説明

車両用ドアロック装置

【課題】盗難防止機能を備えた車両用ドアロック装置の車両への搭載性を向上させる。
【解決手段】当該装置のロック機構が備えるレバー機構部のアウトサイドロッキングレバー41は、ロッド103の内端部がトルク伝達可能に連結される連結部41a1を有しハウジング10に対して回転可能なハブ部41a、同ハブ部から径外方に延びアクティブレバーと連係するアーム部41b、前記ハブ部に設けられハウジングの第1支持部12aに車両内外方向にて係合するハブ側係合部41a2、前記アーム部に設けられハウジングの第2支持部12bに車両内外方向にて係合するアーム側係合部41b2、両係合部41a2、41b2間に設けられ設定値以上の力で破損可能な脆弱部41cを備える。前記脆弱部での破損を許容するスペースD1がハウジング10内に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置は、一般に、車両用ドアを閉状態(ラッチ状態)または開状態(アンラッチ状態)とするためのラッチ機構と、このラッチ機構のラッチ状態からアンラッチ状態への移行を可能とするアンロック状態またはラッチ状態からアンラッチ状態への移行を不能とするロック状態に切り替えるためのロック機構を備えている。
【0003】
上記したロック機構の一つとして、アウトサイドオープンレバー、インサイドオープンレバー、オープンリンクおよびアクティブレバーを備えるオープン機構部と、アクティブレバーを介してオープンリンクをアンロック位置またはロック位置に駆動するための電動アクチュエータ部とを備えるとともに、電動アクチュエータ部とは別個にアクティブレバーを介してオープンリンクをアンロック位置またはロック位置に駆動するためのレバー機構部を備えているものがあり、例えば、下記特許文献1に示されている。
【0004】
なお、オープンリンクがアンロック位置にあれば、車両用ドアに設けられているアウトサイドハンドルまたはインサイドハンドルの開操作に伴うアウトサイドオープンレバーまたはインサイドオープンレバーの作動によって、ラッチ機構のラッチ状態からアンラッチ状態への移行が可能であって、閉じている車両用ドアを開くことができ、また、オープンリンクがロック位置にあれば、前記アウトサイドハンドルまたはインサイドハンドルの開操作に伴うアウトサイドオープンレバーまたはインサイドオープンレバーの作動によって、ラッチ機構のラッチ状態からアンラッチ状態への移行が不能であって、閉じている車両用ドアを開くことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−26826号公報
【0006】
上記した特許文献1に記載されている車両用ドアロック装置のレバー機構部は、車両用ドアのアウトサイドハンドルに配置されたキーシリンダにロッドを介して連結されていて、前記キーシリンダの回動操作に応じて、前記アクティブレバーがロック動作・アンロック動作(施錠・解錠)するように構成されている。前記アクティブレバーのロック動作(アンロック位置からロック位置への動き)では、オープンリンクがアンロック位置からロック位置に駆動され、また、前記アクティブレバーのアンロック動作(ロック位置からアンロック位置への動き)では、オープンリンクがロック位置からアンロック位置に駆動されるように構成されている。
【0007】
このレバー機構部は、前記ドア内に組付けられるハウジングに回転可能に組付けられていて前記ロッドに連係しているアウトサイドロッキングレバー(キーロータと呼ばれることもある)と、前記ハウジング内に回転可能に組付けられていて前記アウトサイドロッキングレバーとともに回転するとともに前記アクティブレバーに連係しているキーレバーを備えている。前記キーレバーは、前記ハウジングと前記アウトサイドロッキングレバーによって回転可能に支持されるとともに前記アウトサイドロッキングレバーにトルク伝達可能に連結されるハブ部と、このハブ部から径外方に延びて前記アクティブレバーの第1係合部と係合可能な第1アーム部と、前記ハブ部から径外方に延びて前記アクティブレバーの第2係合部と係合可能な第2アーム部とを備えている。
【0008】
ところで、上記した特許文献1に記載されている車両用ドアロック装置においては、前記キーレバーの前記ハブ部と前記第2アーム部間に、前記ロッドが前記キーレバーに向けて設定値以上の力で押動されたときに破損可能な脆弱部が設けられている。このため、ロッドがキーレバーに向けて設定値以上の力で押動されたとき、キーレバーが脆弱部にて破損する。これにより、かかる状態では、キーレバーにおいてハブ部から第2アーム部に回転が伝わらず、キーシリンダの回動操作に応じて、アウトサイドロッキングレバーがアンロック方向に回転されても、ロック位置にあるアクティブレバーがアンロック方向に回動されることはなく、ロック状態が維持される。したがって、当該ドアロック装置の盗難防止機能を高めることが可能である。
