説明

車両用シート

【課題】簡単な構造によってシートパッドの裏面側に送風路を構成することができる車両用シートを提供する。
【解決手段】シートパッド50の裏面が支持部材30によって弾性的に支持される。シートパッド50の裏面に送風路52を構成する送風溝53が形成される。支持部材30は、シートパッド50の裏面に接して配設されることで、送風溝53の溝開口部を塞いで送風路52を構成する気密性を有する面状体31によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は空調機能を有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいては、シートクッション(又はシートバック)のシートパッドの裏面が支持部材によって弾性的に支持される。
また、シートクッション(又はシートバック)に空調機能(送風機能)をもたせて座り心地の向上を図るために、シートパッドの裏面側に送風路が構成され、空調装置から供給される空調用の空気が送風路を通してシートパッドの表面から吹き出されるように構成した空調機能を有する車両用シートが知られている。
また、シートパッドの裏面側に送風路を構成するために、例えば、特許文献1に開示されているように、シートパッドの裏面に送風溝を形成すると共に、シートパッドの裏面に板状部材を貼り付けて送風溝の開口部(裏面側開口部)を塞ぐことで送風路を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−235676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、支持部材によって弾性的に支持されるシートパッドの裏面に、送風溝の開口部を塞いで送風路を構成する板状部材を貼り付けると、板状部材の分だけ部品点数や組付工数が増加し、コスト高となると共に、板状部材の板厚や硬さによって座り心地が悪くなることも想定される。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、簡単な構造によってシートパッドの裏面側に送風路を構成することができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る車両用シートは、シートパッドの裏面が支持部材によって弾性的に支持され、前記シートパッドの裏面に送風路を構成する送風溝が形成された車両用シートであって、
前記支持部材は、前記シートパッドの裏面に接して配設されることで、前記送風溝の溝開口部を塞いで前記送風路を構成する気密性を有する面状体によって構成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、支持部材が気密性を有する面状体によって構成されることによって、この面状体を利用して送風溝の溝開口部を塞いで送風路を構成することができる。
言い換えると、部品点数を増加させることなく、簡単な構造でシートパッドの裏面側に送風路を構成することができる。
【0008】
請求項2に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートであって、
シートパッドの裏面には、送風溝の溝開口部の周縁部に沿い、かつ面状体に密接する凸条部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、シートパッドの裏面の凸条部が面状体に密接することによって、送風路内からの空気漏れを良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施例1に係る車両用シートを簡略化して示す斜視図である。
【図2】同じくシートクッションのクッションフレームと、シートパッドと、表皮とが分離された状態を示す斜視図である。
【図3】同じく支持枠体に支持部材としての面状体が張設された状態を示す斜視図である。
【図4】同じくシートクッションのクッションフレームと、シートパッドと、表皮とが組み付けられた状態を示す側断面図である。
【図5】同じく図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】同じく図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】同じく面状体の両側縁に支持枠体の両側枠部の外周に樹脂成形部を形成する成形型を簡略化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0012】
この発明の実施例1に係る車両用シートを図面にしたがって説明する。
図1に示すように、車両用シートは、シートクッション20と、このシートクッション20の後部に図示しないリクライニング機構によって傾き調整可能に配置されるシートバック10とを備えている。
図2〜図4に示すように、シートクッション20は、クッションフレーム21と、支持部材30と、シートパッド50と、表皮60と、空調装置70とを備えている。
【0013】
図2に示すように、クッションフレーム21は、左右の両サイドフレーム部22と、これら両サイドフレーム部22の前端部に跨って配設されたパネル状のフロントフレーム部23と、両サイドフレーム部22の後端部に跨って配設されたパイプ状のリヤフレーム部25とを備えている。
【0014】
図2と図3に示すように、支持部材30は、布材の表面に樹脂(熱可塑性合成樹脂材料)がコーティングされることによって形成され気密性を有する面状体31によって構成されている。そして、面状体31は支持枠体32に保持された状態でクッションフレーム21に配設される。
図3に示すように、支持枠体32は、金属製棒状材が四角枠状に屈曲され両端が溶接によって結合された枠状芯金33と、その枠状芯金33の左右の両側枠部33bの外周面を覆うようにして形成された熱可塑性合成樹脂材料よりなる樹脂成形部34とを有している。
そして、図5に示すように、枠状芯金33の左右の両側枠部33bの樹脂成形部34に面状体31の左右両端縁31aが埋設された状態で面状体31が弛みなく張設される。
【0015】
また、図3と図4に示すように、枠状芯金33の左右の両側枠部33bの後端部と、後枠部33cの左右両端部との境界部にはクッションフレーム21のリヤフレーム部25に掛け止めされる後係止部36が曲げ加工によって形成されている。
また、図2と図3に示すように、枠状芯金33の左右の両側枠部33bの前後方向中央部には、クッションフレーム21の左右の両サイドフレーム部22に掛け止めされるフック形状の側係止部37が溶接等によって取り付けられている。
そして、図2〜図4に示すように、支持枠体32の後係止部36がクッションフレーム21のリヤフレーム部25に掛け止めされ、左右の両側枠部33bの側係止部37がクッションフレーム21の左右の両サイドフレーム部22に掛け止めされ、前枠部33aがクッションフレーム21のフロントフレーム部23の左右の係止片24に係止された状態で面状体31がクッションフレーム21に装着される。
【0016】
