説明

車両用ドアロック装置

【課題】車両用ドアロック装置のクローザ装置にて、異物の挟み込み検知が周囲温度やドアの車体に対する建付による影響を受け難くし、異物の挟み込みを的確に回避すること。
【解決手段】車両用ドアロック装置100では、クローザ装置20の駆動ケーブル22に介装されてクローザ装置20の駆動レバーからラッチレバーに伝達される駆動力を検出する機械式の駆動力検出装置30によって、ドアと車体間に異物が挟み込まれたことを検出するように構成されている。このため、異物の挟み込み検知が周囲温度やドアの車体に対する建付による影響を受け難く、精度の高い挟み込み検知を行うことが可能であり、異物の挟み込みを的確に回避することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関し、特に、ストライカと係合するラッチを備えるとともに、このラッチをハーフラッチ状態とフルラッチ状態にて保持可能なポールを備えているラッチ機構と、ハーフラッチ状態のラッチをフルラッチ状態に移動させることが可能なラッチレバーと、このラッチレバーに駆動ケーブルを介して連結された駆動レバーと、この駆動レバーを正回転または逆回転で駆動可能な電気モータとを備えているクローザ装置とを備えている車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ドアロック装置は、例えば、下記特許文献1に示されている。下記特許文献1に示されている車両用ドアロック装置では、車両のドアが半ドア状態にあり、ラッチ機構のラッチがハーフラッチ状態であると、電気モータが駆動レバーを正回転させて駆動ケーブルを介してラッチレバーを正回転させるため、ハーフラッチ状態のラッチがフルラッチ状態へと移動する。また、ラッチがフルラッチ状態へと移動して、車両のドアが全閉状態になると、電気モータが停止して、駆動レバー、駆動ケーブル、ラッチレバー等が停止する。また、車両のドアが全閉状態に移行した後には、電気モータが駆動レバーを逆回転させて駆動ケーブルを介してラッチレバーを逆回転させるため、駆動レバー、駆動ケーブル、ラッチレバー等は、初期位置に向けて移動する。駆動レバー、駆動ケーブル、ラッチレバー等が初期位置に移動すると、電気モータが停止して、クローザ装置が初期状態となる。
【0003】
なお、ラッチ機構のラッチがハーフラッチ状態であること、ラッチがフルラッチ状態へと移動したこと、駆動レバー、駆動ケーブル、ラッチレバー等が初期位置に移動したこと等は、例えば、下記特許文献2に示されているように、各センサによって検出されるように構成されていて、各センサの検出信号に基づいてモータ制御装置(コントローラ)が電気モータの作動を制御するように構成されている。
【0004】
また、下記特許文献3には、ハーフラッチ状態のラッチがフルラッチ状態に向けて所定の位置まで回転したことを位置センサ(挟み込み防止センサ)にて検出し、この状態にて、ドアと車体間に異物が挟まれて、電気モータに通電される電流値が所定値となったときに、電気モータを逆転させる構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−138532号公報
【特許文献2】特開2010−84321号公報
【特許文献3】特開平9−287336号公報
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
上記した特許文献3では、位置センサ(挟み込み防止センサ)の検出状態にて、電気モータに通電される電流値が所定値となったときに、電気モータを逆転させる構成が採用されている。ところで、電気モータに通電される電流値は、周囲温度によるモータートルクのバラツキおよびドアの車体に対する建付のバラツキ等による影響が大きいため、異物の挟み込みが無いのにドアを全閉状態に引き込まなかったり、異物の挟み込みが有ってもドアを全閉状態に引き込んでしまう可能性がある。
【0007】
(課題を解決するための手段)
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、
ストライカと係合するラッチを備えるとともに、このラッチをハーフラッチ状態とフルラッチ状態にて保持可能なポールを備えているラッチ機構と、
ハーフラッチ状態のラッチをフルラッチ状態に移動させることが可能なラッチレバーと、このラッチレバーに駆動ケーブルを介して連結された駆動レバーと、この駆動レバーを正回転または逆回転で駆動可能な電気モータとを備えているクローザ装置と、
前記駆動ケーブルに介装されて前記駆動レバーから前記ラッチレバーに伝達される駆動力を検出する機械式の駆動力検出装置を備えていて、
