説明

車両用収納装置

【課題】一つの付勢部材を用いて、手動で蓋体を閉じる方向へ移動させる際の操作性の向上と誤作動によるロック解除の防止とを両立させる。
【解決手段】付勢力の小さな第1トーションスプリングと付勢力の大きな第2トーションスプリングとを一体にした付勢部材を用い、閉状態からさらに蓋体を収納容器に向かう方向の加速度が作用したときに付勢力発現手段が作動して、第2トーションスプリングにのみ付勢力が蓄えられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンソールボックス、カップホルダなどの車両用収納装置に関し、詳しくはプッシュロックオープン機構により蓋体を開閉する車両用収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車室内には、コンソールボックス、カップホルダなど各種の収納装置が設けられている。これらの収納装置には一般に蓋体が設けられ、不使用時の外観品質の向上と、内容物の飛び出し防止が図られている。また蓋体を開く際にはスプリングの付勢力を用いる場合が多く、蓋体が収納容器の開口を閉じた閉位置から蓋体の一端部を収納容器へ近接させる動きで蓋体の移動をロックして閉状態とするとともに、閉状態において蓋体の一端部を収納容器へ近接させる動きでロックを解除するプッシュロックオープン機構が用いられることも多い。
【0003】
スプリングの付勢力で蓋体を開く収納装置では、蓋体を閉じる方向へ移動させる際にスプリングに付勢力が蓄えられ、プッシュロックオープン機構で蓋体がロックされた閉状態でスプリングの付勢力が最大となっている。したがって走行時の振動による加速度などによって誤って蓋体が開くことがないようにするには、スプリングに蓄えられる付勢力を大きくし、閉状態において蓋体の一端部を開口に向かって押圧する動きへの抵抗を大きくすればよい。
【0004】
しかしながらスプリングに蓄えられる付勢力を大きくすると、手動で蓋体を閉じる方向へ移動させる際の抵抗も大きくなるために、操作感が悪くなってしまう。そこで従来は、開口を開く方向へ蓋体を移動させるスプリングとは別に、閉状態において蓋体の一端部を開口に向かって押圧する動きへの抵抗となる第2のスプリングを配置することが行われている。
【0005】
例えば特開平11−245733号公報には、開口を開く方向へ蓋体を移動させる第1スプリング6と、板バネからなる第2スプリング14とを用いた収納装置が記載されている。また特許第4200166号公報には、開口を開く方向へ蓋体を移動させる第1スプリング4と、板バネからなる第2スプリング61とを用いた収納装置が記載されている。
【0006】
これらの収納装置によれば、第1スプリングの付勢力を小さくすることで蓋体を閉じる方向へ移動させる際の操作性を向上させ、かつ第2スプリングの付勢力を適切な大きさとすることで、走行時の振動による加速度などによって誤って蓋体が開くのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−245733号公報
【特許文献2】特許第4200166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが上記した特許文献に記載された技術では、二つのスプリングを用いているため、部品点数が多いという問題がある。また板バネはトーションスプリングなどに比べて高価であるので、結果的に収納装置が高価となるという問題もあった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、一つの付勢部材を用いるだけで、手動で蓋体を閉じる方向へ移動させる際の操作性の向上と誤作動によるロック解除の防止とを両立させることを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の収納装置の特徴は、収納容器と、収納容器の開口を開閉する蓋体と、開口を開く方向へ蓋体を付勢する付勢部材と、蓋体が開口を閉じた閉位置から蓋体の一端部を収納容器へ近接させる動きで蓋体の移動をロックして閉状態とするとともに閉状態において蓋体の一端部を収納容器へ近接させる動きでロックを解除するプッシュロックオープン装置と、を備えた車両用収納装置であって、
