説明

車両用バッテリケース

【課題】フランジの突出量を抑えつつ、容易にカバーの着脱を可能にする車両用バッテリケースを提供する。
【解決手段】開口部の周縁部に外方に突出するフランジ26を備えたケース本体20と、ケース本体20の開口部を覆い、フランジ26に重なり合うフランジ27を備えたカバー22と、フランジ27とフランジ26とを共に挟み込む第2のプレート25とによりバッテリケースが構成され、第2のプレート25は、一端がフランジ27に係止されるとともに、他端がケース本体20に固定された第1のプレート24にスタッドボルト33によって締結されて、ケース本体20とカバー22とを互いに押し付けるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリケースに係り、詳しくは、バッテリを収納するケースの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のバッテリが搭載され、当該バッテリの電力で駆動されるモータを走行駆動源の1つとするハイブリッド車や電気自動車が広く開発されている。
このような電動車両に搭載されるバッテリは、容量及び出力電圧を確保するため、複数のバッテリをバッテリケース内に収納して構成されている。また、バッテリケースは、内部に雨水等が侵入しないように密閉性が要求されている。
【0003】
バッテリケースは、例えば上部が開口した箱状に形成されバッテリが収納されるケース本体と、ケース本体の開口部を覆うカバーとから構成されている。
ケース本体とカバーとを固定する方法としては、例えばケース本体とカバーとの接続部に夫々フランジを設け、フランジに設けられた孔にボルトを通し、当該ボルトとナットとによりフランジを共締めすることが、簡単な方法として考えられる。
【0004】
その他に2個の物体を固定する方法としては、突き合わせた2個の物体の側面にブラケットを配置し、当該ブラケットを2個の物体に夫々ボルトで固定する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4088900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにフランジをボルトによって固定した場合、フランジ上にボルトを配置するためにフランジの突出長さを確保しなければならず、電気自動車のようにバッテリケースの搭載スペースが限られ、かつ大容量のバッテリを搭載する必要のある場合に不利な要因となってしまう。
また、軽量化のためケース本体及びカバーが樹脂で構成されている場合には、ボルト間で樹脂が温度変化によって変形する場合があり、ケース本体及びカバーとの当接部における密閉性が低下する虞がある。そこで、ボルト間の間隔を短くしてケース本体とカバーとを締結すれば変形は抑えられるが、ボルトの数が多くなるので、カバーの着脱時の工数が増加してしまう。
【0007】
また、上記特許文献1では、2個の物体とブラケットとを夫々ボルトで固定するので、ボルト数が増え、カバーの着脱の手間が掛かるとともに、部品点数の増加を招いてしまう。
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、フランジの突出量を抑えつつ、容易にカバーの着脱が可能な車両用バッテリケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、請求項1の車両用バッテリケースは、車両に搭載される走行用バッテリを収納する車両用バッテリケースであって、バッテリを収納するとともに、バッテリを取り出すための開口部が設けられ、当該開口部の周縁部に外方に突出するケース側フランジを備えたケース本体と、ケース本体の開口部を覆い、ケース側フランジに重なり合うカバー側フランジを備えたカバーと、カバー側フランジとケース側フランジとを共に挟み込む挟持部材と、により構成され、挟持部材は、一端がカバー側フランジに係止されるとともに、他端がケース本体にボルトによって締結されて、カバーとケース本体とを固定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の車両用バッテリケースは、請求項1において、挟持部材には、ケース側フランジとカバー側フランジとの当接面に対して傾斜した傾斜面が備えられ、挟持部材がケース本体にボルトによって締結されることで、傾斜面がケース本体と当接して当該ケース本体をかしめ、カバー側フランジとケース側フランジとを互いに押し付けることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の車両用バッテリケースは、請求項2において、カバー側フランジに対する挟持部材の係止位置と、ケース本体と傾斜面との当接位置とが同一平面上に配置されていることを特徴とする。
また、請求項4の車両用バッテリケースは、請求項1〜3のいずれか1項において、ケース本体及びカバーは樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の車両用バッテリケースは、請求項4において、ケース本体のボルトが備えられた位置の裏側に、リブを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の車両用バッテリケースによれば、第2の挟持部材によってカバー側フランジとケース側フランジとを挟み込む構造としたので、各フランジにボルトを挿入するボルト孔を設ける必要がなく、フランジの突出量を抑制することができる。
