車両用ホルダ一体型レジスタ
【課題】空調空気によってペットボトル等の物品を冷却または加熱可能であり、車室内への空調空気の送風を阻害せず、簡単な構造からなる空調用レジスタを提供すること。
【解決手段】レジスタ導入口12と車室内に開口する吹き出し口13とを持つ筒状のリテーナ10と、リテーナ10に対して揺動可能に取り付けられているフィン11と、を持つレジスタ部1と、開口状のホルダ導入口21と、車室内に開口するホルダ開口20と、を持つ筒状のホルダ部2と、ホルダ導入口21と、空調ダクトまたはリテーナ10に設けられている連通開口5と、を接続する筒状の導風通路部3と、リテーナ10とホルダ部2との一方である開閉体に一体に取り付けられ、開閉体の周壁に沿ってスライドすることで導風通路部3を開閉する弁部材4と、を備え、空調用レジスタの導風通路部3を開閉する弁部材4を、リテーナ10またはホルダ部2の周壁に沿ってスライドさせる。
【解決手段】レジスタ導入口12と車室内に開口する吹き出し口13とを持つ筒状のリテーナ10と、リテーナ10に対して揺動可能に取り付けられているフィン11と、を持つレジスタ部1と、開口状のホルダ導入口21と、車室内に開口するホルダ開口20と、を持つ筒状のホルダ部2と、ホルダ導入口21と、空調ダクトまたはリテーナ10に設けられている連通開口5と、を接続する筒状の導風通路部3と、リテーナ10とホルダ部2との一方である開閉体に一体に取り付けられ、開閉体の周壁に沿ってスライドすることで導風通路部3を開閉する弁部材4と、を備え、空調用レジスタの導風通路部3を開閉する弁部材4を、リテーナ10またはホルダ部2の周壁に沿ってスライドさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に配設され車室内への空調空気の吹き出し口を構成するレジスタに関し、詳しくはペットボトル等の物品を保持できるホルダが一体化されたレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
レジスタは、空調装置に接続され、車室内への空調空気の吹き出し口を構成する部材である。レジスタの一種としてホルダ一体型レジスタが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的なホルダ一体型レジスタは、コップ入り飲料、缶入り飲料、ペットボトル入り飲料等の物品を保持するためのホルダ装置が一体化されてなる。特許文献1に紹介されているホルダ一体型レジスタは、レジスタの前側に突出するホルダ部を持つ。このホルダ一体型レジスタによると、レジスタから吹き出した空調空気によって、ホルダ部に収納された容器を冷却または加熱できる。
【0003】
しかし、この種のホルダ一体型レジスタにおいて、ホルダ部はレジスタの前側すなわち空気流路下流側で物品を保持する。このため、物品がレジスタの吹き出し口を遮り、車室内に充分な量の空調空気を供給できない場合がある。
【0004】
特許文献2には、筒状をなすホルダ部をレジスタの下側に設け、レジスタの内部とホルダ部の内部とを連通させたホルダ一体型レジスタが開示されている。このホルダ一体型レジスタによると、筒状のホルダ部内部に物品を保持することができ、物品が空調空気を遮蔽することはない。
【0005】
しかし、この種のホルダ一体型レジスタは、レジスタ部とホルダ部との両方が空調空気の流路を構成する。このため、ホルダ一体型レジスタ全体としての流路断面積が非常に大きく、レジスタ部とホルダ部との両方に充分な量の空調空気を供給し難い問題がある。特許文献2のホルダ一体型レジスタによると、ホルダ部とレジスタ部とを連絡する分岐通路に、切り替えバルブを設けることで、ホルダ部への空調空気の流通を遮蔽・開放している。しかし、この切り替えバルブはホルダ部およびレジスタ部と別体であるために、部品点数が多くなり、製造コストが高くなる問題がある。また、この切り替えバルブは、分岐通路内で回転して分岐通路を開閉するために、構造が複雑でありかつ嵩張る問題もある。さらに切り替えバルブは、分岐通路内で回転するために、分岐通路を開いているときにも分岐通路内に流通する空調空気に干渉する。
【0006】
このため、従来のホルダ一体型レジスタは機能的に充分でなく、更なる機能向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−99575号公報
【特許文献2】特開2003−72450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、物品がレジスタの吹き出し口を遮らず、簡単な構造からなり、空調空気の流通を阻害し難いホルダ一体型レジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明のホルダ一体型レジスタは、空調ダクトに接続されるレジスタ導入口と車室内に開口する吹き出し口とを持つ筒状のリテーナと、該リテーナに対して揺動可能に取り付けられているフィンと、を持つレジスタ部と、
開口状のホルダ導入口と、車室内に開口するホルダ開口と、を持つ筒状のホルダ部と、
該ホルダ導入口と、該空調ダクトまたは該リテーナに設けられている連通開口と、を接続する筒状の導風通路部と、
該リテーナと該ホルダ部との一方である開閉体に一体に取り付けられ、該開閉体の周壁に沿ってスライドすることで該導風通路部を開閉する弁部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のホルダ一体型レジスタは、下記の(1)〜(5)の何れかを備えるのが好ましく、(1)〜(5)の複数を備えるのがより好ましい。
(1)前記開閉体は円筒状をなし、前記弁部材は前記開閉体の周方向にスライドする。
(2)前記弁部材は前記開閉体の軸方向にスライドする。
(3)前記開閉体は前記ホルダ部である。
(4)前記導風通路部の軸線はホルダ部の軸線と交わらない。
(5)前記ホルダ部は円筒状をなす。
【発明の効果】
【0011】
