説明

車両用制御システム

【課題】快適性を損ねることなく飲酒運転を確実に防止する。
【解決手段】空調装置(500)を備える車両(10)に搭載される車両用制御システム(100)は、遠隔地からの遠隔始動要求に応じて前記車両の動力源を遠隔始動させる始動制御手段と、前記動力源の遠隔始動と同期して始動するように前記空調装置を制御する空調制御手段と、運転者の発進意図を検出可能な意図検出手段と、前記発進意図が検出された場合に前記遠隔始動された動力源を停止させる停止制御手段と、前記運転者の呼気中のアルコール濃度を検出可能なアルコール濃度検出手段と、前記検出されたアルコール濃度に応じて前記動力源の再始動を許可する許可手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の飲酒運転を防止するための車両用制御システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、特許文献1には、電子キーに飲酒店利用情報を記憶させるエンジン始動制御システムが開示されている。このシステムによれば、ユーザが携帯する電子キーと車両に搭載された車載機との間で無線通信による認証を行い、車両のエンジン始動を許可するエンジン始動制御システムにおいて、車載機が当該電子キーから当該飲酒店利用情報を取得し、その取引内容に基づいてエンジン始動禁止制御を行う始動禁止制御手段を備えることにより、飲酒運転を防止することが可能であるとされている。
【0003】
また、この種の装置として、特許文献2には、アルコール検知器と表示部を備えたインテリジェントキーを備え、アルコール検知器でアルコールが検知されなければキーIDを送信し、アルコール検知器にてアルコールが検知された場合には、キーIDを送信せずに、アルコールが検知された旨を当該表示部で表示するキーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−260393号公報
【特許文献2】特開2008−155848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される装置では、電子キーから取得される飲酒店利用情報に、飲酒を伴う取引の履歴が存在する場合等には、運転者の飲酒の有無に関わらず遠隔始動によるエンジンの始動が禁止されてしまう。
【0006】
また、特許文献2に開示される装置では、インテリジェントキー自体にアルコール検知器が備わるものの、インテリジェントキーを操作する者と車両の運転者とが同一である保証がないために、飲酒していない第三者にインテリジェントキーを操作させることによって、アルコールインターロック(本明細書中では、飲酒運転防止を目的とした、車両の動力源の始動を禁止することを含む一又は複数の措置を意味する)の作動を不正に回避することが容易である。
【0007】
また、このようなアルコールインターロックの誤作動或いは不正回避の発生を防止するために、インテリジェントキー自体に生体認証等の各種本人確認機能を付帯させた場合には、コスト増加や使用者が本人に限定されるなど利便性が低下する可能性がある。
【0008】
このように、飲酒運転を試みる者に対してアルコールインターロックを正確に発動させる観点に立てば、車載器による飲酒検知が行われることが望ましい。
【0009】
ところで、通常、車両には各種の空調装置が搭載され得る。空調装置とは、車室内の空気の状態を調整する装置であり、例えば、エアコンディショナ、クーラ、ヒータ、加湿器、空気清浄器等の各種実践的態様を有し得る装置である。この種の装置は、例えばバッテリ等の蓄電手段から電力を持ち出すことによっても稼動し得るが、蓄電手段の電力収支を考慮すれば、当然ながら、その恒常的な稼動状態の維持に際して動力源(例えば、内燃機関やモータジェネレータ等)の稼動を必要とする。
【0010】
このため、上述した理由から飲酒の検知を車載器に頼る場合、例えば車室が高温又は低温である場合或いは車室の空気が清浄でない場合等において、運転者は、快適性が低下した環境下で飲酒検知処理の進行を待たねばならず、殊に飲酒運転を行う意思等元より全く有さぬ正常な運転者に対して少なからず不快感を与える可能性がある。
【0011】
このように、特許文献1及び2に開示された装置を含む従来の装置では、飲酒検知の正確性と飲酒検知期間における車室の快適性とを両立することが困難であるという技術的問題点がある。
【0012】
本発明は、係る問題点に鑑みてなされたものであり、快適性を損ねることなく飲酒運転を確実に防止可能な車両用制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明に係る車両用制御システムは、空調装置を備える車両に搭載可能であって、遠隔地からの遠隔始動要求に応じて前記車両の動力源を遠隔始動させる始動制御手段と、前記動力源の遠隔始動と同期して始動するように前記空調装置を制御する空調制御手段と、運転者の発進意図を検出可能な意図検出手段と、前記発進意図が検出された場合に前記遠隔始動された動力源を停止させる停止制御手段と、前記運転者の呼気中のアルコール濃度を検出可能なアルコール濃度検出手段と、前記検出されたアルコール濃度に応じて前記動力源の再始動を許可する許可手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る「遠隔地」とは、車両外の任意の位置を意味する。また、このような遠隔地において生じ得る本発明に係る「遠隔始動要求」とは、例えば、電子キー或いはインテリジェントキー等と称される各種遠隔始動装置に対してなされる、人為的な遠隔始動操作(例えば、キーに付設されたスイッチを押下する等の操作)等を意味する。
【0015】
尚、遠隔始動操作がなされるにあたっては、好適な一形態として、遠隔始動装置側で遠隔始動要求に相当する信号を少なくとも含む遠隔始動信号が生成され、例えば無線通信や赤外線通信等の各種通信環境を利用して車両に送信される。この場合、本発明に係る車両用制御システムには、当該遠隔始動信号を受信可能な、当該遠隔始動信号の形態に応じた各種の通信手段が備わっていてもよい。或いは、本発明に係る車両にこの種の通信手段が備わり、本発明に係る車両用制御システムが当該遠隔始動信号の有無を適宜参照する形態を採ってもよい。
【0016】
