説明

車両用ドアハンドル

【課題】当該車両用ドアハンドルの組付作業性を向上させること。
【解決手段】ドアハンドルアッシ10の防水パッド13には、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20がアウタパネル201に仮組される際に、アウタパネル201の挿通口201aとドアロックコントロールアッシ20のブラケット21に設けたツメ部挿通孔21cを通して挿通可能で、締結手段にて共締めされる前に、ブラケット21に係合してドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20をアウタパネル201に対して仮保持可能な仮保持ツメ部13aが設けられている。このため、防水パッド13を有効に活用して(部品点数を増加させることなく)、当該車両用ドアハンドル100の組付作業性を向上させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドルに係り、例えば、自動車のバックドア(上下方向にて開閉可能なドア)に組付けられる車両用ドアハンドル(ドアアウトサイドハンドル)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ドアハンドルの一つとして、例えば、下記特許文献1に示されている車両用ドアハンドル(自動車のドアアウトサイドハンドル装置)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−285341号公報
【0004】
上記した特許文献1に記載されている車両用ドアハンドルにおいては、ドアのアウタパネルを挟んで外側に配置されるドアハンドルアッシと内側に配置されるドアロックコントロールアッシとが、前記アウタパネルと共に共通の締結手段(ボルトとナット)にて共締めされるように構成されている。前記ドアハンドルアッシは、車外から操作可能で前記アウタパネルに設けた挿通口を通して前記アウタパネルを貫通するアーム部を有するハンドルと、このハンドルを回転可能に支持し前記締結手段にて共締めされるベース(ハンドルブラケット)と、このベースと前記ハンドル間に介装されて前記ハンドルを復帰位置(初期位置)に向けて付勢するスプリングを備えている。また、前記ドアロックコントロールアッシは、前記締結手段にて共締めされるブラケットと、このブラケットに回転可能に支持されて前記ハンドルの前記アーム部にて先端部を押動操作可能なレバーを備えている。
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
上記した特許文献1に記載されている車両用ドアハンドルにおいては、ドアハンドルアッシのベースに締結手段のボルトが固着されていて、このボルトがアウタパネルに設けたボルト挿通孔に挿通された状態にて、同ボルトにドアロックコントロールアッシが組付けられて、同ボルトに螺着されるナットにてドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシをアウタパネルに対して共締めする構成が採用されている。
【0006】
ところで、上記した特許文献1に記載されているドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシには、これらをアウタパネルに対して仮保持する構成がないため、ドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシをアウタパネルに組付ける際に、アウタパネルに仮組されたドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシがアウタパネルから自重で脱落するおそれがある。
【0007】
また、上記した特許文献1に記載されている車両用ドアハンドルにおいては、ドアハンドルアッシのベースに固着されている締結手段のボルトが、アウタパネルに設けたボルト挿通孔とドアロックコントロールアッシのブラケットに設けたボルト挿通孔に挿通されるように構成されている。
【0008】
ところで、ボルトは、通常、その外形のバラツキが大きいため、各ボルト挿通孔の内径はボルトの外径に対して大きめに設定されている。このため、ドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシの組付精度が悪くて、これに起因して当該ドアハンドルの操作性が損なわれるおそれがある。
【0009】
また、上記した特許文献1に記載されているハンドルとレバーでは、それぞれが初期位置にあるとき、ハンドルのアーム部とレバーの先端部間に所定の隙間が設定されている。このため、上記した隙間がハンドルのストロークロス(無効ストローク)となって、ハンドルの操作性が損なわれる。
【0010】
(課題を解決するための手段およびその作用効果)
