説明

車両用ステップ制御装置

【課題】通常駆動時での実効電圧の設定に自由度を持たせることができる車両用ステップ制御装置を提供する。
【解決手段】フラップ先端がサイドシルのラバーに当接する手前又はフラップ基端がステップ本体先端に当接する手前に達したことを検出スイッチが検出した検出時点Aの前後で車両用ステップを異なる実効電圧で駆動する。この検出時点Aから駆動を停止する停止時点Cまでを複数のフェーズ101,102に分割することで、駆動モータへの実効電圧を各フェーズ101,102で異なる値V2,V3に設定可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられたステップの駆動を制御する車両用ステップ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗降口の下部にステップが設けられた車両が知られており(例えば、特許文献1参照。)、前記ステップを乗降時に足場として利用できるように構成されている。
【0003】
このステップは、図外の駆動機構に支持されたステップ本体と、該ステップ本体の先端部に支持された延長部としてのフラップを備えている。これにより、前記駆動機構で駆動することによって、格納時には、前記ステップ本体をアンダーフロアに配置すると共に前記フラップをサイドシルに沿って起立できるように構成されており、展開時には、前記ステップ本体を車両側方へ延出すると共に前記フラップを前記ステップ本体の延長上に延出できるように構成されている。
【0004】
図5は、その格納動作を示す図であり、格納操作が開始されると、前記駆動機構を作動する駆動モータにデューティー比がDFUL(例えば100%)の駆動信号を一定時間(TFUL)出力した後、一定時間(TF2)掛けてデューティー比をDSL(例えば75%)まで低下して、前記ステップ本体の後退動作と前記フラップの起立動作とを連動させる。このとき、このステップが格納近傍位置に達した際には、検出スイッチが作動するので(A)、前記デューティー比をDSL2(100%近く)まで上昇して一定時間(TDLY)駆動して終了する。
【0005】
これにより、B地点でサイドシルに当接する前記フラップを、強いトルクのまま最後まで駆動し、前記サイドシルに確実に密着させた状態で駆動を完了(C)できるように構成されている。
【0006】
同様に、展開操作が開始されると、前記駆動機構を作動する駆動モータにデューティー比がDFUL(例えば100%)の駆動信号を一定時間(TFUL)出力した後、一定時間(TF2)掛けてデューティー比をDSL(例えば75%)まで低下して、前記ステップ本体の展開動作と前記フラップの傾倒動作とを連動させる。このとき、このステップが展開近傍位置に達した際には、検出スイッチが作動するので(A)、前記デューティー比をDSL2(100%近く)まで上昇して一定時間(TDLY)駆動して終了する。
【0007】
これにより、B地点でストッパに当たる前記フラップを、強いトルクのまま最後まで駆動し、前記ストッパに確実に当接した状態で駆動を完了(C)できるように構成されている。
【0008】
ここで、前記各検出スイッチは、取り付け誤差等を考慮して、前記フラップが前記サイドシルに当接する手前、または前記フラップがストッパに当接する手前でオン作動するように設定されている。
【特許文献1】特開2008−105567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような車両用ステップ制御装置にあっては、通常駆動時のデューティー比であるDSLと、検出スイッチ作動後のデューティー比であるDSL2との差が大きいと、デューティー比切替時にステップが急加速してしまい、作動音や滑らかな作動に悪影響が出てしまう。
【0010】
このとき、検出スイッチ作動後のデューティー比であるDSL2は、所定の作動トルクを得る為に、高めに設定する必要があり、これに伴って通常駆動時に駆動するデューティー比であるDSLも比較的高い値にせざるを得なかった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、通常駆動時でのモータへの実効電圧の設定に自由度を持たせることができる車両用ステップ制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の車両用ステップ制御装置にあっては、車両用ステップの展開駆動又は格納駆動を開始してから機構部の対象部位が対象箇所に当接した状態で停止するまでの間に、前記対象部位が前記対象箇所に当接する手前に達したことを検出スイッチが検出し、前記車両用ステップを駆動するモータへの実効電圧を前記検出スイッチでの検出時点から異なる実効電圧へ移行する車両用ステップ制御装置において、前記検出時点から前記車両用ステップの駆動を停止する停止時点までの間を複数のフェーズに分割し、各フェーズでの前記モータへの実効電圧を異なる値に設定可能とした。
