説明

車両用ファン装置

【課題】ファン性能向上による風量増加を見込むことができる車両用ファン装置を提供すること。
【解決手段】ラジエータ1のコア部1aに配置したファン10と、ファン10を回転駆動する電動モータ11と、を備えた車両用ファン装置A1において、電動モータ11を、ラジエータ1のコア部1aの外側位置に配置した。ファン10の回転中心部には、ファンシャフト14を有するファン保持部13を設定した。そして、電動モータ11のモータ軸12とファン保持部13を、駆動シャフト15により連結し、駆動シャフト15の端部とファンシャフト14を、傘歯車対16,17を介して連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータ等の熱交換器のコア部に配置されるファンを回転駆動する車両用ファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジエータが組み付けられるフロントエンドパネルのうち、ファンの回転中心からずれた位置に電動モータを配置し、モータシャフト及び2台のファンのファンシャフトのそれぞれにプーリを取り付け、3つのプーリにベルトを掛け渡して2台のファンを駆動する車両用ファン装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の車両用ファン装置では、ファンとファン駆動源が、ラジエータのコア部を通過する冷却風の流れに対して直列に並んで配置された装置に比べ、ファン軸方向の寸法を小さくすることができる。
【特許文献1】特開2002−321645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用ファン装置にあっては、ベルトそのものに限らず、ベルトを覆うベルトカバーやベルトの張力を保つテンショナー等の余計なものを、ラジエータのコア部を投影したコア面内に配置しなければならない構成であったため、これらの余計なものが抵抗となり、ファンの風の流れが阻害され、十分な冷却性能が得られない、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ファン性能向上による風量増加を見込むことができる車両用ファン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ファン装置は、熱交換器のコア部に配置したファンと、該ファンを回転駆動するファン駆動源と、を備えている。
前記ファン駆動源は、前記熱交換器のコア部の外側位置に配置した。
前記ファンの回転中心部には、ファンシャフトを有するファン保持部を設定した。
そして、前記ファン駆動源の出力軸と前記ファン保持部を、駆動シャフトにより連結し、前記駆動シャフトの端部と前記ファンシャフトを、駆動伝達機構を介して連結した。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の車両用ファン装置にあっては、熱交換器のコア部の外側位置に配置したファン駆動源の出力軸と、ファンの回転中心部に設定したファン保持部が、駆動シャフトにより連結される。そして、駆動シャフトの端部とファンシャフトが、駆動伝達機構を介して連結される。
すなわち、ファンの駆動機構が、駆動シャフトと駆動伝達機構により構成されるため、風の流れを阻害することのない駆動シャフトのみが熱交換器のコア部を投影したコア面内に配置されるだけで、風の流れを阻害する抵抗物がコア面内に配置されることがない。
この結果、ファン性能向上による風量増加を見込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の車両用ファン装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の1つのファンを1つの電動モータで駆動する構成のラジエータに適用された車両用ファン装置を示す背面図である。図2は、実施例1の車両用ファン装置を示す図1のB−B線断面図である。
【0010】
実施例1の車両用ファン装置A1は、図1に示すように、ラジエータ1(熱交換器)のコア部1aに、ファン10を配置し、1つのファン10を1つの電動モータ11で駆動する構成としている。
