説明

車両用フードの前部構造

【課題】フードが車両前方側より衝撃荷重を受けた場合にフードが従来に比して更に一層良好に且つ十分に変形することができるようにする。
【解決手段】車両用フードの外面を形成するアウタパネル12と、フードの内面を形成するインナパネル14と、アウタパネル12とインナパネル14との間に配置されたロックリインフォース16と、フードをロックするためのストライカ18とを有する車両用フードの前部構造であって、インナパネル14及びロックリインフォース16はそれぞれストライカ18に対し車両前方側にて車幅方向に延在する応力集中部50,52を有している。これらの応力集中部50,52は上下方向に互いにオーバラップする状態にて設けられており、インナパネル14及びロックリインフォース16は応力集中部50,52に対し車両前方側にて互いに接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のエンジンルームを開閉するフードに係り、更に詳細にはフードの前部構造に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のフードは、フードの外面を形成するアウタパネルと、フードの内面を形成するインナパネルと、フードをロックするためのストライカとを有している。またアウタパネルとインナパネルとの間にロックリインフォースが配置され、ロックリインフォースによりストライカの支持部が補強されたフードも既によく知られている。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、ロックリインフォースがその端部に設けられたフランジ部にてインナパネルに取り付けられ、ストライカの一方の脚部がロックリインフォースに取り付けられたフードの前部構造が記載されている。ロックリインフォースが組み込まれたフードの場合には、ロックリインフォースが組み込まれていない場合に比して、ストライカの支持剛性を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−269447号公報
【発明の概要】
【0005】
〔発明が解決しようとする課題〕
上記公開公報に記載されている如き従来のフードの前部構造に於いては、ロックリインフォースが組み込まれていない場合に比して、フードの剛性が高くなる。そのため車両が歩行者などに衝突しフードが車両前方側より衝撃荷重を受けた場合に於けるフードの変形能を確保する必要がある。フードの変形能を確保するための種々の構造が従来提案させているが、歩行者などに対する衝突の影響を更に効果的に低減するためには、フードを更に一層良好に且つ十分に変形させることが望ましい。
【0006】
本発明は、ロックリインフォースが組み込まれた従来の車両用フードの前部構造に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、フードが車両前方側より衝撃荷重を受けた場合にフードが従来に比して更に一層良好に且つ十分に変形することができるようにすることである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
【0007】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち車両用フードの外面を形成するアウタパネルと、前記車両用フードの内面を形成するインナパネルと、前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に配置されたロックリインフォースと、前記車両用フードをロックするためのストライカとを有する車両用フードの前部構造に於いて、前記インナパネル及び前記ロックリインフォースはそれぞれ前記ストライカに対し車両前方側にて車幅方向に延在する応力集中部を有し、前記インナパネル及び前記ロックリインフォースの前記応力集中部は上下方向に互いにオーバラップする状態にて設けられており、前記インナパネル及び前記ロックリインフォースは前記応力集中部に対し車両前方側にて互いに接合されている、ことを特徴とする車両用フードの前部構造によって達成される。
【0008】
上記請求項1の構成によれば、インナパネル及びロックリインフォースはそれぞれストライカに対し車両前方側にて車幅方向に延在する応力集中部を有している。従ってフードが車両前方側より衝撃荷重を受けた場合には。衝撃荷重による応力が各応力集中部に集中し、それらの領域が他の領域よりも優先的に変形する。よって応力集中部がインナパネル及びロックリインフォースの何れにも設けられていない場合やそれらの一方にしか設けられていない場合に比して、インナパネル及びロックリインフォースを良好に且つ十分に変形させることができる。
【0009】
また上記請求項1の構成によれば、インナパネル及びロックリインフォースの応力集中部は上下方向に互いにオーバラップする状態にて設けられている。従ってインナパネル及びロックリインフォースの応力集中部が上下方向に互いにオーバラップしない領域に設けられている場合に比して、インナパネル及びロックリインフォースが変形する領域の車両前後方向の位置を近づけることができる。
【0010】
更に上記請求項1の構成によれば、インナパネル及びロックリインフォースは応力集中部に対し車両前方側にて互いに接合されている。従ってインナパネル及びロックリインフォースは応力集中部に対し車両前方側に於いては一体的な状態を維持して変形することができ、これにより応力集中部にて1節根折れするよう良好に且つ十分に変形することができる。
【0011】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記インナパネル及び前記ロックリインフォースの前記応力集中部は上に凸の湾曲部を含んでいるよう構成される(請求項2の構成)。
【0012】
上記請求項2の構成によれば、インナパネル及びロックリインフォースの応力集中部は上に凸の湾曲部を含んでいるので、車両用フードが前端にて車両後方への荷重を受けると各湾曲部の湾曲度合が増大するよう変形する。従って応力集中部が孔や溝又は薄肉部として形成されている場合に比して、ロックリインフォースの強度低下を回避しつつ応力集中による良好な変形能を確保することができる。
【0013】
また一般に、車両が歩行者などに衝突した場合に於ける歩行者などの損傷を効果的に軽減するためには、フードの前部はその先端が後方且つ下方へ移動するよう変形することが好ましい。上記請求項2の構成によれば、各応力集中部は上に凸の湾曲部を含んでおり、車両後方への荷重によりフードが変形せしめられる際に各湾曲部はその湾曲度合が増大するよう変形する。従って何れかの応力集中部が逆方向へ湾曲している場合に比して、フードの先端が後方且つ下方へ移動するようフードの前部を容易に且つ好ましく変形させることができる。
【0014】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記インナパネルの前記応力集中部は該応力集中部と前記ストライカとの間の部分よりも前記ロックリインフォースの側へ隆起するオフセット棚が設けられることにより形成されているよう構成される(請求項3の構成)。
【0015】
上記請求項3の構成によれば、インナパネルの応力集中部はロックリインフォースの側へ隆起するオフセット棚が設けられることにより形成されている。従って上に凸の湾曲部を含み強度低下をきたさない応力集中部を容易に且つ確実にインナパネルに形成することができる。
【0016】
また本発明によれば、上記請求項2又は3の構成に於いて、前記ロックリインフォースの前記応力集中部は車幅方向に延在するビードにより形成されているよう構成される(請求項4の構成)。
【0017】
上記請求項4の構成によれば、ロックリインフォースの応力集中部は車幅方向に延在するビードにより形成されているので、上に凸の湾曲部を含み強度低下をきたさない応力集中部を容易に且つ確実にロックリインフォースに形成することができる。
【0018】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3又は4の構成に於いて、前記インナパネルは前記オフセット棚よりも車両後方側にて車長方向に延在するよう前記ストライカに対し車幅方向の両側に設けられた一対のビードを有し、前記インナパネルの前記応力集中部は前記オフセット棚の車両後方側の縁部及び前記一対のビードの車両前方側の端縁により形成されているよう構成される(請求項5の構成)。
【0019】
上記請求項5の構成によれば、インナパネルの応力集中部はオフセット棚の車両後方側の縁部及び一対のビードの車両前方側の端縁により形成されている。従って応力集中部がオフセット棚の車両後方側の縁部のみにより形成されている場合に比して、一対のビードを有効に利用してインナパネルに於ける応力集中を効果的に行わせることができる。またオフセット棚の車幅方向の長さを長くすることなくインナパネルの応力集中部の車幅方向の長さを長くすることができる。
【0020】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3乃至5の何れか一つの構成に於いて、前記ロックリインフォースは前記オフセット棚に接合されているよう構成される(請求項6の構成)。
【0021】
上記請求項6の構成によれば、ロックリインフォースはオフセット棚に接合されているので、インナパネル及びロックリインフォースが応力集中部に対し車両前方側にて互いに接合された状態にすることができる。また応力集中部を形成するためのオフセット棚を、インナパネル及びロックリインフォースを接合するための手段としても有効に利用することができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