付勢部材は、収納容器の使用時に蓋体が開口を開く方向へ付勢して蓋体を開状態とする主付勢部と、主付勢部と一体に形成され蓄えられる付勢力が主付勢部に蓄えられる付勢力より大きな副付勢部とを備え、
収納容器側には、蓋体のロックを解除する動きによって副付勢部に付勢力を発現させる付勢力発現手段が形成されていることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の収納装置によれば、蓋体がプッシュロックオープン装置によってロックされた閉状態にあるときに、走行時の振動などによって蓋体の一端部が収納容器へ近接する方向の加速度が作用すると、付勢力発現手段が作動して副付勢部に付勢力が発現する。この付勢力は主付勢部に蓄えられる付勢力より大きく、所定の付勢力に設定しておくことで誤作動によって蓋体が開くのを防止することができる。
【0012】
また収納容器を使用するために、閉状態から蓋体の一端部を収納容器へ近接するように、かつ副付勢部に発現する付勢力に抗して押圧することで、プッシュロックオープン装置によるロックが解除され蓋体は主付勢部に蓄えられている付勢力によって移動して収納容器の開口を開く。このとき副付勢部は機能しない。
【0013】
開状態から蓋体を閉じる方向へ移動させるときは、主付勢部の付勢力に抗して手動で蓋体を移動させる。このとき主付勢部に付勢力が蓄えられるがその付勢力を小さく設定しておくことで、小さな力で移動させることができ操作性に優れている。そして蓋体が開口を閉じた閉位置で蓋体の一端部を収納容器へ近接するようにさらに押圧することで付勢力発現手段が作動し、副付勢部に付勢力が発現する。操作者には主付勢部の付勢力による抵抗に代わって副付勢部の付勢力による抵抗が感じられ、それに抗して押圧した後に押圧を解除することでプッシュロックオープン装置によって蓋体の移動がロックされる。したがって操作者は抵抗力の変化によってプッシュロックオープン装置の作動を間接的に知覚することができ、確実にロックすることができる。
【0014】
そして主付勢部と副付勢部を一体に有する付勢部材を用いているので、部品点数の増大を回避することができ、安価な収納装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係るカップホルダを備えたコンソールを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るカップホルダの分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係るカップホルダに用いたフロント側ユニットの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係るカップホルダに用いたリア側ユニットの分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施例に係るカップホルダの閉状態におけるフロント側ユニットの概略正面図である。
【図6】本発明の一実施例に係るカップホルダの開状態におけるフロント側ユニットの概略正面図である。
【図7】本発明の一実施例に係るカップホルダの閉状態におけるリア側ユニットの概略正面図である。
【図8】本発明の一実施例に係るカップホルダの開状態におけるリア側ユニットの概略正面図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係るカップホルダの閉状態におけるリア側ユニットの概略正面図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係るカップホルダの開状態におけるリア側ユニットの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の収納装置は、収納容器と、蓋体と、付勢部材と、プッシュロックオープン装置とを備えている。収納容器は、カップホルダ、コンソールボックス、小物入れ、灰皿、グラブボックスなど、物を出し入れするための開口をもつものが例示される。
【0017】
蓋体は、収納容器の開口を開閉するものであり、一般には収納容器に揺動可能に保持されている。またプッシュロックオープン装置は、蓋体が開口を閉じた閉位置から蓋体の一端部を収納容器へ近接させる動きで蓋体の移動をロックして閉状態とするとともに閉状態において蓋体の一端部を収納容器へ近接させる動きでロックを解除するものであり、ハートカム装置など公知のものを用いることができる。
