説明

車両用シート

【課題】前倒しされたシートバックの上方のスペースを拡大することができる車両用シートを得る。
【解決手段】車両用シート10では、シートバック20がベースフレーム16に対してリクライニング軸58回りに前倒しされると、シートバックフレーム44の下端側に設けられたクッション連結部48Aが、リクライニング軸58回りにシート下方側かつシート後方側へ回転する。このクッション連結部48Aには、シートクッションフレーム70の後端部が連結軸80を介して連結されている。また、シートクッションフレーム70の前部側は、左右のリンク部材82を介してベースフレーム16に連結されており、クッション連結部48Aが上述の如く回転すると、シートクッション18がシート下方側かつシート後方側へ移動される。これにより、前倒しによってシートクッション18上に重なり合うシートバック20の配置高さを低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックを前倒し可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示された自動車用シート装置では、リヤシートのシート座部(シートクッション)が平行リンク機構を介してフロアパネルに連結されている。この平行リンク機構は、シートクッションを前方位置と後方位置との間で揺動可能にフロアパネルに支持している。また、シートクッションの後端部には、リクライニング機構を介してシート背凭れ部(シートバック)が連結されており、シートバックをシートクッション上に倒せる(前倒しできる)ようになっている。これにより、荷室のスペースを拡大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−334421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の自動車用シート装置では、シートクッションが前方位置及び後方位置よりも下方側へは変位しない構成になっているため、シートクッション上にシートバックを倒した状態でのシートバックの配置高さを十分に低くすることができない。このため、シートバックの上方のスペースを拡大する点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、前倒しされたシートバックの上方のスペースを拡大することができる車両用シートを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、車体床部に取り付けられるベースフレームと、シートバックフレームの下端側がシート幅方向に沿ったリクライニング軸を介して前記ベースフレームに連結され、前記リクライニング軸回りに前倒し可能とされると共に、前記シートバックフレームの下端側における前記リクライニング軸よりも前端側に設けられたクッション連結部が、前記前倒し時に前記リクライニング軸回りにシート下方側かつシート後方側へ回転するシートバックと、シートクッションフレームの後端側が前記クッション連結部に対してシート幅方向に沿った連結軸回りに回転可能に連結されると共に、前記シートクッションフレームの前部側が前記前倒し時における前記クッション連結部の回転に追従する側へ移動可能に前記ベースフレームに支持されたシートクッションと、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の車両用シートでは、シートバックがベースフレームに対してリクライニング軸回りに前倒しされると、シートバックフレームの下端側におけるリクライニング軸よりも前端側に設けられたクッション連結部が、リクライニング軸回りにシート下方側かつシート後方側へ回転する。このクッション連結部には、シートクッションフレームの後端側がシート幅方向に沿った連結軸を介して回転可能に連結されている。また、シートクッションフレームの前部側は、クッション連結部の回転に追従する側へ移動可能にベースフレームに支持されている。このため、クッション連結部が上述の如く回転すると、シートクッションフレームの後端側がシート下方側かつシート後方側へ移動されると共に、シートクッションフレームの前部側がクッション連結部の回転に追従する側、すなわちシート下方側かつシート後方側へ移動される。これにより、シートクッションがシートバックの前倒しに連動してシート下方側かつシート後方側へ移動されるので、前倒しによってシートクッション上に重なり合うシートバックの配置高さを低くすることができる。従って、シートバックの上方のスペースを拡大することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックが前記前倒し前の起立位置に配置された状態では、前記連結軸の中心軸線が前記リクライニング軸の中心軸線と同じ高さ又は前記リクライニング軸の中心軸線よりもシート下方側に配置されることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の車両用シートでは、シートバックが起立位置に配置された状態では、シートバックフレームのクッション連結部とシートクッションフレームの後端側とを連結する連結軸の中心軸線が、リクライニング軸の中心軸線と同じ高さ又は前記リクライニング軸の中心軸線よりもシート下方側に配置される。