説明

車両用ドアロック装置

【課題】車両用ドアロック装置において、蓋部を開状態に確実に保持し、かつハウジング内へ雨水浸入をより確実に防止する。
【解決手段】ハウジング8と、ハウジング8内に回動可能に支持され、ドアに配置される操作手段の操作を伝達可能な操作力伝達部材20が連結される連結部151を有するインサイドレバー15と、ハウジング8の上部に固定されるウォータプルーフカバー9とを備える。ハウジング8は、側面にインサイドレバー15の連結部151を露呈させる開口821を有する。ウォータプルーフカバー9は、ハウジング8の上面を覆う上面覆い部91と、上面覆い部91に対して折曲げ可能であって開口821を開閉可能な蓋部93と、蓋部93を上面覆い部91に対して折曲げ可能に繋ぐ折曲げ部94に沿って設けられ、ハウジング8の側面に当接する下向きの補強壁部95とを一体形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータプルーフカバーを備えた車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置においては、防盗性及び耐水性の向上を図るため、ドアに配置される操作手段に連結される作動レバーをハウジング内に収容すると共に、ハウジングの上部にウォータプルーフカバーを取り付ける。ハウジングは、作動レバーの連結部(ボーデンケーブル等で構成される操作力伝達部材が連結される部分)を露呈させる開口を有し、ウォータプルーフカバーは、ハウジングの開口を開閉可能な蓋部を有している。蓋部は、開状態とすることで、作動レバーの連結部への操作力伝達部材の連結作業を可能とし、また、閉状態とすることで、開口及び作動レバーの連結部を覆って防盗性及び耐水性の向上を図るようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4701777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようなドアロック装置は、蓋部をウォータプルーフカバーに単に開閉可能に設けた構成であるため、ウォータプルーフカバーにおける蓋部を開閉可能にするヒンジ部の近傍の剛性が不足し、操作力伝達部材を作動レバーの連結部に連結する際、開状態にある蓋部が閉じ方向へ振れる等して、開口量が狭まって操作力伝達部材の連結作業が困難となったり、剛性不足から蓋部を閉じた状態で、ハウジングの表面とウォータプルーフカバーとの間に隙間が発生し、この隙間から雨水が浸入する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、ウォータプルーフカバーの剛性不足を解消して、蓋部を開状態に確実に保持して、操作力伝達部材の連結作業を容易にすると共に、ハウジング内への雨水浸入をより確実に防止可能とした車両用ドアロック装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第1の発明は、ハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に支持され、ドアに配置される操作手段の操作を伝達可能な操作力伝達部材が連結される連結部を有する作動レバーと、前記ハウジングの上部に固定されるウォータプルーフカバーとを備えた車両用ドアロック装置において、前記ハウジングは、側面に前記作動レバーの前記連結部を露呈させる開口を有し、前記ウォータプルーフカバーは、前記ハウジングの上面を覆う上面覆い部と、前記上面覆い部に対して折曲げ可能であって前記ハウジングの前記開口を開閉可能な蓋部と、前記蓋部を前記上面覆い部に対して折曲げ可能に繋ぐ折曲げ部に沿って設けられ、前記ハウジングの前記側面に当接する下向きの補強壁部とを一体形成し、前記折曲げ部を、前記補強壁部と前記蓋部とを繋ぐ境界部位に沿って設けたことを特徴とする。この構成によると、折曲げ部近傍の剛性が向上し、蓋部を安定して開状態に保持して、操作力伝達部材の連結作業を効率的に行うことができ、ウォータプルーフカバーとハウジングとの間の隙間を極力少なくして、ハウジング内への雨水浸入を防止することが可能となる。
【0007】