【0022】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記構成に於いて、インナパネル及びロックリインフォースの応力集中部は車幅方向に直線状に延在する部分を有するよう構成される(好ましい態様1)。
【0023】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記構成に於いて、インナパネルの応力集中部は少なくともオフセット棚の後縁部により形成されているよう構成される(好ましい態様2)。
【0024】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記構成に於いて、ビードはロックリインフォースの全幅に亘り延在しているよう構成される(好ましい態様3)。
【0025】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記構成に於いて、オフセット棚の車両後方側の縁部及び一対のビードの車両前方側の端縁は一直線上に位置しているよう構成される(好ましい態様4)。
【0026】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記構成に於いて、オフセット棚の車幅方向の長さは一対のビードの間隔よりも小さい長さであるよう構成される(好ましい態様5)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による車両用フードの前部構造の第一の実施形態を示す車幅方向中央に於ける車長方向断面図である。
【図2】図2はインナパネルを示す底面図である。
【図3】インナパネルの前部を示す拡大部分底面図である。
【図4】ロアロックリインフォースを示す底面図である。
【図5】フードの前端に歩行者などが衝突した場合を模した打撃試験の要領を示す説明図である。
【図6】比較例のフードについて、打撃試験前の車長方向の断面を二点鎖線にて示し、打撃試験後の車長方向の断面を実線にて示す説明図である。
【図7】第一の実施形態のフードについて、打撃試験前の車長方向の断面を二点鎖線にて示し、打撃試験後の車長方向の断面を実線にて示す説明図である。
【図8】打撃試験に於ける衝突以降の衝撃体のストローク(移動距離)と衝撃体がフードより受ける反力荷重との関係を略図的に示すグラフである。
【図9】本発明による車両用フードの前部構造の第二の実施形態を示す車幅方向中央に於ける車長方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
[第一の実施形態]
【0029】
図1は本発明による車両用フードの前部構造の第一の実施形態を示す車幅方向中央に於ける車長方向断面図、図2はインナパネルを示す底面図、図3はインナパネルの前部を示す拡大部分底面図、図4はロアロックリインフォースを示す底面図である。尚添付の図に於いて、Uは上方を示し、Lは車長方向を示し、Wは車幅方向を示している。
【0030】
これらの図に於いて、符号10は本発明の第一の実施形態による車両用フードを全体的に示している。フード10はフードの外面を形成するアウタパネル12と、フード10の内面を形成するインナパネル14と、アウタパネル12とインナパネル14との間に配置されたロックリインフォース16と、フード10をロックするためのストライカ18とを有している。
【0031】
図示の実施形態に於いては、ロックリインフォース16は下方側且つ前方側に位置するロアロックリインフォース16Aと、前端部にてロアロックリインフォースの後端部にスポット溶接により接合されたアッパロックリインフォース16Bとよりなっている。アウタパネル12の下面にはアウタパネルのデント性を向上させるためのデントリインフォース20が固定されており、アッパロックリインフォース16Bの後端部はスポット溶接によりデントリインフォース20に接合されている。
【0032】
ロアロックリインフォース16Aにはストライカリインフォース22がスポット溶接により接合されており、ストライカリインフォース22には上に開いたコの字形をなすストライカ18の二つの上端が固定されている。ロアロックリインフォース16A及びインナパネル14の前部には互いに整合する十字形の孔24及び26が設けられており、ストライカ18は孔24及び26を貫通して下方へ突出している。
【0033】
インナパネル14の前部には孔26に対し車幅方向両側にて車長方向に延在し下方へ隆起する一対のビード28と、孔26に対し車長方向前側にて車幅方向に延在し上方へ隆起する長方形のオフセット棚30とが設けられている。オフセット棚30は実質的に台形の断面形状を有しており、従ってオフセット棚30の後縁部は車長方向の断面で見て上に凸状の湾曲部と下に凸状の湾曲部とを有している。オフセット棚30の車幅方向の長さは一対のビード28の間隔よりも小さく、オフセット棚30の両端は一対のビード28より等距離隔置されている。
【0034】
図3に詳細に示されている如く、オフセット棚30の後縁部30Bに位置する上に凸状の湾曲部は、車幅方向の一直線32に沿って一対のビード28の前端縁部28Fと実質的に整合している。従ってオフセット棚30の後縁部30B及び一対のビード28の前端縁部28Fは互いに共働してインナパネル14の上に凸状に湾曲する応力集中部50を形成している。また図3に示されている如く、ロアロックリインフォース16Aの車幅方向の幅はインナパネル14の車幅方向の幅よりも小さい。
【0035】
図4に詳細に示されている如く、ロアロックリインフォース16Aの前端部には孔24よりも前方側にて車幅方向に延在する長方形の孔34が設けられている。ロアロックリインフォース16Aの前端部は孔34の車幅方向両側にてスポット溶接によりオフセット棚30の両端部に固定されている。図3及び図4に於いて、これらのスポット溶接の位置が記号Sにより示されている。
【0036】
またロアロックリインフォース16Aの前端部には実質的に断面半円状に上方へ突出するビード36が設けられており、ビード36は実質的に一直線32に整合する位置にてロアロックリインフォース16Aの全幅に亘り直線状に延在している。ビード36はロアロックリインフォース16Aの上に凸状に湾曲する応力集中部52を形成している。かくしてインナパネル14の応力集中部50及びロアロックリインフォース16Aの応力集中部52は上下方向に互いにオーバラップする状態にて設けられている。換言すれば、図4に示されている如く、ビード36の幅をAとすると、オフセット棚30の後縁部30Bはその上に凸状の湾曲部の稜線が幅Aの範囲内に存在している。
【0037】
図5はフード10の前端に歩行者などが衝突した場合を模した打撃試験の要領を示す説明図である。打撃試験に使用される衝撃体38は弾性を有する円柱体40と、該円柱体と一体をなす直方体状の剛体42とよりなっている。打撃試験は衝撃体38を鉛直方向より傾斜させ、円柱体40の実質的に中央部がフード10の前端の車幅方向中央に衝突するよう、衝撃体38の長手方向に垂直な方向へ衝撃体38を斜め下方へ高速度にて移動させることにより行われる。
【0038】
図6及び図7はそれぞれ比較例のフード10′及び第一の実施形態のフード10について、打撃試験前の車長方向の断面を二点鎖線にて示し、打撃試験後の車長方向の断面を実線にて示す説明図である。尚比較例のロックリインフォース16は第一の実施形態のロックリインフォース16と同一の構成を有している。しかし比較例のフード10′のインナパネル14′の前部には第一の実施形態のオフセット棚30に対応する部分は設けられておらず、平板状をなしている。従ってロックリインフォース16はオフセット棚30に対応する部分に接合されてはいない。
【0039】
図6に示されている如く、比較例のフード10′の場合には、ロアロックリインフォースのビード36の断面の湾曲度合は増大したが、インナパネル14′に折れ変形は発生しなかった。そのためフード10′全体の変形量も小さく、フード10′の下方への変形傾斜角も小さい。
【0040】
これに対し第一の実施形態のフード10の場合には、ロアロックリインフォース16Aのビード36及びインナパネル14のオフセット棚30の後縁部の上に凸の角部にそれらの断面の湾曲度合が増大するよう折れ変形が発生した。よってフード10全体の変形量及び下方への変形傾斜角の何れもフード10′の場合よりも大きい。
【0041】
またインナパネル14及びロアロックリインフォース16Aの屈曲変形はそれぞれオフセット棚30の後縁部及びビード36に於いてしか発生せず、従って1節根折れであり、多節根折れにはならなかった。
【0042】
図8は打撃試験に於ける衝突以降の衝撃体38のストローク(移動距離)と円柱体40がフードより受ける反力荷重との関係を略図的に示すグラフである。尚図8に於いて、破線は比較例のフード10′の結果を示し、実線は第一の実施形態のフード10の結果を示している。
【0043】
図8の破線と実線との比較より解る如く、比較例のフード10′の場合には、反力荷重はフードの変形が実質的に最大になるまで上昇し続けると共に、反力荷重の最大値が比較的高い値になることが解る。これに対し第一の実施形態のフード10の場合には、フード10の変形の進行の途中から反力荷重の上昇が非常に穏やかになり、反力荷重の最大値が比較例のフード10′の場合よりも低くなり、これに対応して最大ストロークが大きくなることが解る。即ちインナパネル14及びロアロックリインフォース16がそれらの応力集中部にて1節根折れすることにより、フード10を良好に且つ十分に変形させることができる。
【0044】
尚比較例のフード10′及び第一の実施形態のフード10の何れの場合にも、反力荷重が最大値に到達した後に低下する際にストロークが僅かに減少している。これはフードに対する衝撃荷重の解放と共にフードの弾性変形していた部分の変形量が減少することによる現象であると思われる。
【0045】
従って第一の実施形態のフード10によれば、インナパネル14及びロアロックリインフォース16がそれらの応力集中部にて1節根折れすることにより、フード10を良好に且つ十分に変形させることができる。よって比較例のフード10′の場合に比して、フード10の前端に歩行者などが衝突した場合に歩行者などがフードの前端より受ける衝撃をフードの良好且つ十分な変形によって効果的に吸収することができる。
[第二の実施形態]
【0046】
図9は本発明による車両用フードの前部構造の第二の実施形態を示す車幅方向中央に於ける車長方向断面図である。尚図9に於いて図1に示された部材と同一の部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
【0047】
この第二の実施形態に於いては、アウタパネル12、ロックリインフォース16、ストライカ18は第一の実施形態の場合と同様に構成されている。インナパネル14は、その前端近傍にオフセット棚30に対し車長方向前側にて車幅方向に延在し下方へ隆起する長方形のオフセット棚42が設けられている点を除き、第一の実施形態のインナパネル14と同様に構成されている。
【0048】
オフセット棚42はインナパネル14の前端近傍の剛性を向上させるが、オフセット棚30に対し車長方向前側にて車幅方向に延在しているので、フード10の前端に衝撃が作用した際に於けるフード10の変形を実質的に阻害しない。即ちオフセット棚42はロアロックリインフォース16Aのビード36及びインナパネル14のオフセット棚30の後縁部の上に凸の湾曲部にそれらの断面の湾曲度合が増大するよう折れ変形が発生することを阻害しない。
【0049】
従って第二の実施形態のフード10によれば、第一の実施形態の場合と同様に、フードの前端に歩行者などが衝突した場合に歩行者などがフードの前端より受ける衝撃を効果的に低減することができる。また第一の実施形態の場合に比してインナパネル14の前端近傍の剛性を向上させることができる。
【0050】
特に第一及び第二の実施形態によれば、インナパネル14及びロックリインフォース16の何れの応力集中部も上に凸の湾曲部を含み、フードが前端にて車両後方への荷重を受けると各湾曲部の湾曲度合が増大するよう変形する。従って応力集中部が孔や溝又は薄肉部として形成されている場合に比して、ロックリインフォースの強度低下を回避しつつ応力集中による良好な変形能を確保することができる。また何れかの応力集中部が逆方向へ湾曲している場合に比して、フードの先端が後方且つ下方へ移動するようフードの前部を容易に且つ好ましく変形させることができる。
【0051】
また第一及び第二の実施形態によれば、インナパネル14の応力集中部50はオフセット棚30の後縁部30B、即ち車両後方側の縁部及び一対のビード28の前端縁部28F、即ち車両前方側の端縁部により形成されている。従って応力集中部がオフセット棚30の後縁部30Bのみにより形成されている場合に比して、一対のビード28を有効に利用してインナパネル14に於ける応力集中を効果的に行わせることができる。またオフセット棚30の車幅方向の長さを長くすることなくインナパネル14の応力集中部の車幅方向の長さを長くすることができる。
【0052】
またオフセット棚30の後縁部30Bの上に凸状の湾曲部は車幅方向の一直線32に沿って一対のビード28の前端縁部28Fと互いに実質的に整合している。従ってオフセット棚30の後縁部30B及び一対のビード28の前端縁部28Fが整合していない場合に比して、インナパネル14の応力集中部を好ましく形成することができ、インナパネル14の変形を良好に行わせることができる。
【0053】
また第一及び第二の実施形態によれば、ロアロックリインフォース16Aはオフセット棚30に接合されているので、インナパネル14及びロックリインフォース16が確実に応力集中部に対し車両前方側にて互いに接合された状態にすることができる。また応力集中部を形成するためのオフセット棚30を、インナパネル14及びロックリインフォース16を接合するための手段としても有効に利用することができる。
【0054】
更に第一及び第二の実施形態によれば、ロアロックリインフォース16Aの前端部に設けられ応力集中部として機能するビード36は、ロアロックリインフォース16Aの全幅に亘り直線状に延在している。従ってビード36がロアロックリインフォース16Aの全幅に亘り延在していない場合や湾曲して延在している場合に比して、ロアロックリインフォース16Aの変形を良好に行わせることができる。