本発明のホルダ一体型レジスタは、空調空気の吹き出し口を構成するレジスタ部と、物品を収納するホルダ部とを持ち、空調空気の吹き出し口と物品の収納場所とが異なる位置に設けられている。このため、ホルダ部に収納された物品はレジスタ部の吹き出し口(すなわちレジスタの吹き出し口)を遮らない。また、本発明のホルダ一体型レジスタにおいて、空調ダクトまたはレジスタ部とホルダ部とを連絡する導風通路部は、弁部材により開閉される。この弁部材はレジスタ部(詳しくはリテーナ)またはホルダ部の周壁に沿ってスライドすることで導風通路部を開閉する。このため、弁部材は空調空気の流通を阻害し難い。また、弁部材はスライド移動するため、簡単な構造にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のレジスタを模式的に表す斜視図である。
【図2】実施例1のレジスタの軸方向断面を模式的に表す断面図である。
【図3】実施例1のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図4】実施例1のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図5】実施例2のレジスタを模式的に表す斜視図である。
【図6】実施例3のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図7】実施例3のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図8】実施例4のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図9】実施例4のレジスタの軸方向断面を模式的に表す断面図である。
【図10】実施例4のレジスタの軸方向断面を模式的に表す断面図である。
【図11】本発明のレジスタにおける導風通路部の軸線とホルダ部の軸心との関係を模式的に表す説明図である。
【図12】本発明のレジスタにおける導風通路部の軸線とホルダ部の軸心との関係を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のホルダ一体型レジスタ(以下、単に本発明のレジスタと略する)は、車両に配設されるレジスタであって、車両用の空調ダクトに接続される。具体的にはレジスタを構成するリテーナと空調ダクトが接続され、場合によってはさらにホルダ部と空調ダクトが接続される。この場合、空調ダクトには、後述する連通開口が設けられる。
【0014】
本発明のレジスタにおいて、レジスタ部はリテーナとフィンとを持つ。空調ダクトを流通する空調空気は、レジスタ導入口を介してリテーナに流入する。リテーナに揺動可能に取り付けられているフィンは、リテーナを流通する空調空気の方向(風向)を案内する。リテーナは筒状をなせば良く、筒状、角筒状等種々の形状をとり得る。ここで言う円筒状とは断面真円状、断面楕円状を含む断面略円形の筒状を指す。また、角筒状とは3角形以上の断面略多角形の筒状を指す。リテーナとホルダ部とを接続する場合、リテーナには連通開口が設けられる。連通開口は、リテーナの軸方向端部に設けても良いしリテーナの周壁に設けても良いが、フィンよりも空気流路上流側に設けるのが好ましい。フィンによる風向制御を精度高く行うためである。リテーナは軸方向の2端が開口した筒状(無底筒状)をなしても良いし、軸方向の少なくとも一端部が閉口した筒状(有底筒状)をなしても良い。
【0015】
ホルダ部は筒状をなす。ホルダ部には車室内に開口するホルダ開口が設けられている。ホルダ開口は、ホルダ部の内部に物品を収納する際の出し入れ口となる。ホルダ部は、空調ダクトに直接接続されるか、または、リテーナを介して空調ダクトに接続される。このためホルダ部には空調空気が流通する。ホルダ部には空調ダクトまたはリテーナに接続するためのホルダ導入口が設けられている。ホルダ導入口は、ホルダ部の軸方向端部に設けても良いし、ホルダ部の周壁に設けても良い。ホルダ部もまた無底筒状をなしても良いし、有底筒状をなしても良い。
【0016】
ホルダ部のホルダ導入口と、上述した空調ダクトまたはリテーナに設けられた連通開口とは、導風通路部によって接続される。導風通路部は筒状をなし連通開口とホルダ導入口とを接続すれば良い。例えば、導風通路部の軸方向の長さは長くても良いし短くても良い。例えば、リテーナの周壁に連通開口を設け、かつホルダ部の周壁にホルダ導入口を設け、連通開口とホルダ導入口とを対面させても良い。この場合には、リテーナの周壁に設けられた連通開口の内縁とホルダ部の周壁に設けられたホルダ導入口の内縁とで、導風通路部が構成される。そしてこの場合には、リテーナの周壁の肉厚とホルダ部の周壁の肉厚との和が、導風通路部の軸方向長さである。なお、連通開口はリテーナに設けても良いし空調ダクトに設けても良いが、リテーナに設けるのが好ましい。リテーナとホルダ部との距離は空調ダクトとホルダ部との距離よりも近いために、導風通路部を小型化できるためである。
【0017】
導風通路部は、弁部材によって開閉される。詳しくは、弁部材は開閉体に一体に取り付けられる。開閉体とは、ホルダ部とリテーナとの何れかを指す。つまり、弁部材はホルダ部またはリテーナに一体に取り付けられる。逆に言えば、ホルダ部とリテーナとのうちで、弁部材が取り付けられた側が開閉体である。
【0018】
弁部材をホルダ部に一体に取り付ける場合には、弁部材はホルダ部の周壁に沿ってスライドする。この場合、弁部材はホルダ導入口を開閉することで導風通路部を開閉する。つまりこの場合には、弁部材の少なくとも一部は、スライドする際にホルダ導入口に対面する。なお、この場合には、連通開口はリテーナ部に設けても良いし空調ダクトに設けても良い。
【0019】
また、弁部材をリテーナに一体に取り付ける場合には、弁部材はリテーナの周壁に沿ってスライドする。この場合、弁部材はリテーナに設けられている連通開口を開閉することで、導風通路部を開閉する。つまりこの場合には、弁部材の少なくとも一部は、スライドする際に、連通開口に対面する。
【0020】
弁部材は導風通路部を開閉できれば良く、その形状は特に限定しない。弁部材は、開閉体の軸方向、周方向等、何れの方向にスライドしても良い。
【0021】
