説明

車両用収納装置

【課題】可動部材が移動する際のフィーリングを、別部材を追加することなく向上させることができる車両用収納装置の提供。
【解決手段】(a)固定部材20と、(b)固定部材20に対して開閉動可能な可動部材30と、(c)可動部材30を開方向または閉方向に付勢する付勢部材40と、(d)カムロック51とカムロック51に係脱可能なピン52を備えるロック装置50と、を有し、固定部材20または可動部材30は、可動部材30が付勢部材40の付勢力により固定部材20に対して移動するときにロック装置50に摺接して可動部材30の移動速度を調整する速度調整部60を備えている、車両用収納装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用収納装置1は、図8に示すように、固定部材2と、固定部材2に対して開閉動可能な可動部材3と、可動部材3を固定部材2に対して開方向に付勢する付勢部材4と、カムロック5aと該カムロック5aに係脱可能なピン5bを備えるロック装置5と、を有する。
可動部材3をプッシュすることでピン5bがカムロック5aを作動させ、ロック装置5のロック、ロック解除が行われる構造になっている。
【0003】
近年、「可動部材3の開時フィーリング向上」のために、可動部材3が開動する際に開ききる直前から開動速度を減速させる等、可動部材3の開動時間や開く際の動きそのものが製品に要求されている。かかる要求を満たすために、図9、図10に示すように、付勢部材4の付勢力よりも弱い力で可動部材3を閉方向に付勢するスプリング6等の別部材を、収納装置1に設けることも考えられる。
しかし、スプリング6等の別部材を設ける場合、別部材を設けた分だけ部品点数、組付工数が増加する。
【特許文献1】特開2003−341433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする問題点は、部品点数、組付工数が増加することである。
本発明の目的は、可動部材が移動する際のフィーリングを、別部材を追加することなく向上させることができる車両用収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) (a)固定部材と、
(b)前記固定部材に対して開閉動可能な可動部材と、
(c)前記可動部材を開方向または閉方向に付勢する付勢部材と、
(d)カムロックと該カムロックに係脱可能なピンを備えるロック装置と、
を有し、
前記固定部材または前記可動部材は、前記可動部材が前記付勢部材の付勢力により前記固定部材に対して移動するときに前記ロック装置に摺接して前記可動部材の移動速度を調整する速度調整部を備えている、車両用収納装置。
(2) 前記カムロックと前記ピンの一方は前記固定部材と前記可動部材の一方に回動可能に取付けられており、前記カムロックと前記ピンの他方は前記固定部材と前記可動部材の他方に固定されており、
前記速度調整部は、前記固定部材と前記可動部材の前記他方に設けられており、
前記速度調整部は、前記可動部材が前記固定部材に対して前記付勢部材の付勢力により移動するときに前記カムロックと前記ピンの前記一方に摺接する、(1)記載の車両用収納装置。
(3) 前記カムロックと前記ピンの一方は前記固定部材と前記可動部材の一方に回動可能に取付けられており、前記カムロックと前記ピンの他方は前記固定部材と前記可動部材の他方に固定されており、
前記速度調整部は、前記固定部材と前記可動部材の前記一方に弾性変形可能に設けられており、
前記速度調整部は、前記可動部材が前記固定部材に対して前記付勢部材の付勢力により移動するときに前記カムロックと前記ピンの前記他方に摺接する、(1)記載の車両用収納装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の車両用収納装置では、固定部材または可動部材がロック装置に摺接して可動部材の移動速度を調整する速度調整部を備えているため、可動部材の移動速度を調整するためにスプリング等の別部材は不要である。したがって、スプリング等の別部材を追加することなく、可動部材が移動する際のフィーリングを向上させることができる。
上記(2)の車両用収納装置では、速度調整部がカムロックとピンのうち固定部材と可動部材の一方に回動可能に取付けられる部材に摺接するため、速度調整部がロック装置に摺接するとき、ロック装置は速度調整部によって押されて回動する。そのため、速度調整部とロック装置が摺接しても速度調整部とロック装置にかかる負荷は小であり、速度調整部および/またはロック装置の破損、変形を防止できる。