前記電気モータが前記駆動レバーを正回転させて前記駆動ケーブルを介して前記ラッチレバーを正回転させ前記ラッチをハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動させる初期において、前記駆動力検出装置にて検出される駆動力が設定値以上となったとき、前記電気モータを停止または逆回転させる制御手段を備えている車両用ドアロック装置(請求項1に係る発明)に特徴がある。
【0008】
この場合において、前記駆動力検出装置は、前記ラッチレバーに連結されるラッチレバー側インナーワイヤと、前記駆動レバーに連結される駆動レバー側インナーワイヤと、これら両インナーワイヤ間に設けられて前記駆動力が設定値となったときに所定量弾性変形するスプリングと、このスプリングが所定量弾性変形したときに作動するスイッチを備えていること(請求項2に係る発明)も可能である。この駆動力検出装置は、前記駆動ケーブルにおけるアウターチューブの一部を構成する外ケースに移動可能に組付けた内ケースに組付けられていること(請求項3に係る発明)も可能であり、前記ラッチレバー側インナーワイヤの駆動レバー側端部は前記内ケースに固定され、前記駆動レバー側インナーワイヤのラッチレバー側端部は前記内ケースに相対移動可能に組付けられていて、前記スプリングは前記駆動レバー側インナーワイヤのラッチレバー側端部と前記内ケース間に圧縮変形可能に介装され、前記スイッチの接点部は前記内ケースに固定され、前記スイッチのレバー部は前記駆動レバー側インナーワイヤのラッチレバー側端部に固定されていること(請求項4に係る発明)も可能である。
【0009】
(発明の作用効果)
上記した本発明の車両用ドアロック装置によれば、クローザ装置の駆動ケーブルに機械式の駆動力検出装置が介装されていて、ラッチが電気モータの正回転によってハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動する初期において、ドアと車体間に異物が挟み込まれて、駆動力検出装置にて検出される駆動力が設定値以上となったとき、電気モータが制御装置によって停止または逆回転するように構成されている。このため、ドアと車体間に異物の挟み込みが有れば、電気モータによるドアの全閉状態への引き込みが防止される。
【0010】
ところで、本発明では、クローザ装置の駆動ケーブルに介装されて駆動レバーからラッチレバーに伝達される駆動力を検出する機械式の駆動力検出装置によって、ドアと車体間に異物が挟み込まれたことを検出するように構成されている。このため、異物の挟み込み検知が周囲温度やドアの車体に対する建付による影響を受け難く、精度の高い挟み込み検知を行うことが可能であり、異物の挟み込みを的確に回避することが可能である。
【0011】
また、本発明の実施に際して、駆動力検出装置が、ラッチレバーに連結されるラッチレバー側インナーワイヤと、駆動レバーに連結される駆動レバー側インナーワイヤと、これら両インナーワイヤ間に設けられて前記駆動力が設定値となったときに所定量弾性変形するスプリングと、このスプリングが所定量弾性変形したときに作動するスイッチを備えている場合には、例えば、スプリングが弾性変形を開始する荷重特性を変えることにより、最悪条件のドア建付にも対応させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による車両用ドアロック装置の一実施形態を含む車両前方部位の側面図である。
【図2】図1に示した車両用ドアロック装置の拡大背面図である。
【図3】図2に示した車両用ドアロック装置(電気モータの作動を制御するコントローラを含む)の側面図である。
【図4】図2および図3に示した車両用ドアロック装置のラッチがハーフラッチ状態にありラッチレバーが初期状態にあるときのラッチ、ポール、ラッチレバー等の関係を示した図である。
【図5】図4に示したラッチがラッチレバーによってハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動されたときのラッチ、ポール、ラッチレバー等の関係を示した図である。
【図6】図2および図3に示したクローザ装置におけるアクチュエータ部分の拡大側面図である。
【図7】図2および図3に示した駆動力検出装置のスイッチOFF状態での拡大図である。
【図8】図7に示した駆動力検出装置のスイッチON状態での図である。