具体的には、開閉体が円筒状をなす場合には、弁部材は開閉体の軸方向、周方向の何れにもスライドできる。また、開閉体が円筒状であっても角筒状であっても、弁部材は開閉体の軸方向にスライドできる。開閉体が円筒状をなす場合には、弁部材は開閉体の周方向にスライドするのが好ましい。弁部材を開閉体の軸方向にスライドさせる場合、ユーザーは弁部材を引き出すまたは押し込む操作をする必要があるが、車室内という狭い空間において、このような操作は行い難いためである。また、開閉体が円筒状であれば、弁部材を開閉体の周方向と軸方向との両方にスライドさせることもできる。この場合には例えば弁部材を開閉体の周方向にスライドさせることで導風通路部を開閉し、かつ、弁部材を開閉体の軸方向にスライドさせることで弁部材を開位置または閉位置にロックすることもできる。
【0022】
開閉体はリテーナ部であってもホルダ部であっても良いが、ホルダ部であるのが好ましい。ホルダ部に一体に取り付けられている弁部材を操作してホルダ部に空調空気を導入する、という操作は、ユーザーにとって直感的に理解し易いためである。
【0023】
本発明のレジスタには、弁部材をスライド操作する操作部を設けても良い。操作部は開閉体に一体化されているか、または、開閉体の開口周縁部(つまり、吹き出し口の周縁部またはホルダ開口の周縁部)に配置されているのが好ましい。これらの位置に操作部を配置すれば、操作部をユーザーが認識し易い。
【実施例】
【0024】
以下、具体例を挙げて、本発明を説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1のレジスタは、連通開口がリテーナに設けられ、開閉体はホルダ部であり、弁部材がホルダ部の周方向にスライドする例である。実施例1のレジスタを模式的に表す斜視図を図1に示す。実施例1のレジスタの軸方向断面を模式的に表す断面図を図2に示す。実施例1のレジスタを車室内側からみた様子を模式的に表す正面図を図3および図4に示す。
【0026】
図1および図2に示すように、実施例1のレジスタは、レジスタ部1と、ホルダ部2と、導風通路部3と、弁部材4と、を備える。
【0027】
レジスタ部1は、リテーナ10とフィン11とを持つ。リテーナ10は無底筒状をなす。リテーナ10の軸方向の一端部がレジスタ導入口12を構成し、軸方向の他端部が吹き出し口13を構成する。リテーナ10のレジスタ導入口12側の部分は略角筒状をなし、リテーナ10の吹き出し口13側の部分は略円筒状をなす。レジスタ導入口12は図略の空調ダクトに接続される。また、吹き出し口13は、車両のインストルメントパネル90に開口するレジスタ取付部91に取り付けられ、車室内に開口する。フィン11は、リテーナ10の吹き出し口13側に枢支され、リテーナ10に対して揺動する。リテーナ10の周壁14には連通開口5が設けられている。
【0028】
ホルダ部2は略円筒の有底筒状をなす。ホルダ部2の軸方向の一端部は開口している。この開口はホルダ開口20を構成している。ホルダ部2のなかでホルダ開口20側の端部は、車両のインストルメントパネル90に開口するホルダ取付部92に内装される。したがってホルダ開口20は、このホルダ取付部92を介して車室内に開口する。ホルダ導入口21はホルダ部2の周壁22に設けられている。ホルダ導入口21と連通開口5とは筒状の導風通路部3で接続されている。
【0029】
弁部材4は、周壁40の一部に開口41を持つ略有底筒状をなす。弁部材4はホルダ部2に一体に取り付けられている。具体的には、弁部材4はホルダ部2の内部に保持され、ホルダ部2の周方向に回転可能である。つまり弁部材4とホルダ部2とは2重の筒状に重ね合わされ、弁部材4はホルダ部2の周方向にスライド可能である。弁部材4は操作部45を持つ。操作部45はレバー状をなしホルダ開口20の周縁部に配置されている。
【0030】
図3に示すように、弁部材4の周壁40がホルダ部2のホルダ導入口21に対面すると、ホルダ導入口21が弁部材4によって遮蔽され、導風通路部3が閉じられる。操作部45を図3中反時計回りに動かすと、弁部材4がホルダ部2の周方向にスライドし、弁部材4の開口41がホルダ導入口21に対面する。すると、ホルダ導入口21が開放され導風通路部3が開かれる。すると、リテーナ10に流通していた空調空気が導風通路部3を通じてホルダ部2に流入する。このときホルダ部2に物品を収納すると、空調空気によって物品を冷却または加熱できる。
【0031】
実施例1のレジスタにおける弁部材4は、スライドしてホルダ導入口21を開閉するために、簡単な構造である。また、ホルダ部2と吹き出し口13とは異なる位置に設けられているため、ホルダ部2に収納した物品は、吹き出し口13に干渉しない。さらに、ホルダ部2に収納した物品を冷却または加熱したい時にだけ弁部材4によって導風通路部3を開き、それ以外の時には導風通路部3を閉じておけるため、レジスタ部1に充分な量の空調空気を供給できる。
【0032】
(実施例2)
実施例2のレジスタは、連通開口5が空調ダクトに設けられていること、および、導風通路部3が空調ダクトに接続されていること以外は実施例1のレジスタと同じものである。つまり、実施例2のレジスタにおいても開閉体はホルダ部であり、弁部材がホルダ部の周方向にスライドする。実施例2のレジスタを模式的に表す斜視図を図5に示す。
【0033】
図5に示すように、実施例2のレジスタにおける連通開口5は空調ダクト8に設けられ、導風通路部3は空調ダクト8とホルダ部2とを接続している。この場合には、導風通路部3の大きさがやや大きくなるが、実施例1のレジスタと同様に、空調空気によって物品を冷却または加熱可能であり、物品が吹き出し口13に干渉しない。
【0034】
(実施例3)
実施例3のレジスタは、開閉体がリテーナ10であること、リテーナ10が略円筒状をなすこと、および、弁部材4がリテーナ10の周方向にスライドすること以外は実施例1のレジスタとほぼ同じである。実施例3のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図を図6および図7に示す。
【0035】
図6および図7に示すように、弁部材4はリテーナ10に一体に取り付けられている。具体的には、弁部材4は円筒を軸方向に切断した略半割筒状をなす。弁部材4はリテーナ10の内部かつフィン11の空調空気流路上流側に配設され、リテーナ10の周方向にスライド可能である。弁部材4はレバー状の操作部45を持つ。操作部45は吹き出し口13に向けて延び、吹き出し口13の周縁部に配置されている。
【0036】
