説明

車両用ドアアンロック装置

【課題】 リモートコントロールキーを任意の形状とすることができるスマートエントリーシステムを実現する車両用ドアアンロック装置を提供すること。
【解決手段】 車両に搭載され、ドアロックを解除する車両用ドアアンロック装置に、車室外において携帯機(リモートコントロールキー)に対して電力を供給する電力供給手段と、該電力供給手段により電力供給を受けた携帯機から送信された信号に含まれるIDコードを所定のIDコードと照合する照合手段と、上記照合手段により上記両IDコードの一致が確認されたとき、ドアロックを解除するドアアンロック手段と、手動操作により電力を生成し、生成した電力を上記電力供給手段、上記照合手段、及び、上記ドアアンロック手段へ供給する発電手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両に搭載され、ドアロックを解除する車両用ドアアンロック装置に係り、特に、リモートコントロールキーを任意の形状とすることができるスマートエントリーシステムを実現する車両用ドアアンロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用セキュリティシステムとして、イモビライザーシステムが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。イモビライザーシステムでは、キーと車両の双方向通信により電子IDコードが照合され、IDコードが一致した場合にのみエンジンの始動が許可される。このイモビライザーシステムは、欧州では1997年から標準仕様として装着が義務付けられており、日本でも装着車は増加傾向にある。
【0003】
また、従来、リモートコントロールキーと車両の双方向通信により電子IDコードが照合され、IDコードが一致した場合には、車両ユーザがリモートコントロールキーを身につけているだけで、衣類のポケット等から取り出さずとも、プッシュ式のイグニッションスイッチを押すだけでエンジン始動/停止が可能となるスマートスタートシステムも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平9−105255号公報
【特許文献2】特開平10−287210号公報
【特許文献3】特開2004−314806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イモビライザーシステムにおいて用いられるキーは、通常、グリップ部分に二次電池(バッテリー)を内蔵しており、そこに蓄積された電力を用いて、上記IDコードを表す電波を車両側へ送信する。
【0005】
この内蔵バッテリーが空になるとキーから車両へのIDコード送信が行われず、ID照合不可によりエンジン始動が許可されなくなってしまうため、例えば上記特許文献1及び2に開示されたイモビライザーシステムにおいては、キーをキーシリンダに差し込んでいる間に車両側から電力が供給され、キーのバッテリーが充電される仕組みとなっている。
【0006】
また、上記特許文献3に開示されたスマートスタートシステムでは、キー内蔵バッテリーを相互電磁誘導を利用して充電するためのコイルをプッシュ式のイグニッションスイッチの周囲に設け、車両ユーザがキーをイグニッションスイッチ付近に「かざす」だけで非接触で内蔵バッテリーを充電できるようにしている。
【0007】
しかしながら、これらの従来手法はいずれも車両バッテリーの残量が十分にあることを前提としており、車両バッテリーも空の場合には、当然、キー内蔵バッテリーを充電することができなくなってしまう。
【0008】
また、上記特許文献3に開示されたような従来のスマートスタートシステムは、通常、スマートエントリーシステムを伴っている。スマートキーシステム(登録商標)などの呼称で知られるスマートエントリー&スタートシステムでは、IDコード照合のための車両側発信機が車室外(例えばドアアウトサイドハンドル付近)にも設けられ、リモートコントロールキーのIDコードが車両側に保持されたIDコードと一致した場合には、車両ユーザがリモートコントロールキーを身につけているだけで、衣類のポケット等から取り出さずとも、ドアアウトサイドハンドルに触れればドアがアンロックされるようになっている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献3に開示されたシステムに代表されるように従来のスマートエントリー&スタートシステムでは、キー内蔵バッテリーの充電を車室内でしか行うことができない構造となっており、ユーザが車両に乗り込もうとする際にキー内蔵バッテリーが空であれば、スマートエントリー機能を利用することができない。
【0010】
したがって、従来のスマートエントリー&スタートシステムでは、車室外にてリモートコントロールキーの内蔵バッテリーが空になったときにドアアンロックを行うためのエマージェンシー用として、リモートコントロールキーがメカニカルキーを備えていること、及び、車両のドアに該メカニカルキーに対応したドアアンロックのためのキーシリンダを備えていることが必須であった。
【0011】
なお、上記特許文献3に開示されたシステムにおいてイグニッションスイッチの周囲に設けられているような電力供給用のコイルを車両ドア外側に設けると、車両外観意匠(デザイン)や空気抵抗(以下、Cd値という)に悪影響を与える可能性がある。これを回避するためにドア内部にコイルを設けると、車両ドアは通常鉄板であるため、電磁誘導のための電波が遮られてしまい、機能しない。