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、
ドアのアウタパネルを挟んで外側に配置されるドアハンドルアッシと内側に配置されるドアロックコントロールアッシとが、前記アウタパネルと共に共通の締結手段(ボルトとナット)にて共締めされるように構成されている車両用ドアハンドルであり、
前記ドアハンドルアッシが、車外から操作可能で前記アウタパネルに設けた挿通口を通して前記アウタパネルを貫通するアーム部を有するハンドルと、このハンドルを回転可能に支持し前記締結手段にて共締めされるベースと、前記締結手段にて共締めされる前に前記ベースに組付けられた状態にて前記ベースとともに前記アウタパネルに組付けられて前記ベースと前記アウタパネル間に介装される防水パッドを備え、
前記ドアロックコントロールアッシが、前記締結手段にて共締めされるブラケットと、このブラケットに回転可能に支持されて前記ハンドルの前記アーム部にて先端部を押動操作可能なレバーと、このレバーと前記ブラケット間に介装されて前記レバーを復帰位置に向けて付勢するスプリングを備えていて、
前記防水パッドには、前記ドアハンドルアッシと前記ドアロックコントロールアッシが前記アウタパネルに仮組される際に、前記アウタパネルの前記挿通口と前記ブラケットに設けたツメ部挿通孔を通して挿通可能で、前記締結手段にて共締めされる前に、前記ブラケットに係合して前記ドアハンドルアッシと前記ドアロックコントロールアッシを前記アウタパネルに対して仮保持可能な仮保持ツメ部が設けられている。
【0011】
本発明では、ドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシがアウタパネルに仮組された状態で、防水パッドに設けた仮保持ツメ部が、アウタパネルに設けた挿通口とブラケットに設けたツメ部挿通孔を通して、ブラケットに係合している。このため、防水パッドに設けた仮保持ツメ部は、ドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシをアウタパネルに対して仮保持可能である。したがって、アウタパネルに仮組されたドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシがアウタパネルから自重で脱落することはなく、防水パッドを有効に活用して(部品点数を増加させることなく)、当該車両用ドアハンドルの組付作業性を向上させることが可能である。
【0012】
上記した本発明の実施に際して、前記レバーは前記ブラケットの中間部位に設けられていて、前記仮保持ツメ部は、前記レバーを前記ハンドルの長手方向にて挟むようにして一対設けられていることも可能である。この場合には、前記ドアハンドルアッシと前記ドアロックコントロールアッシを前記アウタパネルに対して安定した状態で仮保持することが可能である。
【0013】
この場合において、前記仮保持ツメ部の一方は前記ハンドルの短手方向一側(例えば、上向き)の戻し部(ブラケットに係合して抜け止めされる部分)を有し、前記仮保持ツメ部の他方は前記ハンドルの短手方向他側(例えば、下向き)の戻し部を有していて、前記ハンドルの前記アーム部にて押動操作される前記レバーの先端側(レバーの基端側に比して重量が軽い)には、前記ハンドルの短手方向他側(例えば、下向き)の戻し部が配置されていることも可能である。この場合には、仮保持時に、ドアロックコントロールアッシがアウタパネルに対して傾動する動きに的確に対処する(すなわち、傾動する動きを各仮保持ツメ部の戻し部が的確に規制する)ことが可能である。
【0014】
また、上記した本発明の実施に際して、前記ベースには、前記防水パッドに設けた一対のボス部挿通孔と前記アウタパネルの前記挿通口を通して前記ブラケットに設けた一対のボス部挿通孔にそれぞれ嵌合される一対の位置決めボス部が形成されていることも可能である。この場合には、ドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシの組付精度をシンプルで安価な構成にて高めることが可能である。このため、ドアハンドルアッシとドアロックコントロールアッシの相対位置ずれを低減することができて、作動ストロークのバラツキが低減し、操作性を損なう可能性が減少する。
【0015】
また、上記した本発明の実施に際して、前記ハンドルの前記アーム部の先端下部には、前記ドアハンドルアッシの前記アウタパネルに対する組付に際して、前記アウタパネルの前記挿通口の下縁部に沿って摺動可能な傾斜面が形成されていることも可能である。この場合には、ハンドルがベースに対してハンドルリターンスプリングにより初期位置に向けて付勢されておらず、ハンドルのアーム部が自重で初期位置より下方に傾いていても、ハンドルのアーム部をアウタパネルの挿通口に挿入する際に、ハンドルのアーム部に形成されている傾斜面がアウタパネルの挿通口の下縁部に沿って摺動することで、ハンドルのアーム部が上方への力を受ける。これにより、ハンドルのアーム部が上方に傾動して、ハンドルのアーム部をアウタパネルの挿通口に円滑に組付けることが可能であり、ドアハンドルアッシのアウタパネルに対する組付性を阻害することなく、ハンドルリターンスプリングを省略することが可能である。
【0016】
また、上記した本発明の実施に際して、前記ベースには、前記ハンドルの初期位置を規定するストッパ部が形成されていて、前記締結手段にて共締めされた状態では、前記スプリングの付勢力が前記レバーと前記ハンドルを介して前記ストッパ部にて受け止められるように設定されていることも可能である。この場合には、ハンドルの復帰位置(初期位置)にてハンドルとレバー間にガタ(隙間)が生じない。このため、ハンドルのストロークロス(無効ストローク)が無くなり、ストローク効率が増加するため、操作力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による車両用ドアハンドルの一実施形態を車両外側から見た図である。
【図2】図1に示した車両用ドアハンドルを車両内側から見た図である。
【図3】図2のB−B線に沿った断面図である。
【図4】図2のC−C線に沿った断面図である。
【図5】図2のD−D線に沿った断面図である。
【図6】図4のF−F線に沿った断面図である。
【図7】図1、図3〜図6に示した車両用ドアハンドルにおけるドアハンドルアッシの斜視図である。
【図8】図2〜図6に示した車両用ドアハンドルにおけるドアロックコントロールアッシの斜視図である。
【図9】図1〜図6に示したバックドアのアウタパネルにおける要部(車両用ドアハンドルの取付部)を示す図である。
【図10】図7に示したドアハンドルアッシにおけるハンドル単体の斜視図である。
【図11】図10に示したハンドル単体の正面図である。
【図12】図10に示したハンドル単体の左側面図である。
【図13】図10に示したハンドル単体の右側面図である。
【図14】図10に示したハンドル単体の平面図である。
【図15】図7に示したドアハンドルアッシにおけるベース単体の斜視図である。
【図16】図15に示したベース単体の正面図である。
【図17】図15に示したベース単体の左側面図である。
【図18】図15に示したベース単体の右側面図である。
【図19】図15に示したベース単体の平面図である。
【図20】図7に示したドアハンドルアッシにおける防水パッド単体の斜視図である。
【図21】図20に示した防水パッド単体の正面図である。
【図22】図20に示した防水パッド単体の左側面図である。
【図23】図20に示した防水パッド単体の右側面図である。
【図24】図20に示した防水パッド単体の平面図である。
【図25】図7に示したドアハンドルアッシを組付ける前のガーニッシュと一対のボルト等の斜視図である。
【図26】図7に示したドアハンドルアッシを組付けた後のガーニッシュと一対のボルト等の斜視図である。
【図27】図26に示したドアハンドルアッシをアウタパネルに組付ける際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は本発明による車両用ドアハンドル100の一実施形態を示していて、この車両用ドアハンドル100は、上下方向にて開閉可能なバックドア200のアウタパネル201を挟んで外側に配置されるドアハンドルアッシ10と内側に配置されるドアロックコントロールアッシ20を備えている。この車両用ドアハンドル100では、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20が、アウタパネル201と共に共通の締結手段30,30にて共締めされるように構成されている。なお、バックドア200では、下端部にドアロック装置(図示省略)が設けられている。
【0019】
ドアハンドルアッシ10は、図1、図3〜図6と図7にて示したように、硬質樹脂製のハンドル11と硬質樹脂製のベース12と軟質樹脂製の防水パッド13を備えている。ハンドル11は、図10〜図14にて詳細に示したように、操作部11aと左右一対の軸部11bとアーム部11cを有していて、操作部11aにて車外から回転操作可能で、一対の軸部11bにてベース12に回転可能に組付けられている。アーム部11cは、図3に示したように、アウタパネル201に設けた挿通口201aを通してアウタパネル201を貫通するものである。また、アーム部11cの先端下部には、ドアハンドルアッシ10のアウタパネル201に対する組付に際して、アウタパネル201の挿通口201aの下縁部に沿って摺動可能な傾斜面11c1が形成されている(図27の破線参照)。
【0020】
ベース12は、図15〜図19にて詳細に示したように、左右一対の軸支部12aと矩形のアーム部挿通孔12bを有していて、防水パッド13が組付けられる側(車内側)には、左右一対の位置決めボス部12cと左右一対の環状座面12dと7個のパッド支持ピン部12eが形成されている。また、ハンドル11が組付けられる側(車外側)には、上記した左右一対の軸支部12aが形成されているとともに、左右一対の環状座面12fとハンドル11の初期位置を規定するためのストッパ部12gが形成されている。
【0021】
左右一対の軸支部12aは、互いに対向配置されていて、ハンドル11の軸部11bを回転可能に支持するものである。アーム部挿通孔12bは、ハンドル11のアーム部11cが挿通されるものであり、車外側にはアーム部挿通孔12bとハンドル11のアーム部11c間をシールするための矩形の防水シート14(図25参照)を取付けるための凹部12b1が形成されている。
【0022】
各位置決めボス部12cは、図4に示したように、防水パッド13に設けた各ボス部挿通孔13cとアウタパネル201の挿通口201aを通してブラケット21に設けた各ボス部挿通孔21bにそれぞれ嵌合されるものである。左右一対の環状座面12dは、アウタパネル201の外側面に直接当接するものであり、左右一対の環状座面12fとそれぞれ同軸的に形成されていて、各環状座面12dと各環状座面12fには、ボルト31の軸部31bが圧入嵌合される貫通孔12hがそれぞれ形成されている。各パッド支持ピン部12eは、防水パッド13を支持するものであり、その外周には環状の凹部12e1(図18参照)が形成されている。各環状座面12fは、締結手段30におけるボルト31の頭部31aを環状の防水シート33(図6および図25参照)を介して受けるものである。
【0023】
防水パッド13は、図20〜図24にて詳細に示したように、左右一対の仮保持ツメ部13aと矩形のアーム部挿通孔13bを有するとともに、左右一対のボス部挿通孔13cと左右一対の座面挿通孔13dを有していて、ベース側(車外側)には、7個の筒部13eが形成されている。また、アウタパネル側(車内側)には、防水パッド13とアウタパネル201間をシールするための横長で長円形状のシール部13fが形成されているとともに、防水パッド13の組付方向(上下方向)を示す矢印13gが形成されている。なお、アウタパネル201において、防水パッド13のシール部13fが接合する領域内には、上記した挿通口201aが形成されているとともに、上記した一対のボルト31,31の先端部が挿通されるボルト挿通孔(図6において符号省略)が形成されている。
【0024】
各仮保持ツメ部13aは、ブラケット21に係合して抜け止めされるフック形状に形成されていて、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20がアウタパネル201に仮組される際に、アウタパネル201の挿通口201aとブラケット21に設けたツメ部挿通孔21cを通して挿通可能(図4参照)である。また、各仮保持ツメ部13aは、締結手段30にて共締めされる前の状態(仮組状態)において、ブラケット21に係合してドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20をアウタパネル201に対して仮保持可能である。
【0025】
また、各仮保持ツメ部13aは、図2に示したように、ブラケット21の中間部位に設けられているレバー22を左右方向にて挟むようにして設けられている。一方(図2の右方)の仮保持ツメ部13aは上向きの戻し部13a1を有し、他方(図2の左方)の仮保持ツメ部13aは下向きの戻し部13a1を有していて、ハンドル11のアーム部11cにて押動操作されるレバー22の先端部22a側(図2の左方)には、下向きの戻し部13a1が配置されている。
【0026】
ドアロックコントロールアッシ20は、図2〜図6と図8にて示したように、金属製のブラケット21と金属製のレバー22と金属製のスプリング23を備えるとともに、操作ケーブル24を備えている。ブラケット21は、左右一対のボルト挿通孔21aと左右一対のボス部挿通孔21bと左右一対のツメ部挿通孔21cを有していて、車内側にはストッパ部21dと係止部21eと保持部21fが設けられている。各ボルト挿通孔21aは、締結手段30のボルト31がそれぞれ挿通可能である。各ボス部挿通孔21bは、ベース12に形成されている各位置決めボス部12cがそれぞれ嵌合可能である。各ツメ部挿通孔21cは、防水パッド13に形成されている各仮保持ツメ部13aが車外側から車内側に向けて一方向にてそれぞれ挿通可能である。
【0027】
ストッパ部21dは、ドアロックコントロールアッシ20がドアハンドルアッシ10と別個の構成されている状態にて、図8にて示したように、レバー22の先端部22aと係合してレバー22の初期位置を規定するものである。係止部21eは、スプリング23の一端23aと係合するものである。保持部21fは、操作ケーブル24におけるアウターチューブ24aの一端24a1を保持するものである。
【0028】
レバー22は、ブラケット21に一端にてカシメ固定された支持ピン25(図5および図8参照)に回転可能に組付けられていて、先端部22aにてハンドル11におけるアーム部11cの押動部11c2に係合可能であり(図2および図3参照)、基端部22bにて操作ケーブル24におけるインナーワイヤ24bの一端24b1に連結されている。
【0029】
スプリング23は、図2、図5および図8に示したように、支持ピン25に装着されていて、一端23aにてブラケット21の係止部21eに係合し、他端23bにてレバー22の先端部22aに係合していて、レバー22とブラケット21間に介装されており、レバー22を復帰位置に向けて付勢している。操作ケーブル24は、レバー22の動きをドアロック装置(図示省略)に伝達するものであり、アウターチューブ24aとインナーワイヤ24bによって構成されている。
【0030】
上記したレバー22の復帰位置は、車両用ドアハンドル100がバックドア200のアウタパネル201に組付けられている状態で、レバー22の先端部22aがハンドル11におけるアーム部11cの押動部11c2に係合する位置(図2および図3にて実線にて示されている位置)である。なお、図2および図3にて仮想線にて示されているレバー22の先端部22aは、図8に示した状態(ドアロックコントロールアッシ20がドアハンドルアッシ10と別個の構成されている状態)で、ブラケット21のストッパ部21dに係合して初期位置に保持されているときのものである。
【0031】
締結手段30は、図1、図2および図6に示したように、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20をアウタパネル201と共に共締めするとともに、ガーニッシュ202をアウタパネル201に固定するためのものであり、左右一対のボルト31と左右一対のナット32を備えている。各ボルト31は、図6および図25に示したように、頭部31aにてガーニッシュ202に一体的に固着されていて、軸部31bには環状の防水シート33が装着されている。各ボルト31の軸部31bには、図26に示したように、ドアハンドルアッシ10におけるベース12がその環状座面12d,12fに形成した貫通孔12hにて圧入嵌合されて組付けられている。
【0032】
各ナット32は、図6に示したように、ドアハンドルアッシ10のベース12および防水パッド13とアウタパネル201とドアロックコントロールアッシ20のブラケット21等を貫通するボルト31のネジ部31cに螺着されるように構成されている。なお、ガーニッシュ202には、図25および図26に示したように、左右一対のクリップ203が組付けられていて、同クリップ203がアウタパネル201の取付部(図示省略)に取付けられることで、ガーニッシュ202がアウタパネル201に仮保持されるように構成されている。
【0033】
アウタパネル201は、図1〜図6と図9に示したように、横長で矩形の挿通口201aを有するとともに、左右一対のボルト挿通孔201bを有している。また、アウタパネル201には、図9に仮想線にて示したように、ベース12の各環状座面12dが当接する左右一対の環状部位と、防水パッド13における横長・長円形状のシール部13fが当接する横長・長円部位が設けられている。上記した挿通口201aと左右一対のボルト挿通孔201bと左右一対の環状部位は、横長・長円部位(仮想線の13f)内に収められるように構成されている。
【0034】
上記のように構成したこの実施形態の車両用ドアハンドル100においては、ドアハンドルアッシ10の防水パッド13に左右一対の仮保持ツメ部13aが設けられていて、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20をアウタパネル201に仮組した状態で、防水パッド13に設けた各仮保持ツメ部13aが、アウタパネル201に設けた挿通口201aとブラケット21に設けた各ツメ部挿通孔21cを通して、ブラケット21に抜け止めされた状態で係合している。なお、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20のアウタパネル201に対する仮組は、通常、バックドア200を上方に開放した状態にて行われる。
【0035】
このため、防水パッド13に設けた各仮保持ツメ部13aは、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20をアウタパネル201に対して仮保持可能である。したがって、アウタパネル201に仮組されたドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20がアウタパネル201から自重で脱落することはなく、防水パッド13を有効に活用して(部品点数を増加させることなく)、当該車両用ドアハンドル100の組付作業性を向上させることが可能である。
【0036】
また、この実施形態では、レバー22がブラケット21の中間部位に設けられていて、各仮保持ツメ部13aは、レバー22を左右方向(ハンドルの長手方向)にて挟むようにして一対設けられている。このため、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20をアウタパネル201に対して安定した状態で仮保持することが可能である。
【0037】
また、一方の仮保持ツメ部13aは上向き(ハンドルの短手方向一側)の戻し部13a1を有し、他方の仮保持ツメ部13aは下向き(ハンドルの短手方向他側)の戻し部13a1を有していて、ハンドル11のアーム部11cにて押動操作されるレバー21の先端側(操作ケーブル24が組付けられているレバー21の基端側に比して重量が軽い)には、下向きの戻し部13a1が配置されている。このため、仮保持時に、ドアロックコントロールアッシ20がアウタパネル201に対して傾動する動きに的確に対処する(すなわち、傾動する動きを各仮保持ツメ部13aの戻し部13a1が的確に規制する)ことが可能である。
【0038】
また、この実施形態では、防水パッド13に設けた各ボス部挿通孔13cとアウタパネル201に設けた挿通口201aを通して、ブラケット21に設けた各ボス部挿通孔21bにそれぞれ嵌合される一対の位置決めボス部12cがベース12に形成されている。これにより、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20の組付精度をシンプルで安価な構成にて高めることが可能である。このため、ドアハンドルアッシ10とドアロックコントロールアッシ20の相対位置ずれを低減することができて、作動ストロークのバラツキが低減し、操作性を損なう可能性が減少する。
【0039】
また、この実施形態では、ハンドル11のアーム部11cの先端下部に、ドアハンドルアッシ10のアウタパネル201に対する組付に際して、アウタパネル201の挿通口201aの下縁部に沿って摺動可能な傾斜面11c1が形成されている。このため、ハンドル11がベース12に対してハンドルリターンスプリングにより初期位置に向けて付勢されておらず、ハンドル11のアーム部11cが自重で図27の破線で示したように初期位置(図26の実線で示した位置)より下方に傾いていても、ハンドル11のアーム部11cをアウタパネル201の挿通口201aに挿入する際に、ハンドル11のアーム部11cに形成されている傾斜面11c1がアウタパネル201の挿通口201aの下縁部に沿って摺動することで、ハンドル11のアーム部11cが上方への力を受ける。これにより、ハンドル11のアーム部11cが上方に傾動して、ハンドル11のアーム部11cをアウタパネル201の挿通口201aに円滑に組付けることが可能であり、ドアハンドルアッシ10のアウタパネル201に対する組付性を阻害することなく、ハンドルリターンスプリングを省略することが可能である。
【0040】
また、この実施形態では、ベース12にハンドル11の初期位置を規定するストッパ部12gが形成されていて、締結手段30にて共締めされた状態では、スプリング23の付勢力がレバー22とハンドル11を介してストッパ部12gにて受け止められるように設定されている。これにより、ハンドル11の復帰位置(初期位置)にてハンドル11とレバー22間にガタ(隙間)が生じない。このため、ハンドル11のストロークロス(無効ストローク)が無くなり、ストローク効率が増加するため、操作力を低減することができる。
【0041】
上記した実施形態においては、防水パッド13に左右一対の仮保持ツメ部13aを設けて実施したが、この仮保持ツメ部(13a)の個数(本数)は適宜増減可能であり、例えば、一本または三本で実施することも可能である。
【0042】
また、上記した実施形態においては、ハンドルリターンスプリング(ハンドルを初期位置に戻すスプリング)を省略して実施したが、これを設けて実施することも可能である。この場合には、ハンドルのアーム部(11c)に傾斜面(11c1)が不要であり、しかも、ハンドルのアーム部(11c)とレバーの先端部(22a)間に隙間があってもよい。
【0043】
また、上記した実施形態においては、バックドア200にガーニッシュ202が設けられる場合の実施形態について説明したが、バックドア200にガーニッシュ202が設けられない場合の実施形態にも本発明は上記実施形態と同様にまたは適宜変更して実施することが可能である。また、上記した実施形態においては、バックドア200に本発明を実施したが、本発明は、バックドア以外のドアにも同様にまたは適宜変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