これにより、シートバックが起立位置から前倒しされる際に、連結軸すなわちシートクッションフレームの後端側を即座にシート下方側かつシート後方側へ回転(移動)させることができる。つまり、シートバックが起立位置に配置された状態で、連結軸の中心軸線が前記リクライニング軸の中心軸線よりもシート上方側に配置される構成の場合、シートバックの前倒しによってシートクッションフレームの後端側がシート下方側かつシート後方側へ回転する前に、一旦シート下方側かつシート前方側へ回転することになるが、本発明ではこれを防止することができる。これにより、シートクッションのシート後方側への移動量を大きく設定することができるので、シートバックの前倒し状態におけるシートクッション前方側のスペースを広く確保することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションフレームの前部側は、当該前部側及び前記ベースフレームのそれぞれに対してシート幅方向に沿った軸線回りに回転可能に連結されたリンク部材を介して前記ベースフレームに支持されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の車両用シートでは、シートクッションフレームの前部側は、リンク部材を介してベースフレームに支持されることにより、シートバックの前倒し時におけるクッション連結部の回転に追従する側へ移動可能とされている。これにより、ベースフレームに対するシートクッションフレームの前部側の支持構造を簡単な構成にすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記シートバックフレームは、フレーム本体と、当該フレーム本体の下端側に固定され、前記リクライニング軸を介して前記ベースフレームに連結されると共に、前記シートクッション連結部が設けられたブラケットと、を有することを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の車両用シートでは、シートバックフレームの構成部材であるブラケットが、シートバックフレームのフレーム本体の下端側に固定されると共に、リクライニング軸を介してベースフレームに連結されている。更に、このブラケットには、シートクッションフレームの後端側が連結されたクッション連結部が設けられている。つまり、シートバックフレームのフレーム本体及びシートクッションフレームは、上記ブラケットを介してベースフレームに連結されている。このため、本車両用シートの製造時には、質量が大きいシートバックのフレーム本体及びシートクッションフレームをブラケットに固定又は連結する前に、ベースフレーム側にブラケットを組み付けることができる。これにより、本車両用シートの製造作業を容易なものにすることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記ベースフレームは、前端側が車体床部に対してシート幅方向に沿った跳ね上げ軸を介して連結されており、車体床部に対して起立する跳ね上げ位置へと前記跳ね上げ軸回りに回転可能とされていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の車両用シートでは、シートバックを前倒しした状態で、ベースフレームを跳ね上げ軸回りに跳ね上げ位置へと回転させることにより、ベースフレームをシートバック及びシートクッションと共に車体床部に対して起立させることができる。これにより、本車両用シートをコンパクトに収納することができる。しかも、シートバックの前倒しに連動してシートクッションがシート下方側かつシート後方側に移動されるため、上記跳ね上げ位置においては、シートクッションをより車両後方側かつ車両上方側に配置させることができる。これにより、シートクッションに重ね合わされたシートバックをより車両後方側に配置させることができると共に、シートクッションと車体床部との間の隙間を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、前倒しされたシートバックの上方のスペースを拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの側面図であり、シートバックが起立位置に配置された状態の図である。
【図2】同シートの側面図であり、シートバックが前倒し位置に配置された状態の図である。
【図3】同シートの側面図であり、ベースフレームが跳ね上げ位置に配置された状態の図である。
【図4】同シートの主要部の構成を示す斜視図である。