【0012】
このように、従来のスマートエントリーシステムでは、車室外でリモートコントロールキーの内蔵バッテリーが空になったときのために、使用頻度が低いにもかかわらず、ドアアンロックのためのメカニカルキー機構がキー側及び車両側双方に必須であると共に、車両のバッテリーが空のときには車室内においてすら全く充電が行えなくなってしまうという問題がある。
【0013】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、スマートエントリーシステムにおいて、車室外でリモートコントロールキーの内蔵バッテリーが空のときだけでなく、車両バッテリーが空のときであっても、スマートエントリー機能を使えるようにすることによってメカニカルキーによるドアアンロック構造を不要とし、リモートコントロールキーを任意の形状とすることができるスマートエントリーシステムを実現する車両用ドアアンロック装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の第一の態様は、車両に搭載され、ドアロックを解除する車両用ドアアンロック装置であって、車室外において携帯機(リモートコントロールキー)に対して電力を供給する電力供給手段と、該電力供給手段により電力供給を受けた携帯機から送信された信号に含まれるIDコードを所定のIDコードと照合する照合手段と、上記照合手段により上記両IDコードの一致が確認されたとき、ドアロックを解除するドアアンロック手段とを有する車両用ドアアンロック装置である。
【0015】
この第一の態様において、上記電力供給手段は、利便性及び車両外観の意匠(デザイン)性の観点から、該電力供給手段の近傍に位置する携帯機に相互電磁誘導を利用して非接触で電力を供給するように設計・設定されることが好ましい。
【0016】
また、この第一の態様において、上記電力供給手段は、電力供給のための電波が遮られないように、非金属筐体内に設けられることが好ましい。より具体的には、ミラー以外の筐体部分が樹脂製であるサイドミラー内がドアにも近く最も好ましい。
【0017】
この第一の態様によれば、車室外において携帯機(リモートコントロールキー)の内蔵バッテリーが空になってしまった場合でも、車両側から電力を供給して携帯機を作動させ、ID照合によるスマートエントリーが可能となるため、携帯機側及び車両側にドアアンロックのためのメカニカルキー機構を備えておく必要がない。
【0018】
なお、この第一の態様において、上記電力供給手段は、車両バッテリーの残量を節約する観点から、オン/オフ切替スイッチを有し、該スイッチがオンのときのみ電力供給を行うように設計・設定されることが好ましい。
【0019】
上記目的を達成するための本発明の第二の態様は、上記第一の態様に係る車両用ドアアンロック装置であって、手動操作により電力を生成し、生成した電力を上記電力供給手段、上記照合手段、及び、上記ドアアンロック手段へ供給する発電手段を更に有し、上記電力供給手段は、上記発電手段から供給された電力の少なくとも一部を上記携帯機へ供給する、車両用ドアアンロック装置である。
【0020】
この第二の態様において、上記発電手段は、車両外部に露出し、手動により往復運動又は回転運動させることが可能な操作手段と、該操作手段の往復運動又は回転運動を電気的エネルギーに変換する変換手段とを有する。この操作手段は、非使用時には車両に埋め込まれた状態となっており、使用時に引っ張り出される構造を有することが好ましい。
【0021】
また、この第二の態様において、上記発電手段は、上記電力供給手段及び車両ドアに近い方が利便性が高いとの観点から、サイドミラーに設けられることが好ましい。この場合、上記操作手段は、外観上目立たないように、サイドミラーの底面部分に下方へ向けて露出するように設けられることが好ましい。
【0022】
この第二の態様によれば、車両バッテリーが空の場合でも上記電力供給手段が携帯機の内蔵バッテリーを充電できるように車両ユーザが手動で車両側に電力を発生させることができるため、車室外において携帯機(リモートコントロールキー)の内蔵バッテリーが空になってしまった場合でも、車両側から電力を供給して携帯機を作動させ、ID照合によるスマートエントリーが可能となる。したがって、携帯機側及び車両側にドアアンロックのためのメカニカルキー機構を備えておく必要がない。
【0023】
なお、この第二の態様において、上記車両用ドアアンロック装置は、上記発電手段を利用した手動での発電が必要か否か、及び、スマートエントリーに必要十分な電力が発電されたか否か、をユーザに知らせるために、上記電力供給手段、上記照合手段、及び、上記ドアアンロック手段が作動可能な状態のときに上記発電手段の操作者に通知する通知手段を更に有することが好ましい。
【0024】
ここで、通知手段とは、例えば、これらの手段が作動可能なときに例えばブザー音などの音を吹鳴(出力)する装置でもよく、或いは、これらの手段が作動可能なときと作動不可能なときとを発光色の違いで表す発光ダイオード(LED)装置であってもよい。
【0025】
