説明

車両用フードの高さ調整構造

【課題】フードの高さ調整を容易にすることができる車両用フードの高さ調整構造を得る。
【解決手段】フードストライカ42が軸線42A回りに回転させられると、ウェルドナット48の雌ねじ部48Aとフードストライカ42の軸部44の雄ねじ部44Aとが互いに螺合し、この螺合量を変えることで、フードインナパネル30を基準にしたフードストライカ42の突出量が調整される。また、ガイドばね60がガイド可動部58をエンジンフード26側から離間する方向(矢印B方向)へ付勢してガイド受け部45に当てており、フードストライカ42を軸線42A回りに回転させた際には、ガイド可動部58の角度決めリブ59とガイド受け部45の角度決め溝45Aとは、フードロック受け部46にラッチ40が係止可能な向きとなる位置で互いに嵌合してフードストライカ42を節度的に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードロック用としてロック手段及びストライカを有する車両用フードの高さ調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部においては、閉止状態でロック可能なフードが配設されてエンジンルームを覆っている(例えば、特許文献1参照)。フードロック構造では、例えば、ストライカがフード側に溶接されると共にラッチを備えたロック部が車体骨格部材に固定されており、ロック部の高さ位置を予め固定時に(ラジエータグリルやフロントバンパカバーの外された状態で)調整しておくことでフードの高さ調整を行っている。
【0003】
この従来構造では、フードの高さ調整が車両完成前に行われるので、車両完成状態における具体的な高さ設定基準に合わせながら調整をすることができず、フードの高さ調整が難しい。
【特許文献1】特開2002−337743公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、フードの高さ調整を容易にすることができる車両用フードの高さ調整構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車両用フードの高さ調整構造は、フード側及び車体骨格部材側のいずれか一方側に取り付けられて前記フードの前記車体骨格部材側へのロック用に供され、前記フードの前記車体骨格部材側へのロック時に係止用とされるロック部材を備えたロック手段と、前記フード側及び前記車体骨格部材側のいずれか他方側に取り付けられ、軸部と当該軸部の一端側に設けられて前記ロック部材が係止可能な被係止部とを備えたストライカと、前記他方側及び前記軸部に対で設けられて前記ストライカを軸線回りに回転させることで互いに螺合可能とされ、この螺合量を変えることで前記他方側を基準にした前記ストライカの突出量を調整可能な突出量調整手段と、前記ストライカを軸線回りに回転させた際に前記被係止部に前記ロック部材が係止可能な向きとなる位置に当該ストライカを節度的に保持する節度機構と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用フードの高さ調整構造によれば、突出量調整手段は、フード側及び車体骨格部材側のうちのストライカが取り付けられる側、及びストライカの軸部に、対で設けられており、ストライカを軸線回りに回転させることで互いに螺合可能とされ、この螺合量を変えることでストライカの取り付けられる側を基準にしたストライカの突出量を調整可能としているので、ストライカが軸線回りに回転させられることによってストライカの突出量が調整され、ひいては、車体骨格部材側へロックされた状態のフードの高さが調整される。また、節度機構は、ストライカを軸線回りに回転させた際に被係止部にロック部材が係止可能な向きとなる位置に当該ストライカを節度的に保持するので、ストライカの所定の回転角度が作業者によって検知される。ここで、節度的に保持された位置でストライカの回転が止められれば、ストライカの被係止部は、ロック部材が係止可能な向きに向けられる。このため、ストライカの向きの設定が容易となる。
【0007】
請求項2に記載する本発明の車両用フードの高さ調整構造は、請求項1記載の構成において、前記節度機構は、前記他方側に配置され、前記ストライカの前記軸部が挿通可能とされると共に前記他方側に接離する方向へのみ移動可能とされる可動部を備えた筒状体と、前記軸部の径方向外側に張り出して前記可動部よりも前記被係止部側に配置され、前記軸部の回転時に当該軸部と一体に回転する張出部と、前記可動部を前記他方側から離間する方向へ付勢して前記張出部に当てる付勢手段と、前記可動部及び前記張出部に対で設けられ、前記ストライカを軸線回りに回転させた際に前記被係止部に前記ロック部材が係止可能な向きとなる位置で互いに嵌合する嵌合手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車両用フードの高さ調整構造によれば、付勢手段は、可動部をストライカの取付け側から離間する方向へ付勢して張出部に当てるので、可動部が張出部へ当たった状態が常に保持される。ここで、ストライカを軸線回りに回転させた際には、可動部及び張出部に対で設けられた嵌合手段は、被係止部にロック部材が係止可能な向きとなる位置で互いに嵌合するので、ストライカの所定の回転角度が作業者によって検知される。嵌合手段が互いに嵌合する位置でストライカの回転が止められれば、ストライカの被係止部は、ロック部材が係止可能な向きに向けられるので、作業性が良い。
【0009】
請求項3に記載する本発明の車両用フードの高さ調整構造は、請求項1記載の構成において、前記節度機構は、前記他方側に取り付けられて長孔が貫通形成され、当該長孔が貫通方向の直角断面形状において互いに直交する二本の中心線に対してそれぞれ左右対称に形成されると共に長手方向の両側に角部を備えており、当該長孔に前記ストライカの前記軸部が挿通可能とされた弾性変形可能な筒状部材と、前記軸部における前記被係止部側の部分に設けられて軸直角断面形状が前記長孔における貫通方向の直角断面形状に合わせた形状とされ、前記ストライカを軸線回りに回転させた際に前記被係止部に前記ロック部材が係止可能な向きとなる位置で前記長孔に嵌合する嵌合部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車両用フードの高さ調整構造によれば、筒状部材の長孔にはストライカの軸部が挿通可能とされ、筒状部材は弾性変形可能となっているので、軸部の嵌合部を長孔に挿通させて軸線回りに回転させた場合、嵌合部の向きに応じて筒状部材が弾性変形する。嵌合部は、軸直角断面形状が長孔における貫通方向の直角断面形状に合わせた形状とされ、ストライカを軸線回りに回転させた際に被係止部にロック部材が係止可能な向きとなる位置で長孔に嵌合するので、ストライカの所定の回転角度が作業者によって検知される。嵌合部が長孔に嵌合する位置でストライカの回転が止められれば、ストライカの被係止部は、ロック部材が係止可能な向きに向けられる。ここで、長孔は、貫通方向の直角断面形状において互いに直交する二本の中心線に対してそれぞれ左右対称に形成されるので、ストライカが軸線回りに180°回転させられる毎に嵌合部が長孔に嵌合すると共に、長手方向の両側に角部を備えているので、効果的に節度感を付与することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用フードの高さ調整構造によれば、車両完成状態でストライカの突出量を簡便に調整できると共にストライカの向きを適正な向きに簡単に設定できるため、フードの高さ調整を容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0012】
請求項2に記載の車両用フードの高さ調整構造によれば、ストライカを軸線回りに回転させる際に効果的な節度感が得られるので、ストライカの被係止部を係止時の向きへ容易に向けることができるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項3に記載の車両用フードの高さ調整構造によれば、簡易な構成でありながら、ストライカを軸線回りに180°回転する毎に嵌合して節度感が得られるので、ストライカの被係止部を係止時の向きへ容易に向けることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明における車両用フードの高さ調整構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車体の上方向、矢印FRは車体の前方向をそれぞれ示す。また、本実施形態では、「フード側及び車体骨格部材側のいずれか一方側」を車体骨格部材側とし、「フード側及び車体骨格部材側のいずれか他方側」をフード側としている。
【0015】
図1には、車両用フードの高さ調整構造が適用された車体前部構造が示されている。図1に示されるように、自動車(車両)の車体前部10Aには、車体前後方向に沿ってエプロンアッパメンバ12が配設されており、このエプロンアッパメンバ12は、車体前部10Aにおける車幅方向両端上部にそれぞれ取り付けられている。エプロンアッパメンバ12の車体前方側、すなわち、車体10の前端部側には、ラジエータサポート14が配置されている。
【0016】