【0018】
本発明の特色をなす付勢部材は、開口を開く方向へ蓋体を付勢するものであり、主付勢部と副付勢部とが一体に形成されている。この付勢部材はトーションスプリング、コイルスプリング、板バネなどから形成することができる。製作が容易であることから、トーションスプリングから形成することが望ましく、1本のバネ線材から主付勢部と副付勢部を一体に形成することが望ましい。
【0019】
主付勢部は、収納容器の使用時に開口を開く方向へ蓋体を付勢して開状態とする。すなわち手動で蓋体を閉じる際に主付勢部に付勢力が蓄えられるので、操作感を良好とするには、主付勢部に蓄えられる付勢力は小さいほど好ましい。それに対し、副付勢部に蓄えられる付勢力は主付勢部に蓄えられる付勢力より大きくなるように構成される。副付勢部に蓄えられる付勢力が所望の値より小さいと、走行時の振動による加速度などによってロックが解除され誤作動によって蓋体が開いてしまう恐れがあるからである。
【0020】
副付勢部には、蓋体が開口を閉じた閉位置から蓋体の一端部を収納容器へ近接させる方向への移動時にのみ付勢力が発現することが好ましい。そこで本発明の収納装置には、蓋体のロックを解除する動きによって副付勢部に付勢力を発現させる付勢力発現手段が形成されている。付勢力発現手段が作動することで、蓋体の閉状態からロックを解除する際にのみ副付勢部に付勢力が発現し、蓋体が開口を開く移動時には副付勢部は作動に寄与しないようにすることができる。
【0021】
例えば、主付勢部を構成する第1トーションスプリングと、副付勢部を構成する第2トーションスプリングとから付勢部材を構成する場合、第1トーションスプリングの一端が第2トーションスプリングの一端に連続した連続部を形成する。第1トーションスプリングの他端を収納容器あるいは収納容器に固定される部材など固定された部位に係止し、第2トーションスプリングの他端を蓋体あるいは蓋体とともに駆動されるリンク機構など可動部位に係止しておく。そして付勢力発現手段として収納容器の側壁あるいは収納容器に固定される部材に凸部を形成し、閉状態で連続部が凸部に当接するようにしておく。
【0022】
このようにしておけば、連続部が凸部に当接しない間は、第1トーションスプリングの付勢力が蓋体に作用し、あるいは手動で蓋体を移動させるときの力が第1トーションスプリングに作用する。そして連続部が凸部に当接した後は、第2トーションスプリングの一端が凸部に係止されているので、蓋体が収納容器に近接する方向にさらに移動することによって第2トーションスプリングに付勢力が発現する。すなわち、第2トーションスプリングの一端(連続部)が不動の凸部に係止されているので、可動部位に係止された第2トーションスプリングの他端のみが可動部位と共に移動し、これによって第2トーションスプリングに付勢力が発現する。なお第1トーションスプリングは、蓋体を開くための付勢力が蓄えられた状態で凸部によって係止された状態となっている。
【0023】
蓋体のロックが解除された後は、蓋体の開く方向の移動に伴って第2トーションスプリングに蓄えられた付勢力が消滅し、第1トーションスプリングに蓄えられた付勢力のみで蓋体が移動して開口を開く。
【0024】
以下、実施例によって本発明の実施態様を、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
本実施例は、図1に示すコンソール付けのカップホルダに本発明を適用している。本実施例に係るカップホルダは、図2に示すように、収納容器1と、蓋体2と、フロント側ユニット3と、リア側ユニット4とから構成されている。
【0026】
収納容器1は従来と同様の形状をなし、上面に開口10をもつ単純なボックス形状に形成されている。フロント側の側壁にはフロント側シャフト11が前方へ向かって突出形成され、リア側の側壁にはリア側シャフト12が後方へ向かって突出形成されている。またフロント側の側壁の上端部には、一対のフロント側係合爪13が互いに所定の間隔を隔てて形成され、リア側の側壁の上端部には、一対のリア側係合爪14が互いに所定の間隔を隔てて形成されている。リア側係合爪14の近傍には、ピン15が外側へ突出している。
【0027】
