説明

車両用内装材

【課題】表皮材の保持強度を向上させ、意匠面の美的外観を維持する。
【解決手段】内装基材20と、内装基材20を被覆する表皮材30と、を備える車両用内装材10であって、表皮材30は、本体部31と、本体部31の端末部32から延びる延設部33と、を有し、内装基材20は、端末部32が挿入される挿入溝部22と、挿入溝部22の底部に形成され延設部33が挿入される挿入孔27と、挿入孔27に挿入された延設部33を挟持する挟持部とを有し、挟持部は、挿入溝部22を構成する対向した第1壁部23及び第2壁部24からなり、第1壁部23及び第2壁部24の少なくともいずれか一方には、第1壁部23及び第2壁部24が互いに離れる方向に弾性変形可能な弾性部26が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドアトリム等の車両用内装材において、基材を表皮材で覆い装飾性を高めたものとして特許文献1に記載のものが知られている。このものは、ドアトリムを構成する基材に木目込み溝を形成し、更にはその木目込み溝の底部に部分的に開口部を設けたものである。この木目込み溝及び開口部に表皮材の端末部を押し込むことで、その端末部が外部から視認されることなく、意匠面側の美的外観が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−265747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ただ単に表皮材の端末部を木目込み溝及び開口部に押し込むだけでは、表皮材の本体部に乗員の体が接触するなど何らかの力がかかることにより、端末部が木目込み溝及び開口部から意匠面に露出し、その外観が損なわれる虞があった。このため、表皮材の端末部に接着材を塗布し、木目込み溝及び開口部に対して表皮材の端末部を接着させることも考えられるが、端末部の接着加工に手間がかかり、好ましくない。そこで、その接着加工を抑え、表皮材の端末部の木目込み溝に対する保持強度を向上させ、意匠面における美観の維持が望まれている。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、表皮材の保持強度を向上させ、意匠面の美的外観を維持することが可能な車両用表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内装基材と、前記内装基材を被覆する表皮材と、を備える車両用内装材であって、前記表皮材は、本体部と、前記本体部の端末部から延びる延設部と、を有し、前記内装基材は、前記端末部が挿入される挿入溝部と、前記挿入溝部の底部に形成され前記延設部が挿入される挿入孔と、前記挿入孔に挿入された前記延設部を挟持する挟持部とを有し、前記挟持部は、前記挿入溝部を構成する対向した第1壁部及び第2壁部からなり、前記第1壁部及び前記第2壁部の少なくともいずれか一方には、前記第1壁部及び前記第2壁部が互いに離れる方向に弾性変形可能な弾性部が形成されていることに特徴を有する。
【0007】
このような構成とすれば、表皮材の端末部が内装基材の挿入溝部に挿入された状態において、端末部に形成された延設部は挿入孔に挿入されると共に、挟持部によって挟持されることとなるから、ただ単に、端末部を挿入溝部に挿入しただけの場合と比較して、挿入溝部に対する端末部の保持強度を向上させることができる。これにより、たとえ意匠面に露出する表皮材の本体部に力がかかり、端末部が引き出される力がかかったとしても、端末部から延びる延設部が挟持部に挟持されているから、意匠面側にこの延設部が引き出されにくくなり、端末部が露出されにくくなる。このように、端末部が車両用内装材の意匠面側へと露出しにくい構成とすることで、意匠面の美的外観を維持することが可能となる。
【0008】
なお、挟持部は挿入溝部の対向する第1壁部及び第2壁部の位置関係を利用し、この壁部のいずれか一方に他方に対して離間する方向に弾性変形可能な弾性部を設けることで、容易に延設部を挿入溝部内にて挟持することができる。即ち、延設部が挿入孔に挿入される際には、弾性部は対向する第1壁部又は第2壁部から離間する方向に弾性変形して延設部を挿通させ、その後、弾性部が弾性復帰することで、対向する第1壁部又は第2壁部との間に延設部を挟み込む。よって、延設部を挿入孔に挿入すると同時に挟持部により挟持することができるから、内装基材に対する表皮材の取付作業を容易なものとすることができる。
