説明

車両用シート

【課題】円筒状に形成されている複数のパイプ部材を突き当て溶接によって接合させて成るフレームを備えていても、この突き当て溶接の作業性の悪化を招くことなく、強固に接合させることができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート1は、円筒状に形成されている複数のパイプ部材10、14を突き当て溶接によって接合させて成るフレーム4を備えている。そして、複数のパイプ部材10、14は、互いの軸心がズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、詳しくは、円筒状に形成されている複数のパイプ部材を突き当て溶接によって接合させて成るフレームを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状に形成されている複数のパイプ部材を、例えば、矩形枠状となるように、突き当て溶接によって接合させて成るフレームを備えた車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、図5〜6に示すように、横パイプ107の端部を脚パイプ106の外周面に沿うように拡管させて突き当て溶接したシート101が開示されている。これにより、これら両パイプ106、107を強固に接合させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−285162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、図7〜8に示すように、横パイプ107の端部を拡管させる必要があるため、この拡管の作業性が悪く、結果として、この突き当て溶接の作業性の悪化となっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、円筒状に形成されている複数のパイプ部材を突き当て溶接によって接合させて成るフレームを備えていても、この突き当て溶接の作業性の悪化を招くことなく、強固に接合させることができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、円筒状に形成されている複数のパイプ部材を突き当て溶接によって接合させて成るフレームを備えた車両用シートであって、複数のパイプ部材は、互いの軸心がズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されている構成である。
この構成によれば、パイプ部材は、その軸心が他のパイプ部材の軸心に対してズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されている。このようにズレが生じた状態になると、パイプ部材と他のパイプ部材とによって形成される2箇所の隙間のうち、一方側の隙間が小さく形成されることとなる。そのため、ズレが生じていない状態と比較すると、溶接シロを十分に確保できる。したがって、パイプ部材と他のパイプ部材とを強固に接合させることができる。また、従来技術(特許文献1の技術)のように、予め、パイプ部材の端部を拡管させておく必要がないため、作業性の悪化を招くこともない。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートであって、複数のパイプ部材は、一対のサイドフレームと、この一対のサイドフレームを横架するロッドとから構成されており、この一対のロッドは、その軸心が一対のサイドフレームの軸心に対して着座面側と反対側にズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されていることを特徴とする構成である。
このようにズレが生じた状態になると、パイプ部材と他のパイプ部材とによって形成される2箇所の隙間のうち、着座面側の隙間が小さく形成されることとなる。そのため、フレームの裏返しを必要とすることなく溶接できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る運転席の内部フレームの全体斜視図である。
【図2】図2は、図1の主要部の拡大図である。
【図3】図3は、図2の側面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、従来技術に係る椅子の側面図である。
【図6】図6は、図5の主要部を示す斜視図であり、横パイプの接合の構造を示している。
【図7】図7は、図6の接合後の正面図である。
【図8】図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜4を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「車両用シート」の例として、「運転席1」を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、「複数のパイプ部材」の例として、「クッションフレーム4の左のサイドフレーム10」と「クッションフレーム4のフロントロッド14」を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、この運転席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0010】
まず、図1を参照して、本発明の実施例に係る運転席1の概略構成を説明する。この運転席1は、シートクッション2と、シートバック3とから構成されている(図1参照)。これらの構成のうち、シートクッション2について説明していく。なお、シートバック3は、公知の構成でよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0011】
シートクッション2は、主として、略矩形枠状に形成されたクッションフレーム4と、このクッションフレーム4に包着状に組み付けられる公知のクッションパッド(図示しない)と、このクッションパッドの表面をカバーリングする公知のシートカバー(図示しない)とから構成されている。
【0012】