【図9】図1〜図8に示した車両用ドアロック装置における各スイッチのON・OFF作動とストライカのストローク(ハーフラッチ状態、フルラッチ状態)との関係を示す作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は本発明による車両用ドアロック装置の一実施形態を示していて、この車両用ドアロック装置100は、車両の右前方のドア201に組付けられるラッチ機構10、クローザ装置20、駆動力検出装置30(図2、図3参照)を備えるとともに、車体202に組付けられるコントローラ40(図3参照)を備えている。
【0014】
ラッチ機構10は、図1〜図5に示したように、車体202に固定されたストライカ203に対して係合・離脱可能なラッチ11と、このラッチ11に対して係合・非係合可能でラッチ11のストライカ203に対する係合をハーフラッチ状態(図4の状態)とフルラッチ状態(図5の状態)にて維持(保持)・解放可能なポール12と、このポール12と一体的なリフトレバー(図示省略)を備えている。ハーフラッチ状態(図9のHALF参照)では、車両のドア201が半ドア状態とされるとともに、ラッチ11の回転位置を検出するラッチスイッチSW1がON状態に維持され、フルラッチ状態(図9のFULL参照)では、車両のドア201が全閉状態とされるとともに、ラッチスイッチSW1がOFF状態に維持されるように設定されている。
【0015】
なお、ラッチスイッチSW1は、特開2010−84321号公報(特許文献2)に記載されているラッチスイッチと同様に、ラッチ11の動作に連動してON・OFF作動するように構成されていて、ハーフラッチ状態となる前にOFF状態からON状態に切り替わり、フルラッチ状態となる前にON状態からOFF状態に切り替わるように設定されている(図9参照)。また、ラッチスイッチSW1の検出信号(ON・OFF信号)は、図3に示したワイヤーハーネス41を通してコントローラ40に入力されるように構成(電気的に接続)されている。
【0016】
ラッチ11は、図4および図5に示したように、第1係合部(ハーフラッチ爪)11aと第2係合部(フルラッチ爪)11bを有していて、図2に示したベースプレート13等に組付けた支持軸14に対して回転可能に組付けられている。またラッチ11は、復帰スプリング(図示省略)により初期状態(ラッチ11のラッチ溝11cにストライカ203が嵌合可能な状態)に向けて付勢されていて、初期状態ではストッパ(図示省略)によって保持されている。
【0017】
一方、ポール12は、ベースプレート13等に軸部12aにて回転可能に組付けられていて、ラッチ11の第1係合部11aまたは第2係合部11bに係合・離脱可能な係止部12bを有している。また、ポール12は、復帰スプリング(図示省略)により図4および図5に示した復帰状態(ラッチ11をハーフラッチ状態またはフルラッチ状態にて保持する状態)に向けて付勢されていて、復帰状態ではストッパ(図示省略)によって保持されている。
【0018】
ポール12が復帰状態にあることは、図9に示したように、ポールスイッチSW2のOFF状態(OFF信号)によって検出されるように構成されている。このため、ハーフラッチ状態(図9のHALF参照)は、ラッチスイッチSW1のON状態(ON信号)とポールスイッチSW2のON状態(ON信号)からOFF状態(OFF信号)への切り替えによって検出することが可能である。また、フルラッチ状態(図9のFULL参照)は、ラッチスイッチSW1のOFF状態(OFF信号)とポールスイッチSW2のON状態(ON信号)からOFF状態(OFF信号)への切り替えによって検出することが可能である。
【0019】
なお、ポールスイッチSW2は、特開2010−84321号公報(特許文献2)に記載されているポールスイッチと同様に、ポール12の回動時にON状態となり、初期状態への復帰時にOFF状態となるように構成されている。また、ポールスイッチSW2の検出信号(ON・OFF信号)も、ワイヤーハーネス41を通してコントローラ40に入力されるように構成(電気的に接続)されている。
【0020】
ポール12と一体のリフトレバー(図示省略)は、オープンリンク、オープンレバー等(図示省略)を介してドア201の内側に設けたインサイドドアハンドル204(図1参照)に連係するとともに、オープンリンク、オープンレバー等(図示省略)を介してドア201の外側に設けたアウトサイドドアハンドル205(図1参照)に連係している。オープンリンク(図示省略)は、アンロック状態またはロック状態に切り替えられるように構成されていて、アンロック状態では、インサイドドアハンドル204とアウトサイドドアハンドル205のドア開操作をポール12と一体のリフトレバー(図示省略)に伝達可能であり、ロック状態では、インサイドドアハンドル204とアウトサイドドアハンドル205のドア開操作をポール12と一体のリフトレバー(図示省略)に伝達不能である。
