールと、シートクッションを載せてロアレールにスライド自在に組み付けられたアッパレールとを備えたシートスライド装置を車床との間に配置して車床上を前後方向にスライド可能とした構成が広く採用されている。
【0003】
シートスライド装置のもとで前後方向にスライド可能な車両用シートにおいては、ロック機構によって左右それぞれのロアレールに対してアッパレールがロックされることにより、ロアレールに対してシートは所定のスライド位置にロックされ、操作レバーを操作してロック機構によるロックを解除(ロックオフ)するようになっている(たとえば、特開平09−011780号公報)。操作レバーとして、前後方向に互いに平行に延びた左右のサイドアームをフロントバーで連結した平面略コ字形状にパイプ材を折曲加工して成形された操作レバーが知られており、フロントバーを持ち上げると、ロック機構による左右のロックを同時に解除(ロックオフ)できる。平面略コ字形状の操作レバーはタオルバーと称される。
【0004】
スライド可能な車両用シートのシートクッションの下方空間を有効利用するために、アンダートレイをシートクッションの下方に引き出し可能に配置した構成が知られている。アンダートレイはその上面を受け皿部とし、アンダートレイの前端には掴みやすくするためその内側を中空とした取手片が設けられ、取手片を掴んで前方に引き出すことによって、上面の受け皿部への物(収納物)の収納、取出しが行われる(たとえば、特開2007−050829号公報)。通常、アンダートレイはプラスチックから成形される。
【0005】
アンダートレイは、たとえば、シートクッション下面に設けられて前後方向に延びた左右一対の支持レールに支持されてシートクッションの前方に引き出し可能に支持されている(たとえば、実開平05−013848号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−011780号公報
【特許文献2】特開2007−050829号公報
【特許文献3】実開平05−013848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、タオルバー(平面略コ字形状の操作レバー)はフロントバーを持ち上げてロック機構をロックオフするように形成され、容易に持ち上げられるように、フロントバーはシートクッション前端の直下に設けられる。しかしながら、シートクッションの下方空間にアンダートレイが配置されており、シートクッション前端直下の空間はアンダートレイの引き出し口に該当し、フロントバーがアンダートレイ前端より前に位置してアンダートレイの引き出し軌跡を横切るため、引き出しの障害となるおそれがある。
タオルバーをフロントバー側で上方に折曲成形させてフロントバーをアンダートレイの引き出し軌跡より上方に配置すれば、アンダートレイの引き出し軌跡との干渉が避けられる。しかしながら、上方に折曲成形したフロントバーに着座者の脚部が触れて着座者に不快感を与えるおそれがある。
【0008】
特開2007−050829号公報では、タオルバーは、ロック機構のロックを維持したまま第1、第2の2つの位置を切り替え可能とされ、第1または第2の位置から持ち上げられてロックオフされるように構成されている。ここで、第1の位置ではタオルバーのフロントバーはアンダートレイの引き出し軌跡を横切って位置するとはいえ、第2の位置が第1の位置より下方でアンダートレイの引き出し軌跡を避けて設定されているため、フロントバーは第2の位置ではアンダートレイの引き出しの障害とならない。
【0009】
そして、通常は持ち上げの容易な第1の位置にタオルバーを設定し、タオルバーを第1の位置から押し下げて第2の位置に切り替えれば、アンダートレイはフロントバーに邪魔されずに引き出せる。なお、タオルバーが第1の位置にあっても、タオルバーのフロントバーがアンダートレイの引き出し軌跡より上方にないため、フロントバーに着座者の脚部が触れて着座者に不快感を与えるおそれはない。
【0010】
第1、第2の位置にタオルバーを切り替え可能とすることによりアンダートレイ、タオルバーが互いに干渉することなく併設できる。しかしながら、タオルバーの切り替え機構や第1、第2の位置にタオルバーを保持する構成が必要となり、構成の複雑化が避けられない。
【0011】
