説明

車両用冷却装置

【課題】モータに電力を供給する車両用電池を効果的に冷却する、
【解決手段】車両10が走行中は第一循環路310に冷却液を循環させモータ駆動機構100を冷却しているが、車両10が停止中は第二循環路350に流路を切り替え、第二循環路350に冷却液を循環させ電池パック200を冷却するので、停車中の電他パック200が効果的に冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両等の電気モータで走行することが可能な車両には、電気モータに電力を供給する電池が搭載されている。このような車両が停車中、炎天下などの外気温が高い場合には、車両に搭載された電池の温度が上昇する虞があるがある。そして、電池の温度が上昇すると電池の寿命が短くなる虞がある。
【0003】
そこで、電池の温度が上昇した場合などに、プレ空調換気制御により適切な温度に調整された車室内の空気を用いて電池を冷却すると共に、少なくとも太陽電池の電力を用いて空調換気制御および冷却ファンの制御を行なう技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、車両が停車中の車両用電池の温度上昇を、より効果的に冷却することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−163095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、車両が停車中の車両用電池を効果的に冷却することができる車両用冷却装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、車両をモータで走行させるモータ駆動機構を冷却液で冷却する駆動機構冷却装置と、前記モータに電力を供給する車両用電池を前記冷却液で冷却する電池冷却装置と、前記冷却液を冷却するラジエータと、前記駆動機構冷却装置と前記ラジエータとの間で前記冷却液が循環する第一循環路と、前記電池冷却装置と前記ラジエータとの間で前記冷却液が循環する第二循環路と、前記第一循環路及び前記第二循環路のいずれか一方に前記冷却液が循環するように循環路を切り替え、前記車両の走行中の場合は前記第一循環路に前記冷却液を循環させ、前記車両が停止中の場合は前記第二循環路に前記冷却液を循環させる循環路切替機構と、備える。
【0008】
請求項1の発明では、車両が走行中は第一循環路に冷却液を循環させ、駆動機構冷却装置でモータ駆動機構を冷却させる。車両が停止中の場合は、第二循環路に冷却液を循環させ、電池冷却装置で車両用電池を冷却する。
【0009】
このように、車両が停止中はモータ駆動機構を冷却する冷却液を第二循環路に循環させ車両用電池を冷却するので、停車中の車両用電池が効果的に冷却される。
【0010】
請求項2の発明は、前記循環路切替機構は、前記車両用電池から供給された電力で作動し、前記循環路切替機構は、前記車両が停止中の場合において、前記冷却液の温度が予め定められた温度T1以下、且つ、前記電池の温度が予め定められた温度T2以上となると、前記第二循環路に前記冷却液を循環させる。
【0011】
請求項2の発明では、冷却液の温度が予め定められた温度T1以下、且つ、電池の温度が予め定められた温度T2以上となると、第二循環路に冷却液を循環させ、電池冷却装置で車両用電池を冷却するので、電池の消費を抑えつつ、効果的に車両用電他が冷却される。
【0012】
請求項3の発明は、前記循環路切替機構は、前記車両用電池から供給された電力で作動し、前記循環路切替機構は、前記車両が停止中の場合において、前記電池冷却装置の前記冷却液が入れ替わると、前記第二循環路への前記冷却液の循環を止める。
【0013】
請求項3の発明では、電池冷却装置の冷却液が入れ替わると、第二循環路への冷却液の循環を止めるので、電池の消費を抑えつつ、効果的に車両用電他が冷却される。
【0014】
請求項4の発明は、前記ラジエータは、前記車両の車室内に設けられたダッシュパネルの車両前方側下側に配置されている。
【0015】
請求項4の発明では、ラジエータが車両の車室内におけるダッシュパネルの車両前方側下側に配置されているので、太陽光がダッシュパネルによって遮られる。よって、ラジエータの冷却液の冷却性能が向上し、その結果、車両用電他が効果的に冷却される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、車両が停車中の車両用電池を効果的に冷却することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、車両が停止中は第二循環路に常時冷却液を循環させる構成と比較し、電池の消費を抑えつつ、車両用電他を効果的に冷却することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、車両が停止中は第二循環路に常時冷却液に循環させる構成と比較し、電池の消費を抑えつつ、効果的に車両用電他を冷却することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、太陽光がダッシュパネルによって遮られていない構成と比較し、ラジエータの冷却液の冷却性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置の構成を模式的に示す(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)はバルブによる流路の切り替えを説明する説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置が備える車両を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用冷却装置の制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
図1〜図4を用いて、本発明の実施形態に係る車両用冷却装置について説明する。
【0022】
図1に示すように車両10は、電気モータ120とインバータ110とを含んで構成された電気モータ駆動機構100によって走行する電気自動車とされている(図3も参照)。
【0023】
図1に示すように、インバータ110は電池パック200から出力された直流電圧を交流電圧に変換すると共に、変換した交流電圧を電気モータ120に出力する。また、インバータ110は、車両10の回生制動時に電気モータ120が発電した交流電圧を直流電圧に変換すると共に、変換した直流電圧を電池パック200へ出力し電池パック200を充電する。
【0024】
なお、図3に示すように、電池パック200は、車両10の車室50の床部分に配置されている。
【0025】
図1に示すように、車両10は、駆動機構冷却装置130と電池冷却装置210とを含んで構成された車両用冷却装置90が備えられている。
【0026】
そして、冷却液が流れる駆動機構冷却装置130によって、電気モータ駆動機構100が冷却される。また、駆動機構冷却装置130は、インバータ冷却装置112、モータ冷却装置122、及び冷却路125等を含んで構成されている。
【0027】
インバータ冷却装置112を流れる冷却液によってインバータ110が冷却される。また、モータ冷却装置122を流れる冷却液によって電気モータ120が冷却される。そして、インバータ冷却装置112とモータ冷却装置122との間は冷却路125によって連結され、これらの間で冷却液が流れるように構成されている。
【0028】
駆動機構冷却装置130は、ラジエータ180と配管310、320によって連結されている。よって、配管310、320によって駆動機構冷却装置130とラジエータ180との間で冷却液が循環する第一循環路300が形成されている。なお、配管310は、配管312と配管314とで構成され、配管320は配管322と配管324とで構成されている(バルブ362,364については後述する)。また、配管320にはウォーターポンプ330が設けられている。
【0029】
図3に示すように、ラジエータ180は、前輪22の車両後方側に配置されている。更に、ラジエータ180は、車室50の車両前後方向の前面部分に設けられたダッシュパネル52の車両前方側下側に配置されている。また、車両10が走行中は、ラジエータ180に外気が導風されるように配置されている。
【0030】
図1に示すように、電池パック200は、冷却液が流れる電池冷却装置210によって冷却されている。また、電池冷却装置210は、電池パック200の底面部分に配置されている(図3も参照)。
【0031】
配管310を構成する配管312と配管314と間にはバルブ362が設けられ、配管320を構成する配管322と配管324との間にはバルブ364が設けられている。バルブ362,364は、3方向に流体の出入口を有する三方弁とされている。そして、バルブ362に接続された配管352とバルブ364に接続された配管354とが、電池冷却装置210に連結されている。
【0032】
よって、配管314、352及び配管324,354よって電池冷却装置210とラジエータ180との間で冷却液が循環する第二循環路350が形成されている。言い換えると、第二循環路350は、第一循環路300から分岐し電池冷却装置210とラジエータ180との間で冷却液が循環するように構成されている。
【0033】
図1(C)に示すように、バルブ362は、配管312又は配管352のいずれかに冷却液が流れるように流路を切り替える。また、バルブ364は、配管322又は配管354のいずれかに冷却液が流れるように流路を切り替える。よって、バルブ362,364に流れる冷却液の方向が切り替えられることで、第一循環路300及び第二循環路350のいずれか一方に冷却液が循環する。
【0034】
図2に示すように、車両10には、車両10の各種制御を行う制御装置60が設けられている。制御装置60は、電気モータ駆動機構100及び電池パック200を制御することで、電気モータ120の回転数を制御し、車両10の発進及び停止、また、走行中の車速等を制御する。また、制御装置60は、バルブ362、364を制御し、第一循環路300及び第二循環路350のいずれか一方に冷却液を循環させる。更に、制御装置60は、ウォーターポンプ330の動作を制御する。
