説明

車両用シート

【課題】シート後方側からシートバックを前に倒し込むように操作する操作部材の操作力を低減するためのリンク長をより長く確保できるようにする。
【解決手段】シートバック2を前に倒し込む操作をするための操作ストラップ6(操作部材)が、シート本体1のシート後方側から操作される位置に配設された車両用シートであり、操作ストラップ6に一端が連結されて回転操作される操作リンク7と、操作リンク7の下端部に回転可能に軸連結されて、操作リンク7から操作ストラップ6の操作に伴う回転動力の伝達を受けてリンク運動し、シートバック2の背凭れ角度の固定状態を解除操作するための回転動力を出力するリンク機構8と、リンク機構8と操作リンク7の下端部との軸連結部(連結ピン7A)に巻装された状態として設定され、操作リンク7を操作前の初期位置に向けて回転附勢するトーションスプリング7Cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートバックを前に倒し込む操作をするための操作部材が、シート本体のシート後方側から操作される位置に配設された車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、後列シートの着座者が前列シートを前に押し傾けてスライド退避させることのできるウォークイン操作が可能とされた構成が知られている。ここで、下記特許文献1には、上記ウォークイン操作のための操作部材が、前列シートの後ろ下側の側部に配設された構成が開示されている。この特許文献1に開示された操作用の操作部材は、リンク機構を介して、シートバックの背凭れ角度を固定しているリクライニング装置の操作軸に連結されており、リンク機構により弱い操作力でリクライニング装置のロック状態を解除してウォークイン操作を行えるようになっている。上記操作部材は、その操作後には、リンク機構に掛着された引張ばねの附勢力により、操作前の初期位置に戻されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−83343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、引張ばねは、互いにリンク連結された2本のリンク同士を開く方向に附勢するように用いられているため、各リンクに延設された互いの連結点よりも更に延長された部位間に掛着されている。これにより、各リンクに必要な長さが、実際に動力伝達機能を果たす長さ分よりも更に長く必要となっており、操作部材の操作力を低減することのできるリンク長の確保が十分に行えなくなっている。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シート後方側からシートバックを前に倒し込むように操作する操作部材の操作力を低減するためのリンク長をより長く確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
第1の発明は、シートバックを前に倒し込む操作をするための操作部材が、シート本体のシート後方側から操作される位置に配設された車両用シートである。この車両用シートは、操作部材に一端が連結されて回転操作される操作リンクと、操作リンクの他端に対して回転可能となるように軸連結されて、操作リンクから操作部材の操作に伴う回転動力の伝達を受けてリンク運動し、シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除操作するための回転動力を出力するリンク機構と、リンク機構と操作リンクの他端との軸連結部に巻装された状態として設定され、操作リンクを操作前の初期位置に向けて回転附勢するトーションスプリングと、を有する。
【0006】
この第1の発明によれば、操作リンクを操作前の初期位置に向けて附勢するばねをトーションスプリングとしたことにより、引張ばねや圧縮ばね等の変形方向が直線状となるばねを用いる場合と比べて、ばねの設置スペースを小さく抑えることができる上、ばねの引掛け位置に制約がある場合に起こるリンク長が短縮される影響を小さく抑えることができる。例えば、上記直線状に変形するばねを用いる場合、ばねの引掛け位置は、操作リンクの回転附勢方向の設定によっては、操作リンクの軸連結部よりも更に延長された部位に掛けなければならないことがある。これにより、操作リンクの軸連結部を操作リンクのリンク端部に設定することができなくなり、操作部材の操作力を低減するためのリンク長の確保が十分に行えなくなってしまうおそれがある。