説明

車両用内燃機関

【課題】動力伝達ベルトから飛散する雨水等に空気取り入れ口に吸い込まれるのを阻止する。
【解決手段】内燃機関3の上面に配設した空気ダクト10の先端における空気取り入れ口11を横向きに開口し,この空気取り入れ口を,内燃機関の平面視で,内燃機関における各側面のうちエンジン補機への動力伝達ベルト9が設けられている一つの側面に位置するように構成して成る車両用内燃機関において,動力伝達ベルト9を含む平面と直角の方向から見て,空気取り入れ口11と,動力伝達ベルト9との間の部分に,遮蔽板12を設けて,この遮蔽板を,車両における走行風を動力伝達ベルトに向かう方向に誘導するように傾斜した構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,車両に搭載される車両用内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,車両に搭載される車両用内燃機関においては,例えば,特許文献1〜3等に記載されているように,この内燃機関の上面にエアクリーナへの空気ダクトを配設し,この先端における空気取り入れ口を横向きに開口することにより,出来るだけ新鮮な空気を取り入れる構成にしている。
【0003】
また,従来の車両用内燃機関においては,例えば,特許文献4等に記載されているように,この内燃機における一つの側面の下部に,当該内燃機関からオルターネータ及び冷却水ポンプ等のエンジン補機への動力伝達ベルトを配設するという構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−210575号公報
【特許文献2】特開2001−59456号公報
【特許文献3】特開2010−52580号公報
【特許文献4】特開平08−319846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
つまり,従来の車両用内燃機関においては,当該内燃機関における上面に空気取り入れ口を備えた空気ダクトを配設する一方,当該内燃機関の下部に各種エンジン補機への動力伝達ベルトを配設するという構成であることにより,前記空気ダクトの空気取り入れ口を,内燃機関の平面視において,当該内燃機関おける各側面のうち前記動力伝達ベルトが設けられている一つの側面に位置するという構成にした場合,前記動力伝達ベルトに雨水又は油分が付着したときに,この動力伝達ベルトから振り飛ばされる雨水等が,車両における走行風に乗って,前記空気取り入れ口に吸い込まれて,これより下流におけるエアクリーナを汚損したり,内燃機関における出力を低下したりする等の不具合を招来するという問題があった。
【0006】
本発明は,この問題を解消することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「車両に搭載した内燃機関の上面に,エアクリーナへの空気ダクトを配設し,この空気ダクトの先端における空気取り入れ口を横向きに開口し,この空気取り入れ口を,前記内燃機関の平面視で,当該内燃機関における各側面のうちエンジン補機への動力伝達ベルトが設けられている一つの側面に位置するように構成して成る車両用内燃機関において,
前記動力伝達ベルトを含む平面と直角の方向から見て,前記空気取り入れ口と,前記動力伝達ベルトとの間の部分に,遮蔽板を設けて,この遮蔽板を,車両における走行風を前記動力伝達ベルトに向かう方向に誘導するように傾斜した構成にする。」
ことを特徴としている。
【0008】
また,請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記傾斜する遮蔽板における一端を,前記内燃機関に対して一本のボルトにて,前記遮蔽板が当該ボルトを中心にして回動し得るように取付ける。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によると,遮蔽板は,空気取り入れ口と,動力伝達ベルトとを遮るという構成になっていることに加えて,車両における走行風を動力伝達ベルトに向かう方向に誘導していることにより,前記動力伝達ベルトから振り飛ばされる雨水等が,前記空気取り入れ口に吸い込まれること,及び走行風に乗って空気取り入れ口に吸い込まれることを確実に阻止できるから,エアクリーナを汚損したり,内燃機関における出力を低下したりする等の不具合が発生することを大幅に低減できる。
【0010】
また,請求項2によると,車両の衝突事故等により,前記遮蔽板が,エンジンルームの内壁面に激突するとか,エンジンルーム内に設けられている各種の部品に激突した場合に,この遮蔽板は,その一端における一本のボルトを中心にして回動するから,当該遮蔽板,エンジンルーム内壁面及び各種部品の損傷を軽減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エンジンルームの平面図である。
【図2】図1のII−II視側面図である。
【図3】図2における要部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図4の図面について説明する。
【0013】
図1において,符号1は,車両における車体フレームを示し,この車体フレーム1のフロントには,エンジンルーム2が形成されている。
【0014】
前記エンジンルーム2内には,内燃機関3が,図1に示す平面視において,当該内燃機関3におけるクランク軸4の軸線4aを水平横向きとするように横置きにして搭載されている。