【0009】
前記内装基材は前記本体部に被覆される加飾部を備え、前記第1壁部は前記加飾部から前記挿入溝部の前記底部に向かって延びる側壁であって、この第1壁部に前記弾性部が形成されていることが望ましい。加飾部を被覆する本体部周縁に位置する端末部は、自ずと加飾部から延びる第1壁部を覆うように挿入溝部に挿入され、挟持部にて挟持されることとなる。よって、このような構成とすれば、弾性部は端末部によって覆われ意匠面側から見えず、更に意匠面の見栄えをよくすることが可能となる。
【0010】
前記弾性部は、前記挿入孔から前記第1壁部の前記加飾部側に向かって切り込み形成された一対のスリット間に形成された弾性片からなり、前記弾性片は、対向する前記第2壁部に向かって突設する舌片部を有していてもよい。このような構成とすれば、弾性片に形成された舌片部により、挿入孔に挿入された延設部をより強固に挟持することが可能となるから、挿入溝部に対する端末部の保持強度を更に高めることが可能となる。このように、端末部が意匠面側により露出しにくい構成とすることで、当該意匠面の美的外観を維持することができる。
【0011】
また、弾性部を、第1壁部に一対のスリットを切りこみ形成することで形成された弾性片からなるものとすることで、新たに別部材で弾性部を形成するよりも、簡易な構造で表皮材の端末部を保持することができる。また、スリットの切り込み深さや舌片部の突出長さによってその挟持度合いを調整することが可能となるから、表皮材の材質や厚さに応じてその挟持度合いを変えることができ、汎用性に優れる。
【0012】
前記舌片部は、前記弾性片の先端部から前記第2壁部にわたって挿入孔上を架橋する薄肉片からなり、この薄肉片を突き破って前記延設部が前記挿入孔に挿入されていてもよい。このような構成とすれば、突き破った薄肉片の鋭利な先端部が延設部に食い込み、この薄肉片からなる舌片部を有する弾性片と対向する第2壁部との間に延設部はより強固に挟持されることとなる。これにより、挿入溝部に対する端末部の保持強度も向上するから、端末部が意匠面に露出するのを効果的に防止することができ、よって表皮材に被覆された車両用内装材の意匠面の美的外観を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表皮材の保持強度を向上させ、意匠面の美観を維持することが可能な車両用内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るドアトリムを模式的に示した斜視図
【図2】ドアトリムを構成する表皮材を模式的に示した平面図
【図3】ドアトリムのオーナメント部を車室外側から視た詳細な斜視図
【図4】図3の挟持部部分の詳細な斜視図
【図5】図3の挟持部部分を第2壁部側から視た詳細な斜視図
【図6】図1のA−A断面において表皮材を木目込み溝に挿入する前の状態を示した模式的な断面図
【図7】図1のA−A断面において表皮材を木目込み溝に挿入した後の状態を示した模式的な断面図
【図8】従来例の表皮材を木目込み溝に挿入した後の状態を示した模式的な断面図
【図9】他の実施形態に係る表皮材を木目込み溝に挿入した後の状態を示した模式的な断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図8によって説明する。
本実施形態の車両用内装材は、車両ドアに取り付けられるドアトリム10に適用した場合を例示している。ドアトリム10は、図1に示すように板状の基材20と、基材20のオーナメント部21を覆う表皮材30とから構成されている。以下、図1の紙面手前側を表側(車室内側、意匠面側)、紙面奥側を裏側(車室外側)として説明する。なお、図1及び図2(それに伴う図6及び図7)は、ドアトリム10又は表皮材30の構成を模式的に示したものであって、正確な寸法関係を表したものではない。
【0016】
基材20は、熱可塑性の合成樹脂製であって、例えばポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を板状に成形することにより得られる。基材20には、図1に示すように、表側に張り出すアームレスト11が形成されており、その他、スピーカグリル12やドアポケット13等が備えられている。