【0009】
また、上記した特許文献1に記載されている車両用ドアロック装置においては、前記ハウジングに、前記ロッドが前記キーレバーに向けて設定値以上の力で押動されたときに、前記キーレバーの前記脆弱部での破損を補助する破損補助部が設けられている。このため、ハウジングに破損補助部を設けない場合に比して、ロッドがキーレバーに向けて設定値以上の力で押動されたときの、キーレバーの脆弱部での破損を確実とすることが可能であり、当該ドアロック装置の盗難防止機能を更に高めることが可能である。
【発明の概要】
【0010】
(発明が解決しようとする課題)
上記した特許文献1に記載されている車両用ドアロック装置においては、ハウジング内にキーレバーにおけるハブ部の車両内外方向での移動を許容するスペースが設定されていないため、キーレバーを脆弱部にて破損させるためには、ハウジング外に向けてハウジングを変形または破壊する必要がある。このため、ハウジングの外部にハウジングを変形または破壊させるためのスペースが必要であって、車両への搭載性に制約がある。
【0011】
(課題を解決するための手段)
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、当該車両用ドアロック装置においては、
車両用ドアのアウトサイドハンドルに配置されたキーシリンダにロッドを介して連結されていて、前記キーシリンダの回動操作に応じて、ロック機構のアクティブレバーがロック動作・アンロック動作するように構成されているレバー機構部を備え、
前記レバー機構部が、前記ドア内に組付けられるハウジングに回転可能に組付けられていて前記ロッドに連係しているとともに前記アクティブレバーに連係しているアウトサイドロッキングレバーを備えていて、
前記アウトサイドロッキングレバーが、前記ロッドの内端部が車両内外方向にて挿入されてトルク伝達可能に連結される連結部を有し前記ハウジングに回転可能に組付けられるハブ部と、このハブ部から径外方に延びて前記アクティブレバーと連係するアーム部と、前記ハブ部に設けられて前記ハウジングに設けた第1支持部に車両内外方向にて係合するハブ側係合部と、前記アーム部に設けられて前記ハウジングに設けた第2支持部に車両内外方向にて係合するアーム側係合部と、前記ハブ側係合部と前記アーム側係合部間に設けられていて設定値以上の力で破損可能な脆弱部とを備えており、
前記ロッドが車両内外方向にて内方に向けて押動されてその押動力が前記アウトサイドロッキングレバーに作用したとき同押動力が前記ハウジングの前記第1支持部と前記第2支持部にて受け止められるように設定されているとともに、前記脆弱部での破損を許容するスペースが前記ハウジング内に設定されている。
【0012】
(発明の作用効果)
本発明による車両用ドアロック装置においては、前記脆弱部での破損を許容するスペースが前記ハウジング内に設定されているため、ハウジングの外部に前記脆弱部で破損させるためのスペースが不要であって、車両への搭載性を向上させることが可能である。上記した前記脆弱部での破損を許容するスペースは、当初から設定されているスペース(例えば、前記ハブ部の車両内外方向での移動を許容して前記脆弱部での破損を許容するスペース)だけを意味するわけではなく、ハブ部が折損すること又はハブ部が弾性変形することによって作られるスペースも含むものである。
【0013】
また、本発明の実施に際して、前記ハブ部に、前記ハウジングの前記第1支持部と前記第2支持部間に設けたガイド部に対して車両内外方向にて摺動可能な第2のハブ側係合部が設けられていることも可能である。この場合には、前記ロッドからの押動力が前記アウトサイドロッキングレバーに作用したときの前記ハブ部の動きを前記ハウジングの前記ガイド部にて規定することができて、前記ロッドからの押動力を前記脆弱部に的確に作用させることができ、前記脆弱部にて的確に破損させることが可能である。
【0014】
この場合において、前記ガイド部は、車両内方向に凹設された凹部によって形成され、前記第2のハブ側係合部は、前記凹部内にて回転可能に支持される軸部によって形成され、前記軸部は、前記凹部の周壁に向けて突出する曲面部を有し、該曲面部が前記凹部の周壁に対して摺動可能に支持されることも可能である。この場合には、シンプルな構成で実施することが可能である。この場合において、前記軸部は、前記曲面部を頭部とし、前記曲面部を支持する部位を頸部として形成されていて、前記頸部が弾性変形可能であり、前記頭部が前記頸部の弾性変形によって傾動可能とされていることも可能である。この場合には、前記頸部の弾性変形による前記頭部の傾動により、前記曲面部の前記ガイド部に対する摺動を円滑とすることができる。また、この場合において、前記軸部は、前記曲面部を頭部とし、前記曲面部を支持する部位を頸部として形成されていて、前記頸部が折損可能であり、前記脆弱部が破損する前に前記頸部が折損するように設定されていることも可能である。この場合には、前記頸部の折損により、同折損部位に前記頸部を動き易くするスペースを確保することが可能であって、前記ロッドからの押動力を前記脆弱部に更に的確に作用させることができる。
