説明

車両用ランプ装置

【課題】LED光に対する反射膜の反射率を高める。
【解決手段】反射膜は、基板1と、基板1表面に形成された、Agを主成分とし、BiとAu又はPdを含有する合金膜2と、合金膜2の表面に形成されたプラズマ重合膜3とにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ランプ装置に関し、より具体的には、LED(Light Emitting Diode)光に対する反射膜の反射率を高めるための技術に係わる。
【背景技術】
【0002】
一般に、LED素子を光源とし、LED素子から発せられた光(以下、LED光と略記)を車外方向に反射する反射膜を備える車両用ランプ装置では、反射膜としてAl(アルミニウム)膜が採用されている。
【特許文献1】特開2003−207611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、LED光に対するAl膜の反射率は80%程度であるために、LED光に対する反射膜の反射率をより高めることにより、高輝度、且つ、低消費電力の車両用ランプ装置を提供することが市場的急務となっている。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、LED光に対する反射膜の反射率を高めることが可能な車両用ランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の発明者は、鋭意研究を重ねてきた結果、基板と、基板表面に形成された、Ag(銀)を主成分とし、Bi(ビスマス)とAu(金)又はPd(パラジウム)とを含有する合金膜と、合金膜の表面に形成されたプラズマ重合膜とにより反射膜を形成することにより、LED光に対する反射膜の反射率は93〜98[%]程度となり、Al膜を用いた場合と比較して反射率が大幅に高くなることを知見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態となる反射膜の構成について説明する。
【0007】
本発明の一実施形態となる反射膜は、図1に示すように、プラスチック等により形成された基板1と、基板1の表面上に形成された合金膜2と、合金膜2の表面上に形成されたヘキサメチルジシロキサンをモノマーとするプラズマ重合膜3とを備える。また、合金膜2は、Agを主成分とし、Biを0.5〜3[%]、Au(又はPd)を1〜3[%]含有する。このような反射膜を形成する際は、始めに、基板1を真空装置内に配置し、真空装置の内部が1×10−2[Pa]程度の真空度になるまで排気する。次に、ガス導入管を介して真空装置内部にArを導入し、真空装置内部の真空度を0.2[Pa]程度にした状態で、スパッタリング処理により膜厚80〜150[nm]程度の合金膜2を基板1表面に形成する。そして最後に、ガス導入管を介して真空装置内部にヘキサメチルジシロキサンを導入し、プラズマ電極にRF(高周波電圧)やDC(直流電圧)を印加することにより、ヘキサメチルジシロキサンを合金膜2表面にプラズマ重合させ、プラズマ工法により膜厚50〜100[nm]程度のプラズマ重合膜3を合金膜2の表面上に形成する。
【0008】
以上の説明のように、本発明の一実施形態となる反射膜は、基板1と、基板1表面に形成された、Agを主成分とし、BiとAu又はPdを含有する合金膜2と、合金膜2の表面に形成されたプラズマ重合膜3とにより形成されているので、LED光に対する反射膜の反射率を高めることができる。なお、合金膜2中に含まれるBiは、大気に触れると酸化ビスマスとなり、保護膜を形成する。また、合金膜2中に含まれるAu又はPdはAgの凝集を防ぐので、合金膜2の耐熱性を向上させることができる。また、プラズマ重合膜3は、合金膜2の耐水性,耐湿性を向上させると共に、合金膜2を構成するAgの凝集を抑制する。
【0009】
なお、他の実施形態として、図2に示すように、基板1と合金膜2の間にプラズマ重合膜3と同様のプラズマ重合膜3aを形成してもよい。このような構成によれば、合金膜2はプラズマ重合膜3aとプラズマ重合膜3bにより挟持されるようになるので、合金膜2の耐水性,耐湿性をさらに向上させると共に、合金膜2を構成するAgの凝集を抑制することができる。また、プラズマ重合膜3aが基板1の汚れや金型に付着した油から合金膜2を保護するようになるので、合金膜2が腐食することを抑制できる。
【0010】
また、他の実施形態として、図3に示すように、プラズマ処理により基板1表面をクリーニングした後に合金膜2を形成することにより、基板1と合金膜2の間にプラズマ処理層4を形成してもよい。このような構成によれば、合金膜2を腐食させる物質をクリーニング処理によって除去することができるので、合金膜2の組成を安定的に保つことができる。また、溶媒を用いることなくドライ環境でクリーニング処理を行うので、環境問題の発生や爆発の恐れを回避することができる。
【0011】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態となる反射膜の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態となる反射膜の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態となる反射膜の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1:基板
2:合金膜
3,3a,3b:プラズマ重合膜
4:プラズマ処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子を光源とし、当該LED素子から発せられた光を車外方向に反射する反射膜を備える車両用ランプ装置において、
前記反射膜が、基板と、当該基板表面に形成された、Agを主成分とし、BiとAu又はPdとを含有する合金膜と、当該合金膜の表面に形成されたプラズマ重合膜とを備えることを特徴とする車両用ランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ランプ装置において、前記基板と前記合金膜の間にプラズマ重合膜が形成されていることを特徴とする車両用ランプ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用ランプ装置において、前記基板と前記合金膜の間にプラズマ処理層が形成されていることを特徴とする車両用ランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−66068(P2008−66068A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241474(P2006−241474)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】