【0013】
ここで、本明細書において、前記実効電圧とは、前記モータに加えられる平均の電圧であり、実効値を示すもとのする。
【0014】
すなわち、車両用ステップの展開駆動又は格納駆動を開始した際には、当該車両用ステップを駆動するモータには、通常駆動時の実効電圧で駆動される。そして、機構部の対象部位が対象箇所に当接する手前に達したことを検出スイッチが検出した際には、この検出時点から前記モータは、異なる実効電圧で駆動され、前記対象部位が前記対象箇所に当接した状態で停止する。
【0015】
このとき、前記検出スイッチによる検出時点から前記車両用ステップの駆動を停止する停止時点までの間は、複数のフェーズに分割されており、各フェーズでの前記モータへの実効電圧を異なる値に設定することができる。
【0016】
このため、前記車両用ステップを通常作動する際の通常実効電圧と、前記車両用ステップを停止する直前のフェーズでの実効電圧との差を大きく設定した場合であっても、当該停止直前のフェーズの前に設定された中間のフェーズにおける実効電圧を調整することで、前記通常実効電圧と前記停止直前のフェーズの実効電圧との差に起因した不具合が解消される。
【0017】
また、請求項2の車両用ステップ制御装置においては、少なくとも前記対象部位が前記対象箇所に当接する当接時点を含んだ当接フェーズと前記停止時点直前の停止直前フェーズとを設定し、前記当接フェーズと前記停止直前フェーズとで前記モータへの実効電圧を異なる値に設定可能とした。
【0018】
すなわち、前記検出スイッチによる検出時点から前記車両用ステップの駆動を停止する停止時点までの間には、少なくとも前記対象部位が前記対象箇所に当接する当接時点を含んだ当接フェーズと、前記停止時点直前の停止直前フェーズとが設定されており、前記当接フェーズと前記停止直前フェーズとにおいて、前記モータへの実効電圧を異なる値に設定することができる。
【0019】
このため、前記車両用ステップを通常作動する際の通常時での通常実効電圧と、前記車両用ステップを停止する直前の停止直前フェーズでの実効電圧との差を大きく設定した場合であっても、前記停止直前フェーズの前に設定された前記当接フェーズにおける実効電圧を調整することで、前記通常実効電圧と前記停止直前フェーズの実効電圧との差に起因した不具合が解消される。
【0020】
このとき、前記当接フェーズは、前記対象部位が前記対象箇所に当接する当接時点を含んでおり、当該当接フェーズにおいて、前記対象部位が前記対象箇所に当接する事となる。このため、この当接フェーズにおける実効電圧を低めに設定することで、作動速度を抑えることができ、当接時に生じ得る当接音が抑えられる。
【0021】
さらに、請求項3の車両用ステップ制御装置では、前記モータへの駆動信号のデューティー比を可変して前記実効電圧を制御するとともに、前記検出時点以前の通常駆動時での前記駆動信号のデューティー比を30〜60%に設定する一方、前記当接フェーズでのデューティー比を30〜80%に設定し、前記停止直前フェーズでのデューティー比を80〜100%に設定した。
【0022】
これにより、前記車両用ステップを通常作動する際の通常実効電圧を低めに設定することで、前記車両用ステップの作動速度を抑えることができるとともに、前記停止直前フェーズの実効電圧を高くすることで、駆動トルクを大きくすることができる。
【0023】
この際、前記当接フェーズでのデューティー比を30〜80%に設定することで、前記車両用ステップのスムーズな駆動が実現される。
【0024】
加えて、請求項4の車両用ステップ制御装置にあっては、前記停止直前フェーズでの前記実効電圧を、前記検出時点以前の通常駆動時での実効電圧の二倍以上に設定した。
【0025】
これにより、前記車両用ステップを通常作動する際には、実効電圧を抑えることで、ゆっくりとスムーズに駆動することができる一方、停止直前時には、大きなトルクによって機構部の対象部位を確実に対象箇所に密着させた状態で停止することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明の請求項1の車両用ステップ制御装置にあっては、検出スイッチによる検出時点から車両用ステップの駆動を停止する停止時点までの間を複数のフェーズに分割することで、各フェーズでの前記モータに加える実効電圧を異なる値に設定することができる。
【0027】