第2の発明は、ハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に支持され、ドアに配置される操作部材の操作を伝達可能な操作力伝達部材が連結される連結部を有する作動レバーと、前記ハウジングの上部に固定されるウォータプルーフカバーとを備えた車両用ドアロック装置において、前記ハウジングは、側面に前記作動レバーの前記連結部を露呈させる開口を有し、前記ウォータプルーフカバーは、前記ハウジングの上面を覆う上面覆い部と、前記上面覆い部から垂下し、前記ハウジングの前記側面を覆う側面覆い部と、前記側面覆い部に対して折曲げ可能であって前記ハウジングの前記開口を開閉可能な蓋部と、前記蓋部を前記側面覆い部に対して折曲げ可能に繋ぐ折曲げ部に沿って設けられ、前記ハウジングの前記側面に当接する下向きの補強壁部とを一体形成し、前記折曲げ部を、前記補強壁部と前記蓋部とを繋ぐ境界部位に沿って設けたことを特徴とする。この構成によると、折曲げ部近傍の剛性が向上し、蓋部を安定して開状態に保持して、操作力伝達部材の連結作業を効率的に行うことができ、ウォータプルーフカバーとハウジングとの間の隙間を極力少なくして、ハウジング内への雨水浸入を防止することが可能となる。
【0008】
好ましくは、第1または第2の発明において、前記ハウジングは、前記側面における前記開口の上方で、かつ前記補強壁部の下方にあって、前記蓋部の裏面に向けて突出する横樋部を一体形成し、前記ウォータプルーフカバーの前記蓋部は、閉状態で前記ハウジングの前記側面に向けて突出し、前記側面における前記開口の上方に当接可能な横樋部を一体形成する。この構成によると、開口への雨水浸入をより確実に防止することができる。
【0009】
さらに好ましくは、第1〜3の発明のいずれかにおいて、前記ウォータプルーフカバーは、前記操作力伝達部材を前記作動レバーの前記連結部に連結した状態で前記蓋部を閉塞することによって、前記蓋部の閉方向から視認可能な識別マークを前記蓋部の表面に形成する。この構成によると、識別マークを確認することで、ドアロック装置のドアに対する誤組付けを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ウォータプルーフカバーにおいて下向きの補強壁部を折曲げ部に沿って一体形成したことによって、折曲げ部近傍の剛性が向上し、蓋部を安定して開状態に保持して、操作力伝達部材の連結作業を効率的に行うことができると共に、ウォータプルーフカバーとハウジングとの間の隙間を極力少なくして、ハウジング内への雨水浸入を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わるドアロック装置の正面図である。
【図2】図1におけるII矢視図である。
【図3】ウォータプルーフカバーの蓋部を開けた状態の図1におけるII矢視図である。
【図4】ウォータプルーフカバーの蓋部を開けた状態の図1におけるIV矢視図である。
【図5】図3におけるV矢視図である。
【図6】ドアロック装置の斜視図である。
【図7】操作ユニットの分解斜視図である。
【図8】ロックレバー及びチャイルドプルーフレバーがアンロック位置にある状態の操作ユニットの側面図である。
【図9】ロックレバーがロック位置、チャイルドプルーフレバーがアンロック位置にある状態の操作ユニットの側面図である。
【図10】ロックレバーがアンロック位置、チャイルドプルーフレバーがロック位置にある状態の操作ユニットの側面図である。
【図11】図2におけるXI〜XI線拡大断面図である。
【図12】図3におけるXII〜XII線拡大断面図である。
【図13】ウォータプルーフカバーの底面図である。
【図14】図2における矢示XIV部の拡大図である。
【図15】図14におけるXV−XV線断面図である。
【図16】他の実施形態における図11と同じ状態での断面図である。
【図17】同じく図12と同じ状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、図1における左側を「車内側」とし、右側を「車外側」とし、図2、3における左方を「前方」とし、右方を「後方」とする。
【0013】
図1〜6に示すように、ドアラッチ装置1は、自動車のリヤドア(以下、ドアと記す)の後端内側に取り付けられ、車体側のストライカ5(図1参照)に係合することによりドアを閉状態に保持可能な噛合ユニット2と、噛合ユニット2に組み付けられ噛合ユニット2の噛合を解除可能な操作ユニット3とを備える。