本発明に係る車両用制御システムによれば、始動制御手段が、この遠隔始動要求に応じて動力源を始動させる。即ち、本発明によれば、遠隔始動操作に対する動力源の始動に、飲酒運転防止の見地から生じる制限はなく、運転者の飲酒状態の有無に関わらず動力源の始動が許可される。
【0017】
一方、本発明に係る車両用制御システムによれば、遠隔始動操作に伴う動力源の遠隔始動と同期して、空調制御手段の制御下で空調装置が始動する。この場合の「同期」とは、遠隔始動要求を制御上のトリガとすることを意味するものであり、動力源と空調装置とは、時系列上いずれが先んじて始動しても構わない趣旨である。空調制御手段によれば、前回の動力源の停止時において意図的又は偶発的に空調装置がオフ状態とされていても、遠隔始動要求に応じた動力源の始動に伴って空調装置が強制的に始動し得る。
【0018】
空調制御手段に係る「空調装置の始動」とは、好適には、車室の空調状態を、目標とする空調状態に維持することを意味する。この場合、より具体的には、空調装置の始動に伴って、例えば、車室内の温度が目標温度に調整され、又は車室内の湿度が目標湿度に調整され、或いは車室内の空気が清浄化される。この種の目標とする空調状態は、予め遠隔始動時に特化した値として設定されていてもよいし、その時点の空調装置の設定状態に準じるものであってもよい。また、予め人為的に設定されるものであってもよいし、システム上自動的に付与されるものであってもよい。いずれにせよ、空調装置が始動することにより、車室は、理想的には運転者が不快感を覚えない空調状態へ維持される。
【0019】
また、この場合、目標温度等の各種目標状態が可及的に短時間で得られるように、空調装置に係る風量、風向及び吹き出し口の状態等が制御されてもよい。具体的には、例えば、室内温度が40℃以上である車両について遠隔始動要求が生じ、目標空調状態が例えば25℃である場合、空調制御手段は、係る制御目標が可及的に短時間で得られるように、冷媒の能力を上昇させ、風量を増大させ、室内に冷気が効率的に循環するように風向を制御し、且つ車両に備わる全ての吹き出し口を全開状態に変化させる等の措置を講じてもよい。
【0020】
他方、本発明に係る車両用制御システムには、運転者における車両の発進意図を検出可能な意図検出手段が備わる。意図検出手段により運転者の発進意図が検出されると、停止制御手段により、遠隔始動要求に応じた遠隔始動状態にある動力源が停止される。即ち、動力源は、運転者の発進意図の検出に伴って強制的に(無論、各種態様を伴うインフォメーションはあってもよい)稼動停止状態へと移行する。このような措置は、運転者が飲酒状態にない旨が確定していない(飲酒状態にある可能性が排除されない)ことに起因する、予防的見地に立った飲酒運転防止措置であり、所謂アルコールインターロックの一部である。
【0021】
運転者の発進意図は、例えば運転者の状態又は動作等を判断要素として検出される。例えば、意図検出手段は、発進意図に対応する運転者の動作の一例として、車両のドアの開閉操作(尚、運転席側ドア等のように特定のドアの開閉であってもよい)、又は運転席への着座動作等を検出してもよい。後者は、例えば、運転席の荷重変化等に基づいて判定することができる。また、意図検出手段は、発進意図を表す運転者の状態の一例として、運転者が運転席に着座していることを検出してもよい。この場合、意図検出手段は、例えば、然るべき撮像装置を介して得られる運転席空間の画像若しくは映像に対し公知の各種画像認識又はパターン認識技術を適用することにより、運転席に運転者が着座している旨の判定を下してもよい。或いは、意図検知手段は、例えば、赤外線センサ等の各種光学センサから送出される各種センサ出力に基づいて運転席に運転者が着座していることを検出してもよい。尚、意図検出手段に係るこのような検出動作は、上述した遠隔始動要求に応じた遠隔始動制御の実行の有無とは無関係に行われてもよい。
【0022】
本発明に係る車両用制御システムは、運転者の呼気中のアルコール濃度を直接的に又は間接的に検出可能なアルコール濃度検出手段を備える。先に停止制御手段によって強制的に停止された動力源は、許可手段により、この検出されたアルコール濃度に応じてその再始動を許可される。尚、「再始動が許可される」とは、停止制御手段に係る動力源の強制停止措置(即ち、アルコールインターロック)が解除されることを意味しており、例えば、運転者が然るべき再始動入力(例えば、イグニッションキーの操作やスタートボタンの操作等)を与えた場合における動力源の再始動を妨害しない(或いは、このような場合に動力源を再始動させる)こと等を意味する。但し、遠隔始動操作がなされている場合、運転者は既に始動入力を与えていると判断することも可能であり、動力源の再始動は運転者の意思に即していると扱うことも可能である。この点に鑑みれば、許可手段は、このような強制停止措置の解除に加えて、人為的な再始動入力を待たずして動力源の再始動を自動的に行ってもよい。
【0023】
許可手段は、検出されたアルコール濃度に基づいて、飲酒運転防止の観点から動力源の始動を禁止する理由がないと判断される場合に、動力源の再始動を許可する。即ち、許可手段は、好適には、検出されたアルコール濃度が、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて策定された、或いは法的規制に基づいて策定された、運転者が飲酒状態にないと判断され得る濃度範囲にある又はあると推定される場合に、動力源の再始動を許可する。この場合、許可手段は、検出されたアルコール濃度が、この種の濃度範囲を規定する上限値未満であるか否かを判定してもよい。許可手段による再始動の許可が与えられない場合、動力源は、強制的停止状態を維持する(この場合の措置は、予防的見地に立った措置でなく、真に飲酒運転を禁止するといった意味でのアルコールインターロックである)。
【0024】
尚、アルコール濃度検出手段は、例えば公知の各種アルコール濃度センサ等のように直接的な検出手段であってもよいし、この種の直接的な検出手段から検出されたアルコール濃度に相当する情報を各種信号として取得する間接的な検出手段(例えば、各種コントローラやコンピュータ装置等)であってもよく、その検出方法は如何様にも限定されない趣旨である。
【0025】
また、アルコール濃度検出手段は、運転者の呼気をアルコール濃度の検出対象とするが、検出対象が真に運転者の呼気であるか否か(例えば、運転者以外の第三者の呼気又は風船等を利用した呼気以外のガスであるか否か)についての判定を要する場合については、本発明に係る車両、車両用制御システム又はアルコール濃度検出手段に、適宜この種の判定を行う手段又は機能が備わっていてもよい。この場合、アルコール濃度検出手段に係るアルコール濃度の検出に相前後して、検出対象が真に運転者の呼気であることか否かの判定処理が付帯的に実行されてもよい。
【0026】
このように、本発明に係る車両用制御システムによれば、車両の動力源は、遠隔始動操作がなされた時点に相当する時点から、運転者の発進意図が検出された時点に相当する時点までの期間(これ以降、適宜「遠隔始動期間」と称する)についてのみ、運転者の飲酒状態とは無関係にその始動が許可され、空調装置は、少なくともこの遠隔始動期間について稼動状態を採ることができる。遠隔始動要求が発生した時点と、運転者の発進意図が検出される時点との間に生じる時間的猶予を利用して、車室を運転者にとって快適な空調状態に維持することができるのである。
【0027】
即ち、本発明に係る車両用制御システムでは、運転者の発進意図の検出前後で、動力源の始動の意味が異なっている。発進意図検出以前の動力源の始動とは、空調装置を始動させ車室内を快適空間に維持するための始動であり、発進意図検出以後に許可手段により許可される動力源の始動とは、車両を発進させるための始動である。別言すれば、本発明に係る車両用制御システムにおいては、発進意図の検出を境にして動力源に係る始動措置と停止措置との間の優先順位を適切に切り替えている。
【0028】
その結果、一方で、運転者が遠隔始動操作を行う段階で飲酒検知が行われる場合の、上述した検出精度の低下(アルコール濃度の検出精度自体の低下及び他人の成り済まし等による飲酒検出の無効化を含む)が好適に回避され、他方で、車載器による飲酒検知が行われる場合の上述した快適性の低下(動力源が始動するまで空調装置が始動しないことによって生じた高温、低温、空気汚染等が招く快適性の低下)が好適に回避される。即ち、快適性を損ねることなく飲酒運転を確実に防止することが可能となるのである。このような、快適性と正確性との両立は、飲酒運転を行う意思等毛頭無い正常な運転者の負担を著しく軽減し得る点において実践上高い利益を提供するものである。
【0029】
尚、停止制御手段により動力源が一時的に強制停止されるにあたり、空調装置もまた、理想的には空調制御手段の作用により一時的に強制停止され得る。空調装置の稼動の有無は飲酒運転とは本来無関係であるが、空調装置の恒久的稼動に動力源の稼動が必要である点を考慮すれば、電力等、空調装置の稼動に要する各種エネルギの収支を悪化させないために、空調装置もまた一時的に停止させるのが望ましいのである。
【0030】
但し、遠隔始動要求発生時点と、発進意図検出時点とでは、空調装置を稼動させることに起因するリスクが大きく異なる。即ち、前者では、遠隔始動期間の長さを予見することは実質的に不可能であり、動力源の始動を伴わずに空調装置を始動させることによりエネルギ収支が悪化することのリスクが相対的に大きくなる。一方、発進意図検出時点においては、運転者が飲酒状態にない限り動力源が再始動するまでの時間は短く且つ相応に予見できるのである。従って、空調装置が、停止制御手段による動力源の強制停止に伴って停止される必要は必ずしもない。
【0031】
本発明に係る車両用制御システムの一の態様では、前記意図検出手段は、前記発進意図として前記運転者の運転席への着座を検出する。
【0032】
運転者の運転席への着座は、運転者の発進意図と高い相関を有し得る。従って、この態様によれば、運転者の発進意図を正確に検出することが可能となる。
【0033】
発進意図として運転席への着座が検出される本発明に係る車両用制御システムの一の態様では、前記意図検出手段は、運転席の荷重に基づいて前記運転席への着座を検出する。
【0034】
この態様によれば、運転席の荷重値又は荷重値の変化等を参照することによって、運転者の運転席への着座を正確に検出することが可能となる。
【0035】
発進意図として運転席への着座が検出される本発明に係る車両用制御システムの他の態様では、前記意図検出手段は、前記運転席におけるシートベルトの装着状態に基づいて前記運転席への着座を検出する。
【0036】
シートベルトの装着は運転者の義務であるから、シートベルトの装着状態(端的には、装着されたか否かの二値状態)は、運転者の運転席への着座を検出するための参照値として有効である。
【0037】
発進意図として運転席への着座が検出される本発明に係る車両用制御システムの他の態様では、前記車両は、前記車両の室内を撮像する撮像手段を備え、前記意図検出手段は、前記室内の撮像結果に基づいて前記運転席への着座を検出する。
【0038】
この態様によれば、車載カメラ等の撮像手段による室内の撮像結果に基づいて、運転者の運転席への着座を検出することができるため、アルコールインターロックの不正回避を好適に防止可能である。
【0039】
本発明に係る車両用制御システムの他の態様では、前記意図検出手段は、前記発進意図として前記車両のドアの開閉を検出する。
【0040】
遠隔地で始動操作を行った運転者が車両に搭乗するにあたってはドアの開閉が必須要素となる。従って、ドア、特に運転席側ドア等特定のドアの開閉動作を検出することにより、運転者の発進意図を正確に検出することができる。
【0041】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のブロック図である。
【図2】図1の車両におけるユーザインターフェイス部の正面平面図である。
【図3】図1の車両における飲酒検出部の概略側面断面図である。
【図4】図1の車両においてECUにより実行される遠隔始動制御のフローチャートである。
【図5】図1の車両においてECUにより実行される飲酒運転防止制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0044】
<発明の実施形態>
以下、適宜図面を参照して、本発明の一実施形態たる車両10について説明する。
【0045】
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10のブロック図である。
【0046】
図1において、車両10は、ECU100、飲酒検出部200、ユーザインターフェイス部300、エンジンシステム400、空調装置500及び遠隔始動システム600を備えた、本発明に係る「車両」の一例である。