上記(3)の車両用収納装置では、速度調整部が固定部材と可動部材の一方に弾性変形可能に設けられており、速度調整部がカムロックとピンのうち固定部材と可動部材の他方に固定される部材に摺接するため、速度調整部とロック装置が摺接するとき、速度調整部はロック装置によって押されて弾性変形する。そのため、速度調整部の復元力を調整する3ことで可動部材の移動速度を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図6は、本発明実施例の車両用収納装置を示しており、図7は、本発明実施例2の車両用収納装置を示している。
本発明実施例1と実施例2にわたって共通する部分には、本発明実施例1と実施例2にわたって同じ符号を付してある。
まず、本発明実施例1と実施例2にわたって共通する部分を、たとえば図1〜図3を参照して、説明する。
本発明実施例の車両用収納装置10は、たとえば、車両用カップホルダである。ただし、車両用収納装置10は、カップホルダ限定されるものではなく、たとえば、車両用灰皿装置、車両用小物入れ装置等であってもよい。
本発明実施例の車両用収納装置10は、固定部材20と、可動部材30と、付勢部材40と、カムロック51とピン52を備えるロック装置50と、を有する。
【0008】
固定部材20は、車両の図示略の内装部材に固定される。
可動部材30は、図1に示すように、固定部材20に回動開閉可能に支持される。ただし、可動部材30は固定部材20に開閉動可能に支持されていればよく、可動部材30の固定部材20に対する動きは回動に限定されるものではなく直線動であってもよい。
可動部材30は、固定部材20に対し、開位置と閉位置と閉位置から押し込まれた押し込み位置との間で回動可能である。可動部材30は、可動部材インナー30aと、可動部材アウター30bを、有する。
可動部材インナー30aは、本体部31と、本体部31から固定部材20側に延びるアーム部32を有する。
可動部材アウター30bは、可動部材30の見栄えをよくするために設けられる。
【0009】
付勢部材40は、可動部材30を固定部材20に対し、常時、開方向または閉方向に回動付勢する。以下、本発明実施例では、付勢部材40が可動部材30を常時開方向に回動付勢する場合を示す。
ロック装置50は、付勢部材40の付勢力に抗して、可動部材30を固定部材20に対し閉位置にロックする装置である。
ロック装置50は、カムロック51と、カムロック51に係脱可能なピン52と、を備える。
【0010】
カムロック51とピン52は、(i)カムロック51が固定部材20に回動可能に設けられピン52が可動部材30に固定して設けられていてもよく、(ii)カムロック51が固定部材20に固定されピン52が可動部材30に回動可能に設けられていてもよく、(iii)カムロック51が可動部材30に回動可能に設けられピン52が固定部材20に固定して設けられていてもよく、(iv)カムロック51が可動部材30に固定して設けられピン52が固定部材20に回動可能に設けられていてもよい(本発明図示例では、上記(i)の場合を示している)。以下、本発明実施例では、上記(i)の場合(カムロック51が固定部材20に回動可能に設けられピン52が可動部材30に固定して設けられる場合)を例にとって説明する。
【0011】
カムロック51は、ハートカムロックである。カムロック51は、固定部材20の側壁の外面にビス53で回動可能に取付けられる。カムロック51は、摩擦力を持って固定部材20に取付けられる。摩擦力は、ウェーブワッシャ、コイルスプリング、不織布等54でカムロック51を固定部材20に押し付けて発生させていてもよく、ビス53の締め付け力を高めることで発生させていてもよい。
カムロック51は、図3に示すように、外側カム部51aと内側カム部51bを備える。
外側カム部51aと内側カム部51bは、一体に形成されている。外側カム部51aの形状は、M字形(ほぼM字形を含む)である。外側カム部51aは肉厚一定とされていることが望ましい。
内側カム部51bは、外側カム部51aの内側に設けられる。内側カム部51bの形状は、ハート形状である。内側カム部51bと外側カム部51aとの間には、ピン52が通過する通路がある。
【0012】
ピン52は、図2に示すように、可動部材30のアーム部32の延び方向先端部またはその近傍に設けられている。ピン52は、アーム部32の内側面に設けられている。ピン52は、可動部材30と一体に形成されていてもよく、可動部材30と別体に形成されて可動部材30に固定されていてもよい。
【0013】