前記ラジエータ1のコア部1aは、ファン送風や走行風により外気との熱交換を行う。このコア部1aの上側端部と下側端部には、上部タンク枠1bと下部タンク枠1cが設けられる。そして、上部タンク枠1bには、図外のエンジンからの高温となったエンジン冷却水を導入するエンジン冷却水入口管1dが設けられる。下部タンク枠1cには、図外のエンジンに対し外気との熱交換により冷却したエンジン冷却水を返送するエンジン冷却水出口管1eが設けられる。また、前記ラジエータ1のコア部1aの背面側には、ファン10と第2ファン20の外周端を結んだ送風通路形状に対応する円形開口部を除いた領域が、導風板機能を持つファンシュラウド1fにより覆われている。なお、支持機能を持たせていないファンシュラウド1fは、高い強度を必要としないため、合成樹脂を素材として射出成形等により製造することで軽量化に寄与している。
【0011】
前記ファン10は、図1及び図2に示すように、電動モータ11(ファン駆動源)と、モータ軸12(出力軸)と、ファン保持部13と、ファンシャフト14と、駆動シャフト15と、傘歯車対16,17(駆動伝達機構)と、オイルチャンバー18と、を備えている。
【0012】
前記電動モータ11は、ファン10を回転駆動するファン駆動源であり、前記ラジエータ1のコア部1aの外側位置であって、コア部1aの上方位置に配置している。この電動モータ11は、図2に示すように、上部タンク枠1bとファン保持部13を連結する上部支持枠2の水平枠部2aに対し、モータ軸12を下向きにして支持固定されている。そして、電動モータ11のモータ軸12に連結した駆動シャフト15を、ファン保持部13の内部に向かって下方向に延ばしている。
【0013】
前記ファン保持部13は、ファン10の回転中心部に設定され、内部にファン10の回転軸となるファンシャフト14が回転可能に支持されている。このファン保持部13は、図2に示すように、上部タンク枠1bとファン保持部13を連結する上部支持枠2の垂直枠部2bと、下部タンク枠1cとファン保持部13を連結する下部支持枠3の垂直枠部3bと、に挟まれた両端支持状態にて固定されている。
なお、上部支持枠2は、水平枠部2aと垂直枠部2bにより構成されている。下部支持枠3は、水平枠部3aと垂直枠部3bにより構成されている。
【0014】
前記電動モータ11のモータ軸12とファン保持部13は、ファン保持部13まで延ばした駆動シャフト15により連結している。前記駆動シャフト15の下端部とファンシャフト14は、駆動伝達機構である傘歯車対16,17を介して連結している。
前記傘歯車対16,17は、駆動シャフト15の下端部に設けた駆動側傘歯車16と、ファンシャフト14に設けた従動側傘歯車17により構成され、ファン保持部13の内部にて噛み合う。そして、このファン保持部13の内部には、傘歯車対16,17を潤滑油に浸漬するオイルチャンバー18を設けている。
なお、ファンシャフト14は、ボールベアリング4を介して回転可能に支持されている。また、駆動シャフト15は、風の通過方向からみたとき、上部支持枠2の垂直枠部2bに重合する位置に配置され、垂直枠部2bに取り付けられたボールベアリング5を介して回転可能に支持されている。
【0015】
次に、作用を説明する。
実施例1の車両用ファン装置A1における作用を、「ファン性能向上作用」、「オイルチャンバーによる傘歯車潤滑作用」に分けて説明する。
【0016】
[ファン性能向上作用]
実施例1の車両用ファン装置A1にあっては、ラジエータ1のコア部1aの外側位置に配置した電動モータ11のモータ軸12と、ファン10の回転中心部に設定したファン保持部13が、駆動シャフト15により連結される。そして、駆動シャフト15の下端部とファンシャフト14が、傘歯車対16,17を介して連結される。
【0017】
すなわち、ファン10の駆動機構が、駆動シャフト15と傘歯車対16,17により構成される。このため、ファン10を電動モータ11により回転駆動する停車時や走行時、図2に示すように、上部支持枠2の垂直枠部2bと重なり合う駆動シャフト15のみがラジエータ1のコア部1aを投影したコア面内に配置されるだけで、車両前方から車両後方に向かって流れる風の流れを阻害することが無い。言い換えると、従来技術のように、ベルトカバーやテンショナー等の風の流れを阻害する抵抗物がコア面内に配置されることがない。
【0018】
したがって、車両前方から車両後方に向かって抵抗なくスムーズにファン駆動による風が流れる作用を示し、ファン性能向上による風量増加を見込むことができる。
【0019】
さらに、実施例1の車両用ファン装置A1にあっては、ファン10への駆動機構として、駆動伝達機能と駆動方向変換機能を併せ持つ傘歯車対16,17を採用している。
【0020】