しかし、トーションスプリングの場合、操作リンクの軸連結部に巻装して設けることができるため、操作リンクの軸連結部を操作リンクのリンク端部に設定することができる。したがって、上記のような問題は起こらず、操作部材の操作力を低減するための操作リンクのリンク長をより長く確保することができ、操作力を好適に軽減することができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、次の構成となっているものである。すなわち、操作部材は、シート後方側に引張られて操作される構成とされている。そして、この操作部材の操作方向とほぼ同方向に、シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除操作する解除軸に連結された解除リンクが、延出して設けられている。操作リンクは、上記操作部材との連結点から下方側に延出された高さ方向に長尺なリンク長を有した構成とされている。リンク機構は、操作リンクの下端と解除リンクの後端とを繋いで、操作部材の操作力を解除リンクに伝達する構成とされている。
【0008】
この第2の発明によれば、操作部材と解除リンクとを上記のように同方向に向けて配設し、操作リンクを上記操作部材との連結点から下方側に延出させた高さ方向に長尺なリンク長をもたせて構成したことにより、解除リンクを回転操作するための操作部材の操作力をより好適に軽減することができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第2の発明において、次の構成となっているものである。解除リンクは、シート前方側にも延出した形状とされて、この延出した部位が、シート本体の着座乗員が着座姿勢で操作をしてシートバックの背凭れ角度の固定状態を解除操作することのできる構成とされている。操作リンクの他端とリンク機構との連結は、操作部材の操作による時には、互いの当接構造により回転動力が伝達されるが、着座乗員による解除リンクの上記延出した部位の操作による時には、互いの当接構造が離れる方向に作用して回転動力が伝達されない連結となっている。
【0010】
この第3の発明によれば、解除リンクが上記構成とされていることにより、シート本体の着座乗員が着座姿勢で解除リンクを操作して、シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除操作することができる。この操作時には、係る操作力はリンク機構から操作リンクには伝達されることなく逃がされる。したがって、解除リンクには操作リンクにかかるトーションスプリングの附勢力はかからないため、解除リンクを軽い力で操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の車両用シートの概略構成を表した側面図である。
【図2】車両用シートをウォークイン操作した状態を表した側面図である。
【図3】リンク機構の初期状態を拡大して表した側面図である。
【図4】図3の状態から操作部材が操作された状態を表した側面図である。
【図5】図3の状態から解除レバーが操作された状態を表した側面図である。
【図6】リンク機構の初期状態を反対側から見て表した側面図である。
【図7】リクライニング装置の断面構造を表した図6のVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の車両用シートの構成について、図1〜図7を用いて説明する。本実施例の車両用シートは、図1に示すように、3列シートを備えた車両の運転席シートの後側の2列目のシートとして構成されており、そのシート本体1が、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えている。上記シートバック2は、図3に示すように、その骨格を成すシートバックフレーム2Fの左右の両サイドフレーム2F1,2F1の下端部が、それぞれ、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライニング装置5,5を間に介して、シートクッション3の骨格を成すシートクッションフレーム3Fの左右の両サイドフレーム3F1,3F1の後端部と連結されている。なお、図6に示すように、上述した各リクライニング装置5,5を介してシートバックフレーム2Fの左右の両サイドフレーム2F1,2F1の下端部と連結されたシートクッションフレーム3Fの左右の両サイドフレーム3F1,3F1の後端部のパーツは、シートクッションフレーム2Fと結合されて一体とされる構成であるが、概念上は、シートバックフレーム2Fの構成の一部を成すものとなっている。