このため、前記車両用ステップを通常作動する際の前記通常実効電圧と、前記車両用ステップを停止する直前のフェーズでの実効電圧との差を大きく設定した場合であっても、当該停止直前のフェーズの前に設定された中間のフェーズにおける実効電圧を調整することで、前記通常実効電圧と前記停止直前のフェーズの実効電圧との差に起因する作動音の発生や作動速度の変動を抑えることができる。
【0028】
したがって、これらの不具合を起こすことなく、通常駆動時でのモータへの実効電圧を自由に設定することができ、設定値に自由度を持たせることができる。
【0029】
これに伴って、前記通常実効電圧を低くすることができるため、通常駆動時での作動速度及び駆動力を抑えることができ、車両用ステップのゆっくりとしたスムーズな駆動を実現できるとともに、機構が発する低級音を抑えることができる。
【0030】
また、請求項2の車両用ステップ制御装置においては、検出スイッチによる検出時点から車両用ステップの駆動を停止する停止時点までの間に、機構部の対象部位が対象箇所に当接する当接時点を含んだ当接フェーズと、前記停止時点直前の停止直前フェーズとが設定されており、前記当接フェーズと前記停止直前フェーズとにおいて、前記モータへの実効電圧を異なる値に設定することができる。
【0031】
このため、前記車両用ステップを通常作動する際の前記通常実効電圧と、前記車両用ステップを停止する直前の停止直前フェーズでの実効電圧との差を大きく設定した場合であっても、前記停止直前フェーズの前に設定された前記当接フェーズにおける実効電圧を調整することで、前記通常実効電圧と前記停止直前フェーズの実効電圧との差に起因した作動速度の変動や作動音の発生を抑えることができる。
【0032】
したがって、これらの不具合を起こすことなく、通常駆動時での前記通常実効電圧を自由に設定することができ、設定値に自由度を持たせることができる。
【0033】
これに伴って、前記通常実効電圧を低くすることができるため、通常駆動時での作動速度及び駆動力を抑えることができ、車両用ステップのゆっくりとしたスムーズな駆動を実現できるとともに、機構が発する低級音を抑えることができる。
【0034】
そして、前記当接フェーズは、前記対象部位が前記対象箇所に当接する当接時点を含んでおり、当該当接フェーズにおいて、前記対象部位が前記対象箇所に当接する事となる。このため、この当接フェーズにおける実効電圧を低めに設定し作動速度を抑えることで、前記対象部位が前記対象箇所に当接する際に生じ得る当接音の発生を抑えることができる。
【0035】
さらに、請求項3の車両用ステップ制御装置においては、前記通常駆動時でのデューティー比を30〜60%に、前記当接フェーズでのデューティー比を30〜80%に、また前記停止直前フェーズでのデューティー比を80〜100%に設定することで、前記車両用ステップを通常作動する際の通常実効電圧を抑えめに設定できるとともに、前記停止直前フェーズの実効電圧を高くして駆動トルクを大きくすることができる。
【0036】
この際、前記当接フェーズでのデューティー比を30〜80%に設定することで、前記車両用ステップのスムーズな駆動を実現することができる。
【0037】
加えて、請求項4の車両用ステップ制御装置では、前記停止直前フェーズでの実効電圧を前記通常実効電圧の二倍以上に設定することで、前記車両用ステップを通常作動する際には、作動速度を抑えることで、ゆっくりとスムーズに駆動することができる。一方、停止直前時には、大きなトルクによって機構部の対象部位を確実に対象箇所に確実に密着させた状態で停止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0039】
図1は、本実施の形態にかかる車両用ステップ制御装置1(図2参照)を備えた車両2の要部を示す図であり、図2には、当該車両用ステップ制御装置1のブロック図が示されている。
【0040】
すなわち、この車両2には、図1に示したように、図外の前側ドア及び後側ドアで開閉される乗降用の側部開口部11が設けられており(一方のみ図示)、該側部開口部11の下縁は、車両前後方向に延在するサイドシル12によって構成されている。このサイドシル12の下部には、車両用ステップ13が設けられており、該車両用ステップ13は、主踏み面を構成するステップ本体14と、該ステップ本体14の先端部に回動自在に軸支された延長部としてのフラップ15とによって構成されている。
【0041】
前記ステップ本体14は、当該車両2の下部に設けられた図外の駆動機構を介して車体に支持されており、前記駆動機構の駆動モータ21(図2参照)を通電して当該駆動機構で作動することによって、前記車両用ステップ13を側方に展開した展開状態と、車両内方に後退した格納状態22とを形成できるように構成されている。
【0042】