また、前後方向にスライド可能なアンダートレイをタオルバーに併設する公知の構成では、アンダートレイの有効幅が過剰に制限され、受け皿部を広く設定できない。
すなわち、タオルバーの左右のサイドアームは、シートスライド装置の内側でシートスライド装置に沿って前後に延びて位置する。そのため、アンダートレイを支持する支持レールは、通常、タオルバーのサイドアームの内側に配置されることとなり、アンダートレイの幅が過剰に制限されて、十分な有効幅が確保し難い。
そして、アンダートレイの有効幅が過剰に制限されると、物を収納するための受け皿部を幅方向に広く設定できず、幅方向に広い受け皿部が得られない。
【0012】
本発明は、アンダートレイの有効幅を過剰に制限することなく、アンダートレイ、タオルバーが簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置される車両用シートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明では、タオルバーのフロントバーを軸受としてアンダートレイが前方に揺動して引き出されるともに、アンダートレイの取手片を持ち上げると、アンダートレイとともにフロントバーが持ち上げられてアンダートレイの取手片がタオルバーの操作片を兼ねる構成となっている。
すなわち、請求項1に係る本発明によれば、上面を受け皿部とし前端に取手片を設けたアンダートレイを引き出し可能にシートクッションの下方に配置するとともに、フロントバー、左右のサイドアームを持つ平面略コ字形状のタオルバーをシートスライド装置のロック解除のための操作レバーとしたシートスライド装置付の車両用シートにおいて、タオルバーのフロントバーを把持する把持溝をアンダートレイの前面下部に設けることにより、把持溝に把持されたフロントバーを軸受としてアンダートレイが前方に揺動して引き出されるとともに、アンダートレイの取手片を持ち上げれば、アンダートレイとともにフロントバーが持ち上げられる構成となっている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明では、支持レールが不要となり、アンダートレイの前面下部に把持溝を設けてタオルバーのフロントバーを把持するだけで、アンダートレイが揺動のもとで引き出し可能となるとともにアンダートレイの取手片がタオルバーの操作片としても機能し、アンダートレイ、タオルバーが簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置できる。
また、支持レールが不要であるため、アンダートレイの有効幅が過剰に制限されず、受け皿部を幅方向に広く設定でき、従来のタオルバー、シートスライド装置をそのまま使用して、十分な容量を持つアンダートレイが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用シートの概略側面図を示す。
【図2】(A)は本発明の一実施例に係る車両用シートに装着されるアンダートレイ、タオルバーの前方からの斜視図,(B)はアンダートレイの後方からの斜視図、(C)は変形例に係るアンダートレイの前壁の破断図をそれぞれ示す。
【図3】(A)(B)(C)は、初期位置、持ち上げ位置、揺動位置でのアンダートレイの側面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
把持溝がアンダートレイの前面下部に形成され、把持溝にタオルバーのフロントバーを把持させることにより、フロントバーを軸受としてアンダートレイが揺動して引き出される。把持溝へのフロントバーの把持により、アンダートレイ、タオルバーが一体化され、アンダートアンダートレイ上面の受け皿部の内部に入り込むストッパがシートクッションから下方に延びており、ストッパは受け皿部の前縁、後縁に当接してアンダートレイの揺動範囲を限定する。タオルバーの初期位置においてサイドバーに下方から係合可能な係合突起がアンダートレイの側面に形成されている。
【実施例】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施例について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る車両用シートの概略側面図、図2(A)は本発明の一実施例に係る車両用シートに装着されるアンダートレイ、タオルバーの前方からの斜視図,(B)はアンダートレイの後方からの斜視図をそれぞれ示す。
