説明

車両用内装品

【課題】 表皮及びフォーム層の端部を芯材の背面に接着剤を用いることなく固定する。
【解決手段】 芯材2の表面2eにフォーム層3及び表皮4を順次設ける。フォーム層3及び表皮4の各上端部3a,4aを芯材2の上端部において下方に折り返す。芯材2の背面2bの一部をなす上端面2aには突起2cを形成する。この突起2cをフォーム層3及び表皮4の各上端部3a,4aにそれぞれ形成された挿通孔3c及び貫通孔4cに挿通する。突起2cの先端部には、当該先端部を加熱溶融して押し潰すことにより、円板部2fを形成する。この円板部2fによって表皮4を芯材2側に押し、フォーム層3を芯材2に押し付ける。円板部2fを表皮4の上端部4aに溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム等の車両用内装品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用内装品は、下記特許文献1に記載されているように、芯材と、この芯材の車内側を向く表面に順次設けられたフォーム層及び表皮とを備えている。フォーム層及び表皮の端部は、芯材の端部において折り返されている。そして、フォーム層の端部が芯材の背面に接着固定されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10―44774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォーム層の端部を芯材の背面に接着固定した従来の車両用内装品においては、フォーム層を芯材に接着する際に接着剤が表皮の車内側を向く表面に付着してしまうことがある。その結果、車両用内装品の美感が損なわれるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、芯材と、この芯材の表面を覆う表皮とを備え、上記表皮の端部が上記芯材の端部において折り返されて上記芯材の背面に固定されてなる車両用内装品において、上記芯材の背面に突起が設けられ、上記芯材の背面側に折り返される上記表皮の端部に貫通孔が形成され、この貫通孔に上記突起が挿入されることにより、上記表皮の端部が上記芯材の背面に固定されていることを特徴としている。
この場合、上記芯材が樹脂によって構成され、上記突起が上記芯材に一体に形成されていることが望ましい。上記突起の上記貫通孔を貫通した先端部が加熱軟化されて押し潰されることにより、上記突起の先端部に上記貫通孔より大きい押圧部が形成され、この押圧部によって上記表皮の折り返された端部が上記芯材の背面に押し付けられるとともに、上記突起から抜け止めされていることが望ましい。上記押圧部と上記表皮とが互いに溶着されていることがさらに望ましい。
上記芯材と上記表皮との間にフォーム層が設けられていてもよい。その場合には、上記フォーム層の端部が上記芯材の端部において上記表皮と一緒に折り返され、上記フォーム層の折り返された端部に上記突起が挿通される挿通孔が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、表皮の端部を芯材の端部において折り返し、その折り返した端部に形成された貫通孔に突起を挿入することによって表皮の端部を芯材に固定しているから、表皮の固定に際して接着剤を使用する必要が全くない。したがって、接着剤が表皮の表面に付着するような事態を未然に防止することができる。よって、車両用内装品の美感が低下することを確実に防止することができる。しかも、貫通孔に突起を挿入するだけで表皮の端部を芯材に固定することができるので、表皮の端部を芯材に容易に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図4は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態は、この発明を自動車用ドアトリム(車両用内装品)1に適用したものである。勿論、この発明は、インストルメントパネル等のドアトリム1以外の車両用内装品にも適用可能である。ドアトリム1は、芯材2、フォーム層3及び表皮4を備えている。
【0008】
芯材2は、ポリプロピレン、ABS樹脂又はフィラー入りのABS樹脂等の樹脂からなるものであり、ドアトリム1全体の形状を一定に維持することができるように、所定の強度を有している。芯材2の上端面2aは、車外側(図1において右側)に向けられており、背面2bの一部を構成している。上端面2aには、車外側に向かって突出する突起2cが複数形成されている。複数の突起2cは、上端面2aの長手方向(左右方向)に互いに離れて配置されている。芯材2の背面2bの下端部には、車外側に向かって突出する複数の突起2dが形成されている。各突起2dは、芯材2の下端部に沿って(左右方向に沿って)互いに離れて配置されている。なお、図示していないが、芯材2の背面2bの左右の両端部にも、複数の突起が上下方向に互いに離れて形成されている。
【0009】
フォーム層3は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂を発泡させることによって形成されている。フォーム層3は、芯材2の表面2eを覆ったとき、周縁部(端部)が芯材2の周縁部(端部)から突出するよう、芯材2より大きく形成されている。フォーム層3の中央部、つまり芯材2から突出した周縁部を除く部分は、芯材2の表面に固着されている。フォーム層3の芯材2から突出した周縁部は、芯材2の周縁部において折り返されている。より具体的に述べると、図2及び図3に示すように、フォーム層3の上端部3aは芯材2の上端部において下方へ折り返されている。そして、芯材2の背面2bの一部をなす上端面2aに接触させられている。図4に示すように、フォーム層3の下端部3bは、芯材2の下端部において上方へ折り返され、背面2bの下端部に接触させられている。同様に、フォーム層3の左右の端部も芯材の左右の端部において折り返され、背面2bに接触させられている。