上記各リクライニング装置5,5は、図3に示すように、常時は、シートバックフレーム2Fのシートクッションフレーム3Fに対する回転をロックした状態として、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態となって保持されており、シートクッション3の車両外側の側部に設けられた解除レバー4を引き上げる操作によって、それらのロック状態が一斉に解除されて、シートバック2の背凭れ角度を変えられる状態に切り替えられるようになっている。
【0014】
ここで、各リクライニング装置5,5は、略円盤状の形に形成されており、それらの軸心部に挿通された各解除軸5H,5Hの軸回転操作によって、それぞれのロック解除の切り替え操作が行われるようになっている。なお、各リクライニング装置5,5の具体的な構成については後述することとする。上述した各解除軸5H,5Hは、図示しないコネクティングロッドによって互いに一体的に連結されており、車両外側に配された解除軸5Hの外側の端部には、上述した解除レバー4が一体的に連結されている。これにより、各解除軸5H,5Hは、解除レバー4が引き上げ操作される前の常時は、各リクライニング装置5,5を回転止めしたロック状態に保持する状態とされており、図5に示すように、解除レバー4が引き上げ操作されるのに伴って、上記図示しないコネクティングロッドを介して一斉に軸回転操作されて、各リクライニング装置5,5のロック状態(回転止め状態)を解除するようになっている。また、各解除軸5H,5Hは、上記解除レバー4の引き上げ操作が解除されることにより、附勢によって一斉に元のロック状態(回転止め状態)に戻されて、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態に戻すようになっている。
【0015】
ここで、上述したシートバック2は、その左右両側のサイドフレーム2F1,2F1と、シートクッション3の左右両側のサイドフレーム3F1,3F1との間に掛着された各渦巻きばね2S,2Sの附勢力によって、常時、各リクライニング装置5,5の軸心まわりに前に倒し込まれる方向に附勢された状態とされている。上記各渦巻きばね2S,2Sは、その渦巻状に巻かれた内側の端部が、シートクッション3の各サイドフレーム3F1,3F1に掛着されて固定されており、外側の端部が、シートバック2の各サイドフレーム2F1,2F1の外側面に結合された各L字板2F2,2F2のシート外側に突出した板部の後ろ側の縁部にそれぞれ掛着されて固定されている。これにより、シートバック2は、上記各リクライニング装置5,5のロック状態が解除されたときには、上述した各渦巻きばね2S,2Sの附勢力によって、着座乗員の背部に押し当てられた状態となって、着座乗員の背部を前後に傾動させる動きに追従してその背凭れ角度位置を変化させるようになっている。
【0016】
また、図2及び図5に示すように、シートバック2は、シート本体1に人が着座していない状態で各リクライニング装置5,5のロック状態が解除されることにより、上記各渦巻きばね2S,2Sの附勢力によって前に倒し込まれ、上述したシートバック2の各サイドフレーム2F1,2F1に結合された各L字板2F2,2F2の前側の縁部がそれぞれシートクッション3の各サイドフレーム3F1,3F1に形成された各係止角部3F2,3F2に当たる位置(前傾位置)まで前傾して、係止されるようになっている。そして、図5に示すように、上記シートバック2の前傾移動に伴って、シートクッション3の車両外側のサイドフレーム3F1に軸支された蹴リンク10が、同側のシートバック2のサイドフレーム2F1に結合されたL字板2F2により前に蹴り回されて、同蹴リンク10の下端部に繋がれたケーブル20が牽引操作されるようになっている。そして、このケーブル20の牽引操作によって、シート本体1をフロアに対してスライド可能に連結しているスライダ装置30のスライドロック状態が解除される。これにより、図2に示すように、シート本体1が、上記シートバック2が前傾した姿勢状態でシート前方側にスライドさせることができる状態となり、この状態から、シート本体1を前に押し動かすことで、シート本体1をその後列側のシートへの乗降スペースを広く空けたいわゆるウォークイン状態に切り替えることができる(以下、この一連の操作を「ウォークイン操作」と呼ぶ。)。なお、上述したスライダ装置30及びスライドロック構造は公知の構成であるため、具体的な構成の説明は省略することとする。