ラジエータサポート14は、車体正面視で略矩形枠状に構成されており、ラジエータ(図示省略)の上部を支持して車幅方向を長手方向として配置される車体骨格部材としてのラジエータサポートアッパ16と、ラジエータの下部を支持して車幅方向を長手方向として配置されるラジエータサポートロア18と、ラジエータサポートアッパ16の長手方向の両端部とラジエータサポートロア18の長手方向の両端部とを車体上下方向に繋ぐ左右一対のラジエータサポートサイド20と、ラジエータサポートアッパ16の長手方向の端部から車体後方側かつ車体上方側へ斜めに延びてエプロンアッパメンバ12の前端部に結合されるラジエータサポートアッパサイド22と、を含んで構成されている。なお、前述した車体骨格部材とは、車体の骨組みを構成する部材であって、例えば、図1に示されるラジエータサポート14の構成部材等が含まれる。
【0017】
ラジエータサポートアッパ16は、その端部がラジエータサポートアッパサイド22の端部と重ね合わされている。また、ラジエータサポート14の車幅方向中央部には、ラジエータサポートアッパ16の長手方向の中央部とラジエータサポートロア18の長手方向の中央部とを繋ぐフードロックサポート24が取り付けられて車体上下方向に延在している。なお、ラジエータサポート14の車体前方側には、ラジエータグリル(図示省略)やフロントバンパカバー(図示省略)が取り付けられている。
【0018】
エプロンアッパメンバ12の上方、すなわち、車体前部10Aの上部には、開閉扉とされるエンジンフード26が開閉可能に設けられている。エンジンフード26は、後端部に配設されたヒンジ(図示省略)を介して車体10側に取付けられており、閉止状態では、前端部26Aがラジエータサポートアッパ16に支持されてエンジンルーム34を覆うようになっている。
【0019】
図2に示されるように、エンジンフード26は、エンジンフード26の車両外側部(閉止状態で上部)を構成するフードアウタパネル28と、エンジンフード26の車両内側部(閉止状態で下部)を構成するフードインナパネル30とを備えており、フードアウタパネル28の外周縁部28Aとフードインナパネル30の外周縁部30Aとがヘミング加工によって互いに結合されている。また、フードアウタパネル28とフードインナパネル30との間には、フードインナパネル30に座面が固定されて(図示省略)フードインナパネル30の補強用とされるフードインナリインフォース32がフード幅方向(図2の紙面に垂直な方向)に延在している。
【0020】
図1に示されるように、ラジエータサポートアッパ16の長手方向の中央部には、ロック手段としてのロック機構部36が取り付けられている。ロック機構部36は、エンジンフード26のラジエータサポートアッパ16側へのロック用に供されている。ロック機構部36は、ラジエータサポートアッパ16に固定される板状のベース本体38を備えており、ベース本体38の幅方向中央部には、ベース本体38の上端で開口すると共に略車体上下方向に沿って長手方向とされた切欠部38Aがベース本体38の厚さ方向に貫通して形成されている。また、図2に示されるように、ロック機構部36は、エンジンフード26のラジエータサポートアッパ16側へのロック時に係止用とされるロック部材としてのラッチ40を備えている。このラッチ40は、ベース本体38に取り付けられており、前記ロック時における配置位置となる係止位置とこの係止位置から退避された退避位置との間で車体前後方向の軸回りに回転移動可能とされている。
【0021】
図1に示されるように、エンジンフード26の前端部26Aには、車幅方向中央部の下面側にねじ込み式のフードストライカ42が取り付けられている。図2及び図3に示されるように、フードストライカ42は、略円柱状(直線棒状)の軸部44と、この軸部44の一端側に設けられて二股形状のラッチ40(図2参照)が係止可能な環状の被係止部としてのフードロック受け部46と、を備えている。フードロック受け部46は、軸部44の延在方向に対して直交する方向に延在する直線状の横棒部46Aを含む略五角形状に形成されており、図2に示されるように、ロック機構部36におけるベース本体38の切欠部38Aに挿入された状態でラッチ40が係止されるようになっている。
【0022】
フードインナパネル30には、貫通孔30Bが貫通形成されており、この貫通孔30Bにフードストライカ42の軸部44が挿通可能となっている。また、フードインナリインフォース32には、フードストライカ42の軸部44の挿通用として貫通孔32Aが貫通形成されると共にこの貫通孔32Aと同軸的にウェルドナット48が溶着されている。ウェルドナット48の軸方向は、エンジンフード26の閉止状態で車体上下方向となる向きとされている。ウェルドナット48の雌ねじ部48Aには、軸部44の先端側外周に形成された雄ねじ部44Aが螺合可能となっている。雄ねじ部44A及び雌ねじ部48Aは、本実施形態における突出量調整手段とされており、対で設けられてフードストライカ42を軸線42A回りに回転させることで互いに螺合可能とされ、この螺合量(ねじ込み量)を変えることでエンジンフード26のフードインナパネル30を基準にしたフードストライカ42の突出量(突出長さ)を調整可能としている。
【0023】
また、フードストライカ42の突出量調整時にフードストライカ42を適正な向きに設定しやすくするために、節度機構50が設けられている。節度機構50は、フードストライカ42の軸線42A回りの回転時(ボルトねじ込み時)に所定の回転角度毎に節度感を与える構造とされており、具体的には、フードストライカ42を軸線42A回りに回転させた際にフードロック受け部46にラッチ40が係止可能な向きとなる位置にフードストライカ42を節度的に保持するようになっている。すなわち、フードストライカ42は、所定の回転角度(180°回転)でのみロック機構部36におけるベース本体38の切欠部38A(図1参照)に挿入(嵌合)することができるので、作業性向上を目的として180°回転する毎に節度感を持たせる構造としている。
【0024】
節度機構50は、エンジンフード26側に配置されてガイド可動部58を備えた筒状体54と、フードストライカ42の軸部44の径方向外側に張り出す張出部としてのガイド受け部45と、ガイド可動部58をエンジンフード26側から離間する方向(矢印B方向)へ付勢してガイド可動部58をガイド受け部45に当てる付勢手段としてのガイドばね60と、ガイド可動部58及びガイド受け部45に対で設けられた嵌合手段としての、角度決め溝45A及び角度決めリブ59と、を備えている。本実施形態では、角度決めリブ59が形成された筒状体54(図4参照)と、ガイドばね60と、を含んで1ユニットのストライカガイド52が構成されている。
【0025】
ストライカガイド52における筒状体54は、樹脂製とされ、フードストライカ42の軸部44が挿通可能な略筒状のガイドベース56と、ガイドベース56と同軸的に配置されてフードストライカ42の軸部44が挿通可能とされると共にエンジンフード26のフードインナパネル30側に接離する方向(矢印A方向及び矢印B方向)へのみ移動可能とされるガイド可動部58と、を含んで構成されている。
【0026】
ガイドベース56は、フードインナパネル30への取付け側になると共に一対の爪部156Aが形成されたベース上部56Aと、ベース上部56Aに比べて内径が大径とされると共に外径が小径とされるベース下部56Bと、を備えている。
【0027】
ベース上部56Aは、フードインナパネル30の貫通孔30Bに挿入可能とされており、爪部156Aが貫通孔30Bの周縁部に爪嵌合されることで、ガイドベース56がフードインナパネル30に固定状態で取り付けられる構造となっている。ガイドベース56は、爪部156Aによる爪嵌合によってフードインナパネル30に対して貫通孔30B回りに回転しないようになっている。なお、爪部156Aによって爪嵌合させる構造とすることで、ボルト締結等によって締結する構造に比べて工場での製造上の工程数が減るというメリットがある。
【0028】
ベース下部56Bの外径は、ガイド可動部58の内径に比べて小径とされている。ベース下部56Bの筒外周面には、ガイドベース56の筒軸線に平行な直線状の溝部(図示省略)が形成されている。この図示しない溝部内には、ガイド可動部58の筒内周面に形成された直線状の山部(図示省略)が配置されている。ガイド可動部58の図示しない山部は、ガイド可動部58の筒軸線に平行とされており、これによって、ガイド可動部58は、ガイドベース56に対して筒軸回りの回転ができない構造となっており、エンジンフード26のフードインナパネル30側に接離する方向(矢印A方向及び矢印B方向、ストライカガイド52の筒軸方向と同じ方向)へのみ移動可能となっている。
【0029】
なお、ベース下部56Bの下端部には、径方向外側へ突出する被係止部56Cが形成されており、ガイド可動部58の上端部には、径方向内側へ突出して被係止部56Cに係止可能な係止部58Aが形成されている。被係止部56Cに係止部58Aが係止されることで、ガイド可動部58がベース下部56Bから抜け落ちないようになっている。
【0030】
ガイド可動部58は、筒底部58Bを備えており、筒底部58Bの中央部には、フードストライカ42の軸部44が挿通するための貫通孔58C(図4参照)が貫通形成されている。筒底部58Bの内面部には、ガイドばね60(圧縮コイルスプリング)の一端部が当接している。ガイドばね60は、軸部44の外周側に圧縮状態で巻装されると共に、ガイド可動部58の筒内側でかつガイドベース56のベース下部56Bの筒内側に配置されている。ガイドばね60の他端部は、ベース上部56Aの径方向内側寄りの底面256Aに当接している。
【0031】
ガイド可動部58よりもフードロック受け部46側には、ガイド受け部45(図3参照)が配置されており、このガイド受け部45は、軸部44の回転時に軸部44と一体に回転する。ガイド受け部45の上面部145(図3参照)と筒底部58Bの外面部158B(図4参照)とは、ガイドばね60の付勢力によって、当接した状態になっている。これにより、フードストライカ42のがたつきを防止しており、フードストライカ42の取付け状態における見栄えも良くしている。
【0032】
図4に示されるように、ガイド可動部58における筒底部58Bの外面部158Bには、角度決めリブ59が形成されている。角度決めリブ59は、外面部158Bの径方向に一直線上となる位置に計2個設けられている。また、図2に示されるように、筒底部58Bの外面部158B(図4参照)に対面するガイド受け部45の上面部145(図3参照)には、角度決めリブ59が嵌合可能な角度決め溝45A(図3参照)が形成されている。図3に示されるように、角度決め溝45Aは、ガイド受け部45における上面部145の径方向に一直線上となる位置に計2個設けられている。
【0033】
図2に示される角度決めリブ59及び角度決め溝45Aは、フードストライカ42を軸線42A回りに回転させた際にフードロック受け部46にラッチ40が係止可能な向きとなる位置、換言すれば、フードストライカ42がベース本体38の切欠部38A(図1参照)に挿入可能な向きとなる位置で、互いに嵌合するようになっている。
【0034】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
図2に示されるように、エンジンフード26のフードインナリインフォース32にウェルドナット48が溶着され、このウェルドナット48の雌ねじ部48Aに螺合可能な雄ねじ部44Aがフードストライカ42の軸部44に設けられているので、フードストライカ42が軸線42A回りに回転させられることで互いに螺合し、この螺合量を変えること、すなわち、フードストライカ42を手でねじ込む又は緩めることで、フードインナパネル30を基準にしたフードストライカ42の突出量(出代)が調整され、ひいては、フードロック状態とされたフード閉止時のエンジンフード26の高さが調整される。
【0036】
ここで、節度機構50におけるガイドばね60は、ガイド可動部58をエンジンフード26側から離間する方向(矢印B方向)へ付勢してガイド受け部45に当てるので、ガイド可動部58がガイド受け部45へ当たった状態が常に保持される。フードストライカ42を軸線42A回りに回転させた際には、ガイド可動部58の角度決めリブ59とガイド受け部45の角度決め溝45Aとは、フードロック受け部46にラッチ40が係止可能な向きとなる位置で互いに嵌合してフードストライカ42を節度的に保持する。
【0037】
これによって、作業者は、フードストライカ42の所定の回転角度を検知することができる。このため、節度的に保持された位置、すなわち、角度決めリブ59及び角度決め溝45Aが互いに嵌合する位置でフードストライカ42の回転が止められれば、フードストライカ42のフードロック受け部46は、ラッチ40が係止可能な向きに向けられる。
【0038】
また、角度決めリブ59と角度決め溝45Aとが互いに嵌合した状態であっても、ガイドばね60の付勢力に抗しながらフードストライカ42に軸線42A回りの回転力が加えられれば、角度決めリブ59と角度決め溝45Aとの嵌合状態が解除されてフードストライカ42を回転させることができるので、フードストライカ42のねじ込み量を調整することができる。このようなフードストライカ42の軸線42A回りの回転時には、ガイドばね60の付勢力によって非嵌合状態と嵌合状態との間の移行の際に適切な節度感が得られる。
【0039】
フードストライカ42の向きを設定した後、フードストライカ42のフードロック受け部46が図1に示されるロック機構部36におけるベース本体38の切欠部38Aに挿入されて納まると、フードストライカ42は、軸線42A(図2参照)回りの回転が不能となり、仮に、フードストライカ42に対して軸線42A(図2参照)回りの回転方向へ外力が作用したとしても、エンジンフード26側からのフードストライカ42の緩みを効果的に防げる。
【0040】
以上により、車両完成状態で(ラジエータグリルやフロントバンパカバーを外すことなく)フードストライカ42の突出量を簡便に調整できると共に、図2に示されるフードストライカ42を軸線42A回りに回転させる際に効果的な節度感が得られてフードストライカ42の向きを適正な向きに簡単に設定できるため、フードロック状態とされたフード閉止時のエンジンフード26の高さ調整を容易にすることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、エンジンフード26の高さ調整の際に別途工具を使う必要がないので、工具がない状況でエンジンフード26の高さ調整が可能である。また、工具を用いずにエンジンフード26の高さ調整が可能であるため、ボデーに傷が付く可能性を低減でき、車両品質が向上する。
【0042】
また、エンジンフード26の高さ調整によって、車両見栄えが向上し、さらには、エンジンフード26を閉める際に必要な閉止力を調整(低減)できるので、サービス性も向上する。
【0043】
[第2実施形態]
次に、車両用フードの高さ調整構造の第2の実施形態を図5に基づき説明する。なお、第2の実施形態における車両用フードの高さ調整構造は、第1の実施形態におけるウェルドナット48(図2参照)がウェルドボルト62に置き換えられると共に、フードストライカ42の軸部44における先端側に雄ねじ部44A(図2参照)でなく雌ねじ部44Bが設けられる点が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図5に示されるように、フードインナリインフォース32には、フードストライカ42の取付け箇所に対応して貫通孔32Bが貫通形成されている。貫通孔32Bの周縁部には、ウェルドボルト62が溶着されており、ウェルドボルト62のボルト軸62Aがフード上方側からフード下方側へ向けて貫通孔32Bを貫通している。ウェルドボルト62のボルト軸62Aに形成された雄ねじ部62Bには、軸部44の筒状とされた先端側の内周面に形成された雌ねじ部44Bが螺合可能となっている。雄ねじ部62B及び雌ねじ部44Bは、本実施形態における突出量調整手段とされており、対で設けられてフードストライカ42を軸線42A回りに回転させることで互いに螺合可能とされ、この螺合量を変えることでエンジンフード26のフードインナパネル30を基準にしたフードストライカ42の突出量を調整可能としている。このような構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、車両用フードの高さ調整構造の第3の実施形態を図6及び図7に基づき説明する。なお、第3の実施形態における車両用フードの高さ調整構造は、節度機構66が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図6に示されるように、節度機構66は、弾性変形可能なゴムで形成されてフードストライカ42の軸部44が挿通可能とされた筒状部材としてのストライカガイドゴム70と、フードストライカ42の軸部44におけるフードロック受け部46側(フードロック受け部46寄り)の部分に設けられた嵌合部80と、を含んで構成されている。
【0047】
ストライカガイドゴム70は、筒状の本体部72と一対の爪部76とを含んで構成されており、エンジンフード26(図2参照)におけるフードインナパネル30(図2参照)に取り付けられる。爪部76は、フードインナパネル30(図2参照)への取付け側に配置され、第1の実施形態における爪部156A(図2及び図4参照)と同様の形状及び機能を有する。すなわち、爪部76は、貫通孔30B(図2参照)の周縁部に爪嵌合可能とされており、この爪部76の爪嵌合によって、ストライカガイドゴム70がフードインナパネル30(図2参照)に固定状態で取り付けられる構造となっている。
【0048】
ストライカガイドゴム70における本体部72には、長孔74が貫通形成されている。図7(A)に示されるように、長孔74は、貫通方向の直角断面形状において互いに直交する二本の中心線C1、C2に対してそれぞれ左右対称に菱形形状に形成されると共に長手方向の両側に角部74Aを備えている。図6に示されるように、長孔74には、フードストライカ42の軸部44が挿通可能とされている。
【0049】
軸部44におけるフードロック受け部46側の部分に設けられた嵌合部80は、図7に示されるように、軸直角断面形状(図7(B)参照)が長孔74(図7(A)参照)における貫通方向の直角断面形状に合わせた菱形形状とされ、図6に示されるフードストライカ42を軸線42A回りに回転させた際にフードロック受け部46にラッチ40(図2参照)が係止可能な向きとなる位置(すなわち、フードストライカ42がベース本体38の切欠部38A(図1参照)に挿入可能な向きとなる位置)で長孔74に嵌合するようになっている。なお、この嵌合状態では、長孔74の貫通方向の直角断面形状における長手方向と、嵌合部80の軸直角断面形状における長手方向と、が同じ方向になっている。
【0050】
(作用・効果)
次に上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0051】
ストライカガイドゴム70の長孔74にはフードストライカ42の軸部44が挿通可能とされ、ストライカガイドゴム70は弾性変形可能となっているので、軸部44の嵌合部80を長孔74に挿通させて軸線42A回りに回転させた場合、フードインナパネル30(図2参照)に固定されたストライカガイドゴム70が嵌合部80の向きに応じて弾性変形する。
【0052】
嵌合部80は、軸直角断面形状が長孔74における貫通方向の直角断面形状に合わせた菱形形状とされ、フードストライカ42を軸線42A回りに回転させた際にフードロック受け部46にラッチ40(図2参照)が係止可能な向きとなる位置で長孔74に嵌合するので、嵌合部80が長孔74に嵌合する位置でフードストライカ42の回転が止められれば、フードストライカ42のフードロック受け部46は、ラッチ40が係止可能な向きに向けられる。
【0053】
ここで、長孔74は、貫通方向の直角断面形状において互いに直交する二本の中心線C1、C2(図7(A)参照)に対してそれぞれ左右対称に形成されるので、フードストライカ42が軸線42A回りに180°回転させられる毎に嵌合部80が長孔74に嵌合すると共に、長孔74の長手方向の両側に角部74Aを備えているので、効果的に節度感を付与することができる。
【0054】
このように、簡易な構成でありながら、フードストライカ42を軸線42A回りに180°回転する毎に嵌合して節度感が得られるので、フードストライカ42のフードロック受け部46を係止時の向きへ容易に向けることができる。また、これに加えて第1の実施形態と同様に、車両完成状態でフードストライカ42の突出量を簡便に調整できるので、エンジンフード26の高さ調整を容易にすることができる
【0055】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、図2等に示されるように、「フード側及び車体骨格部材側のいずれか一方側」を車体骨格部材側とし、「フード側及び車体骨格部材側のいずれか他方側」をフード側としているが、一方側と他方側とを逆にしてもよい。すなわち、「フード側及び車体骨格部材側のいずれか一方側」をフード側とし、フード側にロック機構部36(ロック手段)を取り付け、「フード側及び車体骨格部材側のいずれか他方側」を車体骨格部材側とし、車体骨格部材側にフードストライカ42(ストライカ)を取り付けてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、爪部156A、76が貫通孔30Bの周縁部に爪嵌合しているが、ストライカガイド52やストライカガイドゴム70をボルト等の締結手段を用いてフードインナパネル30に取り付けてもよい。また、ストライカガイド52やストライカガイドゴム70がフードインナパネル30を貫通してフードインナリインフォース32等のようなフード側のリインフォースに取り付けられる構造であってもよい。
【0057】
また、第1、第2の実施形態では、ウェルドナット48やウェルドボルト62をフードインナリインフォース32に取り付けているが、これらをフードロックリインフォース等の他のフード側のリインフォースに取り付けてもよい。
【0058】
さらに、第1、第2の実施形態の変形例として、例えば、角度決め溝45Aを角度決めリブに置き換えると共に角度決めリブ59を角度決め溝に置き換えてもよい。また、嵌合手段は、リブ及び溝以外であってもよく、例えば、半球突起部及び半球凹部等のような他の嵌合手段としてもよい。
【0059】
さらにまた、第1、第2の実施形態では、付勢手段としてのガイドばね60(圧縮コイルスプリング)を適用しているが、付勢手段は、例えば、ゴム等の他の付勢手段としてもよい。
【0060】
なお、図6及び図7に示される第3の実施形態の変形例として、第3の実施形態におけるウェルドナット48をウェルドボルトに置き換えると共に、フードストライカ42の軸部44における先端側に雄ねじ部44Aでなく雌ねじ部を設ける構成としてもよい。
【0061】