【0010】
フォーム層3の芯材2から下方へ折り返された上端部3aには、複数の挿通孔3cが形成されている。各挿通孔3cには、突起2cがそれぞれ挿通されている。フォーム層3の芯材2から上方へ折り返された下端部3bには、複数の挿通孔3dが形成されている。各挿通孔3dには、突起2dがそれぞれ挿通されている。同様に、フォーム層3の芯材2から左右に折り返された左右の端部にも挿通孔が形成されており、各挿通孔には芯材2の背面の左右の端部に形成された突起がそれぞれ挿通されている。このように、フォーム層3の各挿通孔3c,3dに突起2c,2dがそれぞれ挿通されることにより、フォーム層3の上下の端部3a,3b及び左右の端部が芯材2の背面2c(上端面2a)にそれぞれ固定されている。
【0011】
表皮4は、塩化ビニル等の樹脂、トリコット又はファブリック等の各種の材料によって構成されている。特に、芯材2を構成する樹脂との溶着性に優れたポリプロピレン、サーモプラスチックオレフィン(TPO)等の樹脂によって構成するのが望ましい。表皮4は、フォーム層3とほぼ同一の大きさを有しており、表皮4の周縁部がフォーム層3の周縁部と一致するようにしてフォーム層3の表面に固着されている。表皮4は、フォーム層3を芯材2の表面2eに固着する前に、ラミネート加工等によってフォーム層3に予め固着しておくことが望ましい。
【0012】
表皮4の周縁部は、フォーム層3と一緒に芯材2の周縁部において折り返されている。より具体的に述べると、図2及び図3に示すように、表皮4の各上端部4aは芯材2の上端部において下方へ折り返されている。図4に示すうように、表皮4の下端部4bは、芯材2の下端部において上方へ折り返されている。表皮4の左右の端部は、芯材2の左右の端部において折り返されている。
【0013】
図2及び図3に示すように、表皮4の芯材2から下方へ折り返された上端部4aには、貫通孔4cが形成されている。各貫通孔4cには、突起2cが挿通されている。図4に示すように。表皮4の芯材2から上方へ折り返された端部4bには、貫通孔4dが形成されている。各貫通孔4dには、突起2dがそれぞれ挿通されている。同様に、表皮4の芯材2から左右に折り返された左右の端部にも貫通孔が形成されており、各貫通孔には芯材2の背面2bの左右の端部に形成された突起がそれぞれ挿通されている。各貫通孔4c,4dに突起2c,2dがそれぞれ挿通されることにより、表皮4の上下の端部4a,4b及び左右の端部が、フォーム層3と共に芯材2の背面2b(2a)に固定されている。
【0014】
図3及び図4に示すように、貫通孔4c,4dをそれぞれ貫通した突起2c,2dの先端部は、高周波振動その他の手段によって加熱溶融された後、押し潰されている。これにより、突起2c,2dの先端部に略円形の円板部(押圧部)2f,2gがそれぞれ形成されている。各円板部2f、2gは、表皮4の上下の端部4a,4bにそれぞれ押し付けられている。これにより、表皮4の上下の端部4a,4bがフォーム層3の上下の端部3a,3bにそれぞれ押し付けられ、さらにフォーム層3の上下の端部3a,3bが芯材2の上端面2aと背面2bとにそれぞれ押し付けられている。しかも、円板部2f,2gが形成されることにより、フォーム層3の上下の端部3a,3b及び表皮4の上下の端部4a,4bが、突起2c,2dから抜け止めされている。なお、同様にしてフォーム層3の左右の端部及び表皮4の左右の端部が、芯材2の背面に押し付けられるとともに、突起から抜け止めされている。
【0015】
円板部2f,2gには、表皮4の上下の端部4a,4bが溶着されている。すなわち、溶融状態の円板部2f,2gが表皮4の上下の端部4a,4bに押し付けられると、端部4a,4bの円板部2f,2dが押し付けられた部分の表面が円板部2f,2gによって溶融される。その後、溶融した円板部2f,2g及び上下の端部4a,4bの表面が固化することにより、円板部2f,2gと上下の端部4a,4bとが互いに溶着されているのである。同様にして、表皮4の左右の端部が芯材2の背面の左右の端部に形成された突起の円板部に溶着されている。
【0016】
上記構成のドアトリム1においては、フォーム層3及び表皮4の上端部3a,4a、下端部3b,4b及び左右の端部が、芯材2の背面2b(上端面2a)に、突起2c,2dによってそれぞれ固定されており、フォーム層3及び表皮4の芯材2への固定に際しては接着剤が用いられていない。したがって、表皮4の車内に臨む表面に接着剤が付着するようなことがない。よって、ドアトリム1の美感が損なわれることを確実に防止することができる。しかも、貫通孔4c,4dを貫通した突起2c,2dの先端部に貫通孔4c,4dより大径の円板部2f,2gが形成されているので、表皮4の上下の端部4a,4bが突起2c,2dから抜け出るのを確実に防止することができる。
【0017】