【0014】
図1に示すように、噛合ユニット2における車体に固定される合成樹脂製のボディ4内には、車体側のストライカ5と係合可能なラッチ6と、当該ラッチ6に係合可能なラチェット7が回動可能に収容される。ボディ4の前面には、ラチェット7と一体的に回動可能なオープンレバー71(図8〜10参照)が枢支される。ドアが閉じられると、ストライカ5がラッチ6に係合すると共に、ラチェット7がラッチ6に係合してラッチ6のオープン方向(図1において時計方向)への回動を阻止することによりドアを閉状態に保持する。
【0015】
主に図7〜10に明示されるように、操作ユニット3は、ボディ4に固定される車外側のケース81及び車内側のカバー82を含むハウジング8と、ハウジング8内への雨水浸入を防止するためのウォータプルーフカバー9と、モータ10と、モータ10の動力により回転可能なウォームホイール11と、ロックレバー12と、第1リフトレバー13と、第2リフトレバー14と、本発明における作動レバーを構成するインサイドレバー15と、連係レバー16と、チャイルドプールレバー17と、アウトサイドレバー18とを備える。
【0016】
ロックレバー12、インサイドレバー15及び連係レバー16は、それぞれが独立して回動し得るようにハウジング8内(ケース81とカバー82との間)に車内外方向を向く軸811により枢支される。なお、図8〜10においては、操作ユニット3の内部構造を明示するためカバー82を省略している。
【0017】
ロックレバー12は、ドアの車内側に設けられる操作手段をなす施解錠操作用のロックノブの手動操作及びモータ10の動力によるウォームホイール11の回動に基づいて、ドアの車外側に配置されるアウトサイドハンドル(図示略)及びドアの車内側に配置される操作手段をなすインサイドハンドルのドア開操作を有効にする図8、10に示すアンロック位置と、アンロック位置から反時計方向へ所定角度回動しアウトサイドハンドル及びインサイドハンドルのドア開操作を無効にする図9に示すロック位置とに回動可能であって、ハウジング8内に支持されたばね22の付勢力によって各位置に弾性保持される。
【0018】
ロックレバー12の下端部に設けられる連結部121は、ボーデンケーブル等により構成される操作力伝達部材21を介してロックノブに連結される。これにより、ロックノブの手動による施解錠操作は、操作力伝達部材21を介して連結部121に伝達され、ロックレバー12は、ばね22の付勢力に抗してアンロック位置及びロック位置に回動して停止する。
【0019】
ウォームホイール11は、ハウジング8内に車内外方向を向く軸813により枢支されると共に、モータ10の回転軸に止着されたウォーム101に噛合してモータ10の動力により正逆転する。
【0020】
図8に示すアンロック状態(ロックレバー12がアンロック位置にある状態)において、車内に設けられた操作スイッチまたは携帯用の操作スイッチがロック操作されると、モータ10がロック方向へ回転することで、ウォームホイール11は、図8に示す位置から時計方向へ回動し、当該回動は、ウォームホイール11の回転面に設けられた突部111を介してロックレバー12に伝達される。これにより、ロックレバー12は、アンロック位置から図9に示すロック位置に回動する。
【0021】
また、図9に示すロック状態(ロックレバー12がロック位置にある状態)において、車内に設けられた操作スイッチまたは携帯用の操作スイッチがアンロック操作されると、モータ10がアンロック方向へ回転することで、ウォームホイール11は、図9に示す位置から反時計方向へ回動し、当該回動は、ウォームホイール11の突部111を介してロックレバー12に伝達される。これにより、ロックレバー12は、ロック位置から図8に示すアンロック位置に回動する。
【0022】
アウトサイドレバー18は、ケース81の下部に前後方向の軸812により枢支されると共に、車内側端部の作動端部181には、第1、2リフトレバー13、14の下部が所定角度前後方向へ揺動可能に連結され、また、同じく車外側端部の車外連結部182には、上下方向を向く操作力伝達部材(図示略)を介してアウトサイドハンドルに連結される。これにより、アウトサイドハンドルがドア開操作されると、アウトサイドレバー18は、軸812の周りに設けられたばねの付勢力に抗して、待機位置(例えば図1参照)からオープン方向(図1において時計方向)へ所定角度回動する。