蓋体2はプッシュロックオープン機構で収納容器1の開口10を開閉する。この蓋体2は、粉末強化ポリアミド樹脂から形成されたインナ20と、表面に加飾層をもつアッパ21とからなる。インナ20とアッパ21とは、図示しない爪嵌合によって一体に結合されている。アッパ21にはノブ22が形成され、ノブ22によって、カップホルダ使用時に蓋体2を開く際に乗員が指で押す位置が明示されている。
【0028】
蓋体2の開閉時に収納容器1内へ入り込む側のインナ20の端部には、櫛歯状の複数の突起23が形成され、開閉時には突起23が収納容器1に形成された複数の櫛歯状の凹凸条16と係合する。これによりカードやコインなどが収納容器1内部へ落下するのが防止されている。またインナ20のフロント側端部24及びリア側端部25には、突起23に近接した端部にそれぞれ一対のカバー取付部26が形成されている。
【0029】
フロント側ユニット3は、図3に詳細を示すように、フロント側カバー30と、フロント側第1アーム31(連結腕部)と、フロント側第2アーム32(揺動腕部)と、コイルスプリング33とからなる。
【0030】
フロント側カバー30は略ボックス形状をなし、その上側壁には、収納容器1に形成された一対のフロント側係合爪13と係合可能な一対の係合孔301が形成されている。またフロント側カバー30の底壁には、上下方向に円弧状に延びる長孔302と、上下方向に円弧状に延びるラック歯部303と、分割筒状の筒部304が形成されている。
【0031】
フロント側第1アーム31は、フロント側カバー30に形成された筒部304が挿通される貫通孔310(第1の揺動軸)が一端に形成され、他端には軸部311(第2の揺動軸)が貫通孔310の軸方向と平行に突出している。
【0032】
フロント側第2アーム32は板状の先端部320と、先端部320の後端で先端部320に対して直角に突出する固定部321とからなる。先端部320の先端には、ラック歯部303と歯合可能なピニオン歯部322が形成され、その後方には貫通孔323が形成されている。また固定部321にはインナ20のフロント側端部24に形成された一対の取付部26に結合される一対のフロント側ボス324が形成されている。
【0033】
フロント側第1アーム31の軸部311は、フロント側第2アーム32の貫通孔323を貫通して長孔302に係合される。そしてコイルスプリング33は、一端がフロント側カバー30に形成された突起305に係止され、他端がフロント側第1アーム31の軸部311に係止される。
【0034】
このフロント側ユニット3を組み立てるには、先ずフロント側第1アーム31の軸部311をフロント側第2アーム32の貫通孔323に挿通し、貫通孔323から突出した軸部311にコイルスプリング33の一端部を係止する。そしてフロント側第2アーム32とコイルスプリング33が挿通された軸部311の先端を長孔302に係合させながら、コイルスプリング33の他端部を突起305に係止するとともに、筒部304をフロント側第1アーム31の貫通孔310に挿入する。このときフロント側第2アーム32のピニオン歯部322をラック歯部303と係合させ、固定部321が略水平になるようにしておく。
【0035】
リア側ユニット4は、図4に詳細を示すように、リア側カバー40と、リア側第1アーム41(連結腕部)と、リア側第2アーム42(揺動腕部)と、付勢部材43と、ピン部材45と、ダンパ46とからなる。
【0036】
リア側カバー40は略ボックス形状をなし、その上側壁には、収納容器1に形成された一対のリア側係合爪14と係合可能な一対の係合孔401が形成されている。またリア側カバー40の底壁には、フロント側ユニット3と同様の、上下方向に円弧状に延びるラック歯部403(図7参照)と、分割筒状の筒部404(図7参照)が形成され、さらにピン部材45が揺動可能に保持される取付孔405とダンパ46が固定されるダンパ取付孔406と、円柱状の突起407(図7参照)と、ピン孔409とが形成されている。また筒部404の近傍には、断面台形状の凸部47(図7参照)が形成されている。
【0037】
リア側第1アーム41は、リア側カバー40に形成された筒部404(図7参照)が挿通される貫通孔410(第1の揺動軸)が一端に形成され、他端には軸部411(第2の揺動軸)が貫通孔410の軸方向と平行に突出している。また一端にはダンパ46と歯合する歯部412が形成されている。
【0038】
リア側第2アーム42は板状の先端部420と、先端部420の後端で先端部420に対して直角に突出する固定部421と、先端部420の後端に形成されたカム部422とからなる。先端部420の先端には、ラック歯部403(図7参照)と歯合可能なピニオン歯部423が形成され、その後方には貫通孔424が形成されている。また固定部421にはインナ20のリア側端部25に形成された一対の取付部26に結合される一対のリア側ボス425が形成されている。カム部422には公知のハートカム装置が形成されている。
【0039】
付勢部材43は、巻回部が大径の第1トーションスプリング431と、巻回部が小径の第2トーションスプリング432とを備え、第1トーションスプリング431は、蓄えられる付勢力が小さいように設計されている。また第2トーションスプリング432は第1トーションスプリング431より蓄えられる付勢力が大きい。第1トーションスプリング431の一端は、直線状の連続部433を介して第2トーションスプリング432の一端に連続している。第1トーションスプリング431は筒部404に介装され、その他端はリア側カバー40に形成された突起407(図7参照)に係止されている。第2トーションスプリング432の他端はリア側第1アーム41に係止されている。
【0040】
リア側第1アーム41の軸部411は、リア側第2アーム42の貫通孔424に挿通される。またリア側カバー40の内側表面には、断面台形状の凸部47(図8参照)が形成されている。
【0041】
このリア側ユニット4を組み立てるには、先ずピン部材45と、ダンパ46とを、取付孔405と、ダンパ取付孔406とにそれぞれ取り付ける。ピン部材45は、ロックピン450をもつ下端が上端を中心に揺動自在に取付けられている。次に第1トーションスプリング431をリア側カバー40の筒部404に外嵌する。次いでリア側第1アーム41の軸部411をリア側第2アーム42の貫通孔424に挿通し、貫通孔410に筒部404を挿入する。そして第2トーションスプリング432の他端をリア側第1アーム41に係止し、リア側第2アーム42のピニオン歯部423をラック歯部403(図7参照)と歯合させるとともに、リア側第1アーム41の歯部412をダンパ46と係合させる。このとき、固定部421が略水平になるようにしておく。
【0042】
上記のように組み立てられたフロント側ユニット3は、収納容器1のフロント側の端部に配置され、フロント側シャフト11をフロント側第1アーム31の貫通孔310に挿入されている筒部304に挿入するとともに、一対の係合孔301に一対のフロント側係合爪13を係合させることで、フロント側ユニット3を収納容器1に固定する。
【0043】
またリア側ユニット4は、収納容器1のリア側の端部に配置され、リア側シャフト12をリア側第1アーム41の貫通孔410に挿入されている筒部404に挿入するとともに、ピン15をピン孔409に挿入して位置決めし、一対の係合孔401に一対のリア側係合爪14を係合させることで、リア側ユニット4を収納容器1に固定する。
【0044】
次いで蓋体2のインナ20を収納容器1の開口10に配置し、フロント側端部24及びリア側端部25にそれぞれ形成された一対の取付部26を一対のフロント側ボス324と一対のリア側ボス425にそれぞれ重ね、インナ20の上方から図示しないビスを用いて一体に固定する。その後、アッパ21をインナ20に図示されない爪嵌合にて固定する。このとき、ピン部材45から突出するロックピン450がカム部422のハートカムに係合し、ピン部材45とカム部422とでプッシュロックオープン装置が構成されている。
【0045】
以下、上記のように形成された本実施例のカップホルダの作動機構を説明する。
【0046】
収納容器1のフロント側の端部側から見た閉状態におけるフロント側ユニット3の正面図を図5に、収納容器1のリア側の端部側から見た閉状態におけるリア側ユニット4の正面図を図7に示す。この状態ではフロント側ユニット3の固定部321とリア側ユニット4の固定部421は共に略水平状態であり、蓋体2も略水平となって収納容器1の開口10を閉じている。この状態では、第1トーションスプリング431には、リア側第1アーム41の軸部411側端部をリア側シャフト12を回動中心として下方へ回動させる付勢力が蓄えられている。一方、コイルスプリング33には付勢力が発生していない。この閉位置では、連続部433が凸部47に下側から当接している。
【0047】
