説明

車両用内装部品

【課題】内装部品本体側の木目込み溝に中接部材の木目込み端縁を木目込む際に、界面活性剤層が木目込み溝から内装部品本体の表面に溢れ出ないようにした。
【解決手段】内装部品本体に、一対の側部縦壁6a、6bと両側部縦壁6a、6bの一端側同士を互いに連接する溝底6cを有する溝壁により構成する木目込み溝6を形成して、木目込み溝6を構成する溝壁に、木目込み溝6内に中接部材5の木目込み端縁5aを木目込む際に一方の側部縦壁6aに塗布形成した界面活性剤層7から剥離した界面活性剤を木目込み溝6外に排出する剥離界面活性剤排出孔9を、他方の側部縦壁6bと溝底6cとが連接する角部を含む他方の側部縦壁6形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装部品本体の表面を部分的に覆う中接部材の端縁を内装部品本体に設けた木目込み溝に木目込み張設装着するようになした自動車のドアトリムなどの車両用内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内装部品は、装飾性やデザイン状の観点から、樹脂材料などで成形された内装部品本体にたとえば矩形状の領域を囲繞するような木目込み溝を形成し、該木目込み溝内に中接部材の端縁を木目込み、前記内装部品本体に中接部材を張設装着することによって、構成していた。
【0003】
そして、中接部材の端縁を単に木目込み溝内に木目込むだけでは、内装部品本体に対する中接部材の装着力が出ないために、例えば、中接部材(オーナメント表皮材)における木目込み溝に挿し込まれる部分の端縁に所要の間隙をおいて突片部を配設する一方、内装部品本体(トリムボード)の木目込み溝の溝底に前記突片部に対応する挿込用孔を配設し、前記突片部の先端を各挿込用孔を通じて内装部品本体の裏側に突出させ、この突出部分を木目込み溝の裏側に折り返してその折返し基部を木目込み溝の裏側において各挿込用孔を塞ぐ蓋により挟着固定して、構成している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−267152号公報。
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、木目込み溝の裏側に設けた蓋により挿込用孔を塞ぐことにより中接部材の突出部分を挟着して、中接部材を内装部品本体に固定していることから、挿込用孔と蓋との間の嵌合隙間寸法によっては、自動車の振動等により挿し込まれた蓋が挿込用孔から外れてしまうおそれがあり、このような外れを防止するために、挿込用孔と蓋との嵌合隙間が非常に小さくなるような寸法関係に設定する必要があるが、この場合、組付作業が困難になってしまう。
【0005】
そこで、従来より通常、接着材を使用して、中接部材の端部を木目込み溝内に接着することが広く採用されている。
【0006】
そして、従来においては、中接部材の端部を接着材を用いて装着する方法として、次の2つの方法が広く採用されている。
【0007】
一つの方法としては、予め、木目込み溝内に接着材を挿入しておき、その後、中接部材の端部を木目込み溝内に挿入して、挿入された接着材により中接部材の端部を接着固定するものである。
【0008】
この場合、木目込み溝は、非常に細溝形状に形成されているために、接着剤を挿入することが困難であるとともに、たとえうまく挿入できたとしても挿入した接着材の挿入量によっては接着材が内装部品本体の表面に漏れたり、或いは中接部材の端部を挿入した際に接着材が溢れたりすると、内装部品そのものも外観上の見栄えを悪くしてしまうことから、木目込み溝への接着材の挿入作業は熟練度を要することになる。
【0009】
そこで、もう一つのやり方が提案され、既に採用されている。このやり方は、図4に示すように、内装部品本体aに、互いに対向する一対の側部縦壁b、cと両側部縦壁b、cの一端側同士を互いに連接する溝底dを有する溝壁により構成する木目込み溝eを形成して、木目込み溝eの一対の側部縦壁c、dのうち、一方の側部縦壁cに界面活性剤層fを塗布形成するとともに、木目込み溝e内に木目込まれる中接部材gの裏面に予め粘着材iを貼付して、木目込み端縁hを木目込み溝e内に木目込む際に、粘着材が一方の側部縦壁bに界面活性剤層fの作用により付着しないようにして、他方の側部縦壁c側に粘着して木目込み端縁hを木目込み溝e内に木目込むことにより中接部材gを内装部品本体aに張設装着して構成している(図5参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、中接部材gの木目込み端縁hを木目込み溝eに木目込み接着するには、まず、図4に示すように、木目込み端縁hの粘着材iが貼付された側を、界面活性剤層f側に対向させた状態にして、木目込み端縁hを木目込み溝e内に木目込んでいくもので、この際、木目込み端縁hが界面活性剤層fを一部引っ掻きながら木目込まれることになり、最後に、粘着材iが他方の側部縦壁dに接着させることになるが、木目込み端縁hの木目込み過程で、引っ掻かれた界面活性剤層fは、行き場がなくなって、木目込み溝eから溢れ出して、内装部品本体aの表面に付着してしまうことがある。
