説明

車両用フロントウィンド表示装置

【課題】従来は、自動車等の車両においてフロントウィンド自体に走行情報を表示できる構成はなかった。
【解決手段】車両用フロントガラス1の全部又は一部に液晶パネル又は液晶膜2を層として重ね合わせて接合してフロントウィンド3を構成するとともに、走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を液晶表示変換装置4に送信し、液晶表示変換装置4によってコントロールされた走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を液晶パネル又は液晶膜2に送信し、液晶パネル又は液晶膜2によって走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を車両用フロントウィンド3上に表示する車両用フロントウィンド表示装置によって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両用フロントウィンド表示装置、詳細には車両用フロントガラスに液晶パネル又は液晶膜を設け走行情報を表示させる車両用フロントウィンド表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車両表示装置としては、特開平10−133571号(従来技術1)に「自動車用ディスプレイ装置」として「メーターディスプレイ15とヘッドアップディスプレイ16,17とを備えた自動車用ディスプレイ装置において、インストルメントパネル3内に、上方向に表示面を有した一つの液晶ディスプレイ6を配置し、液晶ディスプレイに、少なくとも二つの異なる情報をそれぞれ表示する第1表示エリア6Aと第2表示エリア6Bとを設定し、第1表示エリア6A内の表示情報をメーターディスプレイ内に映し出し、第2表示エリア6B内の表示情報をヘッドアップディスプレイ16,17内に映し出すように構成する。かかる構成により、液晶ディスプレイ6の必要個数が少なく、また表示制御系も簡単になることから、コストダウンが図れる。また、表示制御系が単一であり、表示領域の変更、表示内容の変更をソフトで対応できることから、その操作性あるいは利便性が向上する。」が開示されている。
【0003】
特開2002−196276号(従来技術2)に「車両用表示装置」として「車両のインストルメントパネル内に情報表示を行うメーターディスプレイと、フロントガラス若しくは投影部材に情報表示を行うヘッドアップディスプレイとを備えた構成であって、一つの表示素子を有し、その表示素子の表示面における一方の表示エリア内の表示情報を前記メーターディスプレイ内に表示し、他方の表示エリア内の表示情報を前記ヘッドアップディスプレイ内に表示するように構成した車両用表示装置において、前記表示素子の表示面と共役な結像面近傍に画像分割ミラーを配置し、その画像分割ミラーにより前記他方の表示エリア内の表示情報を前記ヘッドアップディスプレイに導く構成」が開示されている。
【0004】
また、特開2005−145298号(従来技術3)に「車両用計器」として、「その一部を車両のフロントガラスの下方において車室内側に突出すように設けられたダッシュボード上面から運転者に対向するように突出させて配置される車両用計器であって、運転者に対向する透明な前カバーと、前記前カバーの運転者と反対側を覆うように配置される透明な後カバーと、前記前カバーおよび前記後カバーの少なくとも一方に形成される表示部と、前記ダッシュボード上面よりも下側に配置されるムーブメントと、前記前カバーと前記後カバーとの間の空間に配置され且つ前記ムーブメントのシャフトに固定されて該シャフトの回動により前記表示部に沿って回動する指針と、前記表示部および前記指針を照明する光源とを備えることを特徴とする車両用計器」の開示がある。
【特許文献1】特開平10−133571号公報(従来技術1)
【特許文献2】特開2002−196276号公報(従来技術2)
【特許文献3】特開2005−145298号公報(従来技術3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術1にはインストルメントパネル内に上方向に表示面を有した液晶ディスプレィが配置され、この液晶ディスプレィに2つの異なる表示情報を送り、それぞれの情報をメーターディスプレィ及びヘッドアップディスプレィに表示する構成である。この構成は、従来技術1の図4に示されるようにフロントウィンドの前に表示面が上を向いた液晶ディスプレィ等の複数の板状体であるディスプレィによって構成されるもので、フロントウィンド自体に走行情報を表示できる構成ではなかった。
【0006】
また、従来技術2には「フロントガラス若しくは投影部材に情報表示を行うヘッドアップディスプレイ」が設けられているが、それらの表示には「画像分割ミラー」を配設して光学的な映像を「フロントガラス若しくは投影部材」に表示画像として投影させる必要があり、構成が複雑で製造上の作業が困難であるという課題があった。
【0007】
更に、従来技術3には「ダッシュボード上に配置された車両用計器」であるため、ダッシュボードから常に上方に突出しているため意匠的な面からもマイナスな効果が多く、実質的な操作的な面からも邪魔になる場合が多いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、車両用フロントガラスの全部又は一部に液晶パネル又は液晶膜を層として重ね合わせて接合してフロントウィンドを構成するとともに、走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を液晶表示変換装置に送信し、液晶表示変換装置によってコントロールされた走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を液晶パネル又は液晶膜に送信し、液晶パネル又は液晶膜によって走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を車両用フロントウィンド上に表示することを特徴とする車両用フロントウィンド表示装置を提案する。
【0009】
また、車両用フロントガラスの全部又は一部に透明な液晶パネル又は液晶膜を層として重ね合わせて接合しフロントウィンドを構成し、フロントウィンド下方のダッシュボードを透明パネルで構成し、透明パネル下方のインストルメントパネルに発光器をフロントウィンド方向に向けて設け、
走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報をダッシュボード内に設置されている液晶表示変換装置に送信し、液晶表示変換装置によってコントロールされた走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を透明な液晶パネル又は液晶膜に送信し、透明な液晶パネル又は液晶膜によって走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を車両用フロントウィンド上に表示するとともに、