また、上記第一及び第二の態様において、上記車両用ドアアンロック装置が、ドアアウトサイドハンドルに設けられ、該ドアアウトサイドハンドルへの人の接触を検知する接触検知手段を更に有し、上記ドアアンロック手段が、上記照合手段により上記両IDコードの一致が確認され、且つ、上記接触検知手段により上記ドアアウトサイドハンドルへの人の接触が検知されたとき、上記ドアアウトサイドハンドルが取り付けられた車両ドアのドアロックを解除する、ように設計・設定されてもよい。この場合、上記通知手段は、上記電力供給手段、上記照合手段、上記ドアアンロック手段、及び、上記接触検知手段が作動可能な状態のときに上記発電手段の操作者に通知する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、リモートコントロールキー(電子キー)を任意の形状とすることができるスマートエントリーシステムを実現する車両用ドアアンロック装置を提供することができる。これにより、リモートコントロールキーをカード型として携帯性をより向上させたり、携帯電話などの他の携帯機器と一体化させたり、といった利便性向上のための拡張が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、本発明に係る車両用ドアアンロック装置は、既存のスマートエントリーシステムが搭載されている車両に搭載され、該システムと協働することを前提とする。既存のスマートエントリーシステムの基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【実施例】
【0028】
図1〜6を用いて、本発明の一実施例に係る車両用ドアアンロック装置について説明する。本実施例に係る車両用ドアアンロック装置は、既存のスマートエントリーシステムに対して追加的に設けられる装置である。
【0029】
図1は、本実施例に係る車両用ドアアンロック装置100の概略構成図である。図中、太い矢印は電力(供給)の流れを示し、細い矢印は信号の流れを示している。
【0030】
車両用ドアアンロック装置100は、車両ユーザが携帯する電子キー(リモートコントロールキー)Aが正規のキーであるか否かを判定するIDコード照合部101を有する。
【0031】
IDコード照合部101は、所定のリクエスト信号電波を所定の検知エリアに発信する機能を備える。この検知エリア内に電子キーAが存在し、リクエスト信号を受信すると、その電子キーAは内部に予め記憶されたIDコードを送信するように構成される。IDコード照合部101は、更に、電子キーAから送信されたIDコードを受信し、予め保持する所定のIDコードと照合して、一致した場合に当該電子キーAを正規のキーと判定する機能も備える。
【0032】
車両用ドアアンロック装置100は、更に、例えばECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である制御部102と、ドアロックの解除操作を実行するドアアンロック部103とを有する。制御部102は、IDコード照合部101から照合結果を受け取り、検知エリア内に正規キーが存在している場合には、ドアアンロック部103にドアロックを解除するように命令を出す。
【0033】
車両用ドアアンロック装置100は、更に、電子キーAに内蔵されたバッテリーやコンデンサなどの二次電池(図示せず)を相互電磁誘導作用により充電するための充電用コイル部104と、充電用コイル部104からの電磁誘導による電力供給をオン/オフ切替するスイッチ部105とを有する。
【0034】
車両用ドアアンロック装置100は、更に、IDコード照合部101、制御部102、ドアアンロック部103、及び、充電用コイル部104に駆動用電力を供給する蓄電部106を有する。蓄電部106は、バッテリーやコンデンサなどの二次電池であり、車両のバッテリー(図示せず)から電力の供給(+B)を受ける。
【0035】
車両用ドアアンロック装置100は、更に、蓄電部106にIDコード照合部101、制御部102、ドアアンロック部103、及び、充電用コイル部104のすべてを作動させるのに十分な電力が蓄積されていることをLEDの点灯又は点滅で表示するLED表示部107を有する。LED表示部107は、例えば、A)1つの発光ダイオードを備え、電力が十分なときに点灯又は点滅させるようにしてもよく、或いは、B)2つの異なる発光色の発光ダイオードを備え、電力が十分なときと不十分なときとで異なる色が点灯又は点滅するようにしてもよい。
【0036】
車両用ドアアンロック装置100は、更に、人が手動で操作可能であって、所定の手動操作により発電し、発電した電力で蓄電部106を充電することが可能な手動充電装置108を有する。手動充電装置108が採用する発電原理及び構造は、当業者には既知の任意のものでよい。手動充電装置108は、少なくとも、人によって操作される操作部(後述)と、操作部の往復運動又は回転運動を電気的エネルギーに変換する変換部(図示せず)とを有する。
【0037】
このような構成の本実施例に係る車両用ドアアンロック装置100において、少なくとも、IDコード照合部101のうち電波の送受信を行う機能と、充電用コイル部104のコイル本体と、手動充電装置108のうち人が操作する部分とは、車両の運転席側のサイドミラー(ドアミラー、アウターリヤビューミラー)内部に配置される。
【0038】
既存システムからの変更点を少なくする観点から、制御部102及びドアアンロック部103を既存のスマートエントリーシステムと共用とし、他の構成要素をすべてサイドミラー内に収めることが好ましい。
【0039】
図2は、本実施例に係る車両用ドアアンロック装置100が搭載された車両の運転席側サイドミラーの下方からの斜視図である。図2は、一例として、右ハンドル車の場合を示している。
【0040】