【0011】
もし、内装部品本体aの表面に界面活性層fが溢れ出て付着した場合、乾燥後には白く固まってしまい、外観不良となってしまうので、最早良品として扱われなくなり、このような自体を防ぐためには、内装部品本体aの表面に溢れ出た界面活性剤層fを後工程で完全に拭き取る作業が必要となり、面倒である。
【0012】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、内装部品本体側の木目込み溝に中接部材の木目込み端縁を木目込む際に、界面活性剤層が木目込み溝から内装部品本体の表面に溢れ出ないようにした自動車用内装部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、内装部品本体に、少なくとも互いに対向する一対の側部縦壁と該両側部縦壁の一端側同士を互いに連接する溝底を有する溝壁により構成する木目込み溝を形成して、該木目込み溝の前記一対の側部縦壁のうち、一方の側部縦壁に界面活性剤層を塗布形成するとともに、前記木目込み溝内に木目込まれる中接部材の裏面に予め粘着材を貼付して、前記木目込み端縁を前記木目込み溝内に木目込む際に、前記粘着材が前記一方の側部縦壁に界面活性剤層の作用により付着しないようにして、前記他方の側部縦壁側に端面を粘着して前記木目込み端縁を前記木目込み溝内に木目込むことにより前記中接部材を前記内装部品本体に張設装着して構成した車両用内装部品であって、前記木目込み溝を構成する溝壁に、前記木目込み溝内に前記木目込み端縁を木目込む際に界面活性剤層から剥離した界面活性剤を木目込み溝外に排出する剥離界面活性剤排出孔を形成したことを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成により、木目込み端縁を木目込み溝内に木目込む際に、当該木目込み端縁が界面活性剤層を引っ掻いて剥離させたとしても、この剥離した界面活性剤が剥離界面活性剤排出孔を通って内装部品本体の裏側から外部に排出することになり、界面活性剤が木目込み溝から溢れて内装部品本体の表面に付着することがないため、後工程において溢れた界面活性剤の拭き取り作業を必要とせず、外観見栄えの非常に良い内装部品を提供することができる。
【0015】
また、本発明は、前記剥離界面活性剤排出孔を、前記他方の側部縦壁の一部に形成するか、前記溝底に形成することにより、確実に、界面活性剤層から引っ掻かれて剥離した界面活性剤が剥離界面活性剤排出孔を通って内装部品本体の裏側から外部に排出するようにしている。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成する本発明における自動車用内装部品は、木目込み端縁を木目込み溝内に木目込む際に、当該木目込み端縁が界面活性剤層を引っ掻いて剥離させたとしても、この剥離した界面活性剤が剥離界面活性剤排出孔を通って内装部品本体の裏側から外部に排出することになり、界面活性剤が木目込み溝から溢れて内装部品本体の表面に付着することがないため、後工程において溢れた界面活性剤の拭き取り作業を必要とせず、外観見栄えの非常に良い内装部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を用いて、本発明を実施するための最良の形態における実施例について、説明する。
【0018】
図1は一般の自動車用内装部品である中接部材付きのドアトリムを描画した斜視図、図2は本発明の一の実施の形態を描画した図1のA−A断面図である。
【0019】
自動車の内装部品の一つであるドアトリムは、その車室側である表側において、略中央部から上部を窺うように車体前後方向に延在するアームレスト部2や下部側略中央部に位置するポケット部3或いは車体前部側に位置するスピーカーグリル4を配した内装部品本体としてのドアトリム本体1を有して構成しており、ドアトリム本体1におけるアームレスト部2の上部側には、中接部材5が張設装着されている。
【0020】
中接部材5をドアトリム本体1に張設装着するには、まず、ドアトリム本体1の中接部材設置部位周囲に、一対の側部縦壁6a、6bとこれら側部縦壁6a、6b同士を互いに連接する溝底6cから構成する断面コ字状の木目込み溝6を形成しておき、木目込み溝6内に中接部材5の木目込み端縁5aを木目込むことによって、中接部材5をドアトリム本体1に張設装着している。
【0021】
このために、木目込み溝6の一対の側部縦壁6a、6bのうち、一方の側部縦壁6aに界面活性剤層7を塗布形成するとともに、木目込み溝6内に木目込まれる中接部材5の裏面,たとえば木目込み端縁5aの互いに対向する一対の端面5b、5cのうち一方の端面5bに予め粘着材8を貼付たとえば塗布(またはラミネート)して置いて、木目込み端縁5aを木目込み溝6内に木目込む際に、粘着材8が一方の側部縦壁6aに界面活性剤層7の作用により付着しないようにして、他方の側部縦壁6b側に端面5cを粘着して木目込み端縁5aを木目込み溝6内に木目込むことにより中接部材5をドアトリム本体1に張設装着して構成している。
