説明

車両用デッキボード

【課題】デッキボードからの突出高さを極力小さくすることができる車両用デッキボードを提供する。
【解決手段】本発明による車両用のデッキボード21は、厚さ方向の内方側に凹んでボード本体41の剛性を向上させる補強用凹部43を、裏面に一体形成したボード本体41と、前記ボード本体41にヒモ27を介して連結されたフック29と、を備えている。前記補強用凹部43の少なくとも一部を、前記フック29が収容可能なフック収容部47に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用デッキボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の後部に配設された床面を下方に凹ませて荷室を形成し、該荷室の上部開口をデッキボードによって開閉可能に構成した車両構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このデッキボードには、フックを収納する収納ケースが設けられており、該収納ケースには、ヒモを介してフックが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−123989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の収納ケースは、デッキボードとは別体に構成されており、デッキボードの裏面に取り付けている。従って、収納ケースは、デッキボードから裏面側に突出するため、邪魔になり、荷室内の収納スペースを狭めるという問題があった。特に、収納ケースの外周側にヒモを巻き付けて保持するため、デッキボードからの突出高さが更に大きくなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、デッキボードからの突出高さを極力小さくすることができる車両用デッキボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、厚さ方向の内方側に凹んでボード本体の剛性を向上させる補強用凹部を、裏面に一体形成したボード本体と、前記ボード本体に長尺状部材を介して連結されたフックと、を備えた車両用デッキボードであって、前記補強用凹部の少なくとも一部を、前記フックが収容可能なフック収容部に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、補強用凹部の少なくとも一部を、前記フックが収容可能なフック収容部に構成しているため、フック収容部内にフックを収容すると、このフックはデッキボードの裏面から突出することがない。このため、フック収容部が邪魔にならず、また、フック収容部によって荷室内の収納スペースが狭まることもない。
【0009】
さらに、ボード本体の剛性を向上させる補強用凹部の少なくとも一部を用いてフック収容部に構成しているため、新たにフック収容部を成形・製造する必要がなく、部品点数の削減および製造コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態による車両用デッキボードを備えた車両後部を側方から見た概略的な側面図である。
【図2】本発明の実施形態による車両用デッキボードを斜め上方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による車両用デッキボードを斜め下方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施形態によるフックと長さ調整具を示す斜視図である。
【図5】図3の要部を拡大した斜視図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】図5の分解斜視図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】(a)は図6のA−A線による断面図、(b)は(a)に各寸法を記載した断面図である。
【図10】本発明の変形例による車両用デッキボードを斜め下方から見た斜視図である。
【図11】図10のB−B線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
図1に示すように、車両後部には、後部シート1がスライドレール3を介して床面5上に配設されている。前記後部シート1は、スライドレール3上に支持されたシートクッション7と、該シートクッション7に対して前後方向に傾倒可能に支持されたシートバック9と、該シートバック9の上端部にロッド11を介して取り付けられたヘッドレスト13とから構成されている。
【0013】
また、後部シート1と後部ドア開口部を構成する車体パネル15との間には、内部に荷物等を収納可能な荷室17が設けられており、この荷室17の上部開口19は、デッキボード21によって覆われている。図1,2に示すように、このデッキボード21は、前側に形成された平面視矩形状の前側切欠部23を、荷室17を画成する前側壁面25の上端に係止させることにより、前記前側切欠部23を回動中心33として後側が開閉可能に構成されている。また、図1に示すように、デッキボード21の後端部には、長尺状部材であるヒモ27が固定され、該ヒモ27の先端には鈎状のフック29が取り付けられている。前記フック29は、ヘッドレスト13を支持するロッド11に係止される。なお、後述する長さ調整具31によってヒモ27の長さを変えることができ、その長さに応じてデッキボード21の開閉角度を適宜調整することができる。即ち、ヒモ27を短くすることによって、二点鎖線の位置から実線の位置まで開閉角度を大きくすることができる。
【0014】
図2に示すように、デッキボード21は、平面視略矩形状に形成され、前後方向の長さよりも車幅方向(長手方向)の長さの方が長く形成されている。また、前端の左右両側には、一対の前側切欠部23が形成されており、後端には、後側切欠部35が形成されている。なお、デッキボード21の表面(上面)には、不織布37が貼付されている。
【0015】