【0023】
第1リフトレバー13は、アウトサイドレバー18の作動端部181を中心に前後方向へ所定角度揺動可能であって、上下方向の長孔131にロックレバー12の突部122が摺動可能に係合される。
【0024】
ロックレバー12がロック位置からアンロック位置、またはその逆へ回動すると、第1リフトレバー13は、ロックレバー12と共に図8に示すアンロック位置から図9に示すロック位置、またはその逆へ揺動する。また、アウトサイドレバー18が待機位置からオープン方向へ回動すると、第1リフトレバー13は、ロックレバー12がロック位置にあるときにはロック位置からオープン方向(前方斜め上方)へ移動し、また、ロックレバー12がアンロック位置にあるときにはアンロック位置からオープン方向(上方)へ移動する。
【0025】
第2リフトレバー14は、アウトサイドレバー18の作動端部181を中心に前後方向へ所定角度揺動可能であって、第1リフトレバー13との間に作用するばね23の付勢力の範囲内で第1リフトレバー13と一体的に図8に示すアンロック位置及び図9に示すロック位置に移動する。
【0026】
第2リフトレバー14には、オープンレバー71に対して回動方向へ当接可能な解除部141が設けられる。これにより、第2リフトレバー14が第1リフトレバー13と共にアンロック位置からオープン方向へ移動すると、解除部141がオープンレバー71の回動端部に下方から当接してオープンレバー71をオープン方向へ回動させ、ラチェット7をラッチ6から離脱させてドアを開けることができる。しかし、第2リフトレバー14が第1リフトレバー13と共にロック位置からオープン方向へ移動した場合には、解除部141は、オープンレバー71の前方を横切るように移動するだけで、オープンレバー71の回動端部に対して空振りしてドアを開けることはできない。
【0027】
チャイルドプルーフレバー17は、ハウジング8内に車内外方向を向く軸814により枢支され、後端部に設けられ車内側へ突出する手動操作部172が操作されることにより、インサイドハンドルのドア開操作を有効にする図8、9に示すアンロック位置及びアンロック位置から時計方向へ所定角度回動してインサイドハンドルのドア開操作を無効にする図10に示すロック位置に回動する。手動操作部172は、ドアを開けたときのみ、手動操作が可能なようにカバー82の下部に設けられた長孔827及びドアのインナパネルに設けられる長孔(図示略)から露出する。
【0028】
チャイルドプルーフレバー17の前部に設けられた前後方向の長孔171には、鍔付きのフローティングピン24が前後方向へ摺動可能に係合される。
【0029】
インサイドレバー15は、ハウジング8内に軸811により枢支されると共に、カバー82の側面上部に設けられる円弧状の開口821を通ってカバー82外に露呈するように車内側へクランク状に折曲形成された連結部151と、フローティングピン24が摺動可能に係合するほぼT字状の制御孔152とを有する。連結部151にインサイドハンドルの操作力を伝達可能なボーデンケーブル等で構成される操作力伝達部材20の端末を連結することにより、インサイドレバー15は、インサイドハンドルのドア開操作に基づいて例えば図8に示す待機位置からオープン方向(反時計方向)へ所定角度回動する。
【0030】
連係レバー16は、ハウジング8内に軸811により枢支されると共に、フローティングピン24が上下方向へ摺動可能に係合する長孔161と、オープン作動(図8〜10に示す位置から時計方向へ回動する作動)することにより、アウトサイドレバー18の回動端部183に下方から当接可能な押動部162とを有する。
【0031】
フローティングピン24は、図8、9に示すように、チャイルドプルーフレバー17がアンロック位置にあるときには、インサイドレバー15の制御孔152の下部に位置にして、インサイドレバー15のオープン作動を連係レバー16に伝達可能であり、また、図10に示すように、チャイルドプルーフレバー17がロック位置にあるときには、制御孔152の上部に位置して、インサイドレバー15のオープン作動を連係レバー16に伝達不能とする。