【0018】
図1に示すように、本発明の車両用シート10はシートスライド装置12を備え、このシートスライド装置は、車床14に固定されたロアレール12Lと、ロアレールに摺動自在に組み付けられたアッパレール(図示しない)と、ロアレールに対するアッパレールの摺動をロックして規制するロック機構(図示しない)とを有し、このロック機構は、操作レバー16を操作してロックオフするように構成されている。ここで、アッパレールにはシートクッション18Cが積載されているとともに、シートクッション後端にシートバック18Bがリクライニング装置(リクライナー、図示しない)を介在して前後傾動可能に取り付けられている。
【0019】
図2(A)に示すように、操作レバー16は、前後方向に互いに平行に延びた左右のサイドアーム16aの前端をフロントバー16bで一体に連結してパイプ材を平面略コ字形状に折曲加工したタオルバーから形成されている。そして、サイドアーム16aの後端は平板形状にプレス成形され、シートスライド装置の左右のロック機構に対してそれぞれ連動可能または一体揺動可能に組み付けられている。このタオルバー(操作レバー)16は、たとえばサイドアーム16aまたはその延長部材上に規定された所定位置を支点として上下揺動可能に支持され、フロントバー16bの持ち上げに伴うサイドアームの上方への揺動により、シートスライド装置の左右のロック機構のロックを同時に解除(ロックオフ)するように構成されている。
【0020】
車両用シート10は、シートスライド装置のロック機構に対するタオルバーのフロントバー16aの持ち上げによるロックオフ操作によって、車床14上を前後方向にスライドでき、フロントバーへの操作力を解除すればロック機構によってアッパーレールがロックされることにより、車両用シートは任意の前後位置に保持(ロック)される。
なお、前後左右はドライバーシートに着座したドライバーから見た方向をいい、Fr、Rr、L、Rで示す。また、上下をUp、Lwで示す。
【0021】
この種のシートスライド装置12の基本構成は、たとえば特開平09−011780号公報等に記載されているように公知であり、その構成自体はこの発明の趣旨でないため、詳細な説明は省略する。
【0022】
図1に示すように、シートクッション18Cの下方空間を有効利用するために、アンダートレイ20がシートクッションの下方に配設されている。本発明では、後述するように、アンダートレイ20はタオルバー16を伴って持ち上げられるとともに、前後方向に揺動されるため、アンダートレイの十分な配置空間を確保するように、シートクッション18Cは、その横方向の中央部18C’が前端から前後方向の中央部にかけて肉薄に形成されて横方向の中央部直下に凹所18C−1が形成されている。この凹所18C−1がシートクッション18Cの恒常的な下方空間に連通しているため、アンダートレイ20を格納可能な大きな空間がシートクッションの下方に規定される。
【0023】
図1に加えて図2(A)(B)を見るとよくわかるように、アンダートレイ20は、上面を受け皿部20aとし、前端(前面上端)に取手片20bを設けた形状に、たとえばプラスチックから成形される。前端の取手片20bは、掴みやすいように、アンダートレイの前壁の上端を下方に折り返して内側を中空とした玉縁形状としている。実施例では、受け皿部20aの後壁の上端、左右側壁の上端も下方に折り返した玉縁形状に成形されている。
【0024】
図2(A)からよくわかるように、タオルバーのフロントバー16bを把持する把持溝20cがアンダートレイの前面下部(前壁20fの前面下部)に形成されている。この把持溝20cは、前方に開口した挿入口20c’がフロントバー16bの直径よりわずかに小さい形状となるように形成されている。そのため、フロントバー16bが把持溝20cに押し込まれると、挿入口20c’の縁部は弾性変形のもとで拡幅されてフロントバーの通過を許容し、通過後は原形に復帰してフロントバーの抜け落ちを妨げることにより、フロントバーは把持溝に確実に把持される。
フロントバー16bがアンダートレイの前面下部の把持溝20cに把持されることにより、アンダートレイ20はフロントバーを軸受(揺動軸)として前後方向に揺動可能となる。
