説明

車両用ドアロックシステム

【課題】ロックレバーがモータの動力によってアンロック位置またはロック位置に移動したときの当接音を減少させる。
【解決手段】モータ11の動力によるウォームホイール12の回転によって、ロックレバー13がアンロック位置またはロック位置に移動したとき、操作ケーブル3の接触部32は、弾性部材22に染み込んだ高粘性のグリスGに接触する。グリスGは、操作ケーブル3の移動方向に対して粘性抵抗による制動力を付与して操作ケーブル3の連結部分から発生する当接音を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロック及び手動ロック操作ノブを備える車両用ドアロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアロックシステムにおいては、ドアに設けられるドアハンドルのドア開操作を有効にしてドアを開けることができるアンロック状態及びドア開操作を無効にしてドアを開けることができないロック状態に切り替え可能なドアロックと、車室内からドアロックをアンロック状態及びロック状態に切り替えるときに操作される手動ロック操作ノブとを備える。
【0003】
ドアロックは、モータと、モータの動力により回転可能な回転体(ウォームホイール)と、モータの動力による回転体の回転によって、アンロック状態とするアンロック位置及びロック状態とするロック位置に移動可能であると共に、手動ロック操作ノブに操作ケーブルを介して連結され、手動ロック操作ノブの操作によってもアンロック位置及びロック位置に移動可能なロックレバー等を含んで構成される(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−218425号公報
【特許文献2】特開2008−248591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような車両用ドアロックシステムにおいては、モータの動力による回転体の回転によって、ロックレバーをアンロック位置またはロック位置へ移動させる際、ロックレバーが移動方向へ高速度で移動してロックレバーの移動量を規制するストッパに勢いよく衝突することから、ロックレバーが移動方向へストッパを変形させて規制位置を若干超えた位置へ引き込まれる引き込み現象、及びロックレバーがストッパに衝突したときの反発によりロックレバーが移動方向と反対方向へ微移動跳ね返る跳ね返り現象が発生する。これらの引き込み現象及び跳ね返り現象が発生すると、ロックレバーの引き込み及び跳ね返りが操作ケーブルに直接伝達されて、操作ケーブルとロックレバーとの連結部分、及び操作ケーブルと手動ロック操作ノブとの連結部分等から当接音が発生し、品質低下を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、ロックレバーがモータの動力によってアンロック位置またはロック位置に移動したときの当接音を減少させることを可能にした車両用ドアロックシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
第1の発明は、車体またはドアのいずれか一方に設けられアンロック位置及びロック位置に操作可能な手動ロック操作ノブと、前記いずれか一方に設けられ、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいてアンロック状態及びロック状態に切り替え可能なドアロックと、前記手動ロック操作ノブの操作を前記ドアロックに伝達可能な操作ケーブルとを備えた車両用ドアロックシステムにおいて、前記ドアロックは、前記いずれか一方に固定されるベース部材と、前記ベース部材に揺動可能に枢支されると共に、一端が前記手動ロック操作ノブに連結された前記操作ケーブルの他端に連結されて、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいて前記アンロック状態とするアンロック位置及び前記ロック状態とするロック位置に移動可能なロックレバーと、前記ベース部材に取り付けられるモータと、前記ベース部材に枢支され前記モータの動力により回転し前記ロックレバーを前記アンロック位置及び前記ロック位置に移動させる回転体と、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動経路にあって、前記ロックレバーが前記回転体の回転によって前記アンロック位置または前記ロック位置に移動したとき、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動方向に沿って接触し、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動方向に対して摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗付与手段とを含むものとする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記摩擦抵抗付与手段は、軟質の弾性部材とする。
【0009】
第1、2の発明においては、ロックレバーがアンロック位置またはロック位置に移動したとき、操作ケーブルまたはロックレバーに対して摩擦抵抗付与手段の摩擦抵抗による制動力が作用するため、ロックレバーがモータの動力による回転体の回転によってアンロック位置またはロック位置に勢いよく移動した際に発生し得る引き込み及び跳ね返り現象による当接音を減少させることができる。
【0010】
第3の発明は、車体またはドアのいずれか一方に設けられアンロック位置及びロック位置に操作可能な手動ロック操作ノブと、前記いずれか一方に設けられ、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいてアンロック状態及びロック状態に切り替え可能なドアロックと、前記手動ロック操作ノブの操作を前記ドアロックに伝達可能な操作ケーブルとを備えた車両用ドアロックシステムにおいて、前記ドアロックは、前記いずれか一方に固定されるベース部材と、前記ベース部材に揺動可能に枢支されると共に、一端が前記手動ロック操作ノブに連結された前記操作ケーブルの他端に連結されて、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいて前記アンロック状態とするアンロック位置及び前記ロック状態とするロック位置に移動可能なロックレバーと、前記ベース部材に取り付けられるモータと、前記ベース部材に枢支され前記モータの動力により回転し前記ロックレバーを前記アンロック位置及び前記ロック位置に移動させる回転体と、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動経路にあって、前記ロックレバーが前記回転体の回転によって前記アンロック位置または前記ロック位置に移動したとき、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動方向に沿って接触し、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動方向に対して粘性抵抗を付与する粘性抵抗付与手段とを備えるものとする。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、前記粘性抵抗付与手段は、高粘度のグリスを軟質の弾性部材に染み込ませてなるものとする。
【0012】
第3、4の発明においては、ロックレバーがアンロック位置またはロック位置に移動したとき、操作ケーブルまたはロックレバーに対して粘性抵抗付与手段の粘性抵抗による制動力が作用するため、ロックレバーがモータの動力による回転体の回転によってアンロック位置またはロック位置に勢いよく移動した際に発生し得る引き込み及び跳ね返り現象による当接音を減少させることができる。
【0013】
第5の発明は、車体またはドアのいずれか一方に設けられアンロック位置及びロック位置に操作可能な手動ロック操作ノブと、前記いずれか一方に設けられ、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいてアンロック状態及びロック状態に切り替え可能なドアロックと、前記手動ロック操作ノブの操作を前記ドアロックに伝達可能な操作ケーブルとを備えた車両用ドアロックシステムにおいて、前記ドアロックは、前記いずれか一方に固定されるベース部材と、前記ベース部材に揺動可能に枢支されると共に、一端が前記手動ロック操作ノブに連結された前記操作ケーブルの他端に連結されて、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいて前記アンロック状態とするアンロック位置及び前記ロック状態とするロック位置に移動可能なロックレバーと、前記ベース部材に取り付けられるモータと、前記ベース部材に枢支され前記モータの動力により回転し前記ロックレバーを前記アンロック位置及び前記ロック位置に移動させる回転体と、前記操作ケーブルの前記一端に固着される球状端末部と当該球状端末部が連結される前記手動ロック操作ノブの連結溝との間にあって、前記ロックレバーが前記回転体の回転によってアンロック位置またはロック位置に移動したとき、前記操作ケーブルの軸線方向に対して弾性作用を有する弾性部材とを含むものとする。
【0014】
第5の発明においては、操作ケーブルの一端に固着される球状端末部と手動ロック操作ノブの連結溝との間に設けた弾性部材によって、ロックレバーがモータの動力による回転体の回転によってアンロック位置またはロック位置に勢いよく移動した際に発生し得る引き込み及び跳ね返り現象による当接音を減少させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ロックレバーがモータの動力による回転体の回転によってアンロック位置またはロック位置に勢いよく移動した際に発生し得る引き込み及び跳ね返り現象による当接音を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した車両の側面図である。
【図2】本発明におけるドアロックシステムの側面図である。
【図3】図2におけるIII−III線横断面図である。
【図4】手動ロック操作ノブの斜視図である。
【図5】斜め下方から見た手動ロック操作ノブの斜視図である。
【図6】蓋が開いた状態のドアロックの側面図である。
【図7】蓋が閉じた状態のドアロックの側面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線横断面拡大図である。
【図9】ロック状態における操作機構部の側面図である。
【図10】アンロック状態における操作機構部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図1、2における下方、図3、6〜10における左方を「前方」とし、図1、2における上方、図3〜6〜10における右方を「後方」する。
【0018】
図1、2に示すように、ドアロックシステム1は、自動車のフロントドア(以下、ドアと記す)Dの後端内側に取り付けられるドアロック2と、ドアDの車内側に配置され、操作力を伝達可能なボーデンケーブルにより構成される操作ケーブル3を介してドアロック2の後述のロックレバー13に連結される手動ロック操作ノブ4とを備える。
【0019】
図2、6、7に示すように、ドアロック2は、車体側の図示略のストライカに噛合することによりドアDを閉鎖状態に保持する噛合機構部5と、アンロック状態(ドアDの車外側に配置されるアウトサイドハンドルOH及び車内側に配置されるインサイドハンドルIHのドア開操作によりドアDを開けることができる状態)及びロック状態(アウトサイドハンドルOH及びインサイドハンドルIHをドア開操作してもドアDを開けることができない状態)に切り替え可能な操作機構部6とを含んで構成される。なお、図2に示すドアロック2は、操作機構部6の内部構造を明示するため、噛合機構部5及び操作機構部6におけるケーシング10の一部を省略して示す。
【0020】
図2、3に示すように、手動ロック操作ノブ4は、ドアDの車内側に固定されるベース部材7に上下方向の軸8により枢支され、図3に実線で示すロック位置(操作機構部6がロック状態となる位置)と、当該ロック位置から時計方向へ所定角度回動した図3に2点鎖線で示すアンロック位置(操作機構部6がアンロック状態となる位置)に室内から手動操作可能であって、回動端部に形成される丸孔状の連結溝41には、操作ケーブル3の前端に固着された金属製の球状端末部31が嵌合連結される。なお、インサイドハンドルIHは、ベース部材7における手動ロック操作ノブ4の下側に車室内からドア開操作可能に配置される。また、ベース部材7には、手動ロック操作ノブ4と当接することで手動ロック操作ノブ4のロック位置及びアンロック位置を規制するゴム等の弾性部材によって形成されるストッパラバー7aが設けられる。
【0021】
操作ケーブル3に固着された球状端末部31には、ゴム等の弾性部材により形成されるブーツ9が被覆される。
【0022】
ブーツ9は、球状端末部31に操作ケーブル3の軸線方向(移動方向)から被覆できるように、主に図4に明示されるように、前面が開口するほぼ半球状であって、かつ球状端末部31を手動ロック操作ノブ4の連結溝41内に嵌合可能とするための寸法公差によって生じる球状端末部31と連結溝41間における操作ケーブル3の軸線方向のガタを吸収し得るように、操作ケーブル3の軸線方向への弾性作用をもって球状端末部31と連結溝41との間から発生する当接音を抑止する。
【0023】
ドアロック2の噛合機構部5は、ドアDに固定されるボディ51内に枢支され、車体側のストライカと係合可能な図示略のラッチと、ボディ51内に枢支され、ラッチに係合してラッチの回動を阻止可能な図示略のラチェットとを備え、ドアDを閉じると、ラッチがストライカに噛合すると共に、ラチェットがラッチの回動方向に係合することによってドアDを閉鎖状態に保持する。
【0024】
図9、10に示すように、ドアロック2の操作機構部6は、噛合機構部5のボディ51に固定されるベース部材をなすケーシング10内に、正逆回転可能なモータ11と、モータ11の動力により回転可能なウォームホイール(回転体)12と、モータ11の動力、手動ロック操作ノブ4及びドアDの車外側に設けられるキーシリンダKCの操作によって、操作機構部6をアンロック状態及びロック状態に切り替え作動可能なロックレバー13と、ロックレバー13に連動可能なリフトレバー14と、操作力を伝達可能なボーデンケーブルで構成される操作ケーブル15を介してインサイドハンドルIHに連結されるインサイドレバー16と、キーシリンダKCに連結されるキーレバー17と、キーレバー17の作動をロックレバー13に伝達可能な第1、2連結レバー18、19と、アウトサイドハンドルOHに連結されるアウトサイドレバー20等を収容して構成される。なお、図9、10に示す操作機構部6は、内部構造を明示するため、ケーシング10の一部を省略している。
【0025】
図6、7に示すように、ケーシング10には、ケーシング10の下部側面に設けられた開口101を開閉可能な蓋21が連結される。蓋21は、操作ケーブル3、15をロックレバー13、インサイドレバー16にそれぞれ連結する際には図6に示すように開放され、また、連結が終了した後には、防水性、防盗性の向上を図るため図7に示すように閉じられる。
【0026】
蓋21の内側面、すなわち蓋21を閉じた状態にあるとき操作ケーブル3に対向して近接する面には、図8に示すように、スポンジ等の軟質の弾性材料で形成される弾性部材22が操作ケーブル3の移動経路に沿って貼着される。なお、弾性部材22の作用については、後で詳細に説明する。
【0027】
キーレバー17は、ケーシング10に車内外方向を向く軸回りに回動可能に枢支されると共に、キーシリンダKCのロック操作に基づいて、図2、9、10に示す中立位置からロック方向(図2、9、10において反時計方向)へ所定角度回動し、また同じくアンロック操作に基づいて、中立位置からアンロック方向(図2、9、10において時計方向)へ所定角度回動する。
【0028】
第1、2連結レバー18、19は、ケーシング10に車内外方向を向く軸23により枢支され、キーレバー17の作動をロックレバー13に伝達可能とするため、第1連結レバー18の上端部181は、キーレバー17に設けられた長孔171に連結され、第2連結レバー19の下端部は、ロックレバー13の上端部に回動可能に連結される。
【0029】
ロックレバー13は、ケーシング10に車内外方向を向く軸24により枢支され、回転面に突設され、かつ外周にゴム等の弾性体を被覆した被ストッパ部132が、図10に示すように、ケーシング10に設けられたアンロック用ストッパ102に当接して操作機構部6をアンロック状態とするアンロック位置と、図9に示すように、アンロック位置から反時計方向へ所定角度回動してケーシング10に設けられたロック用ストッパ103に当接して操作機構部6をロック状態とするロック位置に移動可能であって、ケーシング10に支持されたばね25の付勢力によってアンロック位置及びロック位置にそれぞれ弾性保持される。
【0030】
ロックレバー13の下部に設けられた連結孔131には、前端が手動ロック操作ノブ4に連結された操作ケーブル3の後端に形成されるクランク状の折曲端33が図8に示すように挿入されて連結される。これにより、手動ロック操作ノブ4とロックレバー13とは操作ケーブル3を介して連結され、手動ロック操作ノブ4のアンロック操作及びロック操作は、操作ケーブル3を介してロックレバー13に伝達されて、ロックレバー13は、手動ロック操作ノブ4の操作に基づいて、アンロック位置及びロック位置に移動する。また、ロックレバー13の上端部は、第2連結レバー19に連結される。これにより、キーシリンダKCの操作は、キーレバー17、第1、2連結レバー18、19を介してロックレバー13に伝達されて、ロックレバー13は、キーシリンダKCの操作に基づいてもアンロック位置及びロック位置に移動する。
【0031】
図8に示すように、ロックレバー13の連結孔131には、操作ケーブル3の折曲端33が連結孔131の内周面にゴム等により形成される円筒状の弾性部材29が設けられる。弾性部材29は、折曲端33を連結孔131に挿入可能とするための隙間及び寸法公差によって生じる折曲端33と連結孔131内とのガタを無くして、折曲端33と連結孔131内との間から発生するガタ音を抑止する。
【0032】
ロックレバー13には、さらに遠心方向へ延出し、ウォームホイール12の後述の係合突部121、122が当接可能な第1、2係合アーム133、134が設けられる。
【0033】
前述のケーシング10の蓋21に貼着された弾性部材22、22は、高粘度のグリスGを染み込んでおり、図8に示すように、ロックレバー13のロック位置(図8に実線で示す位置)の直前位置とロック位置を若干超過したオーバーストローク位置間の範囲、及びロックレバー13のアンロック位置(図8に2点鎖線で示す位置)の直前位置とアンロック位置を若干超過したオーバーストローク位置間の範囲にそれぞれ対応するように、操作ケーブル3の移動方向に沿って所定の幅を有している。
【0034】
図8に示すように、操作ケーブル3における折曲端33の近傍には、操作ケーブル3と一体的に移動可能であって、ロックレバー13がロック位置及びアンロック位置にそれぞれ移動したとき、弾性部材22の表面に操作ケーブル3の移動方向に沿って接触可能な拡径の接触部32が設けられる。
【0035】
上述により、弾性部材22に染み込んでいるグリスGは、粘性抵抗付与手段として、ロックレバー13がロック位置またはアンロック位置に移動したとき、接触部32が弾性部材22の表面に接触することによって、接触部32を介して操作ケーブル3の移動方向(軸線方向)に対して粘性抵抗による制動力を付与する。これにより、粘性抵抗付与手段は、操作ケーブル3の移動方向へ制動力を付与することにより、ロックレバー13がロック位置またはアンロック位置に移動して被ストッパ部132が各ストッパ102、103に当接した際の引き込み現象及び反発による跳ね返りを抑止することで当接音の減少を図る。
【0036】
なお、グリスGは、必要に応じて省略することも可能である。グリスGを省略した場合には、弾性部材22は、摩擦抵抗付与手段として、ロックレバー13がロック位置またはアンロック位置に移動した際、操作ケーブル3の接触部32に接触することによって、操作ケーブル3の移動方向に対して摩擦抵抗による制動力を付与して、前述とほぼ同様な作用を有する。
また、接触部32を省略することも可能であるが、操作ケーブル3と弾性部材22とが互いに常時接触することから、手動ロック操作ノブ4の操作力を考慮する場合には、接触部32を設けた方が良い。
【0037】
ウォームホイール12は、ケーシング10に車内外方向を向く軸26により枢支され、モータ11の回転軸に止着されたウォーム111に噛合することにより、モータ11の回転により正逆転する。
【0038】
ウォームホイール12の両回転面には、ロックレバー13の第1、2係合アーム133、134に対して当接可能な係合突部121、122が設けられる。なお、ウォームホイール12の両回転面のうち車外側を向く回転面(図9、10において図面奥側の回転面)に設けられる係合突部122は、車内側を向く回転面(図9、10において図面手前側の回転面)に設けられる係合突部121と対象形状であって図9、10に現れないため、符号122を括弧書きで付記して図示は省略する。
【0039】
図10に示すアンロック状態において、操作スイッチのロック操作に基づいて、モータ11がロック方向へ回転すると、ウォームホイール12は、ロック方向(図10において時計方向)へ回転し、係合突部122が第2係合アーム134に対して反時計方向から当接する。これにより、ロックレバー13は、アンロック位置からロック方向(反時計方向)へ向けて揺動し、被ストッパ部132がロック用ストッパ103に当接することによりロック位置に停止する。そして、ウォームホイール12はさらにロック方向へ回転を継続し、ウォームホイール12の係合突部122がロックレバー13の第2係合アーム134から外れると共に、図9に示すように、係合突部121が第1係合アーム133の先端部に対してロックレバー13の揺動不能方向へ当接して、ウォームホイール12の回転は強制的に停止させられる。
【0040】
図9に示すロック状態において、操作スイッチのアンロック操作に基づいて、モータ11がアンロック方向へ回転すると、ウォームホイール12は、アンロック方向(図9において反時計方向)へ回転し、係合突部121が第1係合アーム133に対して時計方向から当接する。これにより、ロックレバー13は、ロック位置からアンロック方向(時計方向)へ向けて揺動し、被ストッパ部132がアンロック用ストッパ102に当接することによりアンロック位置に停止する。そして、ウォームホイール12はさらにアンロック方向へ回転を継続し、ウォームホイール12の係合突部121がロックレバー13の第1係合アーム133から外れると共に、図10に示すように、係合突部122が第2係合アーム134の先端部に対してロックレバー13の揺動不能方向へ当接して、ウォームホイール12の回転は強制的に停止させられる。
【0041】
なお、ロックレバー13の第1、2係合アーム133、134の先端の形状は、ウォームホイール12の係合突部121、122が第1、2係合アーム133、134の先端に当接することでウォームホイール12の回転を強制的に停止させる場合、ロックレバー13に作用する力の方向がロックレバー13の回転中心である軸24に向く方向となるように設定される。また、これに代えて、第1、2係合アーム133、134の先端の形状を、ロックレバー13に作用する力の方向がロックレバー13の回転中心である軸24に対して、ロックレバー13をロック位置へ移動させる際にはロック方向側、また同じくアンロック位置へ移動させる際にはアンロック方向側へそれぞれ偏倚する方向となるように設定しても良い。
【0042】
リフトレバー14は、下部がアウトサイドレバー20に設けられた車内側端部201に前後方向へ所定角度揺動可能に連結されると共に、上部の長溝141がロックレバー13に対して上下方向へ摺動可能に連結されることによって、ロックレバー13のアンロック位置及びロック位置への移動に追従して、図10に示すアンロック位置及び図9に示すロック位置に移動する。
【0043】
アウトサイドレバー20は、ケーシング10の下部に図示略の前後方向を向く軸により枢支されると共に、車外側端部には、上下方向を向く操作力伝達部材27を介してアウトサイドハンドルOHに連結される。これにより、アウトサイドハンドルOHがドア開操作されると、アウトサイドレバー20は、オープン方向(車内側端部201が上方移動する方向)へ所定角度回動し、これに伴って、リフトレバー14は、上方へ移動する。
【0044】
インサイドレバー16は、ケーシング10に車内外方向を向く軸28に枢支されると共に、下端部に設けられた連結部161には、前端がインサイドハンドルIHに連結される操作ケーブル15の後端が連結される。これにより、インサイドハンドルIHがドア開操作されると、インサイドレバー16は、図9、10に示す待機位置からオープン方向(図9、10において時計方向)へ回動してアウトサイドレバー20に下側から当接することによって、アウトサイドレバー20をオープン方向へ回動させる。
【0045】
図10に示す操作機構部6のアンロック状態において、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHをドア開操作した場合には、アウトサイドレバー20のオープン方向への揺動に伴って、リフトレバー14が真上へ移動する。これにより、リフトレバー14に設けられた解除部142がラチェットと一体的に回動可能なオープンレバー52に対して回動方向へ当接し、ラチェットはラッチから離脱する方向へ回動する。この結果、ラッチとストライカとの噛合が外れて、ドアを開くことができる。
【0046】
図9に示す操作機構部6のロック状態においては、アウトサイドハンドルOHまたはインサイドハンドルIHのドア開操作によってアウトサイドレバー20がオープン方向へ回動し、これに伴って、リフトレバー14が上方へ移動しても、リフトレバー14の解除部142がオープンレバー52に対して当接しないため、ドアを開けることはできない。
【0047】
次に、本発明に係わる実施形態の作用について説明する。
図9に示すロック状態(または図10に示すアンロック状態)において、モータ11の動力によって、前述のように、ロックレバー13をアンロック位置(またはロック位置)に移動させると、ロックレバー13の被ストッパ部132がアンロック用ストッパ103(またはロック用ストッパ102)に対して当接する。このとき、ロックレバー13がアンロック位置(またはロック位置)を若干超えた方向へ移動する引き込み現象と、反発力によって、ロックレバー13がロック方向(またはアンロック方向)へ微移動跳ね返る跳ね返り現象とが発生する。
【0048】
引き込み現象が発生すると、ロックレバー13のオーバーストロークは、操作ケーブル3に伝達されて、操作ケーブル3も軸線方向へ微移動し、さらに、手動ロック操作ノブ4にも伝達されることとなる。
【0049】
また、跳ね返り現象が発生すると、ロックレバー13の跳ね返りは、操作ケーブル3に伝達されて操作ケーブル3も軸線方向へ微移動し、さらに手動ロック操作ノブ4にも伝達されることとなる。この結果、従来の技術においては、操作ケーブル3が急激に軸線方向へ微移動することに伴って、操作ケーブル3の折曲端33とロックレバー13の連結孔131間、及び操作ケーブル3の球状端末部31と手動ロック操作ノブ4の連結溝41間から当接音が発生し、ドアロックシステム1の品質を低下させてしまうこととなる。
【0050】
しかし、本実施形態においては、粘性抵抗付与手段(グリスG)の粘性抵抗(または摩擦抵抗付与手段(弾性部材22)の摩擦抵抗)の制動力によって、引き込み現象及び跳ね返り現象が発生した際の操作ケーブル3の軸線方向への急激な微移動を抑制し、弾性部材29によって操作ケーブル3の折曲端33とロックレバー13の連結孔131間から発生する当接音を減少させ、さらに、ブーツ9における操作ケーブル3の軸線方向への弾性作用をもって、操作ケーブル3の球状端末部31と手動ロック操作ノブ4の連結溝41間から発生する当接音を減少させることが可能となる。
【0051】
また、手動ロック操作ノブ4は、ストッパラバー7aによってロック位置及びアンロック位置に規制されるため、手動ロック操作ノブ4とストッパラバー7aとの当接による当接音が発生するが、粘性抵抗付与手段または摩擦抵抗付与手段の制動力によって、引き込み現象による操作ケーブル3の軸線方向への急激な微移動が抑制されることから、手動ロック操作ノブ4とストッパラバー7aとの当接音を減少させることができる。
【0052】
上述の結果、ロックレバー13をモータ11の動力によってアンロック位置(またはロック位置)に移動させた際の当接音を減少させてドアロックシステムの品質向上を図ることができる。
【0053】
なお、本発明においては、本実施形態の如く、粘性抵抗付与手段(グリスG)(または摩擦抵抗付与手段(弾性部材22))、ブーツ9、弾性部材29の全てを必須とするものではなく、それらの少なくも1つ有していればよい。
【0054】
例えば、粘性抵抗付与手段(グリスG)(または摩擦抵抗付与手段(弾性部材22))のみを有している場合においては、粘性抵抗付与手段(グリスG)の粘性抵抗(または摩擦抵抗付与手段(弾性部材22)の摩擦抵抗)による制動力によって、跳ね返り現象が発生した場合の操作ケーブル3の軸線方向への急激な微移動を抑制することが可能であるため、操作ケーブル3の折曲端33とロックレバー13の連結孔131とが互いに当接する当接音、及び操作ケーブル3の球状端末部31と手動ロック操作ノブ4の連結溝41とが互いに当接する当接音を従来の技術よりも減少させることは可能である。また、前記制動力によって、引き込み現象の引き込み量を減少させることが可能であるため、手動ロック操作ノブ4がストッパラバー7aに当接する際の当接音を減少させることができる。
【0055】
また、ブーツ9及び/または弾性部材29を有して、粘性抵抗付与手段(グリスG)(または摩擦抵抗付与手段(弾性部材22))を有していない場合においては、跳ね返り現象により操作ケーブル3が急激に微移動するものの、そのときの微移動に影響によって発生する操作ケーブル3の球状端末部31と手動ロック操作ノブ4の連結溝41とが互いに当接する当接音は、ブーツ9により減少させることが可能であり、操作ケーブル3の折曲端33とロックレバー13の連結孔131とが互いに当接する当接音は弾性部材29によって減少させることが可能である。また、引き込み現象によるロックレバー13の移動は、ブーツ9及び/または弾性部材29によって吸収可能であるため、この場合においても、手動ロック操作ノブ4がストッパラバー7aに当接する際の当接音を減少させることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(i)ドアロック2及び手動ロック操作ノブ4を車体側に設ける。
(ii)モータ11の動力による回転する回転体を、ウオームホイール18に代えて平歯車とする。
(iii)弾性部材22を、操作ケーブル3の移動方向に沿って設けるものに代えて、ロックレバー13の移動方向に沿って設け、ロックレバー13がアンロック位置及び/またはロック位置に移動したとき、ロックレバー13の回転面に接触することで、ロックレバー13に対して粘性抵抗(または摩擦抵抗)による抵抗力を付与するものとする。
【符号の説明】
【0057】
1 ドアロックシステム
2 ドアロック
3 操作ケーブル
4 手動ロック操作ノブ
5 噛合機構部
6 操作機構部
7 ベース部材
7a ストッパラバー
8 軸
9 ブーツ(弾性部材)
10 ケーシング(ベース部材)
11 モータ
12 ウォームホイール(回転体)
13 ロックレバー
14 リフトレバー
15 操作ケーブル
16 インサイドレバー
17 キーレバー
18 第1連結レバー
19 第2連結レバー
20 アウトサイドレバー
21 蓋
22 弾性部材(摩擦抵抗付与手段)
23、24 軸
25 ばね
26 軸
27 操作力伝達部材
28 軸
29 弾性部材
31 球状端末部
32 接触部
33 折曲端
41 連結溝
51 ボディ
52 オープンレバー
101 開口
102 アンロック用ストッパ
103 ロック用ストッパ
111 ウォーム
121、122 係合突部
131 連結孔
132 被ストッパ部
133 第1係合アーム
134 第2係合アーム
141 長溝
142 解除部
161 連結部
171 長孔
181 上端部
201 車内側端部
D ドア
OH アウトサイドハンドル
IH インサイドハンドル
KC キーシリンダ
G グリス(粘性抵抗付与手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体またはドアのいずれか一方に設けられアンロック位置及びロック位置に操作可能な手動ロック操作ノブと、前記いずれか一方に設けられ、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいてアンロック状態及びロック状態に切り替え可能なドアロックと、前記手動ロック操作ノブの操作を前記ドアロックに伝達可能な操作ケーブルとを備えた車両用ドアロックシステムにおいて、
前記ドアロックは、
前記いずれか一方に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に揺動可能に枢支されると共に、一端が前記手動ロック操作ノブに連結された前記操作ケーブルの他端に連結されて、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいて前記アンロック状態とするアンロック位置及び前記ロック状態とするロック位置に移動可能なロックレバーと、
前記ベース部材に取り付けられるモータと、
前記ベース部材に枢支され前記モータの動力により回転し前記ロックレバーを前記アンロック位置及び前記ロック位置に移動させる回転体と、
前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動経路にあって、前記ロックレバーが前記回転体の回転によって前記アンロック位置または前記ロック位置に移動したとき、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動方向に沿って接触し、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動方向に対して摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗付与手段とを含むことを特徴とする車両用ドアロックシステム。
【請求項2】
前記摩擦抵抗付与手段は、軟質の弾性部材であることを特徴とする請求項1記載の車両用ドアロックシステム。
【請求項3】
車体またはドアのいずれか一方に設けられアンロック位置及びロック位置に操作可能な手動ロック操作ノブと、前記いずれか一方に設けられ、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいてアンロック状態及びロック状態に切り替え可能なドアロックと、前記手動ロック操作ノブの操作を前記ドアロックに伝達可能な操作ケーブルとを備えた車両用ドアロックシステムにおいて、
前記ドアロックは、
前記いずれか一方に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に揺動可能に枢支されると共に、一端が前記手動ロック操作ノブに連結された前記操作ケーブルの他端に連結されて、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいて前記アンロック状態とするアンロック位置及び前記ロック状態とするロック位置に移動可能なロックレバーと、
前記ベース部材に取り付けられるモータと、
前記ベース部材に枢支され前記モータの動力により回転し前記ロックレバーを前記アンロック位置及び前記ロック位置に移動させる回転体と、
前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動経路にあって、前記ロックレバーが前記回転体の回転によって前記アンロック位置または前記ロック位置に移動したとき、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動方向に沿って接触し、前記ロックレバーまたは前記操作ケーブルの移動方向に対して粘性抵抗を付与する粘性抵抗付与手段とを備えることを特徴とする車両用ドアロックシステム。
【請求項4】
前記粘性抵抗付与手段は、高粘度のグリスを軟質の弾性部材に染み込ませてなることを特徴とする請求項3記載の車両用ドアロックシステム。
【請求項5】
車体またはドアのいずれか一方に設けられアンロック位置及びロック位置に操作可能な手動ロック操作ノブと、前記いずれか一方に設けられ、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいてアンロック状態及びロック状態に切り替え可能なドアロックと、前記手動ロック操作ノブの操作を前記ドアロックに伝達可能な操作ケーブルとを備えた車両用ドアロックシステムにおいて、
前記ドアロックは、
前記いずれか一方に固定されるベース部材と、
前記ベース部材に揺動可能に枢支されると共に、一端が前記手動ロック操作ノブに連結された前記操作ケーブルの他端に連結されて、前記手動ロック操作ノブの操作に基づいて前記アンロック状態とするアンロック位置及び前記ロック状態とするロック位置に移動可能なロックレバーと、
前記ベース部材に取り付けられるモータと、
前記ベース部材に枢支され前記モータの動力により回転し前記ロックレバーを前記アンロック位置及び前記ロック位置に移動させる回転体と、
前記操作ケーブルの前記一端に固着される球状端末部と当該球状端末部が連結される前記手動ロック操作ノブの連結溝との間にあって、前記ロックレバーが前記回転体の回転によってアンロック位置またはロック位置に移動したとき、前記操作ケーブルの軸線方向に対して弾性作用を有する弾性部材とを含むことを特徴とする車両用ドアロックシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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