【図5】同シートの部分的な構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図5を用いて、本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印Wは車両幅方向(車両左右方向)を示している。また、各図中に適宜示される矢印Aは車両用シート10の前方向を示し、矢印Bは車両用シート10の上方向を示している。また、車両用シート10の幅方向(左右方向)は、車両幅方向と一致している。
【0019】
本実施形態に係る車両用シート10は、車両のサードシート(3列目のシート)であり、図1〜図3に示されるように、2列目のシートであるセカンドシート12の車両後方側で荷室14の車両前方側に配置されている。この車両用シート10は、車両のフロアパネル15(車体床部)の上面側に取り付けられたベースフレーム16を備えており、当該ベースフレーム16には、左右一対のシートクッション18と、左右一対のシートバック20とが支持されている。左右のシートバック20の上部には、ヘッドレスト21が取り付けられている。
【0020】
図4に示されるように、ベースフレーム16は、左右のシートクッション18のシート幅方向両側にそれぞれ設けられた4つのサイドフレーム22を有している。各サイドフレーム22は、板金材料によって長尺状に形成されており、長手方向がシート前後方向に沿い且つ板厚方向がシート幅方向に沿う状態で配置されている。各サイドフレーム22の前端部は、シート幅方向に延びるパイプ状のフロントフレーム24によってシート幅方向に連結されており、各サイドフレーム22の後端部は、シート幅方向に延びる角筒状のリヤフレーム26によってシート幅方向に連結されている。また、リヤフレーム26よりもシート前方側で各サイドフレーム22の後端側には、上方側へ延びるシートバック連結部22Aが形成されている。
【0021】
フロントフレーム24の左右両側には、それぞれヒンジ部28が設けられている。ヒンジ部28は、フロントフレーム24からシート前方側かつシート上方側へ延出された延出部30と、当該延出部30の先端側に設けられたフロア締結部とを有している。フロア締結部は、シート幅方向に沿った跳ね上げ軸34を介して延出部30の先端部に回転可能に連結されると共に、フロアパネル15に設けられたヒンジ締結部15Aに締結固定されている。これにより、ベースフレーム16は、フロアパネル15に対して図1及び図2に示される通常位置と図3に示される跳ね上げ位置との間で跳ね上げ軸34回りに回転可能とされている。なお、ベースフレーム16が通常位置に配置された状態では、車両用シート10の前方向と車両前方向とが一致し、車両用シート10の上方向と車両上方向とが一致する。また、ベースフレーム16が跳ね上げ位置に配置された状態では、車両用シート10の前方向と車両の下方向とが一致し、車両用シート10の上方向と車両の前方向とが一致する。
【0022】
リヤフレーム26の左右両端部は、シート幅方向外側に配置されたサイドフレーム22よりもシート幅方向外側に突出しており、当該突出部分には、板金材料によって形成されたラッチ取付板38が溶接等の手段によって固定されている。ラッチ取付板38は、リヤフレーム26よりもシート後方側へ延びており、ラッチ取付板38の後部側には、ラッチ機構40が固定されている。このラッチ機構40は、フロアパネル15側に固定されたストライカ42に引っ掛かる図示しないラッチを備えており、これにより、ベースフレーム16が図1及び図2に示される通常位置に拘束されるようになっている。また、ラッチ機構40には図示しないストラップが連結されており、当該ストラップを引っ張ることにより、ストライカ42に対する上記ラッチの引っ掛かりを解除できるようになっている。これにより、ベースフレーム16を図3に示される跳ね上げ位置へと回転させることができる。
【0023】
一方、シートバック20は、骨格部材であるシートバックフレーム44を備えている。シートバックフレーム44は、フレーム本体46と、左右一対のリクライニングアッパーブラケット(ブラケット)48とによって構成されている。フレーム本体46は、シート幅方向に対向して配置された左右一対のサイドフレーム50と、左右のサイドフレーム50の上端部同士をシート幅方向に連結したアッパフレーム52と、左右のサイドフレーム50下端部同士をシート幅方向に連結したロアフレーム54と、によって構成されており、シートバック20の前後方向から見て矩形枠状に形成されている(図5参照)。このフレーム本体46には、図示しないシートバックスプリングが取り付けられると共に、シート表皮56によって覆われた図示しないシートバックパッドが支持されている。なお、本実施形態では、左右のサイドフレーム50が板金材料によって形成され、アッパフレーム52及びロアフレーム54がパイプ材によって形成されているが、これに限らず、他のフレーム構造を採用してもよい。
【0024】