また、第2の挟持部材の一端をカバー側フランジに係止し、他端がケース本体にボルトによって締結される構造としたので、カバーの着脱が容易となり、ボルトの設置数を抑制することができる。
【0013】
請求項2の車両用バッテリケースによれば、第2の挟持部材の一端をカバー側フランジに係止し、他端をケース本体にボルトによって締結することで、傾斜面がケース本体と当接して当該ケース本体をかしめ、カバー側フランジとケース側フランジとを互いに押し付けるので、傾斜面の傾斜角度の設定により、カバー側フランジとケース側フランジとの押し付け力を増加させることが可能となる。よって、少ないボルトの設置数で十分に密閉性の高い車両用バッテリケースを得ることができる。
【0014】
請求項3の車両用バッテリケースによれば、カバー側フランジに対する第2の挟持部材の係止部と、ケース本体と当接する傾斜面の当接部とが同一平面上に配置されているので、ボルトによる締結力を効率よく第2の挟持部材の傾斜面とケース本体との当接部に作用させることができ、カバー側フランジとケース側フランジとの押し付け力を効果的に増加させることが可能となる。
【0015】
請求項4の車両用バッテリケースによれば、ケース本体及びカバーは樹脂により形成されているので、軽量化を図ることができ、車両搭載用に好適であるとともに、フランジ等の特殊な形状を容易に形成することが可能となり、部品製造を容易にすることができる。なお、樹脂により形成することによる撓みは、第2の挟持部材を幅広にすることで、十分に抑制することができる。
【0016】
請求項5の車両用バッテリケースによれば、ボルトが備えられた位置の裏側にリブを設けることで、ケース本体が樹脂で形成されたとしても、十分に強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るバッテリユニットが載置された電気自動車の斜視図である。
【図2】バッテリユニットの概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る第2のプレートの固定部の構造を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る第2のプレートの固定部の構造を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る第2のプレートの固定部の構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るバッテリが搭載された電気自動車用の斜視図である。
図1に示すように、電気自動車1は車体2の床下にバッテリユニット10が載置されるとともに、図示しない外部からの充電経路とを備えており、当該充電経路から電力の供給を受けて充電を行う充電器12が車体2の後部に配置され、バッテリユニット10は充電器12に接続されて蓄電するように構成されている。電気自動車は、バッテリユニット10を動力源として図示しない電気モータを駆動することで、タイヤを回転駆動し走行可能となっている。
【0019】
図2は、バッテリユニット10の概略構成図である。
図2に示すように、バッテリユニット10は、バッテリケース15内に複数のバッテリモジュール18が2列に複数個並んで収納されて構成されている。バッテリケース15は、上面が開口した直方体のケース本体20とケース本体20の上面を覆うカバー22と、ケース本体20の側面を覆う第1のプレート24と、ケース本体20とカバー22との当接部を着脱可能に覆う第2のプレート25(挟持部材)により構成されている。ケース本体20及びカバー22は樹脂により形成されている。第1のプレート24及び第2のプレートは板金を折り曲げて形成されている。なお、本実施形態では、ケース本体20と第1のプレート24とが、本発明のケース本体に該当する。
【0020】
ケース本体20の開口部は長方形であり、当該開口部の周縁部には、外方に突出するようにフランジ26(ケース側フランジ)が形成されている。また、カバー22の周縁部には、ケース本体20のフランジ26と互いに重なりあうようにフランジ27(カバー側フランジ)が形成されている。
第2のプレート25は、断面コの字状に形成されており、ケース本体20のフランジ26とカバー22のフランジ27とを挟持するように配置されている。第2のプレート25は、フランジ26、27の略幅一杯に延びて、計4個備えられており、当該4個の第2のプレート25でフランジ26、27の略全周を挟むように配置されている。
【0021】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る第2のプレート25の固定部の構造を示す縦断面図である。
本発明の第1の実施形態では、図3に示すように、ケース本体20のフランジ26には、カバー22のフランジ27との接触面26aにシール材30が設けられている。シール材30は、ケース本体20の開口部の縁に全周に亘って設けられている。