【0017】
ところで、図2において前述したシート本体1のウォークイン操作は、例えば、使用者がシート本体1の外側となる乗降ドアの外側に立った位置から、解除レバー4に手を掛けて引き上げ操作することによって行われるが、このウォークイン操作は、シート本体1の後列側のシートに着座したシート後方側の位置からも行えるようになっている。すなわち、後列側のシートの着座者が、車両外へ出たいときに、その前列側のシート(シート本体1)を前へ退避させて乗降スペースを広くするための操作を、後列側のシートに着座した位置からも行えるようになっている。具体的には、シート本体1の後部には、シート後方側の位置から操作することのできる引張り操作式の操作ストラップ6がシート後方側に繰り出された状態で設けられており、この操作ストラップ6を後列シートの着座者がシート後方側に引張ることで、上述した解除レバー4を操作したときと同じように、各リクライニング装置5,5のロック状態を解除して、シート本体1をウォークイン状態に切り替えられるようになっている。ここで、操作ストラップ6が、本発明の「操作部材」に相当する。この操作ストラップ6は、上述した解除レバー4と繋がれており、その引張り操作を行うことによって解除レバー4を引き上げる構成となっているが、その操作を軽い力で行えるように、解除レバー4に対して、操作リンク7とリンク機構8とを間に介して連結された構成となっている。
【0018】
以下、上述した解除レバー4や操作ストラップ6の操作構造、及びこれら操作部材によって操作される各リクライニング装置5,5の具体的な構成について説明する。先ず、各リクライニング装置5,5の構成について説明する。なお、各リクライニング装置5,5は、互いに左右対称の向きに配置されており、双方の基本的な構成は同じものとなっている。したがって、以下では、これらを代表して、一方側のリクライニング装置5の構成についてのみ説明することとする。すなわち、リクライニング装置5は、図7に示すように、シートバック2のサイドフレーム2F1の外側の面部に面当接されて一体的に溶着される円盤形状のラチェット5Aと、シートクッション3のサイドフレーム3F1の内側の面部に面当接されて一体的に溶着される円盤形状のガイド5Bと、を有し、これらラチェット5Aとガイド5Bとが、互いに軸方向に嵌合されて同軸まわりに相対回転可能となる状態とされて、外周リング5Cにより互いに軸方向に外れ止めされた構成となっている。上記ラチェット5Aとガイド5Bとは、これらの間に組み込まれた外歯を有する2個のポール5D,5Dが、ガイド5Bの軸心部に支持されたヒンジカム5Fの軸回転に伴って、同ヒンジカム5Fによりスライド操作されるスライドカム5Eを介してラチェット5Aと噛合するよう押圧されたり、ラチェット5Aとの噛合状態から外されたりすることで、互いの相対回転がロックされたり解除されたりする構成となっている。
【0019】
上記ヒンジカム5Fは、常時は、ガイド5Bとの間に掛着された渦巻きばね5Gの附勢力により回転附勢されて、各ポール5D,5Dをラチェット5Aと噛合させた状態に保持した状態となっている。これにより、リクライニング装置5は、常時は、ラチェット5Aとガイド5Bとの相対回転がロックされた状態(回転止め状態)として、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態に保持されている。しかし、上記ヒンジカム5Fは、その軸心部に挿通され回転方向に一体的とされた解除軸5Hが、上述した解除レバー4の操作によって回転操作されることにより、上記渦巻きばね5Gの附勢力に抗して回転操作されて、各ポール5D,5Dをラチェット5Aとの噛合状態から外すように引き戻す。これにより、ラチェット5Aとガイド5Bとの回転止めされた状態(ロック状態)が解除されて、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれる。また、ヒンジカム5Fは、上記解除レバー4の引き上げ操作が解除されることにより、上記渦巻きばね5Gの附勢力によって、各ポール5D,5Dを再びラチェット5Aと噛合させた状態に戻して保持するようになっている。以上が、各リクライニング装置5,5の基本構造となっている。
【0020】