すなわち、傘歯車対16,17をファン保持部13の内部にコンパクトに配置できる。言い換えると、ファン10のボス部に配置されるファン保持部13が占有する面積を、例えば、ファンボス部に電動モータを配置する場合やプーリを配置する場合に比べ、小さな面積にすることができる。
【0021】
したがって、ラジエータ1のコア部1aのうち、風が通過するコア面の総面積が、ファン保持部13の占有面積(=ファンボス径)を小さく抑えた分だけ拡大され、さらなるファン性能向上による風量増加を見込むことができる。
【0022】
[オイルチャンバーによる傘歯車潤滑作用]
実施例1の車両用ファン装置A1にあっては、ファン保持部13の内部には、傘歯車対16,17を潤滑油に浸漬するオイルチャンバー18を内部に設けている。
【0023】
すなわち、ファン10を電動モータ11により回転駆動する停車時や走行時、傘歯車対16,17のギア噛み合い部分には、掻き上げ潤滑により十分な潤滑油が供給される。
【0024】
したがって、傘歯車対16,17による駆動伝達ロスを減少させることができるし、ギアノイズも低減することができる。
【0025】
さらに、電動モータ11をラジエータ1のコア部1aの上方位置に配置し、電動モータ11のモータ軸12に連結した駆動シャフト15を、ファン保持部13の内部に向かって下方向に延ばした。
【0026】
すなわち、内部にオイルチャンバー18を設けたファン保持部13には、上部位置に駆動シャフト15の貫通穴が形成され、側部位置にファンシャフト14の貫通穴が形成される。このように、ファン保持部13には、底部に貫通穴が形成されることがなく、厳密なオイルシール構造を設けなくても潤滑油が漏れることなく、潤滑油をファン保持部13の内部に溜めることができ、潤滑油の保持が容易になる。
【0027】
したがって、長期の使用に際し、オイルシール構造からの漏れチェックやファン保持部の交換等を定期的に行う必要がなくなり、メンテナンス性に優れる。
【0028】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用ファン装置A1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0029】
(1) 熱交換器(ラジエータ1)のコア部1aに配置したファン10と、該ファン10を回転駆動するファン駆動源(電動モータ11)と、を備えた車両用ファン装置A1において、前記ファン駆動源を、前記熱交換器のコア部1aの外側位置に配置し、前記ファン10の回転中心部には、ファンシャフト14を有するファン保持部13を設定し、前記ファン駆動源の出力軸(モータ軸12)と前記ファン保持部13を、駆動シャフト15により連結し、前記駆動シャフト15の端部と前記ファンシャフト14を、駆動伝達機構(傘歯車対16,17)を介して連結した。このため、ファン性能向上による風量増加を見込むことができる。
【0030】
(2) 前記駆動伝達機構は、前記駆動シャフト15の端部に設けた駆動側傘歯車16と、前記ファンシャフト14に設けた従動側傘歯車17と、を有する傘歯車対16,17であり、前記ファン保持部13の内部にて噛み合う。このため、ファン保持部13の占有面積を小さく抑えることができる分、風が通過するコア面の総面積が拡大され、さらなるファン性能向上による風量増加を見込むことができる。
【0031】
(3) 前記ファン保持部13の内部には、前記傘歯車対16,17を潤滑油に浸漬するオイルチャンバー18を設けた。このため、傘歯車対16,17による駆動伝達ロスを減少させることができるし、ギアノイズも低減することができる。
【0032】
(4) 前記ファン駆動源(電動モータ11)を、前記熱交換器(ラジエータ1)のコア部1aの上方位置に配置し、前記ファン駆動源からの駆動シャフト15を、前記ファン保持部13の内部に向かって下方向に延ばした。このため、長期の使用に際し、オイルシール構造からの漏れチェックやファン保持部の交換等を定期的に行う必要がなくなり、メンテナンス性に優れる。
【実施例2】
【0033】
実施例2は、2つのファンを1つの電動モータで駆動(ファン逆回転)する構成のラジエータに適用した例である。
【0034】
まず、構成を説明する。
図3は、実施例2の2つのファンを1つの電動モータで駆動する構成のラジエータに適用された車両用ファン装置を示す背面図である。
【0035】