図2に示すように、本実施例においては、IDコード照合部101の双方向通信部101Aと、充電用コイル部104のコイル本体104Aとが運転席側サイドミラー200内部の底面付近に設けられる。サイドミラー200内部に設けられることにより、これらの部品が車両意匠(デザイン)やCd値に悪影響を与えることはない。また、サイドミラー200のミラー以外の筐体部分は通常樹脂製であるため、サイドミラー200内部に埋め込まれたコイル本体104Aからの電磁力が遮られることもない。
【0041】
コイル本体104Aは、スイッチ部105(図1)がオンに入れられると、電力供給のための電磁波の出力を開始する。スイッチ部105の設置場所は任意でよく、必ずしもサイドミラー上に設けられる必要はないが、ユーザの操作性を考慮すれば、電子キーAを双方向通信部101Aやコイル本体104Aが配置されたサイドミラー底面部分にかざす際に目視及び操作しやすい位置に配置されることが好ましい。
【0042】
また、図2に示すように、本実施例においては、手動充電装置108の操作部108Aが運転席側サイドミラー200内部の底面表面に露出して設けられる。底面表面に設けられることにより、車両意匠(デザイン)への影響を最小限に抑えることができる。
【0043】
本実施例において、車両ユーザは、LED表示部107(図1)の表示から車両のバッテリーが空であり、蓄電部104(図1)への充電が必要であることを認識すると、サイドミラー200底面から操作部108Aを引っ張り出して、LED表示部107が充電完了を知らせるまで操作部108Aを上下に往復させる。LED表示部107の設置場所は任意でよく、必ずしもサイドミラー上に設けられる必要はないが、ユーザの視認性を考慮すれば、操作部108Aを操作する際にユーザが目視しやすい位置に配置されることが好ましい。
【0044】
図3は、本実施例に係る車両用ドアアンロック装置100の手動充電装置108の操作部108Aの動きを示す。本実施例において、操作部108Aは、車両のCd値への影響を最小限に抑えるために、非使用時には図3(a)に示すようにサイドミラー200の底面に埋め込まれた状態で収容される。そして、使用時には図3(b)に示すように手で下方へ摘み出され、上下方向に往復運動させられる。この往復運動が図示しない変換部により電気的エネルギーに変換されることにより、手動での発電が実現される。
【0045】
なお、ここで、図3(b)に示すように引っ張り出された操作部108Aを図3(a)に示すような収容状態へ戻そうとするリテーナ機構(図示せず)を手動充電装置108が予め備えておくことにより、この車両ユーザによる操作部108Aの上下動操作の操作性が向上する。
【0046】
次いで、図4〜6を用いて、ユーザが本実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両にスマートエントリーシステムを利用して乗り込む際の操作について状況別に説明する。
【0047】
図4は、ユーザが本実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両に乗り込む際、車両のバッテリーも電子キーAのバッテリーも残量がある場合の様子を示している。この場合、既存のスマートエントリーシステムがそのまま使用され、電子キーAを携帯したユーザが車両から所定のレンジ内に入ると、既述のように双方向無線通信により自動的にIDコード照合が行われ、一致した場合、ユーザがドアアウトサイドハンドルに触れればドアがアンロックされ、車室内に乗り込むことができる。
【0048】
すなわち、図4の場合、本実施例に係る車両用ドアアンロック装置は使用されず、ユーザは電子キーAを取り出す必要はない。
【0049】
図5は、ユーザが本実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両に乗り込む際、車両のバッテリー残量はあるが、電子キーAのバッテリー残量がない場合の様子を示している。この場合、ユーザが電子キーAを携帯して車両に近づいてもIDコード照合ができないため、ドアアウトサイドハンドルに触れてもドアはアンロックされない。
【0050】
そこで、この場合、車両ユーザは、まず電子キーAを充電する必要がある。具体的には、スイッチ部105のスイッチをオンにして、充電用コイル部104を作動させ、電子キーAをサイドミラーの底面にかざすことによって、電子キーAを相互電磁誘導により非接触で充電する。そして、サイドミラーの底面にかざした状態で、電子キーAへの充電が完了しだい、サイドミラーに設けられた双方向通信部101Aと電子キーAとの間でIDコード照合が行われ、一致すればドアロックが解除される。
【0051】
すなわち、図5の場合、車室外で電子キーAの充電が可能であるため、ユーザが車室外にいる状態で電子キーAのバッテリー残量が空になってしまった場合でも、容易にスマートエントリーにより車室内に入ることができる。
【0052】
図6は、ユーザが本実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両に乗り込む際、車両のバッテリーも電子キーAのバッテリーも残量がない場合の様子を示している。この場合、車両のバッテリーもないため、たとえスイッチ部105をオンにしてもサイドミラー底面での非接触充電ができない。車両側に充電が必要であることはLED表示部107から確認できる。
【0053】
