説明

車両用スロープ装置

【課題】ヘッドレストの取付け、取り外しが必要でなく、車椅子を車両に載せたときには、自動的に、車椅子に座っている人にヘッドレストを提供できるとともに、車両から車椅子を降ろすときには、ヘッドレストが自動的に車椅子から離間して、邪魔にならない位置に移動させることができる車両用スロープ装置を提供する。
【解決手段】スロープ装置20はドア開口部に回動自在に連結される第1スロープ板21と地上に架け渡し可能な第2スロープ板23とがヒンジ22を介して連結される。スロープ装置20の第2スロープ板23には展開状態のときに第1スロープ板21内に設けられた凹部内の空間内に入り込む延出板32が設けられている。延出板32には展開状態で地面側に向く面にヘッドレスト35が設けられ、起立状態ではヘッドレスト35が車室S内側に向くようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子で車両への乗降を可能にするスロープ部材を車両と地面間に架け渡した展開状態と、車両内に納めることが可能に起立状態となることが可能な車両用スロープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子で車両への乗降を可能にする車両用リフト装置は、特許文献1で公知である。特許文献1では、車椅子をリフト装置により車両へ載り込みする際、及び車両から車椅子を降ろす際に、リフト装置の保持部により、車椅子が保持されるようになっている。そして、車両用リフト装置は、リフト装置を昇降する際に、車椅子に座っている人の頭部がゆれないように前記リフト装置の保持部と一体に連動するヘッドレストが備えられている。この車両用リフト装置によれば、車両に車椅子を乗せた状態で、車両を走行させたときにも、前記ヘッドレストにより、車椅子に乗った人の頭部がゆれないようにすることができる。
【0003】
車椅子で車両の乗降を可能にする装置としては、車両用スロープ装置も特許文献2及び特許文献3に示されるように公知である。
特許文献1、特許文献2に示すような車両用スロープ装置では、車椅子で車両への乗降を可能にするスロープ部材を車両と地面間に架け渡した展開状態と、車両内に納めることが可能に起立状態となることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−218793号公報
【特許文献2】特開2004−196027号公報
【特許文献3】特開2008−289844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2及び特許文献3の車両用スロープ装置では、特許文献1のようにヘッドレストを備えることについては提案されていない。従来、このような車両用スロープ装置を備える車両では、車両に搭載された車椅子に座っている人の頭部がゆれないようにするために、車椅子自体にヘッドレストを着脱自在に取付けできるようにしている。又、車両から車椅子を降ろしたときには、前記ヘッドレストは必要でなくなるため、そのときには、ヘッドレストを車椅子から取り外すことになる。
【0006】
このように車椅子自体にヘッドレストを着脱自在にする構成は、ヘッドレストを別途用意して、取付する作業が必要があるとともに、車両から降ろした車椅子では、前記ヘッドレストを取り外す作業が必要になる。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決して、ヘッドレストの取付け、取り外しが必要でなく、車椅子を車両に載せたときには、自動的に、車椅子に座っている人にヘッドレストを提供できるとともに、車両から車椅子を降ろすときには、ヘッドレストが自動的に車椅子から離間して、邪魔にならない位置に移動させることができる車両用スロープ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、複数のスロープ部材が互いに折り畳み可能に連結されて、地上とドア開口部間に斜めに架け渡しされて車椅子が走行可能な展開状態と、前記複数のスロープ部材が互いに折り畳まれて、車室内に起立状態で収納される車両用スロープ装置において、前記複数のスロープ部材には、車室のドア開口部に回動自在に連結される第1スロープ部材と第1スロープ部材と折り畳み可能に連結された第2スロープ部材を少なくとも含み、前記第2スロープ部材において、前記展開状態のときに地面側に向く面にヘッドレストが設けられ、前記第1スロープ部材及び第2スロープ部材の少なくともいずれか一方には、前記起立状態では、前記ヘッドレストが車室内側に向いて、前記ヘッドレストの少なくとも人の頭部に当たる当接面が、第1スロープ部材よりも車室側に位置させることを許容する許容手段が設けられていることを特徴とする車両用スロープ装置を要旨としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2スロープ部材は、第1スロープ部材に対して折り畳み時に、第1スロープ部材よりも反車室側に位置するように折り畳み可能に連結され、前記許容手段は、前記第2スロープ部材の第1スロープ部材側の端部から、第1スロープ部材に向かって延出されるとともに、前記展開状態のときに地面側に向く面に前記ヘッドレストが設けられた延出部であることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1において、前記許容手段は、第2スロープ部材が第1スロープ部材に対して折り畳み状態時に、第1スロープ部材よりも車室内に位置して第2スロープ部材の車椅子走行面が第1スロープ部材の車椅子走行面と相対するように、第1スロープ部材と第2スロープ部材間を連結するヒンジであることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1において、前記第2スロープ部材は、第1スロープ部材に対して第1スロープ部材よりも反車室側に位置するように折り畳み可能に連結され、前記ヘッドレストは、第2スロープ部材に対して、起立状態のときに第1スロープ部材と相対する面に設けられ、前記許容手段は、前記第1スロープ部材に設けられて、起立状態のときに、前記ヘッドレストの先端を通過可能に形成された窓部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至請求項4の発明によれば、ヘッドレストの取付け、取り外しが必要でなく、車椅子を車両に載せたときには、自動的に、車椅子に座っている人にヘッドレストを提供できるとともに、車両から車椅子を降ろすときには、ヘッドレストが自動的に車椅子から離間して、邪魔にならない位置に移動させることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、第1実施形態の車両の後部側から見た車両用スロープ装置の展開状態の概略斜視図、(b)は、(b)は車両の後部側から見た車両用スロープ装置の起立状態の概略斜視図。
【図2】(a)は起立状態の車両用スロープ装置を側面から見た概略図、(b)は展開状態の車両用スロープ装置を側面から見た概略図。
【図3】車両用スロープ装置の起立状態での作用を示す説明図。
【図4】第2実施形態の車両用スロープ装置の展開状態の要部斜視図。
【図5】第3実施形態の展開状態の車両用スロープ装置の要部斜視付図。
【図6】起立状態の車両用スロープ装置の側面から見た部分断面図。
【図7】(a)は、第4実施形態の車両用スロープ装置の展開状態の概略要部斜視図、(b)は、起立状態の側面から見た部分断面図。
【図8】(a)は、第5実施形態の車両用スロープ装置の展開状態の概略要部斜視図、(b)は、起立状態の側面図。
【図9】(a)は、第6実施形態の車両用スロープ装置の展開状態の概略要部斜視図、(b)は、起立状態の側面から見た部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態の車両用スロープ装置(以下、単にスロープ装置という)を図1〜図3を参照して説明する。
【0015】
図1(a)に示すように、車体10の後部にはドア開口部12が形成されている。前記ドア開口部12は、車体10の上部に設けられたドア13により開閉可能となっている。すなわち、ドア13はドア開口部12の上縁において、図示しないドアヒンジを介して上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0016】
ドア開口部12の下部には、スロープ装置20が備え付けられている。図2、図3に示すように、スロープ装置20は、前記ドア開口部12の下部における車体10のフロア10aに対して回動自在に支持された金属製の第1スロープ板21と、第1スロープ板21の先端において折り畳み可能にヒンジ22を介して連結された金属製の第2スロープ板23とを備えている。第1スロープ板21は第1スロープ部材に相当する。第2スロープ板23は第2スロープ部材に相当する。
【0017】
図1(a)に示すように第1スロープ板21及び第2スロープ板23は、車椅子が通過可能な幅を有するとともに、幅方向の両側縁には車椅子のスロープ板21,23からの脱落防止のためにそれぞれ側板24,25,26,27が形成されている。第1スロープ板21は、側板24,25の基端側が、フロア10aに固定された一対のスロープヒンジ28を介して回動自在にフロア10aに取り付けられている。
【0018】