【0022】
カバー22のフランジ27の先端には、ケース本体20のフランジ26との接触面とは反対側である上方に突出する凸部31が設けられている。
第1のプレート24は、ケース本体20の側板20aを覆うとともに、下端部24aがケース本体20の底板20bの縁部を覆うように形成されている。第1のプレート24の上部はフランジ26の下方で外方に向けて折り曲げられており、その先端部24bがフランジ26の突出端の角部26bに引っ掛かるように上方に突出している。第1のプレート24は、フランジ26の下方で階段状に折り曲げられて角部24cが設けられている。
【0023】
また、第1のプレート24には、角部24cの下方の側板24dで外方に突出するようにスタッドボルト33が溶接されて固定されている。スタッドボルト33は、幅方向に所定間隔をおいて2、3箇所程度配置されている。
第2のプレート25は、上記のように略コの字状に形成されており、凸部31を含むカバー22のフランジ27を覆うとともに、ケース本体20のフランジ26を覆うように形成されている。第2のプレート25の上端部には、凸部31とカバー22の側板22aとの間の窪み35に入り込むようにフック部25aが形成されている。更に、第2のプレート25には、フランジ26より下方で角部24cの外側から第1のプレート24の側板24dに向かって斜め下方に延び、第1のプレート24の角部24cに当接する傾斜部25b(傾斜面)が形成されている。
【0024】
第2のプレート25の下端には、スタッドボルト33の位置に合わせて幅方向に所定間隔をおいて、第1のプレート24の側板24dに沿って下方に突出する突出部25cが設けられている。また、突出部25cには、スタッドボルト33が挿入可能なようにボルト孔37が設けられている。
更に、ケース本体20には、スタッドボルト33が配置されている位置の裏側にリブ38が設けられている。
【0025】
次に、以上のような構造のバッテリケース15において、ケース本体20とカバー22との固定手順について、図3を用いて説明する。
まず、第1のプレート24が取り付けられているケース本体20上に、カバー22を開口部に合わせて置く。
次に、図3中二点鎖線で示すように、第2のプレート25の上端部のフック部25aを凸部31とカバー22の側板22aとの間の窪み35に引っ掛ける。
【0026】
そして、フック部25aを支点に第2のプレート25の下端部を、ケース本体20の側板20aに向けて押し込み、第2のプレート25の突出部25cのボルト孔37に第1のプレート24のスタッドボルト33を挿入し、スタッドボルト33にナット40を締め付けて、第2のプレート25を第1のプレート24に固定する。
このように第2のプレート25の下端部をケース本体20の側板20aに向けて押し込むことで、第2のプレート25の傾斜部25bは、第1のプレート24の角部24cに当接して、第1のプレート24を斜め上方に押し込む。
【0027】
したがって、フランジ27を第2のプレート25の上端部のフック部25aで下方に抑えた状態で、第1のプレート24が斜め上方に押しつけられる。これにより、第1のプレート24を介してケース本体20のフランジ26とカバー22のフランジ27とが上下に押し付け合い、その当接面を密着させることができ、バッテリケース15を密閉させることができる。
【0028】
本実施形態では、第2のプレート25と第1のプレート24とを締結するスタッドボルト33が、フランジ26の下方に配置されており、フランジ26、27にボルトを挿入するボルト孔を設ける必要がないので、フランジ26、27の突出量を抑制することができる。よって、バッテリケース15の搭載スペースを抑制することができ、電気自動車のように大容量のバッテリを搭載する場合に特に有効となる。
【0029】
また、第2のプレート25の上端のフック部25aをカバー22の窪み35に係止する構造としたので、第2のプレート25とカバー22との固定にボルトを用いる必要がないので、カバー22の着脱が容易となり、ボルトの設置数を抑制することができる。
更に、第2のプレート25の傾斜部25bの傾斜角度と第1のプレート24の角部24cの当接面での角度により、スタッドボルト33の締め付け力に対する第1のプレート24への上方への押し付け力を任意に設定することが可能となる。よって、スタッドボルト33による締結力に対して、第1のプレート24への上方への押し付け力を増加させることが可能となる。これにより、フランジ26、27同士の押し付けを十分に行う事が可能となり、密閉性を十分に確保することができる。
【0030】
また、第2のプレート25の幅がフランジ26、27の幅と略同一であるので、フランジ26、27が幅一杯に亘って第2のプレート25によって押し付けられるので、フランジ26、27の撓みを抑えることができる。これにより、スタッドボルト33の設置箇所が少なくとも確実にフランジ26、27の押し付けを行うことができ、バッテリケース15の密閉性を高めることができる。特に、本実施形態のように、ケース本体20及びカバー22が樹脂により形成されている場合にはフランジ26、27に撓みが発生し易くなるが、第2のプレート25が幅広な形状により、このフランジ26、27の撓みを確実に抑えることができる。