【0017】
基材20の表側(車室内側)を構成する板面のうち、アームレスト11上方の平面視略矩形をなす領域は、加飾部に相当するオーナメント部21とされている。さらに、基材20には、このオーナメント部21を全周にわたって取り囲む木目込み溝22(挿入溝部に相当する)が形成されており、後述する表皮材30の本体部31がオーナメント部21を覆い、表皮材30の端末部32が当該木目込み溝22に押し込まれることで、表皮材30は基材20に対して取り付けられる。
【0018】
表皮材30は、図示はしないが、車室内側に露出する表層と表層に積層され基材20側に配されるクッション層とから構成される。表層の材質としては、(合成)樹脂、(合成)皮革、繊維等から適宜選択可能とされ、クッション層の材質としては、例えばスラブウレタン等の発泡樹脂材が例示される。この表皮材30は、図2に示すようにシート状をなしており、オーナメント部21の表面積よりも一回り大きい同形状の略矩形をなしている。このうち、オーナメント部21に重ね合わせた状態で貼り合わされる部位は本体部31とされ、本体部31の周縁部であって木目込み溝22に挿入される部位は端末部32、端末部32から外側に延設された部位は延設部33とされている。延設部33は、端末部32の周方向に沿って所定間隔毎に複数形成されており、各延設部33は形成位置となる端末部32の外周縁部から外側に延出した帯状をなしている。なお、詳しくは後述するが、この延設部33は木目込み溝22に形成された挿入孔27に挿入されるから、延設部33が当該挿入孔27に挿入されることで、表皮材30のオーナメント部21に対する位置決めがなされることとなる。
【0019】
続いて、木目込み溝22の構成について図3から図7を用いて詳しく説明する。図3から図5はドアトリム10の構成をより詳細に示した図であり、図3はドアトリム10を車室外側(裏側)から視た詳細な斜視図、図4及び図5は図3と同様に、ドアトリム10を車室外側から視て、つまりは木目込み溝22を底部22A側からみた詳細な拡大斜視図であり、特に挟持部28の構成を表したものとされる。なお、図3において、挟持部28は一部のみに形成されている態様を例示したが、実際には表皮材30の各延設部33に対応して、複数形成されているものとする。
【0020】
木目込み溝22は、表裏に平面を呈するオーナメント部21の周縁部から裏側に向かって凹設されている。具体的には、図3に示すように、オーナメント部21の裏面21Aから更に車室外側(図3の紙面手前側)に向かって一対の側壁が突設された態様をなし、その一対の側壁の突出端をつなぐ底部22Aがオーナメント部21の裏面21A周縁に沿って形成されている。図4及び図5に示すように、当該一対の側壁は、オーナメント部21(裏面21A)の周縁部から木目込み溝22の底部22Aに向かって延びる第1壁部23と、第1壁部23に対向する第2壁部24とから構成されている。この木目込み溝22は、図6に示すように、第1壁部23と第2壁部24との間の幅寸法が底部22A(裏側)に向かって狭くなる断面略台形状をなしている。
【0021】
さて、図3から図5に示すように、第1壁部23には、底部側から切り込み形成された対をなすスリット25が複数形成され、各一対のスリット25間は弾性片26とされている。この各弾性片26は挿入された表皮材30の延設部33を挟持することとなるから、一対のスリット25及びその間の弾性片26は、延設部33の形成間隔に対応して形成されている。
【0022】
スリット25により第1壁部23から切り出された弾性片26は、図4から図6に示すように、他の第1壁部23と同方向の底部22A側に向かって片持ち状に延出し、その先端は、第2壁部24側に屈曲して延びる爪部26A(舌片部に相当する)とされている。この爪部26Aは第2壁部24に向かって先細りとなる形状を呈し、その先端部は第2壁部24に連なる薄肉部26B(薄肉片に相当する)とされている。この弾性片26及びその両端のスリット25に対応する底部22Aには、表皮材30の延設部33が挿入される挿入孔27が開口形成されている。ここで、上述した薄肉部26Bは、挿入孔27上を架橋するように爪部26A先端から対向する第2壁部24にかけて薄い膜が張ったような態様をなす。