【0015】
これらの場合において、前記曲面部における前記軸部の先端に位置する部位は面取りされていることも可能である。この場合には、上記した面取りによって、前記ハブ部の車両内外方向での移動を許容するスペースを前記ガイド部内に確保することができて、コンパクトな構成で実施することが可能である。
【0016】
また、本発明の実施に際して、前記アーム部には、前記ハウジングの前記第2支持部に対して対向するようにして前記ハウジングに設けられている第3支持部に車両内外方向にて係合する第2のアーム側係合部が設けられていることも可能である。この場合には、前記ロッドからの押動力が前記アウトサイドロッキングレバーに作用したときの前記アーム部の動きを前記ハウジングの第2支持部と第3支持部にて規制することができて、前記脆弱部にて的確に破損させることが可能である。
【0017】
また、本発明の実施に際して、前記脆弱部は、前記アーム部の回転軌跡に沿った円弧形状、または、前記アーム部の回転軌跡に対する接線形状に形成されていることも可能である。この場合には、前記脆弱部の形状をシンプルな形状として安価に実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による車両用ドアロック装置の一実施形態をドアの内部に配設してドアの前方側からみた正面図である。
【図2】図1に示した車両用ドアロック装置のアンロック状態での要部構成(ハウジングのハウジングカバーがハウジングボディから取り外されている)を車内側からみた側面図である。
【図3】図2に示した状態でのアウトサイドロッキングレバーの配設部位(ハウジングカバーがハウジングボディに取付けられている)を詳細に示した部分拡大側面図である。
【図4】図3のX−X線での断面図である。
【図5】図2および図3に示したアウトサイドロッキングレバーとキースイッチレバーの拡大図である。
【図6】図5に示したアウトサイドロッキングレバー単品の側面図である。
【図7】図4に示したアウトサイドロッキングレバーにロッドから矢印方向の押動力が作用してアウトサイドロッキングレバーが脆弱部にて破損した場合の断面図である。
【図8】アウトサイドロッキングレバーの変形実施形態を示した図6相当の側面図である。
【図9】アウトサイドロッキングレバーの他の変形実施形態を示した図4相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は本発明による車両用ドアロック装置Aoを示していて、この車両用ドアロック装置Aoは、車両の前方右側に装備されるドアFDに装着されるものであり、図2に示したように、ハウジング10に組付けられているラッチ機構A1とロック機構A2を備えている。ハウジング10は、図1〜図4に示したように、車外側に配置されるハウジングボディ11と、このハウジングボディ11に組付けられて車内側に配置されるハウジングカバー12を備えている。
【0020】
ラッチ機構A1は、車両のドアFDを車両ボデー(車体)に対して閉状態(ラッチ状態)または開状態(アンラッチ状態)とするためのものであり、周知のように、車両ボデーに固定されたストライカ(図示省略)と係脱可能なラッチ51を備えていて、ハウジング10に組付けられた状態でドアFDに組付けられている。このラッチ機構A1は、ラッチ51がストライカに係合することで、ドアFDを閉状態に保持する(ラッチ状態)。ドアFDの閉状態において、ラッチ機構A1は、ラッチ51がストライカから離脱することで、ドアFDを閉状態から開状態に移行させる(アンラッチ状態)。なお、ラッチ機構A1の詳細な構成は省略する。
【0021】
ロック機構A2は、ラッチ機構A1のラッチ状態からアンラッチ状態への移行を可能とするアンロック状態またはラッチ状態からアンラッチ状態への移行を不能とするロック状態に切り替えるためのものであり、オープン機構部A2aと、電動アクチュエータ部A2bと、レバー機構部A2cを備えている。オープン機構部A2aは、アウトサイドオープンレバー21、インサイドオープンレバー22、オープンリンク23およびアクティブレバー24を備えている。
【0022】