【0015】
前記内燃機関3における前記クランク軸線4aと平行な両長手側面のうち,前側の長手側面には排気マニホールド5が,後側の長手側面には吸気マニホールド6が各々取付けられている。
【0016】
また,前記内燃機関3における前記クランク軸線4aと直角な両側面のうち一方の側面(非出力側の側面)には,前記クランク軸4と,前記内燃機関3に取付けた冷却水ポンプ7及びオルターネータ8との間に巻掛けして成る動力伝達ベルト9が設けられている。
【0017】
更にまた,前記内燃機関3における上面には,図示しないエアクリーナへの空気ダクト10が,前記クランク軸線4aの方向に延びるように配設されており,この空気ダクト10の先端における空気取り入れ口11は,前記動力伝達ベルト9より上方の部位において,横向きにして開口している。
【0018】
図2に示すように,前記動力伝達ベルト9を含む平面と直角の方向から見た場合において,下方に位置する前記動力伝達ベルト9と,この動力伝達ベルト9の上部に位置する前記空気取り入れ口11との間には,内燃機関3により外向きに突出する構成にした遮蔽板12を配設している。
【0019】
前記遮蔽板12は,図3及び図4に示すように,断面L字型に構成したブラケット13に溶接等にて固着されており,このブラケット13における基端部13aを,前記内燃機関3に一体に設けたボス部14に対して一本のボルト15にて締結することにより,前記遮蔽板12が前記一本のボルト15を中心にして回動し得るように構成している。
【0020】
これに加えて,前記遮蔽板12は,その基端におけるボルト15の部分から後方に向かって斜め下向きに傾斜して取付けられており,この傾斜によって,車両の前進走行に際して発生する矢印Aで示す走行風を,前記動力伝達ベルト9に向かう方向に誘導するように構成している。
【0021】
なお,前記ブラケット13における基端部13aには,塑性変形可能に構成した爪片16を一体に設け,この爪片16を,前記ボス部14の側に設けた突起部17に接当することにより,前記遮蔽板12を所定の傾斜角度,つまり,矢印Aで示す走行風を前記動力伝達ベルト9に向かう方向に誘導する角度に設定するという構成にしている。
【0022】
この構成において,前記遮蔽板12は,大気取り入れ口11と,動力伝達ベルト9とを遮るという構成になっていることに加えて,車両における走行風を動力伝達ベルト9に向かう方向に誘導していることにより,前記動力伝達ベルト9から振り飛ばされる雨水等が,前記空気取り入れ口11に吸い込まれること,及び走行風に乗って空気取り入れ口11に吸い込まれることを確実に阻止できる。
【0023】
ところで,前記エンジンルーム2の後部を形成するダッシュパネル2aには,前記遮蔽板12の丁度後方に該当する部位にブレーキブースタ18等の部品が取付けられているから,車両の衝突事故等において,このブレーキブースタ18等の部品に前記遮蔽板12が激突して,その一方及び両方が損傷することになる。
【0024】
この場合,前記遮蔽板12は,その基端における一本のボルト15によって,当該ボルトを中心にして回動し得るように内燃機関3に取付けられていて,車両の衝突事故等において,前記ブレーキブースタ18等の部品に激突したとき,図2及び図3に二点鎖線で示すように,ブラケット13の基端部13aにおける爪片16を塑性変形しながら回動するから,前記遮蔽板12及び前記ブレーキブースタ18等の部品を損傷することを確実に低減できる。
【符号の説明】
【0025】
1 車体フレーム
2 エンジンルーム
3 内燃機関
4 クランク軸
4a クランク軸の軸線
5 排気マニホールド
6 吸気マニホールド
7 冷却水ポンプ(エンジン補機)
8 オルターネータ(エンジン補機)
9 動力伝達ベルト
10 空気ダクト
11 空気取り入れ口
12 遮蔽板
13 遮蔽板のブラケット
15 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載した内燃機関の上面に,エアクリーナへの空気ダクトを配設し,この空気ダクトの先端における空気取り入れ口を横向きに開口し,この空気取り入れ口を,前記内燃機関の平面視で,当該内燃機関における各側面のうちエンジン補機への動力伝達ベルトが設けられている一つの側面に位置するように構成して成る車両用内燃機関において,
前記動力伝達ベルトを含む平面と直角の方向から見て,前記空気取り入れ口と,前記動力伝達ベルトとの間の部分に,遮蔽板を設けて,この遮蔽板を,車両における走行風を前記動力伝達ベルトに向かう方向に誘導するように傾斜した構成にすることを特徴とする車両用内燃機関。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記傾斜する遮蔽板における一端を,前記内燃機関に対して一本のボルトにて,前記遮蔽板が当該ボルトを中心にして回動し得るように取付けることを特徴とする車両用内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−92768(P2012−92768A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242023(P2010−242023)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】