【0023】
表皮材30を基材20に取り付けた状態では、図7に示すように、延設部33が薄肉部26Bを突き破るようにして挿入孔27に挿入されており、その端部は基材20の裏側へと配されている。突き破られた薄肉部26Bはその先端が鋭利な形状をなし、更に薄肉部26Bは弾性片26の爪部26A先端に形成されているから、延設部33は弾性片26と対向する第2壁部24との間に挟持されると共に、その先端の鋭利な薄肉部26Bが延設部33の表裏両面から食い込んだ状態にある。このように、本発明の挟持部28は、第1壁部23に形成された弾性片26とそれに対向する第2壁部24とにより構成されている。
【0024】
本実施形態は以上のような構成であって、続いて作用及び効果について説明する。表皮材30を基材20に取り付けるには、まず、オーナメント部21(又は表皮材30の本体部31のオーナメント部21側)の表面に接着材を塗布した後、表皮材30の本体部31をプレス等で圧着する。続いて、木目込み溝にその表側から挿入可能に設置された押込刃により、本体部31周囲に張り出した端末部32及び延設部33を木目込み溝22に押し込む。押込刃としては、例えば板厚が0.7mm程度の刃金が用いられ、各押込刃が基材20の挿入孔27に挿入可能なように設置されている。
【0025】
この押込工程を詳しく説明すると、まず図6に示すように、基材20の表面上に載置された端末部32及びそれに連なる延設部33をその上方から押込刃により木目込み溝22に押し入れる。すると、端末部32が木目込み溝22内へとすべて押し込まれた状態となる。続けて、押込刃により延設部33を押し込んでいくと、第2壁部24側に張り出した弾性片26が第2壁部24から離間する方向に弾性変形し、弾性片26と第2壁部24との間を延設部33が押込刃と共に挿通する。
【0026】
さらに延設部33を押込刃により押し込んでいくと、弾性片26の爪部26A先端から第2壁部24に連なる薄肉部26Bに突き当たり、これを押込刃に押圧された延設部33が突き破る。すると、突き破られた薄肉部26Bの先端は鋭利な形状をなすから、押し込まれた延設部33の表裏両面に食い込むこととなる。なお、図7においては、薄肉部26Bの突き破られた態様が分かり易いように、破られた薄肉部26Bが爪部26A及び第2壁部24の双方に残る場合を例示したが、薄肉部26Bが爪部26A側にすべて残るように、第2壁部側に沿って押込刃を挿入することが望ましい。なぜなら、表皮材30のうち基材20側に配されるクッション層は、表層よりも薄肉部26Bが食い込みやすく、より強固に延設部33を保持することが可能となるからである。
【0027】
最後に押込刃のみを引き抜くと、挿入孔27に挿入された延設部33はその端部が基材20の裏側に突き出された状態で保持され、弾性片26が弾性復帰することで、延設部33は弾性片26と対向する第2壁部24との間で挟持された状態が維持される。以上により、表皮材30の基材20への取付作業が完了する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、表皮材30の端末部32が基材20の木目込み溝22に挿入された状態において、端末部32に形成された延設部33は挿入孔27に挿入されると共に、弾性片26と対向する第2壁部24とからなる挟持部により挟持されることとなる。これにより、木目込み溝22に対する端末部32の保持強度を向上させることができる。
【0029】
即ち、従来の例えば図8に例示されるような、表皮材1の端末部2が、ただ単に基材3の木目込み溝4に挿入されただけの場合にあっては、端末部2が容易に意匠面である車室内側に引き出され、当該意匠面の美的外観が損なわれる虞があった。また、端末部2が意匠面に露出することで、更にオーナメント部5に接着された本体部6が端末部2から引き剥がされる虞があった。
【0030】
これに対して、本実施形態では、図7に示すように、延設部33が弾性片26と対向する第2壁部24との間に挟持されているから、上記した何も挟持されていない場合と比較して、延設部33が連なる端末部32の木目込み溝22に対する保持強度を高めることができるのである。これにより、木目込み溝22に押し込まれた端末部32が引き出されるのを抑制し、端末部32に連なる本体部31が基材20のオーナメント部21から引き剥がされる可能性を低減することで、ドアトリム10の意匠面における美的外観の維持を図ることができる。