アウトサイドオープンレバー21は、トーションスプリングS1とともにハウジングボディ11に組付けられていて、ハウジングボディ11に対して回転可能であり、ドアFDの室外側に設けられるアウトサイドハンドル101(図1参照)にリンク機構(図示省略)を介して連係されており、アウトサイドハンドル101のプル操作(開操作)により図1の反時計回転方向に回転作動する。
【0023】
インサイドオープンレバー22は、ハウジングボディ11に回転自在に組み付けられていて、ドアFDの室内側に設けられるインサイドハンドル(図示省略)に連係されており、インサイドハンドルのプル操作により図2の時計回転方向に回転作動する。オープンリンク23は、その下端部にてアウトサイドオープンレバー21に揺動自在に連結支持されていて、アクティブレバー24により、アンロック位置(図2に示す位置)とロック位置との間で移動可能である。このオープンリンク23が、アンロック位置にある状態では、ドアFDを開状態にすべくラッチ機構A1のリフトレバー(図示省略)に係合可能であり、ロック位置にある状態では、ラッチ機構A1のリフトレバー(図示省略)に係合不能である。
【0024】
また、オープンリンク23は、アウトサイドオープンレバー21の作動(アウトサイドハンドル101のプル操作)を受けて、または、インサイドオープンレバー22の作動(インサイドハンドルのプル操作)を受けて、図2に示す位置から装置上方向に動かされる。このため、ドアFDの閉状態において、オープンリンク23が、図2に示すアンロック位置にあって、アウトサイドオープンレバー21またはインサイドオープンレバー22の作動を受けて上方向に動かされた場合、ラッチ機構A1のリフトレバー(図示省略)がオープンリンク23によって押されて回動し、ラッチ機構A1がラッチ状態からアンラッチ状態に作動する。これにより、ドアFDは、閉状態から開状態に移行する。つまり、オープンリンク23がアンロック位置にある時、ドアFDは解錠されている。
【0025】
一方、ドアFDの閉状態において、オープンリンク23が、ロック位置にあって、アウトサイドオープンレバー21またはインサイドオープンレバー22の作動を受けて上方向に動かされた場合、オープンリンク23はラッチ機構A1のリフトレバー(図示省略)と係合せず、ラッチ機構A1がラッチ状態のまま保持される。これにより、ドアFDは、閉状態のまま保持される。つまり、オープンリンク23がロック位置にある時、ドアFDは施錠されている。
【0026】
電動アクチュエータ部A2bは、アクティブレバー24を介してオープンリンク23をアンロック位置またはロック位置に駆動するためのものであり、電気モータ31と、ウォーム32と、ウォームホイール33を備えている。電気モータ31は、リモコン等の施解錠操作部材によるロック操作とアンロック操作に応じて駆動される公知のものである。ウォーム32は、電気モータ31の出力軸31aに一体的に設けられていて、電気モータ31により回転駆動される。ウォームホイール33は、ウォーム32によって回転駆動されるものであり、ハウジング10に回転可能に組付けられていて、アクティブレバー24に設けた一対のカムフォロア(詳細な説明は省略するが、図3に破線で示されている)と連係する一対のカム33a、33bを備えている。
【0027】
この電動アクチュエータ部A2bでは、アクティブレバー24が図2に示したアンロック位置にあって、施解錠操作部材(例えば、電気モータ31を作動させるためのリモコン)がロック操作されると、電気モータ31によってウォーム32を介してウォームホイール33が図2の反時計回転方向に略180度回転駆動されて、アクティブレバー24がロック位置に移動する。また、アクティブレバー24がロック位置にあって、施解錠操作部材がアンロック操作されると、電気モータ31によってウォーム32を介してウォームホイール33が図2の時計回転方向に略180度回転駆動されて、アクティブレバー24が図2に示したアンロック位置に移動する。
【0028】
レバー機構部A2cは、電動アクチュエータ部A2bとは別個にアクティブレバー24を介してオープンリンク23をアンロック位置またはロック位置に駆動するためのものであり、図1に示したように、アウトサイドハンドル101に配置されたキーシリンダ102にロッド103を介して連結されていて、図2に示したように、アウトサイドロッキングレバー41、キースイッチレバー42、ロッキングコントロールレバー43等を備えている。
【0029】