【0055】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0056】
例えば上述の各実施形態に於いては、インナパネル14の応力集中部50はオフセット棚30の後縁部30B及び一対のビード28の前端縁部28Fにより形成されているが、オフセット棚30の後縁部30Bのみにより形成されるよう修正されてよい。また本発明の車両用フードの前部構造がインナパネル14に一対のビード28が設けられていないフードに適用されてもよい。
【0057】
また上述の第一及び第二の実施形態に於いては、インナパネル14の応力集中部50及びロックリインフォース16の応力集中部52は何れも上に凸の湾曲部により形成されている。しかし少なくとも一方の応力集中部の少なくとも一部が上に凸の湾曲部以外の手段により形成されてもよい。例えばロックリインフォース16の応力集中部52の少なくとも一部が、孔や溝又は薄肉部として形成されてもよい。
【0058】
また上述の第一及び第二の実施形態に於いては、ロアロックリインフォース16Aはオフセット棚30に接合されているが、ロアロックリインフォース16Aはオフセット棚30以外の部位にてインナパネル14に接合されてもよい。
【0059】
また上述の各実施形態に於いては、オフセット棚30は実質的に台形の断面形状を有しているが、断面形状は他の形状であってもよい。例えばオフセット棚30はその前縁が段差なく前端部につながるよう形成されてもよい。
【0060】
また上述の各実施形態に於いては、ロックリインフォース16はロアロックリインフォース16Aとアッパロックリインフォース16Bとよりなっているが、一つの部材であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、10′…フード、12…アウタパネル、14…インナパネル、16…ロックリインフォース、18…ストライカ、28…ビード、30…オフセット棚、36…ビード
エアコン、38…衝撃体、44…オフセット棚、50、52…応力集中部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用フードの外面を形成するアウタパネルと、前記車両用フードの内面を形成するインナパネルと、前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に配置されたロックリインフォースと、前記車両用フードをロックするためのストライカとを有する車両用フードの前部構造に於いて、
前記インナパネル及び前記ロックリインフォースはそれぞれ前記ストライカに対し車両前方側にて車幅方向に延在する応力集中部を有し、
前記インナパネル及び前記ロックリインフォースの前記応力集中部は上下方向に互いにオーバラップする状態にて設けられており、
前記インナパネル及び前記ロックリインフォースは前記応力集中部に対し車両前方側にて互いに接合されている、
ことを特徴とする車両用フードの前部構造。
【請求項2】
前記インナパネル及び前記ロックリインフォースの前記応力集中部は上に凸の湾曲部を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の車両用フードの前部構造。
【請求項3】
前記インナパネルの前記応力集中部は該応力集中部と前記ストライカとの間の部分よりも前記ロックリインフォースの側へ隆起するオフセット棚が設けられることにより形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用フードの前部構造。
【請求項4】
前記ロックリインフォースの前記応力集中部は車幅方向に延在するビードにより形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用フードの前部構造。
【請求項5】
前記インナパネルは前記オフセット棚よりも車両後方側にて車長方向に延在するよう前記ストライカに対し車幅方向の両側に設けられた一対のビードを有し、前記インナパネルの前記応力集中部は前記オフセット棚の車両後方側の縁部及び前記一対のビードの車両前方側の端縁により形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用フードの前部構造。
【請求項6】
前記ロックリインフォースは前記オフセット棚に接合されていることを特徴とする請求項3乃至5の何れか一つに記載の車両用フードの前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240538(P2012−240538A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111791(P2011−111791)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】