図2(a)に示すように、スロープ装置20は、第1スロープ板21がスロープヒンジ28にて回動自在に支持されていることにより、フロア10a上に起立し、第2スロープ板23がヒンジ22にて折り畳まれた状態の起立状態になることが可能である。起立状態では、スロープ装置20は、前記ドア開口部12内に入り、すなわち、車体10内に収納されるとともに、この状態で、前記ドア13により、前記ドア開口部12を閉じることが可能となっている。又、起立状態では、第2スロープ板23は、第1スロープ板21に対して第1スロープ板21よりも反車室側に位置するように折り畳まれる。
【0019】
又、図1(a)、図2(b)に示すように、第1スロープ板21及び第2スロープ板23が展開された際、第1スロープ板21の側板24,25と、第2スロープ板23の側板25,27との対向する端面が互いに当接して、その展開状態の保持が可能である。この展開状態のとき、第2スロープ板23の先端は地面に載置されることにより、スロープ装置20は、地上と車体間を架け渡し可能である。又、展開状態のとき、上面となる第1スロープ板21,第2スロープ板23の上面は、車椅子走行面となる。
【0020】
図2(a)、(b)に示すように、第1スロープ板21、第2スロープ板23の側板24,26間、及び側板25,27間には、一対のリンク29が設けられている。なお、図2(a)、(b)では、第1スロープ板21、第2スロープ板23の側板24,26間側のリンク29のみが図示されている。又、図1(a)、(b)では説明の便宜上、リンク29の図示は省略されている。
【0021】
第2スロープ板23の側板26,27には、その長さ方向に延在するように長孔30が設けられている。各リンク29は、一端が第1スロープ板21の側板24,25に対して回動自在に軸支されるとともに、他端が第2スロープ板23の側板26,27の長孔30に対して前記長さ方向に摺動する図示しないスライダに連結されている。
【0022】
リンク29に連結された図示しないスライダは、図2(a)に示すように、スロープ装置20が起立状態では、第2スロープ板23が折り畳まれた状態で長孔30の下端となる端部側に位置する。又、前記スライダは、図2(b)に示すように、スロープ装置20が展開状態では、第2スロープ板23が展開された状態で長孔30の第1スロープ板21側の端部に位置する。スロープ装置20の起立状態と展開状態間の状態変移があるときに、第2スロープ板23は、リンク29に連結された前記スライダが長孔30の摺動可能な範囲で、第2スロープ板23のヒンジ22を中心とした回動が可能にされている。
【0023】
図1(a)に示すように、第2スロープ板23において、第1スロープ板21側と連結される側の端部の幅方向中央部には、展開状態で第1スロープ板21側に延出された延出部としての延出板32が設けられている。延出板32は、第2スロープ板23に設けられた許容手段に相当する。第1スロープ板21において、第2スロープ板23側と連結される側の端部の幅方向中央部には、展開状態で、前記延出板32の外形形状と合致する凹部33が形成されている。なお、本実施形態では、凹部33は延出板32と合致する形状としたが、延出板32と間に隙間があってもよい。
【0024】
延出板32において、スロープ装置20の展開状態で地面に向かう面には、ヘッドレスト35が取付固定されている。ヘッドレスト35の取付位置、すなわち、スロープ装置20の起立状態におけるフロア10aからのヘッドレスト35の高さ(すなわち、人の頭部に当接する当接面の高さ)は、この車体10に車椅子100を載せた際に、図3に示すように車椅子100に座る人Hの頭部Haの背面に当たる高さに適宜設定されている。
【0025】
そして、スロープ装置20が起立状態のときは、図2(a)に示すように、第2スロープ板23がヒンジ22を介して折り畳まれている状態になり、第2スロープ板23が鉛直状態或いは略鉛直状態となるため、ヘッドレスト35は、車室S内側を向いた状態となる。そして、ヘッドレスト35の先端の人の頭部に当たる当接面は、第1スロープ板21よりも車室側に位置することになる。なお、ヘッドレスト35の当接面を第1スロープ板21よりも車室内側に位置させるとは、第1スロープ板21の車椅子走行面を基準としている。又、スロープ装置20が展開状態のときは、図2(b)に示すように、第2スロープ板23が地上に横方向に延びて架け渡された状態となるため、ヘッドレスト35は、地面側を向いた状態となる。
【0026】
スロープ装置20は、フロア10aに装着された一対の駆動装置40に連結されている。各駆動装置40は、図示しない駆動モータ、及び前記モータに歯車列からなる減速機構42、並びに、減速機構42と、第1スロープ板21の側板24,25にそれぞれ連結されたリンクアーム43,44からなるリンク機構45を備えている。
【0027】