アウトサイドロッキングレバー41は、ハウジング10に回転可能に組付けられていて、ロッド103に連係しているとともに、キースイッチレバー42、ロッキングコントロールレバー43を介してアクティブレバー24に連係している。キースイッチレバー42は、ハウジング10に回転可能に組付けられていて、アウトサイドロッキングレバー41の動きをロッキングコントロールレバー43に伝達可能に構成されている。ロッキングコントロールレバー43は、ハウジング10に回転可能に組付けられていて、キースイッチレバー42の動きをアクティブレバー24に伝達可能に構成されている。
【0030】
このレバー機構部A2cでは、アクティブレバー24が図2に示したアンロック位置にあって、キーシリンダ102のロック回動操作に応じて、アウトサイドロッキングレバー41が図2の反時計回転方向に所定量回転されると、キースイッチレバー42が図2の時計回転方向に回転されるとともに、ロッキングコントロールレバー43が図2の時計回転方向に回転されて、アクティブレバー24がロック位置に移動する。また、アクティブレバー24がロック位置にあって、キーシリンダ102がアンロック回動操作されると、上記とは逆の作動が得られて、アクティブレバー24が図2に示したアンロック位置に移動する。
【0031】
ところで、この実施形態においては、図2〜図4に示したように、アウトサイドロッキングレバー41が、ハブ部41aと、アーム部41bと、脆弱部41cを備えている。ハブ部41aは、ロッド103の内端部103aが車幅方向(車両内外方向)にて挿入されてトルク伝達可能に連結される連結穴部41a1を有していて、ハウジング10にシールリングRを介して回転可能に組付けられている。このハブ部41aには、ハウジング10のハウジングカバー12に設けた第1支持部12aに車幅方向にて係合するハブ側係合部41a2が設けられている。
【0032】
アーム部41bは、ハブ部41aから径外方(詳細には、ハブ部41aの回転中心から径方向の外方)に延びてキースイッチレバー42とロッキングコントロールレバー43を介してアクティブレバー24と連係するものであり、キースイッチレバー42に設けた長孔42aに係合するピン部41b1が設けられている。このアーム部41bには、ハウジング10のハウジングカバー12に設けた第2支持部12bに車幅方向にて係合するアーム側係合部41b2が設けられている。なお、第2支持部12bは、ピン部41b1の回転軌跡に沿って円弧状に形成されている(図2参照)。
【0033】
脆弱部41cは、ハブ側係合部41a2とアーム側係合部41b2間に在るアーム部41bの中間部位に設けられていて、設定値以上の力(図7に示したように、ロッド103が車幅方向にて内方に向けて押動される際の押動力F)で破損可能に構成されている。この脆弱部41cは、アーム部41bの回転軌跡に対する接線形状に形成されていて、直線状隆起部(厚肉部)41c1と直線状溝部(薄肉部)41c2によって構成されている(図4および図6参照)。なお、脆弱部41cの配設位置は、アウトサイドロッキングレバー41のハブ側係合部41a2とアーム側係合部41b2間であればよく、アウトサイドロッキングレバー41におけるハブ側係合部41a2とアーム側係合部41b2間に在るアーム部41bの中間部位に限定されるものではない。
【0034】
また、この実施形態においては、ロッド103が車幅方向にて内方に向けて押動されてその押動力がアウトサイドロッキングレバー41に作用したとき、同押動力がハウジング10のハウジングカバー12に設けた第1支持部12aと第2支持部12bにて受け止められるように設定されているとともに、ハブ部41aの車幅方向での移動を許容して脆弱部41cでの破損を許容するスペースD1がハウジング10内に設定されている。
【0035】
また、この実施形態においては、アウトサイドロッキングレバー41のハブ部41aに、ハウジング10におけるハウジングカバー12の第1支持部12aと第2支持部12b間に設けたガイド部12cに対して車幅方向にて摺動可能な第2のハブ側係合部41a3が設けられている。ガイド部12cは、車両内方向に凹設された凹部であり、円筒状に形成されている。なお、ガイド部12cは、円筒状以外の形状、例えば、断面方形の筒状に形成されていてもよい。
【0036】
第2のハブ側係合部41a3は、ガイド部12c内にて回転可能に支持される軸部(41a3)によって形成されていて、この軸部(41a3)はガイド部12cの周壁(内面)12c1に向けて突出する曲面部cを有し、該曲面部cがガイド部12cの周壁12c1に対して車幅方向にて摺動可能に支持されている。また、曲面部cにおける軸部(41a3)の先端に位置する部位は、面取りされて平面fとされており、ガイド部12c内にハブ部41aの車幅方向での移動を許容して脆弱部41cでの破損を許容するスペースD2(D1>D2)が確保されている。なお、曲面部cは、例えば、球状であってもよく、球を扁平させた形状であってもよい。また、面取りされて形成されている平面fは、軸部(41a3)の軸心に対して直交するものに限定されず、適宜設定可能である。
