説明

車両用ヘッドランプのオートレベリング装置

【課題】 車高センサを用いることなく車両のピッチ角を検出し、適正なヘッドランプのオートレベリング制御を実現する。
【解決手段】 車両の前方を照明するヘッドランプHLと、車両の前後部が上下に傾倒したときのピッチ角を演算し、演算したピッチ角に基づいてヘッドランプのランプ光軸を上下に偏向制御するレベリングECU1とを備えており、車両には乗員や積み荷の荷重を検出する複数の荷重センサS1〜S5を備え、レベリングECU1は複数の荷重センサS1〜S5で検出した荷重と、各荷重センサの車両上での位置(重心からの距離)とに基づいてピッチ角を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両の前方を照明するヘッドランプに関するものであり、特にヘッドランプの光照射方向が路面に対して一定角度となるように車両の傾き変化に応じてヘッドランプのランプ光軸を鉛直上下方向に自動制御する車両用ランプのオートレベリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車では走行安全性を高める目的の一つとして、ヘッドランプの光照射方向を適切に自動制御するヘッドランプシステムが提案されている。例えば、自動車の乗員や積載貨物の変化に伴う自動車のピッチ角(自動車の前後方向に沿った鉛直上下方向の傾き角)変化に対応してヘッドランプの光照射方向、すなわち鉛直上下方向のランプ光軸角を変化制御し、自動車のピッチ角変化にかかわらず光照射方向が路面に対して一定角度となるように制御するオートレベリング装置がある。特許文献1には、自動車の前輪、後輪における車高を検出するための車高センサと、乗員又は積み荷の変化に伴う車両の荷重状態の変化を検出する荷重状態検出手段とを備え、これら車高センサと荷重状態検出手段との出力に基づいて当該自動車のピッチ角を検出し、検出したピッチ角に基づいてヘッドランプのランプ光軸角を自動制御するオートレベリング装置が提案されている。
【0003】
このようなオートレベリング装置では、ピッチ角を検出するために自動車の左右の前輪と後輪にそれぞれ車高センサを備えれば自動車のピッチ角を正確に求めることができる。しかし、車高センサは路面に対する自動車の車体の高さを測定するためのセンサであり、機構的に複雑な構成となって極めて高価なものである。そのため、特許文献1の技術では、この車高センサの数を低減し、車高センサが前輪又は後輪のいずれか一方にのみ備えた場合でも正確なピッチ角を求めることができるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−196212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、前輪又は後輪のいずれか一方にのみ車高センサを装備すればよいため、車高センサは左または右の車輪に1つ、または最大でも左右の車輪の2つであればよく、オートレベリング装置の低コスト化を図る上で有効である。しかし、前述のように車高センサは高価なものであるため車高センサを使用する限りオートレベリング装置の低コスト化には限界がある。
【0006】
本発明の目的は、車高センサを全く用いることなく車両のピッチ角を検出し、適正なランプ光軸のレベリング制御を実現することを可能にした車両用ヘッドランプのオートレベリング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用ヘッドランプのオートレベリング装置は、車両の少なくとも前方を照明するヘッドランプと、当該車両の前後部が上下に傾倒したときのピッチ角を演算し、演算したピッチ角に基づいてヘッドランプのランプ光軸を上下に偏向制御するレベリング制御手段とを備えており、車両には乗員や積み荷の荷重を検出する複数の荷重検出手段を備え、レベリング制御手段は複数の荷重検出手段で検出した荷重と、複数の荷重検出手段の車両上での位置とに基づいてピッチ角を演算することを特徴とする。
【0008】
本発明において、荷重検出手段は車両の車室内の座席や床に配設した荷重センサで構成される。また、荷重センサは自動車の燃料の重量を検出する手段を含んでもよい。さらに、荷重検出手段の車両上での位置を検出するためのシートポジションセンサを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両に乗員や積み荷の重量を検出するための複数の荷重センサを配設し、これら荷重センサの検出出力に基づいて車両のピッチ角を演算しているので、車高センサを備えていなくても車両のピッチ角が演算でき、ヘッドランプの適正なレベリング制御が可能になる。そのため高価な車高センサが不要になり、オートレベリング制御装置の低コスト化が実現できる。