固定部材20または可動部材30は、可動部材30が付勢部材40の付勢力により固定部材20に対して開動するときにロック装置50に摺接して可動部材30の開動速度を調整(減速)する速度調整部60を備えている。速度調整部60による速度調整は、可動部材30の開動の全域にわたって行われていてもよく、可動部材30の開動の一部の領域でのみ行われていてもよい。
速度調整部60は、固定部材20と可動部材30のうち速度調整部60が設けられる部材と別体に形成されて該部材に固定して取付けられていてもよいが、部品点数削減のために、速度調整部60が設けられる部材に一体に形成されていることが望ましい。速度調整部60は、固定部材20と可動部材30のうち速度調整部60が設けられる部材に設けられるリブからなる。
【0014】
ここで、本発明実施例1と実施例2にわたって共通する作用を説明する。
本発明実施例では、固定部材20または可動部材30がロック装置50に摺接して可動部材30の開動速度を調整する速度調整部60を備えているため、可動部材30の開動速度を調整するためにスプリング等の別部材は不要である。したがって、スプリング等の別部材を追加することなく、可動部材30が開動する際のフィーリングを向上させることができる。
また、速度調整部60がロック装置50に「摺接」するため、速度調整部60がロック装置50に引っ掛かることを防止できる。
また、速度調整部60がロック装置50に「摺接」するため、速度調整部60がロック装置50に接触するときに発生する音を抑えることができる。
【0015】
次に、本発明各実施例に特有な部分を説明する。
[実施例1](図1〜図6)
本発明実施例1では、速度調整部60が可動部材30に設けられる場合を示している。
速度調整部60は、図2に示すように、可動部材30のアーム部32の延び方向中間部に設けられている。速度調整部60は、アーム部32の内側面に設けられている。速度調整部60は、可動部材30が固定部材20に対して開動したとき、可動部材30の回動軸芯まわりに固定部材20に対して回動する。速度調整部60は、可動部材30が固定部材20に対して開動するとき、外側カム部51aの外面に摺動接触可能とされている。速度調整部60は、外側カム部51aの外面の曲面部に摺接可能とされている。速度調整部60の形状は、外側カム部51aの外面との接触が滑らかになるように、曲線状(たとえば円弧状)とされている。速度調整部60は、曲線状に延びる長手方向中間部でのみ外側カム部51aに摺接する。速度調整部60は、外側カム部51aに摺接するときに外側カム部51aによって押されて変形することはない(変形しても無視できる程度である)。
速度調整部材60による可動部材30の開動速度調整(開動領域のどの領域でどの程度減速させるか)は、速度調整部材60の延び方向長さ、カムロック51と固定部材20との間の摩擦力、速度調整部材60によりカムロック51を押し込む量、のいずれか少なくとも一つで任意に設定できる。
【0016】
ここで、本発明実施例1に特有な作動・作用を説明する。
可動部材30が閉位置に在るとき、図3に示すように、ピン52はカムロック51に係合している。ピン52は、内側カム部51bのハート形状のくぼみに引っ掛かっている。
閉位置にある可動部材30を固定部材20に対して付勢部材40の付勢力に抗して押し込み位置側にプッシュすると、図4に示すように、ピン52が外側カム部51aの内面に摺接し、カムロック51が固定部材20に対してA方向に回転する。
可動部材30をプッシュしていた手を可動部材30から放すと、可動部材30が付勢部材40の付勢力により開方向に移動する。可動部材30が固定部材20に対して開方向にある程度回転したとき(本実施例では30度)、図5、図6に示すように、速度調整部材60が外側カム部51aの外面に摺接し、カムロック51が固定部材20に対し反A方向に回転させられる。カムロック51がA方向に回転したままだと再度可動部材30を固定部材20に対しプッシュしてもピン52がカムロック51に係合しない(ロック装置50のロックがかからない)という不具合が起こるのだが、速度調整部材60によりカムロック51が反A方向に回転させられるので、カムロック51をロック装置50が正常に作動する位置に戻すことができる。
【0017】
本発明実施例1では、速度調整部材60が外側カム部51aの外面に摺接するので、この「接触」によって、可動部材30は「開きにくく」なり、その結果、開動速度を減速させることができる。