カップホルダとして使用する際には、図5及び図7に矢印で示すように、乗員が蓋体2のノブ22を手指で押圧する。すると蓋体2の先端が下方へ回動し、ロックピン450がカム部422のハートカムから外れる。このとき蓋体2の回動に伴ってリア側第1アーム41は軸部411側端部が上方へ回動し、第2トーションスプリング432がリア側第1アーム41によって上方へ向かって押圧されるため、その付勢力による適度な抵抗が乗員に伝えられる。
【0048】
閉位置では、第1トーションスプリング431は両端が係止状態であり、その巻回部の内周表面が筒部404の外周表面に当接しているため、ノブ22を押圧しても第1トーションスプリング431がさらに巻回されることはない。一方、第2トーションスプリング432は一端(連続部433)が凸部47に当接して係止されているが、他端はリア側第1アーム41に係止されている。したがって蓋体2の移動に伴ってリア側第1アーム41は図の反時計回りに回動し、第2トーションスプリング432には付勢力が発現する。
【0049】
乗員が蓋体2の押圧を解除すると、第1トーションスプリング431の付勢力によってリア側第1アーム41は、リア側シャフト12を回動中心として軸部411側端部が下方へ向かうように回動する。その動きは蓋体2を介してフロント側第1アーム31に伝達され、フロント側第1アーム31は軸部311側端部が下方へ向かうように回動する。これらの回動に伴って、リア側第2アーム42とフロント側第2アーム32は軸部311と軸部411を回動中心とし、ピニオン歯部423とラック歯部403とが歯合しながら、またピニオン歯部322とラック歯部303とが歯合しながら回動する。
【0050】
リア側第1アーム41とフロント側第1アーム31とが30°回動する間に、リア側第2アーム42とフロント側第2アーム32とは90°回動し、蓋体2は先端が収納容器1に対して倒れ込むように回動して、図6及び図8に示すように収納容器1の開口10を開く。またこの回動に伴って、リア側第1アーム41の歯部412によってダンパ46が駆動されるとともにコイルスプリング33には付勢力が蓄えられ、両者のダンパ効果によって蓋体2は緩やかに回動するとともに、開度が大きくなるにつれて回動速度が小さくなる。
【0051】
蓋体2を開状態から閉状態とするには、乗員は手指で蓋体2を閉方向へ回動させる。この際に第1トーションスプリング431には付勢力が蓄えられるが、その付勢力は小さく、しかもコイルスプリング33による付勢の援助によって小さな力で回動させることができる。そして蓋体2が略水平状態となってからさらに蓋体2の先端を収納容器1に向かって押圧することで、ロックピン450がカム部422のハートカムと係合して蓋体2がロックされる。
【0052】
このとき、連続部433が凸部47に下側から当接し、第2トーションスプリング432には大きな付勢力が発現する。したがって乗員には、第1トーションスプリング431の付勢による抵抗から第2トーションスプリング432の付勢による抵抗に変化したことが知覚されるので、プッシュロックオープン装置が作動したことを間接的に認知することができロックを確実に行うことができる。
【0053】
そしてこの閉状態では、走行時の振動による加速度などが作用しても、その押力は第2トーションスプリング432に蓄えられる付勢力には及ばず、蓋体2が収納容器1へ向かって移動するのが防止されている。したがってプッシュロックオープン装置によるロックが誤って解除されるような不具合がなく、誤作動によって蓋体2が開くことがない。
【0054】
すなわち本実施例の収納装置によれば、一つの付勢部材43を用いるだけで、手動で蓋体2を閉じる方向へ移動させる際の操作性の向上と誤作動によるロック解除の防止とを両立させることができ、安価とすることができる。
【実施例2】
【0055】
本実施例の収納装置は、蓋体の開閉の動きを一軸のアーム装置で行う場合に本発明を適用したものである。図9に図7相当の正面図を示す。この収納装置は大部分が実施例1と同様であるので、実施例1と同様の部分を引用する際は実施例1と同じ符号を付け、異なる部分については新しい符号を付けて説明する。
【0056】
収納容器1から突出するフロント側シャフト11及びリア側シャフト12は、実施例1より中央部寄りに形成されている。
【0057】