【0035】
なお、制御装置60は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含んで構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、ウォーターポンプ330、バルブ362、364は、電池パック200から電力が供給されて作動する。
【0037】
<作用及び効果>
つぎに、本実施形態の作用及び効果について用いて説明する。
【0038】
まず、本実施形態の制御装置60が実行する冷却処理を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0039】
ステップ512で、車両10が走行中であるか否かを判断する。なお、走行中であるか否かの判断はどのような方法で行ってよい。例えば、車輪22,24の回転数が0(ゼロ)、又は略0(ゼロ)であるか否かで判断してもよいし、電気モータ120の回転数が0(ゼロ)、又は略0(ゼロ)であるか否かで判断してもよい。
【0040】
走行中の場合は、ステップ514に進み、配管312と配管314との間に冷却液が流れるようにバルブ362を切り替え、配管322と配管324との間に冷却液が流れるようにバルブ364を切り替える。つまり、第一循環路300に冷却液が流れるようにバルブ362,364を切り替える。
【0041】
つぎに、ステップ516に進みウォーターポンプ330を駆動させ、第一循環路300に冷却液を循環させる。
【0042】
このように、第一循環路300に冷却液が循環することで、電気モータ駆動機構100が冷却される。また、走行によって外気がラジエータ180に導風されることで、ラジエータ180の中の冷却液が冷却される。
【0043】
ステップ512で走行中でない場合、つまり車両10が停車中の場合は、ステップ520に進む。ステップ520では冷却液の温度が25℃以下であるか否かを判断する。なお、本実施形態では、ラジエータ180の冷却液の温度を温度センサーなどによって測定し、冷却液の温度とした。なお、これ以外の部位や方法で冷却液の温度を測定してもよい。
【0044】
ラジエータ180の冷却液の温度が25℃以下でない場合は、ステップ521に進みウォーターポンプ330を停止し、ステップ520に戻る。
【0045】
ラジエータ180の冷却液の温度が25℃以下になると、ステップ522に進む。ステップ522では電池パック200の温度が30℃以上であるか否かを判断する。
【0046】
なお、電池パック200の温度は、どのような方法で測定してもよい。本実施形態では、電池冷却装置210の冷却液の温度を、温度センサーなどによって測定することで、間接的に電池パック200の温度としている。つまり、ここでは電池冷却装置210の冷却液の温度が30℃以上であるか否かを判断している。
【0047】
電池冷却装置210の冷却液の温度が30℃以上でない場合は、ステップ522に戻る。
【0048】
電池冷却装置210の冷却液の温度が30℃以上の場合は、ステップ524に進む。ステップ524では、配管312と配管352との間に冷却液が流れるようにバルブ362を切り替え、配管322と配管354との間に冷却液が流れるようにバルブ364を切り替える。つまり、第二循環路350に冷却液が流れるようにバルブ362,364を切り替える。
【0049】
そして、ステップ526に進みウォーターポンプ330を駆動させ、第二循環路350に冷却液を循環させる。第二循環路350に冷却液が循環することで、電池パック200が冷却される。
【0050】
つぎに、ステップ528に進む、ステップ528では、電池冷却装置210の冷却液が入れ替わったか否かを判断する。なお、電池冷却装置210の冷却液が入れ替わったか否かを判断する方法はどのような方法であってもよい。例えば、第二循環路350のどこかに流量センサーを設け、所定の流量以上が流れると冷却液が入れ替わったと判断してもよい。或いは、ウォーターポンプ330が所定時間作動すると冷却液が入れ替わったと判断してもよい。
【0051】
ステップ528で電池冷却装置210の冷却液が入れ替わっていないと判断すると、ステップ528に戻る。
【0052】
ステップ528で電池冷却装置210の冷却液が入れ替わったと判断すると、ステップ530に進みウォーターポンプ330の駆動を停止する。
【0053】
なお、車両10が停車中、ステップ520以降を一定時間毎に繰り返すように処理されていてもよい。
【0054】
このように、車両10が走行中は第一循環路310に冷却液を循環させモータ駆動機構100を冷却しているが、車両10が停止中は第二循環路350に流路を切り替え、第二循環路350に冷却液を循環させ電池パック200を冷却するので、停車中の電他パック200が効果的に冷却される。
【0055】