【0010】
また、本発明では座席に配設した荷重センサの位置を検出するためのシートポジションセンサを備えているので、座席が移動された場合でも車両のピッチ角を正確に演算でき、好適なオートレベリング制御が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した自動車の概念構成図。
【図2】レベリングECUを含む全体構成を示すブロック図。
【図3】荷重センサの基準長と傾倒モーメントの関係を示す模式図。
【図4】実施形態1のピッチ角演算ないしレベリング制御のフローチャート。
【図5】傾倒モーメントとピッチ角その相関チャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1を説明する。図1は本発明のオートレベリング装置を適用した自動車CARの概念的な構成図であり、ここでは5人乗りステーションワゴンに適用した例を示している。自動車CARの車室内には前部座席FSとして運転席と助手席が備えられ、後部座席RSは3人掛けのベンチシートとして構成されている。また、車室内の後部は荷物室LRとして構成されている。この自動車の車体CBの前部の左右にはそれぞれ本発明におけるオートレベリング制御の対象となるヘッドランプHLが配設されている。
【0013】
ヘッドランプHLはランプボディ21と前面透明カバー22とでランプハウジング20が構成され、このランプハウジング20内にプロジェクタ型ランプ23が内装されている。このプロジェクタ型ランプ23は前後方向に傾倒可能なブラケット24に支持されており、レベリングアクチュエータ2によって傾倒角度が制御できるように構成されている。すなわち、レベリングアクチュエータ2は前記ランプボディ21の一部に固定され、レベリング制御信号が入力されたときに駆動ロッド2aを前後方向に進退移動する電磁ソレノイド構造あるいは電気モータ構造をしたアクチュエータとして構成されている。これにより、レベリングアクチュエータ2は入力されるレベリング制御信号によってブラケット24の傾倒角度を変化させ、これに支持されたプロジェクタ型ランプ23を前後方向に傾倒させ、ランプの光軸LAを上下方向に偏向制御して、いわゆるレベリング制御を行うようになっている。
【0014】
前記レベリングアクチュエータ2には前記レベリング制御信号を生成して当該レベリングアクチュエータ2をレベリング制御するための電子制御ユニットであるレベリングECU1が接続されている。このレベリングECU1には4つの荷重センサS1〜S4が接続されている。すなわち、運転席と助手席に配設したそれぞれ1つの荷重センサS1,S2と、3人が着座可能な後部座席の全荷重を検出するために後部座席のほぼ中央に配設した1つ、または各乗員に対応した3つの荷重センサ、ここでは前者の1つの荷重センサS3と、荷物室LRの底部に配設した1つの荷重センサS4である。これらの荷重センサS1〜S4は例えば歪みゲージで構成されており、座席に乗員が着座したときにシートと共に変形して変形歪みが生じ、あるいは荷物室に搭載した積み荷の重量によって変形歪みが生じ、これらの変形歪みを電気抵抗の抵抗値変化として検出するものである。この種の荷重センサの構成は既に広く知られているのでここでは詳細な説明は省略する。
【0015】
また、前記レベリングECU1には、シートポジョンセンサSP1,SP2が接続されている。すなわち、前記後部座席RSは車体CBに固定されているが、運転席と助手席の前部座席FSは座席位置、すなわちシートポジションを前後に移動できるように構成されており、このシートポジションを検出するために運転席にシートポジションセンサSP1が、助手席にシートポジションセンサSP2が配設されている。このシートポジションセンサSP1,SP2は、特に運転席におけるシートポジションを記憶して自動復元するオートポジションシートの場合には、当該オートポジションシートに採用されているセンサをそのまま使用できる。また、新たに配設する場合でもスライド抵抗型のストロークセンサ等の安価なセンサ用いることが可能である。
【0016】
さらに、この実施形態1では、自動車CARにはガソリンタンクGT内のガソリン残量を検出するためのガソリン量センサS5が設けられており、このガソリン量センサS5も前記レベリングECU1に接続されている。このガソリン量センサS5は本発明ではガソリン残量の重量を検出するための荷重検出手段として機能するものである。
【0017】
前記レベリングECU1は、図2のブロック構成図に示すように、前記荷重センサS1〜S4、シートポジションセンサSP1,SP2、ガソリン量センサS5からの各検出値に基づいて自動車のピッチ角Pθを演算するピッチ角演算部11と、演算したピッチ角Pθに基づいて前記ヘッドランプHLのランプ光軸LAの上下方向の偏向角を演算し、前記レベリングアクチュエータ2を制御するためのレベリング制御信号を出力するレベリング制御信号出力部12を備えている。
【0018】
前記ピッチ角演算部11は、後述するように自動車CARの重心位置から各荷重センサS1〜S4およびガソリン量センサS5までのそれぞれの自動車の前後方向に沿った基準長を記憶している基準長記憶部3と、前記シートポジョンセンサSP1,SP2の検出に基づいて運転席と助手席についての前記基準長を補正するための基準長補正部4と、前記各荷重センサS1〜S4で検出した荷重およびガソリン量センサS5で検出したガソリン重量と、前記基準長記憶部3の基準長および基準長補正部4からの補正値とでピッチ角Pθを算出するピッチ角算出部5とを備えている。
【0019】
前記基準長記憶部3は、図3に模式的に示すように、予め自動車CARの前後方向の重心位置Gを計測して定義しておき、この重心位置Gから前記各荷重センサS1〜S4およびガソリン量センサS5が配設されている位置までの自動車の前後方向に沿った距離を基準長として記憶している。図3には運転席FS1の荷重センサS1、後部座席RSの1つの荷重センサS3、荷物室LRの荷重センサS4と、ガソリン量センサS5の角基準長L1,L3.L4.L5を図示している。ここで、運転席および助手席は座席が所定の位置に設定されたときの荷重センサについての基準長を設定している。基準長補正部4は、例えば、運転席のシートポジションが変化されたときに、その変化長をシートホジションセンサSP1によって検出し、その検出した長さを補正値Laとし、この補正値Laを基準長L1に加算または減算することで、移動された位置での荷重センサの距離、すなわち補正基準長L1aを算出する。これは助手席についても同様である。
【0020】
前記ピッチ角算出部5は、自動車CARの車体CBの前部が重心Gに対して下方に傾倒する傾倒モーメントを算出する前部傾倒モーメント算出部5Fと、これとは反対に車体CBの後部が重心Gに対して下方に傾倒する傾倒モーメントを算出する後部傾倒モーメント算出部5Rを備えている。前記前部傾倒モーメント算出部5Fは運転席傾倒モーメント算出部51と助手席傾倒モーメント算出部52で構成されており、例えば、運転席傾倒モーメント算出部51は、基準長記憶部3に記憶している運転席の基準長L1をシートポジョンセンサSP1で検出した補正長Laで補正した補正基準長L1aを求め、この補正基準長L1aと荷重センサS1で検出した荷重とを乗算して車体重心Gに対する運転席傾倒モーメントM1を算出し、マトリクス部56に出力する。助手席傾倒モーメント算出部52においても同様にして助手席傾倒モーメントM2を算出し、マトリクス部56に出力する。
【0021】
前記後部傾倒モーメント算出部5Rはここでは3つの傾倒モーメント算出部53〜55で構成されている。後部座席傾倒モーメント算出部53は、基準長記憶部3に記憶している後部座席RSの荷重センサS3における基準長L3と、後部座席の荷重センサS3で検出した荷重とをそれぞれ乗算して車体重心Gに対する後部座席傾倒モーメントM3を算出する。荷物傾倒モーメント算出部54は、基準長記憶部3に記憶している荷物室LRの荷重センサS4における基準長L4と、荷重センサS4で検出した積み荷の荷重とを乗算して荷物室傾倒モーメントM4を算出する。ガソリン傾倒モーメント算出部55は、基準長記憶部3に記憶しているガソリンタンクGTのガソリン量センサS5における基準長L5と、ガソリン量センサS5で検出したガソリン量、すなわちガソリン重量とを乗算してガソリン傾倒モーメントM5を算出する。これらの後部座席、荷物室、ガソリンの各傾倒モーメントM3〜M5はそれぞれ前記マトリクス部56に出力する。マトリクス部56は、これらの全ての傾倒モーメントM1〜M5を合算し、この合算した傾倒モーメントから自動車CARのピッチ角Pθを算出し、出力する。
【0022】
このオートレベリング装置におけるレベリング制御動作の概略を図4のフローチャートを参照して説明する。自動車CARが停車しているときに自動車に乗員が乗り込んで座席に着座すると、各座席の荷重センサS1〜S3から乗員の体重に相当する荷重が検出される。また、荷物室LRに積み荷が積載されると荷重センサS4から積み荷の荷重が検出される。さらに、ガソリンタンクGT内のガソリン量センサS5からガソリン量、すなわちガソリン重量が検出される(S11)。座席の荷重センサのうち、荷重センサS1,S2については(S12)、運転席と助手席に着座した乗員がシート位置を前後に可変するとシートポジョンセンサSP1,SP2からシート位置が検出される(S13)。