図6に示すように、弁部材4をリテーナ10の連通開口5に対面させると、連通開口5が弁部材4により遮蔽され、導風通路部3が閉じられる。この状態から操作部45を図6中反時計回りに動かすと、弁部材4がリテーナ10の周方向にスライドし、連通開口5を開放する。すると、導風通路部3が開かれ、空調空気がレジスタ部1からホルダ部2に流入する。ホルダ部2の内周面には、複数のリブ7が突設されている。図7に示すようにホルダ部2に収納した物品6はこのリブ7に当接する。このリブ7によって、ホルダ部2と物品6との間に空間が形成され、物品6が効率よく冷却または加熱される。
【0037】
(実施例4)
実施例4のレジスタは、弁部材4がホルダ部2の軸方向にスライドすること、リブ7が弁部材4の内周面に設けられていること、リブ7が螺旋状に配列していること、および、レジスタ部1が角型のレジスタであること以外は実施例1のレジスタとほぼ同じである。つまり、実施例4のレジスタにおいても開閉体はホルダ部である。実施例4のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図を図8に示す。実施例4のレジスタを軸方向に切断した様子を模式的に表す断面図を図9および図10に示す。
【0038】
実施例4のレジスタにおけるレジスタ部1は、角筒状のリテーナ10と、複数のフィン11が横方向に配列した縦フィン群と、複数のフィン11が縦方向に配列した横フィン群とを持つ。縦フィン群に属するフィン11および横フィン群に属するフィン11は、何れの操作ノブ14を動かす事で揺動し、空調空気の風向を案内する。
【0039】
図9に示すように、弁部材4は無底筒状をなす。弁部材4はホルダ部2に一体に取り付けられている。詳しくは、弁部材4はホルダ部2の内部に配置されホルダ部2の軸方向に沿ってスライド可能である。
【0040】
図9に示すように、弁部材4がホルダ部2の内部奥側(空調空気流路上流側)に配置されている時には、弁部材4の周壁40がホルダ部2の連通開口5を遮蔽し、導風通路部3を閉じている。弁部材4の操作部45を車室内側に引っ張ると、図10に示すように弁部材4がホルダ部2の軸方向に沿ってスライドし、車室内側に引き出される。すると、弁部材4による連通開口5の遮蔽が解除され、ホルダ部2の内部に空調空気が流入する。空調空気は弁部材4の上流側端部から弁部材4の内部に流入し、ホルダ部2の内部かつ弁部材4の内部に保持した物品6を冷却または加熱する。
【0041】
ところで、図9および図10に示すように、弁部材4に設けられているリブ7は、螺旋状に配列している。このため図10に示すように、ホルダ部2内の空調空気の流路は、リブ7によって物品6の周囲を螺旋状に案内される。したがって、この場合には物品6を効率良く冷却または加熱できる。
【0042】
なお、空調空気をホルダ部2内で螺旋状に流通させる方法として、導風通路部3の軸線をホルダ部2の軸線と交わらないようにする方法もある。以下、図11および図12に示す説明図を基に、導風通路部3の軸線とホルダ部2の軸線との関係を説明する。なお、図11、12では、ホルダ部2の軸線を軸心として示す。
【0043】
図11に示すように、導風通路部3の軸線L0がホルダ部2の軸心Oと交わる場合には、空調空気は導風通路部3からホルダ部2の中心部に向けて流入する。すると、空調空気はホルダ部2内の物品6に直接当たり、乱流を生じる。
【0044】
図12に示すように、導風通路部3の軸線L0がホルダ部2の軸心Oと交わらない場合には、空調空気は導風通路部3からホルダ部2の側部(つまりホルダ部2の内周面近傍)に向けて流入する。すると、空調空気はホルダ部2の内周面と物品6の外周面との隙間に入り、ホルダ部2内を螺旋状に流通する。導風通路部3の軸線L0とホルダ部2の軸心Oとの距離W0は大きい方が好ましく、ホルダ部2の半径r(内径)の1/3以上の長さであるのが良い。W0はホルダ部2の半径rの半分以上の長さであるのがより好ましく、2/3以上の長さであるのがさらに好ましい。ホルダ部2の軸心Oと導風通路部3の軸線L0とが離間していればいる程、空調空気がホルダ部2の側部に流入し易くなるためである。このように設計したレジスタに、上述したリブ7を組み合わせると、さらに、空調空気をホルダ部2内で螺旋状に流通させ易くなる。また、ホルダ部2またはホルダ部2に一体に取り付けられた弁部材4にリブ7以外の凹凸構造を設ける場合にも、同様の効果が得られる。空調空気をホルダ部2内で螺旋状に流通させるためには、ホルダ部2が円筒状をなすのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のホルダ一体型レジスタは、車両用のレジスタ特に自動車用のレジスタとして好適に利用できる。また本発明のホルダ一体型レジスタにおけるホルダ部は、飲料のみならず、保冷剤等の物品を収納保持するためのホルダとして利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1:レジスタ部 2:ホルダ部 3:導風通路部
4:弁部材 5:連通開口 8:空調ダクト
10:リテーナ 11:フィン 12:レジスタ導入口
13:吹き出し口 20:ホルダ開口 21:ホルダ導入口
L0:導風通路部の軸線 O:ホルダ部の軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に配設され車室内への空調空気の吹き出し口を構成するレジスタに関し、詳しくはペットボトル等の物品を保持できるホルダが一体化されたレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
レジスタは、空調装置に接続され、車室内への空調空気の吹き出し口を構成する部材である。レジスタの一種としてホルダ一体型レジスタが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的なホルダ一体型レジスタは、コップ入り飲料、缶入り飲料、ペットボトル入り飲料等の物品を保持するためのホルダ装置が一体化されてなる。特許文献1に紹介されているホルダ一体型レジスタは、レジスタの前側に突出するホルダ部を持つ。このホルダ一体型レジスタによると、レジスタから吹き出した空調空気によって、ホルダ部に収納された容器を冷却または加熱できる。
【0003】