【0021】
クローザ装置20は、図2〜図6に示したように、ハーフラッチ状態のラッチ11をフルラッチ状態に移動させることが可能なラッチレバー21と、このラッチレバー21に駆動ケーブル22を介して連結された駆動レバー23と、この駆動レバー23を正回転または逆回転で駆動可能な電気モータ24とを備えている。ラッチレバー21は、電気モータ24の正回転によって図4に示した復帰位置から図5に示した作動位置に向けて駆動され、電気モータ24の逆回転によって図5に示した作動位置から図4に示した復帰位置に向けて駆動されるように構成されている。
【0022】
なお、ラッチレバー21が復帰位置に復帰したときには、ラッチレバー21がクッション25に当接するとともに復帰スイッチSW3に係合して、復帰スイッチSW3のON状態(ON信号)からOFF状態(OFF信号)への切り替えによって復帰が検出されるように構成されている。なお、復帰スイッチSW3の検出信号(ON・OFF信号)も、ワイヤーハーネス41を通してコントローラ40に入力されるように構成(電気的に接続)されている。
【0023】
駆動レバー23は、遊星ギヤ機構およびウォーム機構(これらの機構は、図示省略されているが、特開2007−138532号公報(特許文献1)に記載されている遊星ギヤ機構およびウォーム機構と実質的に同じ構成である)を介して電気モータ24の出力軸に連結されている回転軸23a(図6参照)に一体的に組付けられている。なお、遊星ギヤ機構のリングギヤと上述したオープンレバー(図示省略)間には、インサイドドアハンドル204とアウトサイドドアハンドル205のドア開操作によって、クローザ装置20の作動を無効とするキャンセル機構(その一構成部材であるキャンセルレバー26が図6に示されているが、特開2007−138532号公報(特許文献1)に記載されているキャンセル機構と実質的に同じ構成であるため、説明は省略する)が設けられている。
【0024】
駆動力検出装置30は、図2、図3に示したように、クローザ装置20の駆動ケーブル22に介装されていて、駆動レバー23から駆動ケーブル22を介してラッチレバー21に伝達される駆動力(荷重)を検出するものである。この駆動力検出装置30は、図7および図8に示したように、駆動ケーブル22におけるアウターチューブ22aの一部を構成する外ケース31にケーブル長手方向に沿って移動可能に組付けた内ケース32に組付けられていて、ラッチレバー側インナーワイヤ33、駆動レバー側インナーワイヤ34、スプリング35、スイッチ36を備えている。
【0025】
ラッチレバー側インナーワイヤ33は、駆動ケーブル22におけるインナーワイヤ22bの一部(ラッチレバー側部分)であり、一端にてラッチレバー21に連結されていて、他端に駆動レバー側端部33aが設けられている。駆動レバー側インナーワイヤ34は、駆動ケーブル22におけるインナーワイヤ22bの一部(駆動レバー側部分)であり、一端にて駆動レバー23に連結されていて、他端にラッチレバー側端部34aが設けられている。スプリング35は、圧縮コイルスプリングであり、両インナーワイヤ33,34間に予荷重を付与して設けられていて、駆動力(ワイヤ張力)が設定値となったときに所定量弾性変形するように設定されている。スイッチ36は、スプリング35が所定量弾性変形したときにON作動するように設定されている。なお、外ケース31は、二分割可能に構成されていて、図示省略されている部分には、スイッチ36の接点部36aとスイッチ36のレバー部36bをケーブル長手方向に沿って移動可能な切欠が形成されている。
【0026】
ラッチレバー側インナーワイヤ33の駆動レバー側端部33aは、内ケース32に固定されている。一方、駆動レバー側インナーワイヤ34のラッチレバー側端部34aは、内ケース32に相対移動可能に組付けられている。スプリング35は、ラッチレバー側インナーワイヤ33の駆動レバー側端部33aと一体的に移動する内ケース32と、駆動レバー側インナーワイヤ34のラッチレバー側端部34a間に、圧縮変形可能に介装されている。スイッチ36の接点部36aは、内ケース32に固定されている。一方、スイッチ36のレバー部36bは、駆動レバー側インナーワイヤ34のラッチレバー側端部34aに固定されている。なお、スイッチ36の出力信号(ON・OFF信号)も、ワイヤーハーネス41を通してコントローラ40に入力されるように構成(電気的に接続)されている。
【0027】