【0047】
ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、車両10の動作を制御可能に構成された、本発明に係る「車両用制御システム」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する遠隔始動制御及び飲酒運転防止制御を実行可能に構成されている。
【0048】
尚、このような構成は一例に過ぎず、本発明に係る車両用制御システムは、例えば、各手段が、或いは装置全体が、一又は複数のCPU、MPU(Micro Processing Unit)、ECU、各種プロセッサ又は各種コントローラ等として構成されていてもよい。
【0049】
本発明における「呼気検知手段」に相当する飲酒検出部200を説明する。飲酒検出部200は、ECU100により実行される飲酒運転防止制御に係る各種検出動作を行う検出ユニットである。検出部200は、撮像装置210、画像処理装置220、送風ファン230及びセンサ群240を備えており、各々がECU100と電気的に接続され、ECU100により上位に制御される構成となっている。
【0050】
撮像装置210は、デジタル記録方式のビデオカメラであり、レンズ211及び画像処理部212を備える。
【0051】
レンズ211は、後述するインターフェイス部300に設置された、被写体からの入力光を集光する光学装置である。
【0052】
画像処理部212は、多数の撮像素子を備え、レンズ211を介して得られた被写体からの入力光に基づいて被写体に係る画像情報を生成する撮像ユニットである。
【0053】
画像処理装置220は、撮像装置210により得られた被写体の画像情報と、公知のパターン認識アルゴリズムとに基づいて、呼気入力者と車両の運転者とが同一であるか否かの判定処理を実行可能に構成されている。当該判定処理の実行結果に相当する情報、即ち、呼気入力者と運転者とが同一であるか否かに係る情報は、ECU100側からの要請に応じて適宜ECU100に送出される構成となっている。
【0054】
送風ファン230は、後述する検出空間200B内に回転可能に設置された翼車部と当該翼車部を駆動する駆動部(符合省略)とから構成される攪拌装置である。駆動部は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によりその動作が制御される構成となっている。尚、翼車部と検出空間200Bとの位置関係については後述する。
【0055】
センサ群240は、ECU100が飲酒運転防止制御を実行するにあたってそのセンサ値が参照される複数のセンサから構成される。センサ群240は、温度センサ241、CO2センサ242、アルコールセンサ243、妨害ガスセンサ244、ドアセンサ245及び運転席荷重センサ246から構成される。
【0056】
温度センサ241は、後述する検出空間200Bの温度を検出可能に構成されたセンサである。温度センサ241は、ECU100と電気的に接続されており、検出された温度はECU100により適宜参照される構成となっている。
【0057】
CO2センサ242は、検出空間200Bの二酸化炭素濃度を検出可能に構成されたセンサである。CO2センサ242は、ECU100と電気的に接続されており、検出された二酸化炭素濃度は、ECU100により適宜参照される構成となっている。
【0058】
アルコールセンサ243は、検出空間200Bに導かれた入力ガスのアルコール濃度Dalcを検出可能に構成されたセンサである。アルコールセンサ243は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアルコール濃度Dalcは、主として飲酒運転防止制御の実行期間においてECU100により参照される構成となっている。
【0059】
尚、後述するように、飲酒運転防止制御において当該入力ガスとして運転者呼気が入力された場合、検出空間200Bは、略均一に運転者呼気で満たされる。従って、運転者呼気のアルコール濃度Dalcは、実質的に検出空間200Bのアルコール濃度Dalcと同義である。
【0060】
尚、アルコールセンサ243は、半導体材料で構成された感ガス体を有し、当該感ガス体表面にアルコールが吸着することにより生じる当該感ガス体の電気抵抗値の変化に基づいてアルコール濃度を検出可能な、所謂半導体式アルコール濃度センサである。
【0061】
妨害ガスセンサ244は、検出空間200Bの妨害ガス濃度を検出可能に構成されたセンサである。妨害ガスセンサ245は、ECU100と電気的に接続されており、検出された妨害ガス濃度は、ECU100により適宜参照される構成となっている。
【0062】
尚、妨害ガスとは、結果としてアルコールセンサ243によるアルコール濃度の検出を妨害する作用を有するガスを意味し、本実施形態においては、主としてVOC(揮発性有機化合物)を指す。検出空間200B内に妨害ガスが充満している場合、アルコールセンサ243の感ガス体の電気抵抗値が、当該妨害ガスによって変化するため、運転者呼気中のアルコール濃度の検出精度が低下してしまうのである。
【0063】
ドアセンサ245は、車両10の運転席側のドアの開閉状態(本実施形態においては特に、ドアが開いているか閉まっているかの二値的状態)を検出可能に構成されたセンサである。ドアセンサ245は、ECU100と電気的に接続されており、検出された開閉状態は、ECU100により適宜参照される構成となっている。
【0064】
運転席荷重センサ246は、運転席の複数個所に埋め込まれ、当該埋め込み箇所に加わる荷重の値を検出可能に構成されたセンサである。運転席荷重センサ246は、ECU100と電気的に接続されており、検出された荷重の値は、主として飲酒運転防止制御の実行期間においてECU100により参照される構成となっている。尚、ECU100は、この複数個所における荷重値を予め設定された判別アルゴリズムに基づいて解析し、最終的に運転席に運転者が着座しているか否かを判別可能となっている。
【0065】
但し、運転席に運転者が着座しているか否かについては、先述した画像処理装置220が各種のパターン認識処理を実行することによって判別されてもよい。この場合、運転席荷重センサ246は、運転席に運転者に相当する荷重が加わっていることを検出するのみであってもよい。
【0066】