次に、図3を参照して、解除レバー4の構成について説明する。解除レバー4は、上述した車両外側に配された解除軸5Hの外側の端部に一体的に連結されており、シート前方側へ延出する前アーム部4Aと、シート後方側へ延出する後アーム部4Bと、を有するシート前後方向に長尺な形に形成されている。ここで、解除レバー4が本発明の「解除リンク」に相当し、前アーム部4Aが本発明の「シート前方側に延出した部位」に相当する。上記解除レバー4は、その前アーム部4Aが、シート本体1に着座した乗員が手を届かせることのできるシート前方側位置まで延出した形状となっており、その操作時に把持される先端側部分の高さ位置が、解除レバー4の回転中心となる解除軸5Hとほぼ同じ高さ位置(若干低い位置)に設定されている。これにより、着座乗員が解除レバー4の前アーム部4Aを把持して上方側へ引き上げる操作によって、解除レバー4が効率的に回転変位することができるようになっており、握り手をほとんど捻ることなく簡便に所定位置までの引き上げ操作を行えるようになっている。
【0021】
次に、操作ストラップ6の操作構造について説明する。操作ストラップ6は、シート本体1の左右両サイド部に設定されたシートバック2とシートクッション3との連結部をシート外側からそれぞれ覆う各樹脂製のシールドSH,SHのうちの車両外側に設定されたシールドSHの後面部に入れられたスリット(図示省略)からシート後方側へ繰り出されて設けられている。詳しくは、操作ストラップ6は、上記シールドSHの設定領域内の比較的高い位置からシート後方側に繰り出されており、後列側のシートに着座したシート後方側の位置から比較的手を届かせやすい高い位置に配設された状態とされている。具体的には、上記操作ストラップ6は、上述した解除レバー4の回転中心となる解除軸5Hの設定位置よりも高い位置からシート後方側に繰り出されており、そのシールドSH内に入り込んだシート前方側の端部には操作リンク7の上端部が繋がれて、この操作リンク7と操作リンク7の下端部に連結されたリンク機構8とを介して、解除レバー4の後アーム部4Bに対して動力伝達可能に連結された状態とされている。
【0022】
上記操作リンク7は、シート高さ方向に長尺状となる向きに配されており、その下端部が、連結ピン7Aにより、シートクッション3のサイドフレーム3F1の外側面上に固定されたベース9に回転可能に軸連結され、上端部には、上述した操作ストラップ6の前端部が連結ピン6Aにより回転可能に軸連結されている。詳しくは、上記操作リンク7の下端部は、連結ピン7Aに対して回転可能に軸連結されており、連結ピン7Aがベース9に対して一体的に結合されて固定されている。そして、この操作リンク7の下端部と連結ピン7Aとの連結部には、操作リンク7を常時シート前方側へ倒し込む方向に回転附勢する渦巻状のトーションスプリング7Cが掛着されている。
【0023】
このトーションスプリング7Cは、図6に示すように、その渦巻状に巻かれた内側の端部が、連結ピン7Aの軸部に入れられたスリット内に差し込まれて固定されており、連結ピン7Aの軸部に嵌合されたワッシャ7Bにより抜け止めされた状態として保持されている。そして、上記トーションスプリング7Cの上記連結ピン7Aのまわりに巻装されるように渦巻状に巻かれた外側の端部は、操作リンク7の下端部に形成された軸方向に折り曲げられた蹴り片7Dのシート前方側の縁部に掛着されて固定されている。これにより、操作リンク7は、図3に示すように、常時は、上記トーションスプリング7Cの附勢力によって、連結ピン7Aを中心に図示時計回り方向に回転附勢された状態として、ベース9に取り付けられたストッパゴム9Aに当たって係止される位置にて保持された状態とされている。上記操作リンク7は、これを上記トーションスプリング7Cの附勢力に抗して、その上端部に繋がれた操作ストラップ6をシート後方側へ引張ることにより、図示反時計回り方向に回転操作される。この操作リンク7の回転操作は、図4に示すように、操作リンク7の下端部に形成された上記蹴り片7Dが、ベース9に形成されたストッパ片9Cに当たる位置にて係止されるようになっている。
【0024】