さらに、各突起2c,2dの先端部に形成された円板部2f,2gが表皮4の上下の端部4a,4bに溶着されているので、表皮4が貫通孔4c,4dから破断するのを防止することができる。すなわち、貫通孔4c,4dに突起2c,2dを挿通しただけであると、表皮4に引っ張り力が作用したときに表皮4の貫通孔4c,4d近傍部分に大きな応力が集中する。この結果、表皮4が貫通孔4c,4dを起点として破断するおそれがある。この点、円板部2f,2gを表皮4の上下の端部4a,4bに固着した場合には、円板部2f,2gの外径が貫通孔4c,4dの内径より大きいから、貫通孔4c,4d近傍に集中するはずの応力が広い範囲に分散される。したがって、表皮4が貫通孔4c,4dから破断するのを防止することができる。
【0018】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態についは、上記実施の形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同様な部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図5及び図6は、この発明の第2実施の形態を示している。この実施の形態においては、フォーム層3が芯材2の表面2eとほぼ同一の大きさに形成されている。そして、フォーム層3は、その周縁部が芯材2の表面2eの周縁部とほぼ一致するように配置されている。したがって、フォーム層3が芯材2から折り返されることはない。一方、表皮4は、上記の実施の形態のものとほぼ同一の大きさを有しており、上下の端部4a,4b及び左右の端部が芯材2から折り返されている。そして、各端部(左右の端部を含む)4a,4bが上端面2a,2bにそれぞれ接触させられている。しかも、表皮4の各端部4a,4bは、突起2c,2dの先端部に形成された円板部2f、2gによって芯材2の上端面2a及び背面2bにそれぞれ押圧接触させられている。
【0020】
図7は、この発明の第3実施の形態を示している。この実施の形態においては、フォーム層3の下端部3bが芯材2の表面2eから芯材2の厚さの分だけ下方に突出するように、フォーム層3の大きさが設定されている。フォーム層3の芯材2から下方に突出した下端部3bは、芯材2の下端部において折り曲げられ、芯材2の下端面2hに接触させられている。芯材2の上端及び左右の端面が、下端面2hと同様に、前面2e及び背面2bに対してほぼ直交するように形成されている場合には、フォーム層3の上端部及び左右の端部も芯材2の上端面及び左右の端面に接触させてもよい。
【0021】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、表皮4を芯材2にフォーム層3を介して設けているが、表皮4を芯材2の表面2eに直接設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の第1実施の形態の一部を省略して示す断面図である。
【図2】突起を押し潰す前の状態における図1のX円部の拡大図である。
【図3】突起を押し潰した後の状態における図1のX円部の拡大図である。
【図4】突起を押し潰した後の状態における図1のY円部の拡大図である。
【図5】この発明の第2実施の形態を示す図3と同様の図である。
【図6】この発明の第2実施の形態を示す図4と同様の図である。
【図7】この発明の第3実施の形態を示す図4と同様の図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ドアトリム(車両用内装品)
2 芯材
2a 上端面(背面)
2b 背面
2c 突起
2d 突起
2e 表面
2f 円板部(押圧部)
2g 円板部(押圧部)
3 フォーム層
3a 上端部(端部)
3b 下端部(端部)
3c 挿通孔
3d 挿通孔
4 表皮
4a 上端部(端部)
4b 下端部(端部)
4c 貫通孔
4d 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、この芯材の表面を覆う表皮とを備え、上記表皮の端部が上記芯材の端部において折り返されて上記芯材の背面に固定されてなる車両用内装品において、
上記芯材の背面に突起が設けられ、上記芯材の背面側に折り返される上記表皮の端部に貫通孔が形成され、この貫通孔に上記突起が挿入されることにより、上記表皮の端部が上記芯材の背面に固定されていることを特徴とする車両用内装品。
【請求項2】
上記芯材が樹脂によって構成され、上記突起が上記芯材に一体に形成されていることを特徴とする車両用内装品。
【請求項3】
上記突起の上記貫通孔を貫通した先端部が加熱軟化されて押し潰されることにより、上記突起の先端部に上記貫通孔より大きい押圧部が形成され、この押圧部によって上記表皮の折り返された端部が上記芯材の背面に押し付けられるとともに、上記突起から抜け止めされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用内装品。
【請求項4】
上記押圧部と上記表皮とが互いに溶着されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用内装品。
【請求項5】
上記芯材と上記表皮との間にフォーム層が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用内装品。
【請求項6】
上記フォーム層の端部が上記芯材の端部において上記表皮と一緒に折り返され、上記フォーム層の折り返された端部に上記突起が挿通される挿通孔が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用内装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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