リア側ユニット5は、リア側カバー50と、リア側アーム51と、付勢部材52と、からなる。リア側カバー50の底壁には、略中央部に分割筒状の筒部501が突出形成され、筒部501の近傍には断面台形状の凸部53が形成されている。またプッシュロックオープン装置、ダンパ装置などは図示されないフロント側カバーに形成されている。
【0058】
リア側アーム51は、板状の先端部510及び後端部511と、後端部511から直角に突出する固定部512と、からなる。先端部510には筒部501が挿通される貫通孔513が形成され、固定部512は蓋体2の一端部に固定されている。貫通孔513には筒部501が挿通され、筒部501にはリア側シャフト12が挿通されている。
【0059】
付勢部材52は、実施例1と同様に巻回部が大径の第1トーションスプリング521と、巻回部が小径の第2トーションスプリング522とを備え、第1トーションスプリング521は、蓄えられる付勢力が小さいように設計されている。また第2トーションスプリング522は第1トーションスプリング521より蓄えられる付勢力が大きい。第1トーションスプリング521の一端は、直線状の連続部523を介して第2トーションスプリング522の一端に連続している。第1トーションスプリング521は筒部501に介装され、その他端はリア側カバー50に形成された突起502に係止されている。第2トーションスプリング522の他端はリア側アーム51の後端部511に係止されている。
【0060】
図9に示す閉状態では、リア側ユニット5の固定部512は略水平状態であり、蓋体2も略水平となって収納容器1の開口10を閉じている。この状態では、第1トーションスプリング521には、リア側アーム51の後端部511をリア側シャフト12を回動中心として図の時計回り方向へ回動させる付勢力が蓄えられている。この閉位置では、連続部523が凸部53に下側から当接している。また第1トーションスプリング521の巻回部の内周面は、蓄えられた付勢力によって筒部501の外周表面に当接している。
【0061】
すなわち閉状態では、第1トーションスプリング521は両端が係止状態であり、その巻回部の内周表面が筒部501の外周表面に当接しているため、ノブ22を押圧しても第1トーションスプリング521がさらに巻回されることはない。一方、第2トーションスプリング522は一端(連続部523)が凸部53に当接して係止され、他端はリア側アーム51に係止されている。
【0062】
カップホルダとして使用する際には、図9に矢印で示すように、乗員が第2トーションスプリング522の付勢力に抗して蓋体2のノブ22を手指で押圧する。すると蓋体2の先端が下方へ回動し、図示しないロックピンがハートカムから外れる。このとき蓋体2の回動に伴って、リア側アーム51がリア側シャフト12を回動中心として図の反時計回りに回動し、リア側アーム51の後端部511に係止された第2トーションスプリング522の他端が上方へ持ち上げられるため、第2トーションスプリング522には付勢力が発現する。その付勢力による適度な抵抗が乗員に伝えられる。
【0063】
乗員が蓋体2の押圧を解除すると、第1トーションスプリング521の付勢力によってリア側アーム51は、リア側シャフト12を回動中心として図9の時計回り方向に回動し、図10に示すように蓋体2が収納容器1の開口10を開く。
【0064】
蓋体2を開状態から閉状態とするには、乗員は手指で蓋体2を閉方向へ回動させる。この際に第1トーションスプリング521には付勢力が蓄えられるが、その付勢力は小さいので小さな力で回動させることができる。そして蓋体2が略水平状態となってからさらに蓋体2の先端を収納容器1に向かって押圧することで、ロックピンがハートカムと係合して蓋体2がロックされる。
【0065】
このとき、連続部523が凸部53に下側から当接し、第2トーションスプリング522に付勢力が発現する。したがって乗員には、第1トーションスプリング521の付勢による抵抗から第2トーションスプリング522の付勢による抵抗に変化したことが知覚されるので、プッシュロックオープン装置が作動したことを間接的に認知することができロックを確実に行うことができる。
【0066】
そしてこの閉状態では、走行時の振動による加速度などが作用しても、その押力は第2トーションスプリング522に蓄えられる付勢力には及ばず、蓋体2が収納容器1へ向かって移動するのが防止されている。したがってプッシュロックオープン装置によるロックが誤って解除されるような不具合がなく、誤作動によって蓋体2が開くことがない。