実施例2の車両用ファン装置A2は、図3に示すように、ラジエータ1(熱交換器)のコア部1aに、第1ファン10と第2ファン20を配置し、2つのファン10,20を1つの電動モータ11で駆動するデュアルファンタイプの構成としている。
【0036】
前記第1ファン10は、図3に示すように、電動モータ11(ファン駆動源)と、モータ軸12(出力軸)と、第1ファン保持部13と、第1ファンシャフト14と、第1駆動シャフト15と、第1傘歯車対16,17および第2入力側傘歯車26’(第1駆動伝達機構)と、オイルチャンバー18と、を備えている。
【0037】
前記第2ファン20は、図3に示すように、第2ファン保持部23と、第2ファンシャフト24と、第2駆動シャフト25と、第2傘歯車対26,27(第2駆動伝達機構)と、第2オイルチャンバー28と、を備えている。
【0038】
前記第1ファン10と前記第2ファン20の回転中心部には、それぞれ第1ファンシャフト14を有する第1ファン保持部13と、第2ファンシャフト24を有する第2ファン保持部23を設定している。
【0039】
前記電動モータ11は、前記第1ファン保持部13の上方位置に1つ配置している。そして、電動モータ11のモータ軸12と前記第1ファン保持部13を、下方向に延びる第1駆動シャフト15により連結している。また、前記第1ファン保持部13と前記第2ファン保持部23を、水平方向に延びる第2駆動シャフト25により連結している。
【0040】
前記第1駆動シャフト15の下端部と前記第1ファンシャフト14と前記第2駆動シャフト25の一端部を、前記第1ファン保持部13の第1駆動伝達機構を介して連結している。この第1駆動伝達機構は、第1駆動シャフト15の下端部に設けた第1駆動側傘歯車16と、第1ファンシャフト14に設けた第1従動側傘歯車17と、第2駆動シャフト25の一端部に設けた第2入力側傘歯車26’により構成されている。
【0041】
前記第2駆動シャフト25の他端部と前記第2ファンシャフト24を、前記第2ファン保持部23の第2駆動伝達機構を介して連結している。この第2駆動伝達機構は、第2駆動シャフト25の他端部に設けた第2駆動側傘歯車26と、第2ファンシャフト24に設けた第2従動側傘歯車27により構成されている。
【0042】
ここで、前記第1ファン保持部13と前記第2ファン保持部23は、水平支持枠6により水平方向に連結される。そして、第2駆動シャフト25は、前記水平支持枠6と重なり合う位置であって、水平支持枠6に取り付けられたベアリング7により回転可能に設けられている。なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
次に、作用を説明する。
実施例2の車両用ファン装置A2にて電動モータ11を回転駆動させると、モータ軸12から第1駆動シャフト15→第1駆動側傘歯車16→第1従動側傘歯車17→第1ファンシャフト14を経過し、回転駆動力が第1ファン10に伝達され、第1ファン10を図3の矢印方向に回転させる。そして、第1従動側傘歯車17から第2入力側傘歯車26’→第2駆動シャフト25→第2駆動側傘歯車26→第2従動側傘歯車27→第2ファンシャフト24を経過し、回転駆動力が第2ファン20に伝達され、第2ファン20を図3の矢印方向(第1ファン10の回転方向とは逆方向)に回転させる。
したがって、第1ファン10と第2ファン20の翼の捻り形状を異ならせることで、1つの電動モータ11により2つのファン10,20を回転駆動させることができる。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0044】
次に、効果を説明する。
実施例2の車両用ファン装置A2にあっては、実施例1の(1)〜(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0045】
(5) 前記熱交換器(ラジエータ1)のコア部1aに、第1ファン10と第2ファン20を配置し、前記第1ファン10と前記第2ファン20の回転中心部には、それぞれ第1ファンシャフト14を有する第1ファン保持部13と、第2ファンシャフト24を有する第2ファン保持部23を設定し、前記ファン駆動源(電動モータ11)を、前記第1ファン保持部13の上方位置に1つ配置し、前記ファン駆動源の出力軸(モータ軸12)と前記第1ファン保持部13を、下方向に延びる第1駆動シャフト15により連結し、前記第1ファン保持部13と前記第2ファン保持部23を、水平方向に延びる第2駆動シャフト25により連結し、前記第1駆動シャフト15の下端部と前記第1ファンシャフト14と前記第2駆動シャフト25の一端部を、前記第1ファン保持部13の第1駆動伝達機構(第1傘歯車対16,17,第2入力側傘歯車26’)を介して連結し、前記第2駆動シャフト25の他端部と前記第2ファンシャフト24を、前記第2ファン保持部23の第2駆動伝達機構(第2傘歯車対26,27)を介して連結した。このため、第1ファン10と第2ファン20の翼の捻り形状を異ならせるだけで、簡単な駆動機構により、1つの電動モータ11により2つのファン10,20を回転駆動させることができる。