そこで、この場合、車両ユーザは、まず手動充電装置108の操作部108Aをサイドミラー底面から引っ張りだして上下に動かし、IDコード照合及びドアアンロックに必要な電力を手動で発電させる。必要十分な発電が行われたか否かはLED表示部107の表示から確認できる。
【0054】
充電完了後は、以降、図5の場合と同様に、今度は電子キーAを充電し、IDコード照合を実行して、ドアロックを解除する。
【0055】
すなわち、図6の場合、スマートエントリーに必要な車両側の電力を手動発電装置により車室外のユーザが生成することができるため、車両のバッテリーが空の場合でも、車両ユーザはスマートエントリーにより車室内に入ることができる。
【0056】
このように、本実施例によれば、本実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両へ乗り込む際には、車両のバッテリー残量及び電子キー(リモートコントロールキー)のバッテリー残量にかかわらず、スマートエントリーシステムを利用してIDコード照合によりドアロックを解除し、車室内に乗り込むことができる。したがって、エマージェンシー用として、電子キーがメカニカルキーを備えている必要がなく、車両のドアにもドアアンロック用のキーシリンダを設ける必要がない。
【0057】
このようにメカニカルキー機構を備えていることが不要となれば、電子キーをあらゆる任意の形状とすることができる。例えば、財布や名刺入れなどにも入る薄い一枚のカード状としてもよく、或いは、携帯電話などの携帯機器に内蔵・一体化してもよい。
【0058】
なお、上記一実施例においては、上記一実施例に係る車両用ドアアンロック装置を用いてドアロックを解除する場合、サイドミラー底面に電子キーをかざして、IDコード照合に成功すれば直ちに運転席ドアがアンロックされるものとしたが、これは一例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0059】
例えば、変形例として、既存のスマートエントリーシステムと同様に、本発明に係る車両用ドアアンロック装置によりサイドミラー底面近傍においてIDコード照合が行われた場合であっても、ユーザがその直後にドアアウトサイドハンドルに触れて初めてドアロックが解除されるものとしてもよい。
【0060】
このような変形例に係る車両用ドアアンロック装置700の概略構成を図7に示す。本変形例では、車両用ドアアンロック装置700が、上記一実施例の構成に加えて、運転席ドアアウトサイドハンドルへの人の接触を感知するタッチセンサ部701を更に有する。このようなタッチセンサ部701は、既存のスマートエントリーシステムより当業者には既知である。
【0061】
本変形例において、IDコード照合部101は、IDコードの一致が確認されたとき、タッチセンサ部701に接触感知の有無を確認し、接触が確認された場合のみ、制御部102に照合OKの結果を送る。
【0062】
また、本変形例において、タッチセンサ部701の駆動用電力は蓄電部106から供給される。そして、LED表示部107は、蓄電部106にIDコード照合部101、制御部102、ドアアンロック部103、充電用コイル部104、及び、タッチセンサ部701のすべてを作動させるのに十分な電力が蓄積されていることをLEDの点灯又は点滅で表示する。
【0063】
なお、上記一実施例及びその変形例においては、一例として、蓄電部106の充電状況をLED表示部107がLED表示でユーザに伝達するものとしたが、本発明はこれに限定されず、蓄電部106の充電状況を車両ユーザに通知できる限り、任意の構成とすることができる。例えば、手動充電装置108を利用した充電により蓄電部106に十分な電力が充電されたときにブザー音等の音を吹鳴(出力)する装置が代わりに設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、スマートエントリーシステムを備えた車両に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用ドアアンロック装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両の運転席側サイドミラーの下方からの斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る車両用ドアアンロック装置の手動充電装置の操作部の動きを示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両に乗り込む際、車両のバッテリーも電子キーのバッテリーも残量がある場合の様子を示す図である。
【図5】本発明の一実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両に乗り込む際、車両のバッテリー残量はあるが、電子キーのバッテリー残量がない場合の様子を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係る車両用ドアアンロック装置が搭載された車両に乗り込む際、車両のバッテリーも電子キーのバッテリーも残量がない場合の様子を示す図である。
【図7】本発明の別の一実施例に係る車両用ドアアンロック装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
100 車両用ドアアンロック装置
101 IDコード照合部
101A 双方向通信部
102 制御部
103 ドアアンロック部
104 充電用コイル部
104A コイル本体
105 スイッチ部
106 蓄電部
107 LED表示部