【0067】
すなわち本実施例の収納装置によれば、一つの付勢部材52を用いるだけで、手動で蓋体2を閉じる方向へ移動させる際の操作性の向上と誤作動によるロック解除の防止とを両立させることができ、安価とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の収納装置は、カップホルダばかりでなく、小物入れ、灰皿装置などとして利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1:収納容器
2:蓋体
3:フロント側ユニット
4:リア側ユニット
30:フロント側カバー 40,50:リア側カバー
31:フロント側第1アーム(連結腕部)
41:リア側第1アーム(連結腕部)
32:フロント側第2アーム(揺動腕部)
42:リア側第2アーム(揺動腕部)
310,410:貫通孔(第1の揺動軸) 311,411:軸部311(第2の揺動軸)
303,403:ラック歯部(ラック) 322,423:ピニオン歯部(ピニオン部)
43,52:付勢部材
431,521:第1トーションスプリング(主付勢部)
432,522:第2トーションスプリング(副付勢部)
433,523:連続部
47,53:凸部(付勢力発現手段)
45:ピン部材(プッシュロックオープン装置)
422:カム部(プッシュロックオープン装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器と、該収納容器の開口を開閉する蓋体と、該開口を開く方向へ該蓋体を付勢する付勢部材と、該蓋体が該開口を閉じた閉位置から該蓋体の一端部を該収納容器へ近接させる動きで該蓋体の移動をロックして閉状態とするとともに該閉状態において該蓋体の該一端部を該収納容器へ近接させる動きでロックを解除するプッシュロックオープン装置と、を備えた車両用収納装置であって、
該付勢部材は、該収納容器の使用時に該蓋体が該開口を開く方向へ付勢して該蓋体を開状態とする主付勢部と、該主付勢部と一体に形成され蓄えられる付勢力が該主付勢部に蓄えられる付勢力より大きな副付勢部とを備え、
該収納容器側には、該蓋体のロックを解除する動きによって該副付勢部に付勢力を発現させる付勢力発現手段が形成されていることを特徴とする車両用収納装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記主付勢部を構成する第1トーションスプリングと、前記副付勢部を構成する第2トーションスプリングとからなり、該第1トーションスプリングの一端が該第2トーションスプリングの一端に連続した連続部を有し、前記付勢力発現手段は前記閉状態で該連続部に当接する凸部であり、該蓋体のロックを解除する動きによって該第2トーションスプリングの一端が該凸部に係止され他端が前記開口を開く方向へ前記蓋体を付勢することで該第2トーションスプリングに付勢力が発現する請求項1に記載の車両用収納装置。
【請求項3】
一端側に形成された第1の揺動軸と他端側に形成された第2の揺動軸とをもち該第1の揺動軸で揺動可能に前記収納容器に配置された連結腕部を有し、
前記蓋体は揺動腕部を有し該揺動腕部が該第2の揺動軸に揺動可能に枢支され、
前記収納容器の側面には該第1の揺動軸を中心とした円弧状のラックが配置され、該揺動腕部の端側には該ラックと歯合するピニオン部が形成され、
前記付勢部材は、前記第1トーションスプリングの他端が該蓋体に対して相対移動不能に固定され、前記第2トーションスプリングの他端が該連結腕部に係止され、前記第1トーションスプリングの巻回部が該第1の揺動軸に外嵌されている請求項2に記載の車両用収納装置。
【請求項4】
前記閉状態では、前記第1トーションスプリングの巻回部の内周表面が前記第1の揺動軸の外周表面に当接している請求項3に記載の車両用収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−95230(P2013−95230A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238585(P2011−238585)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】