【0022】
さらに、木目込み溝6を溝壁を構成する一対の側部縦壁6a、6bのうち、他方の側部縦壁6bと溝底6cとが連接する角部を含み他方の側部縦壁6bの一部には、剥離界面活性剤排出孔9が形成されている。
【0023】
かかる構成により、木目込み端縁5aを木目込み溝6内に木目込む際に、木目込み端縁5aが界面活性剤層7を引っ掻いて剥離させたとしても、この剥離した界面活性剤7aが剥離界面活性剤排出孔9を通ってドアトリム本体1の裏側から外部に排出することになり、引っ掻かれた界面活性剤7aが木目込み溝6からドアトリム本体1の表面側に溢れてドアトリム本体1の表面に付着することがないため、後工程において溢れた界面活性剤層7の拭き取り作業を必要とせず、外観見栄えの非常に良い内装部品を提供することができる。
【0024】
図3は本発明にかかる他の実施の形態を示している。
【0025】
図3においては、剥離界面活性剤排出孔9が、木目込み溝6の溝壁を構成する溝底6cと他方の側部縦壁6bとの連接する角部を含み溝底6cに形成した点、上記実施の形態と異なる構成を呈しており、その他の構成は同じであり、剥離界面活性剤排出孔9により、決め気味端縁5aが決め込み溝6に木目込まれる際に引っ掻いた界面活性剤層7をドアトリム本体1の裏側から外部に排出する点同じである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本発明は、木目込み端縁を木目込み溝内に木目込む際に、当該木目込み端縁が界面活性剤層を引っ掻いて剥離させたとしても、この剥離した界面活性剤が剥離界面活性剤排出孔を通って内装部品本体の裏側から外部に排出することになり、界面活性剤が木目込み溝から溢れて内装部品本体の表面に付着することがないため、後工程において溢れた界面活性剤の拭き取り作業を必要とせず、外観見栄えの非常に良い内装部品を提供することができるために、内装部品本体の表面を部分的に覆う中接部材の端縁を内装部品本体に設けた木目込み溝に木目込み張設装着するようになした自動車のドアトリムなどの車両用内装部品等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一般の自動車用内装部品である中接部材付きのドアトリムを描画した斜視図である。
【図2】本発明の一の実施の形態を描画した図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態を描画した図1のA−A断面図である。
【図4】従来の自動車用内装部品であるドアトリムにおいて、中接部材をドアトリム本体側の木目込み溝に木目込む前の準備過程を描画した断面図である。
【図5】同じく、中接部材をドアトリム本体側の木目込み溝に木目込んだ状態を描画した断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ドアトリム本体(内装部品本体)
5 中接部材
5a 木目込み端縁
5b、5c 端面
6 木目込み溝
6a 一方の側部縦壁
6b 他方の側部縦壁
6c 溝底
7 界面活性剤層
8 粘着材
9 剥離界面活性剤排出孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装部品本体に、少なくとも互いに対向する一対の側部縦壁と該両側部縦壁の一端側同士を互いに連接する溝底を有する溝壁により構成する木目込み溝を形成して、該木目込み溝の前記一対の側部縦壁のうち、一方の側部縦壁に界面活性剤層を塗布形成するとともに、前記木目込み溝内に木目込まれる中接部材の裏面に予め粘着材を貼付して、前記木目込み端縁を前記木目込み溝内に木目込む際に、前記粘着材が前記一方の側部縦壁に界面活性剤層の作用により付着しないようにして、前記他方の側部縦壁側に端面を粘着して前記木目込み端縁を前記木目込み溝内に木目込むことにより前記中接部材を前記内装部品本体に張設装着して構成した車両用内装部品であって、前記木目込み溝を構成する溝壁に、前記木目込み溝内に前記木目込み端縁を木目込む際に界面活性剤層から剥離した界面活性剤を木目込み溝外に排出する剥離界面活性剤排出孔を形成したことを特徴とする車両用内装部品。
【請求項2】
前記剥離界面活性剤排出孔を、前記他方の側部縦壁の一部に形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用内装部品。
【請求項3】
前記剥離界面活性剤排出孔を、前記溝底に形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用内装部品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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