ユーザインターフェイス部300は、運転者と飲酒検出部200との間に介在するインターフェイスユニットであり、先述した撮像装置210のレンズ211、呼気入力部310、表示部320及び操作部330を備える。
【0067】
呼気入力部310は、飲酒運転防止制御の実行時において運転者が呼気を吹き込むための吹き込み口である。尚、呼気入力部310と飲酒検出部200に属する各部との位置関係については後述する。
【0068】
表示部320は、発光素子としてのLEDを備えたインジケータであり、運転者に対しLEDの点灯態様に応じた各種の情報を告知する装置である。表示部320は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によりLEDの発光状態が制御される構成となっている。
【0069】
次に、図2を参照し、ユーザインターフェイス部300の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ユーザインターフェイス部300の正面平面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
【0070】
図2において、ユーザインターフェイス部300は、ケース300Aを外郭体とし、ケース300A内に先述したレンズ211、呼気入力部310、表示部320及び操作部330が収容された構成を有する。
【0071】
ユーザインターフェイス部300において、レンズ211は、呼気入力部310に呼気を入力する者としての呼気入力者が、その呼気入力時において運転席に着座しているか否か(即ち、運転者であるか否か)を検知する。また着座体勢から不正無く呼気を入力しているか否かを、夫々先述した画像処理装置220により判定可能な程度に呼気入力者を撮像できるように、その光学系の仕様及び設置態様が決定されている。
【0072】
呼気入力部310は、図示するように、平面視格子状をなしており、格子が形成されない間隙部分において、車両の室内と後述する検出空間200B(図示奥行方向に伸長する空間である)とを連通させる構成となっている。
【0073】
飲酒運転防止制御において、呼気の入力を促された運転者は、この呼気入力部310の至近(より具体的には、画像処理装置220によって、正常な呼気入力が履行されていると判定され得る範囲内の位置)から呼気を吹き込む構成となっている。
【0074】
次に、図3を参照し、飲酒検出部200の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、飲酒検出部200の構成を概念的に表してなる概略側面断面図である。尚、同図において、図1及び図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。また、図3は、飲酒検出部200において、特に呼気入力部310と連通する前述した検出空間200Bの概略側面断面を表したものである。
【0075】
図3において、呼気入力部310及び検出空間200Bは、その外郭体が検出ボックス200Aによって規定される。検出ボックス200Aは、略円筒状の部材であり、空洞部分が、本発明に係る「空間」の一例たる検出空間200Bをなしている。
【0076】
検出ボックス200Aには、その長手方向一端部にインターフェイス部300の呼気入力部310が接続されており、呼気入力部310を介して運転者呼気が入力されると、入力された運転者呼気が検出空間200Bに導かれる構成となっている。
【0077】
上述した送風ファン230の翼車は、この検出空間200Bの入口近傍に設置されており、回転駆動されると、入力された運転者呼気を攪拌しつつ(図示破線軌跡参照)下流側に送出する構成となっている。このため、送風ファンの稼動期間において、検出空間200Bは略均一なガス状態に維持される。
【0078】
一方、センサ群240のうち、ドアセンサ245及び運転席荷重センサ246を除く4個のセンサ(即ち、温度センサ241、CO2センサ242、アルコールセンサ243及び妨害ガスセンサ244)は、検出用の端子の一部を検出空間200Bに露出させた状態で、検出ボックス200Aに固定されている。
【0079】
次に、エンジンシステム400について詳細に説明する。エンジンシステム400は、図1に示すようにエンジン410とセルモータ420を含んで構成される。
【0080】
エンジン410は、車両10の駆動輪に連結された車軸に対して駆動力を供給可能な、本発明に係る「動力源」の一例たるガソリンエンジンである。エンジン400は、燃料の燃焼に伴う熱エネルギを最終的にクランク軸等の各種機関出力軸の回転運動として取り出すことが可能な、所謂内燃機関の一例であるが、本発明に係る「動力源」の一例としての内燃機関において、燃料種別、気筒数、気筒配列、燃料の供給態様、吸排気系の構成及び動弁系の構成等を含む細部構成は何ら限定されない。また、本発明に係る「動力源」とは、このような内燃機関ではなく、例えば公知の各種態様を有するモータやモータジェネレータ等の各種回転電機であってもよい。この場合、本発明に係る車両とは、所謂EV(Electric Vehicle:電気自動車)であってもよい。或いは、本発明に係る車両は、各種内燃機関と各種回転電機とを備えた、所謂HV(Hybrid Vehicle)であってもよい。
【0081】
セルモータ420は、上述したエンジン410の機関出力軸に減速ギアを介してそのロータが連結されたDCモータである。セルモータ420の駆動回路は、ECU100と電気的に接続されており、セルモータ420は、ECU100の制御により当該機関出力軸に対し当該機関出力軸の回転を促す駆動力を付与可能である。セルモータ420は、主としてエンジン410の始動時におけるクランキングに供される所謂クランキングモータである。
【0082】
次に、空調制御手段について説明する。空調装置600は、冷房機能、暖房機能及び除湿機能等の各種空調機能を備え、車両10の室内の空調状態を調整可能な、本発明に係る「空調装置」の一例たる公知の車両用エアコンディショナ(所謂カーエアコン)である。空調装置600は、ECU100と電気的に接続されており、その稼動状態がECU100により上位に制御される構成となっている。尚、空調装置600の動作を制御するために必要となる車室内の空調情報(ここでは、車内温度とする)は、不図示の車内温度センサにより検出され、ECU100が適宜に参照する構成となっている。
【0083】
次に、始動制御手段について説明する。
