説明

車両用圧縮機

【課題】回転軸の軸方向への振動を抑制しつつ、車両側振動源との共振を抑えることができる車両用圧縮機を提供すること。
【解決手段】スクロール型圧縮機10において、回転軸15の一端側に圧縮部が作動連結されている。回転軸15の一端側に設けられた第1軸部15aが第1軸受16を介して区画壁25に支持されるとともに、回転軸15の他端側に設けられた第2軸部15fが第2軸受17を介して軸受支持部11fに支持されている。第2軸受17の第2内輪17aと、回転軸15の軸方向において第2内輪17aに対向する回転軸15のバネ受け部15dとの間にはコイルバネ18が介装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転によって駆動される圧縮部を有する車両用圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用圧縮機として、例えばスクロール型圧縮機が挙げられる。スクロール型圧縮機は、固定スクロールと、この固定スクロールに噛み合わされた可動スクロールとからなる圧縮部を備える。この圧縮部において、可動スクロールには回転軸の一端が連結されており、回転軸の回転に伴って可動スクロールが固定スクロールに対して旋回することにより圧縮部で冷媒の圧縮が行われる。また、回転軸の両端側はそれぞれ軸受を介してハウジングに回転可能に支持されている。
【0003】
ところで、スクロール型圧縮機において、圧縮部での圧縮反力等の応力が回転軸の軸方向に発生すると、回転軸に沿って軸方向に振動が伝達してしまい、車両の振動源と共振した場合には騒音が増大してしまう。この振動を抑制するようにした技術として、例えば、特許文献1が挙げられる。図4に示すように、密閉容器90(ハウジング)に形成された主軸受部材(図示せず)には主軸受(図示せず)が支持されるとともに、副軸受部材91には副軸受92が支持されている。そして、クランク軸93(回転軸)は、一端側の主軸(図示せず)が主軸受によって回転可能に支持されるとともに、他端側が副軸受92によって回転可能に支持されている。このクランク軸93は、電動機の回転子94に一体回転可能に連結されている。
【0004】
また、クランク軸93の他端側は、回転子94との連結部位より細く形成されるとともに、クランク軸93の径を異ならせることでクランク軸93には段付面93aが形成されている。そして、段付面93aと、副軸受92の内輪92aの端面との間には、波ワッシャ95が配設されている。
【0005】
この波ワッシャ95によって、クランク軸93には軸方向への弾性力が付与されるとともに、波ワッシャ95の弾性力が内輪92aに予圧として作用する。よって、この波ワッシャ95の予圧によってクランク軸93の振動が抑制され、その結果として共振による騒音が抑えられるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−149381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1における波ワッシャ95によるクランク軸93の振動抑制による共振抑制では、まだ改善の余地があった。
本発明は、回転軸の軸方向への振動を抑制しつつ、車両側振動源との共振を抑えることができる車両用圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転軸の回転によって駆動される圧縮部を有する車両用圧縮機において、前記圧縮部は、前記回転軸の一端側に作動連結されてハウジングに収容され、前記回転軸の一端側に設けられた第1軸部が第1軸受を介して前記ハウジングに支持されるとともに、前記回転軸の他端側に設けられた第2軸部が第2軸受を介して前記ハウジングに支持されており、前記第1軸受、及び第2軸受のいずれか一方と、前記回転軸の軸方向において前記一方の軸受に対向する前記ハウジング又は前記回転軸のバネ受け部との間に、コイルバネが介装されている。
【0009】
これによれば、コイルバネによって、第1軸受及び第2軸受のいずれか一方を介して回転軸に予荷重を付与し、回転軸を軸方向に突っ張った状態にすることができる。よって、圧縮部で発生した振動が回転軸に沿って軸方向に伝達しても、コイルバネの突っ張りによって回転軸が振動することを抑制することができる。そして、コイルバネは、その伸縮量やバネ荷重の調節幅を大きくとることができる。コイルバネの伸縮量やバネ荷重を調節することで、回転軸が軸方向に振動しても、その周波数のピークをずらすことができ、このピークを車両側振動源の振動周波数のピークからずらして共振を抑えることができる。
【0010】
また、前記回転軸における前記第2軸部側には、該第2軸部より大径をなす前記バネ受け部が設けられ、該バネ受け部と、前記第2軸受の内輪との間に前記コイルバネが介装されていてもよい。