【実施例3】
【0046】
実施例3は、2つのファンを1つの電動モータで駆動(ファン同回転)する構成のラジエータに適用した例である。
【0047】
まず、構成を説明する。
図4は、実施例3の2つのファンを1つの電動モータで駆動する構成のラジエータに適用された車両用ファン装置を示す背面図である。
【0048】
実施例3の車両用ファン装置A3は、図4に示すように、ラジエータ1(熱交換器)のコア部1aに、第1ファン10と第2ファン20を配置し、2つのファン10,20を1つの電動モータ11で駆動するデュアルファンタイプの構成としている。
【0049】
前記第1ファン10は、図4に示すように、第1ファン保持部13と、第1ファンシャフト14と、第1傘歯車対16,17(第1駆動伝達機構)と、オイルチャンバー18と、を備えている。前記第2ファン20は、図4に示すように、第2ファン保持部23と、第2ファンシャフト24と、第2傘歯車対26,27(第2駆動伝達機構)と、第2オイルチャンバー28と、を備えている。
【0050】
前記第1ファン保持部13と前記第2ファン保持部23の中央部位置には、駆動分割保持部33を設定し、電動モータ11(ファン駆動源)を、前記駆動分割保持部33の上方位置に1つ配置している。
【0051】
そして、電動モータ11のモータ軸12(出力軸)と前記駆動分割保持部33を、下方向に延びる第1駆動シャフト15により連結している。前記駆動分割保持部33と前記第1ファン保持部13を、水平方向に延びる第2駆動シャフト25により連結している。前記駆動分割保持部33と前記第2ファン保持部23を、水平方向に延びる第3駆動シャフト35により連結している。
【0052】
前記第1駆動シャフト15の下端部と前記第2駆動シャフト25の一端部と前記第3駆動シャフト35の一端部は、前記駆動分割保持部33の駆動分割傘歯車組36,37,38(駆動分割伝達機構)を介して連結している。この駆動分割傘歯車組は、互いに噛み合うモータ入力側傘歯車36と、第1入力側傘歯車37と、第2入力側傘歯車38によって構成されている。
【0053】
前記第2駆動シャフト25の他端部と前記第1ファンシャフト14は、前記第1ファン保持部13の第1傘歯車対16,17を介して連結している。この第1傘歯車対16,17は、第1駆動側傘歯車16と、第1従動側傘歯車17によって構成されている。
【0054】
前記第3駆動シャフト35の他端部と前記第2ファンシャフト24は、前記第2ファン保持部23の第2傘歯車対26,27を介して連結している。この第2傘歯車対26,27は、第2駆動側傘歯車26と、第2従動側傘歯車27によって構成されている。
【0055】
ここで、前記第1ファン保持部13と前記駆動分割保持部33は、第2水平支持枠8により水平方向に連結される。そして、第2駆動シャフト25は、前記第2水平支持枠8と重なり合う位置に設けられている。前記第2ファン保持部23と前記駆動分割保持部33は、第3水平支持枠9により水平方向に連結される。そして、第3駆動シャフト35は、前記第3水平支持枠9と重なり合う位置に設けられている。さらに、前記駆動分割保持部33の内部には、第3オイルチャンバー39を設けている。なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
次に、作用を説明する。
実施例3の車両用ファン装置A3にて電動モータ11を回転駆動させると、モータ軸12から第1駆動シャフト15→モータ入力側傘歯車36へと伝達した後、第1入力側傘歯車37→第2駆動シャフト25への伝達と、第2入力側傘歯車38→第3駆動シャフト35への伝達へと分かれる。一方の第2駆動シャフト25からは、第1駆動側傘歯車16→第1従動側傘歯車17→第1ファンシャフト14を経過し、回転駆動力が第1ファン10に伝達され、第1ファン10を図4の矢印方向に回転させる。そして、他方の第3駆動シャフト35からは、第2駆動側傘歯車26→第2従動側傘歯車27→第2ファンシャフト24を経過し、回転駆動力が第2ファン20に伝達され、第2ファン20を図4の矢印方向(第1ファン10の回転方向と同方向)に回転させる。