ピッチ角算出部5は、基準長補正部4において運転席のシートポジョンセンサSP1から検出されるシート位置から運転席の基準長の補正値Laを計算し(S14)、基準長記憶部3に記憶している運転席の基準長L1を読み出した上で補正して補正基準長L1aを算出する(S15)。例えば、運転席が前方に移動されたときには基準長を長く補正し、後方に移動されたときには基準長を短く補正する。そして、運転席傾倒モーメント算出部51において補正基準長L1aに運転席の荷重センサS1から検出された荷重を乗算し、運転席傾倒モーメントM1を算出する(S16)。助手席についても同様にして助手席傾倒モーメントM2を算出する。得られた運転席傾倒モーメントM1と助手席傾倒モーメントM2をマトリクス部56において加算し、これを前部傾倒モーメントMFとする(S17)。この前部傾倒モーメントMFは前部座席の乗員の重量によって車体の前部を下方に傾倒させるモーメントである。なお、助手席に乗員が着座しないときには助手席傾倒モーメントM2は「0」である。
【0023】
一方、荷重センサS1,S2以外の場合には(S12)、後部座席傾倒モーメント算出部53において基準長記憶部3に記憶している後部座席の基準長L3を読み出し(S21)、この基準長L3に後部座席の荷重センサS3から検出された荷重を乗算し、後部座席傾倒モーメントM3を算出する(S22)。また、荷物傾倒モーメント算出部54において基準長記憶部3に記憶している荷物室の基準長L4を読み出(S21)、この基準長L4に荷物室の荷重センサS4から検出された積み荷の重量を乗算し、荷物傾倒モーメントM4を算出する(S22)さらに、ガソリン傾倒モーメント算出部55において基準長記憶部3に記憶しているガソリンタンクの基準長L5を読み出(S21)、この基準長L5にガソリンタンクGT内のガソリン量センサS5から検出されたガソリン量、すなわちガソリン重量を乗算し、ガソリン傾倒モーメントM5を算出する(S22)。
【0024】
そして、マトリクス部56において後部座席傾倒モーメントM3と荷物傾倒モーメントM4とガソリン傾倒モーメントM5を加算し、これを後部傾倒モーメントMRとする(S23)。この後部傾倒モーメントMRは後部座席の乗員、荷物室の積み荷、ガソリンタンク内のガソリンの各重量によって自動車の車体CBの後部を下方に傾倒させるモーメントである。
【0025】
しかる上で、マトリクス部56では、前部傾倒モーメントMFを負の値とし、後部傾倒モーメントMRを正の値とした上で両者を加算することにより、自動車CARの全体としての傾倒モーメントを算出し、この傾倒モーメントを予め計測していた傾倒モーメントと車体のピッチ角との相関式に適用することで自動車のピッチ角Pθを演算する(S31)。この傾倒モーメントが負のときには自動車CARの前部が下方に傾倒されることであり、正のときには自動車CARの前部が上方に傾倒されることである。この相関式としては、例えば、図5に示すように、予め実際の自動車について傾倒モーメントとピッチ角の関係を計測し、この計測に基づいて傾倒モーメントの正負の値とピッチ角との相関示すチャート(特性図)を作成しておき、得られた傾倒モーメントをこのチャートに適用することで簡単にピッチ角を演算することが可能になる。
【0026】
レベリング制御信号出力部12は、ピッチ角演算部11から出力されるピッチ角Pθに基づいてヘッドランプHLのランプ光軸LAの上下方向の偏向角を演算し、これをレベリング制御信号として前記レベリングアクチュエータ2に出力する(S32)。これによりレベリングアクチュエータ2はレベリング制御信号に基づいてブラケット24を傾動してプロジェタク型ランプ23のランプ光軸LAを上下方向に偏向するレベリング制御を実行する(S33)。
【0027】
このように、実施形態1では自動車の車室内に複数の荷重センサ(ガソリン量センサ含む)S1〜S5を配設し、これら荷重センサの検出出力に基づいて自動車のピッチ角Pθを演算し、ヘッドランプHLの適正なレベリング制御が可能になる。その一方で、高価な車高センサを利用することなくピッチ角の演算が可能であるので、オートレベリング制御装置の低コスト化が実現できる。
【0028】
実施形態1では運転席と助手席のシートポジションが変更可能な自動車に適用しているので、これらの座席にシートポジョンセンサを配設してピッチ角をより正確に演算しているが、後部座席もシートポジションを変更可能な自動車の場合には後部座席にもシートポジションセンサを配設し、このシートポジションセンサでの検出出力に基づいて後部座席の基準長を補正して後部座席傾倒モーメントの算出を行うようにしてもよい。
【0029】