前記展開状態を形成する際には、前記駆動機構による前記ステップ本体14の側方へ延出動作に連動して起立状態の前記フラップ15を図外の連動機構によって傾倒できるように構成されており、この展開状態では、前記ステップ本体14の延長上に前記フラップ15を配置した状態で、前記側部開口部11の下部に踏み面を形成できるように構成されている。これにより、この車両用ステップ13が形成した踏み面を、乗降時に足場として利用できるように構成されている。
【0043】
前記車両用ステップ13を前記格納状態22から前記展開状態へ移行する過程では、機構部の対象部位を構成する前記フラップ15の基端31が対象箇所を構成する前記ステップ本体14の先端32に当接する手前(直前)に達した際に、前記駆動機構内に設けられた展開側検出スイッチ33が(図2参照)、これを検出してオン作動するように構成されている(図1中では図示省略)。そして、前記フラップ15の前記基端31が前記ステップ本体14の前記先端32に当接し、かつ前記フラップ15の前記基端31が前記ステップ本体14の前記先端32に密着するまで前記駆動機構による展開駆動が継続された後(ストッパー機能部分)、当該駆動機構による駆動が停止されるように構成されている。
【0044】
また、前記格納状態22を形成する際には、前記駆動機構による前記ステップ本体14の車両中心方向への後退動作に連動して傾倒状態の前記フラップ15を図外の連動機構によって起立できるように構成されており、この格納状態22では、前記ステップ本体14を前記サイドシル12の下部に配置するとともに、前記フラップ15を前記ステップ本体14に対して起立して前記サイドシル12に密着できるように構成されている。これにより、当該車両用ステップ13が車両側方へ突出しない前記格納状態22を形成できるように構成されている。
【0045】
前記車両用ステップ13を前記展開状態から前記格納状態22へ移行する過程では、機構部の対象部位を構成する前記フラップ15先端の踏み面41が対象箇所を構成する前記サイドシル12側面のラバー42に当接する手前(直前)に達した際に、前記駆動機構内に設けられた格納側検出スイッチ43が(図2参照)、これを検出してオン作動するように構成されている(図1中では図示省略)。そして、前記フラップ15先端の前記踏み面41が前記サイドシル12の前記ラバー42に当接し、かつ前記フラップ15先端の前記踏み面41が前記サイドシル12の前記ラバー42に密着するまで前記駆動機構による格納駆動が継続された後、当該駆動機構による駆動が停止されるように構成されている。
【0046】
この車両用ステップ制御装置1は、図2に示したように、制御部51を中心に構成されており、該制御部51には、前記前側ドアの状態を検出する前側ドアスイッチ52aと、前記後側ドアの状態を検出する後側ドアスイッチ52bとが接続されている。両ドアスイッチ52a,52bは、前記各ドアが閉鎖された状態と開放された状態とを検出できるように構成されており、前記制御部51は、前記各ドアの開閉状態を検出できるように構成されている。
【0047】
前記制御部51には、前記展開側検出スイッチ33が接続されており、該展開側検出スイッチ33のオン作動を検出することで、前記フラップ15の前記基端31が前記ステップ本体14の前記先端32に当接する手前(直前)に達したことを検出できるように構成されている。
【0048】
また、前記制御部51には、前記格納側検出スイッチ43が接続されており、該格納側検出スイッチ43のオン作動を検出することで、前記フラップ15先端の前記踏み面41が前記サイドシル12側面の前記ラバー42に当接する手前(直前)に達したことを検出できるように構成されている。
【0049】
さらに、前記制御部51には、前記駆動機構を作動する前記駆動モータ21が接続されており、前記ドアスイッチ52からの入力に基づいて、いずれか一方のドアが開放されたことを検出した際に前記車両用ステップ13を展開駆動するとともに、前記両ドアが閉鎖されたことを検出した際に前記車両用ステップ13を格納駆動できるように構成されている。
【0050】
そして、該制御部51は、ROM及びRAMを内蔵したマイコンを中心に構成されており、当該マイコンが前記ROMに記憶されたプログラムに従って動作することにより、当該車両用ステップ制御装置1が作動するように構成されている。
【0051】
以上の構成にかかる本実施の形態の動作を、前記制御部51の前記マイコンが実行する図3のフローチャート及び図4のタイミングチャートに従って説明する。
【0052】
すなわち、前記両ドアが閉鎖され前記両ドアスイッチ52a,52bがドア閉を検出すると、例えば車両用ステップ13を格納駆動するフラグをセットした後、駆動処理が呼び出される。
【0053】