図示しない操作装置の操作により、図示しない駆動モータを逆転させると、図2(a)の起立状態のスロープ装置20が、減速機構42、リンク機構45を介して第1スロープ板21が回動されて図2(b)の展開状態となる。
【0028】
又、図示しない操作装置の操作により、図示しない駆動モータを正転させると、図2(b)の展開状態のスロープ装置20が、減速機構42、リンク機構45を介して第1スロープ板21が回動されて図2(a)の起立状態となる。なお、スロープ装置20は、駆動装置40と連係されることにより、図示しないブレーキ等の保持手段により、起立状態が保持可能である。
【0029】
(実施形態の作用)
上記のように構成されたスロープ装置20の作用を説明する。
説明の便宜上、まず、車椅子が車体10に載せられておらず、スロープ装置20が起立状態になっているときから説明する。
【0030】
図1(b)に示すようにドア13を開けてドア開口部12を開放した状態で、図示しない操作装置を操作して、図示しない駆動モータを逆転させることにより、図2(a)の起立状態のスロープ装置20を、減速機構42、リンク機構45を介して第1スロープ板21が回動させて図2(b)の展開状態にする。この結果、スロープ装置20は、第2スロープ板23が地上に横斜め方向に延びて架け渡された状態となる。
【0031】
このとき、図2(a)に示すように、スロープ装置20が展開状態に変移すると、スロープ装置20が起立状態のときに車室S内側に向いていたヘッドレスト35は、図2(b)に示すように地面と対向した下向き状態になる。このため、ヘッドレスト35は、展開状態で第1スロープ板21、第2スロープ板23の上面に現れることはない。このため、ヘッドレスト35は、スロープ装置20上を移動する車椅子100の障害となることはない。
【0032】
スロープ装置20を車体10と地上に架け渡した状態(展開状態)で、介護者は人Hが座った車椅子100をスロープ装置20の各スロープ板上を走行移動させて車室S内に載せる。車室S内に載せられた車椅子100は、例えば、フロア10aに設けられた保持装置(図示しない)により移動しないように保持される。
【0033】
この後、図示しない操作装置の操作により、図示しない駆動モータを正転させると、図2(b)の展開状態のスロープ装置20が、減速機構42、リンク機構45を介して第1スロープ板21が回動されて図2(a)の起立状態となる。
【0034】
このとき、図2(b)に示すように、スロープ装置20が展開状態のときに地面に向いていたヘッドレスト35は、スロープ装置20が起立状態に変移すると、図3に示すように自動的に車室S内に向き、車椅子100に座った人Hの頭部Haに当接可能に配置される。そして、ドア13を閉めた後、この状態で、車両が走行すると、ヘッドレスト35により、車椅子100に座った人Hの頭部Haに当接できるため、車椅子100に座った人Hの頭部Haをゆれないようにすることができる。
【0035】
又、搭載された車椅子100を車両から降ろす場合、前述したように図1(b)に示すようにドア13を開けてドア開口部12を開放した状態で、図示しない操作装置を操作して、図示しない駆動モータを逆転させる。
【0036】
この結果、車椅子100に座った人Hの頭部Haに当接可能に配置されていたヘッドレスト35は、スロープ装置20が起立状態から展開状態に変移する際に、自動的に、人の頭部Haから離間する。そして、最終的には、前述したように図2(b)に示すようにヘッドレスト35は、地面と対向した下向き状態になる。
【0037】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1) 本実施形態のスロープ装置20は、車室Sのドア開口部12に回動自在に連結される第1スロープ板21(第1スロープ部材)と、第1スロープ板21と折り畳み可能に連結された第2スロープ板23(第2スロープ部材)を含む。又、第2スロープ板23は、第1スロープ板21に対して第1スロープ板21よりも反車室側に位置するように折り畳み可能に連結されている。又、第2スロープ板23において、展開状態のときに地面側に向く面にヘッドレスト35が設けられている。又、第2スロープ板23には、起立状態では、ヘッドレスト35が車室内側に向いて、ヘッドレスト35の少なくとも人の頭部に当たる当接面が、第1スロープ部材よりも車室側に位置させることを許容する許容手段としての延出板32が設けられている。 この結果、本実施形態によれば、ヘッドレスト35の取付け、取り外しが必要でなく、車椅子100を車両に載せたときには、自動的に、車椅子100に座っている人Hにヘッドレスト35を提供できる。又、車両から車椅子100を降ろすときには、ヘッドレスト35が自動的に車椅子100から離間して、邪魔にならない位置に移動させることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のスロープ装置20を、第1実施形態の構成と異なる構成を中心にして図4を参照して説明する。
【0039】
第1実施形態では、第1スロープ部材及び第2スロープ部材は、それぞれ第1スロープ板21,第2スロープ板23とした。そこれに対して、本実施形態では、図4に示すように第1スロープ部材50は、長手方向(すなわち、車両の前後方向)に延出されるように平行に配置した型材からなる一対のガイド枠52、53と、幅方向に延出されたガイド枠52,53間を連結する複数の連結部材54から構成されている。又、第2スロープ部材60は、長手方向(すなわち、車両の前後方向)に延出されるように平行に配置した型材からなる一対のガイド枠62、63と、幅方向に延出されたガイド枠62,63間を連結する複数の連結部材64から構成されている。なお、図4では、第1スロープ部材50の連結部材54は、1つのみ図示されているが、車両側においても1つ以上の連結部材54により、ガイド枠52、53間が連結されている。
【0040】
第1スロープ部材50のガイド枠52,53と第2スロープ部材60のガイド枠62,63の相対する端部間は、展開状態のとき、地面側の面において、図示しないヒンジを介して折り畳み可能に連結されている。
【0041】
ガイド枠52,53,62,63は断面横コ字状に形成された溝を有しており、前記溝内を車椅子の車輪が走行可能となっている。
第2スロープ部材60において、第1スロープ部材50側に位置する連結部材64には、第1スロープ部材50のガイド枠52,53間に形成される空間に位置するように、延出部としての延出板65が延出形成されている。延出板65には、展開状態の際、地面に向くヘッドレスト66が設けられている。ヘッドレスト66は、第1実施形態のヘッドレスト35と同様にも起立状態の時には、車室内側に向くように、かつ、車両に載せられた車椅子の人の頭部に当たるように配置可能に取付位置が設定されている。
【0042】
又、図4に示すように、本実施形態では、第1実施形態のリンク29と同様の機能を果たすために、リンク70の第1端がガイド枠52,53の幅方向に位置する外側面に回動自在に連結されている。リンク70の第2端は、第2スロープ部材60のガイド枠62,63の幅方向に位置する外側面に固定されたガイド部材71内の図示しないスライダに連結されている。前記スライダは、ガイド部材71内を、ガイド枠62,63の長手方向に摺動自在に配置されている。
【0043】
上記以外の構成であって、第1実施形態で説明した他の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第2実施形態では、第1スロープ部材50、第2スロープ部材60を板材で形成することなく、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図5、及び図6を参照して説明する。第3実施形態を含む下記の各実施形態では、第1の実施形態の構成中、第1実施形態の構成と同一又は相当する構成については、同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。又、図5、図6では、説明の便宜状、減速機構42、リンク機構45等の駆動装置40、リンク29及び長孔30については図示を省略しているが、あるものとして理解されたい。
【0045】
本実施形態では、図5に示すように、第2スロープ板23の延出部としての延出板32が省略され、第2スロープ板23の第1スロープ板21側端部において、展開状態のときに地面側を向く第2スロープ板23の下面であって、起立状態のときに第1スロープ板21と相対する面にヘッドレスト35が取付け固定されている。すなわち、第2スロープ板23は、第1スロープ板21に対して第1スロープ板21よりも反車室側に位置するように折り畳み可能に連結されている。
【0046】
一方、スロープ装置20が図6に示す起立状態になったとき、ヘッドレスト35が室内側に露出して配置されるように、第1スロープ板21の第2スロープ板23側端部には窓部としての凹部75が形成されている。凹部75は、第1スロープ板21に設けられた許容手段に相当する。第1スロープ板21の凹部75を除いた幅方向の両側部75a,75bは、車椅子の車輪が走行可能な幅を有する。凹部75が形成されていることにより、スロープ装置20が起立状態のときには、ヘッドレスト35が凹部75内の空間に配置されて車室S内側に向くことになる。
【0047】
なお、第3実施形態では、第1実施形態の第1スロープ板21よりも長さ方向において、長くされて、スロープ装置20の起立状態におけるフロア10aからのヘッドレスト35の高さは、この車体10に車椅子100を載せた際に、車椅子100に座る人Hの頭部Haの背面に当たる高さに適宜設定されている。
【0048】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1) 本実施形態のスロープ装置20は、展開状態で第2スロープ部材60の地面側に向く面には、ヘッドレスト35が設けられている。又、起立状態で第1スロープ部材50には、ヘッドレスト35が車室内側に向き、ヘッドレストの先端を通過可能に形成された凹部75(許容手段)が設けられている。
【0049】
この結果、本実施形態のスロープ装置20は、第1実施形態と同様の効果を奏する。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を図7(a)、図7(b)を参照して説明する。なお、本実施形態を含めた下記の実施形態においても、説明の便宜状、減速機構42、リンク機構45等の駆動装置40、側板24〜27、リンク29及び長孔30については図示を省略しているが、あるものとして理解されたい。
【0050】
本実施形態は、図7(a)、図7(b)に示すように、延出板32は、第1実施形態と異なり、展開状態のときに第1スロープ板21内に設けられた凹部33内に入り込むのではなく、第1スロープ板21の車椅子走行面よりも上方に離間して配置される。具体的には、図7(a)に示すように、延出板32は、断面クランク状に折り曲げされている。そして、延出板32において、展開状態のとき、地面側に向く面にヘッドレスト35が設けられている。なお、延出板32は、展開状態のときに、車椅子が通過する際に、車椅子とは干渉しない高さ(すなわち、第1スロープ板21の車椅子走行面からの高さ)となるように設定されている。又、図7(b)に示すように第1スロープ板21,第2スロープ板23が折り畳まれて起立状態のときに、ヘッドレスト35の先端部は第1スロープ板21よりも車室内側に位置させることができるようにしている。
【0051】
このよう構成にしても、第4実施形態は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態を図8(a)、図8(b)を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態の構成中、第2スロープ板23が、図8(a)に示す展開状態から起立状態になるときに、ヒンジ22により、第1スロープ板21と第2スロープ板23の車椅子走行面同士が互い相対するように回動自在に配置されている。このように第1スロープ板21と第2スロープ板23の車椅子走行面同士が互い相対するように回動自在に配置されていることにより、図8(b)に示すように、第2スロープ板23が第1スロープ板21に対して折り畳み状態時に、第1スロープ板21よりも車室内に位置する。ヒンジ22は、第1スロープ板21と第2スロープ板23とに設けられた許容手段に相当する。
【0052】
又、ヘッドレスト35は、第2スロープ板23に対して展開状態の時は地面側に向く面であって、起立状態のときに、室内側に向く面に対して設けられている。
第5実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。さらには、第1実施形態と異なり、第2スロープ板23に設けられた延出部(延出板)や、第1スロープ板21に設けられた凹部33を省略でき、簡単な構成とすることができる。
【0053】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態を図9(a)、(b)を参照して説明する。第6実施形態は、スロープ板を3つ連結して展開状態と起立状態にすることができる構成としたところが、第3実施形態と異なっている。すなわち、第6実施形態では、第3実施形態の第2スロープ板23の反第1スロープ板21側の端部には図9(b)に示すようにヒンジ38を介してスロープ部材としての第3スロープ板37が連結されている。第3スロープ板37は、図9(a)の矢印に示すように、ヒンジ38により車椅子走行面が第2スロープ板23の車椅子走行面と重なり合うように折り畳み可能である。又、第3スロープ板37は、展開状態では、第1スロープ板21、第2スロープ板23と共同して、ドア開口部12と地上間を斜めに架け渡し可能である。なお、第2スロープ板23と第3スロープ板37間には展開状態が保持できるように図示しないストッパが設けられて折り畳み方向に第3スロープ板37が変化しないようにされている。このように3つのスロープ部材により、車両用スロープ装置を構成することが可能である。
【0054】
第6実施形態においても、第3実施形態同様の効果を奏することができる。
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
【0055】
・ 前記各スロープ装置20の展開状態を保持する方法は、第1スロープ板21と第2スロープ板23の側板同士を当接させる方法以外に、ストッパ部材をいずれか一方のスロープ部材に固定して、展開状態のときにこのストッパ部材が他方のスロープ部材に当接することにより展開状態を保持するようにしてもよい。或いは、地上と車体間を架け渡した際に、第1スロープ板21及び第2スロープ板23の少なくともいずれか一方の地上に対向する面に、地上に当接する脚を設けるようにしてもよい。
【0056】
・ 各スロープ部材は、パンチングメタルで形成されていてもよい。
・ スロープ装置20を駆動する駆動装置40の構成、リンク機構45の構成等は、適宜変更してもよい。
【0057】
・ 第3実施形態において、凹部の代わりに第1スロープ板21に窓部として貫通孔を設けても良い。貫通孔が設けられることにより、スロープ装置20が起立状態のときには、ヘッドレスト35が凹部75内の空間に配置されて車室S内側に向くことになる。この場合、貫通孔で仕切る空間が、第1スロープ板21に設けられた許容手段となる。
【0058】
・ 第3実施形態の第2スロープ板23と、第2実施形態の第1スロープ部材50とをヒンジで連結するようにしてもよい。この場合、第2実施形態の第1スロープ部材50には、許容手段を形成する窓部、又は凹部を形成するものとする。
【0059】
・ 第6実施形態に設けた第3スロープ板37を第1、第4実施形態に設けても良い。
・ 図9の第6実施形態では、3つのスロープ板を有するように構成したが、スロープ部材の数は限定するものではなく、4つ以上のスロープ部材を順に折り畳み自在にヒンジにより連結構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
、20…スロープ装置、
21…第1スロープ板(第1スロープ部材)、22…ヒンジ、
23…第2スロープ板(第2スロープ部材)、32…延出板(延出部)、
35…ヘッドレスト、100…車椅子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロープ部材が互いに折り畳み可能に連結されて、地上とドア開口部間に斜めに架け渡しされて車椅子が走行可能な展開状態と、前記複数のスロープ部材が互いに折り畳まれて、車室内に起立状態で収納される車両用スロープ装置において、
前記複数のスロープ部材には、車室のドア開口部に回動自在に連結される第1スロープ部材と第1スロープ部材と折り畳み可能に連結された第2スロープ部材を少なくとも含み、
前記第2スロープ部材において、前記展開状態のときに地面側に向く面にヘッドレストが設けられ、
前記第1スロープ部材及び第2スロープ部材の少なくともいずれか一方には、前記起立状態では、前記ヘッドレストが車室内側に向いて、前記ヘッドレストの少なくとも人の頭部に当たる当接面が、第1スロープ部材よりも車室側に位置させることを許容する許容手段が設けられていることを特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項2】
前記第2スロープ部材は、第1スロープ部材に対して折り畳み時に、第1スロープ部材よりも反車室側に位置するように折り畳み可能に連結され、
前記許容手段は、
前記第2スロープ部材の第1スロープ部材側の端部から、第1スロープ部材に向かって延出されるとともに、前記展開状態のときに地面側に向く面に前記ヘッドレストが設けられた延出部であることを特徴とする請求項1に記載の特徴とする車両用スロープ装置。
【請求項3】
前記許容手段は、
第2スロープ部材が第1スロープ部材に対して折り畳み状態時に、第1スロープ部材よりも車室内に位置して第2スロープ部材の車椅子走行面が第1スロープ部材の車椅子走行面と相対するように、第1スロープ部材と第2スロープ部材間を連結するヒンジであることを特徴とする請求項1に記載の車両用スロープ装置。
【請求項4】
前記第2スロープ部材は、第1スロープ部材に対して第1スロープ部材よりも反車室側に位置するように折り畳み可能に連結され、
前記ヘッドレストは、第2スロープ部材に対して、起立状態のときに第1スロープ部材と相対する面に設けられ、
前記許容手段は、
前記第1スロープ部材に設けられて、起立状態のときに、前記ヘッドレストの先端を通過可能に形成された窓部であることを特徴とする請求項1に記載の特徴とする車両用スロープ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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