一方、運転席や助手席ではシートポジションの変化範囲は少なく、シートポジションの変化に伴うピッチ角の変化は無視できる程度であることが多いため、シートポジションセンサを省略してもよい。シートポジションセンサを省略するとともに、レベリングECU1における基準長補正部4を省略することでオートレベリング制御装置のさらなる低コスト化が実現できる。
【0030】
ここで、後部座席に配設する荷重センサは前述したように着座する各乗員に対応して複数個の荷重センサを配設してもよい。また、後部座席を折り畳んで積み荷を積載するような自動車の場合には、後部座席の底面に相当する車室内の床部に荷重センサを配設し、後部座席を含む荷重を検出するようにしてもよい。すなわち、後部座席に乗員が着座した場合と、折り畳んだ後部座席上に積み荷を積載した場合のいずれの場合でも後部座席における荷重を検出することで自動車の後部の傾倒モーメントを検出し、これに基づいてピッチ角を演算することが可能である。
【0031】
さらに、後部座席のように乗員が着座する頻度が少ない自動車の場合には、後部座席の荷重を検出するためにシートベルト信号を利用してもよい。既存の自動車ではシートベルトを装着した状態を検出するシートベルトセンサが設けられているものが多いので、シートベルトセンサの出力により乗員が着座したことを検出する。この場合には乗員の体重として例えば50Kgを基準重量とし、乗員が着座したときには当該重量の荷重物が搭載していると想定して傾倒モーメントを算出し、ピッチ角を演算すればよい。これにより荷重センサの個数を低減し、さらなる低コスト化が実現できる。
【0032】
実施形態1では自動車が停車している状態における荷重センサの検出出力に基づいてオートレベリング制御を実行した例を説明したが、自動車が走行しているときにも自動車の加減速変化や凹凸路での走行によって自動車のピッチ角が変化し、これに基づいて荷重センサには重力加速度変化に伴う検出出力が変化するので、当該自動車のピッチ角変化を演算することができる。したがって、自動車が走行しているときのオートレベリング制御に適用することができる。なお、自動車の走行時におけるオートレベリング制御に際しては、荷重センサの検出出力が自動車の走行に伴って微小に変動し、レベリング制御が安定しなくなることが考えられるので、例えば検出出力をフィルタ処理して変動を吸収するように構成することで安定したオートレベリング制御が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は車両のピッチ角を演算し、得られたピッチ角に基づいてヘッドランプの光軸を鉛直上下方向に制御する構成のオートレベリング装置について採用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 レベリングECU
2 レベリングアクチュエータ
11 ピッチ角演算部
12 レベリング制御信号出力部
3 基準長記憶部
4 基準長補正部
5 ピッチ角算出部
51〜55 傾倒モーメント算出部
56 マトリクス部
HL ヘッドランプ
LA ランプ光軸
CAR 自動車
CB 車体
S1〜S5 荷重センサ
SP1,SP2 シートポジションセンサ
L1〜L5 基準長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも前方を照明するヘッドランプと、当該車両の前後部が上下に傾倒したときのピッチ角を演算し、演算したピッチ角に基づいて前記ヘッドランプのランプ光軸を上下に偏向制御するレベリング制御手段とを備え、前記車両には乗員や積み荷の荷重を検出する複数の荷重検出手段を備え、前記レベリング制御手段は前記複数の荷重検出手段で検出した荷重と、前記複数の荷重検出手段の車両上での位置とに基づいて前記ピッチ角を演算することを特徴とする車両用ヘッドランプのオートレベリング装置。
【請求項2】
前記荷重検出手段は車両の車室内の座席や床に配設した荷重センサで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ヘッドランプのオートレベリング装置。
【請求項3】
前記荷重センサは自動車の燃料の重量を検出する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の車両用ヘッドランプのオートレベリング装置。
【請求項4】
前記荷重検出手段の車両上での位置を検出するためのシートポジションセンサを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ヘッドランプのオートレベリング装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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