すると、デューティー比が始動時デューティー比DFUL(本実施の形態では100%)に設定された駆動信号をデューティー駆動される前記駆動モータ21に出力することで、前記駆動モータ21への実効電圧を決定し(S1)、予め設定された始動時間TFUL経過するまで待機する(S2)。
【0054】
ここで、本実施の形態において、前記実効電圧とは、前記駆動モータ21に加えられる平均の電圧、つまりデューティー出力される前記駆動信号の一周期での平均電圧であり、実効値を示すもとのする。
【0055】
これにより、駆動力を要する始動時には、前記始動時デューティー比DFULの駆動信号によって前記駆動モータ21を前記始動時間TFUL駆動することができる。
【0056】
そして、前記始動時間TFUL経過した際には(S2)、前記駆動信号のデューティー比を、低下時間TF2を掛けて通常駆動デューティー比DSLまで低下した後(S3)、前記格納側検出スイッチ43がオン作動するまで、駆動信号のデューティー比が前記通常駆動デューティー比DSLに設定された通常実効電圧V1による格納駆動を継続する。
【0057】
このとき、前記通常駆動デューティー比DSLは、30〜60%の範囲内に設定されており、その一例として40%が挙げられる(本実施の駆動機構でのベストモード)。
【0058】
この格納駆動過程において、前記フラップ15先端の踏み面41が前記サイドシル12側面のラバー42に当接する手前(直前)に達して前記格納側検出スイッチ43がオン作動した検出時点Aでは(S4)、前記駆動信号のデューティー比を前記通常駆動デューティー比DSLから当接時デューティー比DSL3に変更して当接時実効電圧V2による格納駆動を継続した後(S5)、予め設定された当接ディレイ時間TDLY1経過するまで待機する(S6)。
【0059】
このとき、前記当接ディレイ時間TDLY1は、前記格納側検出スイッチ43がオン作動してから前記当接時デューティー比DSL3で格納駆動を継続した際に、当該当接ディレイ時間TDLY1内に必ず前記フラップ15先端の踏み面41が前記サイドシル12側面のラバー42に当接する値に設定されている。
【0060】
また、前記当接時デューティー比DSL3は、30〜80%の範囲内に設定されており、その一例として40%が挙げられる(本実施の駆動機構でのベストモード)。なお、図4のタイミングチャートでは、前記通常駆動デューティー比DSLと前記当接時デューティー比DSL3との境を明確にする為に、前記通常駆動デューティー比DSLと前記当接時デューティー比DSL3とが異なる値に設定された場合を例示している。
【0061】
このため、当接フェーズ101に設定された前記当接ディレイ時間TDLY1内には、必ず前記フラップ15先端の踏み面41が前記サイドシル12側面のラバー42に当接する当接時点Bが存在することとなる。
【0062】
次に、前記当接ディレイ時間TDLY1の駆動が完了した際には、停止直前フェーズ102に移行して、前記駆動信号のデューティー比を前記当接時デューティー比DSL3から停止直前デューティー比DSL2へ変更し、駆動信号のデューティー比が前記停止直前デューティー比DSL2に設定された停止直前実効電圧V3による格納駆動を継続し(S7)、停止直前ディレイ時間TDLY2経過するまで待機する(S8)。
【0063】
このとき、前記停止直前デューティー比DSL2は、80〜100%の範囲内に設定されており、その一例として100%が挙げられる(本実施の駆動機構でのベストモード)。なお、図4のタイミングチャートでは、前記当接時デューティー比DSL3と前記停止直前デューティー比DSL2との境を明確にする為に、前記当接時デューティー比DSL3と前記停止直前デューティー比DSL2が異なる値に設定された場合を例示している。
【0064】
これにより、前記当接時デューティー比DSL3より大きな駆動トルクを発生する前記停止直前デューティー比DSL2による駆動信号によって、前記フラップ15先端の踏み面41を前記サイドシル12側面のラバー42に当接した状態で密着させることができる。
【0065】
そして、前記停止直前ディレイ時間TDLY2経過した際には(S8)、前記駆動信号のデューティー比を0%にして格納駆動を停止し、この停止時点Cでメインルーチンへ戻る(S9)。
【0066】
なお、いずれか一方のドアが開放されいずれか一方のドアスイッチ52a,52bがドア開を検出した際には、例えば車両用ステップ13を展開駆動するフラグをセットした後、前記駆動処理が呼び出される。
【0067】
これにより、前記車両用ステップ13を前記格納状態22から前記展開状態へ駆動する際に、前記ステップ本体14の側方へ延出動作に連動して起立状態の前記フラップ15を傾倒し、該フラップ15を前記ステップ本体14の延長上に配置した状態で、前記フラップ15の前記基端31を前記ステップ本体14の前記先端32に当接して密着させた状態で前記駆動機構による駆動を停止するものとする。