左右のリクライニングアッパーブラケット48は、上部側が左右のサイドフレーム50の下端側に図示しないボルト及びナットによって締結固定されている。また、左右のリクライニングアッパーブラケット48の下部側は、軸線方向がシート幅方向に沿った左右一対のリクライニング軸58を介して前述したサイドフレーム22のシートバック連結部22Aに回転可能に連結されている。これにより、シートバックフレーム44は、図1に示される起立位置と図2に示される前倒れ位置との間でベースフレーム16に対してリクライニング軸58回りに傾倒(回転)可能とされている。但し、一方のシートバック連結部22Aとこれに連結された一方のリクライニングアッパーブラケット48との間には、周知のリクライニング機構60(所謂ラウンドリクライナー)が配設されており、当該リクライニング機構60によって起立位置からのシートバックフレーム44の傾倒が規制(ロック)されるようになっている。なお、シートバック20が起立位置に配置された状態では、シートバック20は、シート上下方向に対して所定角度(例えば、10度程度)シート後方側へ傾いて配置される。
【0025】
上述のリクライニング機構60には、前記傾倒規制を解除するためのロック解除レバー62が設けられている。このロック解除レバー62には、図1に示されるように、ケーブル64の一端部が係止されており、ケーブル64の他端側は、シートバック20の上下方向中間部に配置された回転部材66に巻き掛けられている。この回転部材66は、シートバック20の前後方向に沿った軸線回りに回転可能にシートバックフレーム44に取り付けられており、ケーブル64の他端部には、ストラップ68の一端部が係止されている。このストラップ68は、シートバック20のシート後方側へ引き出されており、当該ストラップ68をシート後方側へ引っ張ることにより、リクライニング機構60のロックを解除することができる。なお、図2及び図3では、ケーブル64、回転部材66およびストラップ68の図示が省略されている。
【0026】
また、前述したリクライニングアッパーブラケット48の下端側における前端側には、シートバックフレーム44の前方側へ突出したクッション連結部48Aが設けられている。このクッション連結部48Aは、リクライニングアッパーブラケット48すなわちシートバックフレーム44が図1に示される起立位置から図2に示される前倒れ位置へと傾倒する際に、リクライニング軸58回りにシート下方側かつシート後方側へ回転する。このクッション連結部48Aは、シートクッション18の骨格部材であるシートクッションフレーム70に対応している。
【0027】
シートクッションフレーム70は、シート幅方向に対向した左右一対のサイドフレーム72と、左右のサイドフレーム72の前端部同士をシート幅方向に連結したフロントフレーム74と、左右のサイドフレーム72の後端部同士をシート幅方向に連結したリヤフレーム76と、によって構成されており、シートクッション18の上下方向から見て矩形枠状に形成されている。このシートクッションフレーム70には、図示しないシートクッションスプリングが取り付けられると共に、シート表皮78により覆われたシートクッションパッド等が支持されている。なお、本実施形態では、左右のサイドフレーム72が板金材料によって形成され、フロントフレーム74及びリヤフレーム76がパイプ材によって形成されているが、これに限らず、他のフレーム構造を採用してもよい。
【0028】
左右のサイドフレーム72の後端部は、軸線方向がシート幅方向に沿った連結軸80(例えば、段付ボルト及びナット)を介して左右のリクライニングアッパーブラケット48のクッション連結部48Aに連結されており、リクライニングアッパーブラケット48すなわちシートバックフレーム44に対して上記連結軸80回りに回転可能とされている。この連結軸80は、シートバックフレーム44が図1に示される起立位置に配置された状態では、リクライニング軸58の中心軸線と同じ高さに中心軸線が配置されるようにリクライニングアッパーブラケット48に対して位置決めされている。
【0029】
また、シートクッションフレーム70の前部側のシート幅方向両側には、左右一対のリンク部材82が配置されている。これらのリンク部材82は、板金材料によって長尺状に形成されている。各リンク部材82の長手方向一端部は、リンク軸84(例えば、段付ボルト及びナット)を介してサイドフレーム72の前端側に回転可能に連結されており、長手方向他端部がリンク軸86(例えば、段付ボルト及びナット)を介して前述したサイドフレーム22の前端側に回転可能に連結されている。リンク軸84、86は、軸線方向がシート幅方向に沿った状態で配置されており、各リンク部材82は、ベースフレーム16及びシートクッションフレーム70のそれぞれに対してシート幅方向に沿った軸線回りに回転可能とされている。また、これらのリンク部材82は、シートバックフレーム44が図1に示される起立位置に配置された状態、すなわちクッション連結部48Aがリクライニング軸58のシート前方に配置された状態では、シート上下方向に対して僅かにシート後方側へ傾いた状態で起立して配置される。これにより、シートクッション18の前部側がリンク部材82を介して図1に示される使用位置に支持される。
【0030】