【0011】
これによれば、回転軸の振動、及び共振を好適に抑えることができる。
また、前記第2軸部における前記バネ受け部寄りには、前記コイルバネの一端が係止する係止突部が形成されていてもよい。
【0012】
これによれば、係止突部とコイルバネの一端との係止により、コイルバネの回転軸からの脱落を防止することができる。よって、車両用圧縮機の製造時、コイルバネが組み付けられた回転軸を運搬する際にコイルバネが回転軸から脱落することを防止することができる。
【0013】
また、前記コイルバネは圧縮状態で介装されていてもよい。これによれば、コイルバネの圧縮状態からの復帰力によって、第1軸受及び第2軸受のいずれか一方を介して回転軸に予荷重を付与することができ、回転軸を軸方向に突っ張った状態に好適にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転軸の軸方向への振動を抑制しつつ、車両側振動源との共振を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態のスクロール型圧縮機を示す断面図。
【図2】回転軸の支持構造を示す部分拡大断面図。
【図3】回転軸の支持構造の別例を示す部分拡大断面図。
【図4】背景技術を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の車両用圧縮機を、スクロール型圧縮機に具体化した一実施形態を図1〜図2にしたがって説明する。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10のハウジング11は、有底円筒状をなす第1ハウジング部材11a、及び有蓋円筒状をなす第2ハウジング部材11bをボルトなどにより接合固定して構成されている。なお、スクロール型圧縮機10は車両に搭載されるものである。
【0017】
第1ハウジング部材11aには、スクロール型圧縮機10で圧縮する流体(冷媒)を取り込むための吸入ポート14が形成されている。また、第1ハウジング部材11aの内部には、回転軸15が前後方向に沿って延びるように配設されている。回転軸15は、その一端側が第1軸受16によって回転可能に支持されるとともに、他端側が第2軸受17によって回転可能に支持されている。回転軸15には、永久磁石埋め込み型のロータ20が回転軸15と一体回転可能に固定されている。また、第1ハウジング部材11aの内周面には、ロータ20を囲うようにステータ21が固定されている。本実施形態では、回転軸15、ロータ20、及びステータ21により電動モータ23が構成されている。
【0018】
第1ハウジング部材11a内には、ハウジング11の一部である区画壁25が固設されるとともに、この区画壁25によりハウジング11内にモータ収容室24が区画されている。そして、回転軸15の一端側を支持する第1軸受16は、区画壁25(ハウジング11)の内周面に支持されている。また、区画壁25の内周面には、シール部材22が装着されている。そして、回転軸15の周面と、区画壁25の内周面との間は、シール部材22によってシールされている。
【0019】
回転軸15の一端面には、回転軸15の中心としての中心軸Lに対して偏心した位置に偏心軸Hが支持されるとともに、偏心軸Hには、有蓋円筒状のブッシュ26が回転可能に支持されている。また、回転軸15の一端には、可動スクロール27が回転可能に支持されている。
【0020】
可動スクロール27は、円盤状をなす可動側端板27aと、この可動側端板27aから第2ハウジング部材11bに向けて突設された渦巻状の可動側渦巻壁27bと、可動側端板27aから区画壁25に向けて突設された円筒状の支持筒部27cと、からなる。そして、支持筒部27cには、第3軸受29が支持されるとともに、この第3軸受29には、ブッシュ26が回転可能に支持されている。ブッシュ26は、回転軸15の回転により、偏心軸Hと共に中心軸Lの周りを公転する。
【0021】
可動スクロール27の可動側端板27aに対向する区画壁25には、複数(図1では1つだけ図示)の自転阻止用素子42が嵌入止着されている。また、可動側端板27aには、自転阻止用素子42が挿入された公転位置規制穴41が形成されている。区画壁25の第2ハウジング部材11b側の端面には、固定スクロール31が可動スクロール27と対向するように固設されている。固定スクロール31は、円盤状をなす固定側端板31aと、この固定側端板31aから可動スクロール27に向けて突設された渦巻状の固定側渦巻壁31bとを一体に備えている。そして、可動スクロール27の可動側渦巻壁27bと、固定スクロール31の固定側渦巻壁31bとは互いに噛み合わされ、可動スクロール27と固定スクロール31の間に容積変更可能な作用室としての圧縮室33が区画される。