【0084】
遠隔始動システム600は、車内アンテナ610、認証部620及び電子キー630を含む、エンジン410の遠隔始動を行うためのシステムである。
【0085】
車内アンテナ610は、車両10の車室内部に設置された、所定の周波数帯域を通信帯域として利用する微弱無線通信用のアンテナ装置である。車内アンテナ610は、車両10の車外空間から電子キー630を介して送信された、遠隔始動要求としての後述するキーIDを受信可能に構成されている。
【0086】
認証部620は、電子キー630から送信されるキーIDと、ECU100のROMに予め書き込まれたキーIDとの照合処理を実行する処理ユニットである。尚、係るキーIDの照合処理の結果は、ECU100に送信される構成となっている。
【0087】
電子キー630は、送信部632及びメモリ633を含んで構成され、可搬性を備えた遠隔始動操作用のキーユニットである。尚、電子キー630は、運転者に携帯され、主として車外空間において操作されることを前提としている。
【0088】
送信部632は、電子キー630の固体識別情報を意味するキーIDをメモリ633から取得し、遠隔始動要求として不図示のアンテナ部を介して送信する通信装置である。尚、送信部632の送信強度は、予め運転者周辺の他の電子機器の誤作動を招かないように規定されており、電子キー630と車内アンテナ610との通信可能距離も、実質的には所定範囲内に制限される。
【0089】
メモリ633は、キーIDを記憶した記憶装置である。
【0090】
<実施形態の動作>
次に、本実施形態の動作として、ECU100により実行される遠隔始動制御及び飲酒運転防止制御の詳細について説明する。
【0091】
始めに、図4を参照し、遠隔始動制御について説明する。ここに、図4は遠隔始動制御のフローチャートである。
【0092】
図4において、ECU100は、エンジン410が機関停止状態にあるか否かを判別する(ステップS101)。エンジン410が停止状態にない場合(ステップS101:NO)、即ち、エンジン410が既に稼動状態にある場合には、ステップS101が繰り返し実行され、処理は実質的に待機状態に制御される。
【0093】
エンジン410が機関停止状態にある場合(ステップS101:YES)、ECU100は、遠隔始動要求が有るか否かを判別する(ステップS102)。ここで、遠隔始動要求とは、先述した電子キー630を介してなされるエンジン410の始動要求であり、本実施形態においては、上述したキーIDを意味する。即ち、「遠隔始動要求が有るか否か」とは、実践的には、「キーIDが受信されたか否か」と等価な意味を有する。
【0094】
ステップS102において、ECU100は、車内アンテナ610を介してキーIDが受信されたか否かを判別し、キーIDが受信されない場合(ステップS102:NO)、処理をステップS101に戻す。
【0095】
遠隔始動要求としてのキーIDが受信されると(ステップS102:YES)、ECU100は、認証部620から、受信されたキーIDと、ROMに格納されたキーIDとの照合結果を取得し、これらが一致するか否かを判別する(ステップS103)。キーIDが一致しない場合(ステップS103)、処理はステップS101に戻される。
【0096】
キーIDが一致する場合(ステップS103:YES)、ECU100は、セルモータ420を制御してエンジン410のクランキングを開始すると共に、エンジン410に備わる燃料噴射用の電子制御インジェクタ及び点火装置を制御して、燃料の噴射制御及び点火制御を開始し、エンジン410を始動させる(ステップS104)。尚、ステップS104は、本発明に係る「遠隔始動要求に応じて車両の動力源を始動させる」旨の始動制御手段の動作の一例である。
【0097】
エンジン410が始動すると、ECU100は、更に空調装置500を始動させる(ステップS105)。尚、ステップS105は、本発明に係る「動力源の遠隔始動と同期して始動するように空調装置を制御する」旨の空調制御手段の動作の一例である。空調装置500が始動すると、処理はステップS101に戻される。遠隔始動制御はこのように実行される。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る遠隔始動制御によれば、電子キー630を利用した遠隔始動要求が生じた場合には、運転者が飲酒しているか否かに関係なくエンジン410の始動が許可される。また、エンジン始動に伴って確実に空調装置500が始動するため、前回のエンジン停止時に空調装置500がオフ状態とされていても、車両内を所望の空調状態に維持することが可能となる。
【0099】
尚、ステップS105において、エンジン410の始動に伴って既に空調装置500が始動している場合には、実質的に処理はスキップされてよい。また、ステップS105において、ECU100は、空調装置500を単に始動させるだけでなく、遠隔始動要求時の空調状態として最適化された空調状態を制御目標として特別に設定し、設定された制御目標に従って空調装置500を制御してもよい。
【0100】
次に、図5を参照し、飲酒運転防止制御の詳細について説明する。ここに、図5は、飲酒運転防止制御のフローチャートである。尚、飲酒運転防止制御は、エンジン410が機関停止状態にあるか、又は上記遠隔始動制御により遠隔始動状態にある場合に実行される制御である。
【0101】
図5において、ECU100は、ドアセンサ245により検出される運転席側ドアの開閉状態を参照し、運転席の開閉操作が生じたか否かを判別する(ステップS201)。より具体的には、ECU100は、運転席側ドアの開閉状態が、閉→開→閉の順で変化したか否かを判別する。運転席側度ドアの開閉操作が生じない間は、ステップS201が繰り返し実行され、処理は実質的に待機状態となる。
【0102】
運転席側ドアの開閉操作が生じると(ステップS201:YES)、ECU100は、運転席荷重センサ246のセンサ出力に基づいて、運転者が運転席に着座したか否かを判別する(ステップS202)。運転者着座が検出されない場合(ステップS202:NO)、ステップS202が繰り返し実行され、処理は実質的に待機状態となる。
【0103】