【0031】
なお、挟持部は、木目込み溝22の対向する第1壁部23及び第2壁部24の位置関係を利用し、このうち第1壁部23に一対のスリット25を切り込み形成することによって弾性片26を形成し、この弾性片26と対向する第2壁部24とにより構成されている。よって、既存の構成を用いて容易に挟持部を形成することができ、例えば第1壁部23及び第2壁部24を利用せずに別体の挟持構造を設ける場合と比較して、簡易な構造で表皮材の端末部を保持することができる。また、本実施形態の挟持手順は、延設部33が挿入孔27に挿入される際には、弾性片26は対向する第2壁部24から離間する方向に弾性変形して延設部33を挿通させ、その後、弾性片26が弾性復帰することで、対向する第2壁部24との間に延設部33を挟み込むというものである。このように、弾性片26の弾性力を利用することで、弾性片26等の挟持部が追加されたからといって基材20に対する表皮材30の取付作業に特段の変更もいらず、容易に適用可能である。
【0032】
また、弾性片26は、表皮材30の端末部32によって覆われる第1壁部23に形成されているから、弾性片26が意匠面側となる車室内側に露出せず、見栄えのよいものとすることができる。
【0033】
また、弾性片26の先端部を対向する第2壁部24側に屈曲して延びる爪部26Aとすることで、例えば第1壁部23の延出方向に沿った爪部26Aを有さない弾性片とするよりも、挟持力を向上させることが可能となる。また、本実施形態ではさらに、その爪部26Aの先端から第2壁部24に連なるバリ状の薄肉部26Bを設けたことで、弾性片26に対する保持力の向上が図られている。即ち、延設部33が挿入孔27に挿入される際に、この薄肉部26Bを押込刃と共に突き破ることで、薄肉部26Bの先端は鋭利な形状となる。この鋭利な先端部を有する薄肉部26Bが延設部33に食い込むことで、薄肉部26Bを有する弾性片26に対する延設部33の保持力が向上することとなる。また、一度薄肉部26Bが食い込んだ延設部33は本体部31又は端末部32が引っ張られる等して表側に引き出されようとすると、更に薄肉部26Bが延設部33に対して深く食い込むこととなり、より薄肉部26B(弾性片26)に対する延設部33の保持力が高まる。以上のような薄肉部26Bを突き破ってその先端を延設部33を食い込ませるという構成によって、弾性片26自体への延設部33の保持力が高まり、爪部26Aによって対向する第2壁部24との間に挟持する力も強固なものとすることができる。よって、この延設部33に連なる端末部32の木目込み溝22に対する保持強度も確実に向上し、もってドアトリム10の意匠面における美的外観の維持を図ることが可能となる。
【0034】
また、延設部33を挟持する弾性片26は、スリット25の切り込み深さや爪部26Aの突出長さを変更することにより、その挟持度合いを調整することが可能である。よって、表皮材30の材質や厚さに応じて、その挟持度合いを変えることができ、汎用性に優れたものとすることができる。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
(1)上記した実施形態では、弾性片26の先端に爪部26Aを設け、さらにその先端に対向する第2壁部24に連なる薄肉部26Bを設けたものを例示したが、これに限られず、例えば図9に示すように、弾性片40を、第2壁部24に向かって延出し、第2壁部24との間に所定の間隔を空けて再び第1壁部側(オーナメント部21側)に屈曲するV字形の先端部を有するものとしてもよい。このような構成によれば、表皮材30の延設部33表面を傷付けることなく、当該延設部33を弾性片40とそれに対向する第2壁部24により挟持することができる。
【0037】
(2)上記した実施形態では、弾性片26の爪部26Aは、その先端にかけて細くなる形状をなしていたが、これに限られず、一定の板厚であってもよい。また、爪部26Aの先端には薄肉部26Bが設けられている場合を例示したが、これに限られず、薄肉部26Bがないものであってもよく、この場合、爪部26Aと第2壁部24とで表皮材30の延設部33を挟持できる程度に離間していることが望ましい。