図3に示すように、上記操作リンク7は、そのリンク長が、上記操作ストラップ6の操作方向に対して垂直なシート高さ方向に長尺状に延びるように配されており、その下端部(連結ピン7A)が、シートクッション3の下部に配されたスライダ装置30と干渉しない程度に極力下方側へ下げられた位置に配置設定されている。また、操作リンク7の上端部(連結ピン6A)は、操作ストラップ6が操作される前の初期状態では、上述した解除軸5Hよりもシート前方側かつ上方側に離間したところに位置しており、操作ストラップ6のシート後方側への引張り操作によって、上述したシートバック2のサイドフレーム2F1上に設定されたL字板2F2の横を横切るように、同サイドフレーム2F1の形成領域の外側を、サイドフレーム2F1の前縁側の位置から後縁側の位置(図4にて前述した蹴り片7Dがベース9に形成されたストッパ片9Cに当たって係止される位置)まで移動するようになっている。これにより、操作リンク7は、シート本体1の車両外側のサイド部に設定されたシールドSHから外側へはみ出ない領域の範囲内で回転移動する構成として、シールドSHにより覆われた高さ方向の領域を一杯に活用してその高さ方向のリンク長が長く確保された構成とされている。これにより、操作ストラップ6のシート後方側への操作荷重を大きく軽減することのできる構成が達成されている。
【0025】
上記操作リンク7は、その下端部が、第1リンク8Aと第2リンク8Bとによって構成されたリンク機構8により、前述した解除レバー4の後アーム部4Bと連結されている。第1リンク8Aは、上記操作リンク7のリンク長方向に対して垂直なシート前後方向にリンク長が延びるように配されており、その前端部が、前述した連結ピン7Aに回転可能に軸連結され、後端部が、連結ピン8A1により第2リンク8Bの下端部に回転可能に軸連結されている。第2リンク8Bは、操作リンク7のリンク長方向と同じシート高さ方向にリンク長が延びるように配されており、その下端部が、上記連結ピン8A1により第1リンク8Aの後端部に回転可能に軸連結され、上端部が、連結ピン8B1により解除レバー4の後アーム部4Bの後端部に回転可能に軸連結されている。
【0026】
上記第1リンク8Aと第2リンク8Bは、共に、図3に示すように操作リンク7が初期位置に保持された状態では、操作リンク7と同じく附勢により初期位置に保持された解除レバー4の後アーム部4Bとの間に吊持される格好で、それぞれ回転位置が留められた状態とされている。そして、操作ストラップ6がシート後方側へ引張り操作されて操作リンク7が図示反時計回り方向に回転操作されることにより、第1リンク8Aが、その前端部に下方側に突出して形成された脚片8A2が、操作リンク7の蹴り片7Dによって同方向に押し回される格好で回転操作されると共に、この第1リンク8Aに連結された第2リンク8Bが下方側へ押し下げられる格好で操作される。これにより、解除レバー4の後アーム部4Bが下方側に引き下げられて、前述した解除レバー4の前アーム部4Aが直接、把持操作される場合と同じように、解除レバー4が回転操作されて、各リクライニング装置5,5のロック状態が解除される。このとき、操作ストラップ6をシート後方側へ引張る操作は、上記シート高さ方向にリンク長が長く延びるように配された操作リンク7とリンク機構8とを介することにより、軽い力で行えるようになっている。
【0027】
詳しくは、上記解除レバー4の後アーム部4Bは、その第2リンク8Bによって引き下げ操作される後端側部分の高さ位置が、解除レバー4の回転中心となる解除軸5Hとほぼ同じ高さ位置(若干高い位置)に設定されていることにより、第2リンク8Bが下方側へ下げられる動作によって、効率的に回転変位することができるようになっている。これにより、操作リンク7のリンク長により操作力は軽減される一方、操作移動量が増大されることとなる操作ストラップ6の操作移動量が、極力少ない操作移動量で解除レバー4を所定位置まで回転操作させられるようになっている。
【0028】
ところで、上述した操作リンク7とリンク機構8は、図5に示すように、解除レバー4の前アーム部4Aが直接把持操作されて引き上げられるときには、その解除レバー4から伝達される操作力が、リンク機構8から操作リンク7には伝達されないように逃がされる構成となっている。具体的には、解除レバー4の前アーム部4Aが引き上げ操作されて、第2リンク8Bが下方側へ押し下げられて第1リンク8Aが連結ピン7Aを中心に図示反時計回り方向に回されても、第1リンク8Aの脚片8A2が操作リンク7の蹴り片7Dに対して離間する方向に移動するため、操作リンク7は回転せず、かかる伝達力は操作リンク7には伝達されず逃がされるようになっている。これにより、解除レバー4の前アーム部4Aが直接引き上げ操作されるときには、かかる操作の抵抗力となるように附勢力を及ぼす操作リンク7の下端部に掛着されたトーションスプリング7Cのばね力はかからないため、解除レバー4の操作力が重くならないようにすることができる。