【0068】
この際の動作も前述したフローチャートに従って実行するものとする。
【0069】
このように、前記車両用ステップ13の展開駆動又は格納駆動を開始した際には、前記駆動モータ21への駆動信号を通常駆動デューティー比DSLとすることで、当該車両用ステップ13を通常駆動実効電圧V1で駆動することができる。
【0070】
そして、前記フラップ15先端の踏み面41が前記サイドシル12側面のラバー42に当接する手前(直前)に達したことを前記格納側検出スイッチ43が検出、又は前記フラップ15の基端31が前記ステップ本体14の先端32に当接する手前(直前)に達したことを前記展開側検出スイッチ33が検出した際には、この検出時点Aから前記車両用ステップ13を、異なる実効電圧で駆動することができる。
【0071】
このとき、前記格納側検出スイッチ43又は前記展開側検出スイッチ33による検出時点Aから前記車両用ステップ13の駆動を停止する停止時点Cまでの間は、複数のフェーズに分割されており、各フェーズでの前記車両用ステップ13の実効電圧を異なる値に設定することができる。
【0072】
このため、前記車両用ステップ13を前記通常駆動デューティー比DSLで駆動した際の前記通常駆動実効電圧V1と、前記車両用ステップ13を停止する直前のフェーズでの実効電圧との差を大きく設定した場合であっても、当該停止直前のフェーズの前に設定された中間のフェーズにおける実効電圧を適切な値に調整することで、前記通常駆動実効電圧V1と前記停止直前のフェーズの実効電圧との差に起因した、切替時点での急加速や作動音を抑えることができる。
【0073】
したがって、これらの不具合を起こすことなく、通常駆動時での前記通常駆動実効電圧V1を自由に設定することができ、設定値に自由度を持たせることができる。
【0074】
これに伴って、前記通常実効電圧V1を低くすることができるため、通常駆動時での作動速度及び駆動力を抑えることができ、車両用ステップ13のゆっくりとしたスムーズな駆動を実現できるとともに、機構が発する低級音を抑えることができる。
【0075】
具体的に説明すると、前記展開側検出スイッチ33又は前記格納側検出スイッチ43による前記検出時点Aから前記車両用ステップ13の駆動を停止する前記停止時点Cまでの間には、少なくとも前記フラップ15先端の踏み面41が前記サイドシル12側面のラバー42に当接する、又は前記フラップ15の基端31が前記ステップ本体14の先端32に当接する前記当接時点Bを含んだ当接フェーズ101と、前記停止時点C直前の停止直前フェーズ102とが設定されており、前記当接フェーズ101と前記停止直前フェーズ102とにおいて、前記車両用ステップ13の実効電圧を異なる値に設定することができる。
【0076】
このため、前記車両用ステップ13を通常作動する際の前記通常実効電圧V1と、前記車両用ステップ13を停止する直前の停止直前フェーズ102での停止直前実効電圧V3との差を大きく設定した場合であっても、前記停止直前フェーズ102の前に設定された前記当接フェーズ101における前記当接時実効電圧V2を適切な値に調整することで、前記通常実効電圧V1と前記停止直前フェーズ102の停止直前実効電圧V3との差に起因した切替時点での急加速や作動音の発生を抑えることができる。よって、これらの不具合を起こすことなく、通常駆動時での前記通常実効電圧V1を自由に設定することができ、設定値に自由度を持たせることができる。
【0077】
これに伴って、前記通常実効電圧V1を低くすることができるため、通常駆動時での作動速度及び駆動力を抑えることができ、車両用ステップ13のゆっくりとしたスムーズな駆動を実現できるとともに、機構が発する低級音を抑えることができる。
【0078】
そして、前記当接フェーズ101は、前記フラップ15先端の踏み面41が前記サイドシル12側面のラバー42に当接する、又は前記フラップ15の基端31が前記ステップ本体14の先端32に当接する前記当接時点Bを含んでおり、当該当接フェーズ101において、前記フラップ15先端の踏み面41が前記サイドシル12側面のラバー42に当接する、又は前記フラップ15の基端31が前記ステップ本体14の先端32に当接する事となる。
【0079】
このため、この当接フェーズ101における当接時実効電圧V2を低めに設定し作動速度を抑えることによって、前記フラップ15先端の踏み面41が前記サイドシル12側面のラバー42に当接する、又は前記フラップ15の基端31が前記ステップ本体14の先端32に当接する際に生じ得る当接音の発生を抑えることができる。
【0080】
そして、前記車両用ステップ13を駆動する駆動モータ21への駆動信号のデューティー比を可変して前記実効電圧を制御するとともに、前記通常実効電圧V1でのデューティー比を30〜60%に設定する一方、前記当接フェーズ101でのデューティー比を30〜80%に設定し、かつ前記停止直前フェーズ102でのデューティー比を80〜100%に設定した。
【0081】
これにより、前記車両用ステップ13を通常作動する際の前記通常実効電圧V1を低めに設定し作動速度を抑えることができるとともに、前記停止直前フェーズ102の停止直前実効電圧V3を高めに設定し駆動トルクを大きくすることができる。
【0082】
この際、前記当接フェーズ101でのデューティー比を30〜80%に設定することで、前記検出時点Aでの前記車両用ステップ13のスムーズな駆動を実現することができる。
【0083】
このとき、本実施の形態では、前記停止直前フェーズ102での停止直前実効電圧V3が、前記通常実効電圧V1の二倍以上になるように設定されている。
【0084】
このため、前記車両用ステップ13を通常作動する際には、作動速度を抑えることで、ゆっくりとスムーズに駆動することができる。一方、停止直前時には、大きなトルクによって、前記フラップ15先端の踏み面41を前記サイドシル12側面のラバー42に確実に密着、又は前記フラップ15の基端31を前記ステップ本体14の先端32に確実に密着させることができ、この密着状態で機構を停止することができる。
【0085】
これにより、停止後のがたつきを防止し、ガタ音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】同実施の形態の車両用ステップ制御装置を示すブロック図である。
【図3】同実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】同実施の形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】従来例の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1 車両用ステップ制御装置
2 車両
11 側部開口部
12 サイドシル
13 車両用ステップ
14 ステップ本体
15 フラップ
21 駆動モータ
22 格納状態
31 基端
32 先端
33 展開側検出スイッチ
41 踏み面
42 ラバー
43 格納側検出スイッチ
51 制御部
52a 前側ドアスイッチ
52b 後側ドアスイッチ
101 当接フェーズ
102 停止直前フェーズ
V1 通常実効電圧
V2 当接時実効電圧
V3 停止直前実効電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ステップの展開駆動又は格納駆動を開始してから機構部の対象部位が対象箇所に当接した状態で停止するまでの間に、前記対象部位が前記対象箇所に当接する手前に達したことを検出スイッチが検出し、前記車両用ステップを駆動するモータへの実効電圧を前記検出スイッチでの検出時点から異なる実効電圧へ移行する車両用ステップ制御装置において、
前記検出時点から前記車両用ステップの駆動を停止する停止時点までの間を複数のフェーズに分割し、各フェーズでの前記モータへの実効電圧を異なる値に設定可能としたことを特徴とする車両用ステップ制御装置。
【請求項2】
少なくとも前記対象部位が前記対象箇所に当接する当接時点を含んだ当接フェーズと前記停止時点直前の停止直前フェーズとを設定し、前記当接フェーズと前記停止直前フェーズとで前記モータへの実効電圧を異なる値に設定可能としたことを特徴とする請求項1記載の車両用ステップ制御装置。
【請求項3】
前記モータへの駆動信号のデューティー比を可変して前記実効電圧を制御するとともに、前記検出時点以前の通常駆動時での前記駆動信号のデューティー比を30〜60%に設定する一方、
前記当接フェーズでのデューティー比を30〜80%に設定し、前記停止直前フェーズでのデューティー比を80〜100%に設定したことを特徴とする請求項2記載の車両用ステップ制御装置。
【請求項4】
前記停止直前フェーズでの前記実効電圧を、前記検出時点以前の通常駆動時での実効電圧の二倍以上に設定したことを特徴とする請求項2又は3記載の車両用ステップ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137619(P2010−137619A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313805(P2008−313805)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
【Fターム(参考)】