このクッションフレーム4について説明すると、このクッションフレーム4は、略J字状に折り曲げられた円筒状のパイプ部材から成る左右のサイドフレーム10、12と、直線状に形成された円筒状のパイプ部材から成っており、この左右のサイドフレーム10、12の前後をそれぞれ端渡すように溶接によって接合された前後のロッド14、16(以下において、「フロントロッド14、リアロッド16」と記す)とから略矩形枠状に構成されている。
【0013】
ここで、このフロントロッド14と左右のサイドフレーム10、12との接合について説明していく。なお、リアロッド16と左右のサイドフレーム10、12との接合は、今から説明する、フロントロッド14と左右のサイドフレーム10、12との接合に対して前後に対称な構造であるため、その詳細な説明は省略することとする。
【0014】
フロントロッド14は、その両端部14a、14aが左右のサイドフレーム10、12の各前端を橋渡すように、突き当て溶接によって接合されている(図2参照)。このとき、フロントロッド14は、その軸心が左右のサイドフレーム10、12の軸心に対して下側にズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されている(図3、4参照)。図4において、黒塗り箇所が溶接箇所を示している。
【0015】
この図3、4において、フロントロッド14の軸心と左のサイドフレーム10の軸心との距離「L」が、このズレを示している。この記載が特許請求の範囲に記載の「このロッドは、その軸心が一対のサイドフレームの軸心に対して着座面側と反対側にズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されている」に相当する。
【0016】
この図4からも明らかなように、この溶接は、このフロントロッド14と左のサイドフレーム10の上側から行われている。このように溶接されていると、クッションフレーム4の使用状態(図1に示す状態)において、その上側からの溶接となるため、この溶接の作業性を向上させることができる。これらのことは、右のサイドフレーム12においても同様である。フロントロッド14と左右のサイドフレーム10、12とは、このように接合されている。
【0017】
次に、リアロッド16と左のサイドフレーム10との接合について詳述していく。このリアロッド16と左右のサイドフレーム10、12との接合も、上述したフロントロッド14と左右のサイドフレーム10、12との接合と同様である。
【0018】
クッションフレーム4は、このように構成されている。そして、このように構成されたクッションフレーム4に接合されている左右のロアアーム30、32の内面に公知のシートバック3のバックフレーム5の左右の下側をそれぞれ組み付けることで、運転席1は構成されている。
【0019】
なお、このように構成されたクッションフレーム4は、その左右の下側が公知のスライドレール(ロアレールに対してアッパレールがスライド可能な構造となっているレール)20、22を介して車両フロア(図示しない)側に組み付けられている(図1参照)。これにより、運転席1を車両フロアの前後方向に沿ってスライドさせることができる。
【0020】
本発明の実施例に係る運転席1は、上述したように構成されている。この構成によれば、フロントロッド14は、その軸心が左右のサイドフレーム10、12の軸心に対してズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されている。このようにズレが生じた状態になると、フロントロッド14と左のサイドフレーム12とによって形成される2箇所の隙間(この実施例では、上下の隙間)のうち、一方側(この実施例では、上側)の隙間が小さく形成されることとなる。そのため、ズレが生じていない状態と比較すると、溶接シロを十分に確保できる。したがって、フロントロッド14と左のサイドフレーム12とを強固に接合させることができる。また、従来技術(特許文献1の技術)のように、予め、パイプ部材(この実施例では、フロントロッド14)の端部を拡管させておく必要がないため、作業性の悪化を招くこともない。このことは、右のサイドフレーム12においても同様であると共に、リアロッド16においても同様である。
【0021】
また、この構成によれば、フロントロッド14は、その軸心が左右のサイドフレーム10、12の軸心に対して下側にズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されている。このようにズレが生じた状態になると、フロントロッド14と左のサイドフレーム10とによって形成される上下の隙間のうち、上側の隙間が小さく形成されることとなる。そのため、クッションフレーム4の裏返しを必要とすることなく溶接できる。
【0022】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、「車両用シート」の例として、「運転席1」を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「助手席」、「後部座席」であっても構わない。
【符号の説明】
【0023】
1 運転席(車両用シート)
2 シートクッション
3 シートバック
4 クッションフレーム
10 左のサイドフレーム
14 フロントロッド
14a 両端部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成されている複数のパイプ部材を突き当て溶接によって接合させて成るフレームを備えた車両用シートであって、
複数のパイプ部材は、互いの軸心がズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
複数のパイプ部材は、一対のサイドフレームと、この一対のサイドフレームを横架するロッドとから構成されており、このロッドは、その軸心が一対のサイドフレームの軸心に対して着座面側と反対側にズレた状態となるように、突き当て溶接によって接合されていることを特徴とする車両用シート。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate