説明

車両用ドアミラー装置

【課題】電動格納機構の作動音によって車両の乗員の快適性が損なわれることを抑制できる。
【解決手段】本ドアミラー装置10では、電動格納機構24がモータ26の駆動力によってドアミラー本体18をステー16に対して回動させると、オルゴール28(又は30)の振動板32(又は42)と、係合部材34(又は44)の複数の突起物34B(又は44B)とが係合する。これにより、振動板32(又は42)が楽音を発して音楽が奏でられる。したがって、この音楽によって電動格納機構24の作動音を聞こえにくくすることができるため、当該作動音によって車両の乗員の快適性が損なわれることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアミラー装置では、モータの駆動力によってドアミラー本体を回動させる電動格納機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−290542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のようなドアミラー装置では、ドアミラー本体の回動時には電動格納機構が作動音を発するが、車両の乗員の快適性などを考慮すると、このような作動音は低減することが好ましい。このため、電動格納機構の構成部材の材料や構造を改良したり、ドアトリム内に防音材を設置するなどの対策がとられており、製造コストの増加の原因などになっている。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、電動格納機構の作動音によって車両の乗員の快適性が損なわれることを抑制できる車両用ドアミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る車両用ドアミラー装置は、車両に固定されるステーに対して回動可能に連結されたドアミラー本体と、モータの駆動力によって前記ドアミラー本体を前記ステーに対して回動させる電動格納機構と、前記ドアミラー本体の回動時に互いに係合する発音部材及び係合部材を有し、前記係合によって前記発音部材が楽音を発することにより音楽を奏する演奏手段と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両用ドアミラー装置では、電動格納機構がモータの駆動力によってドアミラー本体をステーに対して回動させると、演奏手段の発音部材と係合部材とが係合する。これにより、発音部材が楽音を発して音楽が奏でられる。したがって、この音楽によって電動格納機構の作動音を聞こえにくくすることができるため、当該作動音によって車両の乗員の快適性が損なわれることを抑制できる。
【0007】
請求項2に記載の発明に係る車両用ドアミラー装置は、請求項1に記載の車両用ドアミラー装置において、前記発音部材は、前記ドアミラー本体及び前記ステーの何れか一方に設けられ、弾かれることで楽音を発する振動板とされ、前記係合部材は、前記ドアミラー本体及び前記ステーの何れか他方に設けられ、前記回動時に前記振動板を弾く複数の突起物を有することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車両用ドアミラー装置では、電動格納機構がモータの駆動力によってドアミラー本体をステーに対して回動させると、ドアミラー本体及びステーの何れか一方に設けられた振動板が、何れか他方に設けられた係合部材の複数の突起物によって弾かれる。これにより、振動板が楽音を発して音楽が奏でられるため、演奏手段を簡単な構成にすることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明に係る車両用ドアミラー装置は、請求項2に記載の車両用ドアミラー装置において、前記係合部材は、前記他方に対して着脱可能に取り付けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車両用ドアミラー装置では、係合部材は、ドアミラー本体及びステーの何れか他方に対して着脱可能に取り付けられている。このため、発音部材との係合により異なる音楽を奏する複数種類の係合部材(複数の突起物の各突出量や配置が異なるもの)を用意しておけば、係合部材の交換によって、奏でられる音楽をユーザーの好みに応じて容易に変更することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明に係る車両用ドアミラー装置は、請求項2又は請求項3に記載の車両用ドアミラー装置において、前記振動板は、前記回動時に前記複数の突起物と係合する係合位置と、前記回動時に前記複数の突起物と係合しない退避位置との間で前記一方に対して変位可能に取り付けられると共に、前記振動板を前記係合位置と前記退避位置との間で変位させる変位手段を有することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車両用ドアミラー装置では、振動板は、ドアミラー本体及びステーの何れか一方に対して係合位置と退避位置との間で変位可能に取り付けられており、変位手段によって振動板を係合位置と退避位置との間で変位させることができる。これにより、ドアミラー本体の回動時における振動板と係合部材(複数の突起物)との係合の有無を切り替えることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明に係る車両用ドアミラー装置は、請求項4に記載の車両用ドアミラー装置において、前記変位手段は、前記他方に設けられ、前記回動時に前記振動板と摺動するガイドとされていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の車両用ドアミラー装置では、ドアミラー本体が回動すると、ドアミラー本体及びステーの何れか一方に取り付けられた振動板が、何れか他方に設けられたガイドと摺動する。これにより、振動板が前記何れか一方に対して係合位置と退避位置との間で変位される。したがって、変位手段を簡単な構成にすることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明に係る車両用ドアミラー装置は、請求項2に記載の車両用ドアミラー装置において、前記複数の突起物は、前記ステーに対する相対移動により各突出量を個別に変更可能とされると共に、前記複数の突起物を駆動して前記複数の突起物の各突出量を個別に変更する突起物制御機構と、所定の記憶媒体に記憶された音源データに基づいて前記複数の突起物の各突出量を算出し、当該算出結果に基づいて前記突起物制御機構の作動を制御する制御装置とを有することを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の車両用ドアミラー装置では、制御装置が所定の記憶媒体に記憶された音源データに基づいて係合部材の複数の突起物の各突出量を算出し、当該算出結果に基づいて突起物制御機構の作動を制御する。これにより、突起物制御機構が複数の突起物の各突出量を個別に変更し、複数の突起物と振動板との係合の仕方が変更される。これにより、複数の突起物と振動板との係合によって奏でられる音楽を変更することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明に係る車両用ドアミラー装置は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用ドアミラー装置において、前記ステーは、前記演奏手段が奏でる音楽を車室内に伝達する音楽伝達部を有することを特徴としている。
【0018】
請求項7に記載の車両用ドアミラー装置では、演奏手段が奏でる音楽がステーに設けられた音楽伝達部によって車室内へ伝達される。したがって、音楽を良好に車室内へ伝達することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る車両用ドアミラー装置では、電動格納機構の作動音によって車両の乗員の快適性が損なわれることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1の実施形態>
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両用ドアミラー装置10(以下、単にドアミラー装置10という)が搭載された車両12の部分的な構成が斜視図にて示されている。また、図2には、このドアミラー装置10の主要部の構成が概略的な斜視図にて示されている。なお、図中矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印INは車幅内側方向を示している。
【0021】
図1に示されるように、本ドアミラー装置10は、車両12のドア14に固定されたステー16と、このステー16に連結されたドアミラー本体18とを備えている。ドアミラー本体18は、バイザー20を有している。バイザー20は、ステー16に設けられた支軸22(図2参照)を介してステー16に連結されており、ステー16に対して支軸22周りに回動可能とされている。これにより、ドアミラー本体18は、所定の展開位置と格納位置との間で車両12に対して回動可能とされている。
【0022】
ドアミラー本体18が展開位置に配置された状態(図1及び図2図示状態)では、バイザー20に取り付けられた図示しないミラーの反射面が略車両後方を向くようになっている。また、ドアミラー本体18が格納位置に配置された状態では、上記ミラーの反射面が車幅内側方向を向くようになっている。
【0023】
図2に示されるように、ドアミラー本体18は、電動格納機構24を備えている。この電動格納機構24は、モータ26の駆動力を図示しない複数のギヤを介して支軸22に伝達することで、ドアミラー本体18を展開位置と格納位置との間で回動させる構成になっている。
【0024】
なお、本ドアミラー装置10では、電動格納機構24が所謂スマートキーシステムと連動するように構成されている。スマートキーシステムとは、固有の識別情報(ID)を発信する「電子キー」としてのスマートキーと、このスマートキーから発信されたIDを受信し、当該IDと予め記憶された登録情報とを照合する「認証手段」としてのスマートキー制御部とを有する車両用のキーレスエントリーシステムであり、例えばスマートキーを所持した乗員が車両12のドア14に接近すると、該乗員の乗車意思を検知してドア14を開錠すると共に、乗車後はエンジンを始動可能とし、乗員が降車して車両から離れるとドア14を施錠するように構成されている。
【0025】
本第1の実施形態では、乗員が車両12のドア14に接近した際には、車両12に搭載された図示しない制御回路が電動格納機構24のモータ26を作動させることで、ドアミラー本体18が自動的に格納位置から展開位置へと回動されるようになっている(図2の矢印A参照)。また、乗員が降車して車両12から離れた際には、上記制御回路が電動格納機構24のモータ26を作動させることで、ドアミラー本体18が自動的に展開位置から格納位置へと回動されるようになっている(図2の矢印B参照)。
【0026】
また、ドアミラー本体18には、図示しない足元照明ランプが搭載されている。この足元照明ランプは、乗員が車両12のドア14に接近した際に、上記制御回路によって点灯され、乗員の足元に光を照射するようになっている。
【0027】
さらに、本ドアミラー装置10には、演奏手段を構成する一対のオルゴール28、30が設けられている。一方のオルゴール28は、バイザー20に取り付けられた振動板32(音階板)と、ステー16に取り付けられた係合部材34とを有している。
【0028】
係合部材34は、ドアミラー本体18の下方に配置された基板34Aを備えている。基板34Aは、例えばネジ等によりステー16に取り付けられており、ステー16に対して着脱可能とされている。基板34Aの上面には、複数の突起物34Bが設けられている。これらの突起物34Bは、振動板32に対応している。
【0029】
振動板32は、金属材料によって板状に形成されたものであり、櫛状に並んだ複数の櫛歯32Aを備えている。これらの櫛歯32Aは弾かれた際に振動して音(楽音)を発するようになっており、異なる音階の楽音を発する複数の櫛歯32Aが振動板32には設けられている。
【0030】
この振動板32は、複数の櫛歯32Aの先端を基板34Aに対向させた状態でバイザー20に取り付けられており、複数の櫛歯32Aが基板34Aに接近する係合位置と、複数の櫛歯32Aが基板34Aから離間する退避位置(図2に示される位置)との間で、バイザー20に対して変位可能(相対移動可能)とされている。
【0031】
振動板32が係合位置に配置された状態でドアミラー本体18が回動すると、複数の櫛歯32Aが複数の突起物34Bに係合する(当る)ことで、複数の櫛歯32Aが弾かれるようになっている。また、振動板32が退避位置に配置された状態でドアミラー本体18が回動すると、複数の櫛歯32Aが複数の突起物34Bの上側を離間して回動し、複数の櫛歯32Aと複数の突起物34Bとの係合が回避されるようになっている。
【0032】
また、基板34Aと支軸22との間には、オルゴール28を構成するガイド36が設けられている。このガイド36は、振動板32をドアミラー本体18に対して係合位置と退避位置との間で変位させるためのものであり、上下二段の段違いに配置された上側摺動路38と下側摺動路40とを備えている。
【0033】
上側摺動路38は、車両後方側の端部が急激な下り斜面38Aとされており、この下り斜面38Aの下端部は微少な段差を介して下側摺動路40の車両後方側端部に連続している。また、下側摺動路40は、車両前方側の端部が急激な上り斜面40Aとされており、この上り斜面40Aの上端部は微少な段差を介して上側摺動路38の車両前方側端部に連続している。これらの上側摺動路38及び下側摺動路40は、振動板32に設けられた摺動片32Bに対応している。
【0034】