【0031】
また、第2のプレート25が当接面の幅と略同一の幅広構造であり、フランジ27に対するフック部25aの係止位置と、角部24cと傾斜部25bとの当接位置とが同一平面上に位置するので、スタッドボルト33による締め付け力が効率よく係止位置と角部24cに対して作用され、フランジ26、27同士の押し付け力を更に効果的に増加させることが可能となる。
【0032】
また、スタッドボルト33の裏側にリブ38を設けているので、ケース本体20が樹脂により形成されていても、十分にカバー22の固定位置での強度を確保することができる。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る第2のプレート25の固定部の構造を示す断面図である。
【0033】
以下、上記第1の実施形態と異なる部分のみ説明する。
第2の実施形態では、第1のプレート24に角部24cが設けられておらず、ケース本体20のフランジ26の下面に下方に突出する角部50が設けられており、このフランジ26の角部50に第2のプレート25の傾斜部25bが当接するように配置されている。
したがって、本実施形態では、第2のプレート25から直接フランジ26に押し付け力が作用することとなる。よって、本実施形態では、スタッドボルト33による締結力に対して、フランジ26の上方への押しつけ力を増加させることが可能となる。これにより、第1の実施形態と同様に、フランジ26、27同士の押し付けを十分に行うことが可能となり、密閉性を十分に確保することができる。
【0034】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る第2のプレート25の固定部の構造を示す断面図である。
第3の実施形態では、第2の実施形態のフランジ26に設けた角部24cをなくした構造としている。そして、第2のプレート25の傾斜部25bを、ケース本体20のフランジ26の突出端の角部26bに当接するようにしている。このような構造でも、第2の実施形態と同様に、第2のプレート25からフランジ26に対して上方への押し付け力が作用して、フランジ26、27同士の押し付けを十分に行うことが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態では、電気自動車のバッテリユニットに本願のバッテリケースを適用しているが、エンジン駆動等その他の車両においても、密閉性を必要とするバッテリケースに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 電気自動車
18 バッテリケース
20 ケース本体
22 カバー
26 フランジ(ケース側フランジ)
27 フランジ(カバー側フランジ)
24 第1のプレート
25 第2のプレート
25b 傾斜部
33 スタッドボルト
38 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される走行用バッテリを収納する車両用バッテリケースであって、
前記バッテリを収納するとともに、前記バッテリを取り出すための開口部が設けられ、当該開口部の周縁部に外方に突出するケース側フランジを備えたケース本体と、
前記ケース本体の開口部を覆い、前記ケース側フランジに重なり合うカバー側フランジを備えたカバーと、
前記カバー側フランジと前記ケース側フランジとを共に挟み込む挟持部材と、により構成され、
前記挟持部材は、一端が前記カバー側フランジに係止されるとともに、他端が前記ケース本体にボルトによって締結されて、前記カバーと前記ケース本体とを固定することを特徴とする車両用バッテリケース。
【請求項2】
前記挟持部材には、前記ケース側フランジと前記カバー側フランジとの当接面に対して傾斜した傾斜面が備えられ、
前記挟持部材が前記ケース本体にボルトによって締結されることで、前記傾斜面が前記ケース本体と当接して当該ケース本体をかしめ、前記カバー側フランジと前記ケース側フランジとを互いに押し付けることを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリケース。
【請求項3】
前記カバー側フランジに対する前記挟持部材の係止位置と、前記ケース本体と前記傾斜面との当接位置とが同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用バッテリケース。
【請求項4】
前記ケース本体及び前記カバーは樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用バッテリケース。
【請求項5】
前記ケース本体の前記ボルトが備えられた位置の裏側に、リブを設けたことを特徴とする請求項4に記載の車両用バッテリケース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−151076(P2012−151076A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10937(P2011−10937)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】