【0025】
実施例では、把持溝20cは横方向に連続してアンダートレイの前面下部に形成されている。しかし、把持溝20cはフロントバー16bを抜け落ちることなく把持すれば足り、たとえば、図2(C)に示すように、切欠き付の弾性把持片20c’’をアンダートレイ20と一体成形して前方に延ばし、この弾性把持片の内部に形成される把持溝でフロントバーを弾性的に把持してもよい。また、この弾性把持片20c’’は横方向に連続して設けることなく、断片的に形成してもよい。
【0026】
アンダートレイの揺動範囲を限定(規定)するストッパ22が車両用シート10から延出している。ストッパ22は、たとえば、シートクッションフレーム(図示しない)に溶着されてシートクッション18Cから下方に延びて、アンダートレイ上面の受け皿部20aの内部に入り込んでいる。
【0027】
図3(A)(B)(C)は、初期位置、持ち上げ位置、揺動位置でのアンダートレイの側面図をそれぞれ示す。
たとえば、ストッパ22は左右に十分離反して2つ設けられ(図2(B)参照)、図3(A)に示すアンダートレイの初期位置ではアンダートレイ上面の受け皿部の前縁に相当するアンダートレイ前壁20fに当接し、図3(C)に示す(前方への)揺動位置では受け皿部の後縁に相当するアンダートレイの後壁20rに当接することによってアンダートレイの揺動範囲を限定(規定)する。
実施例では、ストッパ22を左右に十分離反して2つ設けているが、ストッパはアンダートレイの揺動範囲を限定すれば足り、その数、位置はこれに限定されない。たとえば、受け皿部の横方向の中央部にストッパを1つ設けてもよい。
【0028】
また、アンダートレイのサイドバー16aに下方から係合される係合突起20dが、アンダートレイの左右の側面(側壁20sの外面)の後半部にそれぞれ形成されている。たとえば、この係合突起20dは部分球形状に形成される。
係合突起20dが左右の側面でアンダートレイのサイドバー16aに下方から係合されているため、図3(A)に示すアンダートレイの初期位置では前方へのアンダートレイの揺動が防止される。
【0029】
図3(A)(B)(C)を参照しながら、初期位置、持ち上げ位置、揺動位置でのアンダートレイの動きについて説明する。なお、初期位置は格納位置、持ち上げ位置はロックオフ位置、揺動位置は引き出し位置ということもできる。
通常、アンダートレイ20は図3(A)に示す初期位置にあり、この初期位置の状態でシートクッション18Cの下方に格納されている。この初期位置(格納位置)においては、シートクッション18Cから延びたストッパ22がアンダートレイ前壁20fの上端に当接するとともに、アンダートレイ側壁の左右の係合突起20dがアンダートレイのサイドバー16aに下方から係合され、ストッパ、サイドバーによって隙間なくアンダートレイが保持されている。
【0030】
ストッパ22によってフロントバー16bの周りでの後方へのアンダートレイ20の倒れが、サイドバー16aによって前方への倒れがそれぞれ阻止されるため、車両の走行時においても、アンダートレイはその初期位置に確実に維持される。また、アンダートレイ20とストッパ22、サイドバー16aとの間に上下方向の隙間がないため、車両の走行時での振動に起因するアンダートレイ20のガタの発生が防止される。
【0031】
アンダーバーの把持溝20cにタオルバーのフロントバー16bが把持されてアンダーバー20、タオルバー16が一体化されているため、アンダートレイの初期位置でアンダートレイの取手片20bを矢視bのように持ち上げれば、取手片の持ち上げに伴ってフロントバーも一体的に持ち上げられて、シートスライド装置がロックオフされる。つまり、アンダートレイの取手片20bがタオルバーの操作片として機能する。
【0032】
フロントバー16はアンダートレイ前面下部の把持溝20cに把持され、アンダートレイの取手片20bはタオルバーの本来の操作片であるフロントバーより上方に位置している。そのため、アンダートレイの取手片20bを無理なく掴んで迅速、容易に持ち上げることができ、アンダートレイの本来の取手片であるフロントバー16bを持ち上げる場合に比較してシートスライド装置のロック機構のロックを簡単に解除(ロックオフ)できる。
【0033】