【0022】
区画壁25と固定スクロール31との間には、可動スクロール27が配設されるとともに、可動スクロール27の可動側端板27aと、区画壁25の内周面との間には、背圧室32が区画されている。この背圧室32には、高圧の制御ガスが導入され、この制御ガスにより、回転軸15の軸方向に沿って可動スクロール27を固定スクロール31に押し付けるようになっている。背圧室32は、シール部材22によって気密にシールされている。
【0023】
固定スクロール31の外周壁31dと可動スクロール27の可動側渦巻壁27bの最外周部との間には、圧縮室33へ冷媒を取り込むための吸入室35が区画形成されている。また、固定スクロール31の固定側端板31aと第2ハウジング部材11bとの間には、吐出室34が区画形成されている。さらに、固定スクロール31において、固定側端板31aの中心には、圧縮室33と吐出室34を連通させる吐出孔31cが形成されている。
【0024】
固定側端板31aの吐出室34側の端面には、吐出孔31cを開閉するためのリード弁からなる吐出弁40が配設されている。また、第2ハウジング部材11bには、吐出室34に連通する吐出ポート11cが形成されている。この吐出ポート11cと、吸入ポート14とは、外部冷媒回路(図示せず)によって接続されている。
【0025】
そして、電動モータ23への電力供給によって回転軸15が回転駆動されると、ブッシュ26が偏心軸Hを介して回転軸15の中心軸Lまわりで公転される。このとき、可動側渦巻壁27bと固定側渦巻壁31bとの線接触部が、固定側渦巻壁31bの周面に沿って中心方向へ移動し、圧縮室33の容積を減少させ、吸入室35から圧縮室33に取り込んだ冷媒の圧縮が行われる。そして、圧縮室33で圧縮された冷媒は、吐出孔31cから吐出弁40を介して吐出室34に吐出される。また、自転阻止用素子42により、可動スクロール27の自転が阻止されるようになっている。本実施形態では、可動スクロール27と、固定スクロール31とからスクロール型の圧縮部が構成されている。
【0026】
次に、回転軸15の支持構造について説明する。
まず、回転軸15において、区画壁25に挿入されるとともに、偏心軸Hを支持する部位を第1軸部15aとする。また、回転軸15において、電動モータ23のロータ20が固定された部位をロータ固定部15bとするとともに、このロータ固定部15bは、第1軸部15aと同径に形成されている。回転軸15において、ロータ固定部15bよりも大径をなし、かつ第1軸部15a側に位置する部位を、抜け止め部15cとする。この抜け止め部15cによって、ロータ20が第1軸部15a側に抜けることが防止されている。
【0027】
さらに、回転軸15において、ロータ固定部15bよりも第2軸受17側にはバネ受け部15dがロータ固定部15bから第2軸受17に向かうに従い縮径するように形成されている。回転軸15において、バネ受け部15dより小径をなすとともに、第2軸受17に支持された部位を第2軸部15fとする。なお、第2軸受17は、第1ハウジング部材11aの底部中央に立設された筒状の軸受支持部11f(ハウジング)に支持されている。
【0028】
そして、回転軸15は、第1軸部15aが第1軸受16によって回転可能に支持されるとともに、第2軸部15fが第2軸受17によって回転可能に支持されている。なお、第1軸受16は、第1軸部15aと一体回転する第1内輪16aと、区画壁25に回転不能に圧入された第1外輪16bと、第1内輪16aと第1外輪16bの間に配設された転動子16cとからなる。第2軸受17は、第2軸部15fが挿入される第2内輪17aと、軸受支持部11fに挿入された第2外輪17bと、第2内輪17aと第2外輪17bの間に配設された転動子17cとからなる。
【0029】
また、第1軸受16は、第1外輪16bが回転軸15の軸方向への移動がほとんどなく、かつ第1内輪16aが回転軸15と共に軸方向へ若干の移動が許容された状態で区画壁25に支持されている。第2軸受17は、第2外輪17b及び第2内輪17aそれぞれが回転軸15の軸方向への移動が許容された状態で軸受支持部11fに支持されている。よって、回転軸15は、第2軸部15fが第2内輪17aに対し相対移動可能に第2軸受17に支持されるとともに、各外輪16b,17bに対する各転動子16c,17cを介した各内輪16a,17aの相対移動可能な距離だけ、軸方向への移動が許容されている。
【0030】
図2に示すように、第2軸部15fにおけるバネ受け部15d寄りには、第2軸部15fを若干膨らませてなる係止突部15gが第2軸部15fの周方向全体に亘って延びるように形成されている。また、第2軸部15fにはコイルバネ18が装着されるとともに、このコイルバネ18は圧縮状態で、回転軸15の軸方向に対向するバネ受け部15dと、第2内輪17aとの間に介装されている。コイルバネ18は、一端がバネ受け部15dと係止突部15gとの間に配設されるとともに、バネ受け部15dに当接支持されている。また、コイルバネ18の他端が第2内輪17aに当接支持されている。
【0031】
そして、コイルバネ18の圧縮状態からの復帰力によって第2内輪17aは軸受支持部11fに向けて押し付けられて予荷重が付与されるとともに、この予荷重の付与によって回転軸15は軸方向に突っ張った状態となっている。この予荷重は、コイルバネ18のバネ荷重や圧縮量(伸縮量)を調節することで適宜変更可能になっている。
【0032】
次に、スクロール型圧縮機10の作用について説明する。
さて、電動モータ23への電力供給によって回転軸15が回転駆動され、可動スクロール27が固定スクロール31に対し旋回し、圧縮部で冷媒の圧縮が行われると、圧縮に伴う振動が回転軸15に沿って軸方向に伝達する。このとき、回転軸15にはコイルバネ18によって予荷重が付与されており、回転軸15は突っ張った状態にある。このため、圧縮部からの振動によって回転軸15が軸方向へ振動することが抑制される。さらに、コイルバネ18が付与する予荷重を調節することにより、回転軸15の振動周波数のピークを、車両の振動源(例えばエンジン)の振動周波数のピークからずらすことができる。
【0033】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1軸受16と第2軸受17によって回転軸15の両端側が支持されたスクロール型圧縮機10において、回転軸15に設けたバネ受け部15dと、第2軸受17の第2内輪17aとの間に圧縮状態のコイルバネ18を介装した。そして、コイルバネ18の圧縮状態からの復帰力によって回転軸15に予荷重を付与し、回転軸15を軸方向に突っ張った状態にした。よって、圧縮部での冷媒の圧縮による振動が回転軸15に沿って軸方向に伝達しても、コイルバネ18の突っ張りによって回転軸15が振動することを抑制することができる。
【0034】
(2)コイルバネ18の圧縮量やバネ荷重を大きくしていくと回転軸15に付与する予荷重が大きくなり、回転軸15が軸方向へ移動しにくくなる。逆に、コイルバネ18の圧縮量やバネ荷重を小さくすると、回転軸15に付与する予荷重は小さくなり、回転軸15が軸方向へ移動しやすくなる。そして、コイルバネ18の圧縮量やバネ荷重を調節することで、回転軸15が振動したときの周波数のピークをずらすことができる。したがって、コイルバネ18を採用することで、予荷重の調節幅を大きくすることができ、回転軸15が振動したときの周波数のピークを、車両側振動源の振動周波数のピークからずらして共振を抑えることができる。
【0035】
(3)回転軸15は第1軸受16と第2軸受17によって支持されるが、組み付け上の観点から第2軸受17(第2内輪17a)に対しては、回転軸15の第2軸部15fは相対移動可能に挿入されている。この第2内輪17aは、コイルバネ18によって軸受支持部11fに押し付けられており、第2内輪17aのがたつきを抑えることができる。
【0036】
(4)回転軸15において、コイルバネ18の一端が当接するバネ受け部15dの近くに係止突部15gを形成した。このため、コイルバネ18を回転軸15に組み付けた状態で回転軸15の軸方向を上下方向として延びるようにしたとき、係止突部15gとコイルバネ18の一端との係止により、コイルバネ18の回転軸15からの脱落を防止することができる。よって、スクロール型圧縮機10の製造時、コイルバネ18が組み付けられた回転軸15を運搬する際にコイルバネ18が回転軸15から脱落することを防止することができ、製造効率を向上させることができる。
【0037】
(5)回転軸15の外側にコイルバネ18を装着した。このため、回転軸15の回転に伴いコイルバネ18も回転させたとき、コイルバネ18の回転によってコイルバネ18周りの空気を攪拌することができる。よって、例えば、スクロール型圧縮機10におけるコイルバネ18の近くに電動モータ23の制御用のインバータが配置された場合には、コイルバネ18による空気の攪拌によってインバータを冷却することが可能になる。
【0038】
(6)スクロール型の圧縮部を備えたスクロール型圧縮機10は、その圧縮部での圧縮に伴う振動が、固定スクロール31や第3軸受29等を介して回転軸15に伝わりやすい。このため、スクロール型圧縮機10の回転軸15にコイルバネ18を設けることで、回転軸15の振動を抑制し、共振を抑えることができる。
【0039】
(7)第1軸受16は、区画壁25に圧入される一方で、第2軸受17は、軸受支持部11fに挿入支持されている。よって、回転軸15は、第2軸部15fが第2内輪17aに対し相対移動可能に第2軸受17に支持されている。このため、回転軸15は、軸方向への移動が許容されており、このような回転軸15にコイルバネ18を装着し、コイルバネ18によって回転軸15を突っ張らせることで、回転軸15の振動を抑えることができるのである。