運転席への運転者の着座が検出されると(ステップS202:YES)、ECU100は、エンジン410が遠隔始動要求に応じた遠隔始動中であるか否かを判別する(ステップS203)。エンジン410が遠隔始動中である場合(ステップS203:YES)、ECU100は、エンジン410を強制的に停止させる(ステップS204)。本実施形態においては、燃料噴射装置を介した燃料の噴射が強制停止されることによりエンジン410の強制停止が実現される。尚、ステップS204の動作は、本発明に係る「停止制御手段」の動作の一例である。即ち、本実施形態では、本発明に係る「運転者の発進意図」として、少なくとも運転者の運転席への着座が検出される。
【0104】
エンジン410の強制停止措置が講じられるか、或いはステップS203においてエンジン410が遠隔始動中でない旨の判別が下された場合(ステップS203:NO)、ECU100は、エンジン410の始動を禁止する(ステップS205)。
【0105】
ここで、「エンジン410の始動を禁止する」とは、通常の始動操作(例えば、イグニッションキーを回す或いはスタートボタンを押下する等)に対する始動制御を行わないことや、上記始動操作そのものを物理的にロックすること等を意味する。
【0106】
ステップS205においてエンジン始動が禁止されると、ステップS206以降、運転者に対する飲酒検出処理が開始される。先ず、ECU100は、表示部320を点灯或いは点滅制御して、運転者に対し呼気入力部310への入力を促す(ステップS206)。
【0107】
一方、呼気入力部310への入力を促すと同時に、ECU100は、撮像装置210を制御して運転者の撮像を開始する(ステップS207)。運転者の撮像が開始されると、ECU100は更に、画像処理装置220を制御して、入力部310への入力者(尚、この段階で呼気吹き込みがなされている必要はない)が運転者であるかの認証処理を実行し、入力者が運転者であるか否かを判別する(ステップS208)。入力者が運転者である場合(ステップS208:YES)、ECU100は、呼気入力部への入力がなされたか否かを判別し(ステップS209)、入力がなされるまで処理を待機状態とする。尚、入力がなされたか否かは、各種センサ値の変化及び画像処理装置220によるパターン認識結果等に基づいて判別することができる。
【0108】
運転者による呼気入力部310への入力がなされた場合(ステップS209:YES)、ECU100は、呼気判定処理を実行する(ステップS210)。呼気判定処理とは、運転者による入力が、真に人間の呼気であるか否かを判定する処理である。即ち、ステップS208に係る、入力者が運転者であるか否かの判別処理に加え、入力者として認証された運転者が、不正な道具を使用して呼気以外のガスを呼気入力部310に入力していないかが判別される。
【0109】
具体的には、ステップS210において、ECU100は、温度センサ241により検出される温度及びCO2センサ242により検出される濃度に基づいて、呼気入力部310への入力が真に人間の呼気であるか否かを判別する。より具体的には、人間の呼気と判断され得る温度及びCO2濃度の基準値が、予めECU100のROMに格納されており、ECU100は、各センサ値とこれら各種基準値とを比較することによって総合的に当該判別を実行する構成となっている。尚、呼気判定処理の詳細な態様については、公知の各種態様を適用可能である。
【0110】
入力ガスが呼気である場合(ステップS211:YES)、即ち、検出空間200Bが運転者呼気で満たされている場合、ECU100は、アルコールセンサ243によって検出されたアルコール濃度Dalcを参照し(即ち、本発明に係る「アルコール濃度検出手段」の動作の一例である)、当該運転者呼気のアルコール濃度が予め設定された基準値未満であるか否かを判別する(ステップS212)。ここで、アルコール濃度Dalcとの比較判別に供される当該基準値は、その時点の法規上の基準値に対応付けられる形で設定されている。
【0111】
尚、ステップS212を実行するにあたり、ECU100は、妨害ガスセンサ244により検出される妨害ガス濃度が基準値未満であるか否かを併せて判別する。アルコールセンサ243は、半導体式アルコール濃度センサの性質上、気体の選択性に乏しく、VOC等の妨害ガスも、運転者呼気中のアルコール成分も、共に感ガス体の電気抵抗値の変化となって現れる。このため、妨害ガスが規定量以上存在する環境下では、運転者呼気のアルコール濃度判定に係る信頼性が低下してしまうのである。妨害ガス濃度が基準値以上である場合、妨害ガス濃度が基準値未満に低下するまでステップS212の実行は待機される。
【0112】
ステップS212において、運転者呼気のアルコール濃度Dalcが基準値未満である場合(ステップS212:YES)、ECU100は、飲酒が検出されなかったものとして、エンジン410の再始動を許可する(ステップS213)。
【0113】
尚、飲酒が検出されなかった旨は、表示部320の点灯制御或いは点滅制御によって運転者に即座に告知される。無論、この場合の表示部320の表示態様は、先の呼気入力部310への入力を促す際のものとは異なっていてよい。エンジン410の再始動が許可されると、飲酒運転防止制御は終了する。
【0114】
一方、呼気入力部310への入力者が運転者でないか(ステップS208:NO)、入力ガスが呼気でないか(ステップS211:NO)、或いは運転者呼気のアルコール濃度Dalcが基準値以上である場合(ステップS212:NO)、ECU100は、飲酒運転防止制御は終了する。
【0115】
尚、この場合、ステップS205に係るエンジン410の始動禁止措置が解除されることはなく、アルコールインターロックが発動した状態が維持される。即ち、ステップS208、S211及びS212に係る一連の動作は、本発明に係る「許可手段」の動作の一例である。
【0116】
尚、ステップS204においてエンジン410の強制停止が実行された場合、ECU100は、ステップS213において運転者の始動操作を待たずしてエンジン410を再始動させてもよい。このような措置は、従前の状態としてエンジン410が運転者の意思に基づいて遠隔始動していたことに鑑みれば、極めて合理的である。
【0117】
以上説明したように、本実施形態に係る飲酒運転防止制御によれば、遠隔始動要求に応じて始動したエンジン410は、運転者の運転席への着座に伴って少なくとも一時的に強制停止させられる。この強制停止措置は、運転者が飲酒状態でない旨が確定すれば迅速に解除されるが、運転者が飲酒状態でない旨を確定させ得ない状況(飲酒している場合に加え、運転者が何らかの不正を働いたとみなし得る場合を含む)においては、解除されない。従って、飲酒運転を確実に防止することができる。