【0037】
また、この実施形態においては、アウトサイドロッキングレバー41のアーム部41bに、第2のアーム側係合部41b3が設けられている。第2のアーム側係合部41b3は、ハウジング10におけるハウジングカバー12の第2支持部12bに対して対向するようにしてハウジング10におけるハウジングボディ11に設けられている第3支持部11aに車幅方向にて係合している。
【0038】
上記した実施形態の車両用ドアロック装置Aoにおいては、レバー機構部A2cのアウトサイドロッキングレバー41におけるハブ部41aの車幅方向での移動を許容して脆弱部41cでの破損を許容するスペースD1がハウジング10内に設定されているため、ハウジング10の外部に前記脆弱部41cで破損させるためのスペースが不要であって、車両への搭載性を向上させることが可能である。
【0039】
また、この実施形態においては、レバー機構部A2cのアウトサイドロッキングレバー41におけるハブ部41aに、ハウジング10の第1支持部12aと第2支持部12b間に設けたガイド部12cに対して車幅方向にて摺動可能な第2のハブ側係合部41a3が設けられている。このため、ロッド103からの押動力Fがアウトサイドロッキングレバー41に作用したときのハブ部41aの動きをハウジング10のガイド部12cにて規定することができて、ロッド103からの押動力Fを前記脆弱部41cに的確に作用させることができ、前記脆弱部41cにて的確に破損させることが可能である。
【0040】
また、この実施形態においては、前記ガイド部12cが円筒状に形成され、前記第2のハブ側係合部41a3が前記ガイド12c内にて回転可能かつ車幅方向に摺動可能な球状部とこの球状部を先端に有する軸部によって形成されているため、シンプルな構成で実施することが可能である。また、前記球状部の先端部は面取りされて前記軸部の軸心に対して直交する平面fとされている。このため、上記した面取りによって、ハブ部41aの車幅方向での移動を許容するスペースD2を円筒状のガイド部12c内に確保することができて、コンパクトな構成で実施することが可能である。
【0041】
また、この実施形態においては、前記アーム部41bに、ハウジング10の第2支持部12bに対して対向するようにしてハウジング10に設けられている第3支持部11aに車幅方向にて係合する第2のアーム側係合部41b3が設けられている。このため、ロッド103からの押動力Fがアウトサイドロッキングレバー41に作用したときのアーム部41bの動きをハウジング10の第2支持部12bと第3支持部11aにて規制することができて、前記脆弱部41cにて的確に破損させることが可能である。
【0042】
上記した実施形態においては、前記脆弱部41cが前記アーム部41cの回転軌跡に対する接線形状(図6の直線状隆起部41c1、直線状溝部41c2参照)に形成されているが、前記脆弱部41cが前記アーム部41cの回転軌跡に沿った円弧形状(図8の円弧状隆起部41c1、円弧状溝部41c2参照)に形成されていることも可能である。何れの実施形態においても、脆弱部41cの形状をシンプルな形状として安価に実施することが可能である。
【0043】
また、上記した実施形態においては、アウトサイドロッキングレバー41のアーム部41bに第2のアーム側係合部41b3を設けるとともに、ハウジング10に第3支持部11aを設けて実施したが、これらを無くして実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、アウトサイドロッキングレバー41のハブ部41aに第2のハブ側係合部41a3を設けるとともに、ハウジング10にガイド部12cを設けて実施したが、これらを無くして実施することも可能である。
【0044】
また、上記した実施形態においては、図4に示したように、アウトサイドロッキングレバー41のハブ部41aに設けた第2のハブ側係合部(軸部)41a3が、曲面部cを頭部とし、曲面部cを支持する部位を頸部eとして形成されていて、頸部eが弾性変形し難い形状に形成されているが、本発明の実施に際しては、図9に示した実施形態のように、アウトサイドロッキングレバー41のハブ部41aに設けた第2のハブ側係合部(軸部)41a3が、曲面部cを頭部とし、曲面部cを支持する部位を頸部eとして形成されていて、頸部eが図4の場合に比して細くて弾性変形可能であり、曲面部(頭部)cが頸部eの弾性変形によって傾動可能とされていることも可能である。この場合には、頸部eの弾性変形による曲面部(頭部)cの傾動により、曲面部(頭部)cのガイド部12cに対する摺動を円滑とすることができる。
【0045】