コントローラ(モータ制御装置)40は、上述したように各スイッチSW1,SW2,SW3,36にワイヤーハーネス41を介して電気的に接続されているとともに、電気モータ24にワイヤーハーネス41と給電線42(図3、図6参照)を介して電気的に接続されている。また、コントローラ40は、上述した各スイッチSW1,SW2,SW3,36等からの信号(ON・OFF信号)に基づいて、電気モータ24の正回転・逆回転・停止を制御するものであり、車両のドア201が開状態から半ドア状態とされたときに、電気モータ24を正回転させてラッチ11をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に向けて移動させる第1制御手段と、この第1制御手段の実行開始後、設定時間内(ストライカ203のストロークSに換算して図9のSa相当)に(ラッチ11がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動する初期に)、駆動力検出装置30にて検出される駆動力が設定値以上となってスイッチ36がON作動したとき、電気モータ24を逆回転させてラッチレバー21を初期状態に移動させる第2制御手段と、前記第1制御手段の実行によってラッチ11がフルラッチ状態に移動した後に電気モータ24を逆回転させてラッチレバー21を初期状態に移動させる第3制御手段を備えている。
【0028】
なお、第1制御手段の実行開始後、設定時間内にスイッチ36がON作動しないときには、設定時間後にスイッチ36がON作動しても、第2制御手段が実行されることはなく、第1制御手段の実行が完了し、ラッチ11がフルラッチ状態に移動する。また、第1制御手段の実行は、ラッチスイッチSW1のON信号とポールスイッチSW2のON信号からOFF信号への切り替えに基づいて開始され、ラッチスイッチSW1のOFF信号とポールスイッチSW2のON信号からOFF信号への切り替えに基づいて完了する。また、第3制御手段の実行は、第1制御手段の実行完了(ラッチスイッチSW1のOFF信号とポールスイッチSW2のON信号からOFF信号への切り替え)に基づいて開始され、復帰スイッチSW3のON信号からOFF信号への切り替えに基づいて完了する。また、第2制御手段の実行は、復帰スイッチSW3のON信号からOFF信号への切り替えに基づいて完了する。
【0029】
このため、この実施形態においては、ラッチ11が電気モータ24の正回転によってハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動する初期において、ドア201と車体202間に異物が挟み込まれて、駆動力検出装置30にて検出される駆動力が設定値以上となったとき、電気モータ24がコントローラ40によって逆回転する。このため、ドア201と車体202間に異物の挟み込みが有れば、電気モータ24によるドア201の全閉状態への引き込みが防止される。
【0030】
ところで、この実施形態では、クローザ装置20の駆動ケーブル22に介装されて駆動レバー23からラッチレバー21に伝達される駆動力を検出する機械式の駆動力検出装置30によって、ドア201と車体202間に異物が挟み込まれたことを検出するように構成されている。このため、異物の挟み込み検知が周囲温度やドア201の車体202に対する建付による影響を受け難く、精度の高い挟み込み検知を行うことが可能であり、異物の挟み込みを的確に回避(防止)することが可能である。
【0031】
また、この実施形態の駆動力検出装置30は、ラッチレバー21に連結されるラッチレバー側インナーワイヤ33と、駆動レバー23に連結される駆動レバー側インナーワイヤ34と、これら両インナーワイヤ33,34間に設けられて前記駆動力が設定値となったときに所定量弾性変形するスプリング35と、このスプリング35が所定量弾性変形したときに作動するスイッチ36を備えている。このため、例えば、スプリング35が弾性変形を開始する荷重特性(予荷重)を変えることにより、最悪条件のドア建付にも対応させることが可能である。
【0032】
上記実施形態においては、駆動力検出装置30がスプリング35(圧縮コイルスプリング)を備える構成として実施したが、上記したスプリング35に代えて、ラッチレバー側インナーワイヤ(33)の駆動レバー側端部(33a)に一端を係止し、駆動レバー側インナーワイヤ(34)のラッチレバー側端部(34a)に他端を係止していて、予荷重を付与されている引張コイルスプリングを採用して実施することも可能である。なお、本発明の実施に際しては、上記した圧縮コイルスプリングまたは引張コイルスプリングに付与される予荷重を調節可能に構成して実施することも可能である。
【0033】