したがって、同じ翼形状の第1ファン10と第2ファン20としながら、1つの電動モータ11により2つのファン10,20を回転駆動させることができる。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
次に、効果を説明する。
実施例3の車両用ファン装置A3にあっては、実施例1の(1)〜(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0058】
(6) 前記熱交換器(ラジエータ1)のコア部1aに、第1ファン10と第2ファン20を配置し、前記第1ファン10と前記第2ファン20の回転中心部には、それぞれ第1ファンシャフト14を有する第1ファン保持部13と、第2ファンシャフト24を有する第2ファン保持部23を設定し、前記第1ファン保持部13と前記第2ファン保持部23の中央部位置には、駆動分割保持部33を設定し、前記ファン駆動源(電動モータ11)を、前記駆動分割保持部33の上方位置に1つ配置し、前記ファン駆動源の出力軸(モータ軸12)と前記駆動分割保持部33を、下方向に延びる第1駆動シャフト15により連結し、前記駆動分割保持部33と前記第1ファン保持部13を、水平方向に延びる第2駆動シャフト25により連結し、前記駆動分割保持部33と前記第2ファン保持部23を、水平方向に延びる第3駆動シャフト35により連結し、前記第1駆動シャフト15の下端部と前記第2駆動シャフト25の一端部と前記第3駆動シャフト35の一端部を、前記駆動分割保持部33の駆動分割伝達機構(駆動分割傘歯車組36,37,38)を介して連結し、前記第2駆動シャフト25の他端部と前記第1ファンシャフト14を、前記第1ファン保持部13の第1駆動伝達機構(第1傘歯車対16,17)を介して連結し、前記第3駆動シャフト35の他端部と前記第2ファンシャフト24を、前記第2ファン保持部23の第2駆動伝達機構(第2傘歯車対26,27)を介して連結した。このため、第1ファン10と第2ファン20の翼形状を同じにしながら、1つの電動モータ11により2つのファン10,20を同方向に回転駆動させることができる。
【0059】
以上、本発明の車両用ファン装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0060】
実施例1〜3では、ファン駆動源として電動モータを用いた例を示した。しかし、ファン駆動源として油圧モータや空気圧モータ等を用いる例としても良い。
【0061】
実施例1〜3では、駆動伝達機構として傘歯車対や傘歯車組を用いた例を示した。しかし、傘歯車以外の歯車伝達機構を用いても良いし、歯車伝達機構以外の自在継手等を用いるような例としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
実施例1〜3では、熱交換器への適用例としてラジエータ1の例を示した。しかし、車載の熱交換器であれば、コンデンサ等にも適用することができる。要するに、熱交換器のコア部に配置したファンと、該ファンを回転駆動するファン駆動源と、を備えた車両用ファン装置であれば適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1の1つのファンを1つの電動モータで駆動する構成のラジエータに適用された車両用ファン装置を示す背面図である。
【図2】実施例1の車両用ファン装置を示す図1のB−B線断面図である。
【図3】実施例2の2つのファンを1つの電動モータで駆動する構成のラジエータに適用された車両用ファン装置を示す背面図である。
【図4】実施例3の2つのファンを1つの電動モータで駆動する構成のラジエータに適用された車両用ファン装置を示す背面図である。
【符号の説明】
【0064】
A1 車両用ファン装置
1 ラジエータ(熱交換器)
1a コア部
10 ファン
11 電動モータ(ファン駆動源)
12 モータ軸(出力軸)
13 ファン保持部
14 ファンシャフト
15 駆動シャフト
16,17 傘歯車対(駆動伝達機構)
18 オイルチャンバー
A2 車両用ファン装置
10 第1ファン
13 第1ファン保持部
14 第1ファンシャフト
15 第1駆動シャフト
20 第2ファン
23 第2ファン保持部
24 第2ファンシャフト
25 第2駆動シャフト