なお、アンダートレイの取手片20bによるタオルバー16の持ち上げ操作のもとでシートスライド装置のロック機構をロックオフすれば、前後方向へのシート10のスライドが可能になる。そして、シート10の任意の位置において、アンダートレイの取手片20bに対する操作力(持ち上げ力)を除けば、初期位置へのアンダートレイ20の下降、ひいてはタオルバー16の初期位置への下降に伴うロック機構のロックにより、シートは当該位置に保持(ロック)される。
【0034】
シート10のスライド位置のロック状態においてアンダートレイ20を使用する場合には、取手片20bを掴んで前方に引く。すると、アンダートレイ側面の係合突起20dはアンダートレイのサイドバー16aに押圧されてアンダートレイの弾性のもとで内側に撓んで逃げ、サイドバー16aの内側を通過可能となる。つまり、サイドバー16aによる係合突起20dの係合が解除され、アンダートレイ20は引き出し可能となる。そして、取手片20bをさらに引けば、タオルバー20はフロントバー16bを軸受(揺動中心)として矢視cのように揺動して(フロントバー16bの周りで図示時計方向に揺動して)、図3(C)に示すように、シートクッション18Cから延びたストッパ22が受け皿部の後縁に相当するアンダートレイの後壁20rに当接するまで、アンダートレイは引き出される。そして、この前方に揺動して引き出された状態でアンダートレイ上面の受け皿部20への物(収納物)の出し入れが行われる。
【0035】
タオルバーのフロントバー16bは、アンダートレイ前面下部の把持溝20cに把持されてフロントバーの軸受(揺動中心)となっているため、フロントバーがタオルバーの揺動軌跡に干渉することはあり得ず、干渉を生じることなくアンダートレイ、タオルバーが配置できる。
また、シート10からストッパ22を延ばすとともにアンダートレイ20に把持溝20c、係合突起20dを設けるだけでアンダートレイ、タオルバーが併設でき、タオルバーやシートスライド装置に変更を加える必要がない。つまり、従来のタオルバー、シートスライド装置をそのまま使用して、アンダートレイ、タオルバーがシートクッションの下方に配置できる。
【0036】
アンダートレイ20が把持溝20cに把持されるフロントバー16bを軸受(揺動軸)として揺動されるため、アンダートレイ上面の受け皿部20aは、たとえば、把持溝を中心とした略円弧形に開口した横断面形状に形成される。そして、受け皿部20aに収納物を出し入れするこの揺動位置が安定して維持されるように、ストッパ22に当接されるアンダートレイの後壁20rの位置が決められる。
【0037】
アンダートレイ20は前方に揺動して引き出される構成であるため、サイドアームの内側に位置して前後方向でのアンダートレイのスライドをガイドする支持レールが不要となる。そのため、アンダートレイ20の有効幅が支持レールによる制限を受けることなく十分に拡張でき、受け皿部を幅方向に広く設定でき、幅方向に広い受け皿部20aが確保できる。
【0038】
支持レールが不要となるだけでなく、タオルバーを第1、第2の位置に切り替える特開2007−050829号公報のような構成でないため、タオルバーの切り替え機構や第1、第2の位置にタオルバーを保持する構成が不要となり、この点からも構成が簡単化される。
【0039】
図3(C)の揺動位置(引き出し位置)において、取手片20bを押し込めば、アンダートレイ20は矢視cとは逆方向に、つまり、フロントバー16bの周りで図示反時計方向(後方)に揺動する。そして、係合突起20dがアンダートレイのサイドバー16aに上方から押圧され、弾性変形し内側に撓んで逃げるため、サイドバーの内側を通過して下方から係合する元の位置に戻され、ストッパ22に前壁20fが当接することによってその(後方へ)揺動が阻止されて、図3(A)に示す初期位置にアンダートレイ20が復帰する。
【0040】
アンダートレイ側面の係合突起20dは、アンダートレイの初期位置ではアンダートレイのサイドバー16aに下方から係合されてアンダートレイの前方への倒れを阻止可能で、かつ、取手片20bを掴んで前方に引くと、アンダートレイのサイドバーに押圧されて弾性のもとで内側に撓んで逃げてサイドバーによる係合を解除してアンダートレイの揺動を許容する形状とされ、実施例では、係合突起20dは部分球形状に形成されているが、部分球形状に限定されない。
【0041】