図9に示した実施形態(すなわち、アウトサイドロッキングレバー41のハブ部41aに設けた第2のハブ側係合部(軸部)41a3が、曲面部cを頭部とし、曲面部cを支持する部位を頸部eとして形成されている実施形態)において、頸部eが折損可能であり、アウトサイドロッキングレバー41の脆弱部41cが破損する前に頸部eが折損するように設定されていることも可能である。この場合には、頸部eの折損により、同折損部位に頸部eを動き易くするスペースを確保することが可能であって、前記ロッド103からの押動力を前記脆弱部41cに更に的確に作用させることができる。
【0046】
なお、図9に示した実施形態では、脆弱部41cが、アウトサイドロッキングレバー41のハブ側係合部41a2とアーム側係合部41b2間に在る部位(ハブ部41aとアーム部41bの接合部位)に配設されていて、アーム部41bの中間部位には配設されていない。また、図9に示した実施形態では、脆弱部41cが直線状溝部(薄肉部)41c2によって構成されていて、図4および図6に示した直線状隆起部(厚肉部)41c1に相当するものは設けられていない。図9に示した実施形態の上述以外の構成は、図4に示した構成と実質的に同じであるため、同一符号を付してその説明は省略する。
【0047】
また、上記実施形態においては、ロック機構A2がオープン機構部A2aを備えるとともに電動アクチュエータ部A2bとレバー機構部A2cを備えている車両用ドアロック装置Aoに本発明を実施したが、本発明は、ロック機構(A2)がオープン機構部(A2a)とレバー機構部(A2c)を備えていて電動アクチュエータ部(A2b)を備えていない車両用ドアロック装置にも実施することが可能である。
【0048】
また、上記実施形態においては、車両の前方右側に装備されるドアFD(サイドドア)に本発明を実施した実施形態について説明したが、本発明はサイドドア以外のドア(例えば、横開きバックドア)にも同様に実施することが可能である。また、上記実施形態においては、ロッド103の内端部がアウトサイドロッキングレバー41の連結穴部41a1にトルク伝達可能に連結されるように構成して実施したが、ロッドの内端部に連結穴部が設けられ、この連結穴部にトルク伝達可能に連結される凸部がアウトサイドロッキングレバーに設けられている構成にて本発明を実施することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
Ao…車両用ドアロック装置、A1…ラッチ機構、A2…ロック機構、A2a…オープン機構部、A2b…電動アクチュエータ部、A2c…レバー機構部、10…ハウジング、11…ハウジングボディ、11a…第3支持部、12…ハウジングカバー、12a…第1支持部、12b…第2支持部、12c…ガイド部(凹部)、12c1…周壁、21…アウトサイドオープンレバー、22…インサイドオープンレバー、23…オープンリンク、24…アクティブレバー、31…電気モータ、32…ウォーム、33…ウォームホイール、33a、33b…一対のカム、41…アウトサイドロッキングレバー、41a…ハブ部、41a1…連結穴部、41a2…ハブ側係合部、41a3…第2のハブ側係合部(軸部)、c…曲面部(頭部)、e…頸部、f…面取りされて形成されている平面、41b…アーム部、41b1…ピン部、41b2…アーム側係合部、41b3…第2のアーム側係合部、41c…脆弱部、41c1…直線状隆起部、41c2…直線状溝部、D1,D2…スペース、51…ラッチ、101…アウトサイドハンドル、102…キーシリンダ、103…ロッド、103a…ロッドの内端部、FD…ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのアウトサイドハンドルに配置されたキーシリンダにロッドを介して連結されていて、前記キーシリンダの回動操作に応じて、ロック機構のアクティブレバーがロック動作・アンロック動作するように構成されているレバー機構部を備え、
前記レバー機構部が、前記ドア内に組付けられるハウジングに回転可能に組付けられていて前記ロッドに連係しているとともに前記アクティブレバーに連係しているアウトサイドロッキングレバーを備えていて、
前記アウトサイドロッキングレバーが、前記ロッドの内端部が車両内外方向にトルク伝達可能に連結される連結部を有し前記ハウジングに回転可能に組付けられるハブ部と、このハブ部から径外方に延びて前記アクティブレバーと連係するアーム部と、前記ハブ部に設けられて前記ハウジングに設けた第1支持部に車両内外方向にて係合するハブ側係合部と、前記アーム部に設けられて前記ハウジングに設けた第2支持部に車両内外方向にて係合するアーム側係合部と、前記ハブ側係合部と前記アーム側係合部間に設けられていて設定値以上の力で破損可能な脆弱部とを備えており、
前記ロッドが車両内外方向にて内方に向けて押動されてその押動力が前記アウトサイドロッキングレバーに作用したとき同押動力が前記ハウジングの前記第1支持部と前記第2支持部にて受け止められるように設定されているとともに、前記脆弱部での破損を許容するスペースが前記ハウジング内に設定されている車両用ドアロック装置。
【請求項2】
車両用ドアのアウトサイドハンドルに配置されたキーシリンダにロッドを介して連結されていて、前記キーシリンダの回動操作に応じて、ロック機構のアクティブレバーがロック動作・アンロック動作するように構成されているレバー機構部を備え、
前記レバー機構部が、前記ドア内に組付けられるハウジングに回転可能に組付けられていて前記ロッドに連係しているとともに前記アクティブレバーに連係しているアウトサイドロッキングレバーを備えていて、
前記アウトサイドロッキングレバーが、前記ロッドの内端部が車両内外方向にトルク伝達可能に連結される連結部を有し前記ハウジングに回転可能に組付けられるハブ部と、このハブ部から径外方に延びて前記アクティブレバーと連係するアーム部と、前記ハブ部に設けられて前記ハウジングに設けた第1支持部に車両内外方向にて係合するハブ側係合部と、前記アーム部に設けられて前記ハウジングに設けた第2支持部に車両内外方向にて係合するアーム側係合部と、前記ハブ側係合部と前記アーム側係合部間に設けられていて設定値以上の力で破損可能な脆弱部とを備えており、
前記ロッドが車両内外方向にて内方に向けて押動されてその押動力が前記アウトサイドロッキングレバーに作用したとき同押動力が前記ハウジングの前記第1支持部と前記第2支持部にて受け止められるように設定されているとともに、前記ハブ部の車両内外方向での移動を許容して前記脆弱部での破損を許容するスペースが前記ハウジング内に設定されている車両用ドアロック装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置において、
前記ハブ部には、前記ハウジングの前記第1支持部と前記第2支持部間に設けたガイド部に対して車両内外方向にて摺動可能な第2のハブ側係合部が設けられている車両用ドアロック装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ドアロック装置において、
前記ガイド部は、車両内方向に凹設された凹部によって形成され、前記第2のハブ側係合部は、前記凹部内にて回転可能に支持される軸部によって形成され、前記軸部は、前記凹部の周壁に向けて突出する曲面部を有し、該曲面部が前記凹部の周壁に対して摺動可能に支持される車両用ドアロック装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用ドアロック装置において、
前記軸部は、前記曲面部を頭部とし、前記曲面部を支持する部位を頸部として形成されていて、前記頸部が弾性変形可能であり、前記頭部が前記頸部の弾性変形によって傾動可能とされている車両用ドアロック装置。
【請求項6】
請求項4に記載の車両用ドアロック装置において、
前記軸部は、前記曲面部を頭部とし、前記曲面部を支持する部位を頸部として形成されていて、前記頸部が折損可能であり、前記脆弱部が破損する前に前記頸部が折損するように設定されている車両用ドアロック装置。
【請求項7】
請求項4〜6の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置において、
前記曲面部における前記軸部の先端に位置する部位は面取りされている車両用ドアロック装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置において、
前記アーム部には、前記ハウジングの前記第2支持部に対して対向するようにして前記ハウジングに設けられている第3支持部に車両内外方向にて係合する第2のアーム側係合部が設けられている車両用ドアロック装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の車両用ドアロック装置において、
前記脆弱部は、前記アーム部の回転軌跡に沿った円弧形状、または、前記アーム部の回転軌跡に対する接線形状に形成されている車両用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−215054(P2012−215054A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212519(P2011−212519)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】