16,17 第1傘歯車対(第1駆動伝達機構)
26’ 第2入力側傘歯車(第1駆動伝達機構)
26,27 第2傘歯車対(第2駆動伝達機構)
A3 車両用ファン装置
33 駆動分割保持部
35 第3駆動シャフト
36,37,38 駆動分割傘歯車組(駆動分割伝達機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器のコア部に配置したファンと、該ファンを回転駆動するファン駆動源と、を備えた車両用ファン装置において、
前記ファン駆動源を、前記熱交換器のコア部の外側位置に配置し、
前記ファンの回転中心部には、ファンシャフトを有するファン保持部を設定し、
前記ファン駆動源の出力軸と前記ファン保持部を、駆動シャフトにより連結し、前記駆動シャフトの端部と前記ファンシャフトを、駆動伝達機構を介して連結したことを特徴とする車両用ファン装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用ファン装置において、
前記駆動伝達機構は、前記駆動シャフトの端部に設けた駆動側傘歯車と、前記ファンシャフトに設けた従動側傘歯車と、を有する傘歯車対であり、前記ファン保持部の内部にて噛み合うことを特徴とする車両用ファン装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用ファン装置において、
前記ファン保持部の内部には、前記傘歯車対を潤滑油に浸漬するオイルチャンバーを設けたことを特徴とする車両用ファン装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用ファン装置において、
前記ファン駆動源を、前記熱交換器のコア部の上方位置に配置し、
前記ファン駆動源の出力軸に連結した前記駆動シャフトを、前記ファン保持部の内部に向かって下方向に延ばしたことを特徴とする車両用ファン装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された車両用ファン装置において、
前記熱交換器のコア部に、第1ファンと第2ファンを配置し、
前記第1ファンと前記第2ファンの回転中心部には、それぞれ第1ファンシャフトを有する第1ファン保持部と、第2ファンシャフトを有する第2ファン保持部を設定し、
前記ファン駆動源を、前記第1ファン保持部の上方位置に1つ配置し、
前記ファン駆動源の出力軸と前記第1ファン保持部を、下方向に延びる第1駆動シャフトにより連結し、前記第1ファン保持部と前記第2ファン保持部を、水平方向に延びる第2駆動シャフトにより連結し、
前記第1駆動シャフトの下端部と前記第1ファンシャフトと前記第2駆動シャフトの一端部を、前記第1ファン保持部の第1駆動伝達機構を介して連結し、
前記第2駆動シャフトの他端部と前記第2ファンシャフトを、前記第2ファン保持部の第2駆動伝達機構を介して連結したことを特徴とする車両用ファン装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された車両用ファン装置において、
前記熱交換器のコア部に、第1ファンと第2ファンを配置し、
前記第1ファンと前記第2ファンの回転中心部には、それぞれ第1ファンシャフトを有する第1ファン保持部と、第2ファンシャフトを有する第2ファン保持部を設定し、
前記第1ファン保持部と前記第2ファン保持部の中央部位置には、駆動分割保持部を設定し、
前記ファン駆動源を、前記駆動分割保持部の上方位置に1つ配置し、
前記ファン駆動源の出力軸と前記駆動分割保持部を、下方向に延びる第1駆動シャフトにより連結し、前記駆動分割保持部と前記第1ファン保持部を、水平方向に延びる第2駆動シャフトにより連結し、前記駆動分割保持部と前記第2ファン保持部を、水平方向に延びる第3駆動シャフトにより連結し、
前記第1駆動シャフトの下端部と前記第2駆動シャフトの一端部と前記第3駆動シャフトの一端部を、前記駆動分割保持部の駆動分割伝達機構を介して連結し、
前記第2駆動シャフトの他端部と前記第1ファンシャフトを、前記第1ファン保持部の第1駆動伝達機構を介して連結し、
前記第3駆動シャフトの他端部と前記第2ファンシャフトを、前記第2ファン保持部の第2駆動伝達機構を介して連結したことを特徴とする車両用ファン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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