一方、シートバック20が前倒れ位置へ傾倒すると、シートクッションフレーム70の後端部がクッション連結部48Aと共にリクライニング軸58回りにシート下方側かつシート後方側へ回転する。この場合、図2に示されるように、リンク部材82がシート後方側へ倒れることにより、シートクッションフレーム70の前部側がクッション連結部48Aの回転に追従する側、すなわちシート下方側かつシート後方側へ移動される。これにより、シートクッション18が略水平の姿勢のままでシート下方側かつシート後方側へ移動される。そして、シートバック20が図2に示される前倒れ位置に到達すると、連結軸80がリクライニング軸58のシート下方に配置され、シートクッション18の後端部がシートバック20のシート下方に配置される。また、リンク部材82は、シート前後方向に対して僅かに後上がりに傾斜した状態となり、シートクッション18が使用位置のシート下方側かつシート後方側に設定された格納位置に配置される。この状態では、シートバック20の前面がシートクッション18の上面に当接することにより、シートバック20のそれ以上の前倒れが規制され、シートバック20が前倒れ位置に保持される。
【0031】
また一方、シートバック20が前倒れ位置から起立位置へと傾倒されると、シートクッションフレーム70の後端部がクッション連結部48Aと共にリクライニング軸58回りにシート上方側かつシート前方側へ回転する。この場合、リンク部材82がシート前方側へ起き上がることにより、シートクッションフレーム70の前部側がクッション連結部48Aの回転に追従する側、すなわちシート上方側かつシート前方側へ移動される。これにより、シートクッション18が略水平の姿勢のままでシート上方側かつシート前方側へ移動される。そして、シートバック20が図1に示される起立位置に到達すると、リクライニング機構60によってシートバック20の傾倒が規制される。これにより、シートクッション18が図1に示される使用位置に支持(拘束)される構成になっている。
【0032】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
上記構成の車両用シート10では、シートバック20がベースフレーム16に対してリクライニング軸58回りに前倒しされると、シートバックフレーム44の下端側におけるリクライニング軸58よりも前端側に設けられたクッション連結部48Aが、リクライニング軸58回りにシート下方側かつシート後方側へ回転する。このクッション連結部48Aには、シートクッションフレーム70の後端部がシート幅方向に沿った連結軸80を介して回転可能に連結されている。また、シートクッションフレーム70の前部側は、左右のリンク部材82を介してベースフレーム16に連結されており、クッション連結部48Aの回転に追従する側へ移動可能にベースフレーム16に支持されている。
【0034】
このため、クッション連結部48Aが上述の如く回転すると、シートクッションフレーム70の後端側がシート下方側かつシート後方側へ移動されると共に、シートクッションフレーム70の前部側がクッション連結部48Aの回転に追従する側、すなわちシート下方側かつシート後方側へ移動される。これにより、シートクッション18がシートバック20の前倒しに連動してシート下方側かつシート後方側へ移動されるので、前倒しによってシートクッション18上に重なり合うシートバック20の配置高さを低くすることができる(図2参照)。従って、シートバックの上方のスペースを拡大することができる。しかも、上述の如くシートクッション18がシートバック20の前倒しに連動して移動(下降)されるので、シートクッション18を下降させるための特別な操作が不要であり、操作性が極めて良好である。
【0035】
さらに、上述の如くシートクッション18がシート下方側かつシート後方側(車両下方側かつ車両後方側)へ移動されるため、シートクッション18とセカンドシート12(前席)との間の隙間が拡大される。また、図2に示されるように、セカンドシート12のシートバック13は、通常は車両後方側に傾斜して配置されるが、本実施形態では、上述の如くシートクッション18が下降することによりシートバック20の前倒れ角度が増加するため、シートバック20とセカンドシート12のシートバック13との間の隙間を拡大することができる。これにより、前席と後席との間隔を広く確保することが困難な車種においてもシートアレンジを成立させることが可能になるので、車種に応じたシートアレンジの成立性を向上させることができる。
【0036】
また、この車両用シート10では、シートバック20が起立位置に配置された状態では、シートバックフレーム44のクッション連結部48Aとシートクッションフレーム70の後端部とを連結する連結軸80の中心軸線が、リクライニング軸58の中心軸線と同じ高さに配置される。これにより、シートバック20が起立位置から前倒しされる際に、連結軸80すなわちシートクッションフレーム70の後端部を即座にシート下方側かつシート後方側へ回転(移動)させることができる。つまり、シートバック20が起立位置に配置された状態で、連結軸80の中心軸線が前記リクライニング軸58の中心軸線よりもシート上方側に配置される構成の場合、シートバック20の前倒しによってシートクッションフレーム70の後端部がシート下方側かつシート後方側へ回転する前に、一旦シート下方側かつシート前方側へ回転することになるが、本実施形態ではこれを防止することができる。これにより、シートクッション18のシート後方側への移動量を大きく確保することができるので、シートバック20の前倒し状態におけるシートクッション18の前方側のスペースを広く確保することができる(図2参照)。