【0118】
一方、遠隔始動制御によれば、運転者の運転席への着座以前においては、エンジン410の始動に何らの制限も与えられず、運転者が携帯する電子キー630に付帯された遠隔始動機能を利用してエンジン410を遠隔始動させた場合には、エンジン410は始動する。このため、その恒久的な動作維持にエンジン始動を必要とする空調装置500を、運転者着座以前に始動させることが可能となる。特に、本実施形態では、ECU100が、エンジン始動に伴い空調装置500を強制的に始動させる。
【0119】
言い換えれば、本実施形態によれば、運転者がエンジン410を遠隔始動させる旨の電子キー630の操作を行った時点から、運転者が運転席に着座した時点(本発明に係る「発進意図」の検出時点に相当する)までの時間的猶予を利用して、少なくとも何らの対策も講じられない場合と較べて、車両10の車室を運転者にとって快適な空間へと移行させることができる。従って、ECU100が飲酒運転防止制御における飲酒検出に係る一連の処理を実行している期間において、運転者が高温、低温、多湿或いは乾燥等の状況を我慢する度合いが少なくとも緩和され、理想的にはそのような我慢をする必要が生じない。
【0120】
即ち、本実施形態によれば、遠隔始動制御及び飲酒運転防止制御によって、電子キー630に付帯された遠隔始動機能と飲酒運転防止機能とを双方によってもたらされる利益を確保しつつ好適に協調させ、快適性を損ねることなく飲酒運転を確実に防止することが可能となるのである。
【0121】
尚、本実施形態では、運転者呼気のアルコール濃度を検出する手段としてのアルコールセンサ243が半導体式アルコール濃度センサであり、とりわけ車内温度(より具体的には、車内空間に連通する上述した検出空間200Bの温度)に対しその検出精度が影響されることも考えられる。従って、本実施形態に例示されたような飲酒検出以前の空調制御がなされない場合、上記ステップS206移行の飲酒検出処理に際して、アルコール濃度の検出精度が低下することも考えられる。その点、空調装置500により空調状態の制御がなされ得る本発明においては、この種の検出精度の低下を考慮する必要はなく、車両用制御システムとして本来の機能をより向上させ得る点においても本発明は実践上極めて有益である。
【0122】
尚、ステップ207及びステップ208は必ずしも必要な動作ではなく、ステップ206からステップ209に処理が移行したとしても、本実施形態に係る本質的な効能に変わりはない。
【0123】
尚、本実施形態では、本発明に係る意図検出手段の動作として、ドア開閉の検出及び着座の検出がなされるが、いずれか一方の検出をもって発進意図の検出としてもよい。また、本実施形態では、着座の検出が、運転席荷重センサ246のセンサ値に基づいてなされるが、このような運転席荷重センサ246に替えて或いは加えて、運転席側のシートベルトの装着状態を検出可能なセンサが備わっていてもよい。或いは、撮像装置210により撮像された運転席回りの画像に基づいて、運転者の運転席への着座が検出されてもよい。
【0124】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両用制御システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、例えば各種車両における飲酒運転防止に利用可能である。
【符号の説明】
【0126】
10…車両、100…ECU、200…飲酒検出部、200B…検出空間、210…撮像装置、220…画像処理装置、230…送風ファン、240…センサ群、241…温度センサ、242…CO2センサ、243…アルコールセンサ、244…妨害ガスセンサ、245…ドアセンサ、246…運転席センサ、300…ユーザインターフェイス部、310…呼気入力部、320…表示部、330…入力部、410…エンジン、420…セルモータ、500…空調装置、600…遠隔始動システム、610…車内アンテナ、620…認証部、630…電子キー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置を備える車両に搭載可能であって、
遠隔地からの遠隔始動要求に応じて前記車両の動力源を遠隔始動させる始動制御手段と、
前記動力源の遠隔始動と同期して始動するように前記空調装置を制御する空調制御手段と、
運転者の発進意図を検出可能な意図検出手段と、
前記発進意図が検出された場合に前記遠隔始動された動力源を停止させる停止制御手段と、
前記運転者の呼気中のアルコール濃度を検出可能なアルコール濃度検出手段と、
前記検出されたアルコール濃度に応じて前記動力源の再始動を許可する許可手段と
を備えることを特徴とする車両用制御システム。
【請求項2】
前記意図検出手段は、前記発進意図として前記運転者の運転席への着座を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御システム。
【請求項3】
前記意図検出手段は、運転席の荷重に基づいて前記運転席への着座を検出する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用制御システム。
【請求項4】
前記意図検出手段は、前記運転席におけるシートベルトの装着状態に基づいて前記運転席への着座を検出する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用制御システム。
【請求項5】
前記車両は、前記車両の室内を撮像する撮像手段を備え、
前記意図検出手段は、前記室内の撮像結果に基づいて前記運転席への着座を検出する
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の車両用制御システム。
【請求項6】
前記意図検出手段は、前記発進意図として前記車両のドアの開閉を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−240854(P2011−240854A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115801(P2010−115801)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】