また、上記実施形態においては、ラッチ11がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動する初期(ストライカ203のハーフラッチ状態(図4の状態)からのストロークSが設定値Sa以内であるとき)において、駆動力検出装置30にて検出される駆動力が設定値以上となったとき(スイッチ36がON作動したとき)、電気モータ24を逆回転させてラッチレバー21を初期状態に移動させるように設定して実施したが、電気モータ24を逆回転させてラッチレバー21を初期状態に移動させる代わりに、例えば、電気モータ(24)を所定時間停止させ、その後に電気モータ(24)を正回転させてラッチ(11)をフルラッチ状態に向けて移動させるように設定して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…ラッチ機構、11…ラッチ、11a…第1係合部、11b…第2係合部、11c…ラッチ溝、12…ポール、12a…軸部、12b…係止部、20…クローザ装置、21…ラッチレバー、22…駆動ケーブル、22a…アウターチューブ、22b…インナーワイヤ、23…駆動レバー、23a…回転軸、24…電気モータ、25…クッション、26…キャンセルレバー、30…駆動力検出装置、31…外ケース、32…内ケース、33…ラッチレバー側インナーワイヤ、33a…駆動レバー側端部、34…駆動レバー側インナーワイヤ、34a…ラッチレバー側端部、35…スプリング、36…スイッチ、36a…接点部、36b…レバー部、40…コントローラ、41…ワイヤーハーネス、42…給電線、100…車両用ドアロック装置、201…ドア、202…車体、203…ストライカ、204…インサイドドアハンドル、205…アウトサイドドアハンドル、SW1…ラッチスイッチ、SW2…ポールスイッチ、SW3…復帰スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカと係合するラッチを備えるとともに、このラッチをハーフラッチ状態とフルラッチ状態にて保持可能なポールを備えているラッチ機構と、
ハーフラッチ状態のラッチをフルラッチ状態に移動させることが可能なラッチレバーと、このラッチレバーに駆動ケーブルを介して連結された駆動レバーと、この駆動レバーを正回転または逆回転で駆動可能な電気モータとを備えているクローザ装置と、
前記駆動ケーブルに介装されて前記駆動レバーから前記ラッチレバーに伝達される駆動力を検出する機械式の駆動力検出装置を備えていて、
前記電気モータが前記駆動レバーを正回転させて前記駆動ケーブルを介して前記ラッチレバーを正回転させ前記ラッチをハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動させる初期において、前記駆動力検出装置にて検出される駆動力が設定値以上となったとき、前記電気モータを停止または逆回転させる制御手段を備えている車両用ドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアロック装置において、
前記駆動力検出装置は、前記ラッチレバーに連結されるラッチレバー側インナーワイヤと、前記駆動レバーに連結される駆動レバー側インナーワイヤと、これら両インナーワイヤ間に設けられて前記駆動力が設定値となったときに所定量弾性変形するスプリングと、このスプリングが所定量弾性変形したときに作動するスイッチを備えている、車両用ドアロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用ドアロック装置において、
前記駆動力検出装置は、前記駆動ケーブルにおけるアウターチューブの一部を構成する外ケースに移動可能に組付けた内ケースに組付けられている、車両用ドアロック装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ドアロック装置において、
前記ラッチレバー側インナーワイヤの駆動レバー側端部は前記内ケースに固定され、前記駆動レバー側インナーワイヤのラッチレバー側端部は前記内ケースに相対移動可能に組付けられていて、前記スプリングは前記駆動レバー側インナーワイヤのラッチレバー側端部と前記内ケース間に圧縮変形可能に介装され、前記スイッチの接点部は前記内ケースに固定され、前記スイッチのレバー部は前記駆動レバー側インナーワイヤのラッチレバー側端部に固定されている、車両用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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