【0032】
図8に示すように、ロックレバー12及びチャイルドプルーフレバー17が共にアンロック位置にある場合には、インサイドハンドルのドア開操作に基づいて、インサイドレバー15がオープン作動すると、当該オープン作動は、フローティングピン24を介して連係レバー16に伝達される。これにより、連係レバー16は、インサイドレバー15と共にオープン作動し、押動部162がアウトサイドレバー18の回動端部183に対して下方から回動方向へ当接することで、アウトサイドレバー18をオープン方向へ回動させる。アウトサイドレバー18がオープン方向へ回動すると、第2リフトレバー14が上方へ移動し、解除部141がオープンレバー71の回動端部に当接することにより、オープンレバー71をオープン方向へ回動させ、ラチェット7をラッチ6から離脱させてドアを開けることができる。
【0033】
図10に示すように、ロックレバー12がアンロック位置にあり、チャイルドプルーフレバー17がロック位置にある場合には、フローティングピン24は制御孔152の上部に位置してインサイドレバー15と連係レバー16との連結関係を切断している。従って、インサイドハンドルのドア開操作に基づいて、インサイドレバー15がオープン作動しても、当該オープン作動は、連係レバー16に伝達されないため、ロックレバー12がアンロック位置にあってもインサイドハンドルのドア開操作でドアを開けることはできない。
【0034】
次に、ハウジング8及びウォータプルーフカバー9について説明する。
カバー82の側面上部には、インサイドレバー15の回転中心を中心とする円弧状の開口821が形成され、カバー82の側面の下部には、前後方向の開口826が形成される。
【0035】
開口821は、ハウジング8内に枢支されるインサイドレバー15の連結部151を露呈させることによって、インサイドレバー15をハウジング8内に枢支した状態で、操作力伝達部材20の端末を連結部151に連結可能とするためのものである。また、開口826は、ハウジング8内に枢支されるロックレバー12の連結部121を露呈させることによって、ロックレバー12をハウジング8内に枢支した状態で、操作力伝達部材21の端末を連結部121に連結可能とするためのものである。
【0036】
カバー82の下部に設けられた前後の連結部828、828には、開口826を開閉可能な合成樹脂製の蓋部材19が前後方向の軸回りに回動可能に連結される。蓋部材19は、開口826から露呈するロックレバー12の連結部121を覆うことによって、ロックレバー12の連結部121が不正に攻撃さないようにして防盗性の向上を図ると共に、開口826からの雨水浸入を防止して耐水性の向上を図るものである。なお、蓋部材19は、ロックレバー12の連結部121に操作力伝達部材21の端末を連結した後に閉じられる。
【0037】
ハウジング8の上部に垂れる雨水は、その殆んどがハウジング8の上部に取り付けられるウォータプルーフカバー9により受け止められるが、雨水量が大量である場合には、ハウジング8とウォータプルーフカバー9間の隙間に浸入する場合もある。このため、ハウジング8とウォータプルーフカバー9間の隙間に浸入した雨水が開口821からハウジング8内に浸入しないようにするため、カバー82の側面における開口821の近傍には、浸入した雨水を受け止めて定めた方向へ誘導可能な第1、2、3横樋部822、823、824及び竪樋部825が形成される。
【0038】
第1横樋部822は、開口821の上方にあって、車内側へ所定量突出した形態で前方斜め下方へ延出し、ウォータプルーフカバー9とハウジング8の上面との隙間に浸入して垂れてきた雨水を受け止めて前方斜め下方へ誘導して開口821よりも前方へ流下させる。
【0039】
第2横樋部823は、第1横樋部822の下方で、かつ開口821の上方にあって、車内側へ所定量突出した形態で前方斜め下方へ延出し、第1横樋部822の途中で垂れた雨水を受け止めて前方斜め下方へ誘導して開口821よりも前方へ流下させる。
【0040】
第3横樋部824は、第2横樋部823の下方で、かつ開口821の上縁に沿って設けられ、第2横樋部823の途中で垂れた雨水を受け止めて前方斜め下方へ誘導して開口821よりも前方へ流下させる。