発光器は、透明パネルを透過してフロントウィンドの透明な液晶パネル又は液晶膜を照射することが可能であることを特徴とする車両用フロントウィンド表示装置を提案する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、車両用のフロントウィンドに直接に走行情報が表示されるため、ドライバーは、顔を正面の向きから変えずに視線の向きを変えるだけで瞬時に走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を知ることができるため、運転の安全性を向上させることができた。
【0011】
また、フロントガラスに液晶パネル又は液晶膜を層として重ね合わせて接合して構成することにより、液晶パネルが光透過性を有するので、フロントウィンドに盲点となる場所は無い。そのためドライバーに運転の危険性が及ぶことはない。
【0012】
更に、この発明は、複雑な装置、複雑な構成を必要とせず、液晶パネル又は液晶膜をウィンドガラスに重層させ表示面を構成するため、非常に容易に製造することが可能となった。
【0013】
この発明によれば、従来ダッシュボード内に設けられていたメーターパネルが不要となるため意匠的にも自由度が増大する。
【0014】
また、請求項2のようにフロントウィンド下方のダッシュボードを透明パネルで構成し、透明パネル下方のインストルメントパネルに発光器をフロントウィンド方向に向けて設けることによって、夜間等のフロントウィンドの照度が低下するような場合、発光器によってフロントウィンドを照射することができ液晶パネル又は液晶膜の数値を容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施形態である車両用フロントウィンド表示装置を示す正面説明図である図1及び側面説明図である図2に基づいて説明する。
【0016】
この発明の実施形態である車両用フロントウィンド表示装置は、車両用フロントガラス1の全部又は一部に、透明なパネル又は膜からなる液晶パネル又は液晶膜2を層として重ね合わせて接合しフロントウィンド3を構成する。
【0017】
透明な液晶パネル又は液晶膜2は、光透過性を有し、図1に示すようにこの実施例では車両用フロントガラス1の全面に重層的に接合されているが、フロントウィンド3の一部のみに設けてもよい。透明な液晶パネル又は液晶膜2は、ダッシュボード5内に設置されている透明な液晶表示変換装置4において走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を液晶パネル又は液晶膜2用にコントロールされた信号を液晶表示変換装置4から受信し随時表示する。
【0018】
液晶表示変換装置4には、速度計測装置から走行速度、エンジン回転数計測装置からエンジン回転数、ガソリンタンクからガソリン残量など、それぞれの装置から走行情報が送信されてくる。液晶表示変換装置4は、それらの走行情報を透明な液晶パネル又は液晶膜2用に信号をコントロールして変換する。
【0019】
図2に示すようにダッシュボード5のフロントウィンド下方部分のダッシュボード5aは、透明パネル5aで構成しており、透明パネル5aの下方のインストルメントパネル(図示せず)に発光器6をフロントウィンド3方向に向けて設けている。
【0020】
発光器6は、この実施形態では灯火ランプ(図示せず)のスイッチと連動しており、灯火ランプの発光と連動して発光する。夜間等のフロントウィンドの明るさが低下するような場合、発光器6を発光させフロントウィンドを照射することができる。発光器6の照射は、透明パネル5aを透過してフロントウィンド3の透明な液晶パネル又は液晶膜2を照射することが可能であり、ドライバーは夜間等においても液晶パネル又は液晶膜の数値を容易に確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明は、自動車等の車両の車両用フロントウィンドとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施形態である車両用フロントウィンド表示装置を示す正面説明図
【図2】この発明の実施形態である車両用フロントウィンド表示装置を示す側面説明図
【符号の説明】
【0023】
1 車両用フロントガラス
2 液晶パネル又は液晶膜
3 車両用フロントウィンド
4 液晶表示変換装置
5 ダッシュボード
5a 透明パネル(フロントウィンド下のダッシュボード)
6 発光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用フロントガラスの全部又は一部に透明な液晶パネル又は液晶膜を層として重ね合わせて接合しフロントウィンドを構成するとともに、走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を液晶表示変換装置に送信し、液晶表示変換装置によってコントロールされた走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を透明な液晶パネル又は液晶膜に送信し、透明な液晶パネル又は液晶膜によって走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を車両用フロントウィンド上に表示することを特徴とする車両用フロントウィンド表示装置。
【請求項2】
車両用フロントガラスの全部又は一部に透明な液晶パネル又は液晶膜を層として重ね合わせて接合しフロントウィンドを構成し、フロントウィンド下方のダッシュボードを透明パネルで構成し、透明パネル下方のインストルメントパネルに発光器をフロントウィンド方向に向けて設け、
走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報をダッシュボード内に設置されている液晶表示変換装置に送信し、液晶表示変換装置によってコントロールされた走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を透明な液晶パネル又は液晶膜に送信し、透明な液晶パネル又は液晶膜によって走行速度、エンジン回転数、ガソリン残量などの走行情報を車両用フロントウィンド上に表示するとともに、
発光器は、透明パネルを透過してフロントウィンドの透明な液晶パネル又は液晶膜を照射することが可能であることを特徴とする車両用フロントウィンド表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−292241(P2009−292241A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146561(P2008−146561)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000108188)セントラル自動車株式会社 (66)
【Fターム(参考)】