【0029】
したがって、上記解除レバー4を直接把持操作した場合にも、操作ストラップ6をシート後方側から引張るように操作した場合にも、各リクライニング装置5,5のロック状態は解除されて、シートバック2は前傾位置まで倒し込まれることとなる。そして、このシートバック2の前傾移動に伴って、車両外側の解除軸5Hに連結された蹴リンク10が、シートバック2のサイドフレーム2F1に結合されたL字板2F2により前に蹴り回されて、同蹴リンク10の下端部に繋がれたケーブル20が牽引操作されて、スライダ装置30のスライドロック状態が解除される。ここで、ケーブル20は、案内管21の内部に線材22が挿通された2重構造となっており、案内管21の図示された側の端部が、ベース9に形成されたケーブル掛部9Bに掛着されて固定され、この案内管21の端部から繰り出された線材22の端部が、蹴リンク10の下端部に掛着された構成とされている。
【0030】
また、案内管21の図示しない反対側の端部は、シートクッション3のサイドフレーム3F1に掛着されて固定されており、同側における線材22の端部は、スライダ装置30の図示しないスライドロック機構を操作する部材に接続されている。これにより、ケーブル20は、上記シートバック2が前傾位置まで倒し込まれる動作により蹴リンク10が前に押し回されると、同蹴リンク10の下端部に接続された線材22が案内管21から繰り出されるように牽引操作されて、線材22の反対側の端部に繋がれたスライダ装置30のスライドロック機構を解除操作してスライドロック状態を解除するようになっている。なお、上記スライダ装置30のスライドロックが解除された状態は、シートバック2が起こし上げられて、蹴リンク10の押し回された状態が戻されることにより、ケーブル20の牽引操作状態が解かれて、図示しないばねの附勢力により元のスライドロックした状態に戻されるようになっている。
【0031】
このように、本実施例の車両用シートの構成によれば、操作リンク7を操作前の初期位置に向けて附勢するばねをトーションスプリング7Cとしたことにより、引張ばねや圧縮ばね等の変形方向が直線状となるばねを用いる場合と比べて、ばねの設置スペースを小さく抑えることができる上、ばねの引掛け位置に制約がある場合に起こるリンク長が短縮される影響を小さく抑えることができる。すなわち、例えば、上記直線状に変形する圧縮ばねや引張ばねを用いる場合、ばねの操作リンク7への引掛け位置は、操作リンク7の回転附勢方向の設定によっては、操作リンク7の下端部の軸連結位置(連結ピン7A)よりも更に下方側に延長された部位に掛けなければならないことがある。これにより、操作リンク7の軸連結位置(連結ピン7Aの位置)を操作リンク7の下端部(リンク端部)に設定することができなくなり、操作ストラップ6の操作力を低減するためのリンク長の確保が十分に行えなくなってしまうおそれがある。しかし、トーションスプリング7Cの場合、連結ピン7Aに巻装して設けることができるため、操作リンク7の軸連結位置(連結ピン7Aの位置)を操作リンク7の下端部(リンク端部)に設定することができる。したがって、上記のような問題は起こらず、操作ストラップ6の操作力を低減するための操作リンク7のリンク長をより長く確保することができ、操作力を好適に軽減することができる。
【0032】
また、操作ストラップ6は、シート後方側に引張られて操作される構成となっており、この操作ストラップ6の操作方向とほぼ同じ方向に、シートバック2の背凭れ角度の固定状態を解除操作する解除軸5Hに連結された解除レバー4(後アーム部4B)が延出して設けられている。また、操作リンク7は、上記操作ストラップ6との連結点から下方側に延出された高さ方向に長尺なリンク長を有した構成とされており、リンク機構8は、操作リンク7の下端と解除レバー4の後端とを繋いで、操作ストラップ6の操作力を解除レバー4に伝達する構成とされている。このように、操作ストラップ6と解除レバー4とを同方向に向けて配設し、操作リンク7を上記操作ストラップ6との連結点(連結ピン6A)から下方側に延出させたシート高さ方向に長尺なリンク長をもたせて構成したことにより、解除レバー4を回転操作するための操作ストラップ6の操作力をより好適に軽減することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、上記実施例では、本発明の「操作部材」に相当するものとして、シート後方側へ引張り操作するタイプの操作ストラップ6を例示したが、この操作部材は、必ずしも引張り操作式のストラップでなくてもよい。例えば、上下や左右にスライドさせる操作タイプのものや、前方側へ押し込む操作タイプのものであってもよい。