【0041】
竪樋部825は、特にハウジング8の後部の上面から垂れてきた雨水が開口821へ向けて流れ込まないように、開口821の後方を遮蔽するように第1横樋部822の後端(頂部)から下方へ延出する。
【0042】
第1横樋部822により受け止められて前方斜め下方へ誘導された雨水は、図3に矢印で示す流路Aを辿ってハウジング8の下端から落下する。第2、3横樋部823、824により受け止められて前方斜め下方へ誘導された雨水は、図3に矢印で示す流路Bを辿ってハウジング8の下端から落下する。また、竪樋部825に誘導された雨水は、図3に矢印で示す流路Cを辿ってハウジング8の下端から落下する。なお、カバー82の側面には、雨水を流路A、B、Cに沿って流れるように、車内側へ突出する壁a〜f(図3参照)が形成される。
【0043】
ウォータプルーフカバー9は、合成樹脂製で形成され、ハウジング8の上部に固定されるとともに、ハウジング8の上面を覆う前方へ斜め傾斜する上面覆い部91と、ケース81の車外側の上部側面を覆う車外側覆い部92と、上面覆い部91に対して折曲げ可能であって、カバー82の開口821を含む側面上部を開閉可能な蓋部93と、蓋部93を上面覆い部91に対して折曲げ可能に繋ぐ折曲げ部94の折曲げ線941(図13参照)に沿って設けられ、カバー82の側面上部に当接する下向きの補強壁部95とを一体形成する。折曲げ部94は、蓋部93と補強壁部95とを繋ぐ角部の境界部位に沿って薄肉状に連続形成される。
【0044】
蓋部93は、開口821を開閉し得るように折曲げ部94から折り曲げ可能であって、例えば図3に示すように、開放することで操作力伝達部材20の端末を開口821から露呈するインサイドレバー15の連結部151に連結可能とし、また、例えば図2に示すように、閉塞することで開口821及びインサイドレバー15の連結部151を覆って、インサイドレバー15が不正に攻撃されないようにして防盗性の向上を図ると共に、開口821への雨水浸入を防止して耐水性の向上を図るものである。また、蓋部93を上面覆い部91に対して折曲げ可能とするため、蓋部93と上面覆い部91との境界部位、すなわち折曲げ部94には、切欠きや繋ぎ目が一切形成されないため、確実な防水効果を得ることができる。
【0045】
また、ハウジング8の側面に当接する補強壁部95を、折曲げ部94の折曲げ線941に沿って形成したことにより、折曲げ部94近傍の剛性を向上させること可能となる。これにより、操作力伝達部材20の端末をインサイドレバー15の連結部151に連結する作業を行う際、蓋部93を妄りに振れないで安定した状態で開状態に保持して、操作力伝達部材20をインサイドレバー15の連結部151に容易に連結することができる。さらには、蓋部93を閉じた状態にあっては、折曲げ部94近傍の経年変化による変形が補強壁部95により抑止されるため、ウォータプルーフカバー9の裏面とハウジング8の表面との間の隙間を極力減少させて、雨水浸入をより確実に防止することが可能となる。
【0046】
蓋部93の表面には、ドアロック装置1のタイプを表す識別マーク932と、特に図14、15に示すように、作業者に対して組付作業の滑り止め効果を奏する網目状の突条部934とが形成される。識別マーク932は、作業者が蓋部93を閉じることで、蓋部93の閉方向(図12に示す矢印方向)から確実に視認可能な位置に設けられる。これにより、作業者が蓋部93を閉じた際に識別マーク932を確認することで、ドアロック装置1の車両への誤組付けを確実に未然に防止することができる。なお、ケース81の側面にも、滑り止め効果をより確実なものとするため蓋部13の表面に形成される突条部934と同形状の網目状の突条部815が設けられる。
【0047】
