説明

車両用ホイールの低圧鋳造装置

【課題】車両用ホイールの製品の品質を従来よりも安定させ、さらに向上することができる車両用ホイールの低圧鋳造装置を提供する。
【解決手段】鋳型セットSは、下型20と横型30(一対の結合体30b)と上型40とから構成されている。車両用ホイールのリム部を形成するための、キャビティ50のリム成形部を構成する横型30は、4つの小横型により構成されている。そして、本発明の低圧鋳造装置Dでは、2つの小横型が結合された状態で1つの結合体30bとされ、2つの結合体30bが可動で型開閉可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ホイールの低圧鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ホイール等の鋳造装置として低圧鋳造装置が知られている(例えば、特許文献1)。この低圧鋳造装置に使用する鋳型は、上型および下型と、上型および下型のセットを側方から挟みこむ一対の横型とを組み合わせることによって構成されている。そして、一対の横型の分割面には溶湯を鋳型内に送るための湯道が設けられており、この湯道を通じて溶湯が鋳型の両側から鋳型内に注入される。すなわち低圧鋳造装置では、溶湯がキャビティ内に低速で充填され、車両用ホイール等の製品が鋳造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−243720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
湯道を通じて溶湯が鋳型内に流れ込む結果、鋳型は高温になる一方、所用の特性を得るために鋳型を冷却することから、鋳造を繰り返すことで加熱と冷却を繰り返すことになり鋳型の歪や変形を起こして、製品形状が変化する。品質安定には、鋳造を繰り返しても鋳型の変形を起こさないことが求められる。
【0005】
本発明の課題は、車両用ホイールの製品の品質を従来よりも安定させ、さらに向上することができる車両用ホイールの低圧鋳造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、低圧鋳造装置の横型を4分割することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の車両用ホイールの低圧鋳造装置が提供される。
【0007】
[1] 上型、横型、及び下型によって車両用ホイールを形成するためのキャビティが形成される車両用ホイールの低圧鋳造装置において、前記車両用ホイールのリム部を形成するための、前記キャビティのリム成形部を構成する前記横型が、4つの小横型により構成されており、2つの前記小横型が結合された状態で1つの結合体とされ、2つの前記結合体が可動で型開閉可能に構成されており、2つの前記結合体が組み合わされて、前記キャビティの前記リム成形部が形成され、前記上型、前記結合体を組み合わせた前記横型、及び前記下型によって形成された前記キャビティ内に溶湯を注入し、前記溶湯が凝固した後、前記結合体同士を脱型する車両用ホイールの低圧鋳造装置。
【0008】
[2] 2つの前記小横型が、締結部材により締結されて分離可能な1つの前記結合体とされている前記[1]に記載の車両用ホイールの低圧鋳造装置。
【発明の効果】
【0009】
低圧鋳造装置の横型を4分割したことにより、横型全体の変形や歪みが低減する。これにより、車両用ホイールの製品の肉厚変動が少なくなり、製品の品質が安定し向上する。横型が分割されているため、その分割面間の隙間からガス抜きの効果が得られる。これにより、湯周りが改善される。横型を4分割することにより、型一つの重量が軽くなり、型整備がしやすくなる。また、部分的な補修もしやすい。なお、横型を5分割以上すると型合わせが容易ではなくなるが、4分割では型合わせがしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両用ホイールの低圧鋳造装置の断面図である。
【図2】低圧鋳造装置の横型を示す斜視図である。
【図3A】横型の2つの結合体を閉じてキャビティを形成したところを示す模式図である。
【図3B】横型の2つの結合体を開いたところを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0012】
図1はこの発明に係る車両用ホイールの低圧鋳造装置の断面図である。低圧鋳造装置Dには、溶湯から車両用ホイールを成形するための鋳型セットSと、鋳型セットSを載置するための基台10が設けられている。
【0013】
鋳型セットSは、下型20と横型30(一対の結合体30b)と上型40とから構成されている。下型20、横型30および上型40を組み合わせることにより、鋳型セットSの内部にキャビティ50を形成することができる。横型30とは水平方向に移動し、上型40と下型20とに挟まれた状態でキャビティ50を形成する型のことをいう。キャビティ50は、車両用ホイ−ルの形状をした空洞であり、ディスク成形部51とスポ−ク成形部52とリム成形部53とから構成されている。鋳型セットSは、下型20に入子21が装着されており、この入子21によって車両用ホイ−ルのディスク部における凹凸を形づくることができる。
【0014】
図2に横型30の斜視図を示す。車両用ホイールのリム部を形成するための、キャビティ50のリム成形部53を構成する横型30は、4つの小横型30aにより構成されている。そして、本発明の低圧鋳造装置Dでは、2つの小横型30aが結合された状態で1つの結合体30bとされ、2つの結合体30bが可動で型開閉可能に構成されている。すなわち、車両用ホイールの鋳造時には、2つの小横型30aは、1つの結合体30bとされた状態で用いられる。
【0015】
図3A〜図3Bは、横型30を上から見た場合の動作を示す模式図である。図3Aは、横型30を構成する2つの結合体30bを閉じてキャビティ50を形成したところを示す。また、図3Bは、2つの結合体30bを開いたところを示す。
【0016】
2つの結合体30bが閉じられて組み合わされることにより、キャビティ50のリム成形部53が形成され、上型40、結合体30bの組み合わせによる横型30、下型20によってキャビティ50が形成される。低圧鋳造装置Dは、形成されたキャビティ50内に溶湯を注入し、その溶湯が凝固した後、結合体30b同士を脱型(2つの小横型30aは、一体として結合されたまま)するように構成されている。
【0017】
横型30は、4分割された小横型30aが組み合わされてキャビティ50のリム成形部53を構成する。つまり、1つの小横型30aは、車両用ホイールのリム部の1/4周を形成する。2つの小横型30aは、締結部材32により締結されて1つの結合体30bとされているが、締結部材32を取り外すことにより、分離可能である。つまり、車両用ホイールの鋳造時には、2つの小横型30aは、一体として用いられるが、補修時には、1つ1つの小横型30aに分離して、補修を行うことができる。小横型30aに分離することが容易にできるため、型一つの重量が軽くなり、型整備がしやすくなる。本発明の低圧鋳造装置Dは、横型30が小横型30aにより4分割された構成であるため、型合わせがしやすい。一方、横型30を5分割以上した構成とすると、型合わせが容易ではなくなる。
【0018】
低圧鋳造装置Dの横型30を4分割したことにより、熱による横型30全体の変形や歪みを従来よりも低減することができる。これにより、車両用ホイールの製品の肉厚変動が少なくなり、製品の品質が安定し向上する。小横型30aが締結部材32により締結されて分離可能とされているため、小横型30a同士が合わせられる合わせ面33間の隙間からガスが抜ける効果が得られる。これにより、湯周りが改善される。また、結合体30b同士を合わせた分割面34間の隙間からもガスが抜ける。
【0019】
結合体30bと結合体30bとの分割面34のそれぞれに溝が形成されており、結合体30bを組み合わせることにより、溝同士が組み合わさって湯道31が形成される。これらの湯道31は略L字状をしており、湯道31の一方の端が側端開口11としてキャビティ50のリム成形部53に開口しており、もう一方の端が下端開口12として横型30の下面において開口している。これにより、溶湯を下端開口12から湯道31内に流入させ、この湯道31内に流入した溶湯を側端開口11から鋳型セットSのキャビティ50内へと注入することができる。また、側端開口11には、溶湯の流路が窄まるように堰が形成されている。
【0020】
基台10には、ストーク70が貫通している。このストーク70は、保持路ストークと1つ以上の中間ストークからなり、鉛直方向に延びている。ストーク70の一端は、湯道31の下端開口12に連結している。これにより、ストーク70に流入した溶湯を湯道31に送り込むことができる。
【0021】
基台10の下方には、溶湯保持炉60が配置されている。溶湯保持炉60内には、溶湯Mが収容され、ストーク70の下端は溶湯保持炉60内に収容された溶湯Mの中に差し込まれている。また、ストーク70の上端縁には湯口カラー71が載置され、湯道31と湯口カラー71のとの境界にはストレナーRが、設置されている。
【0022】
上型40には、上型作動具80が固定されている。この上型作動具80を上下動させることによって上型40を上下動させることができる。また、上下作動具80には、押出板90が備えられている。上型作動装置80を作動させて上型40を上昇させた後、押出板90を保持させ、さらに上型40が上昇を続けると、押し出し板90は車両用ホイールのリムフランジを押圧することになり、上型40から鋳造された車両用ホイールを脱型することができる。
【0023】
この低圧鋳造装置Dを用いた車両用ホイールの製造法について説明する。上型40、横型30、及び下型20の鋳型を閉じて車両用ホイールを形成するためのキャビティ50を形成する(図1,図2,図3A参照。ただし、図2,図3Aは、横型30のみを表す。)。そして、空気や不活性ガス等の加圧気体を溶湯保持炉60に送り込む。送り込まれた加圧気体により、溶湯保持炉60内の溶湯Mが押し上げられ、ストーク70、湯道31からキャビティ50内に供給される。
【0024】
キャビティ50内および湯道31内で溶湯が凝固した後、一対の結合体30bを脱型する(図1の紙面の垂直方向に開放する。)。結合体30bを構成する小横型30a同士は結合した状態で、結合体30b同士を脱型する(図3B参照)。このとき、横型30の湯道31によって形成されたL字状の湯道(溶湯の凝固したもの)も当該横型30から開放される。その後、上型作動具80を作動させて上型40及び押し板90を鋳造された車両用ホイールとともに持ち上げ、基台10に締結固定された下型20を外す。その状態で、押し出し板90を保持し上型40を上昇させることによりリムフランジを押圧することで、上型40から鋳造された車両用ホイールは脱型される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、車両用ホイールの低圧鋳造装置として利用できる。
【符号の説明】
【0026】
10:基台、11:(湯道の)側端開口、12:(湯道の)下端開口、20:下型、21:入子、30:横型、30a:小横型、30b:結合体、31:湯道、32:結合部材、33:合わせ面、34:分割面、40:上型、50:キャビティ、51:ディスク成形部、52:スポ−ク成形部、53:リム成形部、60:溶湯保持炉、70:ストーク、D:車両用ホイールの低圧鋳造装置、M:溶湯、S:鋳型セット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型、横型、及び下型によって車両用ホイールを形成するためのキャビティが形成される車両用ホイールの低圧鋳造装置において、
前記車両用ホイールのリム部を形成するための、前記キャビティのリム成形部を構成する前記横型が、4つの小横型により構成されており、
2つの前記小横型が結合された状態で1つの結合体とされ、2つの前記結合体が可動で型開閉可能に構成されており、
2つの前記結合体が組み合わされて、前記キャビティの前記リム成形部が形成され、
前記上型、前記結合体を組み合わせた前記横型、及び前記下型によって形成された前記キャビティ内に溶湯を注入し、前記溶湯が凝固した後、
前記結合体同士を脱型する車両用ホイールの低圧鋳造装置。
【請求項2】
2つの前記小横型が、締結部材により締結されて分離可能な1つの前記結合体とされている請求項1に記載の車両用ホイールの低圧鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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