説明

車両用傘収納装置

【課題】傘を、見栄え良く、且つ乗員の乗り降りや運転操作の邪魔にならないように収納し得る車両用傘収納装置を提供すること。
【解決手段】傘8の先端8aを収納又は係止可能な先端格納部4を、ドア開口部下方にあるスカッフプレート12の前方又は後方に、上下に回動可能に設置されており、スカッフプレート12から車室内側に延設したカバー部13を設け、そのカバー部13の下側に傘8を収納し得る収納空間5を形成してあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に備えられる車両用傘収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1の図4に開示されているように、運転者の足元部近傍に、傘の先端部分(石突を備える部分)を挿入可能な有底筒状の収納筒2を回動可能に設定し、傘の先端を収納筒2に挿入した状態で傘の本体部分(傘布、握柄等を備える部分)を回動させて、運転席の右手横に沿うように収納する車両用傘収納装置が知られている。
【特許文献1】特開平7−96796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の車両用傘収納装置では、収納した傘の本体部分(傘布、握柄等を備える部分)が露出しており、見栄えが悪いだけでなく、運転者の乗り降りや、運転操作の邪魔になる虞があった。
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、傘を、見栄え良く、且つ乗員の乗り降りや運転操作の邪魔にならないように収納し得る車両用傘収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明では、傘の先端を収納又は係止可能な先端格納部が、ドア開口部下方にあるスカッフプレートの前方又は後方に、上下に回動可能に設置されており、前記スカッフプレートから車室内側に延設したカバー部を設け、そのカバー部の下側に前記傘を収納し得る収納空間を形成してあることを特徴とする。
【0006】
〔作用及び効果〕
本発明は、傘の先端を収納又は係止可能であり、且つ上下に回動可能な先端格納部を、傘の収納空間の前方又は後方に設けて構成されている。
そのため、本発明によれば、収納しようとする傘の先端部分を先端格納部に収納又は係止して傘の先端部分の位置を規定した後、傘の本体部分を下方に回動させることによって、傘をカバー部下側の収納空間に簡便且つ確実に収納することができる。
さらに本発明においては、乗員が乗り降りするドア開口部の下縁に配設されるスカッフプレートから車室内側にカバー部を延設することによって、そのカバー部の下側に傘の収納空間が形成されている。
従って、本発明によれば、収納された傘の本体部分の上側は、カバー部によって覆われることとなるため露出せず、傘が見栄え良く収納されると共に、ドア開口部の下縁よりも下側に収納されるため、乗員の乗り降りや運転操作の邪魔になることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔実施形態〕
(車両用傘収納装置の全体構成)
図1及び図2に基づいて、本発明の車両用傘収納装置1の全体構成について説明する。
図1(a)及び(b)はそれぞれ、傘8を収納する前の状態、及び傘8を収納した状態の車両用傘収納装置1の全体構成を示す側面図である。
図2は、傘を収納した状態の車両用傘収納装置1の全体構成を示す平面図である。尚、図1(a)中の白抜きの矢印は、先端格納部4の回動方向を示す。また、以下の説明において、車両前方及び車両後方をそれぞれ前方及び後方と表示する。
【0008】
図1及び図2に示すように、車両用傘収納装置1は、運転席2側のカウルサイドトリム3に上下に回動可能に設置される先端格納部4と、先端格納部4の後方に設けられる収納空間5とを備えて構成されている。
【0009】
(先端格納部の構成)
図1及び図3に基づいて、先端格納部4について説明する。図3は、先端格納部4の横断面図を示す。
先端格納部4は、傘の先端部分8a(石突を備える部分)が差し込まれる差込孔6bを有する筒状の収納ケース6と、収納ケース6の一端に設けられている回動軸7とを備えて構成されている。
【0010】
収納ケース6は、回動軸7を介してカウルサイドトリム3に枢支されており、差込孔6bが常に少し斜め上方に開口する第1姿勢(図1(a)参照)、及び差込孔6bが後方の収納空間5に開口する第2姿勢(図1(b)参照)の範囲で、回動軸7を中心に上下に回動し得るように構成されている(即ち、収納ケース6の回動範囲は、図示しないストッパー機構によって、第1姿勢及び第2姿勢の範囲に規制されている)。
【0011】
特に、収納ケース6の第1姿勢においては、回動軸7に取り付けられるスプリング9の作用によって、収納ケース6が、常に上方へ回動する方向にバネ付勢されている。即ち、傘8が収納されていない状態においては、差込孔6bが、常に少し斜め上方に開口するように設定されるため、傘の先端部分8aを収納ケース6に差し込み易くなる。
尚、収納ケース6には、差込孔6b側ほど拡径する拡管形状(円錐形状)の格納空間6aが形成されており、傘の先端部分8aに対して高い格納性を有し得る。
【0012】
(収納空間の構成)
図1、図2及び図4に基づいて、運転席側ドア10と運転席2との隙間に設置される収納空間5について説明する。図4は、図2の矢視線IV−IVにおける縦断面図である。