すなわち、ドアロック装置1は、車種毎に対応する機能を有する内部構造を備えるが、自動車部品の共通化を進めるため、内部構造の機能が互いに違っても概観形状が極めて類似する。また、通常、ドアロック装置1は、部品メーカーで製造されてカーメーカーに納入される。そして、カーメーカーの作業者は、納入されたドアロック装置1を車両のドアに組み付けるため、車両の組立て行程においてドアロック装置1をドアに組み付ける直前に、操作力伝達部材20、21の端末をインサイドレバー15及びロックレバー12の連結部151、121にそれぞれ連結する作業を行う。そして、インサイドレバー15、ロックレバー12の連結部151、121に操作力伝達部材20、21の端末をそれぞれ連結して蓋部93、蓋部材19を閉じることで、作業者は、識別マーク932を確認する。これにより、誤搬送等により本来、組み付けるべくドアロック装置1と違う場合には、作業者は、インサイドレバー15の連結部151に操作力伝達部材20の端末を連結して蓋部93を閉じる一連の組付作業の段階で識別マーク932を確認してドアロック装置1の正誤を確認することができる。この結果、ドアロック装置1の車両への誤組付けを確実に未然に防止することができる。さらには、蓋部93の表面には、滑り止め効果を奏する網目状の突条部934が設けられるため、操作力伝達部材20をインサイドレバー15の連結部151に連結した後、蓋部93を容易に閉じることができる。さらには、ケース81の側面にも滑り止め効果を奏する突条部815が設けられるため、作業者は、操作ユニット3を確実に掴むことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0048】
蓋部93におけるカバー82の側面に対向する裏面には、カバー82の側面に向けて突出し、第1横樋部822の上側に沿ってカバー82の側面に当接する前方へ下り傾斜する横方向の横樋部931が一体形成される。これにより、例え、ウォータプルーフカバー9の上面覆い部91とハウジング8の上面との間の隙間に雨水が浸入したとしても、当該浸入した雨水を、横樋部931により受け止めて前方斜め下方へ誘導させ、開口821よりも前方へ流下させることができる。また、横樋部931の途中から流下した雨水は、前述のカバー82に設けた第1、2、3横樋部822、823、824により受け止められて流路A、Bを辿ってハウジング8の下端から落下させる。さらに、蓋部93におけるカバー82の側面に対向する裏面には、蓋部93を閉じた際、カバー82に設けた係合孔829に係合して、蓋部93を閉状態に保持するための弾性爪部933が一体形成される。
【0049】
図16、17は、本発明に係わるウォータプルーフカバー9の他の実施形態を示す。
他の実施形態におけるウォータプルーフカバー90は、ハウジング8の上面を覆う上面覆い部901と、上面覆い部901の車外側(図16、17において左側)の端部から垂下し、ハウジング8の車外側の上部側面を覆う側面覆い部(図示略)と、上面覆い部901の車内側(図16、17において右側)の端部から垂下し、ハウジング8の車内側の側面上部を覆う側面覆い部906と、側面覆い部906に対して折曲げ可能であってハウジング8の開口821を開閉可能な蓋部903と、蓋部903を側面覆い部906に対して折曲げ可能に繋ぐ前記実施形態と同様に形成される折曲げ部904に沿って設けられ、ハウジング8の車内側の側面に当接する下向きの補強壁部905とを一体形成する。そして、折曲げ部904は、補強壁部905と蓋部903とを繋ぐ境界部位に沿って設ける。他の構成については、前記実施形態と同一であるので、前記実施形態と同一の符号を付して説明は省略する。
【0050】
他の実施形態においても、ハウジング8の側面に当接可能な下向きの補強壁部905を折曲げ部904に沿って設けたことによって、ウォータプルーフカバー90の折曲げ部904近傍の剛性が向上して、前記実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、例えば次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(a)本発明に係わる作動レバーを、本実施形態のロックレバー12とする。
(b)操作力伝達部材20、21を、ロッドとする。
(c)識別マーク932を、左右の識別用とする。
【符号の説明】
【0052】
1 ドアラッチ装置
2 噛合ユニット
3 操作ユニット
4 ボディ
5 ストライカ
6 ラッチ
7 ラチェット
8 ハウジング
9、90 ウォータプルーフカバー
10 モータ
11 ウォームホイール
12 ロックレバー
13 第1リフトレバー
14 第2リフトレバー
15 インサイドレバー(作動レバー)
16 連係レバー