【0040】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、回転軸15のバネ受け部15dと、第2軸受17の第2内輪17aとの間にコイルバネ18を配設したが、これに限らない。図3に示すように、第2外輪17bと、軸受支持部11fの内面との隙間にコイルバネ18を配置する。この場合、第2軸部15fに対し、第2内輪17aは一体に固定されるとともに、第2外輪17bは軸受支持部11fに対し相対移動可能になっている。このように構成しても、回転軸15が振動しても、第2外輪17bを介したコイルバネ18の突っ張りによって回転軸15の軸方向への振動が抑えられる。
【0041】
○ 実施形態では、第2軸受17と、回転軸15の軸方向において第2軸受17に対向するバネ受け部15dとの間に、圧縮状態のコイルバネ18を介装したが、これに限らない。例えば、第1軸受16と、回転軸15の軸方向において対向する区画壁25との間にコイルバネ18を介装してもよい。
【0042】
○ 実施形態では、第2軸受17と、回転軸15の軸方向において第2軸受17に対向するバネ受け部15dとの間に、圧縮状態のコイルバネ18を介装したが、これに限らず、非圧縮状態のコイルバネ18を介装してもよいし、その介装場所は、第1軸受16と、回転軸15の軸方向において対向する区画壁25との間であってもよい。
【0043】
○ 回転軸15に形成した係止突部15gは無くてもよい。
○ 回転軸15の支持構造を採用する車両用圧縮機として、実施形態ではスクロール型圧縮機10に具体化したが、回転軸15の軸方向に振動が発生する車両用圧縮機であれば、圧縮のタイプはスクロール型に限定されず、ピストン型、ベーン型等であってもよい。
【0044】
○ 回転軸15の支持構造を採用する車両用圧縮機として、実施形態では電動モータ23によって駆動されるタイプに具体化したが、電動モータ23でなくエンジン等の駆動源によって直接駆動されるタイプに具体化してもよい。
【0045】
○ 実施形態では、車両側振動源としてエンジンに具体化したが、車両側振動源はエンジン以外であってもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0046】
(イ)前記圧縮部はスクロール型である請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の車両用圧縮機。
(ロ)前記第2軸受は前記ハウジングに形成された軸受支持部に挿入支持されている請求項1〜請求項4、及び技術的思想(イ)のうちいずれか一項に記載の車両用圧縮機。
【符号の説明】
【0047】
10…車両用圧縮機としてのスクロール型圧縮機、11…ハウジング、11f…ハウジングとしての軸受支持部、15…回転軸、15a…第1軸部、15d…バネ受け部、15f…第2軸部、15g…係止突部、16…第1軸受、17…第2軸受、17a…第2内輪、18…コイルバネ、25…ハウジングとしての区画壁、27…圧縮部を構成する可動スクロール、31…圧縮部を構成する固定スクロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転によって駆動される圧縮部を有する車両用圧縮機において、
前記圧縮部は、前記回転軸の一端側に作動連結されてハウジングに収容され、
前記回転軸の一端側に設けられた第1軸部が第1軸受を介して前記ハウジングに支持されるとともに、
前記回転軸の他端側に設けられた第2軸部が第2軸受を介して前記ハウジングに支持されており、
前記第1軸受、及び第2軸受のいずれか一方と、前記回転軸の軸方向において前記一方の軸受に対向する前記ハウジング又は前記回転軸のバネ受け部との間に、コイルバネが介装されていることを特徴とする車両用圧縮機。
【請求項2】
前記回転軸における前記第2軸部側には、該第2軸部より大径をなす前記バネ受け部が設けられ、該バネ受け部と、前記第2軸受の内輪との間に前記コイルバネが介装されている請求項1に記載の車両用圧縮機。
【請求項3】
前記第2軸部における前記バネ受け部寄りには、前記コイルバネの一端が係止する係止突部が形成されている請求項2に記載の車両用圧縮機。
【請求項4】
前記コイルバネは圧縮状態で介装されている請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の車両用圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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