また、第3の実施形態の変形例として、長孔における貫通方向の直角断面形状は、菱形形状における辺部を円弧に置き換えた形状や、二本の円弧によって長手方向両側の角部を形成する形状等のような他の形状にしてもよい。このような場合も、嵌合部の軸直角断面形状は、これらに合わせた形状とされる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用フードの高さ調整構造が適用された車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用フードの高さ調整構造を車体前後方向に切断した状態で示す縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるフードストライカを示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるストライカガイドを示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車両用フードの高さ調整構造を車体前後方向に切断した状態で示す縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る車両用フードの高さ調整構造の一部を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態におけるストライカガイドゴムの本体部及びフードストライカの嵌合部を示す断面図である。図7(A)は、図6の7A−7A線断面図である。図7(B)は、図6の7B−7B線断面図である。
【符号の説明】
【0063】
16 ラジエータサポートアッパ(車体骨格部材)
26 エンジンフード
36 ロック機構部(ロック手段)
40 ラッチ(ロック部材)
42 フードストライカ
42A 軸線
44 軸部
44A 雄ねじ部(突出量調整手段)
44B 雌ねじ部(突出量調整手段)
45 ガイド受け部(張出部)
45A 角度決め溝(嵌合手段)
46 フードロック受け部(被係止部)
48A 雌ねじ部(突出量調整手段)
50 節度機構
54 筒状体
58 ガイド可動部(可動部)
59 角度決めリブ(嵌合手段)
60 ガイドばね(付勢手段)
62B 雄ねじ部(突出量調整手段)
66 節度機構
70 ストライカガイドゴム(筒状部材)
74 長孔
74A 角部
80 嵌合部
C1 中心線
C2 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード側及び車体骨格部材側のいずれか一方側に取り付けられて前記フードの前記車体骨格部材側へのロック用に供され、前記フードの前記車体骨格部材側へのロック時に係止用とされるロック部材を備えたロック手段と、
前記フード側及び前記車体骨格部材側のいずれか他方側に取り付けられ、軸部と当該軸部の一端側に設けられて前記ロック部材が係止可能な被係止部とを備えたストライカと、
前記他方側及び前記軸部に対で設けられて前記ストライカを軸線回りに回転させることで互いに螺合可能とされ、この螺合量を変えることで前記他方側を基準にした前記ストライカの突出量を調整可能な突出量調整手段と、
前記ストライカを軸線回りに回転させた際に前記被係止部に前記ロック部材が係止可能な向きとなる位置に当該ストライカを節度的に保持する節度機構と、
を有することを特徴とする車両用フードの高さ調整構造。
【請求項2】
前記節度機構は、
前記他方側に配置され、前記ストライカの前記軸部が挿通可能とされると共に前記他方側に接離する方向へのみ移動可能とされる可動部を備えた筒状体と、
前記軸部の径方向外側に張り出して前記可動部よりも前記被係止部側に配置され、前記軸部の回転時に当該軸部と一体に回転する張出部と、
前記可動部を前記他方側から離間する方向へ付勢して前記張出部に当てる付勢手段と、
前記可動部及び前記張出部に対で設けられ、前記ストライカを軸線回りに回転させた際に前記被係止部に前記ロック部材が係止可能な向きとなる位置で互いに嵌合する嵌合手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の車両用フードの高さ調整構造。
【請求項3】
前記節度機構は、
前記他方側に取り付けられて長孔が貫通形成され、当該長孔が貫通方向の直角断面形状において互いに直交する二本の中心線に対してそれぞれ左右対称に形成されると共に長手方向の両側に角部を備えており、当該長孔に前記ストライカの前記軸部が挿通可能とされた弾性変形可能な筒状部材と、
前記軸部における前記被係止部側の部分に設けられて軸直角断面形状が前記長孔における貫通方向の直角断面形状に合わせた形状とされ、前記ストライカを軸線回りに回転させた際に前記被係止部に前記ロック部材が係止可能な向きとなる位置で前記長孔に嵌合する嵌合部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の車両用フードの高さ調整構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−105551(P2008−105551A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290166(P2006−290166)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】