そして、図3に示すように、デッキボード21の裏面(下面)には、ボード本体41を構成する樹脂製の第2ボード39が設けられている。この第2ボード39には、ほぼ全面に亘って表面側(デッキボード21の厚さ方向の内方)に向けて凹む補強用凹部43が複数形成されている。また、第2ボード39の長手方向中央部には、ヒモ27の先端が取り付けられる取付部45が設けられており、長手方向の端部には、フック29を収容するフック収容部47が設けられている。これらの取付部45とフック収容部47とは所定間隔をおいて離間して配置されているため、フック29をフック収容部47に収容した状態においてヒモ27がほぼ弛まないように保持される。なお、前記補強用凹部43は、ボード本体41の剛性を向上させるために形成されたものであるが、本実施形態では、これらの補強用凹部43の一部をフック収容部47として兼用している。
【0016】
ここで、図4を用いて、フック29および長さ調整具31を説明する。
【0017】
図4に示すように、フック29は、平面視でJ字状に形成されており、基部49の端部にはヒモ27が挿通されるフック側挿通孔51が形成されている。また、フック側挿通孔51の近傍には、フック29の幅方向両端に形成した外周リブ53と幅方向中間に形成した中間リブ55とが設けられている。前記外周リブ53は、フック29の外周縁に沿って基部49から係止部57を介して先端部59に至るまで立設されており、また、外周リブ53には複数の連結リブ61が一体に形成されている。
【0018】
そして、図4に示すように、長さ調整具31は、平面視略楕円状の一枚の樹脂製プレートであり、長手方向に離間して一対の第1挿通孔63および第2挿通孔65が形成されている。ヒモ27の先端には止め部67が設けられ、該止め部67によってヒモ27の先端が第2挿通孔65に保持されている。ヒモ27は、長さ調整具31の上面から第1挿通孔63に入り、下面を通って第2挿通孔65から上面に出てフック29に向かう。こののち、フック29のフック側挿通孔51を通ったのち折り返して長さ調整具31に向かって戻り、第2挿通孔65に保持されている止め部67に至る。即ち、ヒモ27は、第1挿通孔63と第2挿通孔65の角に当たって生じる摩擦力によって所定長さに維持される。ここで、長さ調整具31を矢印P方向に引っ張ると、長さ調整具31とフック29との間隔は大きくなるため、デッキボード21の取付部45からフック29までのヒモ27の長さは短くなる。このようにして、ヒモ27の長さを適宜調整することができる。
【0019】
図5〜8に示すように、フック収容部47にはフック29が収容および保持されており、フック収容部47には、フック取出用凹部69と長さ調整具収容部71とが連通して形成されている。フック取出用凹部69は、フック29を取り出す際に、手指を挿入して取り出しやすくするために設けられており、前記長さ調整具収容部71は、長さ調整具31を収容するために設けられている。
【0020】
次いで、図9を用いてフック嵌合部73の構造を説明する。
【0021】
図9(a)に示すように、デッキボード21は、裏面側に配置した樹脂製の第2ボード39と、該第2ボード39の表面側の配置した樹脂製の第1ボード75と、該第1ボード75を表面から覆う不織布37とから構成されており、これら不織布37、第1ボード75および第2ボード39は互いに接合されている。フック29の基部49を嵌合して保持するフック嵌合部73は、裏面側に位置する入口側縦壁面77と、表面側に位置すると共に前記入口側縦壁面77に一体に連結された奥側縦壁面79と、この奥側縦壁面79に一体に連結された底壁面81とからなる。また、奥側縦壁面79には、断面王字状に形成されたフック29の基部49が嵌合および保持されている。なお、基部49の断面は、横方向に延びる本体部83と、該本体部83に一体に形成された外周リブ53および中間リブ55とからなる。
【0022】
図9(b)に示すように、前記フック嵌合部73における深さ方向の入口側の幅寸法(入口側縦壁面同士77,77の距離)をW1、深さ方向の奥側の幅寸法(奥側縦壁面同士79,79の距離)をW2、およびフック29の幅寸法をW3としたときに、W2>W3>W1の大小関係に設定されている。ここで、第2ボード39は樹脂から形成されており、弾性を有するため、フック29をフック嵌合部73に挿入するときに、フック29が入口側縦壁面77を押し広げたのち、奥側縦壁面同士79,79の間に入る。また、フック29がフック嵌合部73の奥側に入ると、入口側縦壁面77は元の状態に戻る。フック29が嵌合した状態では、深さ方向の入口側の幅寸法W1の方がフック29の幅寸法W3よりも小さいため、フック29を確実にフック嵌合部73に保持することができる。
【0023】
また、図9(b)に示すように、第2ボード39に形成したフック嵌合部73の深さDは、フック29の厚さTよりも大きく形成されている。なお、フック嵌合部73以外のフック収容部47全体についても、フック29の厚さよりも深く形成されている。
【0024】
次に、本実施形態に係るデッキボード21の使用手順を簡単に説明する。
【0025】
図1に示すように、通常時においては、デッキボード21は荷室17の上部開口19を塞ぐ蓋として機能している。
【0026】
荷室17内の小物等を取り出す場合は、デッキボード21の前端の前側切欠部23,23を回動中心33として後側を上方に持ち上げる。この状態で、図3に示すように、フック収容部23に収容されているフック29を取り出し、図1に示すロッド11に引っ掛ける。すると、図1の二点鎖線のようにデッキボード21が斜めになった状態で保持される。ここで、デッキボード21を更に開きたい場合は、長さ調整具31でヒモ27の長さを短く調整したのち、フック29をロッド11に係止させれば良い。
【0027】
次いで、本発明の変形例について図10,11を用いて説明する。ただし、前述した実施形態と同一構造の部位には同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