17 チャイルドプルーフレバー
18 アウトサイドレバー
19 蓋部材
20、21 操作力伝達部材
22、23 ばね
24 フローティングピン
71 オープンレバー
81 ケース
82 カバー
91、901 上面覆い部
92 車外側覆い部
93、903 蓋部
94、904 折曲げ部
95、905 補強壁部
101 ウォーム
111 突部
121 連結部
122 突部
131 長孔
141 解除部
151 連結部
152 制御孔
161 長孔
162 押動部
171 長孔
172 手動操作部
181 作動端部
182 車外連結部
183 回動端部
811、812、813、814 軸
815 突条部
821 開口
822 第1横樋部
823 第2横樋部
824 第3横樋部
825 竪樋部
826 開口
827 長孔
828 連結部
829 係合孔
906 側面覆い部
931 横樋部
932 識別マーク
933 弾性爪部
934 突条部
941 折曲げ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に支持され、ドアに配置される操作手段の操作を伝達可能な操作力伝達部材が連結される連結部を有する作動レバーと、前記ハウジングの上部に固定されるウォータプルーフカバーとを備えた車両用ドアロック装置において、
前記ハウジングは、側面に前記作動レバーの前記連結部を露呈させる開口を有し、
前記ウォータプルーフカバーは、前記ハウジングの上面を覆う上面覆い部と、前記上面覆い部に対して折曲げ可能であって前記ハウジングの前記開口を開閉可能な蓋部と、前記蓋部を前記上面覆い部に対して折曲げ可能に繋ぐ折曲げ部に沿って設けられ、前記ハウジングの前記側面に当接する下向きの補強壁部とを一体形成し、
前記折曲げ部を、前記補強壁部と前記蓋部とを繋ぐ境界部位に沿って設けたことを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
ハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に支持され、ドアに配置される操作部材の操作を伝達可能な操作力伝達部材が連結される連結部を有する作動レバーと、前記ハウジングの上部に固定されるウォータプルーフカバーとを備えた車両用ドアロック装置において、
前記ハウジングは、側面に前記作動レバーの前記連結部を露呈させる開口を有し、
前記ウォータプルーフカバーは、前記ハウジングの上面を覆う上面覆い部と、前記上面覆い部から垂下し、前記ハウジングの前記側面を覆う側面覆い部と、前記側面覆い部に対して折曲げ可能であって前記ハウジングの前記開口を開閉可能な蓋部と、前記蓋部を前記側面覆い部に対して折曲げ可能に繋ぐ折曲げ部に沿って設けられ、前記ハウジングの前記側面に当接する下向きの補強壁部とを一体形成し、
前記折曲げ部を、前記補強壁部と前記蓋部とを繋ぐ境界部位に沿って設けたことを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記側面における前記開口の上方で、かつ前記補強壁部の下方にあって、前記蓋部の裏面に向けて突出する横樋部を一体形成し、
前記ウォータプルーフカバーの前記蓋部は、閉塞状態で前記ハウジングの前記側面に向けて突出し、前記側面における前記開口の上方に当接可能な横樋部を一体形成したことを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記ウォータプルーフカバーは、前記操作力伝達部材を前記作動レバーの前記連結部に連結した状態で前記蓋部を閉塞することによって、前記蓋部の閉塞方向から視認可能な識別マークを前記蓋部の表面に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ドアロック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−36242(P2013−36242A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173530(P2011−173530)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】