100…車両用ドアハンドル、10…ドアハンドルアッシ、11…ハンドル、11a…操作部、11b…軸部、11c…アーム部、11c1…傾斜面、11c2…押動部、12…ベース、12a…軸支部、12b…アーム部挿通孔、12b1…凹部、12c…位置決めボス部、12d…環状座面、12e…パッド支持ピン部、12e1…凹部、12f…環状座面、12g…ストッパ部、12h…貫通孔、13…防水パッド、13a…仮保持ツメ部、13a1…戻し部、13b…アーム部挿通孔、13c…ボス部挿通孔、13d…座面挿通孔、13e…筒部、13f…シール部、13g…矢印、14…防水シート、20…ドアロックコントロールアッシ、21…ブラケット、21a…ボルト挿通孔、21b…ボス部挿通孔、21c…ツメ部挿通孔、21d…ストッパ部、21e…係止部、21f…保持部、22…レバー、22a…先端部、22b…基端部、23…スプリング、23a…一端、23b…他端、24…操作ケーブル、24a…アウターチューブ、24b…インナーワイヤ、25…支持ピン、30…締結手段、31…ボルト、32…ナット、33…防水シート、200…バックドア、201…アウタパネル、201a…挿通口、201b…ボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアのアウタパネルを挟んで外側に配置されるドアハンドルアッシと内側に配置されるドアロックコントロールアッシとが、前記アウタパネルと共に共通の締結手段にて共締めされるように構成されている車両用ドアハンドルであり、
前記ドアハンドルアッシが、車外から操作可能で前記アウタパネルに設けた挿通口を通して前記アウタパネルを貫通するアーム部を有するハンドルと、このハンドルを回転可能に支持し前記締結手段にて共締めされるベースと、前記締結手段にて共締めされる前に前記ベースに組付けられた状態にて前記ベースとともに前記アウタパネルに組付けられて前記ベースと前記アウタパネル間に介装される防水パッドを備え、
前記ドアロックコントロールアッシが、前記締結手段にて共締めされるブラケットと、このブラケットに回転可能に支持されて前記ハンドルの前記アーム部にて先端部を押動操作可能なレバーと、このレバーと前記ブラケット間に介装されて前記レバーを復帰位置に向けて付勢するスプリングを備えていて、
前記防水パッドには、前記ドアハンドルアッシと前記ドアロックコントロールアッシが前記アウタパネルに仮組される際に、前記アウタパネルの前記挿通口と前記ブラケットに設けたツメ部挿通孔を通して挿通可能で、前記締結手段にて共締めされる前に、前記ブラケットに係合して前記ドアハンドルアッシと前記ドアロックコントロールアッシを前記アウタパネルに対して仮保持可能な仮保持ツメ部が設けられている車両用ドアハンドル。
【請求項2】
前記レバーは前記ブラケットの中間部位に設けられていて、前記仮保持ツメ部は、前記レバーを前記ハンドルの長手方向にて挟むようにして一対設けられている、請求項1に記載の車両用ドアハンドル。
【請求項3】
前記仮保持ツメ部の一方は前記ハンドルの短手方向一側の戻し部を有し、前記仮保持ツメ部の他方は前記ハンドルの短手方向他側の戻し部を有していて、前記ハンドルの前記アーム部にて押動操作される前記レバーの先端側には、前記ハンドルの短手方向他側の戻し部が配置されている、請求項2に記載の車両用ドアハンドル。
【請求項4】
前記ベースには、前記防水パッドに設けた一対のボス部挿通孔と前記アウタパネルの前記挿通口を通して前記ブラケットに設けた一対のボス部挿通孔にそれぞれ嵌合される一対の位置決めボス部が形成されている、請求項1−3の何れか一項に記載の車両用ドアハンドル。
【請求項5】
前記ハンドルの前記アーム部の先端下部には、前記ドアハンドルアッシの前記アウタパネルに対する組付に際して、前記アウタパネルの前記挿通口の下縁部に沿って摺動可能な傾斜面が形成されている、請求項1−4の何れか一項に記載の車両用ドアハンドル。
【請求項6】
前記ベースには、前記ハンドルの初期位置を規定するストッパ部が形成されていて、前記締結手段にて共締めされた状態では、前記スプリングの付勢力が前記レバーと前記ハンドルを介して前記ストッパ部にて受け止められるように設定されている、請求項1−5の何れか一項に記載の車両用ドアハンドル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2012−197040(P2012−197040A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62908(P2011−62908)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】