【0037】
さらに、この車両用シート10では、シートクッションフレーム70の前部側は、左右のリンク部材82を介してベースフレーム16に支持されることにより、シートバック20の前倒し時におけるクッション連結部48Aの回転に追従する側へ移動可能とされている。これにより、ベースフレーム16に対するシートクッションフレーム70の前部側の支持構造を簡単な構成にすることができる。
【0038】
なお、シートクッションフレーム70の前部側の支持構造としては、例えば、ベースフレーム16の前部側にガイド溝やガイドレール等のガイド手段を形成すると共に、シートクッションフレームの前部側に設けられた突起等を前記ガイド手段に移動可能に係合させる構成にしてもよい。このような構成の場合でも、ガイド手段の形状の設定によって、シートクッションフレーム70の前部側をクッション連結部48Aの回転に追従する側へ移動可能にベースフレーム16に支持させることができる。しかしながら、このような構成の場合、ベースフレーム16における上記ガイド手段の設定部位がシート上方側へ大きく突出することになるため、当該突出部分によって車室のスペースが不要に侵食されてしまう。この点、本実施形態では、小型なリンク部材82が採用されているため、ベースフレーム16の前部側の高さ寸法を低く設定することができ、上述の如き問題点を解消することができる。
【0039】
また、本車両用シート10では、シートバックフレーム44の構成部材であるリクライニングアッパーブラケット48が、シートバックフレーム44のフレーム本体46の下端側に固定されると共に、リクライニング軸58を介してベースフレーム16に連結されている。更に、このリクライニングアッパーブラケット48には、シートクッションフレーム70の後端部が連結されたクッション連結部48Aが設けられている。つまり、シートバックフレーム44のフレーム本体46及びシートクッションフレーム70が、リクライニングアッパーブラケット48を介してベースフレーム16に連結されている。このため、本車両用シート10の製造時には、質量が大きいフレーム本体46及びシートクッションフレーム70をリクライニングアッパーブラケット48に固定又は連結する前に、ベースフレーム16側にリクライニングアッパーブラケット48を組み付けることができる。これにより、本車両用シート10の製造作業を容易なものにすることができる。
【0040】
さらに、本車両用シート10では、シートバック20を前倒しした状態で、ベースフレーム16を跳ね上げ軸34回りに跳ね上げ位置へと回転させることにより、ベースフレーム16をシートバック20及びシートクッション18と共にフロアパネル15に対して起立させることができる(図3図示状態)。これにより、本車両用シート10をコンパクトに収納することができ、荷室14のスペースを拡大することができる。しかも、シートバック20の前倒しに連動してシートクッション18がシート下方側かつシート後方側に移動されるため、上記跳ね上げ位置においては、シートクッション18をより車両後方側かつ車両上方側に配置させることができる。これにより、シートクッション18に重ね合わされたシートバック20をより車両後方側に配置させることができ、シートバック20とセカンドシート12との間の隙間を大きく確保することができると共に、シートクッション18とフロアパネル15との間の隙間を大きく確保することができる。
【0041】
また、本車両用シート10では、シートバックフレーム44の構成部材であるリクライニングアッパーブラケット48が、リクライニング軸58を介して直接的にベースフレーム16に連結されており、周知のリクライニング機構60によって起立位置に拘束される構成になっている。これにより、車両衝突時に作用する荷重(例えば、車両の後面衝突時に乗員から作用する車両後方側への荷重)に対するシートバックフレーム44の支持剛性を、一般的な車両用シートと同等に確保することができるので、上記荷重によるシートバックフレーム44の変形(変位)を小さくすることができる。これにより、車両衝突時における乗員保護性能を良好に確保することができる。また、上述の如くシートバックフレーム44の下端部がリクライニング軸58を介してベースフレーム16に連結されたシンプルな構成であるため、部品点数を少なくすることができ、製造コスト等を低減することができる。
【0042】
<実施形態の補足説明>