しかし、この種のホルダ一体型レジスタにおいて、ホルダ部はレジスタの前側すなわち空気流路下流側で物品を保持する。このため、物品がレジスタの吹き出し口を遮り、車室内に充分な量の空調空気を供給できない場合がある。
【0004】
特許文献2には、筒状をなすホルダ部をレジスタの下側に設け、レジスタの内部とホルダ部の内部とを連通させたホルダ一体型レジスタが開示されている。このホルダ一体型レジスタによると、筒状のホルダ部内部に物品を保持することができ、物品が空調空気を遮蔽することはない。
【0005】
しかし、この種のホルダ一体型レジスタは、レジスタ部とホルダ部との両方が空調空気の流路を構成する。このため、ホルダ一体型レジスタ全体としての流路断面積が非常に大きく、レジスタ部とホルダ部との両方に充分な量の空調空気を供給し難い問題がある。特許文献2のホルダ一体型レジスタによると、ホルダ部とレジスタ部とを連絡する分岐通路に、切り替えバルブを設けることで、ホルダ部への空調空気の流通を遮蔽・開放している。しかし、この切り替えバルブはホルダ部およびレジスタ部と別体であるために、部品点数が多くなり、製造コストが高くなる問題がある。また、この切り替えバルブは、分岐通路内で回転して分岐通路を開閉するために、構造が複雑でありかつ嵩張る問題もある。さらに切り替えバルブは、分岐通路内で回転するために、分岐通路を開いているときにも分岐通路内に流通する空調空気に干渉する。
【0006】
このため、従来のホルダ一体型レジスタは機能的に充分でなく、更なる機能向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−99575号公報
【特許文献2】特開2003−72450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、物品がレジスタの吹き出し口を遮らず、簡単な構造からなり、空調空気の流通を阻害し難いホルダ一体型レジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明のホルダ一体型レジスタは、空調ダクトに接続されるレジスタ導入口と車室内に開口する吹き出し口とを持つ筒状のリテーナと、該リテーナに対して揺動可能に取り付けられているフィンと、を持つレジスタ部と、
開口状のホルダ導入口と、車室内に開口するホルダ開口と、を持つ筒状のホルダ部と、
該ホルダ導入口と、該空調ダクトまたは該リテーナに設けられている連通開口と、を接続する筒状の導風通路部と、
該リテーナと該ホルダ部との一方である開閉体に一体に取り付けられ、該開閉体の周壁に沿ってスライドすることで該導風通路部を開閉する弁部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のホルダ一体型レジスタは、下記の(1)〜(5)の何れかを備えるのが好ましく、(1)〜(5)の複数を備えるのがより好ましい。
(1)前記開閉体は円筒状をなし、前記弁部材は前記開閉体の周方向にスライドする。
(2)前記弁部材は前記開閉体の軸方向にスライドする。
(3)前記開閉体は前記ホルダ部である。
(4)前記導風通路部の軸線はホルダ部の軸線と交わらない。
(5)前記ホルダ部は円筒状をなす。
【発明の効果】
【0011】
本発明のホルダ一体型レジスタは、空調空気の吹き出し口を構成するレジスタ部と、物品を収納するホルダ部とを持ち、空調空気の吹き出し口と物品の収納場所とが異なる位置に設けられている。このため、ホルダ部に収納された物品はレジスタ部の吹き出し口(すなわちレジスタの吹き出し口)を遮らない。また、本発明のホルダ一体型レジスタにおいて、空調ダクトまたはレジスタ部とホルダ部とを連絡する導風通路部は、弁部材により開閉される。この弁部材はレジスタ部(詳しくはリテーナ)またはホルダ部の周壁に沿ってスライドすることで導風通路部を開閉する。このため、弁部材は空調空気の流通を阻害し難い。また、弁部材はスライド移動するため、簡単な構造にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のレジスタを模式的に表す斜視図である。
【図2】実施例1のレジスタの軸方向断面を模式的に表す断面図である。
【図3】実施例1のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図4】実施例1のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図5】実施例2のレジスタを模式的に表す斜視図である。
【図6】実施例3のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図7】実施例3のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図8】実施例4のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図である。
【図9】実施例4のレジスタの軸方向断面を模式的に表す断面図である。
【図10】実施例4のレジスタの軸方向断面を模式的に表す断面図である。
【図11】本発明のレジスタにおける導風通路部の軸線とホルダ部の軸心との関係を模式的に表す説明図である。
【図12】本発明のレジスタにおける導風通路部の軸線とホルダ部の軸心との関係を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のホルダ一体型レジスタ(以下、単に本発明のレジスタと略する)は、車両に配設されるレジスタであって、車両用の空調ダクトに接続される。具体的にはレジスタを構成するリテーナと空調ダクトが接続され、場合によってはさらにホルダ部と空調ダクトが接続される。この場合、空調ダクトには、後述する連通開口が設けられる。
【0014】
本発明のレジスタにおいて、レジスタ部はリテーナとフィンとを持つ。空調ダクトを流通する空調空気は、レジスタ導入口を介してリテーナに流入する。リテーナに揺動可能に取り付けられているフィンは、リテーナを流通する空調空気の方向(風向)を案内する。リテーナは筒状をなせば良く、筒状、角筒状等種々の形状をとり得る。ここで言う円筒状とは断面真円状、断面楕円状を含む断面略円形の筒状を指す。また、角筒状とは3角形以上の断面略多角形の筒状を指す。リテーナとホルダ部とを接続する場合、リテーナには連通開口が設けられる。連通開口は、リテーナの軸方向端部に設けても良いしリテーナの周壁に設けても良いが、フィンよりも空気流路上流側に設けるのが好ましい。フィンによる風向制御を精度高く行うためである。リテーナは軸方向の2端が開口した筒状(無底筒状)をなしても良いし、軸方向の少なくとも一端部が閉口した筒状(有底筒状)をなしても良い。