上記のように本発明によれば、支持レールが不要となり、アンダートレイの前面下部に把持溝を設けてタオルバーのフロントバーを把持するだけで、アンダートレイが揺動のもとで引き出し可能となるとともにアンダートレイの取手片がタオルバーの操作片としても機能し、アンダートレイ、タオルバーが簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置できる。
また、支持レールが不要であるため、受け皿部を幅方向に広く設定でき、幅方向に広い受け皿部が確保でき、従来のタオルバー、シートスライド装置をそのまま使用して、十分な容量を持つアンダートレイが得られる。
【0042】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0043】
たとえば、実施例では、ストッパ22はアンダートレイ上面の受け皿部20aに入り込んで、受け皿部の前縁であるアンダートレイの前壁20f、受け皿部の後縁であるアンダートレイの後壁20rにそれぞれ当接して、(前後方向での)アンダートレイの揺動範囲を限定している。しかし、ストッパ22はアンダートレイの揺動範囲を限定すれば足り、前後方向でのアンダートレイ20との当接箇所は、受け皿部の前縁、後縁に限定されない。たとえば、ストッパ22の当接される突起などをアンダートレイ20に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、自動車のシートに限定されず、シートスライド装置のロック機構のロックを操作レバー(タオルバー)で解除する飛行機、船舶、電車等の車両のシートに広範囲に応用できる。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用シート
16 タオルバー(操作レバー)
16a サイドアーム
16b フロントバー
20 アンダートレイ
20a 受け皿部
20b 取手片
20c 把持溝
20c’’ 弾性把持片
20d 係合突起
20f 前壁
20r 後壁
20s 側壁
22 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を受け皿部とし前端に取手片を設けたアンダートレイを引き出し可能にシートクッションの下方に配置するとともに、フロントバー、左右のサイドアームを持つ平面略コ字形状のタオルバーをシートスライド装置のロック解除のための操作レバーとしたシートスライド装置付の車両用シートにおいて、
タオルバーのフロントバーを把持する把持溝をアンダートレイの前面下部に設けることにより、把持溝に把持されたフロントバーを軸受としてアンダートレイが前方に揺動して引き出されるとともに、アンダートレイの取手片を持ち上げれば、アンダートレイとともにフロントバーが持ち上げられることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
アンダートレイの揺動範囲を規定するストッパが、当該車両用シートから延出するとともに、
アンダートレイの初期位置においてアンダートレイのサイドバーに下方から係合されてアンダートレイの揺動を規制し、アンダートレイを揺動させるために所定の力がアンダートレイに加えられると内側に逃げてアンダートレイの揺動を許容する係合突起が、アンダートレイの側面に形成されている請求項2記載の車両用シート。
【請求項3】
係合突起は、アンダートレイの左右の側面の後半部にそれぞれ設けられた部分球形状の突起からなる請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
ストッパは、アンダートレイ上面の受け皿部の内部まで延びて、アンダートレイの初期位置ではアンダートレイ上面の受け皿部の前縁に当接し、揺動時には受け皿部の後縁に当接してアンダートレイの揺動範囲を規定する請求項2または3記載の車両用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−235940(P2012−235940A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107672(P2011−107672)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】