上記実施形態では、ベースフレーム16がヒンジ部28の跳ね上げ軸34回りに跳ね上げ位置へと回転可能とされた構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、ベースフレームが車体床部に対して回転不能に固定された構成にしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、シートバックフレーム44が、フレーム本体46と、左右のリクライニングアッパーブラケット48とによって構成された場合について説明したが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、シートバックフレームの構成は適宜変更することができる。例えば、サイドフレーム50とリクライニングアッパーブラケット48とが一体に形成された構成にしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、シートクッションフレーム70の前部側がリンク部材82を介してベースフレーム16に支持された構成にしたが、請求項1又は請求項2に係る発明はこれに限らず、シートクッションフレームの前部側の支持構造は、前述したようなガイド手段と突起等による支持構造にしてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態では、シートバック20が起立位置に配置された状態では、連結軸80の中心軸線がリクライニング軸58の中心軸線と同じ高さに配置される構成にしたが、これに限らず、リクライニング軸58の中心軸線よりもシート下方側に配置される構成にしてもよい。また、請求項1に係る発明では、シートバック20が起立位置に配置された状態で、連結軸80の中心軸線がリクライニング軸58の中心軸線よりもシート上方側に配置される構成にしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、車両のサードシートに対して本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明は、車両のセカンドシートやフロントシート等に対しても適用することができる。例えば、本発明をフロントシートに対して適用した場合、シートバックが前倒しされた状態において、シートクッション及びシートバックと車両のトリム部品(インストルメントパネル類)との間の隙間を大きく確保することが可能になる。
【0047】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0048】
10 車両用シート
15 フロアパネル(車体床部)
16 ベースフレーム
18 シートクッション
20 シートバック
34 跳ね上げ軸
44 シートバックフレーム
46 フレーム本体
48 リクライニングアッパーブラケット(ブラケット)
48A クッション連結部
58 リクライニング軸
70 シートクッションフレーム
80 連結軸
82 リンク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体床部に取り付けられるベースフレームと、
シートバックフレームの下端側がシート幅方向に沿ったリクライニング軸を介して前記ベースフレームに連結され、前記リクライニング軸回りに前倒し可能とされると共に、前記シートバックフレームの下端側における前記リクライニング軸よりも前端側に設けられたクッション連結部が、前記前倒し時に前記リクライニング軸回りにシート下方側かつシート後方側へ回転するシートバックと、
シートクッションフレームの後端側が前記クッション連結部に対してシート幅方向に沿った連結軸回りに回転可能に連結されると共に、前記シートクッションフレームの前部側が前記前倒し時における前記クッション連結部の回転に追従する側へ移動可能に前記ベースフレームに支持されたシートクッションと、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記シートバックが前記前倒し前の起立位置に配置された状態では、前記連結軸の中心軸線が前記リクライニング軸の中心軸線と同じ高さ又は前記リクライニング軸の中心軸線よりもシート下方側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートクッションフレームの前部側は、当該前部側及び前記ベースフレームのそれぞれに対してシート幅方向に沿った軸線回りに回転可能に連結されたリンク部材を介して前記ベースフレームに支持されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートバックフレームは、フレーム本体と、当該フレーム本体の下端側に固定され、前記リクライニング軸を介して前記ベースフレームに連結されると共に、前記シートクッション連結部が設けられたブラケットと、を有することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記ベースフレームは、前端側が車体床部に対してシート幅方向に沿った跳ね上げ軸を介して連結されており、車体床部に対して起立する跳ね上げ位置へと前記跳ね上げ軸回りに回転可能とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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