【0015】
ホルダ部は筒状をなす。ホルダ部には車室内に開口するホルダ開口が設けられている。ホルダ開口は、ホルダ部の内部に物品を収納する際の出し入れ口となる。ホルダ部は、空調ダクトに直接接続されるか、または、リテーナを介して空調ダクトに接続される。このためホルダ部には空調空気が流通する。ホルダ部には空調ダクトまたはリテーナに接続するためのホルダ導入口が設けられている。ホルダ導入口は、ホルダ部の軸方向端部に設けても良いし、ホルダ部の周壁に設けても良い。ホルダ部もまた無底筒状をなしても良いし、有底筒状をなしても良い。
【0016】
ホルダ部のホルダ導入口と、上述した空調ダクトまたはリテーナに設けられた連通開口とは、導風通路部によって接続される。導風通路部は筒状をなし連通開口とホルダ導入口とを接続すれば良い。例えば、導風通路部の軸方向の長さは長くても良いし短くても良い。例えば、リテーナの周壁に連通開口を設け、かつホルダ部の周壁にホルダ導入口を設け、連通開口とホルダ導入口とを対面させても良い。この場合には、リテーナの周壁に設けられた連通開口の内縁とホルダ部の周壁に設けられたホルダ導入口の内縁とで、導風通路部が構成される。そしてこの場合には、リテーナの周壁の肉厚とホルダ部の周壁の肉厚との和が、導風通路部の軸方向長さである。なお、連通開口はリテーナに設けても良いし空調ダクトに設けても良いが、リテーナに設けるのが好ましい。リテーナとホルダ部との距離は空調ダクトとホルダ部との距離よりも近いために、導風通路部を小型化できるためである。
【0017】
導風通路部は、弁部材によって開閉される。詳しくは、弁部材は開閉体に一体に取り付けられる。開閉体とは、ホルダ部とリテーナとの何れかを指す。つまり、弁部材はホルダ部またはリテーナに一体に取り付けられる。逆に言えば、ホルダ部とリテーナとのうちで、弁部材が取り付けられた側が開閉体である。
【0018】
弁部材をホルダ部に一体に取り付ける場合には、弁部材はホルダ部の周壁に沿ってスライドする。この場合、弁部材はホルダ導入口を開閉することで導風通路部を開閉する。つまりこの場合には、弁部材の少なくとも一部は、スライドする際にホルダ導入口に対面する。なお、この場合には、連通開口はリテーナ部に設けても良いし空調ダクトに設けても良い。
【0019】
また、弁部材をリテーナに一体に取り付ける場合には、弁部材はリテーナの周壁に沿ってスライドする。この場合、弁部材はリテーナに設けられている連通開口を開閉することで、導風通路部を開閉する。つまりこの場合には、弁部材の少なくとも一部は、スライドする際に、連通開口に対面する。
【0020】
弁部材は導風通路部を開閉できれば良く、その形状は特に限定しない。弁部材は、開閉体の軸方向、周方向等、何れの方向にスライドしても良い。
【0021】
具体的には、開閉体が円筒状をなす場合には、弁部材は開閉体の軸方向、周方向の何れにもスライドできる。また、開閉体が円筒状であっても角筒状であっても、弁部材は開閉体の軸方向にスライドできる。開閉体が円筒状をなす場合には、弁部材は開閉体の周方向にスライドするのが好ましい。弁部材を開閉体の軸方向にスライドさせる場合、ユーザーは弁部材を引き出すまたは押し込む操作をする必要があるが、車室内という狭い空間において、このような操作は行い難いためである。また、開閉体が円筒状であれば、弁部材を開閉体の周方向と軸方向との両方にスライドさせることもできる。この場合には例えば弁部材を開閉体の周方向にスライドさせることで導風通路部を開閉し、かつ、弁部材を開閉体の軸方向にスライドさせることで弁部材を開位置または閉位置にロックすることもできる。
【0022】
開閉体はリテーナ部であってもホルダ部であっても良いが、ホルダ部であるのが好ましい。ホルダ部に一体に取り付けられている弁部材を操作してホルダ部に空調空気を導入する、という操作は、ユーザーにとって直感的に理解し易いためである。
【0023】
本発明のレジスタには、弁部材をスライド操作する操作部を設けても良い。操作部は開閉体に一体化されているか、または、開閉体の開口周縁部(つまり、吹き出し口の周縁部またはホルダ開口の周縁部)に配置されているのが好ましい。これらの位置に操作部を配置すれば、操作部をユーザーが認識し易い。
【実施例】
【0024】
以下、具体例を挙げて、本発明を説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1のレジスタは、連通開口がリテーナに設けられ、開閉体はホルダ部であり、弁部材がホルダ部の周方向にスライドする例である。実施例1のレジスタを模式的に表す斜視図を図1に示す。実施例1のレジスタの軸方向断面を模式的に表す断面図を図2に示す。実施例1のレジスタを車室内側からみた様子を模式的に表す正面図を図3および図4に示す。
【0026】
図1および図2に示すように、実施例1のレジスタは、レジスタ部1と、ホルダ部2と、導風通路部3と、弁部材4と、を備える。
【0027】
レジスタ部1は、リテーナ10とフィン11とを持つ。リテーナ10は無底筒状をなす。リテーナ10の軸方向の一端部がレジスタ導入口12を構成し、軸方向の他端部が吹き出し口13を構成する。リテーナ10のレジスタ導入口12側の部分は略角筒状をなし、リテーナ10の吹き出し口13側の部分は略円筒状をなす。レジスタ導入口12は図略の空調ダクトに接続される。また、吹き出し口13は、車両のインストルメントパネル90に開口するレジスタ取付部91に取り付けられ、車室内に開口する。フィン11は、リテーナ10の吹き出し口13側に枢支され、リテーナ10に対して揺動する。リテーナ10の周壁14には連通開口5が設けられている。
【0028】
ホルダ部2は略円筒の有底筒状をなす。ホルダ部2の軸方向の一端部は開口している。この開口はホルダ開口20を構成している。ホルダ部2のなかでホルダ開口20側の端部は、車両のインストルメントパネル90に開口するホルダ取付部92に内装される。したがってホルダ開口20は、このホルダ取付部92を介して車室内に開口する。ホルダ導入口21はホルダ部2の周壁22に設けられている。ホルダ導入口21と連通開口5とは筒状の導風通路部3で接続されている。