本変形例によるデッキボード84は、表面側に配置した平面状の樹脂からなる第3ボード85と、裏面側に配置した平面状の樹脂からなる第4ボード87と、前記第3ボード85の表面側に貼付された不織布37とを備えている。また、これらの第3ボード85と第4ボード87との間には、熱可塑性樹脂発泡体からなり、長手方向に延びる複数の嵩上げ架橋材89,91と、これらの嵩上げ架橋材同士89,91の間に配設された断面H状の補強材95とが設けられている。前記補強材95は、アルミニウムなり、異型押出によって製造される。
【0029】
本変形例においても、前記第4ボード87を表面側に向けて凹ませてフック収容部47を形成している。また、前記嵩上げ架橋材89,91および補強材95によってデッキボード84の剛性が向上する。
【0030】
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
(1)本実施形態による車両用のデッキボード21は、厚さ方向の内方側に凹んでボード本体41の剛性を向上させる補強用凹部43を、裏面に一体形成したボード本体41と、前記ボード本体41にヒモ27(長尺状部材)を介して連結されたフック29と、を備えた車両用デッキボードであって、前記補強用凹部43の少なくとも一部を、前記フック29が収容可能なフック収容部47に構成している。
【0031】
このように、補強用凹部43の少なくとも一部を、フック29を収容するフック収容部47に構成しているため、フック29の収容ケースを別途に設ける必要がなくなる。よって、部品点数の削減および製造コスト低減を図ることができる。また、ボード本体41の裏面からフック29が突出しないので、デッキボード21の厚さ増大を抑制することができ、荷室内の収納スペースを狭めることがない。
【0032】
(2)前記フック収容部47の深さDを、前記フック29の厚さTよりも大きく設定すると共に、前記フック収容部47における深さ方向の入口側の幅寸法をW1、深さ方向の奥側の幅寸法をW2、およびフック29の幅寸法をW3としたときに、W2>W3>W1の大小関係に設定したフック嵌合部73を前記フック収容部47の少なくとも一部に設けている。
【0033】
これにより、フック29をフック収容部47内に完全に収容することができ、デッキボード21の裏面からフック29が突出することを効果的に防止することができる。また、フック29の幅寸法W3よりも深さ方向の入口側の幅寸法W1が小さいため、フック29をフック嵌合部73に嵌合させたときに、フック29をフック嵌合部73の奥側に確実に保持させることができる。
【0034】
(3)前記フック収容部47の近傍に、該フック収容部47に連通するフック取出用凹部69を凹設している。
従って、フック収容部47にフック29を収容した状態において、フック取出用凹部69に手指を入れてフック29を把持して取り出しやすくなる。
【0035】
(4)前記ヒモ27(長尺状部材)のボード本体41への取付部45と前記フック収容部47とを離間して配置している。
従って、前記取付部45とフック収容部47とを近接して配置した場合に比較して、ヒモ27の弛みが少なくなる。
【0036】
(5)前記ボード本体41は、表面側に配置された平坦状の第1ボード75と、裏面側に配置されると共に前記補強用凹部43およびフック収容部47が形成された第2ボード39と、を厚さ方向に所定間隔をおいた状態で互いに組み付けてなる。
このように、ボード本体41が中空状に形成されるため、デッキボード21の軽量化が図れる。
【符号の説明】
【0037】
21 デッキボード(車両用デッキボード)
27 ヒモ(長尺状部材)
29 フック
39 第2ボード
41 ボード本体
43 補強用凹部
45 取付部
47 フック収容部
69 フック取出用凹部
73 フック嵌合部
75 第1ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の内方側に凹んでボード本体の剛性を向上させる補強用凹部を、裏面に一体形成したボード本体と、
前記ボード本体に長尺状部材を介して連結されたフックと、を備えた車両用デッキボードであって、
前記補強用凹部の少なくとも一部を、前記フックが収容可能なフック収容部に構成したことを特徴とする車両用デッキボード。
【請求項2】
前記フック収容部の深さを、前記フックの厚さよりも大きく設定すると共に、
前記フック収容部における深さ方向の入口側の幅寸法をW1、深さ方向の奥側の幅寸法をW2、およびフックの幅寸法をW3としたときに、W2>W3>W1の大小関係に設定したフック嵌合部を前記フック収容部の少なくとも一部に設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用デッキボード。
【請求項3】
前記フック収容部の近傍に、該フック収容部に連通するフック取出用凹部を凹設したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用デッキボード。
【請求項4】
前記長尺状部材のボード本体への取付部と前記フック収容部とを離間して配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用デッキボード。
【請求項5】
前記ボード本体は、表面側に配置された平坦状の第1ボードと、裏面側に配置されると共に前記補強用凹部およびフック収容部が形成された第2ボードと、を厚さ方向に所定間隔をおいた状態で互いに組み付けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用デッキボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−91644(P2012−91644A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239737(P2010−239737)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000244280)盟和産業株式会社 (48)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】