収納空間5は、乗員が乗り降りする運転席側ドア開口部11の下縁に配設されるスカッフプレート12から車室内側に延設されたカバー部13と、車両の床面14との間に形成されている。
【0013】
図4に示すように、スカッフプレート12は、運転席側ドア開口部11の下側周縁部を構成するロッカアウタパネル15の上面に設けられており、樹脂ピン16(樹脂ピンの他に、ボルト及びナット等で固定するようにしても良い)で固定されている。
また、カバー部13は、平面視にて運転席側ドア10から車室内側に向うほど先細(図2参照)であって、車室内側下向きに傾斜する滑らかな湾曲面(図4参照)を有するように成形されている。
【0014】
(傘の収納操作)
図1及び図2に基づいて、傘8の収納操作について説明する。
先ず、図1(a)に示すように、傘の先端部分8aを、乗員足元のカウルサイドトリム3付近まで進入させて、先端格納部4の収納ケース6に収納する。
次いで、傘の本体部分8b(傘布、握柄等を備える部分)を下側に回動させ、カバー部13の上面に当接させる(即ち、カバー部13は、傘8の回動軌跡上に延設されている)。
【0015】
そして、傘の先端部分8aを収納ケース6内に入れたまま、傘の本体部分8bを、カバー部13の湾曲面に沿ってその位置を車室内側にずらしながらさらに下側に移動させ、最終的に、図1(b)及び図2に示すように、カバー部13下の収納空間5に傘の本体部分8bを潜り込ませるようにして収納する(このとき、収納された傘の本体部分8bは、収納ケース6に作用する上向きの付勢力によって、カバー部13の下面に押し当てられることになるため、傘8が固定されて安定した状態で収納される)。
【0016】
尚、カバー部13を、傘の本体部分8bをその上面に当接させると下に折れ曲がるように変形し、且つ傘8を収納空間5に収納するとその弾性復元力によって元の状態に戻るような可撓性を有する材料で構成した場合、上述の収納操作をさらにより簡便に実施することが可能となる。
【0017】
また図示しないが、傘8を取り出す際には、傘8を後方側に引っ張ってそのまま抜き出すようにしても良いし、あるいは、傘8を一旦後方側に引っ張ってその先端部分8aを収納ケース6から引き抜いた後、収納空間5から横に(車室内側に)引き出すようにして取り出しても良い。
【0018】
〔別実施形態〕
〔1〕前述の実施形態における先端格納部4を、スカッフプレート12の後方(例えば、車両のBピラー下方近傍)に設置する構成としても良い。
〔2〕前述の実施形態における先端格納部4をボールジョイントにて連結設定する構成としても良い。この場合、先端格納部4が上下左右方向に回動し得るようになり、傘8の回動軌跡の範囲が広がるため、本体部分8bをカバー部13下側の収納空間5に潜り込ませる動作が一層容易となる。
〔3〕前述の実施形態における先端格納部4を、カウルサイドトリム3よりもより車室内側の乗員足元部近傍に設けると共に、収納ケース6の差込孔6bを少し大きめに設定することによって、カバー部13を傘8の回動軌跡上に設定しない構成とすることもできる。尚、この構成においては、傘8は、平面視にて、前述の実施形態よりもやや斜めの状態で収納され得る。
〔4〕前述の実施形態における収納ケース6を、より簡素な形状であるフック状に形成して、傘8の先端部分8aを係止させる構成としても良い。
〔5〕本発明の車両用傘収納装置の設置場所については、前述の実施形態の運転席2側に設置する構成に限定されるものではなく、助手席側や後部座席側に設ける構成としても良い。即ち、助手席側に設置する場合、助手席側のカウルサイドトリム又は車両のBピラー下方近傍に先端格納部4を設置すると共に、助手席側ドア開口部の下縁に配設されるスカッフプレートから車室内側にカバー部13を延設して収納空間5を形成する。また、後部座席側に設置する場合、車両のBピラー下方近傍に先端格納部4を設置すると共に、後部座席側ドア開口部の下縁に配設されるスカッフプレートから車室内側にカバー部13を延設して収納空間5を形成する。また、本発明の車両用傘収納装置の設置数についても特に限定されるものではない。
〔6〕前述の実施形態における先端格納部4を助手席側にも設けて、その収納ケース6に発煙筒を収納し得るように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】車両用傘収納装置の全体構成を示す側面図
【図2】車両用傘収納装置の全体構成を示す平面図
【図3】先端格納部の横断面図
【図4】図2の矢視線IV−IVにおける縦断面図
【符号の説明】
【0020】
1 車両用傘収納装置
2 運転席
3 カウルサイドトリム
4 先端格納部
5 収納空間
6 収納ケース
7 回動軸
8 傘
9 スプリング
10 運転席側ドア
11 運転席側ドア開口部
12 スカッフプレート
13 カバー部
14 床面
15 ロッカアウタパネル
16 樹脂ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傘の先端を収納又は係止可能な先端格納部が、ドア開口部下方にあるスカッフプレートの前方又は後方に、上下に回動可能に設置されており、前記スカッフプレートから車室内側に延設したカバー部を設け、そのカバー部の下側に前記傘を収納し得る収納空間を形成してあることを特徴とする車両用傘収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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