また、冷却液の温度が温度30℃以下、且つ、電池パック200の温度が予め定められた温度25℃以上となると、ウォーターポンプ330を駆動させ、第二循環路350に冷却液を循環させ電池パック200を冷却する。更に、電池冷却装置210の冷却液が入れ替わると、ウォーターポンプ330の駆動を停止し、第二循環路350への冷却液の循環を止める。
【0056】
よって、例えば、停車中は第二循環路330に常時冷却液を循環させる場合と比較し、電池パック200の電力の消費を抑えつつ、効果的に電他パック200が冷却される。
【0057】
また、図3に示すように、ラジエータ180は、車室50の車両前後方向の前面部分に設けられたダッシュパネル52の車両前方側下側に配置されている。よって、車室50に照射される太陽光がダッシュパネル52によって遮られる。つまり、ラジエータ180は日陰に配置されている。
【0058】
したがって、太陽光がラジエータ180に当たり、ラジエータ180の冷却液が上昇することが防止される。よって、ラジエータ180の冷却性能が向上する。また、停車中であっても、つまり走行風によるラジエータ180の冷却がない状態であっても、ラジエータ180の冷却液の温度上昇が抑制又は防止される。
【0059】
なお、車両周辺の雰囲気温度分布を測定した結果、晴天時で外気温が約35℃の高温の場合、車両10が停車中における車室50の温度は50℃〜60℃であったが、ダッシュパネル52の車両前方側下側(日陰部)は約25℃であった。よって、車両10が停車中であってもラジエータ180の冷却液を、25℃以下(図4のフローチャートのステップ520)とすることが可能である。
【0060】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0061】
例えば、上記実施形態では、電気モータの駆動力によって走行する電気自動車に本発明を適用したがこれに限定されない。電気モータに加えてエンジンによる走行が可能な所謂ハイブリッド車にも適用することができる。
【0062】
また、例えば、上記実施形態では、ウォーターポンプ330、バルブ362、364は、電池パック200から電力が供給されて作動したが、これに限定されない。電池パック200以外の別の電源から電力が供給されて作動する構成であってよい。
【0063】
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
10 車両
50 車室
52 ダッシュパネル
60 制御装置(循環路切替機構)
90 車両用冷却装置
100 電気モータ駆動機構(モータ駆動機構)
110 インバータ(モータ駆動機構)
120 モータ(モータ駆動機構)
130 駆動機構冷却装置
180 ラジエータ
200 電池パック(車両用電池)
210 電池冷却装置
300 第一循環路
330 ウォーターポンプ(循環路切替機構)
350 第二循環路
362 バルブ(循環路切替機構)
364 バルブ(循環路切替機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両をモータで走行させるモータ駆動機構を冷却液で冷却する駆動機構冷却装置と、
前記モータに電力を供給する車両用電池を前記冷却液で冷却する電池冷却装置と、
前記冷却液を冷却するラジエータと、
前記駆動機構冷却装置と前記ラジエータとの間で前記冷却液が循環する第一循環路と、
前記電池冷却装置と前記ラジエータとの間で前記冷却液が循環する第二循環路と、
前記第一循環路及び前記第二循環路のいずれか一方に前記冷却液が循環するように循環路を切り替え、前記車両が走行中の場合は前記第一循環路に前記冷却液を循環させ、前記車両が停止中の場合は前記第二循環路に前記冷却液を循環させる循環路切替機構と、
を備える車両用冷却装置。
【請求項2】
前記循環路切替機構は、前記車両用電池から供給された電力で作動し、
前記循環路切替機構は、前記車両が停止中の場合において、前記冷却液の温度が予め定められた温度T1以下、且つ、前記電池の温度が予め定められた温度T2以上となると、前記第二循環路に前記冷却液を循環させる、
請求項1に記載の車両用冷却装置。
【請求項3】
前記循環路切替機構は、前記車両用電池から供給された電力で作動し、
前記循環路切替機構は、前記車両が停止中の場合において、前記電池冷却装置の前記冷却液が入れ替わると、前記第二循環路への前記冷却液の循環を止める、
請求項1又は請求項2に記載の車両用冷却装置。
【請求項4】
前記ラジエータは、前記車両の車室内に設けられたダッシュパネルの車両前方側下側に配置されている、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−236493(P2012−236493A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106485(P2011−106485)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】