この実施例1において、図7に示すように、一対の成形型100、101のキャビティ内に枠状芯金33がセットされる。また、一対の成形型100、101が型閉じされた状態でこれら成形型100、101の型合わせ面の間に面状体31の左右両端縁31aの延長部31bが挟持される。
ここで、一対の成形型100、101のキャビティ内に溶融状態の熱可塑性合成樹脂材料が充填される。
これによって、枠状芯金33の左右の両側枠部33bに樹脂成形部34を形成すると同時に、面状体31の左右両端縁31aが樹脂成形部34内に埋設された状態で一体に溶融接合される。そして、面状体31は、支持枠体32の左右の両樹脂成形部34の間に弛みなく張設される。
【0017】
また、この実施例1において、一対の成形型100、101の間には、樹脂成形部34に対応するキャビティの他、面状体31の前部の左右方向中央部に対応する位置に空調用の空気の流入孔39を有する熱可塑性合成樹脂材料よりなる口枠体38に対応するキャビティが形成される。さらに、面状体31の下面の前後部に位置する部分に、後述する空調装置(例えば送風機)70を装着するための熱可塑性合成樹脂材料よりなるフック形状の掛止部材41に対応するキャビティが形成される。
そして、枠状芯金33の左右の両樹脂成形部34を形成すると同時に、口枠体38と、掛止部材41とが同時に形成される。
なお、面状体31の左右両端縁31aの延長部31bは、樹脂成形部34が形成された後、切除される(図3参照)。
【0018】
シートパッド50は、発泡ウレタンの成形品よりなり、その裏面が支持部材30としての面状体31によって弾性的に支持された状態で配設され、表面が通気性を有する表皮60によって被覆されている。
図2と図4に示すように、シートパッド50の裏面には、送風路52を構成する送風溝53が形成されている。この送風溝53は、シートパッド50の裏面に開口すると共に、左右方向に延びる複数(単数であってもよい)の横溝部53aと、横溝部53aの左右方向中央部に連通する前後方向に延びる縦溝部53bとを備えている。また、シートパッド50には、送風溝53に連通する複数個の吹出孔51が形成されている。
【0019】
また、この実施例1において、図5と図6に示すように、シートパッド50の裏面には、送風溝53の溝開口部の周縁部に沿い、かつ面状体31に密接する凸条部54が形成されている。
そして、面状体31の表面にシートパッド50の裏面の凸条部54が弾性的に接して配置されることによって、送風溝53の溝開口部が面状体31によって塞がれ、これによって送風路52が構成される。
この状態において、図5に示すように、前側に位置する横溝部53aの左右方向中央部が面状体31の口枠体38の流入孔39に連通している。
【0020】
また、この実施例1において、図4に示すように、面状体31の下方には、送風路52に空調用の空気を送風するための空調装置70が配設されている。
この実施例1において、空調装置70の本体ケース70aの上面の前後部にはU字状の吊下げ部70bが突設されている。
そして、空調装置70は、その吊下げ部70bが面状体31の掛止部材41に係止されることによって、面状体31の下方に装着される。また、空調装置70の吹出口からダクト部材73が延出される。
このダクト部材73先端に形成された接続フランジ74が、図5に示すように、口枠体38の下面にクリップ75(ビスでもよい)等によって取り付けられる。なお、ダクト部材73は伸縮自在な蛇腹構造部73aを有している。
【0021】
この実施例1に係る車両用シートは上述したように構成される。
したがって、空調装置70の作動時には、空調装置70からダクト部材73を通して供給される空調用の空気が送風路52に供給される。そして、空調用の空気はシートパッド50表面の複数の吹出孔51から表皮60を通して吹き出される。
さて、シートパッド50の裏面を弾性的に支持する支持部材30が気密性を有する面状体31によって構成されることによって、この面状体31を利用してシートパッド50の裏面の送風溝53の溝開口部を塞いで送風路52を構成することができる。
言い換えると、部品点数を増加させることなく、簡単な構造でシートパッド50の裏面側に送風路52を構成することができる。
【0022】
また、実施例1において、シートパッド50の裏面の送風溝53の溝開口部の周縁部に沿って凸条部54が形成され、この凸条部54が面状体31の上面に弾性圧縮されて密接することによって、送風路52内からの空気漏れを良好に防止することができる。
【0023】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、車両用シートのシートクッション20のシートパッド50の裏面側に対して送風路52が構成される場合を例示したが、シートバック10のシートクッションの裏面側に送風路を構成することが可能である。
また、前記実施例1においては、シートパッド50の裏面の送風溝53の溝開口部の周縁部に沿って凸条部54が形成される場合を例示したが、凸条部54は必ずしも設けなくてもよい。
また、前記実施例1においては、シートパッド50が発泡ウレタンの成形品によって形成される場合を例示したが、通気性を有する不織布によってシートパッドが形成される場合においてもこの発明を実施することができる。この場合には、シートパッド裏面の送風溝を表面側に開口させる吹出孔を設けなくてもよい。
また、前記実施例1においては、支持部材30をなす面状体31が布材の表面に樹脂(熱可塑性合成樹脂材料)がコーティングされることによって形成される場合を例示したが、支持部材30をなす面状体31が気密性を有する樹脂シートによって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 シートバック
20 シートクッション
21 クッションフレーム
30 支持部材
31 面状体
32 支持枠体
50 シートパッド
52 送風路
53 送風溝
54 凸条部
70 空調装置
73 ダクト部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパッドの裏面が支持部材によって弾性的に支持され、前記シートパッドの裏面に送風路を構成する送風溝が形成された車両用シートであって、
前記支持部材は、前記シートパッドの裏面に接して配設されることで、前記送風溝の溝開口部を塞いで前記送風路を構成する気密性を有する面状体によって構成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
シートパッドの裏面には、送風溝の溝開口部の周縁部に沿い、かつ面状体に密接する凸条部が形成されていることを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23003(P2013−23003A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157721(P2011−157721)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】