【0029】
弁部材4は、周壁40の一部に開口41を持つ略有底筒状をなす。弁部材4はホルダ部2に一体に取り付けられている。具体的には、弁部材4はホルダ部2の内部に保持され、ホルダ部2の周方向に回転可能である。つまり弁部材4とホルダ部2とは2重の筒状に重ね合わされ、弁部材4はホルダ部2の周方向にスライド可能である。弁部材4は操作部45を持つ。操作部45はレバー状をなしホルダ開口20の周縁部に配置されている。
【0030】
図3に示すように、弁部材4の周壁40がホルダ部2のホルダ導入口21に対面すると、ホルダ導入口21が弁部材4によって遮蔽され、導風通路部3が閉じられる。操作部45を図3中反時計回りに動かすと、弁部材4がホルダ部2の周方向にスライドし、弁部材4の開口41がホルダ導入口21に対面する。すると、ホルダ導入口21が開放され導風通路部3が開かれる。すると、リテーナ10に流通していた空調空気が導風通路部3を通じてホルダ部2に流入する。このときホルダ部2に物品を収納すると、空調空気によって物品を冷却または加熱できる。
【0031】
実施例1のレジスタにおける弁部材4は、スライドしてホルダ導入口21を開閉するために、簡単な構造である。また、ホルダ部2と吹き出し口13とは異なる位置に設けられているため、ホルダ部2に収納した物品は、吹き出し口13に干渉しない。さらに、ホルダ部2に収納した物品を冷却または加熱したい時にだけ弁部材4によって導風通路部3を開き、それ以外の時には導風通路部3を閉じておけるため、レジスタ部1に充分な量の空調空気を供給できる。
【0032】
(実施例2)
実施例2のレジスタは、連通開口5が空調ダクトに設けられていること、および、導風通路部3が空調ダクトに接続されていること以外は実施例1のレジスタと同じものである。つまり、実施例2のレジスタにおいても開閉体はホルダ部であり、弁部材がホルダ部の周方向にスライドする。実施例2のレジスタを模式的に表す斜視図を図5に示す。
【0033】
図5に示すように、実施例2のレジスタにおける連通開口5は空調ダクト8に設けられ、導風通路部3は空調ダクト8とホルダ部2とを接続している。この場合には、導風通路部3の大きさがやや大きくなるが、実施例1のレジスタと同様に、空調空気によって物品を冷却または加熱可能であり、物品が吹き出し口13に干渉しない。
【0034】
(実施例3)
実施例3のレジスタは、開閉体がリテーナ10であること、リテーナ10が略円筒状をなすこと、および、弁部材4がリテーナ10の周方向にスライドすること以外は実施例1のレジスタとほぼ同じである。実施例3のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図を図6および図7に示す。
【0035】
図6および図7に示すように、弁部材4はリテーナ10に一体に取り付けられている。具体的には、弁部材4は円筒を軸方向に切断した略半割筒状をなす。弁部材4はリテーナ10の内部かつフィン11の空調空気流路上流側に配設され、リテーナ10の周方向にスライド可能である。弁部材4はレバー状の操作部45を持つ。操作部45は吹き出し口13に向けて延び、吹き出し口13の周縁部に配置されている。
【0036】
図6に示すように、弁部材4をリテーナ10の連通開口5に対面させると、連通開口5が弁部材4により遮蔽され、導風通路部3が閉じられる。この状態から操作部45を図6中反時計回りに動かすと、弁部材4がリテーナ10の周方向にスライドし、連通開口5を開放する。すると、導風通路部3が開かれ、空調空気がレジスタ部1からホルダ部2に流入する。ホルダ部2の内周面には、複数のリブ7が突設されている。図7に示すようにホルダ部2に収納した物品6はこのリブ7に当接する。このリブ7によって、ホルダ部2と物品6との間に空間が形成され、物品6が効率よく冷却または加熱される。
【0037】
(実施例4)
実施例4のレジスタは、弁部材4がホルダ部2の軸方向にスライドすること、リブ7が弁部材4の内周面に設けられていること、リブ7が螺旋状に配列していること、および、レジスタ部1が角型のレジスタであること以外は実施例1のレジスタとほぼ同じである。つまり、実施例4のレジスタにおいても開閉体はホルダ部である。実施例4のレジスタを車室内側から見た様子を模式的に表す正面図を図8に示す。実施例4のレジスタを軸方向に切断した様子を模式的に表す断面図を図9および図10に示す。
【0038】
実施例4のレジスタにおけるレジスタ部1は、角筒状のリテーナ10と、複数のフィン11が横方向に配列した縦フィン群と、複数のフィン11が縦方向に配列した横フィン群とを持つ。縦フィン群に属するフィン11および横フィン群に属するフィン11は、何れの操作ノブ14を動かす事で揺動し、空調空気の風向を案内する。
【0039】
図9に示すように、弁部材4は無底筒状をなす。弁部材4はホルダ部2に一体に取り付けられている。詳しくは、弁部材4はホルダ部2の内部に配置されホルダ部2の軸方向に沿ってスライド可能である。
【0040】
図9に示すように、弁部材4がホルダ部2の内部奥側(空調空気流路上流側)に配置されている時には、弁部材4の周壁40がホルダ部2の連通開口5を遮蔽し、導風通路部3を閉じている。弁部材4の操作部45を車室内側に引っ張ると、図10に示すように弁部材4がホルダ部2の軸方向に沿ってスライドし、車室内側に引き出される。すると、弁部材4による連通開口5の遮蔽が解除され、ホルダ部2の内部に空調空気が流入する。空調空気は弁部材4の上流側端部から弁部材4の内部に流入し、ホルダ部2の内部かつ弁部材4の内部に保持した物品6を冷却または加熱する。
【0041】
ところで、図9および図10に示すように、弁部材4に設けられているリブ7は、螺旋状に配列している。このため図10に示すように、ホルダ部2内の空調空気の流路は、リブ7によって物品6の周囲を螺旋状に案内される。したがって、この場合には物品6を効率良く冷却または加熱できる。
【0042】
なお、空調空気をホルダ部2内で螺旋状に流通させる方法として、導風通路部3の軸線をホルダ部2の軸線と交わらないようにする方法もある。以下、図11および図12に示す説明図を基に、導風通路部3の軸線とホルダ部2の軸線との関係を説明する。なお、図11、12では、ホルダ部2の軸線を軸心として示す。