【0038】
(3)上記した実施形態では、弾性片26は第1壁部23に形成されていたが、これに限られず、例えば第2壁部24上に形成されていてもよいし、第1壁部23及び第2壁部24の双方に互い違いに形成されていてもよい。
【0039】
(4)上記した実施形態では、木目込み溝22は、オーナメント部21の板面に対して直交する裏側方向に向かって凹設されていたが、これに限られず、オーナメント部21の板面に対して、鋭角又は鈍角をなす傾斜をもって形成されていてもよい。このような構成とすれば、意匠面側から木目込み溝22内が視認されにくくなり、より見栄えのよいドアトリムを提供することができる。
【0040】
(5)上記した実施形態では、木目込み溝22は第1壁部23と第2壁部24、及び第1壁部23と第2壁部24とをつなぐ底部22Aとから構成され、底部22Aに挿入孔27が形成されているが、挿入孔の底部に対する形成位置は限定されず、例えば第1壁部23又は第2壁部24のどちらか一方に偏って挿入孔が形成されていてもよいし、第1壁部23及び第2壁部24から等距離を有して底部22Aの略中央部に挿入孔が形成されていてもよい。また、底部は、第1壁部23又は第2壁部24の一部に設けられていてもよく、例えば第1壁部23上に底部が設けられているとすると、その底部は第2壁部24に対向する位置関係をなすものであってもよい。この場合、第1壁部23上に設けられた底部に挿入孔が形成されるから、挿入孔は第1壁部23上に開口することとなる。同様に、第2壁部24上に底部が形成され、挿入孔が実質第2壁部24上に開口形成されるものであってもよい。
【0041】
(6)上記した実施形態では、車両用内装材としてドアトリムを例示したが、ドアトリムに限定されず、インストルメントパネル、ピラートリム等の車両用内装材であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…ドアトリム
20…基材(内装基材)
21…オーナメント部
22…木目込み溝(挿入溝部)
22A…底部
23…第1壁部
24…第2壁部
25…スリット
26…弾性片(弾性部)
26A…爪部(舌片部)
26B…薄肉部
27…挿入孔
28…挟持部
30…表皮材
31…本体部
32…端末部
33…延設部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装基材と、
前記内装基材を被覆する表皮材と、を備える車両用内装材であって、
前記表皮材は、本体部と、前記本体部の端末部から延びる延設部と、を有し、
前記内装基材は、前記端末部が挿入される挿入溝部と、前記挿入溝部の底部に形成され前記延設部が挿入される挿入孔と、前記挿入孔に挿入された前記延設部を挟持する挟持部とを有し、
前記挟持部は、前記挿入溝部を構成する対向した第1壁部及び第2壁部からなり、前記第1壁部及び前記第2壁部の少なくともいずれか一方には、前記第1壁部及び前記第2壁部が互いに離れる方向に弾性変形可能な弾性部が形成されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
前記内装基材は前記本体部に被覆される加飾部を備え、
前記第1壁部は前記加飾部から前記挿入溝部の前記底部に向かって延びる側壁であって、この第1壁部に前記弾性部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装材。
【請求項3】
前記弾性部は、前記挿入孔から前記第1壁部の前記加飾部側に向かって切り込み形成された一対のスリット間に形成された弾性片からなり、
前記弾性片は、対向する前記第2壁部に向かって突設する舌片部を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用内装材。
【請求項4】
前記舌片部は、前記弾性片の先端部から前記第2壁部にわたって前記挿入孔上を架橋する薄肉片からなり、この薄肉片を突き破って前記延設部が前記挿入孔に挿入されることを特徴とする請求項3に記載の車両用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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