速度調整部60が外側カム部51aに摺接するとき、カムロック51は速度調整部60によって押されて回動するため、速度調整部60とカムロック51が摺接しても速度調整部60とカムロック51にかかる負荷は小であり、速度調整部60および/またはカムロック51の破損、変形を防止できる。
【0018】
[実施例2](図7)
本発明実施例2では、速度調整部60が固定部材20に弾性変形可能に設けられる場合を示している。
速度調整部60は、固定部材20の外側面に設けられる。速度調整部60は、可動部材30が固定部材20に対して開動するとき、ピン52に摺動接触可能とされている。速度調整部60のピン52との接触面は、ピン52との接触が滑らかになるように、曲線状(たとえば円弧状)とされている。速度調整部60は、曲線状に延びる長手方向中間部でのみピン52に摺接する。速度調整部60は、ピン52に摺接するとき、ピン52によって押されて変形する。
速度調整部材60による可動部材30の開動速度調整(開動領域のどの領域でどの程度減速させるか)は、速度調整部材60の復元力、速度調整部材60の延び方向長さ、速度調整部材60がピン52によって変形する量、のいずれか少なくとも一つで任意に設定できる。
【0019】
本発明実施例2では、速度調整部材60がピン52に摺接するので、この「接触」によって、可動部材30は「開きにくく」なり、その結果、開動速度を減速させることができる。
また、速度調整部60がピン52によって押されて変形するため、速度調整部60の復元力を調整することで可動部材30の開動速度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施例1の車両用収納装置の分解斜視図である。
【図2】図1のB視図である。
【図3】本発明実施例1の、ピンがカムロックに係合しているときのロック装置の正面図である。
【図4】図3の状態から可動部材をプッシュしたときの、ロック装置の正面図である。
【図5】速度調整部がカムロックに接触し始めたときの、ロック装置の正面図である。
【図6】速度調整部がカムロックと摺接しているときの、ロック装置の正面図である。
【図7】本発明実施例2の車両用収納装置の、速度調整部とその近傍を示す部分拡大断面図である。
【図8】従来の車両用収納装置の分解斜視図である。
【図9】従来の車両用収納装置の、可動部材が閉位置にあるときの断面図である。
【図10】従来の車両用収納装置の、可動部材が開位置にあるときの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 車両用収納装置
20 固定部材
30 可動部材
30a 可動部材インナー
30b 可動部材アウター
31 本体部
32 アーム部
40 付勢部材
50 ロック装置
51 カムロック
51a 外側カム部
51b 内側カム部
52 ピン
60 速度調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)固定部材と、
(b)前記固定部材に対して開閉動可能な可動部材と、
(c)前記可動部材を開方向または閉方向に付勢する付勢部材と、
(d)カムロックと該カムロックに係脱可能なピンを備えるロック装置と、
を有し、
前記固定部材または前記可動部材は、前記可動部材が前記付勢部材の付勢力により前記固定部材に対して移動するときに前記ロック装置に摺接して前記可動部材の移動速度を調整する速度調整部を備えている、車両用収納装置。
【請求項2】
前記カムロックと前記ピンの一方は前記固定部材と前記可動部材の一方に回動可能に取付けられており、前記カムロックと前記ピンの他方は前記固定部材と前記可動部材の他方に固定されており、
前記速度調整部は、前記固定部材と前記可動部材の前記他方に設けられており、
前記速度調整部は、前記可動部材が前記固定部材に対して前記付勢部材の付勢力により移動するときに前記カムロックと前記ピンの前記一方に摺接する、請求項1記載の車両用収納装置。
【請求項3】
前記カムロックと前記ピンの一方は前記固定部材と前記可動部材の一方に回動可能に取付けられており、前記カムロックと前記ピンの他方は前記固定部材と前記可動部材の他方に固定されており、
前記速度調整部は、前記固定部材と前記可動部材の前記一方に弾性変形可能に設けられており、
前記速度調整部は、前記可動部材が前記固定部材に対して前記付勢部材の付勢力により移動するときに前記カムロックと前記ピンの前記他方に摺接する、請求項1記載の車両用収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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