108 手動充電装置
108A 操作部
200 運転席側サイドミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、ドアロックを解除する車両用ドアアンロック装置であって、
車室外において携帯機に対して電力を供給する電力供給手段と、
前記電力供給手段により電力供給を受けた携帯機から送信された信号に含まれるIDコードを所定のIDコードと照合する照合手段と、
前記照合手段により前記両IDコードの一致が確認されたとき、ドアロックを解除するドアアンロック手段と、を有することを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記電力供給手段は、該電力供給手段の近傍に位置する携帯機に相互電磁誘導を利用して非接触で電力を供給する、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記電力供給手段は、非金属筐体内に設けられる、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記電力供給手段は、サイドミラー内に設けられる、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記電力供給手段は、
オン/オフ切替スイッチを有し、
前記スイッチがオンのときのみ電力供給を行う、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の車両用ドアアンロック装置であって、
手動操作により電力を生成し、生成した電力を前記電力供給手段、前記照合手段、及び、前記ドアアンロック手段へ供給する発電手段を更に有し、
前記電力供給手段は、前記発電手段から供給された電力の少なくとも一部を前記携帯機へ供給する、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項7】
請求項6記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記発電手段は、
車両外部に露出し、手動により往復運動又は回転運動させることが可能な操作手段と、
前記操作手段の往復運動又は回転運動を電気的エネルギーに変換する変換手段とを有する、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項8】
請求項7記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記発電手段は、サイドミラーに設けられる、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項9】
請求項8記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記操作手段は、サイドミラーの底面部分に下方へ向けて露出するように設けられる、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか一項記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記電力供給手段、前記照合手段、及び、前記ドアアンロック手段が作動可能な状態のときに前記発電手段の操作者に通知する通知手段を更に有する、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の車両用ドアアンロック装置であって、
ドアアウトサイドハンドルに設けられ、該ドアアウトサイドハンドルへの人の接触を検知する接触検知手段を更に有し、
前記ドアアンロック手段は、前記照合手段により前記両IDコードの一致が確認され、且つ、前記接触検知手段により前記ドアアウトサイドハンドルへの人の接触が検知されたとき、前記ドアアウトサイドハンドルが取り付けられた車両ドアのドアロックを解除する、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項12】
請求項6乃至9のいずれか一項記載の車両用ドアアンロック装置であって、
ドアアウトサイドハンドルに設けられ、該ドアアウトサイドハンドルへの人の接触を検知する接触検知手段を更に有し、
前記発電手段は、前記接触検知手段にも発電した電力の少なくとも一部を供給し、
前記ドアアンロック手段は、前記照合手段により前記両IDコードの一致が確認され、且つ、前記接触検知手段により前記ドアアウトサイドハンドルへの人の接触が検知されたとき、前記ドアアウトサイドハンドルが取り付けられた車両ドアのドアロックを解除する、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。
【請求項13】
請求項12記載の車両用ドアアンロック装置であって、
前記電力供給手段、前記照合手段、前記ドアアンロック手段、及び、前記接触検知手段が作動可能な状態のときに前記発電手段の操作者に通知する通知手段を更に有する、ことを特徴とする車両用ドアアンロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−312821(P2006−312821A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135430(P2005−135430)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】