摺動片32Bは、略L字状に形成され、振動板32の本体部から支軸22側へ突出しており、先端を下側(ガイド36側)へ向けて突出させている。摺動片32Bの先端は、ドアミラー本体18が展開位置から格納位置へと回動する際には上側摺動路38と摺動するようになっている。この場合、振動板32は、ドアミラー本体18に対して退避位置に保持された状態でドアミラー本体18と共に回動される。そして、ドアミラー本体18が格納位置に接近すると、摺動片32Bの先端が上側摺動路38の下り斜面38Aと摺動することで振動板32が基板34Aに接近する。そして、ドアミラー本体18が格納位置に達すると、摺動片32Bの先端が下り斜面38Aの下端部の段差を落下して下側摺動路40に当接する。これにより、振動板32が係合位置に配置される。
【0035】
ドアミラー本体18が格納位置から展開位置へ回動する際には、摺動片32Bの先端は、下側摺動路40と摺動する。この場合、振動板32は、ドアミラー本体18に対して係合位置に保持された状態でドアミラー本体18と共に回動される。このため、当該回動時には、振動板32の複数の櫛歯32Aが係合部材34の複数の突起物34Bに弾かれて楽音を発する。これにより、所定の音楽が奏でられるようになっている。
【0036】
そして、ドアミラー本体18が展開位置に接近すると、摺動片32Bの先端が下側摺動路40の上り斜面40Aと摺動することで振動板32が基板34Aから離間する。そして、ドアミラー本体18が展開位置に達すると、摺動片32Bの先端が上り斜面40Aの上端部の段差(図示省略)を落下して上側摺動路38に当接する。これにより、振動板32が退避位置に配置される。
【0037】
一方、前述した他方のオルゴール30は、上述したオルゴール28を介して支軸22と反対側に配置されている。このオルゴール30は、上述したオルゴール28と基本的に同様の構成とされており、振動板44と係合部材44とガイド46とを備えている。振動板44及び係合部材44は、上述した振動板32及び係合部材34と基本的に同様の構成とされているが、ガイド46の構成が上述したガイド36の構成と異なっている。
【0038】
このガイド46は、上述したガイド36と同様に上側摺動路48及び下側摺動路50を備えているが、上側摺動路48は、車両前方側に急激な下り斜面48Aを有しており、この下り斜面48Aの下端部は微少な段差を介して下側摺動路50の車両前方側端部に連続している。また、下側摺動路50は、車両後方側の端部が急激な上り斜面50Aとされており、この上り斜面50Aの上端部は微少な段差を介して上側摺動路48の車両後方側端部に連続している。これらの上側摺動路48及び下側摺動路50は、振動板44に設けられた摺動片42Bに対応している。
【0039】
摺動片42Bの先端は、ドアミラー本体18が展開位置から格納位置へと回動する際には下側摺動路50と摺動するようになっている。この場合、振動板44は、ドアミラー本体18に対して係合位置(図2に示される位置)に保持された状態でドアミラー本体18と共に回動される。このため、当該回動時には、振動板44の複数の櫛歯42Aが係合部材44の複数の突起物44Bに弾かれて楽音を発する。これにより、所定の音楽が奏でられるようになっている。なお、本第1の実施形態では、オルゴール30は、オルゴール28が奏でる音楽とは異なる音楽を奏でるように構成されている。
【0040】
そして、ドアミラー本体18が格納位置に接近すると、摺動片42Bの先端が下側摺動路50の上り斜面50Aと摺動することで振動板44が基板44Aから離間する。そして、ドアミラー本体18が格納位置に達すると、摺動片42Bの先端が上り斜面50Aの上端部の段差を落下して上側摺動路48に当接する。これにより、振動板44が退避位置に配置される。
【0041】
ドアミラー本体18が格納位置から展開位置へ回動する際には、摺動片42Bの先端は、上側摺動路48と摺動する。この場合、振動板44は、ドアミラー本体18に対して退避位置に保持された状態でドアミラー本体18と共に回動される。そして、ドアミラー本体18が展開位置に接近すると、摺動片42Bの先端が上側摺動路48の下り斜面48Aと摺動することで振動板44が基板44Aに接近する。そして、ドアミラー本体18が展開位置に達すると、摺動片42Bの先端が下り斜面48Aの下端部の段差(図示省略)を落下して下側摺動路50に当接する。これにより、振動板44が係合位置に配置される。
【0042】
なお、上述した振動板32、42と係合部材34、44には、防錆剤がコーティングされており、これらの部材が雨滴などの付着によって劣化することを防止するようになっている。
【0043】
また、図2に示されるように、ステー16には、ホーン状(筒状)に形成された音楽伝達部16Aが設けられている。この音楽伝達部16Aは、オルゴール28、30が奏でる音楽を車室内へ伝達するようになっている。
【0044】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について説明する。
【0045】
上記構成のドアミラー装置10では、乗員が車両12のドア14に接近すると、図示しない制御回路が電動格納機構24のモータ26を作動させることで、ドアミラー本体18が自動的に格納位置から展開位置へと回動される。このとき、ドアミラー本体18に取り付けられた振動板32の複数の櫛歯32Aが、ステー16に取り付けられた係合部材34の複数の突起物34Bに弾かれて楽音を発することにより、一方のオルゴール28が音楽を奏する。
【0046】
また、乗員が降車して車両12から離れると、上記制御回路が電動格納機構24のモータ26を作動させることで、ドアミラー本体18が自動的に展開位置から格納位置へと回動される。このとき、ドアミラー本体18に取り付けられた振動板44の複数の櫛歯42Aが、ステー16に取り付けられた係合部材44の複数の突起物44Bに弾かれて楽音を発することにより、他方のオルゴール30が音楽を奏する。
【0047】
このように、本ドアミラー装置10では、ドアミラー本体18の回動時(すなわち電動格納機構24の作動時)には、オルゴール28、30によって音楽が奏でられるため、この音楽によって電動格納機構24の作動音(モータ26や図示しないギヤが発するメカニカルノイズ)を聞こえにくくすることができる。したがって、電動格納機構24の作動音によって乗員の快適性が損なわれることを抑制できる。しかも、オルゴール28、30の音が奏でられることにより、乗員を聴覚的にもてなすような効果(所謂おもてなし効果)が得られるため、一般的なドアミラー装置よりも商品価値を向上させることができる。
【0048】
また、乗員が車両12に乗車する際には、ドアミラー本体18に設けられた図示しない足元照明ランプが乗員の足元に光を照射するため、オルゴール28が奏でる音楽との相乗効果によって、おもてなし効果を向上させることができる。また、足元照明ランプの光が見えにくい日中であっても、オルゴール28、30の音によって乗員をもてなすことができる。
【0049】
さらに、このドアミラー装置10では、係合部材34、44がステー16に対して着脱可能に取り付けられている。このため、振動板32、42との係合により異なる音楽を奏する複数種類の係合部材34、44(複数の突起物34B、44Bの各突出量や配置が異なるもの)を用意しておけば、係合部材34、44の交換によって、奏でられる音楽を乗員(ユーザー)の好みに応じて容易に変更することができる。しかも、このドアミラー装置10では、一対のオルゴール28、30を備えているため、ドアミラー本体18の展開時と格納時とで異なる音楽を奏することができ、ユーザーの選択自由度が拡大する。
【0050】
また、このドアミラー装置10では、ドアミラー本体18に取り付けられた振動板32、42が、ステー16に取り付けられた係合部材34、44と係合することで音楽が奏でられるので、簡単な構成で音楽を奏でることができる。したがって、僅かなコストアップで商品価値を向上させることができる。
【0051】
また、このドアミラー装置10では、ドアミラー本体18の回動時には、振動板32、42の摺動片32B、42Bが、ガイド36、46と摺動することで、振動板32、42がドアミラー本体18に対して係合位置と退避位置との間で変位される。これにより、振動板32、42と係合部材34、44(複数の突起物34B、44B)との係合の有無が自動的に切り替えられ、ドアミラー本体18の回動方向に応じてオルゴール28、30の作動の有無が切り替えられる。したがって、簡単な構成でオルゴール28、30の作動の有無を切り替えることができる。
【0052】
また、このドアミラー装置10では、オルゴール28、30が奏でる音楽が、ステー16に設けられたホーン状の音楽伝達部16Aによって車室内へ伝達される。このため、音楽を良好に車室内へ伝達することができ、車室内の乗員をもてなすことができる。
【0053】
なお、上記第1の実施形態に係るドアミラー装置10では、ドアミラー本体18の展開時と格納時とでそれぞれ異なる音楽を奏でるために、一対のオルゴール28、30が搭載された構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。
【0054】
例えば、一方の振動板32が展開方向(図2の矢印A方向)及び格納方向(図2の矢印B方向)の何れの方向でも音が奏でられる双方向の振動板である場合には、この振動板32をドアミラー本体18に対して長手方向(図2の左右方向)にスライドさせる駆動機構(バネを用いたものや、電動のアクチュエータ等)を搭載することで、他方の振動板42及びガイド36、46を省略することができる。この場合、ドアミラー本体18の展開時には振動板32を係合部材34に係合させ、ドアミラー本体18の格納時には振動板32を係合部材44に係合させる構成になる。この構成の場合でも、ドアミラー本体18の展開時と格納時とでそれぞれ異なる音楽を奏でることができる。
【0055】
また例えば、一方の振動板32が上述の如き双方向の振動板である場合には、当該振動板32をドアミラー本体18(バイザー20)に固定すると共に、係合部材34、44を駆動機構(バネを用いたものや、電動のアクチュエータ等)によりステー16に対して車幅方向(図2の左右方向)にスライドさせる構成にすることで、他方の振動板42及びガイド36、46を省略することができる。この場合も同様に、ドアミラー本体18の展開時には振動板32を係合部材34に係合させ、ドアミラー本体18の格納時には振動板32を係合部材44に係合させることにより、展開時と格納時とでそれぞれ異なる音楽を奏でることができる。
【0056】
また、上記第1の実施形態に係るドアミラー装置10では、電動格納機構24が所謂キーレスエントリーシステムと連動する構成にしたが、本発明はこれに限らず、例えば、電動格納機構24がイグニッションスイッチの操作によって作動される構成にしてもよいし、ドアミラー専用のスイッチの操作によって作動される構成にしてもよい。
【0057】
さらに、上記第1の実施形態に係るドアミラー装置10では、演奏手段としてオルゴール28、30が採用された構成にしたが、本発明はこれに限らず、例えば、ドアミラー本体18及びステー16の何れか一方に取り付けられた複数の弦と、何れか他方に設けられた突起などにより演奏手段を構成してもよい。この場合、ドアミラー本体18の回動時に、上記複数の弦を上記突起により弾くことで音楽を奏でる構成になる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0058】
図3には、本発明の第2の実施形態に係る車両用ドアミラー装置60の主要部の構成が概略的な斜視図にて示されている。このドアミラー装置60は、前記第1の実施形態に係るドアミラー装置10と基本的に同様の構成とされているが、このドアミラー装置60は、前記第1の実施形態に係るオルゴール28、30の代わりに、別のオルゴール62(演奏手段)を備えている。
【0059】
このオルゴール62は、振動板64と係合部材66とを備えている。振動板64は、前記第1の実施形態に係る振動板32(又は振動板42)と基本的に同様の構成とされているが、摺動片32B(又は摺動片42B)が省略された構成になっている。この振動板64は、ドアミラー本体18のバイザー20に固定されている。
【0060】
また、係合部材66は、前記第1の実施形態と同様に、振動板64の下方でステー16に取り付けられた基板68と、この基板68に形成された複数の貫通孔72(図4参照)に挿入された複数の突起物74とを有している。これらの突起物74は、基板68(ステー16)に対して上下方向に相対移動可能とされており、基板68の上側へ突出する突出状態と、基板68の下側へ退避する退避状態とをとり得るようになっている。これらの突起物74は、図5に示される突起物制御機構76(図3では図示省略)によって突出状態と退避状態とに駆動される。
【0061】
突起物制御機構76は、係合部材66の側方でステー16に固定された箱状のハウジング78を備えている。このハウジング78の一側の側壁(図5では右側の側壁)には、角棒状に形成された複数の棒材80が取り付けられている。これらの棒材80は、平行に並んで配置されており、各々がハウジング78に対して個別に長手方向にスライド可能とされている(図5の矢印C及び矢印D参照)。
【0062】
ハウジング78の内部には、図示しない複数のモータが収容されており、これらのモータによって各棒材80がハウジング78に対して個別に長手方向にスライドされる(各棒材80がハウジング78から個別に突出・退避される)。
【0063】
各棒材80は、係合部材66の基板68の下側に配置されており(図4(A)参照)、各棒材80がハウジング78から突出すると、各棒材80の先端部が各突起物74の下端部に当接するようになっている(図4(B)参照)。
【0064】
図4(A)、(B)に示されるように、各棒材80の先端部には傾斜面を有する調整爪80Aが設けられており、各突起物74の下端部には傾斜した切欠部74Aが設けられている。このため、各突起物74の下端部が各棒材80の調整爪80Aによって押されると、各突起物74が基板68の上側へ突出するようになっている。しかもこの場合、各棒材80のスライド量を調節することで、各突起物74の突出量(基板68の上面からの突出量。以下、単に突出量という)を調節できるようになっている。
【0065】
上記構成の突起物制御機構76は、図6に示されるように、制御装置82に電気的に接続されている。この制御装置82は、車両12に搭載されており、無線通信受信部84と、音源データ演算処理部86と、突起物制御回路88とを備えている。無線通信受信部84は、制御装置82とは別体の音源データ作成装置(本第1の実施形態では携帯電話90。記憶媒体)との間で無線通信を行うように構成されており、携帯電話90によって作成された音源データを受信することができる。
【0066】
無線通信受信部84は、受信した音源データを音源データ演算処理部86へ送信する。音源データ演算処理部86は、受信した音源データに基づいて複数の突起物74の各突出量を算出し、当該算出結果を突起物制御回路88へ送信する。突起物制御回路88は、受信した算出結果に対応する制御信号を突起物制御機構76へ送信し、突起物制御機構76を作動させる。これにより、突起物制御機構76が複数の棒材80を個別にスライドさせて、複数の突起物74の各突出量を個別に変更する。これにより、複数の突起物74が上記音源データに対応した突出状態になる。
【0067】
この状態で、ドアミラー本体18が回動すると、振動板64に設けられた複数の櫛歯64Aが複数の突起物74に弾かれて楽音を発するようになっている。しかも、上述した制御装置82は、複数の音源データを記憶可能な記憶装置(図示省略)を備えており、ドアミラー本体18の回動方向(図3の矢印A方向及び矢印B方向)に応じて複数の突起物74の突出状態を変更するようになっている。これにより、ドアミラー本体18が展開位置から格納位置へ回動する場合と、格納位置から展開位置へ回動する場合とで、それぞれ異なる音楽が奏でられるようになっている。
【0068】
上記構成のドアミラー装置60においても、ドアミラー本体18の回動時(すなわち電動格納機構24の作動時)には、オルゴール62によって音楽が奏でられるため、この音楽によって電動格納機構24の作動音を聞こえにくくすることができる。したがって、電動格納機構24の作動音によって乗員の快適性が損なわれることを抑制できる。
【0069】
しかも、このドアミラー装置60では、乗員(ユーザー)が携帯電話90などにより、好みに応じて音源データを作製し、オルゴール62が奏でる音楽を自由に変更することができるため、ユーザーの選択の自由度を大幅に向上させることができ、商品価値を大幅に向上させることができる。
【0070】
次に、上記第2の実施形態の変形例について説明する。
<第1の変形例>
上記第2の実施形態では、制御装置82が携帯電話90との間で無線通信により音源データを受信する構成にしたが、本発明はこれに限らず、例えば、図7に示される制御装置92のように構成してもよい。この制御装置92は、前述した制御装置82と基本的に同様の構成とされているが、この制御装置92では、無線通信受信部84の代わりにメディア接続口94が設けられている。
【0071】
このメディア接続口94は、USBメモリやSDカード等の記憶メディア96(記憶媒体)を接続するためのものであり、このメディア接続口94に接続された記憶メディア96は、音源データ演算処理部86と電気的に接続される。このため、記憶メディア96に記憶された音源データを音源データ演算処理部86に入力することができる。したがって、この構成の場合には、パソコン98などで作成した音楽データを、記憶メディア96を介して音源データ演算処理部86に入力することができる。
<第2の変形例>
上記第2の実施形態では、係合部材66の複数の突起物74を、複数の棒材80を備えた突起物制御機構76(アクチュエータ)によって駆動する構成にしたが、本発明はこれに限らず、例えば、図8に示されるようなソレノイド106を複数備えた突起物制御機構100(図9参照)によって複数の突起物74を駆動する構成にしてもよい。
【0072】
この突起物制御機構100は、基板68の代わりになるハウジング102を備えており、このハウジング102の上部には、各々に突起物74が挿入された複数の貫通孔104が形成されている。各突起物74は、ハウジング102に対して上下方向に相対移動可能とされている。また、ハウジング102の内部には複数の突起物74に対応して複数のソレノイド106が設けられており、これらのソレノイド106が磁力を発生させることで、各突起物74がハウジング102の上面から突出するようになっている。これらのソレノイド106は、導線108を介して突起物制御回路88に接続されており、突起物制御回路88が各ソレノイド106への電力の供給を個別に制御することで、各ソレノイド106の磁力が個別に調節される。これにより、各突起物74の突出量を個別に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用ドアミラー装置が搭載された車両の部分的な構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用ドアミラー装置の主要部の構成を示す概略的な斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る車両用ドアミラー装置の主要部の構成を示す概略的な斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る車両用ドアミラー装置の構成部材である係合部材の部分的な構成を示す概略的な断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車両用ドアミラー装置の構成部材である突起物制御機構の構成を示す概略的な平面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る車両用ドアミラー装置の構成部材である制御装置を含む周辺の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の第1変形例に係る制御装置を含む周辺の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に第2変形例に係るソレノイド機構の斜視図である。
【図9】図8に示されるソレノイド機構を構成するソレノイドの斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
10 車両用ドアミラー装置
12 車両
16 ステー
16A 音楽伝達部
18 ドアミラー本体
24 電動格納機構
26 モータ
28 オルゴール(演奏手段)
30 オルゴール(演奏手段)
32 振動板(発音部材)
34 係合部材
34B 突起物
38 ガイド
42 振動板(発音部材)
44 係合部材
44B 突起物
48 ガイド
60 車両用ドアミラー装置
62 オルゴール(演奏手段)
64 振動板(発音部材)
66 係合部材
74 突起物
76 突起物制御機構
82 制御装置
90 携帯電話(記憶媒体)
96 記憶メディア(記憶媒体)
100 突起物制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固定されるステーに対して回動可能に連結されたドアミラー本体と、
モータの駆動力によって前記ドアミラー本体を前記ステーに対して回動させる電動格納機構と、
前記ドアミラー本体の回動時に互いに係合する発音部材及び係合部材を有し、前記係合によって前記発音部材が楽音を発することにより音楽を奏する演奏手段と、
を備えた車両用ドアミラー装置。
【請求項2】
前記発音部材は、前記ドアミラー本体及び前記ステーの何れか一方に設けられ、弾かれることで楽音を発する振動板とされ、前記係合部材は、前記ドアミラー本体及び前記ステーの何れか他方に設けられ、前記回動時に前記振動板を弾く複数の突起物を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアミラー装置。
【請求項3】
前記係合部材は、前記他方に対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアミラー装置。
【請求項4】
前記振動板は、前記回動時に前記複数の突起物と係合する係合位置と、前記回動時に前記複数の突起物と係合しない退避位置との間で前記一方に対して変位可能に取り付けられると共に、前記振動板を前記係合位置と前記退避位置との間で変位させる変位手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用ドアミラー装置。
【請求項5】
前記変位手段は、前記他方に設けられ、前記回動時に前記振動板と摺動するガイドとされていることを特徴とする請求項4に記載の車両用ドアミラー装置。
【請求項6】
前記複数の突起物は、前記ステーに対する相対移動により各突出量を個別に変更可能とされると共に、前記複数の突起物を駆動して前記複数の突起物の各突出量を個別に変更する突起物制御機構と、所定の記憶媒体に記憶された音源データに基づいて前記複数の突起物の各突出量を算出し、当該算出結果に基づいて前記突起物制御機構の作動を制御する制御装置とを有することを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアミラー装置。
【請求項7】
前記ステーは、前記演奏手段が奏でる音楽を車室内に伝達する音楽伝達部を有することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両用ドアミラー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate