説明

車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】リザーバとポンプとを近付けて配置することができ、リザーバの軸方向に基体を小型化する。
【解決手段】リザーバ孔20に摺動自在に挿入されたピストン21と、ばね22と、ばね受け部材23と、を備えたリザーバRと、弁体31と、弁座部30cが形成されたシート部材30と、を備えたチェック弁Cと、を備え、ピストン21には、リザーバ孔20の底部20aに対向する面にガイド部21b(凹部21g)が設けられており、チェック弁Cは、少なくとも弁座部30cが凹部21gに収容されるようにリザーバ孔20の底部20aからピストン21に向けて突設されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ポンプのインレットバルブ(チェック弁)がポンプと別体に設けられた車両用ブレーキ液圧制御装置として、特許文献1,2に開示されたものが知られている。
【0003】
この車両用ブレーキ液圧制御装置では、リザーバの吐出側とポンプの吸入側との間に形成されたブレーキ流路に、チェック弁が配置されている。
このような構成とすることにより、ブレーキ流路を用いてチェック弁を好適に配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−43034号公報
【特許文献2】特開2008−286083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2では、チェック弁を配置するスペースを、リザーバの吐出側とポンプの吸入側との間に確保する必要がある。このため、リザーバとポンプとの間が離れてしまい、リザーバの軸方向に、基体が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
このような観点から、本発明は、リザーバとポンプとを近付けて配置することができ、リザーバの軸方向に基体を小型化することができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために創案された本発明の車両用ブレーキ液圧制御装置は、リザーバとチェック弁とを含んで構成される車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記リザーバは、基体の一面に設けられ底部にブレーキ液路が開口する有底のリザーバ孔と、前記リザーバ孔に摺動自在に挿入されたピストンと、前記ピストンを前記底部に向けて付勢するばねと、前記リザーバ孔の開口端部に設けられ前記ばねを受けるばね受け部と、を備え、前記チェック弁は、弁体と、この弁体が着座する弁座部が形成されたシート部材と、を備え、前記ピストンには、前記リザーバ孔の底部に対向する面に凹部が設けられており、前記チェック弁は、少なくとも前記弁座部が前記凹部に収容されるように前記リザーバ孔の底部から前記ピストンに向けて突設されていることを特徴とする。
【0008】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、チェック弁のシート部材に形成された弁座部が少なくともリザーバのピストンの凹部に収容されるように配置されているので、その分、リザーバとポンプとを近付けて配置することができる。これにより、リザーバの軸方向に基体を小型化することができる。
【0009】
また、本発明は、前記ピストンは、前記シート部材の外周面に前記凹部の内周面が摺接した状態でリザーバ孔内を摺動することを特徴とする。
【0010】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、チェック弁のシート部材にピストン摺動のためのガイド機能をもたせることができる。これにより、ピストンは、摺動時に、リザーバ孔の内周面およびシート部材の外周面の両方によってガイドされることとなる。したがって、ピストンの姿勢が安定する。
【0011】
また、本発明は、前記ピストンの摺動方向における前記シート部材と前記凹部との摺接長は、前記ピストンのストローク長よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0012】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、ピストンがフルストロークしてもシート部材と凹部との摺接が維持されるので、ストローク全体にわたってピストンの姿勢が安定する。
【0013】
また、本発明は、前記シート部材と前記凹部との少なくとも一方には、ブレーキ液が通流可能な連通路が形成されていることを特徴とする。
【0014】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、連通路を介してリザーバの貯留室内とチェック弁の弁室内とを良好に連通させることができる。これにより、ブレーキ液の通流がスムーズになる。
【0015】
また、本発明は、前記チェック弁は、前記ピストンと同軸に配置されていることを特徴とする。
【0016】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、ピストンをより安定して摺動させることができる。
【0017】
また、本発明は、前記ピストンに、前記ばねの端部が外嵌されるガイド部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、ガイド部でばねの端部を好適に保持することができる。これにより、ばねを安定してピストンに作用させることができる。
【0019】
また、本発明は、前記ガイド部が、前記ピストンおよび前記ばねと同軸に形成されていることを特徴とする。
【0020】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、ばねをより一層安定してピストンに作用させることができる。
【0021】
また、本発明は、前記シート部材は、前記基体側に突出するリテーナ部を有しており、前記リテーナ部は、前記リザーバ孔の底部に開口するブレーキ液路に対して、かしめまたは圧入で固定されていることを特徴とする。
【0022】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、簡単かつ省スペースでチェック弁を基体に固定することができる。
【0023】
また、本発明は、ブレーキ液を吸引および吐出するポンプを備え、前記ポンプの吸入弁が前記チェック弁で構成されていることを特徴とする。
【0024】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、ポンプの構成部材である吸入弁をリザーバ孔内に突出させて設けることができるので、その分、リザーバとポンプ本体とを近付けて配置することができる。これにより、リザーバの軸方向に基体を小型化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、リザーバとポンプとを近付けて配置することができ、リザーバの軸方向に基体を小型化することができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の要部を示した側断面図である。
【図2】リザーバ周りの構造を示した図であり、(a)はリザーバにブレーキ液が貯溜されていない状態を示す側断面図、(b)はリザーバにブレーキ液が貯溜された状態を示す側断面図である。
【図3】チェック弁の分解斜視図である。
【図4】(a)は本発明の第2実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のリザーバ周りの構造を示す側断面図、(b)は図4(a)におけるシート部材のA−A線断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のリザーバ周りの構造を示す側断面図である。
【図6】(a)は本発明の第4実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のリザーバ周りの構造を示す側断面図、(b)はシート部材を下方から見た斜視図、(c)はシート部材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0028】
本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)は、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)、自動四輪車などの車両に好適に用いられるものであり、アンチロック制御やトラクション制御等、車両の車輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するものである。
【0029】
図1に示すように、ブレーキ制御装置は、基体10と、電動モータ11と、電磁弁の開閉や電動モータ11の作動を制御する図示しない制御ユニットが収容されたコントロールハウジング12と、を主に備えている。基体10には、リザーバR、チェック弁Cを含むポンプP、図示しない電磁弁等が装着されている。
【0030】
基体10は、略直方体に形成される金属部品である。基体10の内部には、流体であるブレーキ液の流路(油路、一部図示)が形成されている。
基体10の各面には、図示せぬマスタシリンダからの管材が接続される入口ポート10aや図示せぬ車輪ブレーキに至る管材が接続される四つの出口ポート10b(一つのみ図示)のほか、図示しない電磁弁や圧力センサといった電子機器が装着される穴(孔、省略)が形成されている。また、ポンプPが装着されるポンプ穴(孔)10cや、リザーバRとして機能する各種部品が装着されるリザーバ孔(孔)20が形成されている。なお、各穴同士は、直接に、あるいは基体10の内部に形成された図示せぬ流路を介して互いに連通している。
また、チェック弁Cは、ポンプPを構成する吸入弁として備わり、リザーバ孔20に連通している吸入路10eに固定され、リザーバ孔20に向けて突出配置されている。つまり、ポンプPの吸入弁がチェック弁Cで構成されている。
【0031】
次に、基体10に形成されるリザーバRの構造について詳細に説明する。
リザーバ孔20には、リザーバRを構成する部品が収容される。
リザーバRは、図2(a)に示すように、リザーバ孔20に装着される円筒状のピストン21と、このピストン21をリザーバ孔20の底部20a側(上側)に付勢するばね22と、リザーバ孔20の開口部を塞ぐ略有底円筒状のばね受け部材23とを備えて構成される。
【0032】
リザーバ孔20は、ブレーキ液を一時的に貯溜する機能を備えるものであり、基体10の下面101に開口する有底円筒状の孔からなる。リザーバ孔20は、図2(a)に示すように、吸入路10eを通じてポンプ穴10c(図1参照、以下同じ)と連通している。吸入路10eは、リザーバ孔20からポンプ穴10cに向けて段状に縮径する段付円筒状の貫通孔であり、リザーバ孔20の底面に開口する大径部10e1を備えている。
【0033】
リザーバ孔20の内周面201には、周方向に沿って係止溝202が形成されている。なお、以下では、内周面201のうち、係止溝202の上側に位置する円筒面状の部位を摺動穴壁面211と称し、係止溝202の下側に位置する円筒面状の部位を当接穴壁面203と称し、この当接穴壁面203の下側に位置する円錐台面状の部位をテーパ穴壁面204と称し、このテーパ穴壁面204の下側に位置する円筒面状の部位を大径穴壁面205と称することとする。
【0034】
リザーバ孔20の底部20aには、出口ポート10b(図1参照)に通じる流入路10dと、ポンプ穴10c(図1参照、以下同じ)に通じる吸入路(流出路)10eとが開口している。
【0035】
係止溝202は、摺動穴壁面211よりも浅い部位に形成された環状の凹溝である。係止溝202には、リザーバ通気路10fが連通している。リザーバ通気路10fは、基体10とコントロールハウジング12とで形成された図示しない空間部と連通している。これにより、ピストン21がリザーバ孔20の開口部側に摺動移動してばね室(ばね22が配置される室)の容積が減少したときでも、ばね22の配置される空間の気圧が高まることはない。したがって、ピストン21は、ばね受け部材23に当接するまでスムーズに摺動する。
また、係止溝202には、傾斜状の係止面202aが形成されている。この係止面202aには、抜け止部材24が係止される。
【0036】
当接穴壁面203は、係止溝202よりも浅い部位に形成されている。当接穴壁面203には、リザーバ孔20の開口に装着される蓋部材25の挿入部25bが当接するようになっている。
【0037】
テーパ穴壁面204は、当接穴壁面203よりも浅い部位に形成されていて、リザーバ孔20の開口部側に向かうにしたがって漸次拡径する円錐台面状を呈している。
【0038】
大径穴壁面205は、テーパ穴壁面204よりも浅い部位に形成されている。大径穴壁面205には、蓋部材25の外周縁部がかしめにより固定されている。
【0039】
ピストン21は、リザーバ孔20に摺動自在に挿入されるものであり、流入路10dからリザーバ孔20に流入したブレーキ液の液圧によってばね受け部材23側に移動することで、リザーバ孔20の底部20aとの間に、ブレーキ液を貯留する貯留室を形成する。
【0040】
ピストン21は、リザーバ孔20の摺動穴壁面211に沿って摺動自在となっており、有底円筒状の部材からなる。ピストン21は、流入路10d(図2(a)参照)を通じてブレーキ液が流入したときに、ばね受け部材23側に移動してこのブレーキ液を貯溜する。
ピストン21は、リザーバ孔20の底部20aに対向する環状のピストン底部21aと、ピストン21の中央部分に形成された有底円筒状のガイド部21bと、リザーバ孔20の摺動穴壁面211に対向する筒状のピストン周壁部21cと、を備えている。ピストン21には、リザーバ孔20の底部20aに対向する面に凹部21gが設けられている。なお、ピストン21の内空部には、ばね22の一端部が挿入される。ピストン底部21aの受け部材3側の面には、ばね22の一端が当接する。
【0041】
ピストン底部21aは、リザーバ孔20の摺動穴壁面211における穴径と同等の外径を備えている。
ガイド部21bは、ピストン底部21aの内周縁部につながっており、有底円筒状を呈している。ガイド部21bは、ピストン21およびばね22と同軸に形成されており、ピストン21の下面側から見てばね22側(下面側)に突出している。この突出部分には、ばね22の端部が外嵌されて保持されている。
【0042】
本実施形態では、ガイド部21bをピストン底部21aに開口させることにより凹部21gが形成されている。つまり、凹部21gは、リザーバ孔20の底部20aの当接面(ピストン底部21aの当接面)に対して窪んでいる。
ガイド部21bの内空(すなわち凹部21g)は、チェック弁Cを収容することが可能な大きさを有して形成されている。ガイド部21bの内周面(凹部21gの内周面)は、これに挿入されるチェック弁Cの外周面(後記するシート部材30の胴部30b、以下同じ)に対向しており、チェック弁Cの外周面に摺接可能となっている。つまり、ピストン21は、チェック弁Cの外周面にガイド部21bの内周面が摺接しながらストロークするように構成されている。
【0043】
ここで、ピストン21の摺動方向において、チェック弁Cの外周面とガイド部21bの内周面との摺接長さL1は、ピストン21のストローク長L2よりも大きく設定されている。つまり、図2(b)に示すように、ピストン21がばね受け部材23に当接する位置までストロークした状態において、ガイド部21b内には、チェック弁Cの下端部が位置するように構成されている。
【0044】
ピストン周壁部21cは、図2(a)に示すように、ピストン底部21aの周縁部からばね受け部材23側に向かって延設されており、その内周面は、円筒面状を呈し、ばね22の一端部に対向している。ピストン周壁部21cの外周面は、リザーバ孔20の摺動穴壁面211に対向する。ピストン周壁部21cの外周面には、ピストン周壁部21cの周方向に沿って環状のシール溝21dが凹設されている。シール溝21dには、環状のシール部材21eが嵌め込まれている。シール部材21eは、シール溝21dの内面に当接するとともに、リザーバ孔20の内周面201(より詳細には、摺動穴壁面211)に当接し、ピストン21とリザーバ孔20の内周面201との間をシールする。
【0045】
ばね22は、ピストン21をリザーバ孔20の底部20a側に付勢するものであり、ピストン21とばね受け部材23との間に収容されている。なお、本実施形態では、コイルばねからなるばね22を例示しているが、ばねの種類や形態を限定する趣旨ではない。
【0046】
ばね受け部材23は、ばね22を支持するものであるが、ピストン21のストッパーとしても機能する。ばね受け部材23は、ピストン底部21aに対向する支持部23aと、リザーバ孔20の内周面201に対向する立上部23bとを備えている。
支持部23aは、ばね22の他端に当接する部位であるが、本実施形態では、平面視円帯状を呈していて、その中央部に開口部23cが設けられている。
【0047】
立上部23bは、支持部23aの周縁部からピストン21側に向かって立ち上がっていて、その先端部がリザーバ孔20の摺動穴壁面211に入り込んでいる。立上部23bの先端面(上端面)23cは、ピストン21がばね受け部材23側にストロークした際に、ピストン周壁部21cの先端面(下端面)21eに当接し、ピストン21のそれ以上のストロークを阻止する。なお、立上部23bの内周面は、円筒面状を呈しており、ばね22の他端部に対向している。立上部23bの先端外周部は、内周面201の係止溝202に位置し、係止面202aとの間に抜け止部材24を介して抜け出し不能に係止されている。
なお、抜け止部材24としては、円環の一部を欠損させた形態(C字状)のものを用いることができる。抜け止部材24は、その内周側に弾性変形させた状態で、リザーバ孔20に挿入され、外周側に広がろうとする復元力によって係止面202aに弾接する。
【0048】
蓋部材25は、リザーバ孔20の開口部を密閉するものであり、ばね受け部材23を覆うように配置される。蓋部材25は、プレス加工により成形された部材であり、円板状の基部25aと、この基部25aの周縁部に形成された断面逆U字状の挿入部25bと、この挿入部25bから側方に向かって張り出す平面視円帯状の張出部25cとを備えている。
挿入部25bと張出部25cとの隅部には、環状のシール部材26が環装されている。シール部材26は、蓋部材25とリザーバ孔20のテーパ穴壁面204との間を全周に亘ってシールする。
【0049】
チェック弁Cは、円筒状のシート部材30と、弁体31と、リテーナ32と、ばね部材33と、から構成されている。チェック弁Cは、吸入路10eに固定されてピストン21と同軸に配置されている。
シート部材30は、図3に示すように、吸入孔30dが中心軸に沿って貫通している金属製の部材であり、プレス加工等によって一体的に成形されている。シート部材30は、フランジ部30a(基体10がわに突出する支持部)と、このフランジ部30aに連続する胴部30bとを有している。フランジ部30aは、図2(a)に示すように、吸入路10eの開口部に設けられた大径部10e1に装着される部位であり、胴部30bに比べて肉厚に形成されている。胴部30bの内壁面には、内空へ向けて膨出する弁座部30cが形成されている。この弁座部30cは、弁体31の着座する側が漏斗状(テーパ状)に拡径している。弁座部30cは、図2(a)に示すように、ピストン21のガイド部21bとの位置関係において、ピストン21がリザーバ孔20の底部20aに当接した状態で、ガイド部21b(凹部21g)に収容される位置に設けられている。
【0050】
胴部30bの外周面には、図3に示すように、シート部材30の軸方向に沿う連通路としての凹溝30b1が形成されている。凹溝30b1は、図2(a)に示すように、ピストン21のガイド部21bの内周面との間に、ブレーキ液の通流を可能とする流路を形成する。本実施形態では、胴部30bの周りに90度間隔で、計4つの凹溝30b1が形成されている(図2(a)においては、2つのみ図示)。
【0051】
弁体31は、金属製の球体であり、シート部材30の弁座部30cに当接することで吸入孔30dの開口部を封止している。
【0052】
リテーナ32は、金属製のカップ状の蓋体である。リテーナ32は、凹側をシート部材30側に向けた状態で、胴部30bの吸入孔30dに内嵌される。これにより、リテーナ32は、弁座部30cとの間に弁体31を覆っている。また、リテーナ32には、図3に示すように、連通孔32aが複数形成されている。この連通孔32aを通じて、リテーナ32内と吸入路10eとが連通している。
【0053】
ばね部材33は、リテーナ32の底部の受け部32bと弁体31との間に圧縮状態で配設されたコイルスプリングである。
【0054】
このようなチェック弁Cは、リザーバ孔20を通じて吸入路10eの開口部の大径部10e1に装着されて固定される。固定時には、図示しない装着治具をリザーバ孔20を通じて挿入し、装着治具で大径部10e1の開口縁を押圧する。これにより、大径部10e1にシート部材30のフランジ部30aがかしめられ、チェック弁Cがリザーバ孔20内に突出した状態に固定される。
なお、チェック弁Cは、吸入路10eの大径部10e1に圧入により固定してもよい。
【0055】
そして、チェック弁Cの固定後に、チェック弁Cの下部をピストン21のガイド部21b(凹部21g)に収容するようにしてピストン21を組み付け、ばね22、ばね受け部材23を組み付ける。
【0056】
このように固定されたチェック弁Cは、次のように機能する。すなわち、吸入路10e内においてリザーバR側のブレーキ液圧からポンプ穴10c側のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(ばね部材33の付勢力)以上になったときに、ばね部材33の付勢力に抗して弁体31が弁座部30cから離座し開弁する。
なお、ピストン21がリザーバ孔20の底部20aに当接した状態で、ガイド部21bの底部とチェック弁Cのシート部材30の下端部との間には、間隙S1が形成されている。これにより、この間隙S1を通じて凹溝30b1から吸入孔30dの内側にブレーキ液が好適に通流するようになっている。
【0057】
以上説明したブレーキ制御装置によれば、チェック弁Cのシート部材30に形成された弁座部30cがリザーバRのピストン21のガイド部21bに収容されるように配置されているので、その分、リザーバRとポンプPとを近付けて配置することができる。これにより、リザーバRの軸方向に基体10を小型化することができる。
【0058】
また、ピストン21は、シート部材30の外周面にガイド部21bの内周面が摺接して摺動するので、チェック弁Cのシート部材30にピストン21の摺動のためのガイド機能をもたせることができる。これにより、ピストン21は、摺動時に、リザーバ孔20の内周面201およびシート部材30の外周面の両方によってガイドされることとなる。したがって、ピストン21の摺動が安定する。
【0059】
また、ピストン21の摺動方向におけるシート部材30とガイド部21bとの摺接長L1は、ピストン21のストローク長L2よりも大きく設定されているので、ピストン21がフルストロークしてもシート部材30とガイド部21bとの摺接が維持されるので、ストローク全体にわたってピストン21の摺動が安定する。
【0060】
また、シート部材30には、ブレーキ液が通流可能な凹溝30b1が形成されているので、凹溝30b1を介してリザーバRの貯留室内とチェック弁Cの弁室内(吸入孔30d内)とを良好に連通させることができる。これにより、ブレーキ液の通流がスムーズになる。
【0061】
また、チェック弁Cは、ピストン21と同軸に配置されているので、ピストン21をこじれ無くより安定して摺動させることができる。
【0062】
また、ガイド部21bにばね22の端部が外嵌されるので、ガイド部21bでばね22の端部を好適に保持することができる。これにより、ばね22を安定してピストン21に作用させることができる。
【0063】
また、ガイド部が、ピストン21およびばね22と同軸に形成されているので、ばね22をより一層安定してピストン21に作用させることができる。
【0064】
また、シート部材30は、基体10側に突出するフランジ部30aを有しており、フランジ部30aは、吸入路10eの大径部10e1に対して、かしめまたは圧入で固定されているので、簡単かつ省スペースでチェック弁Cを基体10に固定することができる。
【0065】
また、ポンプPの吸入弁がチェック弁Cで構成されているので、ポンプPの構成部材である吸入弁をリザーバ孔20内に突出させて設けることができるので、その分、リザーバRとポンプ本体とを近付けて配置することができる。これにより、リザーバRの軸方向に基体10を小型化することができる。
【0066】
(第2実施形態)
図4(a)(b)を参照して、第2実施形態のブレーキ液圧制御装置について説明する。
本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、ガイド部21b(凹部21g)の内周面21b1(図4(b)参照)に凹溝21b2を形成した点にある。
【0067】
凹溝21b2は、図4(a)に示すように、ピストン21の軸方向に沿う縦溝である。凹溝21b2は、図4(b)に示すように、シート部材30の胴部30bの外周面30b2との間に、ブレーキ液の通流を可能とする流路を形成する。本実施形態では、ガイド部21bの内周面21b1の周りに90度間隔で、計4つの凹溝21b2が形成されている(図4(a)においては、2つのみ図示)。
【0068】
本実施形態においても、凹溝21b2を通じて吸入孔30dの内側にブレーキ液が好適に通流する。
【0069】
(第3実施形態)
図5を参照して、第3実施形態のブレーキ液圧制御装置について説明する。
本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、シート部材30の胴部30bの下部に弁座部30cが形成されている点にある。
【0070】
シート部材30は、円筒状を呈しており、胴部30bと、胴部30bの上端部に設けられた折返し部30a1(基体10側に突出する支持部)と、胴部30bの下端部に設けられた弁座部30cと、を備えている。
折返し部30a1は、吸入路10eの大径部10e1に装着されて固定される部位である。固定時には、図示しない装着治具をリザーバ孔20を通じて挿入し、装着治具で大径部10e1の開口縁を押圧する。これにより、大径部10e1に折返し部30a1がかしめられ、チェック弁Cがリザーバ孔20の底部20aからリザーバ孔20内に突出した状態に固定される。
なお、吸入路10eの大径部10e1に折返し部30a1を圧入により固定してもよい。
【0071】
弁座部30cは、胴部30bの下部側に連続して設けられており、下方へ向けて漏斗状に窄まる内側斜面30gを備えてなる。弁座部30cは、例えば、一枚のシート状の部材をプレス加工して胴部30bと一体的に形成することができる。弁座部30cの内側斜面30gには、弁体31が着座するようになっている。弁座部30cの外周面(周囲となる部位)は、ガイド部21b(凹部21g)の隅部に配置されるようになっている。
リテーナ32は、胴部30bの吸入孔30dに内嵌され、内側斜面30gとの間に弁体31を覆っている。
【0072】
本実施形態では、弁座部30cをプレス加工等により胴部30bと一体的に容易に形成することができる。したがって、チェック弁Cの組立て作業性がよい。
また、チェック弁Cは、弁座部30cから離れた上端部の折返し部30a1がかしめや圧入により吸入路10eの大径部10e1に固定されるので、かしめや圧入によって弁座部30cに影響を与えることなく、チェック弁Cを良好に固定することができる。
【0073】
(第4実施形態)
図6を参照して、第4実施形態のブレーキ液圧制御装置について説明する。
本実施形態が前記第1〜第3実施形態と異なるところは、内周面が段付き円筒状とされたシート部材301を用いてチェック弁Cが形成されている点にある。
【0074】
シート部材301は、内周面が小径とされた小径部302と、内周面が大径とされた大径部303とを有している。シート部材301は、前記実施形態で説明したようなフランジ部30a等の径方向へ突出した部分を有していない。すなわち、軸方向にわたって外径が略均一なものとなっている。
小径部302と大径部303との間には、傾斜部が形成されており、この傾斜面を利用して弁体31が着座する弁座部30cが形成されている。
【0075】
大径部303内には、弁体31およびばね部材33が収納されており、大径部303の上端開口には、ばね部材33の上端の受け部となる蓋体35が固定されている。蓋体35は、図6(a)(b)に示すように、大径部303の上端部30a2に切り込みを入れて形成した係止片30fを、内側に折曲げることで固定されている。