【0043】
図11に示すように、導風通路部3の軸線L0がホルダ部2の軸心Oと交わる場合には、空調空気は導風通路部3からホルダ部2の中心部に向けて流入する。すると、空調空気はホルダ部2内の物品6に直接当たり、乱流を生じる。
【0044】
図12に示すように、導風通路部3の軸線L0がホルダ部2の軸心Oと交わらない場合には、空調空気は導風通路部3からホルダ部2の側部(つまりホルダ部2の内周面近傍)に向けて流入する。すると、空調空気はホルダ部2の内周面と物品6の外周面との隙間に入り、ホルダ部2内を螺旋状に流通する。導風通路部3の軸線L0とホルダ部2の軸心Oとの距離W0は大きい方が好ましく、ホルダ部2の半径r(内径)の1/3以上の長さであるのが良い。W0はホルダ部2の半径rの半分以上の長さであるのがより好ましく、2/3以上の長さであるのがさらに好ましい。ホルダ部2の軸心Oと導風通路部3の軸線L0とが離間していればいる程、空調空気がホルダ部2の側部に流入し易くなるためである。このように設計したレジスタに、上述したリブ7を組み合わせると、さらに、空調空気をホルダ部2内で螺旋状に流通させ易くなる。また、ホルダ部2またはホルダ部2に一体に取り付けられた弁部材4にリブ7以外の凹凸構造を設ける場合にも、同様の効果が得られる。空調空気をホルダ部2内で螺旋状に流通させるためには、ホルダ部2が円筒状をなすのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のホルダ一体型レジスタは、車両用のレジスタ特に自動車用のレジスタとして好適に利用できる。また本発明のホルダ一体型レジスタにおけるホルダ部は、飲料のみならず、保冷剤等の物品を収納保持するためのホルダとして利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1:レジスタ部 2:ホルダ部 3:導風通路部
4:弁部材 5:連通開口 8:空調ダクト
10:リテーナ 11:フィン 12:レジスタ導入口
13:吹き出し口 20:ホルダ開口 21:ホルダ導入口
L0:導風通路部の軸線 O:ホルダ部の軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ダクトに接続されるレジスタ導入口と車室内に開口する吹き出し口とを持つ筒状のリテーナと、該リテーナに対して揺動可能に取り付けられているフィンと、を持つレジスタ部と、
開口状のホルダ導入口と、車室内に開口するホルダ開口と、を持つ筒状のホルダ部と、
該ホルダ導入口と、該空調ダクトまたは該リテーナに設けられている連通開口と、を接続する筒状の導風通路部と、
該リテーナと該ホルダ部との一方である開閉体に一体に取り付けられ、該開閉体の周壁に沿ってスライドすることで該導風通路部を開閉する弁部材と、を備えることを特徴とする車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項2】
前記開閉体は円筒状をなし、
前記弁部材は前記開閉体の周方向にスライドする請求項1に記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項3】
前記弁部材は前記開閉体の軸方向にスライドする請求項1または請求項2に記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項4】
前記開閉体は前記ホルダ部である請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項5】
前記導風通路部の軸線はホルダ部の軸線と交わらない請求項1〜請求項4の何れか一つに記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項6】
前記ホルダ部は円筒状をなす請求項5に記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項1】
空調ダクトに接続されるレジスタ導入口と車室内に開口する吹き出し口とを持つ筒状のリテーナと、該リテーナに対して揺動可能に取り付けられているフィンと、を持つレジスタ部と、
開口状のホルダ導入口と、車室内に開口するホルダ開口と、を持つ筒状のホルダ部と、
該ホルダ導入口と、該空調ダクトまたは該リテーナに設けられている連通開口と、を接続する筒状の導風通路部と、
該リテーナと該ホルダ部との一方である開閉体に一体に取り付けられ、該開閉体の周壁に沿ってスライドすることで該導風通路部を開閉する弁部材と、を備えることを特徴とする車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項2】
前記開閉体は円筒状をなし、
前記弁部材は前記開閉体の周方向にスライドする請求項1に記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項3】
前記弁部材は前記開閉体の軸方向にスライドする請求項1または請求項2に記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項4】
前記開閉体は前記ホルダ部である請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項5】
前記導風通路部の軸線はホルダ部の軸線と交わらない請求項1〜請求項4の何れか一つに記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【請求項6】
前記ホルダ部は円筒状をなす請求項5に記載の車両用ホルダ一体型レジスタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−245951(P2012−245951A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121522(P2011−121522)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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