【0034】
また、操作リンクは、操作部材との連結箇所からシート上方側にリンク長を延ばすように配されていても構わないが、操作リンクの配設箇所を覆うシールドが大型化することとなるため、好ましくない。また、リンク機構は、操作リンクと解除リンクとを動力伝達可能に連結するように構成されていればよく、1本のリンクで構成されたものであってもよい。その場合には、いずれかの軸連結部に適宜、所定形状の長孔を設けるなどして、リンク間の動力伝達が突っ掛からないように円滑に行えるようにするとよい。また、操作部材の配設箇所は、シート本体のシート後方側から操作される位置に配設されていれば良く、そのシート本体に対す高さ方向や幅方向の配設位置は特に限定されない。
【符号の説明】
【0035】
1 シート本体
2 シートバック
2F シートバックフレーム
2F1 サイドフレーム
2F2 L字板
2S 渦巻きばね
3 シートクッション
3F シートクッションフレーム
3F1 サイドフレーム
3F2 係止角部
4 解除レバー(解除リンク)
4A 前アーム部(シート前方側に延出した部位)
4B 後アーム部
5 リクライニング装置
5A ラチェット
5B ガイド
5C 外周リング
5D ポール
5E スライドカム
5F ヒンジカム
5G 渦巻きばね
5H 解除軸
6 操作ストラップ(操作部材)
6A 連結ピン
7 操作リンク
7A 連結ピン
7B ワッシャ
7C トーションスプリング
7D 蹴り片
8 リンク機構
8A 第1リンク
8A1 連結ピン
8A2 脚片
8B 第2リンク
8B1 連結ピン
9 ベース
9A ストッパゴム
9B ケーブル掛部
9C ストッパ片
10 蹴リンク
20 ケーブル
21 案内管
22 線材
30 スライダ装置
SH シールド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックを前に倒し込む操作をするための操作部材が、シート本体のシート後方側から操作される位置に配設された車両用シートであって、
前記操作部材に一端が連結されて回転操作される操作リンクと、
該操作リンクの他端に対して回転可能となるように軸連結されて、該操作リンクから前記操作部材の操作に伴う回転動力の伝達を受けてリンク運動し、前記シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除操作するための回転動力を出力するリンク機構と、
該リンク機構と前記操作リンクの他端との軸連結部に巻装された状態として設定され、該操作リンクを操作前の初期位置に向けて回転附勢するトーションスプリングと、を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記操作部材は、シート後方側に引張られて操作される構成とされ、該操作部材の操作方向とほぼ同方向に、前記シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除操作する解除軸に連結された解除リンクが延出して設けられ、前記操作リンクは、前記操作部材との連結点から下方側に延出された高さ方向に長尺なリンク長を有した構成とされ、前記リンク機構は、前記操作リンクの下端と前記解除リンクの後端とを繋いで前記操作部材の操作力を前記解除リンクに伝達する構成とされていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートであって、
前記解除リンクは、シート前方側にも延出した形状とされて、該延出した部位が、前記シート本体の着座乗員が着座姿勢で操作をして前記シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除操作することのできる構成とされ、前記操作リンクの他端と前記リンク機構との連結は、前記操作部材の操作による時には互いの当接構造により回転動力が伝達されるが、前記着座乗員による前記解除リンクの前記延出した部位の操作による時には互いの当接構造が離れる方向に作用して回転動力が伝達されない連結となっていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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