【0076】
シート部材301の外周面には、シート部材301の軸方向に沿う凹溝30b1が形成されている。凹溝30b1は、図6(a)に示すように、ピストン21のガイド部21bの内周面との間に、ブレーキ液の通流を可能とする流路を形成する。本実施形態では、胴部30bの周りに45度間隔で、計8つの凹溝30b1が形成されている(図6(a)においては、2つのみ図示)。
シート部材301の下端部には、十字状に交差する液溝30eが形成されている。液溝30eの中心には、吸入孔30dが開口している。なお、凹溝30b1は、この液溝30eに一つ置きに連通している。
【0077】
本実施形態では、シート部材301が、前記実施形態で説明したようなフランジ部30a等の径方向へ突出した部分を有していないので、摺接長L1を比較的長くとることができ、ピストン21の摺動がより安定する。また、フランジ部30a等の径方向へ突出した部分を有していないので、その分、シート部材301の外径を大きくすることができ、ピストン21の摺動がより安定する。
また、前記実施形態に比べて、吸入路10eの大径部10e1を小径とすることができるので、その分、省スペース化を図ることができる。
【0078】
前記したシート部材30,301は、少なくとも弁座部30cがガイド部21bに収容されるようにリザーバ孔20の底部20aからピストン21に向けて突設されているものであれば、種々の形状のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 基体
20 リザーバ孔
20a 底部
21 ピストン
21b ガイド部
21g 凹部
23 ばね受け部
30 シート部材
30c 弁座部
31 弁体
C チェック弁
R リザーバ
30b1 凹溝
C チェック弁
R リザーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバとチェック弁とを含んで構成される車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記リザーバは、基体の一面に設けられ底部にブレーキ液路が開口する有底のリザーバ孔と、前記リザーバ孔に摺動自在に挿入されたピストンと、前記ピストンを前記底部に向けて付勢するばねと、前記リザーバ孔の開口端部に設けられ前記ばねを受けるばね受け部と、を備え、
前記チェック弁は、弁体と、この弁体が着座する弁座部が形成されたシート部材と、を備え、
前記ピストンには、前記リザーバ孔の底部に対向する面に凹部が設けられており、
前記チェック弁は、少なくとも前記弁座部が前記凹部に収容されるように前記リザーバ孔の底部から前記ピストンに向けて突設されていることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記ピストンは、前記シート部材の外周面に前記凹部の内周面が摺接した状態でリザーバ孔内を摺動することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記ピストンの摺動方向における前記シート部材と前記凹部との摺接長は、前記ピストンのストローク長よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記シート部材と前記凹部との少なくとも一方には、ブレーキ液が通流可能な連通路が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記チェック弁は、前記ピストンと同軸に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
前記ピストンには、前記ばねの端部が外嵌されるガイド部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記ピストンおよび前記ばねと同軸に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
前記シート部材は、前記基体側に突出するリテーナ部を有しており、
前記リテーナ部は、前記リザーバ孔の底部のブレーキ液路に対して、かしめまたは圧入で固定されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項9】
ブレーキ液を吸引および吐出するポンプを備え、
前記ポンプの吸入弁が前記チェック弁で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−214120(P2012−214120A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80819(P2011−80819)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】